第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは縫い糸、刺しゅう糸及び手芸用各種糸の製造・販売を主たる事業とし、「誠実」の社是のもと、「すぐれた技術とまごころがつくり出す製品を通じて社会に奉仕する」ことを経営理念としております。ユーザーである縫製業者や刺しゅう業者、手作りホビーを楽しむ人々への価値ある製品とサービスの提供を通して、株主、投資家、取引先、従業員あるいは地域社会など、全てのステークホルダーに長期安定的に貢献できる企業グループを目指しております。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは経営の基本方針に記載の通り、全てのステークホルダーに長期安定的に貢献できる企業グループであるために、連結・個別ともに堅実で安定的な利益の確保が重要と考えております。中長期的にも連結・個別における経常利益並びに売上高経常利益率の向上を目指しております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

今後の見通しにつきましては、日本経済は引き続き回復傾向を維持するものと期待されますが、日本経済に大きな影響を及ぼす米国やアジア諸国との関係は、政治、経済両面において不透明であり、先行きは楽観できません。

また、当社グループに影響を及ぼす国内のアパレル・ファッション業界や手芸関連業界におきましては、慎重な消費行動や節約志向が続くことが予想され、当社グループを取り巻く事業環境も急速な回復が見込めません。

このような状況のなか、当社グループとしては中長期的な縫い糸事業の環境について、次のように考えております。

① 工業用縫い糸の事業については、縫製のグローバル化により、国内外の同業者との競争が一段と激化する上に、アジア諸国のそれぞれの政治状況、賃金を含む労働環境の変化やインフラの整備状況等により、縫製業の盛衰の変化も早く、事業リスクは高いものの、経済成長が続く中国や東南アジア諸国などにおいては、高級な衣料品や自動車等のさらなる消費拡大が期待され、縫製品位や縫製効率の向上に不可欠な高品質な縫い糸や環境問題に配慮した縫い糸の需要の拡大が見込まれることや、当社のシェアの低い欧米アパレル向けの生産規模も大きいことから、今後も同地域における高品質縫い糸の販売拡大の余地がある。
 また、海外への生産移転と縫製従事者の減少により市場の縮小を余儀なくされている日本国内においては、独自性や機能性の高い縫い糸の開発や高質なサービスの提供などにより、さらなるシェアの拡大が可能である。

② 家庭用縫い糸の事業については、近年、国内の手作りホビー分野におけるソーイング(縫い物)需要は、趣味の多様化やライフスタイルの変化などを背景に漸減傾向が続いているものの、昨今見直されつつあるハンドメイド(手作り)の一分野として潜在需要掘り起こしの余地がある。
 また、海外市場については、欧米市場における当社製品のシェアは極めて低く、独自性の高い製品の開発によって、市場への新たな参入が可能であるほか、中長期的に経済成長が見込まれる中国や東南アジア諸国においては、富裕層の増加やライフスタイルの変化に伴い、手作りホビー市場の成長が期待できる。

 

  当社グループは、これらの当面および中長期の経営環境を踏まえた上で下記「(4) 会社の対処すべき課題」に掲げた経営戦略を実行し、業績の回復と将来の成長を目指してまいります。

 

 

(4) 会社の対処すべき課題

上記の「(3) 中長期的な会社の経営戦略」に記載の経営環境を踏まえて、当社グループは、下記の諸課題に取り組んでおります。

 

① 引き続き付加価値の増大を目指して独自の技術開発、製品開発に努め、グループとして家庭用から工業用、衣料用から非衣料用に至るまで、独自性があり、高品質且つ幅広い製品を有する縫い糸サプライヤーを目指すこと。

② 今後も高品質・高機能な縫い糸の販売拡大が期待できる中国および東南アジア市場を見据えて、アジア事業のリスクも踏まえつつ、海外子会社とともに生産体制や販売拠点の整備や見直しに努め、日系企業として品質の安定性や安全性、供給体制の効率化と利便性を高めて、競争力を強化し、工業用縫い糸におけるアジア事業の一層の拡大を図ること。

③ 近年、縮小傾向を余儀なくされてきた国内縫製市場においては、国内連結子会社3社との連携を強化して、より一層シナジー効果を高めるとともに、衣料用・非衣料用ともに独自性や機能性の高い製品の供給と高質なサービスの提供を通じて縫製業の支援に努め、さらなるシェア拡大を図ること。

④ ライフスタイルの変化などを背景に漸減傾向の続いてきた国内の手芸関連市場に対してSNSなども活用しながらハンドメイドの魅力を発信し、新たな需要の掘り起こしに努めるとともに、独自の製品や蓄積したノウハウを活かして、欧米諸国はもちろん、今後も成長が期待される中国および東南アジア諸国も含めて、海外市場の開拓に努めること。

⑤ 消費者やユーザーの購買行動の変化なども踏まえて、業務のあり方や管理システムの見直しにより、さらなる合理化・効率化を目指すこと。また一方で、男女を問わず人材の育成と活性化の図れる環境を整備し、将来に向けて事業のさらなる継続を目指して技術やノウハウの継承を行うこと。

⑥ 社会的信頼の維持はもとより、環境負荷の軽減をはじめ、企業としての社会的責任を果たすこと。

 

2 【事業等のリスク】

 消費や景気動向、国際情勢、気象状況や天災・事故、法的規制や社会的信頼等の一般的な事業リスクにつきましては、当社グループに限らず全ての企業が同様に抱えておりますが、特に当社グループの事業の現状や特徴を踏まえ、業績に重要な影響を及ぼすと思われる事項は以下のとおりです。

 

アジア事業展開に伴うリスク

当社グループは日本向け衣料品の生産の海外移行に伴い、平成5年以降、中国に順次生産及び販売子会社を設立し、生産コストの低減と同国市場における販売拡大を目指してまいりました。

さらに、昨今、日本向け衣料品の縫製は東南アジア諸国への分散化が進んだため、当社グループもこれに対応すべく、当連結会計年度末現在、タイ及びベトナムにおいて連結子会社を有するほか、委託生産も含めて、生産及び販売両面におけるアジア事業展開を拡大しつつあります。

しかしながら、これらのアジア事業においては、為替変動はもちろん、国家統治の変化や法律・税制などの突然の改定、急速な賃金上昇等を始めとする雇用環境の変化、また合弁先の動向など、事業継続に対するカントリーリスクが避けられません。

さらに昨今、アジア各国の環境汚染に対する法規制等は一段と厳しくなりつつあり、縫い糸の製造に不可欠な染色加工用水の確保や排水処理等の許認可の動向については、当社グループの生産体制に重要な影響を与える可能性がある将来のリスクと認識しております。

縫い糸は、衣料品の生産には不可欠な副資材であり、縫製現場への迅速な供給が宿命であることから、当社グループといたしましては、今後もこれらのリスクを踏まえつつ、環境対策にも努め、アジア事業のさらなる整備拡大を目指してまいります。

なお、本項におきましては、将来に関する事項が含まれておりますが、別段の表示がない限り、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、ゆるやかな回復基調が続き、企業業績の伸長や回復を背景に所得や雇用環境は改善傾向にありますが、個人消費の回復はまだら模様でありました。また、わが国経済に大きな影響を与える米国および中国を始めとするアジア情勢におきましては、経済や貿易面において先行きの不透明感が払拭されない状況が続きました。

当社が関連するアパレル・ファッション業界におきましては、天候の影響で冬物衣料品の一部に季節需要の増加等も見られましたが、全般には衣料品消費は節約志向で、日本向け衣料品の生産も慎重であったほか、国内の手芸関連業界も低調に推移したことから、服飾材料である縫い糸の需要も回復感の乏しい状況が続きました。

これらの結果、為替換算レートが円安に変動したものの、当連結会計年度の売上高は6,352百万円(前期比0.4%増)にとどまりました。

一方利益面は、アジアセグメントは全体として、売上高の増加に伴い増益傾向となりましたが、日本セグメントにおいては販売品目構成の変動に加え、修繕費等の一過性の費用の発生等もあって、営業損失は39百万円(前期は20百万円の利益)、経常利益は34百万円(前期比42.4%減)となりました。

なお、経営資源の有効活用を図るため譲渡した当社の旧東京支店の土地建物の売却益1,325百万円を含めて、1,362百万円の固定資産売却益を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純利益は990百万円(前期は28百万円の利益)となりました。

 

 当連結会計年度におけるセグメントごとの経営成績は次のとおりです。

 

日本

当社グループにおきましては、事業年度の末日を、当社は3月末日、国内子会社は1月末日と定めており、若干のずれがあることや、それぞれの事業分野や販売地域も異なるために、市場や国内消費動向の影響も、各社ごとに相違が見られます。冬期の天候の影響で冬物衣料品の一部に季節需要の増加も見られましたが、消費全般はまだら模様で特に衣料品や手芸関連商品については慎重な購買行動や節約志向が続きました。当社グループにおきましては、非衣料分野において、カーシート用縫い糸は堅調に推移したものの、衣料品の生産については全般に抑制傾向で、手芸関連分野の需要も低調に推移しました。

これらから、当セグメントの売上高は4,961百万円(前期比0.9%減)となりました。
 一方利益面は、販売品目構成の変動に加え、修繕費等の一過性の費用の発生等もあって、大幅に減益となり、セグメント損失は128百万円(前期は3百万円の利益)となりました。

 

アジア

当社グループに属する全ての海外子会社は、事業年度の末日を12月末と定めており、当連結会計年度には海外子会社の平成29年1月から12月までの業績が連結されております。
 当期間における日本向け衣料品の生産は全般に慎重で抑制傾向が続き、アジア地域での同業者間の販売競争は厳しさを増しましたが、日本向け衣料品のさらなる短納期化や小ロット化に伴い、中国からアジア各国に分散する傾向にあった衣料品の生産については、一部には中国への回帰傾向が見られました。

このような状況を背景に当社グループでは中国国内販売に下げ止まりの傾向が見られたほか、タイやベトナムでも増収傾向が続いたことに加え、為替換算レートが円安に変動したこともあって、当セグメントの売上高は1,390百万円(前期比5.3%増)となりました。

一方利益面は、引き続き中国生産子会社の収益性が回復傾向にあることや、ベトナムおよびタイにおける増収や経費削減施策の効果もあり、セグメント利益は88百万円(前期比252.5%増)となりました。

 

 

財政状態の状況は次のとおりであります。

 

資産の部については、流動資産は、前連結会計年度末に比べて1,174百万円増加し、7,815百万円となりました。これは、主として現金及び預金が1,178百万円増加したことなどによります。

 

固定資産は、前連結会計年度末に比べて308百万円増加し、3,950百万円となりました。これは、主として投資有価証券が284百万円増加したことなどによります。

これらの結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて1,483百万円増加し、11,765百万円となりました。

 

負債の部については、流動負債は、前連結会計年度末に比べて116百万円増加し、891百万円となりました。これは、主として買掛金が121百万円増加したことなどによります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて225百万円増加し、924百万円となりました。これは、主として長期借入金を全額返済した(前期は110百万円)ものの、繰延税金負債が328百万円増加したことなどによります。

これらの結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて342百万円増加し、1,816百万円となりました。

 

純資産の部については、前連結会計年度末に比べて1,141百万円増加し、9,949百万円となりました。これは、主として利益剰余金が904百万円、その他有価証券評価差額金が69百万円、為替換算調整勘定が65百万円、非支配株主持分が72百万円増加したことなどによります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は2,604百万円となり、前連結会計年度末より1,197百万円増加いたしました。活動別キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費をはじめとする非資金項目が1,099百万円の減少(前期は201百万円の増加)があったものの、税金等調整前当期純利益が1,392百万円(前期は51百万円)、仕入債務の増加117百万円(前期は159百万円の減少)となったことなどにより、380百万円の流入(前期は395百万円の流入)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入による支出1,332百万円(前期は1,182百万円)、有形固定資産の取得による支出438百万円(前期は93百万円)、投資有価証券の取得による支出200百万円(前期は支出なし)があったものの、定期預金の払戻による収入1,391百万円(前期は1,141百万円)、有形固定資産の売却による収入1,677百万円(前期は33百万円)となったことなどにより、1,011百万円の流入(前期は104百万円の流出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出109百万円(前期は181百万円)、配当金の支払額が85百万円(前期は85百万円)などにより、211百万円の流出(前期は243百万円の流出)となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前期比(%)

日 本

2,954,527

△4.4

アジア

1,556,266

11.4

合 計

4,510,794

0.5

 

(注) 金額は販売価格で表示しており、消費税等は含まれておりません。

 

 b. 受注実績

当社グループは、受注生産を行っておりません。

 

 c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

日 本

4,961,378

△0.9

アジア

1,390,771

5.3

合 計

6,352,149

0.4

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

   2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積り、判断及び仮定を必要としております。これらの見積りについて過去の実績や合理的と判断される入手可能な情報等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおり、売上高6,352百万円(前期比0.4%増)、営業損失39百万円(前期は20百万円の利益)、経常利益34百万円(前期比42.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は990百万円(前期は28百万円の利益)となりました。

この経営成績等の状況に関する経営者の認識につきましては、目標とする経営指標にも記載のとおり、指標となる経常利益及び売上高経常利益率ともに前連結会計年度に比べて減少している状況であります。

経営の基本方針を踏まえ、現在および将来の情勢や事業環境の把握に努め、社外取締役の客観的な見解も取り入れながら、前述の「対処すべき課題」に取り組んでおりますが、長期安定的な経営基盤を再構築するためにも、当面は収益力の回復が最大の課題であると認識しております。

 

また、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因としましては、以下の5点があると認識しております。

・ライフスタイルや価値観の変化、購買行動の変化に伴う衣料品の消費動向とアパレル・ファッション業界の動向及び手芸関連業界の動向

・従事者の減少と低水準の賃金が続く国内縫製業の動向
・中国や東南アジア諸国の政治・経済の先行きや法制度などの今後の動向
・海外合弁先企業の動向
・為替相場の変動

なお、当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、外部借入に依存しない財務体質を基盤として、自己資金を財源に今後の事業投資を考えており、また、流動性については現金及び預金の保有状況からみて十分に確保されているものと考えております。当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

5 【研究開発活動】

当社グループにおいては、報告セグメント(日本)に属する当社の研究開発室が中心となって集中的に研究開発活動を行っております。

昨今、ものづくりにおいて、環境に配慮し継続的発展が可能な製造技術開発も求められるようになる中、競争力強化のための製造技術開発や新製品の芽となるような先行研究の一環として大学や企業との連携による開発にも取り組むなど、独自性の高い製品や独自技術の開発により一層注力しております。
 なお、当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は68,601千円であり、報告セグメント(日本)の支出であります。