第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、「信用を重んじ、堅実を旨とする」「人の和と開かれた心で活力ある企業を築く」「創意を生かし、社業を通じて社会に貢献する」を企業経営の目標を達成するための活動指針である「社是」に掲げ、事業に対する信頼性と堅実性を経営の基本に位置付け、長期的視野から安定した経営基盤の確立に努めるとともに、卓越した開発力、技術力で多くの新しい商品を世に送り出し、事業活動を通じて社会貢献することを基本理念としております。

また、当該「社是」を分かりやすく解釈し、当社の経営精神を全役員、全従業員で共有することを目的に、以下のとおり『ミッション』、『ビジョン』、『バリュー』を制定し、日々業務を遂行していく上での指針としております。

①『ミッション』私たちは何のために存在しているのか(当社の使命・存在理由)

 “新しい価値”の提供で、社会に貢献する

②『ビジョン』私たちは10年後にどうなろうとしているのか(将来、こうありたい姿)

 “安全・リニューアル”分野で技術をリードする

 世界に通じる“Excellent Company”

③『バリュー』私たちの大事にしたい価値観は何なのか

 “スピード”

 “コミュニケーション”

 “ストーリー”

 社是及び『ミッション』、『ビジョン』、『バリュー』を実践していくことで、当社は、健全で持続的な発展を目指し、社会からの信用・信頼と、従業員の幸せを追求していきたいと考えております。

 

(2)目標とする経営指標

 当社では、企業価値の向上を目指すにあたり、総資産利益率、自己資本利益率等を重視しておりますが、当連結会計年度実績で売上高の約67%を占める自動車安全部品事業で減収減益となったことから、収益力の向上を課題としているため、営業利益と営業利益率を特に重要な経営指標と位置づけ、その向上に取り組むとともに、有利子負債の削減と自己資本比率の向上を目標とした財務体質の強化に取り組んでおります。

 

(3)経営戦略

 当社グループでは、創業150周年となる2028年に向けた「Vision2028」を作成し、基本方針として、収益性を重視、事業の基盤固めを行い、徹底したコストダウンの実施・責任の明確化と収益の見える化・生産性・コストを意識した部門間連携の強化を進めております。また、経営資源の集中と開発・営業戦略の強化を図るため、ターゲット顧客・ターゲット商品の絞り込みや小回りの利く顧客対応力・製造力の強化に取り組んでまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないなか、世界経済の低迷、雇用情勢の悪化、金融市場の変動、さらには国際秩序の不安定化リスク等、極めて厳しい状況が続くと予想されます。

 また、「ウィズ・コロナ」、「ポスト・コロナ」における消費様式の変容も先行き不透明で、自動車販売の回復過程は長期化することも予想されます。当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルス感染症による業績への影響は限定的でありましたが、2020年4月以降、自動車安全部品事業では取引先の生産調整による影響から受注が激減し、出荷の落ち込みと生産拠点の一部稼働停止が発生しております。また、機能製品事業においても、パルテム関連で管更生工事が一部施工中止となる等の影響が出ております。

 このような状況下、当社事業ごとの取り組みについては、以下のとおりであります。

 

自動車安全部品事業
 当社の製造する自動車安全部品につきましては、100年に一度といわれる大転換期において、性能・コストへの顧客要求が高まりながらも需要が拡大するものと見込まれます。しかしながら、競合他社と比較し経営資源の小さい当社では、現在の全方位型の商品展開や開発並びにサプライチェーンを見直し、経営資源を集中した商品開発と提案型営業、設計・製造・調達の緊密な連携による収益の向上、海外拠点を活かした販売と調達のグローバル化を推進することが必要と考え、以下の重点活動方針に取り組んでおります。

 ①技術力・品質力の向上による商品力の向上とターゲット顧客・商品の絞り込み

 ②作業効率化による製造コスト・間接経費削減と原価管理体制の強化

 ③情報の共有によるグローバル管理体制の構築

 

機能製品事業
 機能製品事業では、自然災害による国内の防災・減災意識の高まり、国土強靭化政策を受けたインフラ強化といった流れから、今後も需要増加が見込まれるため、以下の重点施策に取り組み、収益拡大を目指します。

①パルテム関連では、増加する下水道分野の管更生需要への対応と上水道・農業用水分野における地位確立を目指します。設備の改善・改良による生産の合理化や人材の育成、次世代製品の開発を推し進めます。

②防災関連では、新たな災害対策市場の開拓を進めるためホース分野と防災関連資機材分野の営業連携を強化し、防災システムの提供と防災関連資機材の販売強化を図ります。

③産業資材関連では、グループ会社を含めた営業・技術部門の業務効率を追求、広巾織物やロープ等主要分野における新規顧客開拓と新規開発により、事業規模の拡大に取り組んでまいります。また、生産体制の再構築、効率化を推進、製造コスト削減に努めます。

 機能製品事業は、市場ニーズと当社の独自技術をマッチングさせた商品・システムの開発推進及び既存技術の品質を向上させることにより、「総合インフラ防災メーカー」の地位確立に引き続き取り組んでまいります。

 

2【事業等のリスク】

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況は、今後起こりうる様々な要因により大きな影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)特定販売先への依存について

 当社グループの事業は自動車安全部品の売上高構成比率が高く、2020年3月期における売上高のうち、販売実績上位2社の占める割合は約49%に達しております。今後新規販売先の開拓やその他事業の売上増により特定販売先への依存度を低下させる方針でありますが、特定販売先への依存度低下が進捗しない段階で、当該販売先による当社グループ及び当社グループ製品に対する取引方針が変化した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。また、当該リスクが顕在化した場合の影響度を見積もることは困難であると認識しております。

(2)製品の欠陥について

 2020年3月期における売上高のうち、約67%を占める自動車安全部品は、製品の特性上、特に品質面において完璧が求められております。当社グループでは世界的に認められている品質管理基準に従い各種製品を製造し、品質管理には万全を期しておりますので、製品の欠陥が発生する可能性は低いと認識しております。また、保険にも加入しております。しかし、万が一、大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥が発生した場合、当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上高が低下するほか、多額の追加コストが発生し、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(3)為替レートの変動について

 当社グループは、芦森科技(無錫)有限公司及び無錫芦森国際貿易有限公司(中華人民共和国)、ASHIMORI (Thailand)CO.,LTD.(タイ王国)、Ashimori India Private LTD.(インド国)、ASHIMORI KOREA CO.,LTD.(大韓民国)及びASHIMORI INDUSTRIA de MEXICO,S.A. de C.V.(メキシコ合衆国)において自動車安全部品の製造・販売を行っており、今後、生産移管をはじめ海外事業の比率が高くなることが予想されます。当社グループは、通常の営業過程における輸出入取引に係る為替変動リスクに対して為替予約取引を行う等、為替変動リスクの軽減を行っておりますが、これらにより全てのリスクを回避することは困難であると認識しております。また、連結財務諸表作成時には海外各国における現地通貨建財務諸表を円換算しているため、為替レートの変動が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(4)知的財産権について

 当社グループは、知的財産を企業の競争力を高めるための重要な経営資源であると考え、開発した商品や技術について、知的財産権による保護に努めておりますが、知的財産権の侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権にかかわる紛争が生じる可能性があります。その場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。また、現段階において、将来的な顕在化の影響を定量的に見積もることは困難であると認識しております。

(5)新型コロナウイルス感染症に関するリスク

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、当社グループにおいても、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、取引先の自動車メーカーの操業停止や減産による受注量の減少、管更生工事の施工が一部中止になる等事業活動への影響が出ており、2021年3月期の当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。影響額については、現時点において合理的に算定することが困難であります。

 なお、当社グループにおきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、在宅勤務や出張の自粛、WEB会議システムの活用等を実施しております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 ① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における当社を取り巻く事業環境は、雇用・所得環境の改善継続等による緩やかな回復があったものの、海外においては中国・インド経済の失速による下振れが顕在化したほか、2020年1月以降の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の影響により景気は大幅に下押しされ、先行きは厳しい状況が続くものと見込まれます。
 このような情勢のなかで当社グループは、生産性向上による製造コストの削減、品質の向上に取り組むとともに、収益や成長が見込まれる分野への開発強化や拡販活動を推進し、経営成績の向上に努めてまいりました。

 当連結会計年度の売上高は、機能製品事業の受注は好調でしたが、自動車安全部品事業において売上が伸び悩んだことから、58,295百万円となり、前連結会計年度比2,683百万円の減収となりました。
 損益面については、自動車安全部品事業で受注車種の販売低迷や海外人件費の上昇等により収益率が低下したため、営業利益は599百万円と前連結会計年度比1,638百万円の減益、経常利益は652百万円と前連結会計年度比1,668百万円の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては土地売却益を2,872百万円計上したこと等により2,045百万円と、前連結会計年度比800百万円の増益となりました。
 なお、当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルス感染症による業績への影響は限定的でありましたが、2020年4月以降、自動車安全部品事業では取引先の生産調整による影響から受注が激減し、出荷の落ち込みと生産拠点の一部稼働停止が発生しております。また、機能製品事業においても、パルテム関連で管更生工事が一部施工中止となる等の影響が出ております。生産は徐々に回復に転じているものの、新型コロナウイルス感染症の収束時期は不透明であり、2021年3月期の一定期間にわたり当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。影響額については、現時点において合理的に算定することが困難であります。

 以下、各事業セグメント別に概況をご報告申し上げます。

 当社は、事業本部制を基礎とした製品・サービス別のセグメントから構成されており、「自動車安全部品事業」「機能製品事業」の2つを報告セグメントとしております。
 

 a.自動車安全部品事業

 シートベルト関連は、国内及び中国・メキシコの現地法人において新規車種の立ち上がりにより売上が若干増加したものの、商品構成の変化により採算が大幅に悪化しました。エアバッグ関連は、国内及びタイ・中国・インド・韓国の現地法人において受注車種の販売低迷・海外人件費の上昇により売上・利益ともに減少しました。内装品関連は、国内及びタイ・中国・メキシコの現地法人において受注車種の販売低迷により売上が減少、また、新商品の製造コスト上昇により採算が悪化しました。

 この結果、当事業の売上高は39,271百万円と、前連結会計年度比3,002百万円の減収となり、営業損失は1,356百万円と、前連結会計年度比1,995百万円の大幅な減益となりました。

 なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、インドの連結子会社は2020年3月下旬から操業停止となりましたが、2020年6月上旬より一部製品の生産を再開しており、2020年3月期の連結業績への影響は限定的でした。

 当事業においては、収益力の改善のため、収益改善プロジェクトの立ち上げや、内製化・FA化の推進、芦森工業山口株式会社第三工場を活用し生産性の向上を推進する等、諸施策に取り組んでおります。

 b.機能製品事業

 パルテム関連は、下水道向けが好調に推移し、売上が増加しました。

 防災関連は、災害対策用の大口径ホースや排水ホース、防災関連資機材の需要が増加し、売上が増加しました。

 産業資材関連は、トラック物流省力化分野と建築資材分野の売上が増加しましたが、前連結会計年度は、連結子会社のオールセーフ株式会社の決算期変更による売上増があったことから、売上は減少しました。

 この結果、当事業の売上高は18,998百万円と、前連結会計年度比301百万円の増収となり、営業利益は3,262百万円と、前連結会計年度比333百万円の増益となりました。

 当事業においては、収益力の向上のため、特に防災関連の消防用・消火栓用ホースのシェア拡大と大口径システム・防災資機材の積極的な拡販活動に取り組んでおります。

 c.その他

 当事業の売上高は24百万円、営業利益は3百万円となりました。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益3,601百万円、減価償却費2,209百万円、土地売却益2,872百万円、売上債権の減少787百万円、棚卸資産の増加1,178百万円、仕入債務の減少1,706百万円、法人税等の支払865百万円等により、前連結会計年度に比べ3,812百万円減少して46百万円の支出となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出3,065百万円、有形固定資産の売却による収入2,824百万円等により、前連結会計年度に比べ3,338百万円減少して480百万円の支出となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増額3,368百万円、長期借入の返済による支出2,392百万円、配当金の支払額269百万円等により、前連結会計年度に比べ367百万円増加して928百万円の収入となりました。

 以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ、370百万円増加して3,312百万円となりました。

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

前年同期比(%)

自動車安全部品事業(百万円)

40,277

88.9

機能製品事業(百万円)

18,894

101.2

合計(百万円)

59,171

92.5

 (注)1.金額表示の基準は、販売価額によります。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

機能製品事業

10,155

132.2

2,920

153.0

 (注)1.機能製品事業のパルテム部門以外は主として見込生産を行っており、受注に基づく生産は、ほとんど行っておりません。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

前年同期比(%)

自動車安全部品事業(百万円)

39,271

92.9

機能製品事業(百万円)

18,998

101.6

その他(百万円)

24

351.3

合計(百万円)

58,295

95.6

 (注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

マツダ(株)

24,081

39.5

23,034

39.5

スズキ(株)

6,413

10.5

5,343

9.2

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度の売上高は、機能製品事業は好調に推移しましたが自動車安全部品事業における受注車種の販売低迷により前連結会計年度比2,683百万円減少し58,295百万円となりました。

 営業利益は自動車安全部品事業における受注車種の販売低迷と商品構成の変化や海外人件費の上昇等により収益性が悪化し前連結会計年度比1,638百万円減少し599百万円となりました。

 経常利益は為替差益の計上はあるものの営業利益の減少により前連結会計年度比1,668百万円減少し652百万円となりました。

 本社・大阪工場土地の一部売却による土地売却益2,872百万円の計上により税金等調整前当期純利益は前連結会計年度比1,536百万円増加し3,601百万円となりました。

 芦森工業単体の業績悪化により繰延税金資産を取り崩し法人税等調整額594百万円を計上しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比800百万円増加し2,045百万円となりました。

 当連結会計年度末の総資産は棚卸資産が1,193百万円増加、上場株式の時価の下落により投資その他の資産が678百万円減少したこと等により47,884百万円と前連結会計年度末に比べ217百万円増加しました。

 負債は有利子負債が1,123百万円増加しましたが仕入債務が1,694百万円、未払金が722百万円減少したこと等により31,080百万円と前連結会計年度末に比べ1,193百万円減少しました。

 純資産は親会社株主に帰属する当期純利益2,045百万円の計上により利益剰余金が1,772百万円増加し16,804百万円と前連結会計年度末に比べ1,410百万円増加しました。自己資本比率は35.0%と、前連結会計年度末の32.2%から上昇しました。

 

 セグメントごとの経営成績の詳細は「(1)コーポレート・ガバナンスの概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性について

 キャッシュ・フローの分析については「(1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(資本の財源及び資金の流動性について)

 当連結会計年度では2,817百万円の設備投資を行っております。うち、自動車安全部品事業に2,369百万円を支出しております。生産拠点拡大のための工場建設といった大型投資は一巡しましたが、商品力向上のための金型投資や国内の老朽化した生産設備の更新等は継続して行ってまいりますので、資金需要は今後も続き、資金調達については借入で賄ってまいります。

 一方、当連結会計年度末の有利子負債は長期短期合わせて14,246百万円と総資産47,884百万円の30%弱を占めておりますので、財務内容悪化の懸念から個々の投資案件につきまして採算性や将来の財務内容への影響等を十分検討して実施してまいります。

 なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う事業環境の不確実性を鑑み、機動的かつ安定的な資金調達手段確保のため、取引金融機関と新たに総額5,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。詳細につきましては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しておりますが、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりであります。

 

(a)固定資産の減損

 当社グループでは、固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合は、減損の要否を判定しております。この判定は、連結グループ各社単位で行うこととしており、事業用資産については、製品グループを考慮して資産グループを決定し、共用資産については、会社全体をグルーピングの単位として将来キャッシュ・フローの見積りを行い、この見積りに基づいて行っております。また、事業の用に供していない遊休資産については、個別物件ごとにグルーピングを行っており、個別に比較可能な正味売却価額に基づいて行っております。将来キャッシュ・フローの見積りについては、合理的に算定された事業予算及び回収可能額に基づいて行っておりますが、将来の予測不能な予算策定上の前提条件等の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フロー及び回収可能額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。

 

(b)繰延税金資産の回収可能性

 繰延税金資産の回収可能性は、将来の税負担を軽減する効果を有するかどうかで判断しており、当該判断にあたっては、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性があるかどうかを判断しております。

 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたり、一時差異解消見込年度における課税所得を見積っておりますが、この課税所得は、過去の推移を基礎として、合理的に算定された予算に基づいて、見積りを行っております。

 当該見積りについて、将来の予測不能な前提条件の変動等により見直しが必要となった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。

 

(c)たな卸資産の評価

 当社グループは、たな卸資産の評価について原則として総平均法による原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しております。正味売却価額が簿価よりも下落しているたな卸資産については、正味売却価額まで簿価の切下げを行っております。また、営業循環から外れたたな卸資産及び仕入から一定期間を経過したたな卸資産等について、長期滞留資産として、期末日における在庫数量及び過去1年間の払出数量を元に算出した在庫回転率を使用して簿価の切下げを行っております。

 当該見積比率の算定は合理的に行っていると判断しておりますが、将来の予測不能な前提条件の変動等により追加的な簿価の切下げが必要になる可能性があります。

 

 なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しております。

 

④ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について

 当社グループでは、創業150周年となる2028年に向けた「Vision2028」を作成し、「第120-122期 芦森グループ中期経営計画」の達成に取り組んでおります。基本方針として、収益性を重視、事業の基盤固めを行うこととし、徹底したコストダウンの実施・責任の明確化と収益の見える化・生産性・コストを意識した部門間連携の強化を進めます。また、経営資源の集中と開発・営業戦略の強化を図るため、ターゲット顧客・ターゲット商品の絞り込みや小回りの利く顧客対応力・製造力の強化に取り組みます。

 現況、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せず、世界経済の低迷、雇用情勢の悪化、金融市場の変動、さらには国際秩序の不安定化リスク等、極めて厳しい状況が続くと予想されること、また、「ウィズ・コロナ」、「ポスト・コロナ」における消費様式の変容も先行き不透明で、自動車販売の回復過程は長期化することも予想されるため、環境変化による影響を合理的に算定することが困難なことから、基本方針は継続するものの中期経営計画(2020年3月期から2022年3月期まで)で掲げた数値目標は、いったん取り下げることとします。

 

[参考:中期経営計画数値]

(単位:百万円)

 

2020年3月期

計画

2020年3月期

実績

増減

2021年3月期

計画

2022年3月期

計画

売上高

63,000

58,295

△4,705

66,500

70,000

営業利益

2,200

599

△1,601

2,450

2,800

(営業利益率)

3.5%

1.0%

△2.5%

3.7%

4.0%

経常利益

2,250

652

△1,598

2,500

2,900

親会社株主に対する当期純利益

3,400

2,045

△1,355

1,650

1,900

ROA

7.1%

4.3%

△2.8%

3.5%

4.0%

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、自動車安全部品事業、機能製品事業において、安全、安心、快適な製品、技術を生み出すことを目的としております。大半の研究開発活動は、当社が母体となっておりますが、「パルテム」は工法が主体となるため、子会社(芦森エンジニアリング株式会社)と共同で技術開発を行っております。

 研究開発部門では、中長期で将来軸となるコモディティ化し難い商品若しくはシステムの技術開発に取り組んでおります。特に、新規事業の育成につなげるため、先進ユーザー、サプライヤー、大学等との外部機関と連携、協働を強化した新たな価値創造につなげる活動を実施しております。

 

 当連結会計年度におけるセグメント別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであり、研究開発費の総額は1,120百万円であります。

 

(1)自動車安全部品事業

 シートベルトは、市場競争力を更に向上させるための改善と新デバイス開発、並びに多様な衝突モードに対応可能な先進デバイスの開発を進めております。
 エアバッグは、自動車事故死傷者ゼロを目指し様々な事故形態に対応するデバイス開発、信頼性向上、並びに市場競争力向上を目指した開発、商品化を進めております。
 内装品は、各種シェード、トノカバー、並びにカーゴネット類の市場開拓に向けた製品開発に取り組み、海外市場展開・顧客拡大に向け地産地消化に対応した商品開発を進めております。

 当連結会計年度における自動車安全部品事業の研究開発費は450百万円であります。

(2)機能製品事業

 パルテム関連では、パルテムHL工法は、付加価値の向上を目的に、大学等と共同で上水道分野における更生管の耐震性能立証に関する深耕を継続実施しております。パルテムSZ工法は、更生材料の高強度化による更生管の薄肉化を実現し、日本下水道新技術機構の建設技術審査証明を更新取得しました。第121期より、本格的な市場導入を展開してまいります。パルテム・フローリング工法は、構造設計に関する追加データを補完するとともに、シールド二次覆工分野における長距離圧送用充填材を開発し、施工性の簡略化等に努めました。また、更生管の品質管理システム構築として、自治体との「超音波による更生管管内検査手法の開発」の第1期共同研究を完了しました。管更生の信頼性向上並びに更なる普及に注力しております。

 防災関連では、従来品より通水時の圧力損失が低い消防用ホース ドルフィンシリーズのラインナップ拡充を更に進め、綾織ホースに加えて、消防団向け平織ホースへの商品展開と量産体制が確立しました。操法大会用ホースは、通水性と操作性を改良したホースを開発し、2020年モデルとして市場に投入しました。大量送水用大口径ホースは、ホースに加えて、金具の拡充も進み、電力や石油コンビナートの需要獲得に向けて対応しております。防災資機材は、エアーテント、緊急排水システムに加えて、組立式シャワーユニット、車両脱出シューターの開発を行い、救急・避難の分野を拡充させました。

 産業資材関連では、ゴム資材用広幅織物については、エンジン内部で使用される高機能ベルト用帆布の改善・改良を継続するとともに、周辺機器用途や一般産業用途に対して開発を継続してまいります。合成繊維ロープについては、海洋用途での適用評価試験や実海試験を、関係機関とともに継続してまいります。墜落防護分野については、高所作業用墜落阻止器具のラインナップを上市し、引き続き高所作業での安全確保の要望に応えてまいります。トラック物流機器については、今後労働力確保がますます厳しくなる背景を受け、より省力化を進めた搬送装置の開発に取り組んでまいります。土木分野については、当社の筒状織物技術を生かした軟弱地盤改良用工法を、その特徴を生かした施工現場へ展開を進めてまいりました。

 当連結会計年度における機能製品事業の研究開発費は510百万円であります。

(3)その他

 技術企画部では、事業の将来の市場性を俯瞰し、当社のあるべき姿を定め、深耕展開型技術の研究を進めております。さらに、ビジネスモデルを構築することで事業拡大や新規事業の創出、強み伝えによるリスク軽減活動を進めております。

1.次の世代を担う材料、新たな商品の開発

 環境負荷の少ない安価で新しい材料の開発や減災商品、エアバッグを用いた荷役軽減商品への開発を進めております。また、ECO、環境分野、農業分野への展開を図ってまいります。

2.円筒織物活用製品、システムの開発

 革新織機や押出成形の加工技術を用い、大量送水を可能にした世界最大径の新高耐圧ホース、新システム化に取組んでおります。具体的には「軽量・低挙動大口径ホース展張システム」「ブルーラインシステム(緊急排水システム)」「電力防災保全工法」等であります。

 当連結会計年度におけるその他の研究開発費は158百万円であります。