第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、「信用を重んじ、堅実を旨とする」「人の和と開かれた心で活力ある企業を築く」「創意を生かし、社業を通じて社会に貢献する」を企業経営の目標を達成するための活動指針である「社是」に掲げ、事業に対する信頼性と堅実性を経営の基本に位置付け、長期的視野から安定した経営基盤の確立に努めるとともに、卓越した開発力、技術力で多くの新しい商品を世に送り出し、事業活動を通じて社会貢献することを基本理念としております。

 また、新たな中期経営計画の策定に合わせ、創業150周年となる2028年に向けた「Ashimori Vision 2028」を見直しました。「ミッション・ビジョン・バリュー」を刷新し、会社の存在意義、ありたい姿と価値観を明確にするとともに、意思統一をはかるためにスローガンを作成しました。

 ≪スローガン≫ つむぐ技術(ちから)、つなげる未来

 ①『ミッション』 “私たちの使命は、命と暮らしを守る製品を提供することです”

 ミッションは当社の存在意義です。

 当社の製品の多くは、事故や災害時に人命を守ることや救助すること、また暮らしの中で事故・災害を未然に防ぐことを目的に使われます。このような製品を確実な品質で提供することにより、当社は社会から存在意義を認められます。

 ②『ビジョン』 “私たちは、すべての人々に信頼される企業グループであり続けます”

 ビジョンは当社がミッションを通して目指す会社の姿です。

 当社の存在意義であるミッションを長期に亘り果たし続けることで、取引先やエンドユーザー、株主、地域社会、そして従業員やその家族から信頼を得ることができます。

 ③『バリュー』 “私たちは、誠実に、ルールを守り、品質最優先のものづくりに取り組みます”

 バリューは当社が重んじる価値観です。

 ミッションを果たしビジョンを達成するためには、製品に求められる品質が揺るがぬよう、あらゆる意思決定と業務実施の場面において高い規範意識が必要となります。

 「社是」を経営理念として最上位に位置付け、新たな「ミッション・ビジョン・バリュー」と一体であるべき姿を目指す会社の『道標』とし、日々業務を遂行していく上での指針としております。

 

(2)目標とする経営指標

 当社は、2022年から3ヵ年に亘る「第123~125期(2023年3月期~2025年3月期)中期経営計画」を本年5月に策定いたしました。当該中期経営計画においては事業評価の指標としてROIC(投下資本利益率)を導入し、経営効率と財務体質の改善をはかることとしております。

 

(3)経営戦略

 当社グループでは、“新たな成長軌道への挑戦”として、成長市場である自動車分野と管路更生分野に経営資源を集中してまいります。自動車分野においては昨年5月に締結した豊田合成株式会社との資本業務提携契約を通じて、製品競争力、開発力を強化させることにより当事業拡大の起爆剤となるよう、取り組んでまいります。また、管路更生分野においては拡大する市場に対応するための人材増強と開発投資を行います。

 また、「Ashimori Vision 2028」の見直しに合わせて、「人材ビジョン」を作成しました。高い専門性と幅広い視野、論理的展開力を持った世界に通じる人材を育成することにより、企業風土の改革を進めてまいります。

 近年、SDGsへの取組みが国際社会の共通テーマとなり、企業による社会課題の解決への期待が高まっています。当社では「創意を生かし、社業を通じて社会に貢献する」を社是に掲げ、CSR活動を推進し、SDGsと親和性の高い商品の開発や女性が働きやすい環境づくりに取り組んでまいりました。昨年11月にはサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ行動指針を策定しました。引き続き事業活動を通じ、社会課題解決に向けて取り組んでまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 今後の経済は、地政学リスクの増大を背景とする原材料価格の高騰に加えて、新型コロナウイルス感染症の再拡大等、なお先行き不透明な状況が続くものと思われます。自動車業界においても、サプライチェーンの混乱を背景とした生産の落ち込みもあり、回復トレンドの本格化は未だ見えない状況であり、経営環境は以前にも増して不確実性が増大しております。

 このような状況下、当社事業ごとの取り組みについては、以下のとおりであります。

 

自動車安全部品事業
 自動車業界は、電動化や自動運転を始めとする技術革新の真っただ中にあり、100年に一度といわれる大変革期を迎えています。当社の製造する自動車安全部品につきましては、性能・コストへの顧客要求が高まりながらも、用途の拡大や安全規制の強化により需要が拡大するものと見込まれます。しかしながら、競合他社と比較し経営資源の小さい当社では、経営資源を集中した商品展開や開発が求められます。資本業務提携を行った豊田合成株式会社の経営資源と連携することにより、新たな提案型営業の実施、サプライチェーンの見直し、設計・製造・調達の効率化、相互の海外拠点の活用等が必要と考えており、以下の重点活動方針に取り組んでまいります。

 (ⅰ) 豊田合成株式会社と連携し新規顧客・新規市場を開拓する

 (ⅱ) 商品競争力の向上

   ①品質力向上

   ②コスト競争力向上

   ③開発・営業力強化

 (ⅲ) 「人材ビジョン」に基づく人材育成

 引き続き、収益性を重視した事業運営を最優先とし、徹底したコストダウンの実施、責任の明確化と収益の見える化、生産性・コストを意識した部門間連携の強化を進めてまいります。

 

機能製品事業
 機能製品事業では、自然災害による国内の防災・減災意識の高まり、国土強靭化政策を受けたインフラ強化といった流れから、今後も需要増加が見込まれるため、以下の重点施策に取り組み、収益拡大を目指します。

 (ⅰ)パルテム関連では、市場動向を注視し、増加する下水道分野の管路更生需要への対応として人材の増強と開発投資を行います。またパルテム各工法は、従来の開削工法と比べると環境への負荷が少なく、持続可能な社会に貢献できる事業として広く訴求し、上水道・農業用水分野における地位確立を目指します。更なる品質の向上、設備の改善・改良によるコスト低減や人材の育成、次世代製品の開発を進め、一層の市場シェア向上に注力します。

 (ⅱ)防災関連では、消防用ホースにおいて新型低圧力損失ホースの市場投入を通じて拡販活動を推し進めるとともに、新たな災害対策市場の開拓を進め、近年の異常気象をはじめとした自然災害に対する防災システムの提供と防災関連資機材の販売強化により拡大をはかります。

 (ⅲ)産業資材関連では、グループ会社を含めた営業・技術部門の業務効率を追求、広巾織物やロープなど主要分野における新規顧客開拓と新規開発のほか、再生可能エネルギー関連資材等の低炭素化社会に向けた製品提供と更なる新規分野の開拓による事業規模の拡大に取り組んでまいります。また、生産体制の再構築・効率化を推進、製造コスト削減に努めます。

 機能製品事業は、市場ニーズと当社の独自技術をマッチングさせた商品・システムの開発推進及び既存技術の品質を向上させることにより、「総合インフラ防災メーカー」の地位確立に引き続き取り組んでまいります。

 

2【事業等のリスク】

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況は、今後起こりうる様々な要因により大きな影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)特定販売先への依存について

 当社グループの事業は自動車安全部品の売上高構成比率が高く、2022年3月期における売上高のうち、販売実績上位2社の占める割合は約47%に達しております。今後新規販売先の開拓やその他事業の売上増により特定販売先への依存度を低下させる方針でありますが、特定販売先への依存度低下が進捗しない段階で、当該販売先による当社グループ及び当社グループ製品に対する取引方針が変化した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。また、当該リスクが顕在化した場合の影響度を見積もることは困難であると認識しております。

(2)製品の欠陥について

 2022年3月期における売上高のうち、約67%を占める自動車安全部品は、製品の特性上、特に品質面において完璧が求められております。当社グループでは世界的に認められている品質管理基準に従い各種製品を製造し、品質管理には万全を期しております。また、保険にも加入しております。しかし、万が一、大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥が発生した場合、当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上高が低下するほか、多額の追加コストが発生し、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(3)原材料等の供給不足・供給価格の高騰について

 当社グループの事業においては、十分な品質の原材料、部品等を調達することが不可欠であります。しかし、供給業者での不慮の事故、天災などにより供給が中断した場合や不安定となった場合、当社グループの事業が悪影響を受ける可能性があります。また、当社グループと供給業者は、契約によりその供給価格を決定しておりますが、原油価格上昇等により原材料・部品価格が高騰する可能性があり、この場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(4)為替レートの変動について

 当社グループは、芦森科技(無錫)有限公司(中華人民共和国)、ASHIMORI (Thailand)CO.,LTD.(タイ王国)、Ashimori India Private LTD.(インド国)、ASHIMORI KOREA CO.,LTD.(大韓民国)及びASHIMORI INDUSTRIA de MEXICO,S.A. de C.V.(メキシコ合衆国)において自動車安全部品の製造・販売を行っており、今後、生産移管をはじめ海外事業の比率が高くなることが予想されます。当社グループは、通常の営業過程における輸出入取引に係る為替変動リスクに対して為替予約取引を行う等、為替変動リスクの軽減を行っておりますが、これらにより全てのリスクを回避することは困難であると認識しております。また、連結財務諸表作成時には海外各国における現地通貨建財務諸表を円換算しているため、為替レートの変動が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(5)知的財産権について

 当社グループは、知的財産を企業の競争力を高めるための重要な経営資源であると考え、開発した商品や技術について、知的財産権による保護に努めておりますが、知的財産権の侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権にかかわる紛争が生じる可能性があります。その場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。また、現段階において、将来的な顕在化の影響を定量的に見積もることは困難であると認識しております。

(6)新型コロナウイルス感染症について

 新型コロナウイルス感染症につきましては、現在は各国において感染拡大防止策を十分に講じながら事業を継続しておりますが、感染による制限が発生した場合、受注の減少や、工場の稼働率低下により当社グループの経営成績、財政状態等に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループにおきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、在宅勤務や出張の自粛、WEB会議システムの活用等を実施しております。

(7)地政学的リスクについて

 ウクライナ情勢の緊迫化については、当社事業における直接的な影響は軽微ですが、間接的な影響が今後顕在化するものと懸念しております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 ① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、国内外における新型コロナウイルス感染症の収束と拡大の繰り返しにより社会経済活動が安定せず、物流網の混乱や原油価格上昇に端を発した材料費の高騰等、厳しい状況が続きました。自動車生産におけるサプライチェーン混乱による供給不足の状況は、未だ解決の見通しが立っていません。

 このような情勢のなかで当社グループは、コスト低減の徹底とグループを挙げた品質管理体制の強化に取り組むとともに、需要が見込まれる分野・地域への拡販を推進し、収益の確保に努めてまいりました。

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は53,514百万円となりました。前年度は自動車安全部品事業において主要顧客の生産調整に伴う販売低迷等、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けたこともあり、前年度比2,266百万円の増収となりましたが、半導体不足の解消や部品の生産・調達の完全正常化には至らず、自動車関連売上の回復は限定的なものとなっています。

 損益面におきましては、物流費の大幅な増加や原材料費の高騰があったものの、営業利益は536百万円と前年度比177百万円増加しました。なお、前年度においては海外連結子会社の外貨建債務等の評価による為替差損69百万円が発生しましたが、当連結会計年度では為替差益221百万円を計上した結果、経常利益は671百万円となり、前年度比251百万円の増益となりました。また、連結納税制度導入による税負担の軽減等により、親会社株主に帰属する当期純利益は510百万円で、前年度比944百万円の大幅な増益となりました。

 なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。この結果、当連結会計年度の売上高が33百万円、売上原価が9百万円、売上総利益が23百万円増加しております。詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 以下、各事業セグメント別に概況をご報告申し上げます。

 当社は、事業本部制を基礎とした製品・サービス別のセグメントから構成されており、「自動車安全部品事業」「機能製品事業」の2つを報告セグメントとしております。
 

 a.自動車安全部品事業

 当連結会計年度においては、シートベルト関連、エアバッグ関連、内装品関連とも、第1四半期において受注が大幅に回復しましたが、第2四半期においては半導体不足や、新型コロナウイルス感染症の影響拡大による急激な減産を余儀なくされる等、生産状況が週単位で大きく変動しました。年度後半においては、回復基調で推移しましたが半導体不足の影響があり増産には至りませんでした。

 この結果、当事業の売上高は35,718百万円と前年度比2,123百万円の増収となりました。損益面におきましては、原材料費高騰に加えて、生産変動に起因する航空便による出荷や海上運賃の高止まり等で物流費が大幅に増加し、営業損失は877百万円となりましたが前年度比では401百万円の改善となりました。

 b.機能製品事業

 パルテム関連は、ライフライン(下水道・上水道・ガス等)の管路更生分野において、新型コロナウイルス感染症の影響もあるなか主力の下水道分野は順調に推移しましたが、鋼材をはじめとする原材料費の高騰により利益面は伸び悩み、売上は増加、利益は横這いとなりました。

 防災関連は、災害対策用排水ホースは想定を大きく上回ったものの、消防用ホース、防災関連資機材がともに期を通じて低調で、売上・利益ともに減少しました。

 産業資材関連は、トラックの大幅減産の影響で物流省力化分野が減少したものの、高機能資材織物(タイミングベルト関連)は増収となり、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた前年に対して全般に好調に推移しました。利益面では、品質不具合対応の経費を計上したことにより、減益となりました。

 この結果、当事業の売上高は17,764百万円と前年度比143百万円の増収となりましたが、損益面におきましては営業利益は2,556百万円と前年度比288百万円の減益となりました。

 c.その他

 当事業の売上高は32百万円、営業利益は9百万円となりました。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は2,181百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,392百万円減少しました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は1,021百万円(前連結会計年度は3,487百万円の獲得)となりました。主な内訳は、減価償却費1,842百万円、棚卸資産の増加2,435百万円、法人税等の支払額933百万円等であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は4,190百万円(前連結会計年度は1,019百万円の使用)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出4,276百万円、有形固定資産の売却による収入250百万円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は1,738百万円(前連結会計年度は221百万円の使用)となりました。主な内訳は、長期借入れによる収入3,700百万円、短期借入金の増加227百万円、長期借入金の返済による支出2,174百万円等であります。

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

自動車安全部品事業(百万円)

35,992

107.3

機能製品事業(百万円)

16,338

109.7

合計(百万円)

52,331

108.1

 (注)金額表示の基準は、販売価額によります。

 

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

機能製品事業

10,921

155.5

4,280

220.1

 (注)機能製品事業のパルテム部門以外は主として見込生産を行っており、受注に基づく生産は、ほとんど行っておりません。

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

自動車安全部品事業(百万円)

35,718

106.3

機能製品事業(百万円)

17,764

100.8

その他(百万円)

32

99.7

合計(百万円)

53,514

104.4

 (注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

マツダ(株)

19,258

37.6

19,954

37.3

スズキ(株)

4,658

9.1

4,932

9.2

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた前連結会計年度比2,266百万円と大幅に増加し、53,514百万円となりましたが、感染拡大前の水準には戻っておりません。自動車安全部品事業においては、通年では大きく回復していますが、サプライチェーンの混乱が継続し、期中において大きく受注が変動しました。

 営業利益は、前連結会計年度比177百万円増加し、536百万円となりました。自動車安全部品事業においては、受注変動に対して可能な限り対応を講じましたが、コストアップの大きな要因となり、物流費の高止まりや原材料価格の上昇もあり、改善は小幅にとどまりました。機能製品事業においては、主力のパルテム関連工事は期末に大きく挽回しましたが、トラック生産の減少を受けて物流省力化分野が苦戦する等、産業資材事業が低調で、前連結会計年度比減益となりました。

 経常利益は、海外子会社の外貨建債務に関わる為替差益等により、前連結会計年度比251百万円増加し、671百万円となりました。

 当連結会計年度から連結納税制度を導入しており、国内子会社と芦森工業単体で課税所得と損金を相殺する等により、税負担が大きく減少し、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比944百万円増加し、510百万円となりました。

 当連結会計年度末の総資産は、50,283百万円と前連結会計年度末に比べ3,428百万円増加しました。2019年に本社・大阪工場土地の一部を売却しましたが、譲渡先事情によりこれを買い戻したことにより、有形固定資産が3,148百万円増加、また、受注変動の影響で棚卸資産が2,688百万円増加しています。また、これに伴い、手元資金の圧縮に努めましたが、有利子負債が2,331百万円増加しています。

 純資産は親会社株主に帰属する当期純利益510百万円の計上により利益剰余金が509百万円増加し17,263百万円と前連結会計年度末に比べ972百万円増加しました。自己資本比率は34.3%と、前連結会計年度末の34.7%から0.3%下落しました。

 

 セグメントごとの経営成績の詳細は「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性について

 キャッシュ・フローの分析については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(資本の財源及び資金の流動性について)

 当連結会計年度では4,762百万円の設備投資を行っております。うち、自動車安全部品事業に1,232百万円を支出しております。生産拠点拡大のための工場建設といった大型投資は一巡しましたが、商品力向上のための金型投資や国内の老朽化した生産設備の更新等は継続して行ってまいりますので、資金需要は今後も続き、資金調達については借入で賄ってまいります。

 一方、当連結会計年度末の有利子負債は長期短期合わせて16,557百万円と総資産50,283百万円の33%を占めておりますので、財務内容悪化の懸念から個々の投資案件につきまして採算性や将来の財務内容への影響等を十分検討して実施してまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しておりますが、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりであります。

 

 (a)貸倒引当金

 当社グループの保有する債権に係る損失が見込まれる場合、その損失に充てる必要額を見積り、引当金を計上しております。一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。

 貸倒懸念債権等特定の債権の回収可能性の評価は、将来の不確実な経済条件の変動などによる影響を受け、債務者の財務状況等が悪化した場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する貸倒引当金及び貸倒引当金繰入額の金額に影響を与える可能性があります。

 (b)固定資産の減損

 当社グループでは、固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合は、減損の要否を判定しております。この判定は、連結グループ個社単位で行うこととしており、事業用資産については、製品グループを考慮して資産グループを決定し、共用資産については、会社全体をグルーピングの単位として将来キャッシュ・フローの見積りを行い、この見積りに基づいて行っております。また、事業の用に供していない遊休資産については、個別物件ごとにグルーピングを行っており、個別に比較可能な正味売却価額に基づいて行っております。将来キャッシュ・フローの見積りについては、合理的に算定された事業計画及び回収可能価額に基づいて行っておりますが、将来の予測不能な予算策定上の前提条件等の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。

 (c)繰延税金資産の回収可能性

 繰延税金資産の回収可能性は、将来の税負担を軽減する効果を有するかどうかで判断しており、当該判断にあたっては、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性があるかどうかを判断しております。

 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたり、一時差異解消見込年度における課税所得を見積っておりますが、この課税所得は、過去の推移を基礎として、合理的に算定された事業計画に基づいて、見積りを行っております。

 当該見積りについて、将来の予測不能な前提条件の変動等により見直しが必要となった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。

 

④ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について

 当社は、2022年から3ヵ年に亘る「第123~125期(2023年3月期~2025年3月期)中期経営計画」を策定いたしました。

 前回の「第120~122期(2020年3月期~2022年3月期)中期経営計画」期間におきましては、自動車安全部品事業の低迷と新型コロナウイルス感染症の影響で業績が大きく悪化し、目標数値を取り下げることとなりました。今回の中期経営計画では、豊田合成(株)との協業により自動車安全部品事業を黒字化し、機能製品事業の収益を新型コロナウイルス感染症拡大前の水準に戻すことにより、前中期経営計画の目標数値に再度チャレンジすることとしています。

 また、当社は、東京証券取引所の新市場区分において「プライム市場」を選択しました。現時点におきましては、流通株式時価総額、一日平均売買代金が上場維持基準に適合しておりませんが、今回の中期経営計画の数値目標の達成により、これらを満たすことができると考えています。また、「プライム市場」上場会社としてガバナンスを一層充足させ、持続可能な社会への取組みをビジネスチャンスと捉えて、これを加速させます。

 次期につきましては、売上高57,000百万円、営業利益1,300百万円、経常利益1,250百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,000百万円を見込んでおります。

                                       (単位:百万円)

 

2022年3月期

実績

2023年3月期

計画

増減

増減率(%)

売上高

53,514

57,000

3,486

6.5

営業利益

536

1,300

764

142.5

(営業利益率)

1.0%

2.3%

1.3

経常利益

671

1,250

579

86.3

親会社株主に対する当期純利益

510

1,000

490

96.1

 

4【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、新たに締結した経営上の重要な契約等は次のとおりです。

 

(資本業務提携の締結)

当社は、2021年5月14日開催の取締役会において、豊田合成株式会社(以下、豊田合成)と資本業務提携を行うことを決議し、同日付で資本業務提携契約を締結いたしました。

 

1.資本業務提携の目的

 自動車産業は、CASEやMaaSと呼ばれる新領域での技術革新の進展等大きな環境変化の中にあります。自動車部品も環境変化への対応に加え、クリーンで安全な製品の提供を通じて豊かな社会づくりに貢献することが求められております。こうした状況に対応するため、当社及び豊田合成の両社は、相互の事業資産とノウハウを活用し、開発力及び製品競争力を強化させることにより、自動車の安全性能の向上に貢献してまいります。

 

2.業務提携の内容

 当社と豊田合成は、セーフティシステム事業において、相互の事業資産とノウハウを活用して、技術開発や生産、購買等の分野で協業体制を構築し、シナジー効果により競争力向上を目指してまいります。

 ① 自動車安全部品のシステム及びコンポーネントの技術・開発領域における協業

 ② 両社の製造拠点の相互活用やモノづくりのノウハウの共有による生産体制及び品質管理体制の強化

 ③ 購買等の分野での協業体制の構築によるサプライチェーンの最適化 等

 

3.資本提携の内容等

 豊田合成は、日本毛織株式会社が保有する当社の普通株式の一部である834,100株(自己株式控除後の発行済み普通株式の13.89%)をToSTNeT-1での立会外取引により2021年5月14日終値で取得いたしました。

 また、2021年6月25日開催の当社第121回定時株主総会において、豊田合成の従業員1名を当社社外取締役として選任し、同日開催の当社取締役会において、豊田合成の従業員1名を当社執行役員として選任いたしました。

 

 4.資本業務提携の相手先の概要

2022年3月31日現在

(1)名称

豊田合成株式会社

(2)所在地

愛知県清須市春日長畑1番地

(3)代表者の役職・氏名

取締役社長 小山 享

(4)事業内容

①自動車部品の製造/販売(ウェザストリップ製品・機能部品・内外装部品・セーフティシステム製品)

②その他製品の製造/販売(オプトエレクトロニクス製品・特機製品)

③スポーツチームの運営及びスポーツ施設の管理

(5)資本金

28,069百万円

(6)設立年月日

1949年6月15日

 

 

5【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、自動車安全部品事業、機能製品事業において、安全、安心、快適な製品、技術を生み出すことを目的としております。大半の研究開発活動は、当社が母体となっておりますが、「パルテム」は工法が主体となるため、子会社(芦森エンジニアリング株式会社)と共同で技術開発を行っております。

 研究開発部門では、中長期で将来軸となるコモディティ化し難い商品もしくはシステムの技術開発に取り組んでおります。特に、新規事業の育成につなげるため、先進ユーザー、サプライヤー、大学等との外部機関と連携、協働を強化した新たな価値創造につなげる活動を実施しております。

 

 当連結会計年度におけるセグメント別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであり、研究開発費の総額は976百万円であります。

 

(1)自動車安全部品事業

 乗員拘束装置(シートベルト、エアバッグ)については、品質及び市場競争力向上のための継続的改善とカーボンニュートラル社会へ貢献するための小型、軽量なデバイス開発及び自動車事故死傷者の低減に貢献するための様々な事故形態に対応可能なシステム開発を進めております。

 内装品については、各種シェード、トノカバー、並びにカーゴネット類の競争力向上及び、商品力向上に主眼を置いた各種製品の開発に取組み、新規市場開拓・顧客拡大に向けた提案型商品の開発を進めております。

 当連結会計年度における自動車安全部品事業の研究開発費は354百万円であります。

(2)機能製品事業

 パルテムHL工法は、更生材料の改良等による施工性向上に注力するとともに、上水道分野における更生管の耐震性能理論深耕並びに市場認知度向上に努めました。パルテムSZ工法は、適用範囲拡大並びに小口径更生管の薄肉化を実現した建設技術審査証明を変更取得しました。パルテム・フローリング工法は、外圧試験データを拡充して構造設計における信頼度を高めるとともに、水密性を中心とした更生管の品質向上に注力しました。また、更生管の品質管理システム構築として、自治体との共同研究にて、「超音波による更生管管内検査手法の開発その2」を継続実施し、管更生の信頼性向上並びに更なる普及に努めています。

 防災関連では、通水時の圧力損失が従来品より低い消防用ドルフィンシリーズの綾織ホース及び平織ホースの開発が完了し、本格的に市場投入しました。また、市場要求に対応した町野式不意離脱防止金具を自社開発し、第123期より市場投入してまいります。消防団向け操法大会用ホースは、コロナ禍による地方及び全国大会中止の中、通水性と操作性を改良した商品の開発を進めました。大量送水用大口径ホースでは、ホースと金具の口径拡充を進め、400Aホースとホース敷設から撤収までのシステムの開発に取り組み受注に至りました。防災資機材では、車両積載型のコンパクトな緊急排水システムと呼吸器ボンベ充填用コンプレッサーの開発を進めました。

 産業資材関連では、労働力不足、高齢化、女性の進出等労働環境改善に貢献すべく、引き続きトラック物流機器について、省力化・自動化を進めた搬送装置の開発に取り組んでまいります。また、脱炭素化社会に向けた再生可能エネルギー分野での資材供給拡大を目指し共同研究や実証実験の実績を積み重ねて採用につなげてまいります。ゴム資材用広幅織物については、カーメーカーの急速な脱エンジン化の流れを受け、一般産業用途への転換と拡大、付加価値の高い高機能ベルト用織物の開発を推進してまいります。新規分野では、繊維素材の特性を生かし、高所作業での快適性や作業性を改善した資材提供や、快適環境づくりに貢献する製品の開発を進めてまいります。

 当連結会計年度における機能製品事業の研究開発費は488百万円であります。

(3)その他

 技術企画部では、将来の市場を見据えて、当社のコア技術を組み合わせた商品開発を行っています。

 ①新市場、新商品開発

 環境負荷の少ない材料での減災商品開発、介護向けアシストスーツの開発を進めております。また、医療分野では、患者が快適に生活できるシステムの開発に取り組んでいます。

 ②円筒織物活用製品、システムの開発

 革新織機や押出成形の加工技術を用い、軽量・平滑・低挙動ホースの開発と送水システムの構築を行っております。

 ③生産革新

  大気圧プラズマを応用したホース生産技術の開発、環状織機の自動化等を進めています。

  当連結会計年度におけるその他の研究開発費は133百万円であります。