第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 わが国経済の今後の見通しにつきましては、堅調な雇用・所得環境を背景として、当面底堅く推移していくことが見込まれますが、海外の政治・経済情勢の不確実性は高まっており、引き続き不透明な状況で推移するものと思われます。

 一方、当社グループを取り巻く流通・アパレル業界においては、異常気象や今後予定される消費増税による消費マインドの低下、衣料品のインバウンド消費の下押しリスク、情報化の進展に伴う消費者の志向性や購買方法・購入場所の多様化などにより、更なる企業の淘汰・再編、価格競争の激化などが予想され、今後も不透明かつ不安定な状況が続くものと思われます。

 このような経営環境のもと、当社グループの2018年度の業績は売上、利益ともに非常に厳しい結果となりました。この結果は現在の当社グループの事業構造が外部環境の変化に十分対応できていないことを示しており、今後、当社グループが業績を回復し、成長を遂げるためには、早急に現在の事業構造を改革し、環境の変化に耐え得る強固な事業基盤と持続的に利益を創出できる体制を構築していくことが求められます。

 これらの状況に鑑み、当社グループは現在取り組んでいる中期経営計画『ATSUGI VISION 2020』を発展的に見直すこととし、2019年度から概ね5年の期間で「コスト構造改革」、「業務構造改革」、「事業構造改革」の3つの構造改革に取り組んでまいります。

 はじめに、製造原価の低減をより確実なものとするため、生産子会社の一部拠点の統合・閉鎖を実施して更なる固定費の削減を図るとともに、工場内のFA化を促進して新しい製造工程を構築いたします。また、神奈川県海老名市の本社および物流センターの機能を移管・集約して最適な配置を行い、そのうえで現在の土地・建物を再開発し、不動産収益を底上げしていきます。これらの施策を通じて、製造原価の低減と資産効率の向上および収益力の強化を図ることにより、コスト構造改革を推し進めます。

 次に、価格競争とは一線を画し、収益性を高めるためには当社独自の高付加価値商品を自社工場で継続して生産することが必要となり、この体制を構築するため、企画・開発部門を再設計し、新商品の開発を促進するとともに、工場においても人材の多能工化を進めてまいります。また、本社の間接部門を中心に定型業務の見直しや基幹システムの更新を進めて、労働生産性を高めます。これらの施策を通じて、組織力の強化と業務の質の向上を図ることにより、業務構造改革を推し進めます。

 最後に、『ATSUGI VISION 2020』において現在取り組んでいる繊維事業におけるバランスの改革を更に加速させるため、「ソックス、インナーウエアの強化」、「直営店舗や自社ECサイト強化による直営小売比率の向上」、「海外販売比率の拡大」という課題に対しては、M&Aを含む他社とのパートナーシップも視野に入れて早期実現を図ることにより、繊維事業における事業構造改革を推し進めます。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

2【事業等のリスク】

 当社および当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は下記のとおりであります。

 なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応に最大限の努力をする所存であります。

 本項については、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)為替レートの変動リスク

 当社グループは、生産拠点を海外シフトしており、外国通貨建ての取引があります。従って、当社グループの取引および投資活動等に係る損益は、外国為替の変動により影響を受ける可能性があります。

 また、当社グループは、ヘッジ取引により、為替変動によるリスクを低減しておりますが、予測を超えた為替変動が業績および財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(2)海外事業

 当社グループは、主に生産拠点を中国へ移管しておりますが、中国政府による規制、人材確保の困難さ、通貨切上げ等のリスクが存在します。

 このようなリスクが顕在化することにより、中国での事業活動に支障を生じ、業績および将来の計画に影響を与える可能性があります。

 

(3)原油価格の変動リスク

 原油価格の乱高下に伴い、当社グループの主力商品である靴下の主要な原材料であるナイロン糸および電力・重油等の購入価格の上昇により、業績および将来の計画に影響を与える可能性があります。

 

(4)市況による影響

 当社グループの中核である繊維事業は、市況により業績に大きな影響を受ける業種であります。市況リスクとしては、ファッション・トレンドの変化による需要の減少、天候不順による季節商品の売上減少、デフレによる低価格商品の増加、海外からの低価格商品の輸入増等により、業績および将来の計画に影響を与える可能性があります。

 

(5)貸倒リスク

 当社グループは、販売先の状況および過去の貸倒実績発生率による見積りに基づいて貸倒引当金を計上しておりますが、販売先の財政状況の悪化、その他予期せざる理由により、貸倒引当金の積み増しを行う可能性があります。

 

(6)製造物責任・知的財産

 当社グループの製品の欠陥に起因して、大規模な製品回収や損害賠償が発生し、保険による補填ができない事態が生じた場合や、知的財産に係わる紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされた場合、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、一部企業における収益や雇用環境の改善を背景に、引き続き緩やかな回復基調が継続しました。その一方で、米中間の貿易摩擦の激化や中国経済の減速への懸念、英国のEU離脱問題を含む欧州の政情不安など、世界経済の不確実性は高まっており、先行き不透明な状況で推移しました。

 繊維業界においては、消費者の節約志向・生活防衛意識は依然として根強く、これらに加え酷暑や暖冬などの天候不順の影響もあり、個人消費は引き続き力強さに欠ける状況が続いております。また、インバウンド需要にも減少が見られるなど、企業間競争は一段と激化しており、厳しい環境にあります。

 このような状況において当社グループは、2018年度から2020年度までの3年間を実行期間とする中期経営計画『ATSUGI VISION 2020』をスタートさせました。

 『ATSUGI VISION 2020』では、「更なる利益率の向上」に重点を置き、「企画・開発と営業戦略の融合」、「繊維事業におけるバランスの改革」、「製造原価の低減」、「女性の美と快適に「健康」をプラス」、「生産性の向上」の5つの課題を掲げ、これまで当社グループが培ってきた強みを活かしながら、新たな施策により次の時代を見据えた事業構造への転換を図り、強固な事業基盤の構築を目指しております。

 当期においては、販売では主力ブランドの拡販や新規ルートの開拓、生産工場では更なる原価低減に注力してまいりましたが、インバウンド需要の減少や天候不順などの影響を受け売上が計画を大きく下回ったことにより、生産計画の大幅な下方修正を余儀なくされ、グループ全体の収支に悪影響を与えた他、たな卸資産の評価損や除却損などにも繋がり、営業利益、経常利益は前期と比べて大幅に悪化いたしました。また、構造改革に伴う特別損失の計上等の影響により、親会社株主に帰属する当期純利益も大幅な損失となりました。

 この結果、当連結会計年度の売上高は21,870百万円(前年同期比8.7%減)、営業損失は903百万円(前年同期は849百万円の利益)、経常損失は726百万円(前年同期は832百万円の利益)、また、構造改革に伴い固定資産の減損損失等を特別損失に計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は3,078百万円(前年同期は579百万円の利益)となりました。

 

 セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

[繊維事業]

 レッグウエア分野は厚手を中心としたプレーンタイツなどの季節商品が伸び悩み、プレーンストッキングなどのベーシック商品も苦戦するなど、全般的に厳しく、同分野の売上高は17,540百万円(前年同期比10.7%減)となりました。

 インナーウエア分野はスポーツインナー関連が順調に推移したほか、主力のショーツも好調に推移し、同分野の売上高は3,125百万円(前年同期比1.3%増)となりました。

 これらの結果、繊維事業の売上高は20,666百万円(前年同期比9.1%減)、営業損失は1,370百万円(前年同期は355百万円の利益)となりました。

 

[不動産事業]

 保有資産の有効活用を進めておりますが、当事業の売上高は583百万円(前年同期比10.8%減)、営業利益は410百万円(前年同期比9.7%減)となりました。

 

[その他]

 その他の事業につきましては、介護用品の販売が堅調に推移した他、太陽光発電による売電も年間を通じて順調に推移しました。これらの結果、当事業の売上高は620百万円(前年同期比8.3%増)、営業利益は56百万円(前年同期比45.9%増)となりました。

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末における総資産は50,778百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,063百万円減少いたしました。主な増減内容は、当社の今後の構造改革の取り組みに伴い、本社および物流センターを移管・集約し最適な配置をすることを計画していることから、当該土地・建物等について減損処理を行ったこと、一部生産拠点の統合・閉鎖の決定に伴う土地・建物等の減損処理および国内生産工場全体において今後使用見込みがなくなった余剰生産設備等の減損処理を行ったこと等による有形固定資産の減少2,846百万円、投資有価証券の減少2,077百万円および現金及び預金の減少1,138百万円等によるものであります。

 負債の部は6,763百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,151百万円減少いたしました。これは主に、繰延税金負債の減少678百万円、仕入債務の減少560百万円および通貨オプションの減少467百万円等によるものであります。

 純資産の部は44,015百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,911百万円減少いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失3,078百万円の計上による減少や、前期決算に係る配当金481百万円による減少、土地再評価差額金の取崩による増加375百万円、その他の包括利益累計額の減少1,719百万円等によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

対前年同期比(%)

繊維事業

11,691

91.1

合計

11,691

91.1

(注)1.セグメント間取引については、内部振替前の数値によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.金額は、製造原価によっております。

 

b.受注状況

 当社グループ(当社及び連結子会社)は見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

対前年同期比(%)

繊維事業

20,666

90.9

不動産事業

583

89.2

その他

620

108.3

合計

21,870

91.3

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱しまむら

2,713

11.3

2,650

12.1

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

④キャッシュ・フローの状況

科目

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,110

324

△786

投資活動によるキャッシュ・フロー

△403

△979

△575

財務活動によるキャッシュ・フロー

△752

△494

258

現金及び現金同等物に係る換算差額

66

△54

△121

現金及び現金同等物の増減額

20

△1,203

△1,224

現金及び現金同等物の期末残高

8,442

7,238

△1,203

 

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失3,214百万円の計上はありましたが、減損損失2,475百万円、減価償却費979百万円等により、差引324百万円の収入(前年同期は1,110百万円の収入)となりました。

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得914百万円等により、979百万円の支出(前年同期は403百万円の支出)となりました。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

 財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払い479百万円等により、494百万円の支出(前年同期は752百万円の支出)となりました。

 

 以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ1,203百万円減少し、7,238百万円となりました。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営成績等の詳細については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。

 当社グループの経営に影響を与える大きな要因の詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等、2 事業等のリスク」をご参照下さい。

 当社グループにおける資金需要は、製品製造のための原材料費、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに設備新設、維持改修等に係る投資であります。

 これらの資金需要につきましては、自己資金を基本としております。また、当社は現時点で借入金はありませんが、取引金融機関との間で上限を30億円とする貸出コミットメント契約を締結し、緊急時の資金調達に備えております。

 

③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 『ATSUGI VISION 2020』の初年度である2019年3月期通期の当社グループの業績は年間を通して主力であるレッグウエア商品の販売が苦戦し、特に最盛期である秋冬期におきましても、インバウンド需要の減少をはじめ主力ブランドの販売低迷や、ソックス・インナーウエアも販売拡大が不十分となり、売上・利益ともに計画を下回りました。

 さらに、たな卸資産の評価損や廃棄処分による売上原価の増加、本社の土地・建物の有効活用のための再開発や販売規模に見合った生産規模とするための特別損失の計上により、大幅な赤字となりました。

 これらの状況を踏まえて、当社グループは、2018年度から2020年度までの3年間を実行期間とする中期経営計画『ATSUGI VISION 2020』の数値目標および課題への取り組みを見直し、連結売上高230億円、連結営業利益12億円、連結営業利益率5.2%を数値目標としております。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 当社グループは、女性の「美しさ」と「快適さ」を追求し、当社最大の強みである技術力及び商品開発力に磨きをかけ、素材の応用研究から付加価値向上と、差別化商品の企画のための研究開発を積極的に行っております。

 研究開発体制を強化する為に本社内に研究開発専用の設備を導入、技術力の向上、技術者の育成を行っております。そして本社を拠点として、新しい価値の創造と消費者の信頼を得られる高い品質を持った商品の研究開発に取り組んでおります。「価格を上回る価値ある商品づくり」を念頭に、多様化するニーズに対応した商品を提供し、顧客満足の向上に努めます。

 当社グループの研究開発は、当社の研究開発部門を中核として、連結会社の技術開発部門により行っております。

 当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は482百万円であり、繊維事業に係るものであります。

 

 セグメントの研究開発活動は次のとおりであります。

[繊維事業]

(1)レッグウエア分野

① プレーンストッキングの開発

 プレーンストッキングの主力ブランドASTIGUでは、「ストッキングで脚をきれいに見せたいけれど、夏場の着用は暑い」という女性の悩み解消に向け、原料であるナイロン糸・ポリウレタン糸の両方に吸放湿性に優れた高機能糸を採用し、レッグ部の編み目の密度を適切に設定することにより、糸自体と糸の間から熱を放散させて、着用中の放熱を持続させ「ムレにくく、素脚でいるより涼しい」を追求した「冷」を開発いたしました。

 ATSUGI THE LEG BAR CARE+シリーズでは、女性の約4割の方が気にしている匂いに対する悩み解消へ向け、当社独自の光触媒加工を施し、24時間匂いにくいデオドラントストッキングを開発いたしました。

 

② ソックスの開発

 日本を代表する三大和紙のひとつである美濃和紙を使用し、優れた吸湿性を持ち、べとつかずさらっとしたはき心地の和紙ソックスを開発いたしました。

 

③ シューアッパーの開発

 イタリア製ダブルシリンダージャカード編み機をシューアッパー開発用に導入し、丸編み機による靴のアッパー部分の開発に着手いたしました。2019年6月に開催される国際繊維機械展示会に参考企画を展示いたしました。

 

(2)インナーウエア分野

① インナーブランド「Working inner」の開発

 身体を動かして働く女性を応援するインナーブランド「Working inner」を立ち上げ、建築・物流・医療など、さまざまな現場で働く女性をターゲットとし、「働きやすい=動きやすい」をコンセプトにブラジャー、ショーツ、インナーなどを開発いたしました。汗対策を考えた制菌加工素材や吸汗速乾素材、ストレッチ性に優れた素材を使用し、新たに考案したパターンで動きやすく「働く」をもっと愉しく快適にする商品を開発いたしました。

 

② 「クリアビューティアクティブ」スポーツサニタリーショーツの開発

 スポーツインストラクターやヨガインストラクターからサニタリーショーツに対する要望や改善点をヒアリングし、吸汗速乾加工のフリーカット生地を使用し、ずれにくく漏れにくい仕様で着心地と機能を兼ね備え、スポーツする際に身体にフィットし快適性を追求した商品を開発いたしました。