第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、「信用を重んじ、堅実を旨とする」「人の和と開かれた心で活力ある企業を築く」「創意を生かし、社業を通じて社会に貢献する」を企業経営の目標を達成するための活動指針である「社是」に掲げ、事業に対する信頼性と堅実性を経営の基本に位置付け、長期的視野から安定した経営基盤の確立に努めるとともに、卓越した開発力、技術力で多くの新しい商品を世に送り出し、事業活動を通じて社会貢献することを基本理念としております。

また、当該「社是」を分かりやすく解釈し、当社の経営精神を全役員、全従業員で共有することを目的に、以下のとおり『ミッション・ビジョン・バリュー』を制定し、日々業務を遂行していく上での指針としております。

①『ミッション』私たちは何のために存在しているのか(当社の使命・存在理由)

 “新しい価値”の提供で、社会に貢献する

②『ビジョン』私たちは10年後にどうなろうとしているのか(将来、こうありたい姿)

 “安全・リニューアル”分野で技術をリードする

 世界に通じる“Excellent Company”

③『バリュー』私たちの大事にしたい価値観は何なのか

 “スピード”

 “コミュニケーション”

 “ストーリー”

 社是及び『ミッション・ビジョン・バリュー』を実践していくことで、当社は、健全で持続的な発展を目指し、社会からの信用・信頼と、従業員の幸せを追求していきたいと考えております。

 

(2)目標とする経営指標

 当社では、企業価値の向上を目指すにあたり、総資産利益率、自己資本利益率等を重視しておりますが、当連結会計年度実績で売上高の約66%を占める自動車安全部品事業の収益力の向上を課題としているため、営業利益と営業利益率を特に重要な経営指標と位置づけ、その向上に取り組むとともに、有利子負債の削減と自己資本比率の向上を目標とした財務体質の強化に取り組んでおります。

 

(3)経営戦略

 当社グループでは、創業150周年となる2028年に向けた「Vision2028」を作成し、基本方針として、収益性を重視、事業の基盤固めを行い、徹底したコストダウンの実施・責任の明確化と収益の見える化・生産性・コストを意識した部門間連携の強化を進めております。また、経営資源の集中と開発・営業戦略の強化を図るため、ターゲット顧客・ターゲット商品の絞り込みや小回りの利く顧客対応力・製造力の強化に取り組んでまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 「ウィズ・コロナ」「ポスト・コロナ」において消費動向が大きく変化することが確実で、事業を取り巻く環境が見通しづらい状況となっています。また、持続可能な社会の実現に向けた取り組みに対する社会の関心も高まってきており、対応が求められております。

 このような状況下、当社事業ごとの取り組みについては、以下のとおりであります。

 

自動車安全部品事業
 自動車産業は、CASEやMaaSと呼ばれる新領域での技術革新の進展等大きな環境変化の中にあります。当社の製造する自動車安全部品につきましても、将来を見据えた様々な変化・進化が求められながらも需要は着実に拡大するものと見込まれます。しかしながら、競合他社と比較し経営資源の小さい当社では、全方位型の商品展開や開発ならびにサプライチェーンを見直し、経営資源を集中した商品開発と提案型営業、設計・製造・調達の緊密な連携による収益の向上、海外拠点を活かした販売と調達のグローバル化を推進することが必要と考え、現在、「徹底した効率化による原価低減」、「技術力・品質力の向上による顧客視点の商品展開」、「情報の共有化によるグローバル全体最適の追求」といった重点活動方針に取り組んでおります。

 また当社では、2021年5月に、豊田合成株式会社と資本業務提携契約を締結しました。本業務提携を通じて、相互の事業資産とノウハウを活用し、製品競争力及び開発力を強化させることにより、自動車安全部品事業の拡大と収益性の改善を目指してまいります。具体的には、技術開発や生産、購買等の分野で協業体制を構築し、シナジー効果により競争力向上を目指します。

 本業務提携における取り組み内容は以下の内容を計画しております。

 ①自動車安全部品のシステム及びコンポーネントの技術・開発領域における協業

 ②国内外での両社の製造拠点の相互活用等を通じたサプライチェーンの最適化

 ③生産・供給体制及び品質管理体制の強化 等

 

機能製品事業
 機能製品事業では、自然災害による国内の防災・減災意識の高まり、国土強靭化政策を受けたインフラ強化といった流れから、今後も需要増加が見込まれるため、以下の重点施策に取り組み、収益拡大を目指します。

 ①パルテム関連では、市場動向を注視し、増加する下水道分野の管更生需要への対応と上水道・農業用水分野における地位確立を目指します。設備の改善・改良による生産の合理化や更なる品質の向上、人材の育成、次世代製品の開発を推し進め、一層の市場シェア向上に注力します。

 ②防災関連では、新型低圧力損失ホースの市場投入を通じて拡販活動を推し進めるとともに、新たな災害対策市場の開拓を進め、防災システムの提供と防災関連資機材の販売強化により拡大を図ります。

 ③産業資材関連では、グループ会社を含めた営業・技術部門の業務効率を追求、広巾織物やロープ等主要分野における新規顧客開拓と新規開発のほか、自然エネルギー関連資材等の低炭素化社会に向けた製品提供と更なる新規分野の開拓による事業規模の拡大に取り組んでまいります。また、生産体制の再構築・効率化を推進、製造コスト削減に努めます。

 機能製品事業は、市場ニーズと当社の独自技術をマッチングさせた商品・システムの開発推進及び既存技術の品質を向上させることにより、「総合インフラ防災メーカー」の地位確立に引き続き取り組んでまいります。

 

2【事業等のリスク】

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況は、今後起こりうる様々な要因により大きな影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)特定販売先への依存について

 当社グループの事業は自動車安全部品の売上高構成比率が高く、2021年3月期における売上高のうち、販売実績上位2社の占める割合は約47%に達しております。今後新規販売先の開拓やその他事業の売上増により特定販売先への依存度を低下させる方針でありますが、特定販売先への依存度低下が進捗しない段階で、当該販売先による当社グループ及び当社グループ製品に対する取引方針が変化した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。また、当該リスクが顕在化した場合の影響度を見積もることは困難であると認識しております。

(2)製品の欠陥について

 2021年3月期における売上高のうち、約66%を占める自動車安全部品は、製品の特性上、特に品質面において完璧が求められております。当社グループでは世界的に認められている品質管理基準に従い各種製品を製造し、品質管理には万全を期しております。また、保険にも加入しております。しかし、万が一、大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥が発生した場合、当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上高が低下するほか、多額の追加コストが発生し、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(3)原材料等の供給不足・供給価格の高騰について

 当社グループの事業においては、十分な品質の原材料、部品等を調達することが不可欠であります。しかし、供給業者での不慮の事故、天災などにより供給が中断した場合や不安定となった場合、当社グループの事業が悪影響を受ける可能性があります。また、当社グループと供給業者は、契約によりその供給価格を決定しておりますが、原油価格上昇等により原材料・部品価格が高騰する可能性があり、この場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(4)為替レートの変動について

 当社グループは、芦森科技(無錫)有限公司及び無錫芦森国際貿易有限公司(中華人民共和国)、ASHIMORI (Thailand)CO.,LTD.(タイ王国)、Ashimori India Private LTD.(インド国)、ASHIMORI KOREA CO.,LTD.(大韓民国)及びASHIMORI INDUSTRIA de MEXICO,S.A. de C.V.(メキシコ合衆国)において自動車安全部品の製造・販売を行っており、今後、生産移管をはじめ海外事業の比率が高くなることが予想されます。当社グループは、通常の営業過程における輸出入取引に係る為替変動リスクに対して為替予約取引を行う等、為替変動リスクの軽減を行っておりますが、これらにより全てのリスクを回避することは困難であると認識しております。また、連結財務諸表作成時には海外各国における現地通貨建財務諸表を円換算しているため、為替レートの変動が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(5)知的財産権について

 当社グループは、知的財産を企業の競争力を高めるための重要な経営資源であると考え、開発した商品や技術について、知的財産権による保護に努めておりますが、知的財産権の侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権にかかわる紛争が生じる可能性があります。その場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。また、現段階において、将来的な顕在化の影響を定量的に見積もることは困難であると認識しております。

(6)新型コロナウイルス感染症に関するリスク

 新型コロナウイルス感染症は、国外において生産拠点が操業を停止する等、当社グループの事業活動に大きな影響を与えており、今後も新型コロナウイルス感染症拡大が続く場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループにおきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、在宅勤務や出張の自粛、WEB会議システムの活用等を実施しております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 ① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により激変しました。年度前半には、国内で緊急事態宣言が発出されたことにより経済活動が停滞し、景気が急速に悪化いたしました。また、当社グループの海外拠点においてもロックダウンによる操業停止を余儀なくされました。年度後半においては、景気は徐々に持ち直しの動きが見られたものの、新型コロナウイルス感染症の再拡大もあり、引き続き先行き不透明な状況が続くものと見込まれます。このような情勢のなかで当社グループは、作業効率化による原価低減や間接経費の削減に取り組むとともに、収益や成長が見込まれる分野・地域への拡販を推進し、収益の確保に努めてまいりました。

 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を挽回するには至らず、当連結会計年度の売上高は51,248百万円となり、前年度比7,046百万円の大幅な減収となりました。 損益面については、年度後半では大きく改善したものの、海外連結子会社において売上債権の貸倒引当金繰入額を計上したことにより、営業利益は359百万円と前年度比240百万円の減益、経常利益は419百万円と前年度比232百万円の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純損失は433百万円で、土地売却益を2,872百万円計上した前年度比2,479百万円の大幅な減益となり、極めて厳しい結果となりました。

 以下、各事業セグメント別に概況をご報告申し上げます。

 当社は、事業本部制を基礎とした製品・サービス別のセグメントから構成されており、「自動車安全部品事業」「機能製品事業」の2つを報告セグメントとしております。
 

 a.自動車安全部品事業

 当連結会計年度においては、特に年度前半に国内及び海外現地法人ともに新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、主要顧客の生産調整に伴いシートベルト関連、エアバッグ関連、内装品関連とも販売が低迷しました。また、製造拠点の操業度の大幅な低下、商品構成の変化や物流単価の上昇等により、採算が大幅に悪化したことに加え、海外連結子会社において売上債権の貸倒引当金繰入額を計上したことも業績を押し下げました。この結果、当事業の売上高は33,594百万円と前年度比5,677百万円の減収となり、営業損失は1,278百万円となりました。

 b.機能製品事業

 パルテム関連は、農業用水分野や電力分野の受注が増加したものの、新型コロナウイルス感染症の影響もあり主力の下水道分野が伸び悩み、売上・利益ともに減少しました。

 防災関連は、消防用ホースの販売が低迷しましたが、災害対策用排水ホースが期を通じて順調に推移し、売上・利益ともに増加しました。

 産業資材関連は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けロープの販売が低調に推移したほか、高機能資材織物(タイミングベルト関連)の需要が減少し、売上・利益ともに減少しました。

 この結果、当事業の売上高は17,621百万円と前年度比1,377百万円の減収となり、営業利益につきましては2,845百万円と前年度比417百万円の減益となりました。

 c.その他

 当事業の売上高は32百万円、営業利益は7百万円となりました。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は5,574百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,262百万円増加しました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は3,487百万円(前連結会計年度は46百万円の使用)となりました。主な内訳は、減価償却費2,057百万円、たな卸資産の減少1,077百万円、売上債権の減少465百万円等であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は1,019百万円(前連結会計年度は480百万円の使用)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出1,552百万円、有形固定資産の売却による収入169百万円、投資有価証券の売却による収入109百万円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は221百万円(前連結会計年度は928百万円の獲得)となりました。主な内訳は、長期借入れによる収入3,530百万円、短期借入金の減少2,321百万円、長期借入金の返済による支出1,254百万円であります。

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

前年同期比(%)

自動車安全部品事業(百万円)

32,575

80.9

機能製品事業(百万円)

17,685

93.6

合計(百万円)

50,261

84.9

 (注)1.金額表示の基準は、販売価額によります。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

機能製品事業

7,023

69.2

1,944

66.6

 (注)1.機能製品事業のパルテム部門以外は主として見込生産を行っており、受注に基づく生産は、ほとんど行っておりません。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

前年同期比(%)

自動車安全部品事業(百万円)

33,594

85.5

機能製品事業(百万円)

17,621

92.8

その他(百万円)

32

130.7

合計(百万円)

51,248

87.9

 (注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

マツダ(株)

23,034

39.5

19,258

37.6

スズキ(株)

5,343

9.2

4,658

9.1

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、自動車安全部品事業においては年度後半から回復が見られましたが年度前半の落ち込みを埋めきれず、機能製品事業においては防災関連の災害対策用排水ホースが期を通じて順調に推移したものの主力のパルテム関連工事が伸び悩み、前連結会計年度比7,046百万円減少し、51,248百万円となりました。

 営業利益は、自動車安全部品事業においては原価低減を推し進めたものの、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた生産拠点の操業度の大幅な低下、商品構成の変化や物流単価の上昇等、さらに、海外連結子会社において売上債権の貸倒引当金繰入額を計上したことにより大幅な採算の改善には至らず、機能製品事業においては防災関連の災害対策用排水ホースが利益に貢献したものの主力のパルテム関連工事が伸び悩み、前連結会計年度比240百万円減少し、359百万円となりました。

 経常利益は、営業利益の減少に加え為替差損益が差損に転じましたが金融関連支出の改善もあり前連結会計年度比232百万円減少し、419百万円となりました。

 特別利益で本社・大阪工場土地の一部売却による土地売却益2,872百万円の計上がなくなったこと、特別損失に新型コロナウイルス感染症による損失246百万円と製品保証損失223百万円を計上したことから、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度比3,423百万円減少し、178百万円となりました。

 翌連結会計年度から連結納税制度を導入いたしますが、当連結会計年度は個別会社ごとの納税のため芦森工業単体の欠損で連結グループ会社の利益を相殺できず、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比2,479百万円減少し、433百万円の損失となりました。

 当連結会計年度末の総資産は、新型コロナウイルス感染症に伴う事業環境の不確実性対策として手元資金を厚めに保有したため現金及び預金が1,989百万円増加しましたが、売上債権が477百万円、棚卸資産が1,199百万円、有形固定資産が840百万円減少したこと等により46,855百万円と前連結会計年度末に比べ1,029百万円減少しました。

 負債は仕入債務が172百万円、未払金が82百万円、未払法人税等が180百万円減少したこと等により30,564百万円と前連結会計年度末に比べ515百万円減少しました。

 純資産は親会社株主に帰属する当期純損失433百万円の計上により利益剰余金が586百万円減少し16,290百万円と前連結会計年度末に比べ513百万円減少しました。自己資本比率は34.7%と、前連結会計年度末の35.0%から0.3%下落しました。

 

 セグメントごとの経営成績の詳細は「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性について

 キャッシュ・フローの分析については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(資本の財源及び資金の流動性について)

 当連結会計年度では1,545百万円の設備投資を行っております。うち、自動車安全部品事業に875百万円を支出しております。生産拠点拡大のための工場建設といった大型投資は一巡しましたが、商品力向上のための金型投資や国内の老朽化した生産設備の更新等は継続して行ってまいりますので、資金需要は今後も続き、資金調達については借入で賄ってまいります。

 一方、当連結会計年度末の有利子負債は長期短期合わせて14,226百万円と総資産46,855百万円の30%弱を占めておりますので、財務内容悪化の懸念から個々の投資案件につきまして採算性や将来の財務内容への影響等を十分検討して実施してまいります。

 なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う事業環境の不確実性を鑑み、機動的かつ安定的な資金調達手段確保のため、取引金融機関と新たに総額5,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。詳細につきましては「第2 事業の状況 4.経営上の重要な契約 1.コミットメントライン契約の締結」に記載のとおりであります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しておりますが、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりであります。

 

 (a)貸倒引当金

 当社グループの保有する債権に係る損失が見込まれる場合、その損失に充てる必要額を見積り、引当金を計上しております。一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。

 貸倒懸念債権等特定の債権の回収可能性の評価は、将来の不確実な経済条件の変動などによる影響を受け、債務者の財務状況等が悪化した場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する貸倒引当金及び貸倒引当金繰入額の金額に影響を与える可能性があります。

 (b)固定資産の減損

 当社グループでは、固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合は、減損の要否を判定しております。この判定は、連結グループ個社単位で行うこととしており、事業用資産については、製品グループを考慮して資産グループを決定し、共用資産については、会社全体をグルーピングの単位として将来キャッシュ・フローの見積りを行い、この見積りに基づいて行っております。また、事業の用に供していない遊休資産については、個別物件ごとにグルーピングを行っており、個別に比較可能な正味売却価額に基づいて行っております。将来キャッシュ・フローの見積りについては、合理的に算定された事業計画及び回収可能価額に基づいて行っておりますが、将来の予測不能な予算策定上の前提条件等の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。

 (c)繰延税金資産の回収可能性

 繰延税金資産の回収可能性は、将来の税負担を軽減する効果を有するかどうかで判断しており、当該判断にあたっては、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性があるかどうかを判断しております。

 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたり、一時差異解消見込年度における課税所得を見積っておりますが、この課税所得は、過去の推移を基礎として、合理的に算定された事業計画に基づいて、見積りを行っております。

 当該見積りについて、将来の予測不能な前提条件の変動等により見直しが必要となった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。

 

④ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について

 当社グループでは、創業150周年となる2028年に向けた「Vision2028」を作成し、基本方針として、収益性を重視、事業の基盤固めを行うこととし、徹底したコストダウンの実施・責任の明確化と収益の見える化・生産性・コストを意識した部門間連携の強化を進めています。また、経営資源の集中と開発・営業戦略の強化を図るため、ターゲット顧客・ターゲット商品の絞り込みや小回りの利く顧客対応力・製造力の強化に取り組んでいます。

 「ウィズ・コロナ」「ポスト・コロナ」において消費動向が大きく変化することが確実で、事業を取り巻く環境が見通しづらい状況となっていることから、「Vision2028」の基本方針は継続するものの中期経営計画(2020年3月期から2022年3月期まで)で掲げた数値目標はいったん取り下げ、2022年3月期については単年度計画とし、当社事業への影響を見極めたうえで新たな事業戦略を構築し2023年3月期からの新たな3ヶ年中期経営計画を策定することとしております。

 欧米諸国で新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進み、明るい兆しは見えてきたものの、国内ではワクチン接種の遅れにより、収束は未だ見通せない状況にあります。また、自動車業界においては、世界的な半導体不足を背景とした生産の落ち込みもあり、自動車販売の回復過程は長期化が予想されます。

 次期につきましては、売上高54,000百万円、営業利益580百万円、経常利益530百万円、親会社株主に帰属する当期純利益220百万円を見込んでおります。

                                       (単位:百万円)

 

2021年3月期

実績

2022年3月期

計画

増減

増減率(%)

売上高

51,248

54,000

2,751

5.4

営業利益

359

580

220

61.5

(営業利益率)

0.7%

1.1%

0.4

経常利益

419

530

110

26.2

親会社株主に対する当期純利益

△433

220

653

 

4【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、新たに締結した経営上の重要な契約等は次のとおりです。

 

1.コミットメントライン契約の締結

 当社は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う事業環境の不確実性を鑑み、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保することを目的として、新たに株式会社三菱UFJ銀行をアレンジャー兼エージェントとするコミットメントライン契約を2020年7月28日に締結しました。契約の内容は以下のとおりであります。

契約金総額

5,000百万円

契約締結日

2020年7月28日

借入可能期間

2020年7月31日~2021年7月30日

借入利率

基準金利+スプレッド

担保提供資産

無担保

アレンジャー兼エージェント

株式会社三菱UFJ銀行

参加金融機関

株式会社三菱UFJ銀行

株式会社三井住友銀行

株式会社りそな銀行

 

2.固定資産の取得

取得先

資産の名称及び所在地

締結日

用地面積

取得価額

(注)

摂津市千里丘7丁目106番8

2021年3月25日

土地 10,184.78㎡

3,400百万円

 (注)取得先につきましては国内の一般事業法人ですが、先方の要請により公表は控えさせていただきます。

 

3.資本業務提携の締結

 当社は、2021年5月14日開催の取締役会において、豊田合成株式会社と資本業務提携を行うことを決議し、同日付で資本業務提携契約を締結いたしました。

 なお、詳細につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

5【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、自動車安全部品事業、機能製品事業において、安全、安心、快適な製品、技術を生み出すことを目的としております。大半の研究開発活動は、当社が母体となっておりますが、「パルテム」は工法が主体となるため、子会社(芦森エンジニアリング株式会社)と共同で技術開発を行っております。

 研究開発部門では、中長期で将来軸となるコモディティ化し難い商品もしくはシステムの技術開発に取り組んでおります。特に、新規事業の育成につなげるため、先進ユーザー、サプライヤー、大学等との外部機関と連携、協働を強化した新たな価値創造につなげる活動を実施しております。

 

 当連結会計年度におけるセグメント別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであり、研究開発費の総額は988百万円であります。

 

(1)自動車安全部品事業

 シートベルトは、品質及び市場競争力向上のための継続的改善とコア技術の革新、並びに多様な衝突モードに対応可能な先進デバイスの開発を進めております。

 エアバッグは、ゼロディフェクトと生産性向上の両立を軸とした開発に取組み、リアルワールドにおける自動車事故死傷者ゼロを目指した様々な事故形態に対応可能なデバイス開発、商品化を進めております。

 内装品は、各種シェード、トノカバー、並びにカーゴネット類の競争力向上に主眼を置いた各種製品の開発に取組み、新規市場開拓・顧客拡大に向けた提案型商品の開発を進めております。

 当連結会計年度における自動車安全部品事業の研究開発費は363百万円であります。

(2)機能製品事業

 パルテムHL工法は、更生材料の改良等による製造性及び施工性向上に注力するとともに、内圧管路へ施された更生管の耐震性能検証を継続実施しています。パルテムSZ工法は、高強度化により薄肉化した更生材料を本格的に市場投入し、着実に施工実績を伸ばしました。また、更生管の更なる品質向上を目的に、既設管内径の事前測定を推進しています。パルテム・フローリング工法は、外圧試験データを拡充して、構造設計における信頼度を高めるとともに、更生管厚みの薄肉化に取り組んでいます。更生管の検査診断システムとして、自治体と「超音波による更生管管内検査手法の開発」の第2期共同研究を実施し、品質管理方法の確立ならびに更なる管更生工法の普及に注力しています。

 防災関連では、通水時の圧力損失が従来品より低い消防用ドルフィンシリーズの綾織ホース及び平織ホースでの口径拡充と量産体制構築が完了し、第122期より本格的に市場投入してまいります。消防団向け操法大会用ホースは、コロナ禍の影響で大会中止が相次ぎましたが、通水性と操作性の更なる改良を継続しております。大量送水用大口径ホースは、ホースと金具の口径拡充とともに、ホースの敷設から撤収までをシステムで提供する開発を進めております。防災資機材では、車両積載型のコンパクトな緊急排水システムと鉄道車両での緊急時避難器具の開発を進めました。

 産業資材関連では、労働力不足、高齢化、女性の進出等を受け、トラック物流機器については、より省力化・自動化を進めた搬送装置の開発に取り組んでまいります。また、高所作業墜落防護分野については、装着性の改善や快適性のニーズを捉えて、新しい商品の開発に取り組んでまいります。ゴム資材用広幅織物については、高機能ベルト用帆布では、高機能繊維を用いた耐久性の高いベルトの開発を継続するとともに、今後のEV化を見据え自動車エンジン用途以外の用途に対しても開発を推進してまいります。合成繊維ロープについては、海洋用途での適用評価試験や実海試験を継続し、採用実績を増やしていきます。土木分野については、軟弱地盤改良用工法を、その特徴を生かした施工現場へ展開を進めてきた結果、採用実績が徐々に増加してまいりました。

 当連結会計年度における機能製品事業の研究開発費は481百万円であります。

(3)その他

 技術企画部では、将来の市場を見据えて、当社のコア技術を組み合わせた商品開発を行っています。

 ①新市場、新商品開発

 環境負荷の少ない材料での減災商品開発、介護向けアシストスーツの開発を進めております。また、農業分野では、省エネルギーで収量を向上させるシステムの開発に取り組み展開を図っております。

 ②円筒織物活用製品、システムの開発

 革新織機や押出成形の加工技術を用い、大量送水を可能にした大口径の高耐圧・軽量・低挙動ホースの開発と展張システムの構築を行っております。

 ③生産革新

  大気圧プラズマを応用したホース生産技術の開発、環状織機の自動化等を進めています。

  当連結会計年度におけるその他の研究開発費は143百万円であります。