第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

 

当連結会計年度におけるわが国経済は、大企業を中心に所得や雇用環境に改善傾向が見られましたが、景気回復は弱含みで個人消費も足踏み状態が続きました。

また世界経済におきましては、新興国の経済減速懸念や世界各地の地政学的リスクなどにより、先行きに対する不透明感が増すこととなりました。

当社グループが関連するわが国のアパレル・ファッション業界や手作りホビー業界におきましては、消費者の節約志向の高まりや慎重な購買行動に加え、訪日外国人によるインバウンド消費の翳りもあって、国内外での衣料品生産は抑制傾向が続き、縫い糸需要も低調でむしろ厳しさが増す状況となりました。

このような状況のなか、当社グループ各社の収益力回復のための諸策の成果は、一部には表れつつあるものの、縫い糸市場全体の低迷や中国元の為替換算レートの影響もあって、当連結会計年度の売上高は6,326百万円(前期比7.8%減)にとどまりました。

一方、利益面は、当社グループ各社の状況にばらつきはあるものの、一昨年実施した工業用縫い糸の価格改正や販管費の削減など収益性改善のための諸策の成果も表れつつあり、営業利益は20百万円(前期は59百万円の損失)、経常利益は60百万円(前期は14百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は28百万円(前期は2百万円の損失)となりました。

 

  当連結会計年度におけるセグメントごとの業績は次のとおりです。

日本

当社グループにおきましては、事業年度の末日を、当社は3月末日、国内子会社は1月末日と定めていることや、それぞれの事業分野や販売地域も異なるために、国内消費動向や市場変化の影響は、各社ごとに若干のずれや相違があるものの、全般には消費者の節約志向や慎重な購買行動に加え、訪日外国人によるインバウンド消費も翳りが見られたことから、消費はまだら模様で力強さに欠け、中でも衣料品や、手作り手芸分野の需要は低調に推移しました。

このような状況を背景に、縫い糸の国内需要は減少を余儀なくされていることに加え、収益性改善策の一環として、不採算商品の見直し等を進めたこともあって、当セグメントの売上高は5,005百万円(前期比5.5%減)となりました。

一方、利益面は、売上高の減少及びそれに伴う生産実績の低下による減益要因はあるものの、工業用縫い糸の価格改正を始め、国内グループ各社の収益性改善の諸策の成果もあって、セグメント利益は3百万円(前期比135.0%増)となりました。

 

アジア

当セグメントに属する全ての海外子会社は、事業年度の末日を12月末日と定めており、当連結会計年度には、平成28年1月から12月までの業績が連結されております。

当期間における日本国内での衣料品消費の低調を受けて、それらの縫製の受け皿になっているアジア諸国の日本向け衣料品の縫製も一部を除いては抑制傾向が続きました。

その上、近年日本向け衣料品の縫製の大部分を占めていた中国では、ベトナムを始めとするアジア諸国への縫製の分散化もあって、縫製業の淘汰も進むなど、縫い糸需要の面ではより厳しい状況が続いております。

このような状況を受けて、当社グループもタイやベトナムでは売上高が増加しましたが、当セグメントで最大のウェイトを占める中国では、販売量の減少に加えて、為替換算レートが前連結会計年度と比べて円高傾向に推移したため、当セグメントの売上高は1,320百万円(前期比15.8%減)となりました。

一方、利益面につきましては、当期間の為替換算レートの変動が中国子会社の輸出取引の収益性を大幅に改善したことや、海外グループ各社の製造費用や販管費の削減努力もあって、セグメント利益は24百万円(前期は87百万円の損失)となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,406百万円となり、前連結会計年度末より16百万円増加いたしました。活動別キャッシュ・フローの状況は、次の通りです。

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少159百万円(前期は76百万円の増加)があったものの、減価償却費をはじめとする非資金項目が201百万円(前期は276百万円)、棚卸資産の減少283百万円(前期は115百万円)、売上債権の減少61百万円(前期は52百万円)となったことなどにより、395百万円の流入(前期は262百万円)となりました。

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入1,141百万円(前期は1,129百万円)となったものの、定期預金の預入による支出1,182百万円(前期は1,100百万円)、有形固定資産の取得による支出93百万円(前期は310百万円)となったことなどにより、104百万円の流出(前期は200百万円)となりました。

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出181百万円(前期は支出なし)、配当金の支払額が85百万円(前期は86百万円)などにより、243百万円の流出(前期は72百万円)となりました。

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

日 本

3,090,372

△4.4

アジア

1,396,906

△25.6

合 計

4,487,278

△12.2

 

(注) 金額は販売価格で表示しており、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 受注実績

当社グループは、受注生産を行っておりません。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

日 本

5,005,782

△5.5

アジア

1,320,346

△15.8

合 計

6,326,129

△7.8

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

   2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

3 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは縫い糸、刺しゅう糸及び手芸用各種糸の製造・販売を主たる事業とし、「誠実」の社是のもと、「すぐれた技術とまごころがつくり出す製品を通じて社会に奉仕する」ことを経営理念としております。ユーザーである縫製業者や刺しゅう業者、手作りホビーを楽しむ人々への価値ある製品とサービスの提供を通して、株主、投資家、取引先、従業員あるいは地域社会など全てのステークホルダーに長期安定的に貢献できる企業グループを目指しております。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは経営の基本方針のとおり、全てのステークホルダーに長期安定的に貢献できる企業グループであ
るために、連結・個別ともに堅実で安定的な利益の確保が重要と考えております。中長期的にも連結・個別におけ
る経常利益並びに売上高経常利益率の向上を目指しております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

  今後の見通しにつきましては、日本経済は引き続き回復傾向の維持が期待されるものの、アジアを始め世界情勢は政治的にも経済的にも極めて不透明感が増しており、それらに伴う経済の下振れ懸念が一層高まっております。
 また、当社グループに最も大きな影響を及ぼす国内のアパレル・ファッション業界におきましては、先述の消費動向や売れ行き低迷を背景に生産の抑制が続く上に、再びデフレの進行が懸念されるなど、当社グループを取り巻く経営環境は、当面一層厳しさを増すものと思われます。
 しかしながら、中長期的な縫い糸事業の環境については、次のように考えております。

① 工業用縫い糸の事業については、縫製のグローバル化により、国内外の同業者との競争が一段と激化する上に、アジア諸国のそれぞれの政治状況、労働力および賃金の動向やインフラの整備状況等により、縫製業の盛衰の変化が早く、事業リスクも高まるものの、中長期的には、経済成長が続く中国や東南アジア諸国などにおいて、高級な衣料品や自動車等の消費拡大が期待され、縫製品位や縫製効率の向上に不可欠な高品質な縫い糸需要の拡大が見込まれることや、当社グループにおいては欧米向け衣料品用の縫い糸の販売シェアが極めて小さいことから、今後も衣料用、非衣料用ともに、アジア地域における高品質縫い糸は販売拡大の余地がある。

 また、海外への生産移転と縫製従事者の減少により市場の縮小を余儀なくされている日本国内においては、独自性や機能性の高い縫い糸の開発や高質なサービスの提供などにより、さらなるシェアの拡大が可能である。

  ② 家庭用縫い糸の事業については、近年、国内の手作りホビー分野におけるソーイング(縫い物)需要は、女性のライフスタイルの変化などを背景に漸減傾向が続いているものの、新たな潜在需要の掘り起こしの余地がある。

 また、欧米市場においては、当社製品のシェアは極めて低く、独自性の高い製品の開発によって、市場への新たな参入が可能であるほか、中長期的に経済成長が見込まれる中国や東南アジア諸国においては、富裕層の増加やライフスタイルの変化に伴い、手作りホビー市場の成長が期待できる。

 

  当社グループは、これらの中長期的な事業環境を踏まえた上で下記「(4)会社の対処すべき課題」に掲げた経営戦略を実行し、業績の向上と将来の成長を目指してまいります。

 

 

(4)会社の対処すべき課題

 上記の「(3)中長期的な会社の経営戦略」に記載の事業環境を踏まえて、当社グループは、下記の諸課題に取り組んでおります。

① 連結子会社 株式会社FTCとともに、縫い糸メーカーとして引き続き付加価値の増大を目指して独自の技術開発、製品開発に努め、家庭用から工業用、衣料用から非衣料用に至るまで、独自性があり、高品質且つ幅広い製品を有するメーカーを目指すこと。

② 今後も高品質・高機能な縫い糸の販売拡大が期待できる中国および東南アジア市場を見据えて、アジア事業のリスクも踏まえつつ、海外子会社とともに生産体制や販売拠点の見直しに努め、日系企業として品質の安定性や安全性、供給体制の効率化と利便性を高めて、競争力を強化し、アジア事業の拡大を一層推し進めること。

③ 近年、縮小傾向を余儀なくされてきた国内縫製市場においては、国内連結子会社3社との連携を強化して、より一層シナジー効果を高めるとともに、衣料用・非衣料用ともに独自性や機能性の高い製品の開発と高質なサービスの提供などにより、さらなるシェア拡大を図ること。

④ 漸減傾向の続いてきた手作りホビーの国内市場に対して提案や情報発信を継続し、潜在需要の掘り起こしに努めるとともに、独自の製品や蓄積したノウハウを活かして、欧米諸国はもちろん、今後成長が期待される中国および東南アジア諸国も含めて、海外手作りホビー市場の開拓に努めること。

⑤ 消費者やユーザーの購買行動の変化なども踏まえて、業務のあり方や管理システムの見直しにより、さらなる合理化・効率化を目指すこと。また一方で、男女を問わず人材の育成と活性化の図れる環境を整備し、長寿企業として事業のさらなる継続を目指して技術やノウハウの継承を行うこと。

⑥ 社会的信頼の維持はもとより、環境負荷の軽減をはじめ、企業としての社会的責任を果たすこと。

 

4 【事業等のリスク】

企業が抱える一般的な事業リスク(消費や景気動向、国際情勢、気象状況や天災・事故、法的規制や社会的信頼等)につきましては、当社グループに限らず全ての企業が同様に抱えておりますが、特に当社グループの事業の現状や特徴を踏まえ、業績に重要な影響を及ぼすと思われる事項は以下のとおりです。

 

アジア事業展開に伴うリスク

当社グループは平成5年以降、中国における日本向け衣料品の生産拡大に対応するため、同国に順次生産及び販売子会社を設立し、生産コストの低減と同国市場における販売拡大を目指してまいりました。

さらに、近年では、衣料品縫製の東南アジア諸国への分散化が進んでおり、当社グループもこれに対応すべく、当連結会計年度末現在、タイ及びベトナムにおいて連結子会社を有するほか、委託生産も含めて、生産及び販売両面におけるアジア事業展開を拡大しつつあります。

しかしながら、これらのアジア事業においては、為替変動はもちろん、国家統治の変化や法律・税制などの突然の改定、急速な賃金上昇や雇用環境の変化、また合弁先の動向など、日本にはない政治的、経済的なカントリーリスクが避けられず、当社グループにおきましてもアジア事業の拡大に伴ってそのリスクは増大しております。

縫い糸は、衣料品の生産には不可欠な副資材であり、縫製現場への迅速な供給が宿命であることから、当社グループとしましては、今後もこれらのカントリーリスクを踏まえつつ、縫製業のアジア諸国への分散化に対応し、市場のグローバル化と顧客のニーズに対応してまいります。

なお、本項におきましては、将来に関する事項が含まれておりますが、別段の表示がない限り、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループにおいては、報告セグメント(日本)に属する当社の研究開発室が中心となって集中的に研究開発活動を行っております。

昨今、ものづくりにおいて、環境に配慮し継続的発展が可能な製造技術開発も求められるようになる中、競争力強化のための製造技術開発や新製品の芽となるような先行研究の一環として大学や企業との連携による開発にも取り組むなど、独自性の高い製品や独自技術の開発により一層注力しております。
 なお、当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は63,578千円であり、報告セグメント(日本)の支出であります。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える要因について

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える要因として、以下の5点があると認識しております。

 ①  国内衣料品消費低迷の中にあって今後のファッション・アパレル業界の動向

 ②  従事者の減少と低水準の賃金が続く国内縫製業の動向

 ③  ライフスタイルや価値観の変化に伴う個人消費の動向と手作り手芸業界の動向

 ④ 中国や東南アジア諸国の政治・経済の先行きと縫製業の動向

 ⑤ 海外合弁先企業の動向

 

(2) 当連結会計年度の財政状態に関する分析

資産の部については、流動資産は、前連結会計年度末に比べて492百万円減少し、6,640百万円となりました。これは、主として受取手形及び売掛金が114百万円、たな卸資産(商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品)が392百万円それぞれ減少したことなどによります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて149百万円減少し、3,641百万円となりました。これは、主として投資その他の資産が65百万円増加したものの、有形固定資産が200百万円減少したことなどによります。

これらの結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて641百万円減少し、10,281百万円となりました。

負債の部については、流動負債は、前連結会計年度末に比べて214百万円減少し、774百万円となりました。これは、主として買掛金が197百万円減少したことなどによります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて148百万円減少し、699百万円となりました。これは、主として長期借入金が167百万円減少したことなどによります。

これらの結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて363百万円減少し、1,474百万円となりました。

純資産の部については、前連結会計年度末に比べて278百万円減少し、8,807百万円となりました。これは、主としてその他有価証券評価差額金が67百万円増加したものの、利益剰余金が64百万円、為替換算調整勘定が191百万円、非支配株主持分が88百万円減少したことなどによります。

 

(3) 当連結会計年度の資金の流動性に関する分析

営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少159百万円(前期は76百万円の増加)があったものの、減価償却費をはじめとする非資金項目が201百万円(前期は276百万円)、棚卸資産の減少283百万円(前期は115百万円)、売上債権の減少61百万円(前期は52百万円)となったことなどにより、395百万円の流入(前期は262百万円)となりました。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料購入のほか、製造費用、販売費及び
一般管理費等の支出であります。

資金調達に関しましては、借入に依存しない財務体質を作り上げるなど、常に健全な財務体質を目指してお
り、今後の成長に必要な資金は、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金で対応可能であります。

 

 

(4) 当連結会計年度の経営成績の分析

当社グループが関連するわが国のアパレル・ファッション業界や手作りホビー業界におきましては、消費者の節約志向の高まりや慎重な購買行動に加え、訪日外国人によるインバウンド消費の翳りもあって、国内外での衣料品生産は抑制傾向が続き、縫い糸需要も低調でむしろ厳しさが増す状況となりました。

このような状況のなか、当社グループ各社の収益力回復のための諸策の成果は、一部には表れつつあるものの、縫い糸市場全体の低迷や中国元の為替換算レートの影響もあって、当連結会計年度の売上高は6,326百万円(前期比7.8%減)にとどまりました。

一方、利益面は、当社グループ各社の状況にばらつきはあるものの、一昨年実施した工業用縫い糸の価格改正や販管費の削減など収益性改善のための諸策の成果も表れつつあり、営業利益は20百万円(前期は59百万円の損失)、経常利益は60百万円(前期は14百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は28百万円(前期は2百万円の損失)となりました。

 

(5) 経営者の問題認識と今後の方針について

当社グループの経営陣は、経営の基本方針に沿って、それぞれの担当分野において現在および将来の情勢や事業環境の把握に努め、社外取締役の客観的な見解も取り入れながら、「第2 事業の状況 3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)会社の対処すべき課題」に記載の諸課題に取り組んでおりますが、長期安定的な経営基盤を再構築するためにも、当面は収益力の維持向上が最大の課題であると認識しております。