文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。リスクを含めて、不確定な要素が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。
(1) グループ経営理念
私たちの事業活動は、一人ひとりのお客様の声に耳を傾け、謙虚に自らを変革し、人と人とが「互いに信頼し合う関係」を積み重ねることで成り立っております。こうした「相互信頼」と「人間尊重」の考え方こそが、すべての事業活動の原点であり、創業以来の経営理念です。当社グループは、「株主」「顧客」「従業員」「取引先」「地域社会」など、すべてのステークホルダーと「相互信頼」の関係を築くために、企業経営の透明性を高めることに努め、公正性、独立性を確保することを通じて、企業価値の持続的な向上を図ります。
■目標 Our Mission
世の女性に美しくなって貰う事によって
広く社会に寄与する事こそ
わが社の理想であり目標であります
■社是 Our Vision
わが社は 相互信頼を基調とした
格調の高い社風を確立し
一丸となって 世界のワコールを目指し
不断の前進を続けよう
■経営の基本方針 Our Value
1. 愛される商品を作ります
2. 時代の要求する新製品を開発します
3. 大いなる将来を考え正々堂々と営業します
4. より良きワコールはより良き社員によって造られます
5. 失敗を恐れず成功を自惚れません
(2) 中長期的な会社の成長戦略と目標とする経営指標
①長期的なビジョン
当社グループは、「グループとして世界のワコールを目指す」という将来像の実現に向けた取り組みを進めていきます。経営資源やグループのネットワークを最大限に活用し、常に先駆的な商品を世界市場に提供するよう努めると同時に、下着文化の領域を開拓し続けることを通して、ワコールグループの商品やサービスに対して、また、社会的な課題への取り組みに対しても、世界のステークホルダーから高い信頼を獲得できるよう、尽力していきます。
さらに、世界市場における競争優位性の確立に向けて、新しい事業領域や成長領域へ投資を行い、非連続成長の実現に挑戦する一方で、経営基盤の継続的な改善に努め、より大きな成果を生み出すことによって、持続的な成長と企業価値の向上を図り、100年を超えて存続を期待され続ける企業に向けて、不断の前進を続けます。
「世界のワコール」の目指す姿
1.世界中の市場で、ワコールグループの商品やサービス、また、社会的な課題への取り組みが、顧客をはじめとするすべてのステークホルダーから高い信頼を得ている
2.事業を展開する国や地域が、増え続けている
3.グループネットワークのもと、世界的規模で連携がとれた事業展開を行っている
4.常に先駆的な商品を世界の市場に提供し、下着文化の領域を開拓し続けている
5.グループの目標や経営理念が、全世界の従業員に浸透している
2028年3月期の財務目標
・グループ売上高 3,000億円(海外合弁会社を含むグループ売上高)
・連結売上高営業利益率・ROE 10%
②中期経営計画
「グループとして世界のワコールを目指す」という将来像の実現に向けて、2020年3月期から2022年3月期までの3カ年を対象期間とする中期経営計画を策定し、現実を直視し、改革をスピーディーに進め、国内外ともに力強い成長を示すことに取り組んでおります。
基本方針
「現実を直視し、将来需要を見極め、果敢に改革を行い、成長にこだわる」
・国内外ともに力強い成長軌道を示す
・成果の乏しい事業やブランドの将来性を検証し、聖域なきグループ事業構造の見直しと改革を進める
・経済的価値と社会的価値の双方を向上し企業価値を高める
中期経営計画では、これらを軸にして、デジタル技術で進化させた顧客サービスの拡充をはじめ、競合が追随できないCX戦略(※)の実行や、国内外の垣根を取り払った付加価値の高い新製品の導入、国や地域特性を見据えた主要なECサイトとの連携強化ないしは自社ECサイトの構築、小規模にとどまっている国や地域の事業拡大に向けた成長投資、制度疲労を起こしている事業モデルの改革、競争優位性あるサプライチェーン網の確立など、個々の事業課題への対応を、スピード感を持って進めます。
また、持続可能な社会の実現に向けて、製造委託先との協働によるCSR調達の進化、脱プラスチックへの取り組みや廃棄商品の削減による地球環境との共生、多様な人材を活かしたダイバーシティ&インクルージョン組織体制の整備に努めます。こうしたサステナブルな事業基盤から育まれる、新しい価値の創出にも責任を持って取り組んでいきます。
事業活動を通した収益性の改善と資本効率の向上に併せて、安定的な配当と機動的な自己株式の取得を行い、有価証券・投資評価損益影響(米国会計基準では連結損益計算書のその他の収益・費用として認識される)を除く、実質ベースでの総還元性向100%の維持に努めます。このほか、事業の持続的成長を支える投資を最優先する一方、適宜、政策保有株式の縮減を進めることで、適正なキャッシュバランスを築いていきます。
※これまで3Dボディスキャナーや接客AIの導入、オンラインとオフラインの連携・融合など、ワコールが進めてきたデジタル戦略を「ワコール版オムニチャネル戦略と表現しておりましたが、より顧客視点を反映した戦略を推進し、お客さま一人一人とのつながりをこれまで以上に深めていくため、呼称を「CX戦略」に変更しております。
③新型コロナウイルス感染症拡大を踏まえた当社グループの方針
新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)の世界的な拡大に伴う経済活動の停滞を受け、当社グループの経営は厳しい状況が継続しております。多くの国・地域でワクチン接種が開始されるなど、感染症の収束に向けた取組みに進展は見られるものの、国内を中心に感染症の再拡大の影響を注視する必要があり、先行きは不透明な状況にあります。
このような環境の下、当社グループでは再成長に向け策定した下記の方針に基づき、お客さま・従業員・お取引先の安全と健康を最優先に事業活動を行いつつ、高収益の経営体質の構築に向けた構造改革に取り組んでおります。
|
<基本方針> |
お客さま・従業員・お取引先の、「健康・安全」を最優先として対応 |
|
<短期的な方針> |
経営悪化を踏まえたコスト削減の実行と、財務基盤の安定性確保 |
|
|
・事業領域全般にわたり、これまでの施策や支出計画の見直し実行 ・感染症の長期化に備えた、手元流動性の強化 ・売上減少に伴う過剰在庫の回避に向けた生産調整 |
|
<中長期的な方針> |
バリューチェーンの徹底的な点検と改革の実行~「高収益の経営体質」に向けた転機に~ |
|
|
・現状のコストストラクチャーの見直し(固定費削減に向けた取り組みの推進) ・デジタル・トランスフォーメーションの取り組み加速 ・お客さまとのタッチポイントの見直し・再整備(変化する主要チャネルへの対応) ・「新しい生活様式」で顧客が待ち望む商品・サービスの開発、新たな接客や販売スタイルへの対応力強化 |
感染症の影響を受け、中期経営計画において掲げた当初の目標経営指標の達成は困難となりました。中期経営計画の最終年度となる2022年3月期は、高収益の経営体質の構築に向けた構造改革の実行フェーズと位置づけ、課題とする高コスト構造の是正に向けた取り組みを進めてまいります。同時に、企業価値の最大化に向けて、デジタル・IT・物流への成長投資を継続する計画です。
こうした取り組みを通して、中期経営計画の最終の会計年度となる2022年3月期の経営指標については、売上高1,840億円、営業利益60億円(連結売上高営業利益率3.3%)、当社株主に帰属する当期純利益55億円を計画しております。
(3) 会社の対処すべき課題
感染症の世界的な流行は、生活者の価値観や健康等に関する意識を変え、消費行動に大きな変化をもたらしました。感染症の脅威は現在も続いており、様々な国や地域でワクチンの接種が開始されるものの、感染防止対策としての外出規制など、経済活動の一部制限が続く可能性もあり、本格的な回復に向けては時間を要すると考えられます。
また、感染症が収束したニューノーマルの時代においても、消費者の行動は更に進化していくものと想定されます。消費者は引き続き、健康や安全を意識したライフスタイルを志向することが予想されますし、付加価値の高い商品や本当に価値のある良いサービスを選択していくものと思われます。様々な消費者の意識の変化を感じ取り、消費者視点に合う適切な対応をとっていくことが、ニューノーマル下での再成長の実現には欠かせません。
このような環境下、当社では、引き続き、お客さま・従業員・お取引先の安全と健康の確保を最優先に事業活動を行いつつ、高収益の経営体質の構築に向けた構造改革に取り組む計画です。感染症の蔓延をきっかけに大きく変化した消費者の生活様式に対応する商品・サービスの開発・提供を継続的に行うとともに、「オンラインとオフラインの融合」、「顧客データの活用」など顧客体験の向上に向けて取り組む独自のCX戦略を推進することで、お客さま一人ひとりとの「深く、広く、長い」関係性の構築を目指します。
また、環境問題はさらに深刻さを増しており、消費者のサステナビリティへの意識はますます変化しております。当社では、社会的価値と経済的価値の創造を軸に成長を目指すESG経営を推進し、ガバナンスや人権、環境などの重要課題に対する取り組みを強化する計画です。同時に、テレワークを含めたワークスタイル変革、事業成長を支える人材育成、働きがいを高める組織風土の醸成など、持続的な成長に向けた事業基盤の整備についても推進してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)新型コロナウイルス感染症の影響
世界的な流行となった「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下:感染症とします)」は、当社グループの売上や生産に大きな影響を及ぼしております。当連結会計年度においては、当社グループでは、顧客、取引先及び社員の安全第一を考え、また更なる感染拡大を防ぐために、「企業倫理・リスク管理委員会」の下部に「新型コロナウイルス感染症対策本部」(本部長は取締役常務執行役員)を設置し感染状況に応じた対策を行っております。主要事業会社である㈱ワコールは、政府、自治体の発信・要請内容に沿い従業員の勤務体制や店舗の営業体制を決定しております。具体的には内勤者は緊急事態宣言発出時においては宣言発出期間、地域にあわせた勤務体制(在宅勤務の推進、出張、会議等の制限など)とし、店頭販売員についてはお客さま並びに従業員の健康と安全確保の為の感染予防対策が講じる事ができている前提で、生活必需品を扱う企業として、お客さまの衛生的で快適な生活を守り、安心を提供し続けるために、地域のお客さま、お取引先からご要望のあった売場(店舗)について販売員を派遣しております。また、財務基盤を強固なものとするため、金融機関の借入枠を拡大し、備えを行っております。
今後事態が更に長期化した場合、当社グループの業績及び財政状態に更なる影響を与えるリスクがあります。これらのリスクに対しコロナ終息後の「新しい生活様式」における個人消費行動の変化を見通し、WEB販売などの顧客の待ち望むサービスの強化や新たな商品の開発に努めるとともに、引き続き経費の削減に努め、新規投資も慎重に見極めるなど、経営の健全性確保に取り組んでまいります。
(2)経営環境及び経営戦略に関わるリスク
①経済環境に関するリスク
当社グループが活動する主要な国内外市場における経済環境の動向が、当社グループの売上高や業績及び財政状態に重大な影響を与えると考えられます。例えば、国内市場においては感染症の拡大による緊急事態宣言の発出による店舗休業や営業時間の短縮などにより個人消費の落ち込みが見られ、当社グループの売上高や業績に重大な影響を与えております。
②国内事業に関わるリスク
当社グループの主要事業会社である㈱ワコールの売上高の約63%は、百貨店、量販店及びその他の一般小売店への売上によるものであります。しかしながら、近年小売市場の構造変化が進んでおり、小売市場全体における百貨店、量販店及びその他一般小売店の売上シェアは低下していくことと予測されます。当連結会計年度においては、㈱ワコールと取引がある百貨店9店舗、量販店32店舗、その他一般小売店61店舗の店舗閉鎖があり、売上高で7億円減少したと見込んでおります。2021年度には、百貨店1店舗、量販店8店舗の閉鎖が既に発表されております。当社グループはこのようなリスクに対して、業態を跨いだエリア販売体制への移行や直営店・WEB販売の強化を行い対応しております。また、店舗閉鎖や倒産に伴い売掛債権が回収できなくなるリスクに対応するため、常に与信管理を徹底するとともに、店舗における在庫金額を適正な状態にしております。
国内レディスインナーウェア市場について、引き続き縮減の傾向にあります。また、これまでとは異なる競合企業が存在感を高めており、当社グループは、国内インナーウェア市場において、下着の中高級品の卸売と直営販売を行う会社との競争だけではなく、Eコマースとのチャネル間競争や、ファストファッションとも競争しております(㈱ワコールの自社WEB販売は当連結会計年度前年比155%と好調に推移しました)。今後、新規参入者により更に競争が激しくなる可能性もあります。競争の激化は、価格の下落、広告宣伝費の増加、売上高及び市場シェアの減少等につながり、当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
これらのリスクに対応するため、グループ中期経営計画の一項目として㈱ワコールの再成長と収益力の向上を掲げ、主要な施策として「ワコール版オムニチャネル戦略」を推進しております(今後取得したデータを活用し、お客様一人ひとりとのつながりをさらに深めるため、より「顧客起点」を反映した戦略を推進するため2021年度より当該施策を「CX戦略」と呼称します)。これはワコールが長年培ってきた接客販売の強みを、デジタル技術によりさらに革新させ、店舗とウェブを連携しながらお客様とのつながりを深め、顧客の囲い込みを図るものです。オムニチャネル戦略の中核である次世代ツール「Wacoal 3D smart&try」は百貨店を中心に当連結会計年度は16店舗設置し、今後さらに拡大する予定です。
また、㈱ワコール以外の国内グループ会社の収益力向上にも取り組み、事業の選択と集中、事業構造や人員体制の見直し、グループ内の連携の強化や他社とのアライアンス等、抜本的な改革により、収益性改善に取り組み3~5%の営業利益率確保を必達目標とするなど、グループ全体での収益力向上に取り組んでおります。
③海外事業に関わるリスク
当社グループは海外における事業も展開しており、欧米及びアジア等の海外市場での売上拡大を目指しております。海外事業に関連し次のようなリスクがあります。
グローバル取引が進む中で、国家間競争など地政学的な問題が発生し事業活動に影響を受ける可能性があります。例えば英国のEU離脱問題では英国に本社を置く子会社㈱ワコールヨーロッパは新たに付加された関税、通関手数料などにより費用が増加するなど影響を受けております。これらリスクに対応するため進出国の政治経済情勢、税制、法規制動向などの情報収集に努め、引き続き動向を注視していきます。
海外市場における消費者の趣味及び嗜好に対応できずに業績が悪化するリスクや異文化対応の遅れによって、経営及び人事管理を失敗し、当社グループの業績が悪化するリスクがあります。これらリスクに対応するため、米国、欧州、中国の主要3法人での事業の成長に向けた投資を継続しており、米国においてはミレニアル世代の獲得やEC市場での成長機会の創出と競争力の強化を目的に2020年3月期に「Intimates Online」社を買収しました。同社の取得価額は86,041千米国ドル(取得時レートで約9,348百万円)で、当該取得価額に加えて、業績の達成度合いに応じて条件付取得対価(アーンアウト対価)を現株式所有者に支払う条項を締結しました。2年後の2023年3月期には営業利益黒字化、3年後の2024年3月期には売上高100百万ドル、営業利益率12~15%の成長シナリオを期待しております。合わせて、欧州、中国においても販路の拡大や、EC事業の継続拡大を図っております。また新興国への事業拡大としてインド事業の拡大にむけ出店加速と積極的な広告宣伝投資を計画しております。
製品の調達・製造においては徐々にコストの低いアジアの国々での生産比率を増やしております。また近年は、社会・労働環境の変化に対応して、海外生産の中心を中国からASEANに移行しつつあります。反面、新規に立ち上げた生産拠点のいくつかでは、生産性や損益面での困難に直面しております。グループに与える影響は軽微であるものの、例えばミャンマーにおいては2021年2月にミャンマー国軍が武力で国家権力を掌握しその行動に対する抗議デモが発生、治安情勢が悪化しており、ミャンマーワコールは従業員の安全確保のため休業しております。そのような中、グループ中期経営計画において、競争力のある製品や材料の供給ができるグローバルな生産体制の構築を目指し、グループ横断での管理体制の確立に向けて取り組んでおります。
(3)経営管理に関わるリスク
①品質、品質表示に関するリスク
高品質な商品をグローバルに提供することができることが、当社グループの強みの一つです。不良品を販売することや商品が健康被害を及ぼすこと等により、商品回収等のコストが発生するとともに、ブランドが毀損し、高品質の商品を提供するというイメージが損なわれ、社会的信用を失い業績に影響を与えるリスクがあります。
2020年には子会社の㈱ピーチ・ジョンにおいて、ブラジャーの一部でワイヤーが飛び出す恐れがあることが判明したため、事故防止の観点から自主回収を行いました。また、品質表示等の誤表示に関する法令違反や機能性表示における行き過ぎた表現により社会的信用を失い、商品回収や表示変更作業のコストが発生するとともに、販売機会ロスとなり、業績及び財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
これらリスクに対応するため、安全性ガイドラインの整備と製品開発時点の確認ルールの徹底、欠陥商品発生都度の徹底原因追求・再発防止策を策定し、各社が品質の維持向上に向けた取り組みを行うと同時に、当社グループの品質保証活動を推進するため「品質保証審議会」を設置し、その活動を通じグループ会社への水平展開を行い、全体での底上げを図っております。
②コンプライアンスに関するリスク
当社グループは国内外の法令や規制等の適用を受けており、これらの法令等に違反したり社会的要請に反する行為等があった場合は、処罰や社会的な信用の低下などにより、経済的・社会的な影響を受けるリスクがあります。当社グループでは「コンプライアンス委員会」の活動を通じて、従業員への啓発活動、内部通報制度、外部専門機関による法令ヘルスチェックなどの施策を拡充することにより、法令違反防止に努めており、また現中期経営計画においては、「ESG課題の取り組み」の中でも重要課題として位置付けております。
また、当社グループの事業領域において注力すべき点として、サプライチェーンでの労務・人権問題が挙げられます。実際に人権NPOより、当社グループの発注先である海外縫製工場における労務・人権問題について指摘を受けたこともあり、これを契機に当該課題への取り組みを開始しました。2018年4月から「CSR調達委員会」を立ち上げ、自己評価と現地監査、仕入先一覧の開示等の積極的な活動を行っております。
③個人情報に関するリスク
当社グループは事業活動上顧客等の個人情報を有しております。当社グループの中期経営計画において、主要事業会社である㈱ワコールでは「CX戦略」を成長戦略の柱と位置付け、収集した個人情報を含めたデジタルデータを基盤としたビジネス戦略を進めております。また、海外子会社各社は、顧客の個人情報を直接取得するWEBサイトを通じた販売を強化し、成長の柱と位置づけております。2014年に、何者かにより自社WEBサイトが改ざんされ1ケ月の販売停止を余儀なくされました。個人情報の保護は当社グループの事業活動上ますます重要性が増しており、専門部門としてITガバナンス部を2020年4月より発足し、個人情報の管理の強化、法規制の変更への対応、社員への教育等を含め、個人情報を外部の脅威から守るセキュリティ対策に取り組んでおります。しかし、個人情報が外部流出、改ざん、重要データの消去またはシステムに障害が生じた場合は、当社グループの事業運営や戦略に影響を与え、結果、業績及び財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
④知的財産権の侵害・被侵害のリスク
当社グループの保有する知的財産権、特に当社グループのブランド及び関連する商標は、当社グループ製品への需要の喚起及び維持、また当社グループの事業価値にとって重要であると認識しております。今後、当社グループは商標その他関連する紛争に直面する可能性があり、また類似商品や他者による商標及び知的財産権侵害により、当社グループの事業に重大な影響を及ぼすリスクがあります。また、当社グループが他者の知的財産権を侵害しているという主張が行われたことがあり、今後も行われるリスクがあります。これらの主張や関連する訴訟が、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与えるリスクがあります。また、越境EC等の拡大によるボーダーレス化に伴い、各国のブランドマネジメントだけでなくグローバルなブランド政策によってコントロールしないと、ブランド棄損に繋がり市場競争力が低下するリスクがあります。これらリスクに対応するため、「知的財産委員会」を設置するとともに、従業員への啓発活動として毎年e-ラーニングの実施、担当者の調査能力向上、社外調査会社の活用や外部契約事務所等の専門家との協業を行っております。
(4)会計・税務に関するリスク
①保有有価証券の価格変動リスク
当社グループは国内公開会社の株式やその他の有価証券を保有しております。当社は米国会計基準を採用しているため、保有有価証券の価格が変動した場合、その変動損益を連結損益計算書で認識する必要があります。これら保有有価証券の大幅な価格変動は、該当する連結会計年度における当社グループの財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
当連結会計年度においては、有価証券の大幅な価格上昇により「有価証券・投資評価損益(純額)」として、10,390百万円の利益を計上しました。
現グループ中期経営計画においては、2022年3月期までに保有する政策保有株式を、2019年3月期の時価ベースで200億円以上の縮減する方針を示しており、当連結会計年度においては22億円、累計で175億円(2019年3月期時価ベース162億円)を売却しております。また中長期的な観点から保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を検証し、定期的に取締役会に報告しております。取締役会においては、検証結果を基に当社グループの中長期的な企業価値向上に資するかどうかを見極め、保有の継続、処分の判断を行っております。
②固定資産減損損失のリスク
事業環境の変化や将来の業績見通しが悪化した場合、固定資産の減損損失計上が必要となる場合があります。実際に当連結会計年度においては、当社グループで保有している不動産や業績の悪化した直営店舗で使用している有形固定資産の減損損失1,136百万円を計上しております。また、ワコールヨーロッパについては2012年の買収以降、付加価値の高い商品を開発するとともに、展開する国や流通チャネルの特性に応じたマーケティング活動を実行し、安定した成長を実現してきましたが、感染症の影響やEU離脱後の通関費用等を踏まえた今後の業績見通しを勘案して減損の有無を検討し、公正価値を再測定した結果、のれんの減損損失2,673百万円を計上しております。のれんの残存価格は、㈱ワコールヨーロッパで9,398百万円、米国Intimates Online社で11,771百万円となっております。のれんの評価は将来の経営計画を基にしているので、両社とも感染症による経済の悪化に加え、金利や税率が上昇した場合や事業伸長及びシナジーが投資時の期待を十分に上回らない場合には、公正価値の見積を見直す必要があり減損が発生する可能性があります。なお、少なくとも年に1回または減損の判定が必要となる兆候が発生した場合は減損テストを実施しております。
③退職給付債務等に関するリスク
退職給付費用及び債務は、年金資産の期待運用利回りや将来の退職給付債務算出に用いる年金数理上の仮定に基づいて算出しておりますが、有価証券の相場並びに金利環境の変化等により、実際の結果が仮定と異なる場合、又は仮定に変化があった場合には、退職給付費用及び債務が増加するリスクがあります。また、退職給付制度を改定した場合にも、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼすリスクがあります。当社グループは、国内社債の利回りに基づいて割引率を設定しております。割引率については、3.(6)「重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」を参照ください。退職給付債務の大部分を占める主要事業会社の㈱ワコールでは「年金委員会」を設置し、四半期単位で運用資産の状況を確認し、必要な対策を講じております。
④税務に関するリスク
繰延税金資産については、現行の会計基準に従い、将来の課税所得を合理的に見積もった上で計上しておりますが、将来の課税所得見積額の変更や税制改正に伴う税率の変更等により、繰延税金資産が減少し、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。
一部の多国籍企業による国際的な租税回避行為が政治問題化したことから、税制度の改善を図るべく、G20からの委託を受けたOECDにより、2015年10月にBEPS(税源浸食と利益移転)に関する報告書が公表されました。この報告書を受けて各国において、国内税法や租税条約の改正、見直しが行われております。当社グループは、国際的な課税ルールの制定により重要な影響を受けることはないと考えておりますが、新たに定められた移転価格文書等を通し、各国の税務当局と見解の相違により、追加での税負担が生じるリスクがあります。これらのリスクに対して、税務に関する最新の情報を社内外から入手し、外部専門家の助言も受けながら対応していく体制を整えております。なお、当社は透明性の高い税務管理を行い、ステークホルダーからの信頼を得ることを目的に「税務行動指針」を策定し、2021年1月に開示を行いました。
(5)人材確保に関するリスク
当社グループにとって、人材確保は国内外を問わず重要な課題です。当社グループの“モノづくり”、店頭販売員、海外経営や最新デジタル分野の人材など、優秀な人材を確保・育成出来ないと、将来の成長や競合会社に対する優位性を作り出せず、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼすリスクがあります。これらのリスクに対応するため、ジョブ型採用その他新たな採用手段導入による人材確保と、集団型講義やオンラインなどによる専門知識研修やOJT・海外研修制度などの実地研修の充実を図り、人材の育成を行っております。
(6)災害等に関わるリスク
地震等の大規模な自然災害や疫病、紛争、テロ、暴動の発生等により、当社グループの営業拠点や生産拠点の使用が困難な状況になり、あるいは従業員の多くが被害を受けた場合や交通網の遮断・エネルギー供給の停止・通信の不通などにより、営業活動の混乱や生産や物流の遅延・停止等を受け、事業活動に重大な影響を与えるリスクがあります。また、当社グループ製品の販売が行われている地域において、地震等の大規模な自然災害や疫病、紛争、テロ、暴動の発生等が起こった場合、消費活動が停滞し、当社グループ製品の売上額が大幅に低下するリスクがあります。
特に「首都直下」「南海トラフ」等の大地震が発生した場合は、当社グループの主たる事業所や店舗が所在する大規模消費地で被害が発生することから、当社グループの事業継続に重大な影響を及ぼすと想定されます。そのため、「事故災害対策委員会」の下部としてBCPプロジェクトを発足し、全体のBCP及びBCM基本計画を作成するとともに、首都直下型地震等の特定災害に係るBCPを順次立案していきます。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
(単位:百万円)
|
|
2020年3月期 実績 |
2021年3月期 実績 |
前期比 |
|
|
|
増減額 |
増減率 |
||
|
売上高 |
186,760 |
152,204 |
△34,556 |
△18.5% |
|
売上原価 |
84,959 |
67,798 |
△17,161 |
△20.2% |
|
売上利益 |
101,801 |
84,406 |
△17,395 |
△17.1% |
|
販売費及び一般管理費 |
93,927 |
81,700 |
△12,227 |
△13.0% |
|
有形固定資産減損損失 |
769 |
1,136 |
+367 |
+47.7% |
|
A:のれん及びその他の無形固定資産減損損失 |
473 |
2,685 |
+2,212 |
+467.7% |
|
営業利益(△損失) |
6,632 |
△1,115 |
△7,747 |
- |
|
その他の収益・費用 |
1,487 |
1,517 |
+30 |
+2.0% |
|
B:有価証券・投資評価損益(純額) |
△3,760 |
10,390 |
+14,150 |
- |
|
税引前当期純利益 |
4,359 |
10,792 |
+6,433 |
+147.6% |
|
当社株主に帰属する当期純利益 |
3,472 |
7,025 |
+3,553 |
+102.3% |
|
参考情報 ①:Aを考慮しない営業利益 |
7,105 |
1,570 |
△5,535 |
△77.9% |
|
参考情報 ②:AとBを考慮しない税引前当期純利益 |
8,592 |
3,087 |
△5,505 |
△64.1% |
当連結会計年度(2020年4月1日から2021年3月31日)は、新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)が全世界に蔓延し、人々の暮らしや経済活動に大きな影響をもたらした一年となりました。国内市場は、緊急事態宣言発令による店舗の臨時休業や外出自粛に伴う来店客数の減少や消費マインドの低下などによって、厳しい状況が続きました。海外市場についても、感染症の影響の長期化に伴って欧米の主要都市を中心に数度のロックダウン措置が取られるなど、厳しい環境が継続しました。
このような環境の下、当社グループではお客さま・従業員・お取引先の安全と健康を最優先に事業活動を行いつつ、高収益の経営体質の構築に向けた構造改革に取り組むとともに、お客さま一人ひとりとの「深く、広く、長い」関係性の構築に向けた独自のCX戦略を推進いたしました(これまで3Dボディスキャナーや接客AIの導入、オンラインとオフラインの連携・融合など、ワコールが進めてきたデジタル戦略を「ワコール版オムニチャネル戦略」と表現しておりましたが、より顧客視点を反映した戦略を推進し、お客さま一人一人とのつながりをこれまで以上に深めていくため、呼称を「CX戦略」に変更しております)。
当期の連結売上高は、1,522億4百万円(前期比18.5%減)となりました。「巣ごもり需要」の高まりによってECは伸長したものの、外出抑制措置による店舗休業や営業時間の短縮に加え、都市部店舗への来店客数の減少が影響し、大幅な減収となりました。
連結営業損益は、11億15百万円の営業損失(前期は66億32百万円の営業利益)となりました。各社で経費削減に努めつつ、雇用調整助成金など各国政府の支援策を活用しましたが、感染症の影響を受けてワコールヨーロッパののれんやグループ会社における固定資産の減損損失を計上したこともあり、営業損失となりました。
ワコールヨーロッパについては、2012年の買収以降、付加価値の高い商品を開発するとともに、展開する国や流通チャネルの特性に応じたマーケティング活動を実行し、安定した成長を続けてきました。しかしながら、英国や欧州における感染症の影響や、英国のEU離脱(BREXIT)後の通関費用等を考慮し、今後の業績見通しからのれんの公正価値を再評価した結果、26億73百万円の減損損失を計上するに至りました。この結果、ワコールヨーロッパののれんの残存価額は当期末の為替ベースで93億98百万円(61.7百万ポンド)となりました。
連結税引前当期純利益は、107億92百万円(前期比147.6%増)となりました。有価証券・投資評価損益(純額)について評価益103億90百万円を計上したことから、大幅な増益となりました。
以上の結果、当社株主に帰属する当期純利益は70億25百万円(前期比102.3%増)となりました。また、当期の連結ROE(株主資本当社株主に帰属する当期純利益率)は、3.3%となりました。なお、当該期間の為替換算レートは、1米ドル=106.06円(前期108.74円)、1英ポンド=138.68円(同138.24円)、1中国元=15.48円(同15.78円)です。
(当社は米国会計基準を採用しており、雇用調整助成金などにつきましては、「売上原価」及び「販売費及び一般管理費」から控除する方法を採用しております。また、当社及び連結子会社が保有する持分証券につきましては、公正価値で評価し、期初からの変動を「有価証券・投資評価損益(純額)」として「その他の収益・費用」で計上しております。)
オペレーティング・セグメントの経営成績を示すと次のとおりであります。
第1四半期連結累計期間より、当社グループ内の業績管理区分の一部見直しに伴い、従来「ワコール事業(国内)」セグメントに含めていた㈱Ai及び「ピーチ・ジョン事業」セグメントを「その他」セグメントへ含める変更を行いましたが、第2四半期連結累計期間以降において、「その他」セグメントに含めた「ピーチ・ジョン事業」が量的基準を満たしたため、報告セグメントとして記載する方法に変更しております。なお、前連結会計年度のセグメント情報は、当連結会計年度の報告セグメントの区分に基づき作成したものを開示しております。
(単位:百万円)
|
|
|
2020年3月期 |
2021年3月期 |
前期比 |
|||
|
|
|
実績 |
構成比 |
実績 |
構成比 |
増減額 |
増減率 |
|
売上高合計 |
186,760 |
100.0% |
152,204 |
100.0% |
△34,556 |
△18.5% |
|
|
|
ワコール事業(国内) |
106,112 |
56.8% |
86,133 |
56.6% |
△19,979 |
△18.8% |
|
|
ワコール事業(海外) |
49,808 |
26.7% |
41,355 |
27.2% |
△8,453 |
△17.0% |
|
|
ピーチ・ジョン事業 |
11,224 |
6.0% |
12,200 |
8.0% |
+976 |
+8.7% |
|
|
その他 |
19,616 |
10.5% |
12,516 |
8.2% |
△7,100 |
△36.2% |
(単位:百万円)
|
|
|
2020年3月期 |
2021年3月期 |
前期比 |
|||
|
|
|
実績 |
売上比 |
実績 |
売上比 |
増減額 |
増減率 |
|
営業利益(△損失) |
6,632 |
3.6% |
△1,115 |
- |
△7,747 |
- |
|
|
|
ワコール事業(国内) |
6,083 |
5.7% |
627 |
0.7% |
△5,456 |
△89.7% |
|
|
ワコール事業(海外) |
1,493 |
3.0% |
△2,603 |
- |
△4,096 |
- |
|
|
ピーチ・ジョン事業 |
△351 |
- |
1,591 |
13.0% |
+1,942 |
- |
|
|
その他 |
△593 |
- |
△730 |
- |
△137 |
- |
(参考)主要子会社の売上高・営業利益(△損失)
(単位:百万円)
|
売上高 |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
前期比 |
||||
|
実績 |
構成比 |
実績 |
構成比 |
増減額 |
増減率 |
||
|
|
ワコール |
99,224 |
53.1% |
79,877 |
52.5% |
△19,347 |
△19.5% |
|
|
ワコールインターナショナル(米国) |
19,194 |
10.3% |
17,649 |
11.6% |
△1,545 |
△8.0% |
|
|
ワコールヨーロッパ |
12,988 |
7.0% |
9,896 |
6.5% |
△3,092 |
△23.8% |
|
|
中国ワコール |
10,337 |
5.5% |
8,755 |
5.8% |
△1,582 |
△15.3% |
|
|
ピーチ・ジョン |
11,224 |
6.0% |
12,200 |
8.0% |
+976 |
+8.7% |
|
|
ルシアン |
5,760 |
3.1% |
4,614 |
3.0% |
△1,146 |
△19.9% |
|
|
七彩 |
8,717 |
4.7% |
5,312 |
3.5% |
△3,405 |
△39.1% |
※外部売上高のみを記載しております。
(単位:百万円)
|
営業利益(△損失) |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
前期比 |
||||
|
実績 |
売上比 |
実績 |
売上比 |
増減額 |
増減率 |
||
|
|
ワコール |
3,140 |
3.2% |
△2,022 |
- |
△5,162 |
- |
|
|
ワコールインターナショナル(米国) |
401 |
2.1% |
△914 |
- |
△1,315 |
- |
|
|
ワコールヨーロッパ |
1,007 |
7.8% |
666 |
6.7% |
△341 |
△33.9% |
|
|
中国ワコール |
923 |
8.9% |
625 |
7.1% |
△298 |
△32.3% |
|
|
ピーチ・ジョン |
△351 |
- |
1,591 |
13.0% |
+1,942 |
- |
|
|
ルシアン |
△478 |
- |
221 |
4.8% |
+699 |
- |
|
|
七彩 |
218 |
2.5% |
△358 |
- |
△576 |
- |
※主要子会社の売上高・営業利益(△損失)は各国会計基準に基づく数値
ワコール事業(国内)
当該セグメントの売上高は、861億33百万円(前期比18.8%減)となりました。営業利益は、6億27百万円(前期比89.7%減)となりました。減収影響から大幅な減益となりましたが、経費削減や雇用調整助成金などの政府の支援策の活用により、黒字を確保しました。
<ワコール>
ワコールの売上高は、自社ECは高い成長を維持しましたが、感染症の影響により店頭売上が年間を通じて低迷した結果、前期に比べ19.5%の減収となりました。上半期(4月~9月)の売上高は、緊急事態宣言の発令に伴う店舗休業や外出自粛に加え、前年の消費税増税前の需要拡大の裏返しの影響もあり、前年同期に比べ30.6%の減収となりました。第3四半期連結会計期間に持ち直しが見られたものの、第4四半期連結会計期間には再び緊急事態宣言が発令され、外出自粛が広がった結果、下半期(10月~3月)の売上高についても前年同期に比べ5.5%の減収となりました。
店頭売上については、量販店など郊外立地の店舗については堅調に推移したものの、テレワークの浸透や人混みを回避する消費者の意識や行動の変化に伴って、都市部店舗やアウトレットモールなどの大型商業施設は来店客数の減少により苦戦しました。
戦略的に強化している自社ECは、「巣ごもり消費」の高まりを受けて新規顧客の獲得が進んだほか、直営店会員の自社EC送客などオンラインとオフラインの連携施策や、顧客特性に適したコンテンツ配信などマーケティングオートメーションを活用したマーケティング施策による既存顧客の購入率の増加も売上拡大に寄与し、前期に比べ55.2%の大幅な増収となりました。また、販売員によるチャットコンサルティングについても、新しい生活様式の中で顧客獲得に大きな効果を発揮しました。
なお、CX(顧客体験)の向上に向けて導入を進めている3DボディスキャナーやAI(人工知能)を活用した接客システムについては、3月末時点で16店舗(前期比+10店舗)においてサービスを行っております。また、販売員のリモート接客を視野に入れて開発を進めているアバターカウンセリングシステムについても当期より試験運用を開始しており、実用化に向けた課題の洗い出しを行っております。
営業損益は、諸経費の削減に努めたものの、減収の影響を吸収するには至らず、20億22百万円の営業損失(前期は31億40百万円の営業利益)となりました。なお、雇用調整助成金(19億98百万円)につきましては営業外収益として計上されているため、当該営業損益の金額には含まれておりません(連結経営成績及びセグメント情報のワコール事業(国内)においては米国会計基準に基づき営業損益に組み替え表示しております)。
ワコール事業(海外)
邦貨換算後の当該セグメントの売上高は、感染症の拡大に伴う店舗の臨時休業や外出自粛に加え、円高による影響(△7億15百万円)もあり、413億55百万円(前期比17.0%減)となりました。なお、これまで「ワコール事業(海外)」セグメント内で計上していた「ピーチ・ジョン」ブランドの中国国内の売上高については、当期より「ピーチ・ジョン事業」セグメントでの計上に変更し、前期実績についても遡及修正しております(当該変更に伴う「ワコール事業(海外)」セグメントの売上高への影響額は、当期:約5億7百万円、前期:約7億44百万円(ともに売上高の減少要因))。
営業損益は、26億3百万円の営業損失(前期は14億93百万円の営業利益)となりました。各国政府の支援策を活用しつつ、各社で経費削減に努めましたが、減収影響に加え、前期に買収したIntimates Online, Inc.(以下、「IO社」)の早期成長に向けた戦略的なマーケティング投資の継続、並びにワコールヨーロッパののれんの減損損失計上が響きました。
<ワコールインターナショナル(米国)>
ワコールインターナショナル(米国)の現地通貨ベースの売上高は、前期に比べ5.7%の減収(邦貨換算ベース8.0%減)となりました。上半期の売上高は、「IO社」の新規連結の効果があったものの、「Wacoal」や「b.tempt’d」などのブランドを展開する米国ワコールの実店舗(百貨店)の売上が感染症の影響により低迷した結果、前年同期に比べ、15.4%の減収となりました。一方、下半期については、米国ワコールの自社・他社ECの高い成長が実店舗の低迷を補ったことに加え、高い購買率と客単価を維持した「IO社」も好調に推移したことから、前年同期に比べ5.4%の増収となりました。なお、第4四半期連結会計期間において、「IO社」は米国大手小売業者ターゲット(Target Corporation)との取引を開始し、EC・店舗それぞれで「LIVELY」ブランドを展開しております。
現地通貨ベースの営業損益は、政府の支援策を活用しつつ経費削減に努めましたが、減収影響に加え、「IO社」が展開する「LIVELY」ブランドに対する戦略的な成長投資を継続した結果、8.6百万ドル(邦貨換算ベース9億14百万円)の営業損失(前期は3.7百万ドル(邦貨換算ベース4億1百万円)の営業利益)となりました。
<ワコールヨーロッパ>
ワコールヨーロッパの現地通貨ベースの売上高は、前期に比べ24.0%の減収(邦貨換算ベース23.8%減)となりました。英国や欧州主要国におけるロックダウン措置の影響を大きく受けた上半期の売上高は、前年同期に比べ33.6%の減収となりました。下半期の売上高については、クリスマス商戦時期にかけて一時的に回復する兆しが見えたものの、第4四半期連結会計期間に行われた再度のロックダウン措置が事業運営に影響し、前年同期に比べ12.6%の減収となりました。なお、前期より稼働した自社ECの売上高は計画を超えて推移し、当期のワコールヨーロッパの売上高に占める自社EC比率は5.4%まで高まりました。
現地通貨ベースの営業利益は、減収影響により、34.2%と大幅な減益(邦貨換算ベース33.9%減)となったものの、経費削減により、黒字を確保しました(ワコールヨーロッパののれんの減損損失26億73百万円を除く)。
<中国ワコール>
中国ワコールの現地通貨ベースの売上高は、前期に比べ13.7%の減収(邦貨換算ベース15.3%減)となりました。上半期(1月~6月)の売上高は、「AMPHI」ブランドの積極的な展開により他社ECの売上高が堅調に推移したものの、感染症の影響に伴う実店舗の休業が響き、前期同期に比べ25.8%の減収となりました。他方、下半期(7月~12月)については、11月に開催されたEC事業者の大型販促キャンペーンにおける受注活動に苦戦したものの、「WACOAL」や「Salute」ブランドが堅調に推移するなど、実店舗(百貨店)の売上に改善が見られた結果、2.6%の増収となりました。
現地通貨ベースの営業利益は、減収影響により、31.2%と大幅な減益(邦貨換算ベース32.3%減)となったものの、経費削減により、黒字を確保しました。
ピーチ・ジョン事業
当該セグメントの売上高は、消費者のニーズを捉えた商品企画と話題性のあるコンテンツ開発に加え、効率的に新規顧客数や年間購買回数の増加に繋げるためのマーケティング戦略が奏功し、自社ECが高い成長を維持したことから、122億円(前期比8.7%増)となりました。なお、これまで「ワコール事業(海外)」セグメント内で計上していた「ピーチ・ジョン」ブランドの中国国内の売上高については、当期より「ピーチ・ジョン事業」セグメントでの計上に変更し、前期実績についても遡及修正しております(当該変更に伴う「ピーチ・ジョン事業」セグメントの売上高への影響額は、当期:約5億7百万円、前期:約7億44百万円(売上高の増加要因))。
国内における自社EC事業は、年間を通じて新規顧客が増加したほか、定番商品も好調に推移したことから、前期に比べ43.5%の増収となりました。他方、店舗事業は第2四半期連結会計期間以降、来店客の購買率の向上が寄与し、堅調に推移したものの、第1四半期連結会計期間の店舗休業が響き、11.9%の減収となりました。
営業利益は、15億91百万円と大幅な増益(前期は3億51百万円の営業損失)となりました。増収効果に加え、自社EC売上の構成比の高まりやセールの抑制などによる売上利益率の改善、経費削減などが増益に寄与しました。
その他
当該セグメントの売上高は、125億16百万円(前期比36.2%減)、営業損益は7億30百万円の営業損失(前期は5億93百万円の営業損失)となりました。
<ルシアン>
ルシアンの売上高は、得意先の仕入枠の抑制の影響などにより、量販店など向けのプライベートブランド商品の販売が低調に推移した結果、前期に比べ19.9%の減収となりました。営業利益は、前期の第4四半期連結会計期間に実施した不採算事業の撤退効果に加え、経費削減を進めた結果、2億21百万円(前期は4億78百万円の営業損失)となりました。
<七彩>
七彩の売上高は、感染症の拡大に伴う新規出店や各種イベントの中止・延期による工事事業の低迷が影響し、前期に比べ39.1%の減収となりました。営業損益は、経費削減に努めたものの、減収の影響が大きく、3億58百万円の営業損失(前期は2億18百万円の営業利益)となりました。
(2)財政状態
当連結会計年度末における総資産は、手元流動性の確保を目的として現金及び現金同等物を積み増したことなどにより、前連結会計年度末に比して450億73百万円増加し、3,227億61百万円となりました。
負債の部は、同様の理由で短期借入金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比して359億5百万円増加し、1,041億45百万円となりました。
株主資本は、当期純利益の計上や年金債務調整勘定の変動などにより、前連結会計年度末に比して102億41百万円増加し、2,156億12百万円となりました。
以上の結果により、当連結会計年度末における株主資本比率は、前連結会計年度末に比して7.2ポイント減少し、66.8%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比し356億52百万円増加し、635億57百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益68億4百万円に減価償却費や繰延税金などによる調整を加えた金額に対して、資産及び負債の増減などによる調整を行った結果、42億60百万円の収入(前期に比し90億65百万円の収入減)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得などにより、25億62百万円の支出(前期は25億69百万円の収入)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払や非支配持分からの子会社持分取得による支出、条件付取得対価の支払があったものの、短期借入金及び長期債務の調達などにより、336億5百万円の収入(前期は174億71百万円の支出)となりました。
(4)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度の生産実績をオペレーティング・セグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、 ピーチ・ジョン事業については、すべて販売会社のため該当事項はありません。また、その他のセグメントについては、生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載しておりません。
|
オペレーティング・セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
ワコール事業(国内) |
34,462 |
81.7 |
|
ワコール事業(海外) |
12,792 |
85.5 |
|
合計 |
47,254 |
82.7 |
(注) 生産実績の金額は製造原価によっております。また、消費税等は含まれておりません。
②受注実績
その他のうち㈱七彩の一般住宅及び店舗内装工事部門については受注生産形態をとっております。
当連結会計年度におけるその他の受注実績を示すと、次のとおりであります。
|
オペレーティング・セグメント の名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
その他 |
3,012 |
50.8 |
204 |
76.1 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
③販売実績
当連結会計年度の販売実績をオペレーティング・セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
オペレーティング・セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
ワコール事業(国内) |
86,133 |
81.2 |
|
ワコール事業(海外) |
41,355 |
83.0 |
|
ピーチ・ジョン事業 |
12,200 |
108.7 |
|
その他 |
12,516 |
63.8 |
|
合計 |
152,204 |
81.5 |
(注)1.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更したため、前年同期比については、前連結会計年度の数値を変更後の報告セグメント区分に組み替えて比較しております。
(5)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金の流動性は、主に営業活動による純現金収入によります。営業活動による純現金収入により、外部からの多額の借入や、その他の資金調達手段に頼らずに、大部分の運転資金の確保や設備投資、配当金の支払が可能となっております。ただし、金融機関に借入枠は設けており、2021年3月31日現在の借入枠の合計は804億64百万円、借入枠を設けている借入金の残高は422億4百万円となっており、主な残高の内訳としては当社が400億円、WACOAL INTERNATIONAL CORP.が12億18百万円、WACOAL EUROPE LTD.が6億71百万円となっております。
これらの借入枠の期限は、ほとんどが自動的に更新されるものであり、現状更新を妨げるような事象は発生していないと考えております。仮にいずれかの子会社において借入が不可能になったとしても、グループの各社から資金を供給することが可能であると考えております。また、資金需要について大きな季節変動はありません。
また、子会社からの親会社への配当に係る規制は特に無いと考えております。
なお、感染症は、当社グループの事業活動にも影響を与えており、営業活動による純現金収入が短期的に大きく減少することが考えられます。そのため、当社は2020年4月以降に新たに金融機関に追加の借入枠を設け、手元資金を確保しております。予定していた営業活動による資金支出については、ゼロベースで見直すことで削減するとともに、投資についても実施時期の見直し等を図ることで、資金の流動性を確保していきます。
①設備投資
「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載しております。
②キャッシュ・フロー
「(3)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、米国において一般に認められた会計基準に準拠して作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、当社グループは重要な見積りや仮定を行う必要があります。会計方針の適用にあたり、特に重要な判断を要する項目は以下のとおりであります。
なお、感染症の影響等不確実性が大きく、将来の業績予測等に反映させることが難しい要素もありますが、現時点において入手可能な情報を基に検証等を行っております。感染症による見積りへの影響は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記 1 連結会計方針 E 見積りの使用」に記載しております。
①収益認識
当社グループは製品の支配が顧客に移転し、履行義務が充足された時点で収益を認識しております。収益は、取引価格から値引、リベート等を控除した金額で算定しております。また、将来に予測される返品については、過年度の実績等を考慮して予想される返品を見積り、収益から控除しております。市況や消費者ニーズの変化により、値引きやリベート、返品の増加が予想される場合は、収益に影響を与える可能性があります。
②貸倒引当金
当社グループは、売掛債権等について貸し倒れの可能性を予測する必要があります。これらの債権の回収可能性を検討するにあたっては、各相手先の業績、債権残高、財政状況等を考慮して個別に信用リスクを判断する等、重要な判断が必要であります。相手先の財政状態が悪化した場合は貸倒引当金を積み増すことがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
③たな卸資産の評価損
当社グループは、原材料については先入先出法による低価法で、製品・商品及び仕掛品については総平均法による低価法で評価しております。たな卸資産の実現可能価額は、通常の事業活動による見積り販売価額から見積り直接販売費用を控除して算出されます。たな卸資産の評価は、たな卸資産が低価法に基づき正しく評価されているかどうかを確認するため、定期的に実施されております。当社グループは、必要と判断された場合、たな卸資産の簿価と実現可能価額との差額をたな卸資産の評価損として計上しております。見積り販売価額や見積り直接販売費用、マークダウン率やたな卸資産の分類等は過去の状況や将来の消化予想、その他の要素を加味して算出しております。また、将来破棄するたな卸資産についても考慮しております。当社グループのたな卸資産の評価は適正であると判断しておりますが、市況や消費者ニーズが当社グループの計画と大きく乖離する場合、評価損の金額は増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
④繰延税金資産
当社グループは、現在、一定期間における回収可能性に基づき相当額の繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計上は、予測される将来における課税所得の達成の可否により影響を受けます。将来の課税所得の見積りにあたっては、過去の業績やタックス・プランニング等も考慮しております。当社グループの将来の収益性に係る判断は、将来における市場の動向その他の要因により影響を受けます。これらの状況に変化があった場合、繰延税金資産計上額に対して金額的に重要な評価性引当金を計上する可能性があります。繰延税金資産の回収可能性を見込めない場合には、回収不能と見込まれる金額に対して評価性引当金が計上され、損益に悪影響を与える可能性があります。
⑤有価証券・投資の評価損
有価証券・投資のうち負債証券については、公正価値が帳簿価額を下回り、かつ、公正価値の低下が一時的でないと判断される場合は、評価損が計上されます。当社グループは、負債証券の公正価値の下落が一時的であるかどうかを、下落の期間や程度、発行体の財政状態や業績の見通し、又は公正価値の回復が予想される十分な期間にわたって保有する意思、などを含めた基準により四半期毎に判断しております。
また、持分証券については、公正価値により測定し、未実現の保有損益は純損益に計上しております。
当社グループは、評価損を判断する基準は合理的なものであると考えておりますが、市場の変化や、予測できない経済及びビジネス上の前提条件の変化によって個々の投資に関する状況の変化があった場合には、有価証券・投資の評価額に影響を受ける可能性があります。
なお、2021年3月31日現在、当社グループが保有する負債証券については未実現損失が発生しておりません。
⑥長期性資産の減損
当社グループが保有する長期性資産については、帳簿価額の回収ができないという兆候を示す事象や状況の変化が生じた場合には、将来の予想キャッシュ・フローに基づき減損の判定を実施し、減損が生じたと判断した場合、当該資産の帳簿価額が公正価値を超える金額を減損損失として計上しております。
2021年3月期において、固定資産の減損の判定をした結果、公正価値が帳簿価額を下回っていると判断されたため、当社の土地、建物及び構築物、㈱ワコール及びその他の子会社の建物及び構築物、機械装置・車両運搬具及び工具器具備品をそれぞれ減損しております。この結果生じた減損損失1,136百万円については、2021年3月期のワコール事業(国内)、ワコール事業(海外)及びその他の営業費用にそれぞれ1,088百万円、25百万円及び23百万円含めております。
⑦のれん及びその他の無形固定資産の減損
耐用年数が確定できないのれん及びその他の無形固定資産については、少なくとも1年に一回、又は事業環境や将来の業績見通しの悪化、事業戦略の変化、リスク調整後割引率の変動等、減損の判定が必要となる兆候が発生した場合に減損の判定を行っており、報告単位の公正価値の評価にあたっては、独立した外部の評価機関を利用しております。のれんやその他の無形固定資産を含む報告単位の公正価値を評価し、公正価値が報告単位の帳簿価額を下回っていると判断される場合には、その下回る額について減損損失として計上することになります。のれん及びその他の無形固定資産の帳簿価額の回復可能性がないと判断された場合、のれんの公正価値の決定において、評価機関は観察不能なインプットを含む現在価値法を採用しております。商標権の公正価値の決定においては、評価機関は観察不能なインプットを含むロイヤルティ免除法を採用しております。
2021年3月31日時点における評価の結果、のれんの減損を2,673百万円認識しております。
⑧退職金及び退職年金
当社グループは従業員の大多数を対象とするいくつかの退職金制度を有しており、㈱ワコール及び一部の子会社は確定給付企業年金制度を採用しております。前払年金費用、退職給付に係る負債及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出されております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待運用収益率、退職率、死亡率等が含まれております。当社グループは、使用した数理計算上の仮定は妥当なものと判断しておりますが、仮定自体の変更により、前払年金費用、退職給付に係る負債及び退職給付費用に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、国内社債の利回りに基づいて割引率を設定しております。具体的には割引率は2021年3月31日時点における、国債のうち満期までの期間が予想される将来の給付支払の時期までの期間と同じ銘柄の利回りを基礎としております。当連結会計年度末における割引率は0.6%であります。
当社グループは、過去の運用実績と将来収益に対する予測を評価することにより長期期待運用収益率を設定しております。かかる長期期待運用収益率は、株式及び社債等の投資対象資産グループ別の長期期待運用収益の加重平均に基づいております。前連結会計年度及び当連結会計年度末における、年金資産の長期運用利回りは、ともに2.5%であります。長期期待運用収益率は持分証券26.0%、負債証券54.0%、生保一般勘定18.0%及び短期資金2.0%の資産構成を前提として算定しております。
これらの基礎率は退職給付債務及び費用に重要な影響を及ぼします。割引率及び長期期待運用収益率をそれぞれ0.5%変更した場合の連結財務諸表への影響は以下のとおりであります。
|
|
退職給付費用への影響額 |
退職給付債務への影響額 |
|
割引率:0.5%減少 |
236百万円の増加 |
1,803百万円の増加 |
|
割引率:0.5%増加 |
191百万円の減少 |
1,652百万円の減少 |
|
長期期待運用収益率:0.5%減少 |
233百万円の増加 |
- |
|
長期期待運用収益率:0.5%増加 |
67百万円の減少 |
- |
その他の年金制度は、退職一時金の支給か一定の条件での年金支給のどちらかとなりますが、従業員が定年に達する前に退職する場合は、通常、一括で支給されます。
⑨新会計基準
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記 1 連結会計方針 F 会計処理基準 (15)新会計基準」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループでは、人体と衣服の調和を実現し、よりよい製品づくりを支えるため、人間科学研究所を中心として研究開発に取り組んでおります。
当社グループは、1964年以降日本人女性の体型を正確に把握するため、女性の体型調査を継続して実施してきました。シルエット分析システムの開発や三次元計測システムの導入、更により高度な人間の感覚計測にも取り組み、人間の形態・生理・心理の三側面からの研究開発を行っております。研究成果として、1995年~1998年に通産省(現経済産業省)プロジェクトへの参加を通じて、感覚生理研究を強化充実し、「加圧生理」、「温熱生理」、「皮膚生理」面での基礎研究をもとにして、着心地が良いだけでなく生理的にも効果のある新製品の開発を行ってきました。2005年には、日常歩行をエクササイズ歩行に変え、健康で美しいからだづくりをサポートする画期的なスタイルサイエンス商品を開発し、世の中に新しい商品市場を開拓しました。また、2010年には同一人物の20代から50代に至る体型変化を分析し、加齢によるからだの変化(エイジング)の原則を発表し、エイジングに対応した新製品開発を強化するとともに、加齢による体型変化の小さい人の生活習慣をヒントにした新機能製品の開発に取り組んでおります。
現在、人間科学研究所では、導入世代を含む若年層、シニア世代を中心に顧客の体型・ニーズの調査分析結果に基づいた研究・開発を推進しております。
当連結会計年度は、「Body Care領域」としてノンワイヤーケアブラ(重力に負けないブラ)やケアボトム(重力に負けないボトム)の開発などを、「Body Make領域」として新材料感温柔軟樹脂を使ったサイズ体型対応ブラの開発などを行いました。
これらの結果、当連結会計年度の研究開発費に
なお、当社グループの研究開発活動は、主にレディスインナーウェア等の基礎研究から商品開発に及ぶさまざまな研究を行っており、特定のセグメントに関連付けることが困難であるため、セグメントごとに記載しておりません。
今後も、「生命美あふれる女性たちの支援産業の実現」を推進していくため、“美”“快適”“健康”の3領域を基軸に、顧客満足及び企業価値の増大に貢献し得る研究開発の充実を図り、商品力の強化とお客様に納得と満足を感じていただける新製品や新サービスの開発に邁進する所存であります。