第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社グループは、『日東紡グループは「健康・快適な生活文化を創造する」企業集団として社会的存在価値を高め、豊かな社会の実現に貢献し続けます。』との経営理念に基づいて、時代の要請に即応し、社会の役に立つ新しい価値を創造し提供し続けることで、株主・投資家・行政・地域社会等すべてのステークホルダーと共に喜びを分かち合い、企業価値を高めていくことを目指しております。

 

(2) 経営環境

 当連結会計年度における世界経済は、欧米でのインフレ長期化や中国での景気減速、地政学的リスクの高まりなどにより、不安定な状態が継続しました。わが国経済は、社会経済活動正常化などにより緩やかに回復した一方、原材料価格の高騰による物価上昇などにより、先行き不透明な状況は継続しました。

 このような環境の下、当社グループは2030年にありたい姿『Big VISION 2030』を長期ビジョンとして再定義し、その実現に向けて2021年4月から3年間の中期経営計画(2021~2023年度)を実行しました。

 2024年3月期は、グラスファイバー事業において汎用品は低迷したものの、高付加価値品であるスペシャルガラスの販売は回復基調が継続しました。

 

 セグメントごとの事業環境は以下のとおりです。

 

グラスファイバー事業 [原繊材事業、機能材事業、設備材事業]

 当社は、1938年に日本で初めてグラスファイバーの工業化に成功して以来、業界のリーディングカンパニーとして、グラスファイバーの可能性を追求してまいりました。グラスファイバーを製造する原繊工程と、グラスファイバー加工工程の双方を備え、組成開発、原繊製造、クロス加工、複合材料開発に至る一貫した生産・開発体制を保有しております。当社独自の技術を活用した商品群を展開し、高付加価値品分野でのリーダーとして地位を築いております。

 

原繊材事業

 原繊材事業においては、電子材料用途で、世界で最も細い水準にある極細ヤーンや、低誘電特性あるいは低熱膨張特性を備えた特殊な機能を持つスペシャルガラス・ヤーンを製造できる独自技術を保有しております。また、複合材用途においては、独自技術によりグラスファイバーの断面を通常の円形でなく長円形にすることで成型品の反り・ねじれを抑えるフラット・ファイバーを展開しています。

 当社はこれらの独自技術により高い競争力を有しておりますが、今後、国内外の企業の技術的キャッチアップも想定されるため、研究開発体制の一層の強化と高付加価値製品の製造能力向上を行ってまいります。

当連結会計年度においては、電子材料向けスペシャルガラス・ヤーンの販売が好調に推移したものの、強化プラスチック用途の複合材及び、電子材料向け汎用ヤーンの販売が低調であったことなどが利益の押し下げ要因となりました。

 

機能材事業

 機能材事業では電子材料用途のガラスクロスを展開しています。ガラスクロスは絶縁性・耐熱性・寸法安定性に優れ、電子基板の基材として利用されており、当社の極薄ガラスクロスはその薄さと均一な繊維分布により、電子機器の小型・高機能化に寄与しています。また、当社独自の組成によるスペシャルガラス・クロスは、高速大容量通信に求められる低誘電率、低誘電正接、低熱膨張等の特性を持ち、データセンターや携帯基地局の高周波部材、サーバーやスマートフォンなどの半導体パッケージ基板に使用されています。

当連結会計年度においては、AIサーバー向けの旺盛な需要の継続により、低誘電特性を持つスペシャルガラスの販売が伸長するとともに、半導体パッケージ基板向けのスペシャルガラスの販売が回復傾向となり、収益に貢献しました。

 

設備材事業

 設備材事業では産業資材用途グラスファイバー製品とグラスウール製品を展開しています。産業資材用途グラスファイバーは、当社の技術力が評価され大型建造物用の膜材から自動車用の制振材まで幅広い用途で採用されております。取引先が多岐にわたるため個別業界の市況変動が分散され安定的な収益計上が見込める一方で、他素材との競合もあり競争環境は厳しい状況にあります。

 グラスウールは、その高い断熱性能により住宅・ビルなどの断熱材として使用されて省エネルギーに貢献するとともに、空き瓶や使用済みの窓ガラス等のリサイクルガラスを原料としているため資源の再利用にも貢献しています。当社グループはグラスウールを1949年に日本で初めて製造を開始し、現在も断熱材のパイオニアとして独自技術を保有しております。グラスウールの細繊維化を進めて断熱性能を向上させることで、環境負荷の低減に貢献しています。また、ノンホルムアルデヒドのグラスウールを開発し、安全・快適な生活の実現に寄与しています。

当連結会計年度においては、断熱材及び設備・建設資材向けガラスクロスの堅調な販売が収益に貢献しました

 

ライフサイエンス事業

 ライフサイエンス事業では体外診断用医薬品及びスペシャリティケミカルス製品の製造販売を行っています。

 体外診断用医薬品事業は、原料から最終製品をグループ内で一貫製造することにより高品質と安定供給を両立させ、特に免疫系の診断薬に強みを保有しています。国内市場では、高齢化の進展や医療費抑制に向けた治療から予防へのシフト等により診断薬の高機能化が求められています。また、海外市場において、先進国では高付加価値医療(高感度の免疫系試薬や感染症、遺伝子検査等)の需要増加、新興国では社会保険制度の整備に伴う診断機会の増加があり体外診断用医薬品の需要が拡大しております。当社グループは、国内において100種類以上の検査項目に対応した診断薬を販売しており、炎症マーカーや骨粗鬆マーカー等で大きな販売シェアを確保しております。

 スペシャリティケミカルス事業では、機能性ポリマーの製造販売を行っております。販売先の業種・分野はトイレタリー、製紙、金属、電子材料、ジェネリック医薬品と多岐にわたっており、競合の参入が難しい独自性の高い製品の研究開発・製造販売に取り組んでおります。

 当連結会計年度においては、メディカル事業の販売は順調に推移しました。一方、飲料事業を営むニットービバレッジ株式会社が2023年1月に当社連結対象子会社から除外された影響を受けました。

 

繊維事業

 繊維事業では、接着芯地、薄手裏地等の衣料用副資材やふきんの製造販売を行っています。接着芯地は、高級レディース向け市場で大きなシェアを持ち、薄物芯地の接着加工技術に独自性を有しています。

 当連結会計年度においては、芯地の販売は堅調に推移したものの、コストアップなどの影響を受けました。

 

(3) 対処すべき課題

日東紡グループ 『前中期経営計画の振り返り』及び『新中期経営計画(2024~2027年度)』

 

○前中期経営計画の振り返り

 『前中期経営計画(2021~2023年度)』の3年間では、将来の成長に向けた戦略的投資やグループ全体の経営基盤の強化など、4つの重点施策を着実に実行いたしました。最終年度に向けてスペシャルガラスや体外診断薬などの高付加価値品の販売が増加いたしましたが、人件費の増加や2021年度以降の電燃費の大幅な上昇により、収益目標は未達となりました。一方で、財務体質は健全性を維持いたしました。

 

 

<4つの重点施策と実績>


 

<財務目標と実績>


 

○『新中期経営計画(2024~2027年度)』

<新中期経営計画の2つのポイント>


 

 

<本部戦略の基本方針>

『Big VISION 2030』を超えて安定成長を持続するため、打ち出しの4年間として各事業本部は以下の方針に基づき新中期経営計画に取り組みます。

 

[電子材料][メディカル]

・市場拡大が期待できる分野に向けた供給体制の整備、積極的な設備投資を継続します。

・『Big VISION 2030』を実現する2030年度目標に向け、投資の刈り取り、新規開発製品の結実による着実な収益貢献を目指します。

 

[複合材][資材・ケミカル][断熱材]

・既存事業領域の深掘りをしつつ、2030年度以降を見据え、グラスファイバー、繊維など、従来の括りに捉われない新たな発想で事業の探索を進めます。市場拡大が期待できる分野に向けた供給体制の整備、積極的な設備投資を継続します。

 

<全社定量目標(2024年度~2027年度)>


 

 

<日東紡グループの経営理念と基本方針>


 

○環境目標

 当社グループでは、「環境に関する全社方針」を定め、環境目標の達成に向けて取り組んでおります。

また、一元的に環境課題を把握し、課題解決への取組みを推進するため、代表執行役社長を委員長とする

「サステナビリティ推進委員会」を設けております。

 

 2023年度は委員会を4回開催し、CO2削減推進、環境配慮商品開発、サステナビリティ経営推進等のテーマ別タスクフォースを通じて、持続可能な事業のための具体的な施策の検討と推進に取り組みました。

 近年における主な取組みは以下のとおりです。

 

・2022年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言への賛同を表明しました。

・2023年4月には、当社ウェブサイトをリニューアルし、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する情報を充実させました。

・2024年2月より、当社富久山事業センター構内において第三者所有モデルによる太陽光発電システム(いわゆるオンサイトPPA)の運用を開始いたしました。また、燃焼時にCO2を排出しない燃料への転換に向けた実証実験を開始いたしました。

 

  今後も持続可能な豊かな社会の実現に向けて取り組んでまいります。

 

<CO2排出量削減>

 2050年度 目標:カーボンニュートラル実現

 2030年度 目標:CO2排出量削減 ▲30%(2013年度比、Scope1+Scope2)

<廃棄ガラス削減>

2030年度 目標:廃棄ガラス量の実質ゼロ達成

 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループのサステナビリティ関連の取組みを推進する機関として、2021年4月に取締役代表執行役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しております。同委員会を四半期ごとに開催し、サステナビリティ関連情報の集約、リスクの想定、対応策の立案、社内教育・啓発の計画及びこれらの進捗管理を行っております。討議・決定された重要な事項については、定期的に取締役会に報告・議論しております。

 


 

(2)戦略

当社グループ全事業におけるサステナビリティ関連の重要課題として、当社の強みを活かし、事業活動を通じて社会に貢献する戦略的なCSRの観点と、持続的成長の基盤となる体制や取組みを整える基礎的なCSRの観点からマテリアリティを特定しました。また、マテリアリティに対応する社会課題ごとに当社グループのリスク・機会を整理し、それらの削減・増大に向けた施策を推進しています。

その中でも最も重要なテーマである気候変動への影響について、2030年を想定し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)や IEA(国際エネルギー機関)などの専門機関が描くシナリオを参考に分析しました。

気候変動がもたらすリスクは、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分けられます。地球の平均気温上昇が産業革命前と比べて1.5℃以下及び4℃となるシナリオを想定し、それぞれの機会とリスクについて影響度が高いと思われる項目を抽出しました。今後も引き続き外部環境の変化に応じて適宜見直しを行い、行動計画に反映させていきます。

また、当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針>

 

当社グループは、一人ひとりの従業員が持っている個性・能力や考え方を大切にし、それぞれを活かしていくことが重要であると考えており、性別・年齢・SOGI・障がい等個人のアイデンティティに関わらず、誰もが違いを認め合い、すべての従業員が生き生きと活躍できる環境・組織風土の実現に向け、グループ全体で取組みを進めております。また、人材を当社の持続的な成長を支える原動力と考えており、性別・国籍・中途採用者等を問わず、管理職への登用等を含めた多様な人材活用を推進してまいります。

従業員一人ひとりが、その能力を高め最大限発揮するには、性別や国籍などにかかわらず自らキャリア形成できる制度や仕組みが求められます。そうした観点から、当社では多様な人材が多様な働き方で成果を出すための制度の構築、学習する機会の提供、マネジメントの質の向上、組織風土の醸成などに力を入れ、従業員の成長をサポートしながら、人材の開発に取り組んでおります。また、同時に従業員にとって魅力ある職場であるために、従業員のQOLとエンゲージメントの向上を実現するべくフレックス勤務や在宅勤務の実施など柔軟な働き方の実現、および育児・介護などの事由を抱える従業員をサポートする両立支援制度の拡充などに積極的に取り組んでおります。育児休職に関しては、既に2021年度から2週間有給にすることを制度化し取得を推進しております。

 

(3)リスク管理

当社グループは、前記ガバナンスのもと、リスク低減と事業機会創出を目的とし、リスクと機会の管理を強化しています。リスクの管理は、リスクマネジメント委員会にて定期的に各事業部門、管理部門から出されたリスクを分析し、経営への影響がとくに大きく、対応強化が必要なリスクは「全社リスク」として、リスクマネジメント委員会で管理を行っています。各事業部門において管理可能なリスクは、各組織が中心となって管理・対応を行っています。機会管理においては、サステナビリティ推進委員会を中心に、テーマを管理し、優先順位の設定とESGに関連する投資を促進する仕組みを構築し、戦略的な事業運営につなげています。

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、気候変動への対応目標並びに、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

ただし、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異については、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、上記の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

指 標

目 標

実績

(当連結会計年度)

CO2排出量

2030年度までにCO2排出量削減 ▲30%

(2013年度比 Scope1+Scope2)

2050年度カーボンニュートラル実現

(注) 削減率:

▲19.7%

CO2排出量:

28.0万トン

(Scope1+Scope2)

管理職に占める女性労働者の割合

2030年度まで10.0

(注) 6.6

男性労働者の育児休業取得率

取得率30.0以上を維持

(注) 73.9

労働者の男女の賃金の差異

2030年度までに全労働者の比較において、

女性賃金が男性賃金の80以上

※人事制度における男女の処遇差はありません。

78.3

従業員エンゲージメントスコア

2030年度まで60.0

53.0

 

    (注) 当連結会計年度の、CO2排出量実績、管理職に占める女性労働者の割合実績、及び男性労働者の育児休業取得率実績については、独立第三者の保証を取得済みであります。独立第三者の保証報告書は当社ホームページに掲載しています。

   (https://www.nittobo.co.jp/sustainability/pdf/susa.pdf)

3 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。当社は、グループ全体のリスク管理の基本方針及び管理体制を「リスク管理規程」において定め、その基本方針及び管理体制に基づき、代表執行役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会で、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの未然防止を図っております。

 

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 中期経営計画

 当社グループは、2024年5月に「新中期経営計画」を策定し、その計画に掲げた具体的諸施策を推進しております。これらの計画は、策定当時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定されておりますが、こうした情報や分析等には不確定要素が含まれております。今後、事業環境の変化その他の要因により、期待される成果の実現に至らない可能性があります。

 

(2) エネルギー価格の変動

 当社グループは、主力製品であるグラスファイバー・グラスウールなどの製造においてLNGガス、電気を使用しているため、エネルギー価格の変動やリスクを負っております。安価なエネルギーへの転換や省エネルギー対策などリスクの軽減を図っておりますが、紛争・災害等の地政学的要因やエネルギー政策の変更等により電気料金、原油価格が急激に変動した場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 為替レートの変動

当社グループは日本、台湾、中国、米国で生産活動を行い、その製品をグローバルに販売しております。したがって、為替レートが円高になった場合には海外輸出品の競争力が弱まり、為替レートが円安になった場合には、輸入原材料価格が上昇します。為替予約等によるリスクの軽減を図っておりますが、大幅に為替レートが変動した場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 原材料の調達

主要な原材料はリスク管理の観点からも可能な限り複数の取引先から購入を行っております。しかし、取引先の状況や経済環境の変化、紛争・災害等の地政学的要因、世界的なサプライチェーンの混乱等により原材料の価格が変動する可能性や、入手が困難になる可能性があります。そのような場合には、生産活動に影響が出る等、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 他社製品との競争、新製品の開発及び技術革新

 当社は自社の技術力を持続的成長の源泉と考えており、なかでもグラスファイバー事業においては、世界的なリーディングカンパニーとして競争優位を保ち、より一層研究開発に注力することにより競争優位を維持していくことを目指しております。しかしながら、国内外の競合企業との競争激化やグラスファイバーの代替材料の開発により当社の競争優位性が低下したり、当社の新技術・新商品の開発が長期化した場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 需要の変動

 当社グループはグローバルに事業展開をしており、日本国内向けの売上であっても顧客の製品に組み込まれて海外に輸出される製品も多く含まれています。したがって、世界経済の景気動向や各国の貿易・関税政策、地政学的要因等の様々な影響を受け、当社製品を組み込んだ顧客の製品の需要が減速した場合は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 特に、当社グループのグラスファイバー事業部門は、市況の変動幅の大きいIT関連のプリント配線基板用や半導体のパッケージ基板用ヤーン及びクロス、また自動車・電子機器用等の複合材を取り扱っており、需要が大きく変動することがあります。

 

(7) 設備投資

 成長分野の需要捕捉に向けた設備投資や定期的な大規模修繕は、需要予測に大きな変化が生じた場合、生産性等所期の設備能力が得られなかった場合、あるいは主要設備部材の価格が市況により急激に変動した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 製品の欠陥

 当社のグラスファイバー事業はサプライチェーンの川上に位置し、当社の製品に欠陥があった場合の影響は広範に及ぶ可能性があるため、品質保証体制を確立し、欠陥品を発生させないように取り組んでおります。また、ライフサイエンス事業で取り扱う体外診断用医薬品は、生物由来の原料を使用するため安定した品質の維持が課題となりますが、在アメリカの子会社で原料となる抗血清を製造し日本国内で最終製品を製造しているため、グループ内で一貫した品質管理を行っております。しかしながら、予測できない原因により品質問題が発生し、出荷量が低下する可能性や、製品の欠陥による損害賠償の発生や社会的評価の毀損等により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 災害の発生

 当社グループは、災害・事故等に備えたリスク管理を実施しております。従業員の安全・健康を事業経営の基盤ととらえ、諸法令を遵守し、安全で働きやすい職場環境を整えるべく、拠点ごとに委員会活動を行うとともに、定期的にBCP訓練や地震・火災に備えた訓練を実施しております。しかし、大地震等の自然災害や突発的な事故により、生産設備等に多大な損害を受けた場合や電力、燃料、水の供給に問題が発生した場合には、生産活動等に支障が生じるなど当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 訴訟等

 当社グループは、国内外で事業を遂行する上で、訴訟やその他の法的手段の当事者となる可能性があり、重要な訴訟等が提起された場合又は事業遂行の制限が加えられた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、当連結会計年度末現在において、国及び当社を含むアスベスト取扱い企業数十社を被告として建設従事者とその遺族より損害賠償を求める訴訟の提起を受けており、札幌、仙台、水戸、さいたま、東京、横浜、千葉、名古屋、大阪、京都、高松、福岡の各地方裁判所、及び札幌、東京、大阪の各高等裁判所にて計27件の訴訟が係属中であります。これらの訴訟において当社に不利な判断がなされた場合には、業績等に悪影響が生じる可能性があります。

 

(11) 法的規制(環境に関する法規制を含む)

 当社の事業遂行においては、国内外の法的規制を遵守することを最優先事項としております。専門の部署(リスクマネジメント統括部)を設置し、国内外の法的規制や環境に関する規制についての情報収集と法的規制の対応管理を行っております。また、グループ全体のコンプライアンス教育を推進し、当社グループの社会的信用や評判に与える影響を防いでおります。しかしながら、各種法的規制の変更により、法令対応費用の発生等により当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 気候変動対応のリスク

当社グループは、2030年度のCO2排出量削減目標を設定し、省エネ活動の推進、再生可能エネルギーの導入やTCFDに基づく情報開示に取り組んでおります。また、2050年度カーボンニュートラル達成に向けて、低炭素・脱炭素技術の活用によりCO2排出削減及び生産性向上に取り組んでおります。

しかし、気候変動対応に係る国内外の関連法規制の強化により生産活動や営業活動に影響が生じたり、社会的信用の低下による機会損失が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 海外事業

 当社は、中国、台湾、米国に子会社を有しております。これらの国における海外事業は、各国における政治・経済・法令・税制・社会動向等の変化や紛争・災害・感染症の発生等の要因により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 情報セキュリティ

 当社グループは、情報セキュリティの確保については、サイバー攻撃に強いシステムの導入を行うとともに、個人情報や機密情報の保護のため全社管理体制の下で徹底を図り、定期的に監査を行っております。しかしながら、企業の社会的責任に対する社会の期待は年々増大していることもあり、情報漏洩等の問題が発生し、その対応の内容や迅速性が不十分な場合には当社グループの社会的信用や評判に波及し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 特許権等の知的財産権

 当社は、将来の事業展開に有益である特許権等の知的財産権の取得に努めております。併せて、事業運営にあたっては、他社の知的財産権の調査を行い、これらに抵触して問題が発生することの無いように努めておりますが、知的財産権に係る争訟により当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) 退職給付債務

 当社グループの退職給付費用及び退職給付債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 投資有価証券

 当社グループが保有している株式等の投資有価証券の価値が大幅に下落した場合は、評価損の発生により当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) 感染症拡大

当社グループは、感染症対策として、生産活動や販売活動等に影響がでないようにリスク管理を実施しております。また、サプライチェーン分断等に対応できるよう、定期的なサプライチェーンの見直し、複線化を行っております。しかし、感染症が拡大した場合には、生産活動や営業活動に影響が出る等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

  当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、欧米でのインフレ長期化や中国での景気減速、地政学的リスクの高まりなどにより、不安定な状態が継続しました。わが国経済は、社会経済活動正常化などにより緩やかに回復した一方、原材料価格の高騰による物価上昇などにより、先行き不透明な状況は継続しました。

 このような環境の下、当社グループは2030年にありたい姿『Big VISION 2030』を長期ビジョンとして再定義し、その実現に向けて2021年4月から3年間の中期経営計画(2021~2023年度)を実行しました。

 2024年3月期は、グラスファイバー事業において汎用品は低迷したものの、高付加価値品であるスペシャルガラスの販売は回復基調が継続しました。

この結果、連結売上高は93,253百万円(前年同期比6.5%の増収)、連結営業利益は8,387百万円(前年同期比71.9%の増益)、連結経常利益は9,752百万円(前年同期比60.7%の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益は7,296百万円(前年同期比163.1%の増益)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

 原繊材事業は、売上高26,191百万円と前年同期比9.3%の増収となり、営業損失は458百万円(前連結会計年度は営業損失1,680百万円)となりました。

 機能材事業は、売上高27,528百万円と前年同期比20.4%の増収となり、営業利益は5,550百万円と前年同期比59.6%の増益となりました。 

 設備材事業は、売上高21,637百万円と前年同期比5.6%の増収となり、営業利益は1,188百万円と前年同期比964.5%の増益となりました。

 ライフサイエンス事業は、売上高14,436百万円と前年同期比13.9%の減収となり、営業利益は2,955百万円と前年同期比5.9%の増益となりました。

 繊維事業は、売上高2,386百万円と前年同期比2.5%の増収となり、営業利益は24百万円と前年同期比74.5%の減益となりました。

 その他の事業は、売上高1,072百万円と前年同期比4.4%の減収となり、営業利益は182百万円と前年同期比39.4%の増益となりました。

 

 当連結会計年度末における総資産は212,112百万円となり、前連結会計年度末に比べ26,527百万円増加しました。主な要因は、売掛金、投資有価証券の増加などであります。

 負債は88,404百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,768百万円増加しました。主な要因は、支払手形及び買掛金、長期借入金の増加などであります。

 純資産は123,707百万円となり、自己資本比率は55.7%前連結会計年度末に比べ0.2ポイント減少しました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により得られた資金5,057百万円、投資活動により使用した資金7,896百万円、財務活動により得られた資金4,301百万円などの結果、前連結会計年度末に比べ2,057百万円増加し、当連結会計年度末には23,517百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金は、前連結会計年度の7,643百万円の増加から、5,057百万円の増加となりました。これは主に「①財政状態及び経営成績の状況」で記載いたしましたとおりの事業活動の結果、税金等調整前当期純利益が9,083百万円となったほか、減価償却費7,166百万円により資金が増加した一方、売上債権の増加額10,420百万円により資金が減少したことなどによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金は、前連結会計年度の1,979百万円の増加から7,896百万円の減少となりました。これは主に、固定資産の取得による支出6,949百万円及び為替予約の決済による支出1,061百万円により資金が減少したことなどによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金は、前連結会計年度の7,249百万円の減少から4,301百万円の増加となりました。これは主に、長期借入れによる収入14,000百万円により資金が増加した一方、長期借入金の返済による支出6,531百万円及び配当金の支払額2,012百万円により資金が減少したことなどによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

(ア)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

原繊材事業

24,990

△13.7

機能材事業

26,919

16.9

設備材事業

21,038

3.6

ライフサイエンス事業

13,916

△17.0

繊維事業

2,230

4.5

その他の事業

   -

合計

89,096

△2.3

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

(イ)受注実績

当社グループ(当社及び連結子会社)は主として見込生産を行っており、受注生産はほとんどありません。

 

 

(ウ)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

原繊材事業

26,191

9.3

機能材事業

27,528

20.4

設備材事業

21,637

5.6

ライフサイエンス事業

14,436

△13.9

繊維事業

2,386

2.5

その他の事業

1,072

△4.4

合計

93,253

6.5

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 日東紡グループの目標とする経営指標と当連結会計年度の実績は次のとおりであります。

 

2023年度実績

2027年度目標

売上高(百万円)

93,253

135,000

営業利益(百万円)

8,387

20,000

ROE

6.6%

8.0%

自己資本比率

55.7%

55.0%

 

  2024年3月期は、グラスファイバー事業において汎用品は低迷したものの、高付加価値品であるスペシャルガラスの販売は回復基調が継続しました。

 この結果、連結売上高は93,253百万円(前年同期比6.5%の増収)、連結営業利益は8,387百万円(前年同期比71.9%の増益)となりました。

 また、受取保険金169百万円など計210百万円の特別利益を計上し、一方、減損損失585百万円など計879百万円の特別損失を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は7,296百万円(前年同期比163.1%の増益)となり、ROEは6.6%となりました。

 

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因及び対応策につきましては、前述の「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

 

 グラスファイバー事業部門に属する原繊材事業、機能材事業、設備材事業の状況と具体的な取組みは、以下のとおりです。 
 

 原繊材事業では、電子材料向けスペシャルガラス・ヤーンの販売が好調に推移したものの、強化プラスチック用途の複合材及び、電子材料向け汎用ヤーンの販売が低調であったことなどが利益の押し下げ要因となりました。

 この結果、当事業は売上高26,191百万円と前年同期比9.3%の増収となり、営業損失は458百万円前連結会計年度は営業損失1,680百万円)となりました。

 また、セグメント資産は86,945百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,026百万円増加しました。

 

 機能材事業では、AIサーバー向けの旺盛な需要の継続により、低誘電特性を持つスペシャルガラスの販売が伸長するとともに、半導体パッケージ基板向けのスペシャルガラスの販売が回復傾向となり、収益に貢献しました。

 この結果、当事業は売上高27,528百万円と前年同期比20.4%の増収となり、営業利益は5,550百万円と前年同期比59.6%の増益となりました。

 また、セグメント資産は31,138百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,897百万円増加しました。

 

 設備材事業では、断熱材及び設備・建設資材向けガラスクロスの堅調な販売が収益に貢献しました。

 この結果、当事業は売上高21,637百万円と前年同期比5.6%の増収となり、営業利益は1,188百万円と前年同期比964.5%の増益となりました。

 また、セグメント資産は21,419百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,990百万円増加しました。

 

 ライフサイエンス事業では、メディカル事業の販売は順調に推移しました。一方、飲料事業を営むニットービバレッジ株式会社が2023年1月に当社連結対象子会社から除外された影響を受けました。

 この結果、当事業は売上高14,436百万円と前年同期比13.9%の減収となり、営業利益は2,955百万円と前年同期比5.9%の増益となりました。

 また、セグメント資産は21,068百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,441百万円増加しました。

 

 繊維事業では、芯地の販売は堅調に推移したものの、コストアップなどの影響を受けました。

 この結果、当事業は売上高2,386百万円と前年同期比2.5%の増収となり、営業利益は24百万円と前年同期比74.5%の減益となりました。

 また、セグメント資産は3,133百万円となり、前連結会計年度末に比べ6百万円増加しました。

 

 その他の事業は、産業機械設備関連事業等の収益確保に取り組みました。

 この結果、売上高1,072百万円と前年同期比4.4%の減収となり、営業利益は182百万円と前年同期比39.4%の増益となりました。

 また、セグメント資産は2,098百万円となり、前連結会計年度末に比べ204百万円減少しました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの資金需要は、製品の製造販売に関わる原燃料費や営業費用などの運転資金、設備投資資金及び研究開発などであります。資金調達は主としてフリー・キャッシュフロー(当社グループはフリー・キャッシュフローを営業活動によるキャッシュ・フロー及び資産活用をはじめとした投資活動によるキャッシュ・フローの合計と定義しております。)、社債の発行及び間接調達により十分な資金を確保しており、借入枠100億円のコミットメントラインにより財務の安定性及び流動性を補完しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り) 」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

業務提携

(提出会社)

相手先

国名

内容

契約締結年月

有効期限

野原グループ株式会社

日本

事業協力の推進、資本参加

2009年10月

期限なし

 

 

6 【研究開発活動】

 当社グループの事業活動は、原繊材、機能材、設備材、ライフサイエンス、繊維など広範な分野に亘っております。当社の研究開発活動は、『総合研究所』が中心となり、技術力の向上と研究開発力の強化を行い、既存事業の収益力向上のための付加価値の創出と、新事業開拓に結び付くテーマ探索を行っております。そのために社外との共同研究の積極的な推進と、得られた成果の着実な固有化(特許化)を進展させて研究開発活動を活発に進めております。
 2024年3月31日現在の保有特許件数(実用新案含む)は、国内外を含めて715件、当連結会計年度において出願した特許件数(実用新案含む)は国内外を含めて36件であります。
 また、総合研究所内に「全社デジタル技術活用の推進」および「環境技術の導入・評価」を目的とした専門部署を発足させ、全社的・長期的視点での取り組みを強化しております。

 なお、当連結会計年度に支出した研究開発費は2,825百万円であります。

 セグメント別の当連結会計年度における研究開発の概要は次のとおりであります。

 

(1) 原繊材事業

 ヤーン、ロービング、チョップドストランド並びにチョップドストランドマット等のグラスファイバー原繊製品の研究・新商品開発に取り組んでまいりました。

 『Tガラス』、『NEガラス』、『NER®ガラス』、および『NEZTMガラス』等の先端的なガラス組成開発や、異形断面ファイバーなど独自の繊維化技術開発、顧客ニーズを先取りする新規バインダー開発などにより、新市場の創造や顧客の潜在的ニーズを刺激する高付加価値商品の拡充を積極的に推進しております。特に、5Gの実現によって成長が見込まれる次世代通信システム向け高機能グラスファイバーの研究・商品開発に取り組んでおります。また、ガラス組成・ガラス繊維形状、バインダー技術を掛け合わせた『NEガラス・異形断面ファイバー』など、最先端の先進的スペシャルガラスの商品開発を強力に推し進めております。更には、「地球環境に貢献する企業」として、環境への負荷低減(CO2削減)や省エネルギー化を推進するため、ガラス溶融技術の革新に取り組んでおります。

 当事業に係る研究開発費は733百万円であります。

 

(2) 機能材事業

 電子材料用途並びに産業資材用途のガラスクロス製品等の研究開発に取り組んでまいりました。

 電子材料用途では半導体パッケージの薄型化に対応するため、極細ファイバーの製織技術と独自の表面処理・開繊技術による高性能な超極薄クロスの開発と改良を推進しております。また、高強度、低熱膨張、高周波対応など多様で高度化する顧客ニーズを先取りした『Tガラス』クロス、『NEガラス』クロス、『NER®ガラス』クロス、および『NEZTMガラス』クロスなど、材料特性を活かした先端的な機能材料を創出し提案してまいります。

 当事業に係る研究開発費は728百万円であります。

 

(3) 設備材事業

 産業資材用途・建築土木用途のグラスファイバー製品とグラスウール製品の研究開発に取り組んでまいりました。

 グラスファイバー製品では遮熱性能を向上させたロールブラインド『遮熱ベールスクリーン』や国内外の大型スタジアム等の膜構造建造物用途の不燃膜材の開発と改良を推進しております。更には、「地球環境に貢献する企業」として、環境への負荷低減・省エネルギー分野へ適合可能な産業資材製品の開発に取り組んでおります。

 グラスウール製品では省エネルギーに貢献するため断熱性能の向上を目指した製品の拡充と開発を推進しております。軽くて高性能な住宅用グラスウール断熱材『ハウスロンZERO』は好評を頂いております。

 当事業に係る研究開発費は189百万円であります。

 

(4) ライフサイエンス事業

 メディカル事業では、外部研究機関との共同研究を積極的にすすめ、免疫血清学系の体外診断薬製品の改良開発に加え、新たな高付加価値製品の上市を目指して国内外の研究開発を展開しております。特に、高感度ラテックス試薬開発、遺伝子組換えカイコを用いた有用タンパク質開発に注力しております。今後も引き続き医療に貢献する製品の開発に努めてまいります。

 スペシャリティケミカルス事業では、メディカル関連分野や電子材料分野への品種の拡充と、既存の製品に続く新機能商品の開発に取り組んでまいりました。より高収益な事業体質の確立を目指し新たな技術開発を推進しております。

 当事業に係る研究開発費は715百万円であります。

 

(5) 繊維事業

 当社固有の接着加工技術をベースとした機能化ドットコーティング「D-ALIGN®」の性能向上、顧客ニーズにマッチした商品開発を進めてまいりました。

 接着芯地及び裏材については、世界的な環境意識の高まりに対応すべく、リサイクル糸を使用した商品ラインナップの拡充を進めると共に、生分解性芯地の開発を推進しています。

 また、グラスファイバー部門、総合研究所との連携による、ガラスクロスへドット加工の研究開発を推進し、産業資材用途への展開を進めています。

 当事業に係る研究開発費は80百万円であります。

 

(6) 本部

 総合研究所の運営費用の中で、企画・管理業務と将来の柱となる事業を担う基盤技術や先端技術の獲得を目指した研究開発活動の費用については、各事業セグメントに帰属させておりません。

 本運営に係る研究開発費は377百万円であります。