当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「信用を重んじ、堅実を旨とする」「人の和と開かれた心で活力ある企業を築く」「創意を生かし、社業を通じて社会に貢献する」を企業経営の目標を達成するための活動指針である「社是」に掲げ、事業に対する信頼性と堅実性を経営の基本に位置付け、長期的視野から安定した経営基盤の確立に努めるとともに、卓越した開発力、技術力で多くの新しい商品を世に送り出し、事業活動を通じて社会貢献することを基本理念としております。
また、会社の存在意義、ありたい姿と価値観を明確にするため「ミッション・ビジョン・バリュー」を策定し、社内の意思統一をはかるためにスローガンを作成しております。
≪スローガン≫ つむぐ技術(ちから)、つなげる未来
①『ミッション』 “私たちの使命は、命と暮らしを守る製品を提供することです”
ミッションは当社の存在意義です。
当社の製品の多くは、事故や災害時に人命を守ることや救助すること、また暮らしの中で事故・災害を未然に防ぐことを目的に使われます。このような製品を確実な品質で提供することにより、当社は社会から存在意義を認められます。
②『ビジョン』 “私たちは、すべての人々に信頼される企業グループであり続けます”
ビジョンは当社がミッションを通して目指す会社の姿です。
当社の存在意義であるミッションを長期に亘り果たし続けることで、取引先やエンドユーザー、株主、地域社会、そして従業員やその家族から信頼を得ることができます。
③『バリュー』 “私たちは、誠実に、ルールを守り、品質最優先のものづくりに取り組みます”
バリューは当社が重んじる価値観です。
ミッションを果たしビジョンを達成するためには、製品に求められる品質が揺るがぬよう、あらゆる意思決定と業務実施の場面において高い規範意識が必要となります。
「社是」を経営理念として最上位に位置付け、新たな「ミッション・ビジョン・バリュー」と一体であるべき姿を目指す会社の『道標』とし、日々業務を遂行していく上での指針としております。
(2)目標とする経営指標
当社は、2022年から3ヵ年に亘る「第123~125期(2023年3月期~2025年3月期)中期経営計画」を昨年5月に策定いたしました。当該中期経営計画においては事業評価の指標としてROIC(投下資本利益率)を導入し、経営効率と財務体質の改善をはかることとしております。
(3)経営戦略
当社グループでは、“新たな成長軌道への挑戦”として、成長市場である自動車分野と管路更生分野に経営資源を集中してまいります。自動車分野においては、豊田合成株式会社との協業を深化させ、シートベルト技術とエアバッグ技術を組み合わせたセーフティシステムの開発を推進し、新規顧客の獲得や受注拡大に取り組んでまいります。また、管路更生分野においては老朽化した国内インフラの更新が見込まれることから、新工法の開発と下水道分野以外への展開を強化し、需要の拡大に対応してまいります。
また、当社グループは、自動車安全部品、防災用商品や物流省力化商品、管路更生事業等、「命と暮らしを守る製品」を提供し、SDGsが国際社会の共通テーマとなる以前より、社会課題の解決に貢献してまいりました。引き続きSDGsと親和性の高い商品の開発を進めると同時に、徹底した省エネによる環境負荷の軽減、全ての従業員が働きやすい環境づくり、社会貢献活動への取組み等、「サステナブルなものづくり」を推進いたします。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の経済は、新型コロナウイルス感染症による規制緩和により、国内経済は持ち直しの動きがみられるものの、物価上昇や為替の変動、世界的なインフレの進行による景気後退懸念等、なお先行き不透明な状況が続くものと思われます。
このような状況下、当社事業ごとの取り組みについては、以下のとおりであります。
自動車安全部品事業
自動車業界では急速なEV化が進行しています。当社の製造する自動車安全部品は、安全規制の強化等により、今後
も需要拡大が見込まれる一方で、更なる安全性能の向上やコスト低減等のニーズが高まるものと予想されます。
これらに対応するため、当社は豊田合成株式会社との協業を更に深化させ、競争力の高い商品開発に継続して取り組むとともに、TPS(トヨタ流ものづくり)の定着により、生産性の向上と不具合品の撲滅(ゼロディフェクト)、品質の向上をはかります。
為替や原材料市況の変動等の外部環境変化や生産変動に対して、耐性のある収益体質の構築も重要課題と考えています。加えて、一部の海外グループ会社での収益改善が急務であると認識しており、ガバナンスの強化とグローバルでの生産体制の見直しを着実に進めてまいります。
機能製品事業
機能製品事業では、甚大化傾向にある自然災害に対する国内の防災・減災意識の高まり、継続中の国土強靭化政策
を受けたインフラ強化等から、今後も需要増加が見込まれるため、「総合インフラ防災メーカー」の地位確立に向け
て以下の施策に取り組んでまいります。
(ⅰ)パルテム関連では、主力の下水道分野の管路更生需要への対応として生産性向上とシェアアップを目的とした次世代工法の開発を中心に投資を行います。また、管路更生は開削工法と比べて環境への負荷が少ないことから、持続可能な社会に貢献できる事業として広く訴求し、上水道・農業用水分野における認知度向上と売上拡大を目指します。
(ⅱ)防災関連では、引き続き消防用ホースの市場シェア回復に注力するとともに、石油コンビナート等の大規模火災に対する消火システム商品の拡販と新たな防災用品の開発に取り組みます。また、生産体制の効率化と販管費の削減により収益力の改善をはかります。
(ⅲ)産業資材関連では、商材の「選択と集中」を進めます。人手不足が深刻な物流業界のニーズに対応した物流省力化商品の開発と拡販にグループ会社と一体となって取り組むほか、再生可能エネルギー関連資材等に注力いたします。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「地球環境問題への対応を重要な経営課題と認識し、持続可能な社会の実現のため積極的、能動的に取り組む」ことを企業行動指針に定め、以下の取り組みを行っております。
(1)ガバナンス
当社グループのガバナンスについては、
取締役社長を委員長とし、常勤取締役及び執行役員、常勤監査役、関連する部署の部門長で構成される「サステナビリティ委員会」を四半期毎に開催し、サステナビリティに関する課題の審議を行い、気候変動等による当社にとってのリスクと新たな機会・ビジネスチャンスを抽出し、それらへの対応策・対応方針を取締役会に報告し、「サステナブルな経営」を推進しております。
(2)戦略
当社グループではSDGsへの取組みに向けた5つの「マテリアリティ(重要課題)」を定めております。
①気候変動
気候変動が当社グループの事業にもたらすリスクと機会を評価するため、シナリオ分析を現在進めております。物理的リスクについては、ハザードマップや過去の風水害による影響も考慮して評価を進めています。また移行リスクについては、炭素税の導入やエネルギー費の高騰等が予想されますが、現時点での影響は限定的と考えております。
自動車業界では脱化石燃料の流れが進んでいますが、当社自動車安全部品事業の主要な製品であるシートベルト、エアバッグ及び内装品については、引き続き需要の拡大が見込まれます。また機能製品事業では、パルテム関連(管路更生事業)は掘削工法に比べて環境負荷が少なく、防災関連の排水ホースや災害用テント、産業資材関連の物流省力化商品等、サステナブルな商品供給により、事業を通じて社会に貢献できる機会は増加するものと考えております。
②コンプライアンス
当社グループは、「国の内外を問わず、全ての法律やルール及びその精神を遵守し、公正で自由な企業活動を行う」ことを企業行動指針に定めています。コンプライアンス室を事務局として、Eラーニングを活用し、ハラスメント、贈収賄防止を始め、業務に関連する各種法令についての研修を実施する他、「コンプライアンスハンドブック」や「芦森グループ従業員行動規範」を定着させるべくサークル活動を行っています。コンプライアンスへの取り組みについては、取締役社長を委員長とする「コンプライアンス委員会」を設置してモニタリングしております。
③環境への対応
日本政府が目標に定める、2030年には温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減、2050年に完全なカーボンニュートラルを実現することに向けて、当社グループとしての削減計画の策定に取組んでおります。具体的には、循環型社会へ向けた取り組みを継続して行っており、3R(リデュース、リユース、リサイクル)を徹底し、廃棄物の発生量削減に努める他、工業用水のリサイクル技術の活用などにより水資源の確保に努めています。なお、CO2排出量の推移は、「
④人材育成方針
当社グループは、「従業員を公正・適切に処遇するとともに、安全で働きやすい職場環境を確保し、ワークライフバランスと健康に配慮する」ことを企業行動指針に定め、人的資本の質を高めることにより、企業価値の向上を目指しています。
詳細は「
(3)リスク管理
リスク管理体制
取締役社長を委員長とする芦森グループリスク管理委員会を年2回以上開催し、地球環境、社会人権の尊重、腐敗防止、サイバーセキュリティ等、サステナビリティに関連したリスクも含めて、グループ全体及び各事業におけるリスクを抽出、分類、定量化し、その防止あるいは軽減策を検討しております。
(4)指標及び目標
①CO2排出量の推移
当社及び当社グループ連結(国内・海外)の2019年3月期から2023年3月期までのCO2排出量(Scope1及びScope2)の推移は下記のとおりです。なお、カーボンニュートラルに向けた計画(ロードマップ)については、策定次第、統合レポートや当社ウェブサイトなどで別途開示予定です。
②人的資本
当社グループは、「従業員を公正・適切に処遇するとともに、安全で働きやすい職場環境を確保し、ワークライフバランスと健康に配慮する」ことを企業行動指針に定め、人的資本の質を高めることにより、企業価値の向上を目指しています。
当社グループの企業理念に共感し、その一員として社内外に関わり、そのフィードバックとして感謝されることが従業員の絶対的な仕事のやりがいになり、成長につながります。このために求められる「芦森パーソン」としての人材像を 「芦森グループ人材 Vision」として策定し、これを具現化するため、下記の「人材育成方針」に基づき、人事制度及び教育制度の改革を進めています。
『人材育成方針』
1.会社は、成果を上げた人、努力を惜しまない人を公正に評価します。
2.会社は、社員教育を充実させ、社員の成長を後押しします。
3.会社は、社員が働きやすい職場環境と風通しが良い風土の構築に努めます。
直近の事例としましては、新型コロナウイルス感染症が収束に向かう中で、その拡大防止を目的に導入した在宅勤務を「働き方改革」の一環として制度化しました。
また当社グループは、「人権を尊重し、様々な文化・習慣や価値観を受け入れ、多様性の確保を推進する」ことを企業行動指針に定めています。この指針に基づき「芦森グループ人権方針」を策定し、国籍、人種、民族、性別、年齢、信条、宗教、障がい、性自認、性的指向等に関するあらゆる差別やあらゆる形態のハラスメント行為が排除された職場環境づくり行っています。加えて当社グループは、強制労働や児童労働等の人権侵害を容認せず、これらに関連した原材料は使用しない等、人権に配慮した事業活動に努めてまいります。
なお、人的資本に関わる管理指標等は現在検討中につき、策定次第、統合レポートや当社ウェブサイトなどで別途開示予定です。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況は、今後起こりうる様々な要因により大きな影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)特定販売先への依存について
当社グループの事業は自動車安全部品の売上高構成比率が高く、2023年3月期における売上高のうち、販売実績上位2社の占める割合は約47%に達しております。今後新規販売先の開拓やその他事業の売上増により特定販売先への依存度を低下させる方針でありますが、特定販売先への依存度低下が進捗しない段階で、当該販売先による当社グループ及び当社グループ製品に対する取引方針が変化した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。また、当該リスクが顕在化した場合の影響度を見積もることは困難であると認識しております。
(2)製品の欠陥について
2023年3月期における売上高のうち、約71%を占める自動車安全部品は、製品の特性上、特に品質面において完璧が求められております。当社グループでは世界的に認められている品質管理基準に従い各種製品を製造し、品質管理には万全を期しております。また、保険にも加入しております。しかし、万が一、大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥が発生した場合、当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上高が低下するほか、多額の追加コストが発生し、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
(3)原材料等の供給不足・供給価格の高騰について
当社グループの事業においては、十分な品質の原材料、部品等を調達することが不可欠であります。しかし、供給業者での不慮の事故、天災などにより供給が中断した場合や不安定となった場合、当社グループの事業が悪影響を受ける可能性があります。また、当社グループと供給業者は、契約によりその供給価格を決定しておりますが、原油価格上昇等により原材料・部品価格が高騰する可能性があり、この場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
(4)為替レートの変動について
当社グループは、芦森工業本体における外貨建取引に加えて、芦森科技(無錫)有限公司(中国)、ASHIMORI (Thailand)CO.,LTD.(タイ)、Ashimori India Private LTD.(インド)、ASHIMORI KOREA CO.,LTD.(韓国)及びASHIMORI INDUSTRIA de MEXICO,S.A. de C.V.(メキシコ)において自動車安全部品の製造・販売を行っており、今後、生産移管をはじめ海外事業の比率が高くなることが予想されます。当社グループは、通常の営業過程における輸出入取引に係る為替変動リスクに対して為替予約取引を行う等、為替変動リスクの軽減を行っておりますが、これらにより全てのリスクを回避することは困難であると認識しております。また、連結財務諸表作成時には海外各国における現地通貨建財務諸表を円換算しているため、為替レートの変動が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
(5)知的財産権について
当社グループは、知的財産を企業の競争力を高めるための重要な経営資源であると考え、開発した商品や技術について、知的財産権による保護に努めておりますが、知的財産権の侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権にかかわる紛争が生じる可能性があります。その場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。また、現段階において、将来的な顕在化の影響を定量的に見積もることは困難であると認識しております。
(6)地政学的リスクについて
ウクライナ情勢の長期化については、直接的な影響は軽微ですが、資源価格の上昇による原材料価格やエネルギー費、物流費の高騰等、間接的な影響が顕在化しており、利益が圧迫される懸念があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンの分断や資源価格の高騰、人件費や金利の上昇、為替の変動など、大きな影響を受けました。自動車業界においては、半導体不足による生産変動の正常化には、なお時間を要するものと思われます。機能製品事業に関連する業界においても、原材料価格の高騰が継続しているほか、官需では公共工事予算の制約、民需では投資マインドの低下が懸念され、先行き不透明な状況が続いております。
このような情勢のなかで当社グループは、可能な限りのリスク対応を講じると同時に、グループを挙げた品質管理の徹底とコスト低減活動の強化に取り組むとともに、収益や成長が見込まれる分野・地域への拡販を推進し、収益の確保に努めてまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は65,624百万円と、前年度比12,109百万円の大幅な増収となりました。
損益面におきましても、営業利益2,152百万円と、前年度比1,616百万円の大幅な増益となり、業績は大きく改善しました。経常利益は外貨建債権や海外連結子会社に対する貸付金等に係る為替差益624百万円を計上した結果、2,796百万円と前年度比2,124百万円の大幅な増益となり、過去最高益を更新しました。
当期純損益につきましても、海外子会社のASHIMORI INDUSTRIA de MEXICO, S.A. de C.V.において受注の低迷により営業赤字が継続していることから、同社固定資産の減損損失690百万円を特別損失に計上し、併せて繰延税金資産421百万円を取り崩しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は、1,017百万円と、前年度比507百万円の増益となりました。
当連結会計年度末の総資産は、主に当座資産及び棚卸資産の増加により、前年度末比1,268百万円増加の51,552百万円となりました。また、負債は主に支払手形及び買掛金の増加、短期借入金の減少により、前年度比80百万円増加の33,100百万円となりました。
純資産は18,452百万円であり、自己資本比率は35.7%(前連結会計年度は34.3%)となりました。
当連結会計年度は「第123~125期(2023年3月期~2025年3月期)中期経営計画」の初年度となりますが、順調な滑り出しとなりました。
以下、各事業セグメント別に概況をご報告申し上げます。
当社は、事業本部制を基礎とした製品・サービス別のセグメントから構成されており、「自動車安全部品事業」「機能製品事業」の2つを報告セグメントとしております。
a.自動車安全部品事業
中国ロックダウンや半導体不足の影響により、自動車生産台数への影響がありましたが、その後の受注回復と円安効果により、売上高は46,666百万円と前年度比10,948百万円の増収となりました。
損益面は、原材料価格の高騰、物流費の増加の影響がありましたが、営業利益は583百万円と前年度比1,857百万円
の大幅な改善となりました。
b.機能製品事業
パルテム関連は、ライフライン(下水道・上水道・ガス等)の管路更生分野で前年度からの繰越工事が順調に進捗したこともあり、売上・利益ともに大幅に増加しました。
防災関連は、防災関連資機材は順調に推移したものの、消火栓用ホース、災害対策用排水ホースは想定を下回り、売上は前年度比ほぼ横這い、利益については減少しました。
産業資材関連は、物流省力化分野がトラックの大幅減産の影響を受け低迷し、売上・利益ともに減少しました。
この結果、当事業の売上高は18,926百万円と前年度比1,161百万円の増収となりましたが、営業利益につきまして
は2,207百万円と前年度比61百万円の微減となりました。
c.その他
当事業の売上高は31百万円、営業利益は10百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は4,402百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,220百万円増加しました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は6,267百万円(前連結会計年度は1,021百万円の使用)となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益2,110百万円、減価償却費1,885百万円、減損損失690百万円、仕入債務の増加1,393百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は1,463百万円(前連結会計年度は4,190百万円の使用)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出1,535百万円、有形固定資産の売却による収入201百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は2,700百万円(前連結会計年度は1,738百万円の獲得)となりました。主な内訳は、長期借入れによる収入2,788百万円、短期借入金の減少2,829百万円、長期借入金の返済による支出2,470百万円等であります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
自動車安全部品事業(百万円) |
46,495 |
129.2 |
|
機能製品事業(百万円) |
17,267 |
105.7 |
|
合計(百万円) |
63,763 |
121.8 |
(注)金額表示の基準は、販売価額によります。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
機能製品事業 |
7,998 |
73.2 |
2,519 |
58.9 |
(注)機能製品事業のパルテム部門以外は主として見込生産を行っており、受注に基づく生産は、ほとんど行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
自動車安全部品事業(百万円) |
46,666 |
130.7 |
|
機能製品事業(百万円) |
18,926 |
106.5 |
|
その他(百万円) |
31 |
96.7 |
|
合計(百万円) |
65,624 |
122.6 |
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
マツダ(株) |
19,954 |
37.3 |
25,268 |
38.5 |
|
スズキ(株) |
4,932 |
9.2 |
5,804 |
8.8 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度は、「第123~125期(2023年3月期~2025年3月期)中期経営計画」の初年度となります。売上高は、自動車安全部品事業が大幅に改善し、機能製品事業におきましてもパルテム関連が通年で順調に推移した結果、前連結会計年度比12,109百万円と大幅に増加し、過去最高の65,624百万円となりました。
営業利益は、増収に伴い前連結会計年度比1,616百万円増加し、2,152百万円となりました。自動車安全部品事業では、原材料価格の高騰、物流費の増加の影響がありましたが、生産の回復や円安等により業績が大幅に改善、また機能製品事業においては、消火栓用ホースの需要減少やトラック生産の大幅な減少による物流省力化分野の苦戦が継続しましたが、前年度からの繰越工事が多かったパルテム関連が順調に推移し、前連結会計年度比増益となりました。
経常利益は、外貨建債権や海外連結子会社に対する貸付金等に係る為替差益等により、前連結会計年度比2,124百万円増加し、2,796百万円となり、過去最高益となりました。
海外子会社のASHIMORI INDUSTRIA de MEXICO, S.A. de C.V.において営業赤字が継続していることから、同社固定資産の減損損失690百万円を特別損失に計上し、併せて繰延税金資産421百万円を取り崩しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比507百万円増加し、1,017百万円となりました。
この結果、売上高、営業利益及び経常利益は中期経営計画の初年度計画数値を大きく上回り、親会社株主に帰属する当期純利益は計画のとおりとなりました。中期経営計画の2年目となる第124期(2024年3月期)は、連結売上高57,000百万円、営業利益2,000百万円の計画としていましたが、利益改善が順調に進んでいることから、これを上回る連結売上高65,000百万円、営業利益2,300百万円を目指してまいります。
当連結会計年度末の総資産は、増収に伴い51,552百万円と前連結会計年度末に比べ1,268百万円増加しましたが、上記海外子会社における減損損失等により有形固定資産が893百万円減少しています。また短期借入金及び長期借入金の圧縮に努めた結果、有利子負債は2,258百万円の減少となりました。
純資産は親会社株主に帰属する当期純利益1,017百万円の計上により利益剰余金が865百万円増加し18,452百万円と前連結会計年度末に比べ1,188百万円増加しました。自己資本比率は35.7%と、前連結会計年度末の34.3%から1.4ポイント上昇しました。
セグメントごとの経営成績の詳細は「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性について
キャッシュ・フローの分析については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性について)
当連結会計年度では1,513百万円の設備投資を行っており、減価償却費1,885百万円の範囲内として財務体質の強化及び有利子負債の圧縮に努めております。設備投資のうち、自動車安全部品事業に1,082百万円を支出しております。生産拠点拡大のための工場建設といった大型投資は一巡しましたが、新規受注を目的とした金型投資や老朽化した生産設備の更新等は継続して行ってまいります。
なお、当連結会計年度末の有利子負債は長期短期合わせて14,299百万円と総資産51,552百万円の28%を占めており、個々の投資案件につきまして採算性を厳格に算定して選別し、新規の資金調達は行わない方針です。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しておりますが、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりであります。
(a)貸倒引当金
当社グループの保有する債権に係る損失が見込まれる場合、その損失に充てる必要額を見積り、引当金を計上しております。一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。
貸倒懸念債権等特定の債権の回収可能性の評価は、将来の不確実な経済条件の変動などによる影響を受け、債務者の財務状況等が悪化した場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する貸倒引当金及び貸倒引当金繰入額の金額に影響を与える可能性があります。
(b)固定資産の減損
当社グループでは、固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合は、減損の要否を判定しております。この判定は、連結グループ個社単位で行うこととしており、事業用資産については、製品グループを考慮して資産グループを決定し、共用資産については、会社全体をグルーピングの単位として将来キャッシュ・フローの見積りを行い、この見積りに基づいて行っております。また、事業の用に供していない遊休資産については、個別物件ごとにグルーピングを行っており、個別に比較可能な正味売却価額に基づいて行っております。将来キャッシュ・フローの見積りについては、合理的に算定された事業計画及び回収可能価額に基づいて行っておりますが、将来の予測不能な予算策定上の前提条件等の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
(c)繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税負担を軽減する効果を有するかどうかで判断しており、当該判断にあたっては、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性があるかどうかを判断しております。
収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたり、一時差異解消見込年度における課税所得を見積っておりますが、この課税所得は、過去の推移を基礎として、合理的に算定された事業計画に基づいて、見積りを行っております。
当該見積りについて、将来の予測不能な前提条件の変動等により見直しが必要となった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
④ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について
当社は、2022年から3ヵ年に亘る「第123~125期(2023年3月期~2025年3月期)中期経営計画」を策定いたしました。
前回の「第120~122期(2020年3月期~2022年3月期)中期経営計画」期間におきましては、自動車安全部品事業の低迷と新型コロナウイルス感染症の影響で業績が大きく悪化し、目標数値を取り下げることとなりました。今回の中期経営計画では、豊田合成(株)との協業により自動車安全部品事業を黒字化し、機能製品事業の収益を新型コロナウイルス感染症拡大前の水準に戻すことにより、前中期経営計画の目標数値に再度チャレンジすることとしています。
また、当社は、東京証券取引所の新市場区分において「プライム市場」を選択しました。現時点におきましては、流通株式時価総額、一日平均売買代金が上場維持基準に適合しておりませんが、今回の中期経営計画の数値目標の達成により、これらを満たすことができると考えています。また、「プライム市場」上場会社としてガバナンスを一層充足させ、持続可能な社会への取組みをビジネスチャンスと捉えて、これを加速させます。
次期につきましては、売上高65,000百万円、営業利益2,300百万円、経常利益2,200百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,500百万円を見込んでおります。
(単位:百万円)
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指標 |
2023年3月期 実績 |
2024年3月期 計画 |
増減 |
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売上高 |
65,624 |
65,000 |
△624( 1.0%減) |
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営業利益 |
2,152 |
2,300 |
148( 6.9%増) |
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(営業利益率) |
3.3% |
3.5% |
0.2ポイント増 |
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経常利益 |
2,796 |
2,200 |
△596(21.3%減) |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
1,017 |
1,500 |
483(47.5%増) |
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、自動車安全部品事業、機能製品事業において、安全、安心、快適な製品、技術を生み出すことを目的としております。大半の研究開発活動は、当社が母体となっておりますが、「パルテム」は工法が主体となるため、子会社(芦森エンジニアリング株式会社)と共同で技術開発を行っております。
研究開発部門では、中長期で将来軸となるコモディティ化し難い商品もしくはシステムの技術開発に取り組んでおります。特に、新規事業の育成につなげるため、先進ユーザー、サプライヤー、大学等との外部機関と連携、協働を強化した新たな価値創造につなげる活動を実施しております。
当連結会計年度におけるセグメント別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであり、研究開発費の総額は
(1)自動車安全部品事業
様変わりするクルマの進化に対応し、乗る人の安全・安心・快適を世界中の人々に提供できるシステムサプライヤとなるために地球環境にも配慮した継続的な開発を進めております。
シートベルトとエアバッグでは、交通事故死亡者ゼロとなる社会の実現に貢献し、安全・安心を提供するシステム開発を進めております。内装品では、グローバルな市場でお客様の使われ方や機能性に主眼を置いた快適を提供する提案型の製品開発に取組んでいます。
当連結会計年度における自動車安全部品事業の研究開発費は
(2)機能製品事業
パルテム(管更生)関連では、①パルテムHL工法:上水道分野や圧力配管において劣化した既設管へ施工時負荷を軽減し、且つ高強度更生管を要望され、施工性と高強度化の両立が問題となっていましたが、硬化性樹脂の改良により問題解決に加えて、“耐震性能を有する反転工法”を完成しました。②パルテムSZ工法:安定した実績を伸ばしている商品ですが、品質向上を目的に施工者向けの研修会を実施しました。また適用範囲拡大並びに安定生産、製造数量増大に向けた評価試験に努めました。③パルテム・フローリング工法:大型工事の対応として、構造設計の信頼度を高める為、外圧試験を実施しました。また同時に東京都下水道局の適用口径拡大に向けた試行工事認定を取得いたしました。④その他:材料の安定供給に向けた改良・改善、及び工事の省力化に向けた取り組みにも注力しています。
防災関連では、消防用低圧力損失ホースにおいて、平織仕様、綾織仕様、アラミド繊維仕様の品種拡充を進めました。また、結合金具において、不意離脱防止金具を自社開発し市場投入が完了しました。消防団向け操法大会用ホースは、通水性と操作性を更に改良した商品の開発が完了し来期に市場投入致します。大量送水用大口径ホースでは、400Aホースとホース敷設・回収システムを開発し、安全性や操作性を重視した商品に仕上げました。水害対策資材において、緊急排水ホースの軽量化と車両積載型のコンパクトな緊急排水システムの開発を進めました。
産業資材関連では、トラック物流機器分野において、2024年問題に向け省力化・自動化を進めた搬送装置の開発に取り組んでおります。また、再生エネルギー開発分野において、洋上風力や太陽光発電に関する共同研究や実証実験の実績を積み重ねながら、合成繊維ロープなどの新規市場開拓に取り組んでおります。ゴム資材用織物分野において、一般産業用途での拡充を果たすべく、付加価値の高い高機能伝動/搬送ベルトへの採用に向けた開発を推進しております。新規分野への取り組みでは、繊維素材の特徴を生かし、高所作業での快適性や作業性を改善した製品の開発を進めております。また、土木分野での軟弱地盤改良工法の実績を生かし、新たな分野への応用へも取り組んでおります。
当連結会計年度における機能製品事業の研究開発費は
(3)その他
技術企画部では、将来の市場を見据えて、当社のコア技術を組み合わせた商品開発を行っています。
①新市場、新商品開発
環境負荷の少ない材料での減災商品開発、介護向けアシストスーツの開発を進めております。また、環境分野では、温暖化防止システムの開発に取り組んでいます。
②円筒織物活用製品、システムの開発
革新織機や押出成形の加工技術を用い、軽量・平滑・低挙動ホースの開発と送水システムの構築、拡大を行っております。
③生産革新
大気圧プラズマを応用したホース生産技術の開発、環状織機の自動化等を進めています。
当連結会計年度におけるその他の研究開発費は