第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針・経営戦略等

当社グループは、事業変革と再編を柱とした「変革の設計図」に基づき、「無線・通信事業の構造改革」、「マイクロデバイス事業の構造改革」、「マテリアル事業への対処」に取り組んでおります。

無線・通信事業の構造改革では、日本無線グループの組織再編を推進しており、コア事業の強化・拡大によるオーガニック・グロースを図ります。さらに、プラットフォームを活用した事業機会の拡大やEDMS(Electronics Design and Manufacturing Service)事業の構築により成長を加速させます。日本無線グループと国際電気グループが両輪となり、ソリューションを通じて人びとの安心・安全を提供し、社会に貢献する「無線通信トータルエンジニアリングカンパニー」を目指します。

マイクロデバイス事業の構造改革では、早期退職優遇制度の導入による固定費削減を実施し、抜本的に事業内容と構造を見直してまいります。収益性の改善を最優先課題としつつ、半導体事業の将来像をゼロリセットで描き直します。

マテリアル事業への対処では「Sustainable Smart Materials」を新コンセプトとして、従来の繊維・化学・摩擦材などの基盤技術を活かしつつ、脱炭素や電動化、通信、再生可能エネルギーなど成長分野に直結するエレクトロニクス向けの機能性素材へ軸足を移します。

さらに、次なる成長の柱および収益源の創造を目指し、新たな研究開発体制としてフューチャー・イノベーション本部を設立しました。これにより、無線・通信技術を軸とした新規ビジネスモデルの創出を加速させてまいります。

これら「変革の設計図」に基づき、稼ぐ力を取り戻し、日清紡グループの変革を実現してまいります。

 

(2)2030年の目指す姿

当社は、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応として、2024年2月に「中期経営計画2026」を公表しましたが、その後、事業環境等の前提条件が大きく変化したことを踏まえ、2026年2月に「目指す姿の実現に向けた礎を築く ~変革と成長への設計図~」を改めて公表しました。2030年の目指す姿として「無線通信トータルエンジニアリングカンパニー」を掲げ、収益力の向上と成長戦略の推進を通じて企業価値の向上を図る方針を明確にしています。具体的には、①稼ぐ力の向上、②「設計図」に基づく成長戦略の推進により無線・通信事業における売上高3,000億円、営業利益300億円の実現、③営業利益率10%以上を基準とした事業ポートフォリオ改革の推進に取り組んでまいります。

 


 

(3)設計図の概要

目指す姿を実現するための設計図の概要は以下のとおりです。

 


 


 

 


 


 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)ガバナンス

当社グループは、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のコーポレート・ガバナンス体制及びリスク管理体制を構築しています。取締役会は、サステナビリティに関連するリスク及び機会についても、このコーポレート・ガバナンス体制の中で監視及び管理等の統制を行っています。

 

(2)戦略

当社グループでは2008年度より「CSR計画」を策定し、2016年度からKPIを定めて活動を進めてきました。また、2022年度からは「サステナビリティ推進計画」と名称を改め、社会と事業のサステナビリティの実現を目指し全従業員が目標達成に向けて活動しています。2024年10月に、「第6期サステナビリティ推進計画(2025~2027年度)」を策定するとともに、中期環境目標(達成年度2030年度)の4項目の内、2024年度末時点で達成が見込まれた「温室効果ガス(GHG)排出量の削減」と「売上当たりの水使用量の削減」のKPIを上方修正しました。「第6期サステナビリティ推進計画」の社会分野の目標については、外部からの要求に対応するため、活動の充実を目指して取り組みを見直し、主に目標の拡充とKPIの引き上げを実施しました。また、環境分野の目標については、中期環境目標の達成に向けたマイルストーンとして、取り組みは第5期の内容を踏襲し、KPIの引き上げを実施しました。

 

①経営基盤強化(サステナビリティ全般)

2025年12月31日時点における経営基盤強化(サステナビリティ全般)に関する戦略として、次の5つの重要テーマを設定しています。

●人権の尊重

●環境負荷に配慮したビジネスの展開

●人財マネジメントと育成

●コーポレート・ガバナンスの実効性向上

●責任あるサプライチェーンの構築

 

それぞれの重要テーマに関する基本的な考え方は次の通りです。

●人権の尊重

当社グループでは人権を「人びとがそれぞれの多様な選択において豊かな人生を歩むことができる権利」と考えています。企業には、この権利を守るため、人びとがそれぞれの思う幸せを目指して選択する機会を保障する責務があります。当社グループは、人びとの安全で安心な生活環境を守る製品・技術・サービスを提供することで、今を生きる自分も含めた人びと、そして特にこれからを生きる子どもたちがそれぞれ幸せで豊かな人生を送ることができる「ウェルビーイング」な社会の実現を目指しています。

 

●環境負荷に配慮したビジネスの展開

当社グループは、企業理念「挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。」の具現化を通して、従業員の多様性を重視しながら団結を進め企業価値の向上を目指しています。行動指針に「環境負荷への認識と配慮」を掲げ、環境行動について深く理解し、積極的に実践・行動しています。環境保全、省エネルギー、代替エネルギーを実現する新製品やシステム提案はもとより、環境破壊や気候変動による災害など人間社会が直面する課題に対してもソリューションを提供し、安全かつ安心な暮らしに貢献していきます。

 

●人財マネジメントと育成

当社グループは多様な事業を展開しており、各社各様の人事戦略を実行していますが、グループ共通の目指す姿として、長期人事戦略「Long-Term Vision」を策定しました。当社グループの従業員が2030年に目指す姿として、「全ての従業員が変化を楽しみ、高い目標に果敢に挑む」を掲げています。そのマインドと行動が“「挑戦と変革」の実践による継続的な価値”を生み、事業戦略の実現と利益創出、更には事業活動を通じた社会貢献(地球と人びとの未来を創る)につながると考えています。

 

●コーポレート・ガバナンスの実効性向上

当社グループは、グローバル経営とキャッシュフロー経営をベースに、コーポレート・ガバナンスなど組織文化の質的向上と、ROE重視の収益力向上や株価重視の経営など数値・業績面の量的成長を並行して実現しつつ、企業価値を中長期的に高めていくことが必要であると考えています。経営判断の原則を踏まえたリスクテイクのもと、迅速・果断な意思決定により、経営の効率性向上と透明性確保の両立、説明責任の強化、企業倫理の徹底を図り、企業理念に立脚したコーポレート・ガバナンスの確立に取り組みます。

 

●責任あるサプライチェーンの構築

当社グループは、行動指針に「コンプライアンスの徹底」、「公正かつ透明な取引」を掲げ、社会的ルール・企業倫理など広い範囲において常に公正で誠実に行動すること、および、健全な取引関係を通じた対等なパートナーとしてサプライヤーさまを尊重することを定めており、サプライチェーン全体でサステナブルな取引を目指しています。

当社グループのサプライチェーン全体でサステナビリティに取り組むため、その基本となる考えを法令遵守、公正取引、情報セキュリティ、環境保全、人権、安全衛生、品質・安全などの側面からまとめた「日清紡グループ サステナブル調達基本方針」を2015年に制定しました。近年の社会的要請に応じた見直しを行い、2024年に基本方針を改定し、同時に「日清紡グループ サステナブル調達ガイドライン」を制定しました。

当社グループの基本方針とガイドラインをサプライヤーさまにご理解いただきながら、サステナブル調達の取り組みを推進しています。

 

なお、重要テーマごとの主な取り組みについては、(4)指標及び目標に記載の通りです。

 

 

②気候変動対策

2025年12月31日時点における気候変動対策に関する戦略は次のとおりです。

 

●TNFD対応の概要

日清紡グループでは、自然関連課題による事業機会の取り込みおよびリスクへの適切な対応を行うことが重要と考え、2024年度より、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言に準じたリスク評価を実施しています。

自然関連課題の分析評価は、今後計画的に分析対象範囲の拡大、シナリオ分析等を実施し、分析の高度化を図ることを予定しています。また、今般の分析で特定された自然関連リスクについての対応策の検討、追加的な目標、管理指標の設定を検討する予定です。

日清紡グループでは、TNFDに基づくリスク評価を通して、自然関連課題が将来、日清紡グループに及ぼすリスクや機会を特定し、事業戦略の策定に活かすことで、より柔軟で堅牢な戦略を立案し、将来のリスクに対するレジリエンスを高めていきます。

 

●ガバナンス

日清紡グループでは、自然に関するリスク・機会に適切に対応するため、ガバナンス体制の中で仕組みを整備し運営しています。自然関連課題の責任は社長、執行役員で構成される経営戦略会議などの会議体が負い、自然関連課題への対応について議論するとともに、目標とその進捗状況を監督しています。その内容は適時取締役会に報告されています。

 

●リスクと影響の管理

日清紡グループは、重要な自然関連課題の依存・影響、およびリスクを特定するため、2024年度より無線・通信事業、ブレーキ事業、化学品事業、マイクロデバイス事業、精密機器事業、繊維事業の6事業を対象として、以下のステップで分析を行いました。

自然関連リスクの評価における第1ステップとして、分析対象とした事業による自然に対する依存と影響を、自然リスク評価ツールENCORE※により評価しました。次に分析対象とする原材料を選定した上で、事業に関連するバリューチェーン全体のリスク調査および評価を行いました。これらの評価結果を踏まえ、日清紡グループにおける自然関連リスクの重要課題を特定しました。特定した重要課題に対しては、日清紡グループの製造拠点の周辺および、バリューチェーンの上流における潜在的なリスクの懸念のある地域を分析しました。潜在的なリスクの懸念のある地域の分析に関する詳細は、「戦略」をご確認ください。

※ 国際金融業界団体NCFAや国連環境計画 世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCSC)が、自然関連リスクに関するさまざまな既存ツールの結果を一括で評価できるよう開発したツール。

 


 

 

●戦略

概要

日清紡グループは事業が多岐にわたるため、事業規模等を考慮し、2024年度は対象事業のバリューチェーンにおける重要な自然関連の依存、影響、リスク、機会等を分析しました。分析にあたっては国連環境計画が提供している自然リスク評価ツールなども使用しています。

なお、TNFDのフレームワークでは、先住民や地域コミュニティが自然環境の重要な権利者であると位置づけられており、自然そのものに加え、権利者の人権への配慮も重要とされています。

 

1. 自然資本への依存と影響の把握

TNFDの分類を参照し、事業別に上流・下流を含むバリューチェーン上における潜在的な依存と影響の内容について、分析を実施しました。分析にあたっては自然リスク評価ツールENCOREを使用しました。

 


 


 

2. 自然関連課題が事業に影響しうるリスク

TNFDにおける自然関連リスク分類を参照し、日清紡グループの事業に影響を及ぼしうる自然関連のリスクと機会を検討しました。検討にあたってはバリューチェーン上の上流、直接操業、下流それぞれにおいて、どのようなリスク、機会があるかを調査しました。

なお、今回の分析においては、初期的な分析として、リスクの分析に焦点を当てて実施しています。今後は、今回特定されたリスクをベースにシナリオ分析などを実施し、日清紡グループにとってのリスクをより詳細に分析していくとともに、機会についても検討を進めていきます。

 


 

3. 自然関連の重要課題

依存と影響、リスクと機会に関する調査・分析結果を踏まえて、外部ステークホルダーの関心を表す「自然リスク評価ツールENCOREを用いた依存と影響の評価結果」を縦軸に反映し、リスクが事業に与える影響度の評価結果を「事業との関係性」として横軸に反映して、2軸でマテリアリティマップを整理しました。マテリアリティマップから、「水・土壌・大気汚染」、「生態系の改変」、「水の利用」の3つを日清紡グループにおける自然関連の重要課題として特定しました。

「水・土壌・大気汚染」、「生態系の改変」については特に分析対象の事業で使用される原材料の調達において、依存、影響、リスクの面で強い関連性があると特定しています。また、「水の利用」についてはマイクロデバイス事業の半導体製造や繊維事業の綿花調達において強い関連性があると特定しています。

 


 

 

4. 潜在的なリスクの懸念のある地域の分析

日清紡グループの直接操業、バリューチェーン上流における企業活動が、特定された重要課題に関してセンシティブな場所に位置しているかを評価しました。直接操業については日清紡グループの国内外68拠点について、バリューチェーン上流は主要な鉱物資源および綿花について分析し、潜在的なリスクの懸念のある地域を特定しました。

各バリューチェーンの関連する重要課題や原材料に応じて評価拠点や使用ツールを選択し、地域ごとの潜在的なリスクの懸念の有無を識別しています。

 

バリューチェーンごとの関連する課題や原材料に応じた地域性分析の手法

バリュー

チェーン

関連する重要課題

関連する原材料

地域性分析の手法

上流

水・土壌・大気汚染※

主要な鉱物

・評価拠点:原産国における鉱山、製錬所
・使用ツール:IBAT/Water Risk Filter 等
・評価方法:拠点周辺の水質が高い、かつ生物多様性重要地域の有無を評価

上流

水・土壌・大気汚染※

農作物(綿花)

・評価拠点:綿花の生産地域
・使用ツール:IBAT/Water Risk Filter 等
・評価方法:拠点周辺の水質が高い、かつ生物多様性重要地域の有無を評価

上流

生態系の改変

主要な鉱物

・評価拠点:原産国における鉱山
・使用ツール:IBAT/Global Forest Watch 等
・評価方法:鉱山周辺で森林破壊が進行している、または生物多様性重要地域の有無を評価

上流

生態系の改変

農作物(綿花)

・評価拠点:綿花の生産地域
・使用ツール:IBAT 等
・評価方法:生産拠点周辺の生物多様性重要地域の有無を評価

上流

水の利用

農作物(綿花)

・評価拠点:綿花の生産地域
・使用ツール:Aqueduct 等
・評価方法:事業拠点流域における水資源量に対する取水量の割合を評価

直接操業

水・土壌・大気汚染※

すべて

・評価拠点:当社グループ拠点
・使用ツール:IBAT/Water Risk Filter 等
・評価方法:拠点周辺の水質が高い、かつ生物多様性重要地域の有無を評価

直接操業

水の利用

すべて

・評価拠点:当社グループ拠点
・使用ツール:Aqueduct 等
・評価方法:事業拠点流域における水資源量に対する取水量の割合を評価

※ 製造業における直接操業(工場・研究所等)、バリューチェーン上流の鉱物資源の採掘、農作物の栽培の汚染関連の影響では特に水質汚染が問題となるため、優先地域の分析においては水質汚染に関する分析に絞って実施

 

 

 

分析結果(バリューチェーン上流)

バリューチェーン上流の原材料の調達では、主要な鉱物資源および綿花を対象に分析を実施しました。

主要な鉱物資源については、一部で貿易統計情報による推定も用いつつ、バリューチェーン上流の資源調達国およびその主要鉱山(水質汚染については製錬所も含む)を推定し、資源調達国の「生態系の改変」、「水質汚染」について分析を実施しました。

結果、中国、オーストラリア、カナダ、ブラジル、ギニア、スウェーデンの各国の一部地域において、「生態系の改変」と「水質汚染」の双方の潜在的なリスクの懸念が、インド、インドネシアおよびジャマイカの一部地域において、「生態系改変」の潜在的リスクの懸念が確認されました。

なお、鉱物資源のうち、金については産出国によっては小規模に分散して採掘している特徴も見られ、そのような場合は調達先の国レベルでの分析としています。金に関しては、中国、ロシア、ガーナ、カザフスタン、コロンビアの各国において国内各地で広く「生態系改変」、「水質汚染」の潜在的なリスクの懸念が確認されました。また、オーストラリアおよびカナダの一部の鉱山で「生態系改変」、「水質汚染」の潜在的なリスクの懸念が確認されました。加えて、メキシコの一部の鉱山で「生態系改変」の潜在的なリスクの懸念が確認されています。

綿花については、主要な調達先である3カ国(アメリカ、ブラジル、オーストラリア)のいくつかの州の一部(アメリカ:カリフォルニア州、テネシー州の一部、オーストラリア:クイーンズランド州の一部、ブラジル:マットグロッソ州、バイーア州、ゴイアス州の一部)で栽培に伴う「生態系の改変」、「水質汚染」、「水の利用」の各テーマで潜在的なリスクの懸念がある地域が確認されています。

 

分析結果(直接操業)

「水質汚染」および「水の利用」に関して、日清紡グループの国内外直接操業拠点68カ所から潜在的なリスクの懸念がある拠点を特定しました。

「水質汚染」については東アジアの2拠点、「水の利用」に関しては東アジア、東南アジアを中心に16拠点で潜在的なリスクの懸念がある拠点が確認されています。

 

●指標と目標

指標

日清紡グループでは、自然関連の事業機会の取り込みとリスクの低減を目指しています。自然関連リスクを低減するため、温室効果ガス排出量や、温室効果ガス以外の大気汚染物質の排出量、水使用量、生物多様性保全活動の実施の指標を設定し、自然関連課題に対する対応策を推進しています。今後、自然関連課題の分析結果を踏まえ、TNFDに基づく指標の開示を準備していきます。

 

目標

日清紡グループは、企業理念を実現するために提供する価値・姿勢を定めているVALUEの一つとして、「地球環境にやさしい製品やサービスを提供し、すべての人びとにとって安心・安全な社会を誠実に実現」することを掲げています。また、「行動指針」に「環境負荷への認識と配慮」を掲げています。生物多様性保護への認識を深め、生物多様性保全活動を推進するため、日清紡グループの環境目標・KPIに温室効果ガス排出量削減、水使用量の削減、生物多様性保全活動の強化を掲げ、計画的に対策を講じています。

2024年度を達成年度とする「第5期サステナビリティ推進計画」における活動状況と実績を基に目標・KPIの見直しを行い、2027年度を達成年度とする「第6期サステナビリティ推進計画」の活動を2025年度よりスタートしました。

 

 

③人的資本・多様性への取組

2025年12月31日時点における人的資本・多様性への取組に関する戦略は次のとおりです。

 

人財育成

●経営幹部後継者の育成

・選抜型のリーダーシップ開発プログラム

目指す人物像を、顧客価値創造をリードする「共創型リーダー」に設定し、選抜型リーダーシップ開発プログラムを実施しています。

①アドバンス(執行役員級)、エグゼクティブ(本部長・部長級)プログラム

アドバンス(執行役員級)では、経営知識・マインド・役割行動を習得する選経営学講座・実践実学講座等を実施しています。

エグゼクティブ(本部長・部長級)では、経営学講座・実践実学講座に加え、技術知識と経営能力を兼ね備えた経営人財を育成するために技術経営大学院(MOT)や事業創出力・突破力を習得する実践型ワークショップを実施しています。

これらは、グループ共通のグローバルジョブグレードによる主要ポストの後継者候補リストを毎年作成するとともに、グレード及び後継者候補リストとプログラム受講を関連づけて実施しています。

②ミドル(課長級)、ベーシック(次世代リーダー層)プログラム

これらの下の層では各社推薦でミドル、ベーシックのプログラムも実施しています。ミドル(課長級)では、マネジメントプログラム、財務リーダーシッププログラム、マーケティングを社外派遣で実施、社内では事業力強化ワークショップを実施しています。そしてベーシック(次世代リーダー層)では、リーダーシッププログラムを実施しています。

 

優秀な人財の採用・定着

●優秀な人財の獲得および活躍促進

ビジネス環境が急速に変化する現代において、当社グループでは、従業員一人ひとりのスキルや専門性、経験を最大限に活かしながら、事業環境の変化や事業計画に即時に対応できる柔軟かつ戦略的な人財運営を目指しています。各事業・各職種に必要な経験・スキル・能力を明確に定義し、これらに基づいた採用・配置・育成をグループ横断的にすることで人財価値を最大化し、市場での競争優位性を確保してまいります。

人員年齢構成是正に向け、新卒に加えキャリア採用を強化しています。多様性の確保のために特に女性、外国人については積極的求人活動を実施したほか、優秀なキャリア採用者の獲得および活躍促進のため、以下の施策を実施しています。

① 採用競争力のある給与水準の維持

② 職務内容を明確にする役割等級制度

③ 勤務年数にかかわらず早期昇格を可能とする人事制度

④ さまざまな働き方や職業観に対応する複線型人事制度

⑤ テレワーク制度やサテライトオフィスなど働く環境の整備

⑥ キャリア採用者受入れ教育の充実とフォロー

⑦ 社員の知人などを紹介する社員紹介制度(リファラル制度)

⑧ 自己都合退職者に対しての再入社制度(リジョイン制度)

⑨ 勤続5年ごとに休暇と手当を支給する制度(ディスカバリー休暇制度)

 

 

ダイバーシティ&インクルージョン

エンゲージメントサーベイを活用した職場環境づくり

当社グループでは、価値観や行動のアップデートを当たり前とし、誰もがいきいきと自分らしく活躍できる組織を目指しています。その実現に向けて、①組織の状態、②個人の状態、③環境や制度の3つの観点から取り組みを進めています。そして進捗を確認するため、エンゲージメントサーベイを実施し、スコアや自由記述コメントから現状を分析し、継続的に風土改善活動を進めてまいります。

各社のトップとメンバーが一体となって取り組むため、各社にはサーベイ担当者を配置し、取り組み事例をグループ全体で共有しています。さらに、2022年より開始した心理的安全性に関する教育を継続的に実施し、全社員に共通の認識を浸透させていきます。

 

●ジェンダーギャップの解消(女性リーダー育成プログラムの実施)

女性活躍推進に関する課題を明確にするために女性社員とその上司に対してヒアリングを行ったところ、主に次の3つの課題が挙がりました。①経験を積むことと個別育成、②ロールモデルやパーツモデルの提示、③女性同士を繋ぐ社内ネットワークの充実です。

これらの課題に対処するため、当社では、早い段階からの育成と経験を積ませる取り組みを進めています。具体的には、管理職候補層や次世代層、さらには後輩を指導する立場の層に対して、「女性リーダー育成プログラム」を2023年から実施しました。プログラム終了後には、受講者の行動変容について上司にアンケートを実施し、昇格推薦状況や上司へのヒアリングを行い、その効果を確認しています。

 

●ジェンダーギャップの解消(管理職向け研修の実施)

今後は管理職向けアンコンシャスバイアスに気付き、適切に対応できるようにするための研修や多様な人財を活かすためのマネジメント力強化を目的とした研修を導入してまいります。

その他、持続可能な環境づくりのために、多様な人財が活躍できる制度の整備や健康増進策、風土改善活動など、全体的な取り組みも進めています。

これらの施策により、ロールモデルが増え、その下の世代の女性の活躍が広がり、将来的にはジェンダーギャップの解消に繋がると考えています。

 

●自律的なキャリア形成のサポート(多様なキャリア観のサポート)

一人ひとりが自分自身の弱みを克服し強みを強化することで、自分らしく力を発揮できるようになること、そして自律的に成長し続けられるようになることを目指し、諸施策を講じています。例えば、30代及び50代までの年代別キャリア研修を行い、キャリアを見つめ直しながら、前向きに成長していけるようなマインドを育む機会を提供しています。

また、キャリア相談窓口を設け、相談しやすい環境を整えているほか、異動の機会を広げるためにグループ公募制や自己申告制度があり、さらに社員の成長を支援する仕組みとして、メンター制度やキャリア面談を実施しています。そして自律的な学びをサポートするため、多様な学習コンテンツをいつでもどこでも受講することができるラーニングマネジメントシステムのメニューの拡充も進めています。

 

●多様な働き方の実現

当社グループは、多様性を尊重し一人ひとりの持つ個性と能力を活かして生産性の向上、働き甲斐の実感につなげるよう働き方改革を推進しています。テレワーク制度、フレックス制度や時差出勤制度により柔軟な働き方が可能となる制度の活用を促進しています。

当社において2025年度の男性育児休業取得率は100%でした。今後も取得率100%継続を目標にして関連制度の社内周知や職場の上司や同僚の理解を促進する活動をグループ全体で取り組んで参ります。

 

 

(3)リスク管理

当社グループのサステナビリティ全般、気候変動対策、人的資本・多様性への取組に関するマテリアリティ、主要なリスク、リスクの内容、リスクへの対応については、「3 事業等のリスク (マテリアリティと関連する主要なリスクと機会および対応)」に記載しています。

 

(4)指標及び目標

2025年12月31日時点における指標及び目標は次のとおりです。

①サステナビリティ全般及び気候変動対策

サステナビリティ全般及び気候変動対策に関する指標及び目標については、以下「a.第5期サステナビリティ推進計画の達成状況及び第6期サステナビリティ推進計画の目標」の重点活動項目のうち、環境・エネルギー分野の貢献:環境経営の推進、安全・安心な社会づくり:サステナブル調達の推進、労働安全衛生活動の推進、社員の健康づくり、品質・顧客満足度向上、社会貢献活動の展開、グローバル・コンプライアンス:グループ企業理念の実践、コンプライアンスの徹底、リスクマネジメント活動の推進、情報セキュリティ対策の強化、並びに以下「b.温室効果ガス排出量」に記載しています。

②人的資本・多様性への取組

人的資本・多様性への取組に関する指標及び目標については、以下「a.第5期サステナビリティ推進計画の達成状況及び第6期サステナビリティ推進計画の目標」の重点活動項目のうち、安全・安心な社会づくり:人権の尊重、人財獲得・育成、エンゲージメント、ダイバーシティの推進に記載しています。

 

a.第5期サステナビリティ推進計画の達成状況及び第6期サステナビリティ推進計画の目標


 



 

 

b.温室効果ガス排出量


 


(注)2025年度実績は集計中のため、2024年度実績を記載しています。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(リスクマネジメント体制)

当社グループは、事業遂行上の経営リスクに対し適切に対応し経営リスク発生時の損失をミニマイズするために、リスクマネジメント体制を定め運営しています。

当社取締役社長をリスクマネジメントの最高責任者とし、最高責任者は統括責任者を当社の執行役員の中から任命し、現在は当社リスクマネジメント室担当執行役員がその任にあたっています。リスクマネジメント事務局はリスクマネジメント室に置いています。

リスクマネジメント委員会は、最高責任者と統括責任者と各中核会社の社長を含むメンバーなどで構成され、毎年1月に開催されます。委員会では前年度レビューの報告と新年度の計画策定(各事業などの重点管理リスク)の審議が行われます。

 

リスクマネジメント体制図


 

 

(マテリアリティと関連する主要なリスクと機会および対応)

ESG:E環境への取り組み

マテリアリティ:環境・エネルギー分野の貢献

主要なリスク・機会

リスクの内容

機会の内容

リスク・機会への対応

気候変動

・炭素課税による原料調達コストや製造コスト増加

・納入先からの温室効果ガス削減要請対応に伴うエネルギーコストの増加

・洪水による物的損傷・休業損失の発生に伴うコスト増加

・EV、新エネルギー車、スマートモビリティ、燃料電池関連製品の需要増加

・省エネ対応の半導体、電子デバイス関連製品の売上拡大

・洪水リスクの増加による防災製品・サービスの需要増加

・TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に準じた気候変動シナリオ分析の実施

・温室効果ガス排出量削減、省エネによる炭素税回避とエネルギーコストの削減

・洪水による物的損傷・休業損失の未然防止・緩和

・EV関連製品の開発・製造の拡大

・省エネ関連製品(半導体、電子デバイス関連製品など)需要の取り込み

・防災用ミリ波レーダ水位計の開発・製造、防錆製品・サービス需要の取り込み

生物資源

・原材料や農作物の価格高騰による調達コスト増加

・原材料や農作物の安定供給不安

・環境保全、生物多様性保全に配慮した製品・サービスの需要増加

・TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言に準じた自然関連課題に関する影響評価の実施

・環境保全、生物多様性保全に配慮した製品・サービスの需要取り込み

水資源

・水不足による製造工程への影響

・節水による製造コスト減少

・節水と水の循環利用促進

 

 

ESG:S社会への取り組み

マテリアリティ:安心・安全な社会づくり

主要なリスク・機会

リスクの内容

機会の内容

リスク・機会への対応

人権問題

・人権への配慮欠如によるステークホルダーからの信頼喪失、操業の継続性への影響

・ハラスメントをはじめとする人権問題の発生による労働環境の悪化

・人権方針の策定、人権リスクの高い分野への人権デューデリジェンスの導入・促進

・当社の人権啓発グループ主導による活動実施

・「日清紡グループサステナブル調達基本方針」や「サステナブル調達ガイドライン」に基本的人権の配慮や児童労働の禁止などを明記し、サプライチェーンにおける人権尊重を徹底

人財

・労働力人口の減少による人財不足

・業務のミスマッチなどによるモチベーション低下や人財流出

・人員年齢構成の偏りによる事業推進の停滞

・若年層に広まるESG志向と当社の企業理念は方向性一致、人財獲得の機会拡大

・企業認知度・好感度向上のための戦略的広報活動

・キャリア採用の強化

・キャリアサポートや社内公募制度による人財定着

・研修体系の整備やeラーニングメニューの拡充による人材育成

・後継者育成プログラムの実施

労働災害

・教育訓練不足による労働災害の発生

・労働災害・事故の発生によるステークホルダーからの信頼低下

・リスクアセスメントの実施

・グループ横断的な教育訓練と災害事例の共有

品質

・製品やサービスの品質問題や欠陥などによる信頼の低下、損害賠償請求やリコール発生

・リスクマネジメントシステムを活用し、リスクの発生確率と影響度をミニマイズ

・当社に品質保証グループを設置、グループ会社の品質保証や製品安全活動の状況を包括的に管理

 

 

 

ESG:Gコーポレート・ガバナンス

マテリアリティ:グローバル・コンプライアンス

主要なリスク・機会

リスクの内容

機会の内容

リスク・機会への対応

グループ経営

・M&A等の失敗による経営への影響

・事業間での機能の重複による経営効率の低下

・事業/組織の融合により、イノベーションや環境変化に対するレジリエンスなど多様性の有する強みを創出

・M&A業務に関する手順書の策定、共有

・グループを横断する組織再編やアウトソーシングなどにより効率化を推進

経営管理

・コーポレート・ガバナンス、内部統制の機能不全に伴う事業継続リスク

・攻守の調和したガバナンスによるリスクテイク

・積極的なガバナンス改革による経営の透明性向上と果敢なリスクテイクの高次元での両立を図る

コンプライアンス

・贈収賄、競争法違反をはじめとして法令違反や社会規範を逸脱した企業行動による信頼低下と企業価値の毀損

・コンプライアンス教育を継続的に実施

・不正行為は厳罰をもって処分

不正/不法行為

・粉飾や不正経理操作など

・内部統制制度と倫理通報制度の両輪の運用により不正行為を防止

・定期的なローテーションによる不正行為防止

情報セキュリティ

・個人情報や顧客情報、営業秘密の漏えい

・サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん、データの破壊、紛失、漏えいなどの被害等が発生した場合による事業への影響

・継続的教育と運営状況の内部監査を毎年実施

・サイバーセキュリティ対策においては、多層防御を行いつつ、必要な対策を実施

 

 

その他

主要なリスク・機会

リスクの内容

機会の内容

リスク・機会への対応

地政学

・地政学上のリスクが事業に与える影響

・カントリーリスクなどを考慮し、国/地域別の適切な投資レベルを決定

製品市場・為替相場・原材料価格の変動

・景気変動による製品市場の需給バランスの変化

・原材料価格の乱高下が業績に与える影響

・為替変動が業績に与える影響

・製品/サービスに対する各国法規制の変更や制度改革などの影響

・属性の異なる多様な事業展開により、急激な外部環境の変化による業績への影響を軽減

・複数のサプライヤーとの信頼関係構築

・為替予約などにより為替変動リスクのミニマイズ化

・各国・地域の事業拠点によるリスク情報収集と経営層へのフィードバック

感染症

・新型コロナウイルスのような未知の感染症のパンデミックによる業績への影響

・緊急事態対策チームを組成、情報の集約と発信により適切な経営判断をサポート

急速な技術革新

・技術革新による既存市場の急激な変化

・技術開発あるいは製品開発プランの進捗遅延による競争力低下

・経営陣が研究開発案件を定期的に検証し、継続/中止を適時判断

レピュテーション

・マスコミの誤報や風説の流布、ネット上の風説による事業への影響

・投資家のダイベストメントの対象に浮上

・リスクマネジメントの対象に位置付け定常的に監視

・主要なESG投資家やESGインデックスリサーチ会社と継続的に情報交換、動向を把握

政策保有株式/不動産

・時価の変動リスク

・政策保有株式は、コーポレートガバナンス・ポリシーに基づき継続的に縮減

・不動産は計画的に分譲

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号 2022年10月28日。)等を当連結会計年度の期首から適用しています。本項に記載の前連結会計年度との比較・分析にあたっては、当該会計基準等を遡って適用した後の数値を用いています。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載の通りです。

また、2024年11月28日に取得したARGONICS GMBH及びその子会社のARGONAV GMBHとの企業結合について、前連結会計年度において暫定的な会計処理を行っていましたが、当連結会計年度に確定しています。本項に記載の前連結会計年度との比較・分析にあたっては、当該企業結合についての暫定的な会計処理の確定による見直し後の数値を用いています。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載の通りです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営成績

当連結会計年度の当社グループの売上高は、無線・通信事業の需要拡大が全体を牽引したことで増収となり502,339百万円(前年同期比7,593百万円増1.5%増)となりました。

営業利益は、無線・通信事業の大幅な増益が寄与し26,401百万円(前年同期比9,820百万円増59.2%増)となり、経常利益は29,327百万円(前年同期比4,924百万円増20.2%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は13,920百万円(前年同期比3,642百万円増35.4%増)となりました。

事業セグメントの業績は下記のとおりです。セグメント利益またはセグメント損失は営業利益または営業損失ベースの数値です。

 

(無線・通信事業)

無線・通信事業は、増収・大幅増益となりました。

日本無線グループの主な概況は次のとおりです。ソリューション事業は、更新需要による自治体向け防災システムの受注増に加え、費用削減効果等により増収・増益となりました。

特機事業は、国家戦略に基づく防衛力整備計画の基本方針を背景とした防衛省向け装置やメンテナンス用機材の受注増等により増収・増益となりました。

マリンシステム事業は、商船新造船用機器に加え、商船換装用機器や保守サービス等のアフターマーケット向けの受注が好調に推移したことで増収・増益となりました。

モビリティ事業は、レピータ(携帯電話中継装置)が仕様変更や工期遅延等の影響で受注減となったことに加え、海外向け業務用無線も振るわず、減収・損益悪化となりました。

国際電気グループは、携帯電話キャリア向け製品や自治体向け防災行政無線の受注増等により増収・大幅増益となりました。

その結果、無線・通信事業全体では、売上高251,837百万円(前年同期比7.4%増)、セグメント利益17,668百万円(前年同期比133.2%増)となりました。

 

(マイクロデバイス事業)

マイクロデバイス事業は、減収でしたが不採算製品の販売縮小や固定費削減等により損失縮小となりました。

電子デバイス事業の主な概況は次のとおりです。産機製品は、国内OA機器用製品の受注増等により増収となりました。民生品(コンシューマ製品)は、アミューズメント関連やスマートフォン関連を除き低調に推移したことで減収となりました。車載製品も、EV市場の不調やセンサ関連の顧客の在庫調整により受注減となったことで減収となりました。

マイクロ波事業は、電子管の保守部品の出荷がレアアース規制による部品入手難で停滞した影響等により減収・減益となりました。

その結果、マイクロデバイス事業全体では、売上高62,400百万円(前年同期比2.8%減)、セグメント損失5,505百万円(前年同期比1,588百万円損失縮小)となりました。

 

(マテリアル)

・ブレーキ事業

ブレーキ事業は、微減収・増益となりました。

日本拠点は、カーメーカー向けの受注が回復したことにより増収・増益となりました。米国拠点も、ハイブリッド車を中心とした日系カーメーカー向けの受注が好調で増収・増益となりました。韓国拠点は減収ながらも採算改善活動により損失縮小となりました。中国・タイ拠点は、前年同期並みの売上・利益となりました。

その結果、ブレーキ事業全体では、売上高57,795百万円(前年同期比0.7%減)、セグメント利益3,385百万円(前年同期比45.1%増)となりました。

 

・精密機器事業

精密機器事業は、増収・増益となりました。

精密部品事業は、自動車用EBS(電子制御ブレーキシステム)部品が中国拠点で受注減となったものの、インド拠点の出荷増等により増収・増益となりました。成形品事業のうち、空調関連製品は前年同期並みの売上でしたが経費削減等により増益となり、車載関連製品や医療関連製品は好調な受注に加えコスト削減により増収・増益となりました。

その結果、精密機器事業全体では、売上高55,442百万円(前年同期比2.4%増)、セグメント利益2,976百万円(前年同期比81.3%増)となりました。

 

・化学品事業

化学品事業は、減収・損益悪化となりました。

断熱製品は、冷蔵冷凍設備や住宅用原液、土木用原液の受注減により減収・減益となりました。燃料電池用カーボンセパレータは、水素市場全体の停滞に起因する受注減により減収・損失拡大となりました。機能化学品は、前年同期並みの売上でしたが経費削減等により増益となりました。化学品事業全体の研究開発費は、事業化の推進に伴い増加しました。

その結果、化学品事業全体では、売上高9,736百万円(前年同期比11.8%減)、セグメント損失56百万円(前年同期比711百万円損益悪化)となりました。

 

・繊維事業

繊維事業は、減収・減益となりました。

東京シャツ㈱を含むシャツ事業は、アポロコットシャツ(超形態安定加工)の受注低迷等により減収・損益悪化となりました。ユニフォーム事業は、企業別注品の受注増等により増収・損失縮小となりました。開発素材事業は、前年同期並みの売上でしたが、価格転嫁等により損失縮小となりました。ブラジル拠点は、減収・減益となりました。

その結果、繊維事業全体では、売上高33,345百万円(前年同期比9.5%減)、セグメント利益98百万円(前年同期比49.0%減)となりました。

 

(不動産事業)

不動産事業は、減収・減益となりました。

東京都港区のマンション販売や愛知県岡崎市の宅地販売等を実施しましたが、前期と当期に実施した大型商業施設のアリオ西新井(東京都足立区)の分譲規模の相違によるものです。

その結果、不動産事業全体では、売上高17,939百万円(前年同期比23.8%減)、セグメント利益12,667百万円(前年同期比28.4%減)となりました。

 

(その他)

ニッシントーア・岩尾㈱(食品、産業資材等の商社機能)等の事業を、その他として区分しています。

その他の売上高は13,841百万円(前年同期比13.2%増)、セグメント利益は373百万円(前年同期比2.1%減)となりました。

 

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。

①生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

無線・通信

207,991

+5.9

マイクロデバイス

58,962

+2.4

ブレーキ

50,305

△3.2

精密機器

51,323

△3.2

化学品

7,039

△15.2

繊維

26,795

△7.9

その他

343

△15.5

合計

402,761

+1.5

 

(注) 1 金額は製造原価により算出しています。

2 不動産事業は生産活動を行っていないため、上記金額には含まれていません。

 

②受注状況

無線・通信事業、マイクロデバイス事業及び精密機器事業のうち、一部の製品において受注生産を行っています。当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。なお、精密機器事業については金額的重要性が乏しいため記載していません。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

無線・通信

286,243

+1.3

277,568

+17.9

マイクロデバイス

65,178

+19.9

20,120

+16.0

合計

351,422

+4.3

297,689

+17.7

 

 

③販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

無線・通信

251,837

+7.4

マイクロデバイス

62,400

△2.8

ブレーキ

57,795

△0.7

精密機器

55,442

+2.4

化学品

9,736

△11.8

繊維

33,345

△9.5

不動産

17,939

△23.8

その他

13,841

+13.2

合計

502,339

+1.5

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が総販売実績の10%未満のため記載を省略しています。

 

 

(2)財政状態

当連結会計年度末における総資産は667,817百万円となり、前連結会計年度末と比較し12,294百万円減少しました。現金及び預金の減少4,786百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の増加5,222百万円、有形固定資産の減少10,636百万円、無形固定資産の減少2,453百万円、退職給付に係る資産の増加8,542百万円、投資その他の資産のその他の減少6,258百万円等が主な要因です。

 

当連結会計年度末における負債総額は351,225百万円となり、前連結会計年度末と比較し31,101百万円減少しました。支払手形及び買掛金の増加2,827百万円、短期借入金の減少27,379百万円、未払法人税等の増加2,765百万円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金含む)の減少9,214百万円、繰延税金負債の増加6,591百万円、退職給付に係る負債の減少6,438百万円等が主な要因です。

 

当連結会計年度末における純資産は316,591百万円となり、前連結会計年度末と比較し18,806百万円増加しました。利益剰余金の増加8,596百万円、為替換算調整勘定の増加3,101百万円、退職給付に係る調整累計額の増加6,405百万円等が主な要因です。

 

以上の結果、当連結会計年度末における自己資本比率は前連結会計年度末と比較して3.3ポイント上昇して43.0%となりました。

 

(3)キャッシュ・フロー

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果増加した現金及び現金同等物は49,337百万円となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益25,002百万円、減価償却費25,599百万円、減損損失4,908百万円、投資有価証券売却損益△5,271百万円、売上債権及び契約資産の増減額△5,733百万円、棚卸資産の増減額1,338百万円、仕入債務の増減額631百万円によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果減少した現金及び現金同等物は10,842百万円となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出△16,839百万円、投資有価証券の売却による収入6,846百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果減少した現金及び現金同等物は46,203百万円となりました。これは主として、短期借入金の純増減額△27,555百万円、長期借入金の返済による支出△9,914百万円、配当金の支払額△5,640百万円によるものです。

 

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は44,055百万円と前連結会計年度末に比べ6,356百万円減少しました。

 

 

(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移 

 

2021年12月

2022年12月

2023年12月

2024年12月

2025年12月

自己資本比率

42.8%

42.8%

37.1%

39.7%

43.0%

時価ベースの自己資本比率

24.1%

24.8%

26.7%

20.8%

30.7%

債務償還年数

3.3年

7.5年

9.2年

7.7年

3.7年

インタレスト・カバレッジ・レシオ

34.5倍

12.1倍

4.7倍

12.0倍

17.0倍

 

(注)  自己資本比率:(純資産-新株予約権-非支配株主持分)/総資産

  時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

  債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

  インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

  ①各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。

  ②株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。

  ③営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象にしています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。

 

 

(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析

①財務戦略

当社グループは、2027年度以降のビジネスモデル転換と高収益化の実現に向け、2026年度までを目指す姿の実現に向けた礎を築く期間と定義しました。その間、資本効率の最適化と戦略的な資本調達が可能となる財務の健全性の両立を目指し、営業キャッシュ・フローの範囲内での投資、株主還元を基本とし、目指す事業ポートフォリオ実現のための注力領域への投資を優先します。資本効率向上の観点から資産の圧縮を計画的に進め、資産売却によって得た資金は投資、株主還元の原資として活用します。また、D/Eレシオは0.7倍以下を目安とし、ROICがWACCを上回ることを事業再設計の判断基準とします。

株主還元は、2026年度にかけて配当性向40%を目指し、利益成長を通じて配当水準の向上を図ります。1株当たり年間配当36円を下限に配当維持または増配を基本方針としながら、成長投資に必要な資金を確保しつつ、資本構成や中長期的なフリーキャッシュフローの見通し等から自己株式取得を機動的に判断します。

 

②資金調達の方針と流動性の分析

当社グループの運転資金や成長投資等の必要資金については、主として営業キャッシュ・フローを財源としていますが、必要に応じて有利子負債を効果的に活用し資本効率の向上を図っています。主に短期的な資金についてはコミットメントライン等の短期銀行借入やコマーシャル・ペーパーによる調達を、設備投資、M&A投資等の長期的な資金については、金融市場動向や長短バランスなどを総合的に勘案し、適宜長期銀行借入を組成しています。

また、当社グループは、ガバナンス強化と資金効率向上を目的として、グループ一体となった資金調達と資金管理を実施しており、当社と国内子会社間、また海外の一部地域の関係会社間でCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)やグループローンによる資金融通を行ない、グループ内の流動性確保と資本コストの低減に努めています。

重要な資本的支出の予定及び資金の調達方法については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。

資金の流動性については、当連結会計年度においても当社は主要銀行とのコミットメントライン契約を同額で維持し、30,000百万円で更改しました。その他、当座貸越枠、コマーシャル・ペーパーも引き続き十分な調達枠を維持しており、必要とされる流動性を確保しています

また、政策保有株式については、コーポレートガバナンス・ポリシーに基づき計画的に縮減していきますが、柔軟且つ機動的な売却の意思決定により、資金の流動性を補完することも可能です。

 

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。海外子会社については、IFRS(国際財務報告基準)及び米国会計基準に準拠して作成され、現地監査法人の監査を受けた上で必要な調整を反映させています。

 この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

(6)経営者の問題認識と今後の方針について

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

(7)次期の業績見通し

無線・通信事業では、災害の激甚化を背景に官民連携による防災DXの推進が加速しており、無線通信ソリューションの需要が拡大しています。また、防衛分野においても、経済安全保障の観点から産業・技術基盤の強化が進められており、無線通信の応用分野も拡大する見通しです。こうした事業環境に対応する成長投資および研究開発費が増加するため増収・減益を見込んでいます。

マイクロデバイス事業では、販売活動の強化に加え、固定費削減等の構造改革を推進していくことにより、増収・損失縮小を見込んでいます。

不動産事業では、分譲案件の規模が前期より縮小することから減収・減益を見込んでいます。

これらのことから、次期の連結業績見通しは、売上高511,000百万円営業利益21,000百万円経常利益21,500百万円親会社株主に帰属する当期純利益10,000百万円となる見込みです。

なお、為替レートは通期平均で1米ドル=145円、1ユーロ=165円を前提としています。

業績見通しの詳細については2026年2月10日に公表しています「2025年12月期決算説明資料」をご参照ください。

 

 

5 【重要な契約等】

(1) 合弁会社設立に関する契約

契約会社名

契約の相手先

契約の内容

契約締結年月

提出会社

PT.WARGA DJAJA TRADING CORP.

(インドネシア)

帝人フロンティア㈱

(日本)

綿及び合繊混素材を原料とする糸・織物の生産・販売を目的とする合弁会社 PT.NIKAWA TEXTILE INDUSTRY (インドネシア)の設立

2011年3月

AUMOVIO GLOBAL HOLDING
NETHERLANDS B.V.

(オランダ)

自動車用EBS(電子式ブレーキシステム)、ブレーキ全般(摩擦材・ドラムブレーキ及び大・中型商用車用ブレーキを除く)の研究開発、製造、販売を目的とする合弁会社オモビオ㈱(旧会社名コンチネンタル・テーベス㈱)の設立

2000年11月

AUMOVIO HOLDING
CHINA CO., LTD.

(中国)

自動車用EBS(電子式ブレーキシステム)の主要部品であるバルブブロックの製造・販売を目的とする合弁会社日清紡科恒精密機械(揚州)有限公司(旧会社名日清紡大陸精密機械(揚州)有限公司)の設立

2013年11月

AUMOVIO GLOBAL HOLDING NETHERLANDS B.V.

(オランダ)

自動車及び自動二輪車用EBS(電子式ブレーキシステム)の主要部品であるバルブブロックの製造・販売を目的とする合弁会社NISSHINBO COMPREHENSIVE
 PRECISION MACHINING(GURGAON) PRIVATE LTD.(インド)の設立

2022年2月

 

 

(2) 技術導入に関する契約

契約会社名

契約の相手先

契約の内容

対価

契約締結年月
(有効期間)

日本無線㈱

ULTRA ELECTRONICS FLIGHTLINE SYSTEMS INC.

(米国)

ソノブイ受信機のノウハウ及び製造販売実施権の許諾

売上の一定比率額

1988年12月

(2026年10月まで)

THALES COMMUNICATIONS & SECURITY SAS

(フランス)

電波高度計の製造販売実施権の

許諾

売上の一定比率額

1989年11月

(2026年3月まで)

日清紡マイクロデバイス㈱

TEXAS INSTRUMENTS INC.

(米国)

半導体装置に関する特許権並びに実用新案権の実施許諾

売上の一定比率額

2016年12月

(2026年3月まで)

㈱デンソー

(日本)

半導体装置等に関する特許権並びに技術提供等の実施許諾

一定額及び売上の一定比率額

2012年12月

(2028年9月まで)

ルネサスエレクトロニクス㈱

(日本)

半導体装置に関する特許権並びに実用新案権の実施許諾

一定額及び売上の一定比率額

2022年5月

(2028年3月まで)

 

 

(3) 技術供与に関する契約

契約会社名

契約の相手先

契約の内容

対価

契約締結年月
(有効期間)

日清紡
ブレーキ㈱

RANE (MADRAS) LTD.

(インド)

ブレーキライニング、ディスクパッドの製造技術、原料配合及び製造設備技術情報に関するノウハウの提供

売上金額基準による技術指導料

2025年12月
(2026年12月)

 

 

(4) 株主間に関する契約

契約会社名

契約の相手先

契約の内容

契約締結年月

契約有効期間

提出会社

㈱日立製作所

(日本)

㈱国際電気の運営及び株主としての権利行使等

2023年5月

株主間契約に定める終了事由等の発生により契約が終了するまで

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、無線・通信事業において、ソリューションを通じて人びとの安心・安全を提供し、社会に貢献する「無線通信トータルエンジニアリングカンパニー」を目指し、研究開発活動に取り組んでいます。

マテリアル事業においては「Sustainable Smart Materials」を新コンセプトとして、従来の繊維・化学・摩擦材などの基盤技術を活かしつつ、脱炭素や電動化、通信、再生可能エネルギーなど成長分野に直結するエレクトロニクス向けの機能性素材へ軸足を移します。

当連結会計年度の研究開発費は23,262百万円であり、主な研究開発とその成果は次のとおりです。

 

(1)無線・通信

日本無線グループでは、コア技術であるセンシング、通信ネットワーク、データ分析にAIを融合し、DXやIoTに寄与すべく、各分野のソリューション技術に関する研究開発に注力してきました。

船舶分野においては、船舶の自動運航に関する研究開発において、公益財団日本財団の無人運行船プロジェクトMEGURI2040に引き続き参画し、陸上から複数船舶を遠隔で航行支援する移動型FOC(Fleet Operating Center)の構築や、船舶側の自動運行システムを搭載し、社会実装に向けた実証実験に取り組みました。また、大型商船におけるパラメトリックロール発生リスクの可視化・回避を支援し、事故リスクの低減と運航効率の最大化を実現するアンチ・パラメトリック・ローリング・システム(APRS)を開発し、市場提供を開始しました。

陸上においては、鉄道・建設機械等の安全性・効率性向上に寄与すべく、DXシステムおよびその共通基盤(プラットフォーム)の開発を進めています。

防災・減災や社会の安全確保に関連する取組みとして、ドローンシミュレータ、気象レーダ、入川者検知システムや、災害時における通信インフラの確保等の研究開発を進めています。ドローンシミュレータでは、国家資格(一等無人航空機操縦士)取得と操縦スキル習得を支援するため、実機の風や慣性まで再現した高精度シミュレーションソフトウェアを開発しました。気象レーダでは、積乱雲の発達初期に気象レーダで観測できる「ゲリラ豪雨のタマゴ」の検出処理を開発しました。今後、長野県内の自治体にゲリラ豪雨警報予測システムを実験的に設置し、意見集約と評価を実施していきます。入川者検知システムでは、ドローン搭載用小型エッジPCに物体検知AIモデルを実装し、河川上空映像からリアルタイムに「人」を検知する機能を開発しました。災害時における通信インフラの確保では、重要インフラの維持管理を支援するため、多拠点を常時監視する設備間使用衛星通信システムを開発しました。さらに、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)委託の「Beyond 5Gにおける衛星-地上統合技術」の開発により、静止・低軌道衛星×5Gネットワークにおける柔軟な経路選択等を活用した実証実験に成功し、広域地震災害等における高機能通信手段として有効な成果を上げました。

また、医療・ヘルスケア関連分野では、超音波センシング技術に関する研究開発を進めています。血管内超音波装置では、血管分岐部を効率的に検出する技術、血管内腔を検出する技術を開発しました。また、排尿ケアプローブや携帯型超音波診断プローブでは、用途特化型の画像処理技術を開発しました。

 

国際電気グループでは、コア技術である「センシング」「伝送」「AI解析」を活用して、各分野における現場で働く人を支援するための無線通信・映像ソリューションや、ソリューションを支える標準化されたプロダクトやソリューションを迅速提供するための共通プラットフォームに係る研究開発に注力してきました。

鉄道分野においては、鉄道事業者を支える列車無線の高度化や、映像や3DセンサとAIを組み合わせた監視システムの高度化に重点を置いた研究開発を行い、ワンマン化に向けた運転支援の取組みを推進しています。

また、防災・減災や社会の安全確保に資する取組みとして、災害に関わる情報を収集、一元管理して災害対応時の自治体職員の業務を支援する防災業務支援サービスの高度化や、生成AIを用いて映像解析や状況報告を行い、巡視業務を効率化するマルチモーダルAIの研究開発に取り組むとともに、複数のネットワーク監視カメラと組み合わせてAI画像認識を行う複数カメラ対応型AIエッジコントローラを開発し、重要施設等の広域エリアのセキュリティ向上に寄与する取組みを推進しています。

 

製造業のスマート化に向けては、現場データを収集・蓄積・分析して、現場管理者をDXで支援するSaaS型現場最適化ソリューションのラインナップ化に取り組み、製造現場の作業スペース管理を支援するスペーシングマネジメントを開発し、提供を開始しました。

通信インフラのインフラシェアリング普及に向けては事業者共用向けのアンテナ分散型システムの新製品として設置場所の柔軟性を高める高出力子機を開発し、提供を開始しました。放送のDX化に向けては、新技術を搭載したFPU(映像伝送装置)の研究開発や放送カメラの撮影用途に応じたコンテンツ制作支援機能の開発に取り組みました。

当セグメントに係る研究開発費は9,894百万円です。

 

(2)マイクロデバイス

マイクロデバイス事業では、電子デバイス製品やマイクロ波製品等の企画、設計から生産技術まで総合的な研究開発を行っています。

車載用途においては、車載カメラモジュールに最適なPMIC(Power Management Integrated Circuit 電源管理用集積回路)の量産を開始しました。車載カメラモジュールは多様な用途で活用され、搭載スペースの都合から小型・薄型化が強く求められています。本製品は4つのレギュレータを集約、スタンドアロンでのシーケンス設定とパワーグッド機能(リセットIC不要)を備えることで、周辺部品の削減と基板の省スペース化を実現します。

産業用センサ向けには、一次電源に最適な昇圧用DCDCコンバータの量産を開始しました。一次電池で駆動するセンサは低消費電力が求められ、特にスリープ時の消費電流が課題となっています。さらに、データ通信時には転送エラーを防ぐためのノイズ低減も求められます。本製品は業界トップクラスの超低消費電流Iq=70nA(当社従来品比1/4に低減)を実現し、ノイズ低減のために「低リップルモード」を搭載しており、センサの長時間動作、安定動作に貢献します。本製品はこれらの技術が評価され、モノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催する「“超”モノづくり部品大賞」において「電気・電子部品賞」を受賞しました。

海上やルーラルエリア(非都市圏)等、有線による通信インフラ構築が難しい地域・環境でニーズの高い衛星通信分野では、屋外設置送受信機の高周波化・高出力化を進め、高速化・大容量化といった社会の需要に対応しています。

また、ウエアラブル機器やヒアラブル機器向けに、1セルリチウムイオン電池保護ICの量産を開始しました。昨今のリチウムイオン電池保護回路は電池セルの多様化やホストとの通信性からハイサイドにFETを配置した保護回路を採用する機器が増えつつあります。日清紡マイクロデバイスグループではこれらの市場のニーズに向け、ハイサイドFET駆動及び、従来構成向けのローサイドFET駆動の2タイプの保護ICをリリースします。

さらに、マイクロ波・ミリ波センサでは引き続き水洗便座用センサユニットをより多くのラインアップや便座以外の用途に展開するための活動を継続しています。その他介護・見守りやセキュリティ・環境モニター用途など幅広い用途向けの開発も進めています。

当セグメントに係る研究開発費は7,009百万円です。

※2024年9月26日 日清紡マイクロデバイス㈱調べ

 

(3)ブレーキ

ブレーキ事業では、摩擦材に関する技術を極め、自動車の安全・快適・経済性・環境性能に貢献する製品・ソリューションを、グローバルに提供し続ける事を使命に開発に取り組んでいます。

R&D機能では、重要保安部品としての高い信頼性を堅持し、銅規制等に対応した環境負荷物質を低減する製品の開発では、①xEV化で静粛性が高まる新世代車への適合における音・振動事象の撲滅、②効きの安定性、③摩耗粉塵の排出を抑制する優れた摩耗特性、④高温・高負荷時にも高い摩擦係数を維持する等、お客様ニーズへの対応に重点をおいて活動しています。開発した材質は、お客様にご好評を頂いており、国内外の数多くの車両プログラムへの適用が決まり、量産化が進捗しています。

 

開発シーンでは、従来のモノづくりと評価を主軸としたPDCAサイクルに加え、CAEによる摩擦のシミュレーションや、分子シミュレーション、データマイニングを主体としたデータ駆動型研究開発を加えることにより、開発期間の短縮化、開発品の高性能化、省力化及び開発費の最小化=開発効率の最大化を目指しています。その実現を支えるため、RAGの構築、生成AIの活用、データプラットフォームを始めとした開発環境の整備に加え、デジタル人財育成を目指し教育プログラムを実行しています。

加えて、2050年にCO2排出量ゼロに向けて独自の目標を掲げ、材質および製造工程の研究開発への取り組みも実行しています。また、当社グループ内のコラボレーションにより車両の安全、自律運転を見据えた足廻りのセンシングに関するマーケティングと研究を推進しています。

当セグメントに係る研究開発費は3,611百万円です。

 

(4)精密機器

精密機器事業では、新製品開発と上市の加速を重点取組みテーマと位置づけ開発活動を行っています。

射出成形技術とエレクトロニクス技術をベースとした配線機能一体型成形品(IM-E:In Mold -Electronics)の開発を進めています。

また、医療分野では、優れた生体適合性等の高機能を備えたスーパーエンプラ樹脂を用いた新製品をはじめ、予防・予後・再生医療に貢献する製品の開発・上市を進めます。家電・住設分野においては、快適な居住空間や省エネに向けた空調機器用ファン等の開発に取り組んでいます。

さらに、再生可能エネルギーや社会インフラの整備等持続可能な社会に向けた製品の開発を進めており、新たな事業創出に向けた活動に取り組んでいます。

当セグメントに係る研究開発費は197百万円です。

 

(5)化学品

化学品事業では、既存の研究開発に加え、2025年1月及び4月に当社で実施していた開発の一部を日清紡ケミカル㈱へ移管し、環境問題解決やGXに貢献する技術・製品の研究開発に取り組んでいます。

燃料電池向けには、カーボンセパレータの量産化に向けた開発、ならびに同用途の触媒関連製品の研究開発を進めています。

また、次世代エネルギーの輸送及び貯蔵施設等、インフラの構築に貢献する高性能ウレタン断熱材の開発を進めています。

さらに、揮発性有機化合物や有害化学物質の使用削減に寄与する樹脂添加剤の開発を推進しています。プラスチックによる環境汚染の拡大防止に向けて、土壌及び海洋環境で生分解性プラスチックの分解スピードを促進・制御する添加剤の開発を進めています。

当セグメントに係る研究開発費は858百万円です。

 

(6)繊維

繊維事業では、「環境」と「健康」への貢献を重点テーマに掲げ、グループ内外の幅広いパートナーと連携しながら研究開発を進めています。

当連結会計年度は、ノーアイロンシャツで知られる「アポロコット」シリーズのラインアップを拡充するとともに、防汚、冷感、ノンホルマリンなど、環境に配慮した次世代型の高機能素材の開発に注力しました。さらに、防透、抗菌防臭、抗ウイルス、綿100%のストレッチ素材など、安心・安全と快適性の向上を両立する製品の拡充も進めています。

また、サーキュラーエコノミーの実現を目指し、廃棄されたシャツを再び繊維化して新たなシャツへ生まれ変わらせる「シャツ再生プロジェクト」を推進しています。当連結会計年度には、国内繊維メーカー5社とバイオ関連研究機関1社と共同で、NEDO「バイオものづくり革命推進事業」に採択されました。これまで培ってきた当社グループの技術や知見に加え、各社のノウハウを結集することで、廃棄衣料を繊維として再利用する“繊維 to 繊維”の資源循環システムの構築と、その社会実装に向けた研究開発・実証を進めています。

当セグメントに係る研究開発費は701百万円です。

 

 

(7)全社共通

日本無線グループおよび当社の研究組織を整理・統合し、研究開発体制を刷新することで、エレクトロニクス分野におけるビジネスイノベーションの創出と事業R&Dの推進を目的として、2025年4月1日付で「フューチャー・イノベーション本部(FI本部)」を発足しました。

FI本部では、各事業の未来社会におけるポジションや強みを明確化するとともに、データドリブン型の事業開発を通じて、新たな事業創出に取り組んでいます。

また、2025年11月には新宿に新たな拠点を開設し、マーケティングおよび戦略企画部門を移転しました。これにより、社外との連携を含むオープンイノベーションを加速させ、事業創出に向けた取り組みを一層推進しています。

さらに、マテリアルセグメントの事業価値向上につながる研究開発テーマの創出を目的として、経営戦略室内に「ケミカル素材開発グループ」を新設しました。エレクトロニクス分野においても課題となっているエネルギー問題に対応し、大幅な特性向上が期待できる新規電子部品用材料や、市場ニーズに紐づいた半導体関連部材の開発など、エレクトロニクス事業の発展に寄与する新素材開発に取り組んでいます。

なお、2025年3月まで実施していた研究開発項目については、以下のとおり整理しました。

水素社会実現に向けた取り組みとして進めてきた燃料電池用触媒および、当社グループの超音波技術を活用した水素ガスセンサについては、事業化を加速するため事業会社へ移管しました。

地球環境問題への対応として取り組んできた海洋生分解性プラスチックの開発についても、事業会社に移管し、事業化を推進しています。

一方、「完全閉鎖型植物工場」については、研究開発を終了するとともに、関連事業もすべて終了しました。

全社共通に係る研究開発費は990百万円です。