第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 わが国経済の今後の見通しにつきましては、政府による経済政策などを背景として企業収益や雇用環境の改善が進み、緩やかな回復が期待されておりますが、海外の政治・経済情勢の不確実性により、引き続き予断を許さない状況で推移するものと思われます。

 このような経営環境のもと、当社グループは、2015年度から2017年度までの3年間を実行期間とする中期経営計画『ATSUGI VISION 2017』に基づき、平成30年3月期の数値目標として設定した連結売上高250億円、連結営業利益7.5億円、連結営業利益率3%を達成するため、「製造原価の低減」、「強いアツギブランドの構築」、「営業戦略の強化」、「海外販売の拡大」、「人事戦略の強化」の5つの課題に取り組んでまいりました。

 中期経営計画の最終年度を終えて、製造原価の低減においては、技術支援体制の強化や生産工程の見直しによる生産性の改善、強いアツギブランドの構築においては、本社における研究開発体制の構築による開発・技術力の向上と人材育成、営業戦略の強化においては、ドラッグ・コンビニエンスストア、ECなど一部の伸長ルートへの販売の拡大やインナーウエア商品の販売の拡大など、一定の成果が得られた分野もありますが、その一方で、変化の激しい国内流通業界への対応には引き続き課題を残し、また、海外販売の拡大において進捗が遅れるなど、安定した収益基盤の構築は依然として道半ばとなっております。

 このような状況と残された課題を踏まえ、改めて今後中期的に取り組むべき課題を設定し、安定した利益を創出できる体制の構築を進めてまいります。

 はじめに、メーカーとしての原点であるモノ作りにおいて更に優位性を発揮するため、研究開発用設備を導入し技術者を結集させて構築した本社の研究開発体制を本格的に稼働させ、新たな価値を提供できる商品の開発を進め、これを営業戦略と融合させることにより強いアツギブランドを育成いたします。

 次に、当社の繊維事業におけるバランスの改革を進めてまいります。ストッキング、タイツの販売力を維持しながら、ソックス、インナーウエア商品にもなお一層力を入れ、また、日本国内の卸売に加え、直営店の展開や自社ECサイトの強化により販売ルートの多様化を図ってまいります。同時に中国国内の販売強化や欧州など中国以外の国の市場開拓を通じて海外販売を拡大し、今後成長の見込める商品の販売強化や販売ルートの開拓を推し進めることにより、新たな収益の柱を構築してまいります。

 併せて、生産工場においては、最新の設備と人材を最大限活用することにより生産工程における徹底したコストダウンを実現し、メーカーとして引き続き製造原価の低減に取り組んでまいります。

 また、当社は創立以来「女性の美と快適に貢献する」企業を目指し活動してまいりましたが、今後は更に「健康」というキーワードを加えて、産官学の共同研究プロジェクトへの参画などにより、「健康」に関連する独自商品の開発を進めてまいります。

 最後に、これからの人口減少・少子高齢化の時代を見据え、女性をはじめとした多様な人材の登用を促進するため、人材育成やITなどの先端技術の導入による働き方改革を推進し、従業員が活き活きと働くことができる職場環境を整備し、労働生産性の向上に繋げてまいります。

 これらの対処すべき課題を念頭に置き、2018年度から2020年度までの3年間を実行期間とする新たな中期経営計画を策定いたしました。公表した新たな目標達成に向け、収益構造の改善ならびに企業価値の拡大を図ってまいります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

2【事業等のリスク】

 当社および当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は下記のとおりであります。

 なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応に最大限の努力をする所存であります。

 本項については、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)為替レートの変動リスク

 当社グループは、生産拠点の海外シフトしており、外国通貨建ての取引があります。従って、当社グループの取引および投資活動等に係る損益は、外国為替の変動により影響を受ける可能性があります。

 また、当社グループは、ヘッジ取引により、為替変動によるリスクを低減しておりますが、予測を超えた為替変動が業績および財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(2)海外事業

 当社グループは、主に生産拠点を中国へ移管しておりますが、中国政府による規制、人材確保の困難さ、通貨切上げ等のリスクが存在します。

 このようなリスクが顕在化することにより、中国での事業活動に支障を生じ、業績および将来の計画に影響を与える可能性があります。

 

(3)原油価格の変動リスク

 原油価格の乱高下に伴い、当社グループの主力商品である靴下の主要な原材料であるナイロン糸および電力・重油等の購入価格の上昇により、業績および将来の計画に影響を与える可能性があります。

 

(4)市況による影響

 当社グループの中核である繊維事業は、市況により業績に大きな影響を受ける業種であります。市況リスクとしては、ファッション・トレンドの変化による需要の減少、天候不順による季節商品の売上減少、デフレによる低価格商品の増加、海外からの低価格商品の輸入増等により、業績および将来の計画に影響を与える可能性があります。

 

(5)貸倒リスク

 当社グループは、販売先の状況および過去の貸倒実績発生率による見積りに基づいて貸倒引当金を計上しておりますが、販売先の財政状況の悪化、その他予期せざる理由により、貸倒引当金の積み増しを行う可能性があります。

 

(6)製造物責任・知的財産

 当社グループの製品の欠陥に起因して、大規模な製品回収や損害賠償が発生し、保険による補填ができない事態が生じた場合や、知的財産に係わる紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされた場合、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、一部企業における収益や雇用環境の改善が継続するなど、全体として緩やかな回復基調となりました。その一方で、米国政権の政策運営や東アジア地域における地政学リスクの顕在化などにより世界経済の不確実性は高まっており、先行き不透明な状況で推移しました。

 繊維業界においては、インバウンド需要による消費の下支えが見られましたが、先行き不透明感による消費者の節約志向・生活防衛意識は依然として根強く、個人消費は引き続き力強さに欠ける状況が続き、企業間競争が一段と激化するなど、厳しい環境にあります。

 このような状況において当社グループは、2015年度から2017年度までの3年間を実行期間とする中期経営計画『ATSUGI VISION 2017』の最終年度にあたり、基本戦略として定めた「製造原価の低減」、「強いアツギブランドの構築」、「営業戦略の強化」、「海外販売の拡大」、「人事戦略の強化」の5つの課題への取り組みを更に推し進めながら、原料加工から最終製品までを一貫生産し販売する専業メーカーとしての特性を活かし、価格を上回る価値ある商品の企画開発と、グループ全社を挙げて効率性アップに取り組み、収益改善に努めてまいりました。

 この結果、当連結会計年度の売上高は23,963百万円(前年同期比2.9%増)、営業利益は849百万円(前年同期比18.4%減)、経常利益は832百万円(前年同期比24.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は579百万円(前年同期比14.1%減)となりました。

 

 セグメントの業績は、次のとおりであります。

[繊維事業]

 レッグウエア分野は厚手のプレーンタイツなどの季節商品やリブソックスなどが好調に推移したほか、プレーンストッキングを中心としたベーシック商品が堅調に推移したことにより、トレンド性の高い商品の伸び悩みをカバーし、同分野の売上高は19,652百万円(前年同期比2.6%増)となりました。

 インナーウエア分野はスポーツインナー関連が順調に推移したほか、主力のブラジャーおよびショーツも好調に推移し、同分野の売上高は3,084百万円(前年同期比6.1%増)となりました。

 これらの結果、繊維事業の売上高は22,736百万円(前年同期比3.1%増)、営業利益は355百万円(前年同期比33.9%減)となりました。

 

[不動産事業]

 保有資産の有効活用などにより、当事業の売上高は654百万円(前年同期比0.5%減)、営業利益は455百万円(前年同期比4.7%減)となりました。

 

[その他]

 その他の事業につきましては、介護用品は市場環境の変化などにより厳しい状況が続いております。一方で、太陽光発電による売電が年間を通じて順調に推移しました。これらの結果、当事業の売上高は572百万円(前年同期比1.5%増)、営業利益は38百万円(前年同期比56.7%増)となりました。

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末における総資産は58,152百万円となり、前連結会計年度末に比べ988百万円増加いたしました。主な増減内容は、投資有価証券の増加1,120百万円等によるものであります。

 負債の部は9,225百万円となり、前連結会計年度末に比べ254百万円増加いたしました。これは主に、仕入債務の増加287百万円、繰延税金負債の増加279百万円および未払法人税等の減少310百万円等によるものであります。

 純資産の部は48,926百万円となり、前連結会計年度末に比べ734百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を579百万円計上しましたが、前期決算に係る配当金487百万円による減少や、市場買付等による自己株式の取得による減少268百万円、その他の包括利益累計額の増加909百万円等によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

対前年同期比(%)

繊維事業

12,827

102.9

合計

12,827

102.9

(注)1.セグメント間取引については、内部振替前の数値によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.金額は、製造原価によっております。

 

b.受注状況

 当社グループ(当社及び連結子会社)は見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

対前年同期比(%)

繊維事業

22,736

103.1

不動産事業

654

99.5

その他

572

101.5

合計

23,963

102.9

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱しまむら

3,039

13.1

2,713

11.3

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

④キャッシュ・フローの状況

科目

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,894

1,110

△783

投資活動によるキャッシュ・フロー

△181

△403

△222

財務活動によるキャッシュ・フロー

△741

△752

△11

現金及び現金同等物に係る換算差額

△93

66

159

現金及び現金同等物の増減額

878

20

△857

現金及び現金同等物の期末残高

8,421

8,442

20

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益869百万円の計上と、減価償却費1,036百万円等がありましたが、法人税等の支払い490百万円、売上債権の増加372百万円等により、差引1,110百万円の収入(前年同期は1,894百万円の収入)となりました。

 

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得815百万円、投資有価証券の売却298百万円等により、403百万円の支出(前年同期は181百万円の支出)となりました。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

 財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払い483百万円、自己株式の市場買付等268百万円により、752百万円の支出(前年同期は741百万円の支出)となりました。

 

 以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ20百万円増加し、8,442百万円となりました。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営成績等の詳細については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。

 当社グループの経営に影響を与える大きな要因の詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等、2 事業等のリスク」をご参照下さい。

 当社グループのにおける資金需要は、製品製造のための原材料費、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに設備新設、維持改修等に係る投資であります。

 これらの資金需要につきましては、自己資金を基本としております。また、当社は現時点で借入金はありませんが、取引金融機関との間で上限を30億円とする貸出コミットメント契約を締結し、緊急時の資金調達に備えております。

 

③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、中期経営計画の最終年度にあたり、売上においては、厚手のタイツにおけるインバウンド需要の取り込みや、ドラッグストア、コンビニエンスストア、ECなど一部の販売ルートの拡大、インナーウエアにおけるスポーツ関連商品の伸長など一定の成果も得られましたが、全体としては、変化の激しい国内販売ルートへの対応に苦戦し、また、中国を含めた海外販売の拡大において進捗が遅れるなど、当初の目標として掲げた連結売上高250億円には届きませんでした。

 一方で営業利益においては、技術支援体制の強化による生産工場における生産性の改善、原料・資材費の削減、製品単価のアップなどが寄与し、当初の目標として掲げた連結営業利益7.5億円を達成し、一定の収益を確保することができました。

 このように、一定の成果が得られた分野もありますが、その一方で、更なる製造原価の低減、変化の激しい国内流通業界を見据えた企画・開発および営業戦略の強化、海外販売の拡大には引き続き課題を残す結果となり、安定した収益基盤の構築は依然として道半ばとなっております。

 前中期経営計画の結果を踏まえて、当社グループは、2018年度からスタートする新中期経営計画『ATSUGI VISION 2020』において、連結売上高250億円、連結営業利益15億円、連結営業利益率6%を数値目標としております。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 当社グループは、女性の「美しさ」と「快適さ」を追求し、当社最大の強みである技術力及び商品開発力に磨きをかけ、素材の応用研究から付加価値向上と、差別化商品の企画のための研究開発を積極的に行っております。

 研究開発体制を強化する為に本社内に研究開発専用の設備を導入、技術力の向上、技術者の育成を行っております。そして本社を拠点として、新しい価値の創造と消費者の信頼を得られる高い品質を持った商品の研究開発に取り組んでおります。「価格を上回る価値ある商品づくり」を念頭に、多様化するニーズに対応した商品を提供し、顧客満足の向上に努めます。

 当社グループの研究開発は、当社の研究開発部門を中核として、連結会社の技術開発部門により行っております。

 当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は443百万円であり、繊維事業に係るものであります。

 

 セグメントの研究開発活動は次のとおりであります。

[繊維事業]

(1)レッグウエア分野

① プレーンストッキングの開発

 2011年に発売したプレーンストッキングASTIGUは商品パッケージを一新し、11種類各々の商品特徴をビジュアルでより分かりやすくお伝えします。専用の漢字一文字入りバックマークをつけ、「今日はこれをはきたいからはこう」というブランドコンセプトに則りお客様がASTIGUを毎日楽しく選んで穿いて頂けるような施策としました。また、女性の意見を取り入れたスムーズオープンの採用を拡大し、お客様が着用前にストッキングの中台紙を取りだす際の時間と手間を軽減します。ASTIGU「圧」は糸から見直しを行い、従来のメリハリのある着圧設計とはきやすさを活かしながら、ストッキングが本来求められる美しさをさらに追求しました。

 

② ソックスの開発

 機能的でファッション性のあるスポーツ向けインナーブランドのクリアビューティアクティブに婦人用の機能性靴下を開発致しました。また、紳士向けにはパターンに拘り5枚の生地を縫い合わせ、かかと立体設計とし、かかとのシリコンすべり止めとゴロつきの無いシームレスなはき口で快適なはき心地を実現し、夏のロールアップスタイルにも最適な靴からも見えにくく、脱げにくいフットカバーを開発致しました。

 

(2)インナーウエア分野

① ジュニアブラジャー「ハイジュニ」の開発

 ジュニア層のブラジャーに対する悩みを購買者である保護者と使用者である女の子に調査し、その悩みに対応する商品や成長段階のバストに合わせた商品など、ジュニアブラジャーの開発をし、ブランドリニューアルをいたしました。また、体育や部活などで日常的にスポーツをするジュニア層に対し、クリアビューティアクティブで培った製品企画力を反映した速乾性のある動きやすいジュニア用スポーツブラを新たに開発いたしました。

 

② ブラジャーブランド「ヌードメイク」の開発

 ランジェリー・ファンデーションが揃うトータルインナーブランドとして、「大人の女性をより美しく、快適に」をコンセプトに、一体型シームレスカップを使用したノンワイヤーブラやフリーカット生地を使用したボトム、補正機能があるスタイルアップボトムなど、大人の女性がボディラインをきれいにメイクできる商品を開発いたしました。