第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当第1四半期連結累計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。
 また、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。

(1)財政状態及び経営成績の状況

① 経営成績に関する説明

 当社グループは、2019年度から2021年度を対象とする中期経営計画において、「国内事業の収益力アップ」、「海外事業の拡充」、「イノベーションの推進」をグループ経営戦略の基本方針に据え、「持続可能な社会への貢献」を通じ、連結営業利益1,000億円以上を安定的に継続するグローバルな企業集団を目指しています。

 このような基本方針のもと、国内事業では、需要の構造的な変化に対応すべく、生産体制の再構築を行うことで資本の効率化を進める一方、有望事業には経営資源を集中し、キャッシュを稼ぐ力の強化に取り組んでいます。また、海外事業では、海外拠点数の拡大に加え、既存のインフラを活用した新事業の展開等、既存拠点からの有機的拡大を図るとともに、事業・拠点間のシナジー創出を進めています。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は内外経済を下振れさせており、当社グループにつきましても、国内外で印刷用紙を中心に足元で需要が落ち込んでいます。今後は緩やかに回復するものと思われますが、引き続き、グループ経営戦略に沿った諸施策を着実に推し進め、収益力の強化、中長期的な企業価値向上に努めていきます。

 当第1四半期連結累計期間の売上高は、国内事業・海外事業ともに新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、前年同四半期を536億円(△14.3%)下回る3,219億円となりました。なお、当社グループの海外売上高比率は、前年同四半期を2.7ポイント下回る28.7%となりました。

 営業利益は、国内事業・海外事業ともに減益となり、前年同四半期を132億円(△54.5%)下回る110億円となりました。

 営業外損益は、為替差損の増加等により前年同四半期に対し44億円の減益となり、経常利益は、前年同四半期を176億円(△74.8%)下回る59億円となりました。

 特別損益は、受取保険金の増加等により前年同四半期に対し30億円の増益となりました。税金等調整前四半期純利益は、前年同四半期を146億円(△68.8%)下回る66億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同四半期を99億円(△82.1%)下回る21億円となりました。

 

 当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち、経済的特徴、製品の製造方法又は製造過程、製品を販売する市場又は顧客の種類等において類似性が認められるものについて集約を実施し、「生活産業資材」、「機能材」、「資源環境ビジネス」、「印刷情報メディア」の4つとしています。報告セグメントに含まれない事業セグメントは、「その他」としています。

 

 

 各セグメントの主要な事業内容は以下のとおりです。

生活産業資材・・・・・ 段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業、

                       家庭紙事業、紙おむつ事業

機能材・・・・・・・・ 特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業

資源環境ビジネス・・・ パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業

印刷情報メディア・・・ 新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業

その他・・・・・・・・ 不動産事業、エンジニアリング、商事、物流 他

 

 

〈生活産業資材〉

 当第1四半期連結累計期間は、主として国内向け製品の減販影響により、売上高は前年同四半期比9.9%減収の1,522億円、営業利益は同27.7%減益の53億円となりました。

 国内事業では、段ボール原紙・段ボールは、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための外出自粛等の影響により一部加工食品向けは販売が堅調でしたが、全体では、同感染症拡大に伴う経済活動停滞の影響(以下、「コロナ影響」と言う)等による需要減により、販売量が前年に対し減少しました。白板紙は、国内販売は、外出自粛影響等による土産物・贈答関係の需要減等により、販売量が前年に対し減少しました。輸出販売は東南アジア・オセアニア地区におけるロックダウンの実施による需要減を受け、販売量が前年に対し減少しました。包装用紙は、国内販売は、外出自粛影響等による手提袋等の需要減により販売量が前年に対し減少しましたが、輸出販売は前年並みに推移しました。

 子供用おむつは、国内販売は減少しましたが、輸出販売が増加したため、全体の販売量は前年に対し増加しましたが、売上高は市況軟化により減少しました。大人用おむつは、販売量が前年に対し減少しました。家庭紙は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う衛生意識の高まりから、使い捨て拭き取り商品の使用シーンが多様化し、キッチンタオル等を中心に、販売量が前年に対し増加しました。

 海外事業では、段ボール原紙は、東南アジアにおいて、コロナ影響により、販売量が前年に対し減少しました。オセアニアでは、販売量が前年に対し、ほぼ横ばいでした。段ボールは、東南アジアでは、ベトナム・カンボジアなどで新工場が稼働したことにより販売量が増加しましたが、売上高は市況軟化の影響により減少しました。オセアニアでは、販売量が前年に対し、ほぼ横ばいでした。紙おむつは、中国では子供用紙おむつ「Whito」の拡販及びECサイトでの販売好調、マレーシアでは自社ブランド品の浸透、インドネシアでは拡販の継続により、それぞれ販売量が前年に対し大幅に増加しました。

 

〈機能材〉

 当第1四半期連結累計期間は、売上高は前年同四半期比10.1%減収の486億円、営業利益は同3.9%減益の33億円となりました。

 国内事業では、特殊紙の国内販売は、新製品開発・新規顧客開拓を進めましたが、コロナ影響等を受け、産業資材用途を中心に販売量が前年に対し減少しました。輸出販売は、世界経済の減速及び市況価格の下落による受注見合わせの影響等により、販売量が前年に対し減少しました。感熱紙は、コロナ影響により、全般的に販売量が減少しました。

 海外事業においても、各地でコロナ影響を受け、感熱紙は南米、東南アジアで販売量が前年に対し減少しましたが、欧州では顧客の在庫確保の動き等により、前年に対し増加しました。北米では販売量が前年に対し減少しました。

 

〈資源環境ビジネス〉

 当第1四半期連結累計期間は、パルプ市況軟化の影響等により、売上高は前年同四半期比22.2%減収の585億円、営業利益は同88.4%減益の13億円となりました。

 国内事業では、パルプ事業は、主に溶解パルプの中国向け輸出がコロナ影響を受け減少したことにより、販売量が前年に対し減少しました。エネルギー事業は、青森県八戸市においてエム・ピー・エム・王子エコエネルギー株式会社が、バイオマス発電設備を昨年から稼働したことにより、売電量が前年に対し増加しました。

 海外事業では、パルプ事業は販売量が前年に対し増加しましたが、売上高は市況軟化の影響等により減少しました。木材事業は、ニュージーランドにおいて、ロックダウンの実施を受けて4月度に生産停止となったことから、販売量が前年に対し減少しました。

 

〈印刷情報メディア〉

 当第1四半期連結累計期間は、主として国内向け製品の減販影響により、売上高は前年同四半期比21.4%減収の562億円、営業利益は同15億円減益の10億円の損失となりました。

 国内事業では、新聞用紙は、コロナ影響に伴う頁数及び発行部数の減少により、販売量が前年に対し減少しました。印刷用紙は、コロナ影響により、販売量が前年に対し大幅に減少しました。出版用途においては、外出自粛に伴うコミック向け需要の増加がありましたが、女性誌、旅行誌、スポーツ誌等の頁数及び発行部数の減少が大きく、販売量が前年に対し減少しました。また商業印刷用途においても、集客及びイベント自粛によるカタログ、ポスター、チラシ等の需要減を受け、販売量が前年に対し大幅に減少しました。情報用紙は、テレワークの普及によりオフィスでの需要が減退し、販売量が前年に対し減少しました。

 海外事業では、江蘇王子製紙有限公司において、コロナ影響に伴う広告等の商業印刷需要の減退、また海外での輸出印刷物需要の減少等により、販売量が前年に対して減少しました。

 

② 財政状態に関する説明

 当第1四半期末の総資産は、現金及び預金の増加等がありましたが、受取手形及び売掛金の減少や在外連結子会社の円換算差等の影響により、前連結会計年度末に対して73億円減少し、18,780億円となりました。

 負債は、支払手形及び買掛金、未払法人税等が減少しましたが、有利子負債の増加等により、前連結会計年度末に対して93億円増加し、10,630億円となりました。

 純資産は、円高による為替換算調整勘定の減少等により、前連結会計年度末に対して167億円減少し、8,150億円となりました。

 今後も、営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローは配当及び投資資金に充当し、有利子負債残高を適正水準に保ちながら、不足資金については借入金やコマーシャル・ペーパー、社債の発行等による資金調達を行い、余剰資金については有利子負債の削減に充当します。なお、長期借入金や社債等の長期資金については、経営計画に基づく資金需要見通しや金利動向等の調達環境、既存の借入金や社債償還時期等を総合的に勘案の上、調達規模、調達手段等を適宜判断して実施することとしています。

 当社グループでは、主要連結子会社との間でグループファイナンスを行い、資金の一元管理を行うことにより、運転資金の効率的な運用を図っています。

 また、新型コロナウイルス感染拡大の影響に備えて、従来から締結している取引銀行との貸出コミットメントライン契約に加え、現預金残高の積み上げにより一定程度の手許流動性を確保しています。

 

(2)経営方針・経営戦略等

 当社グループは、「革新的価値の創造」、「未来と世界への貢献」、「環境・社会との共生」を経営理念とし、「領域をこえ 未来へ」向かって、中長期的な企業価値向上に取り組んでいます。

 これらの経営理念の下、「森のリサイクル」、「紙のリサイクル」、「水のリサイクル」という、バリューチェーンを通じた3つの資源循環を引き続き推進し、事業を通じて社会に対し価値を提供していくことで、真に豊かな社会の実現に貢献していきます。また、企業存続の根幹である「安全・環境・コンプライアンス」を経営の最優先・最重要課題と認識しており、労働災害リスクの撲滅、環境事故の防止、企業としての社会的責任を果たすための法令遵守等、経営層から世界中の従業員まで確実に浸透させる取り組みを続けていきます。

 近年の経営環境は大きくかつ急速に変化していますが、変わり続ける時代のニーズを充足し、新しい未来を支えるモノづくりを行い、持続可能な社会の発展を目指していきます。現在取り組んでいる2019年度から2021年度を対象とする中期経営計画では、「国内事業の収益力アップ」、「海外事業の拡充」、「イノベーションの推進」をグループ経営戦略の基本方針に据え、「持続可能な社会への貢献」を通じて連結営業利益1,000億円以上を安定的に継続するグローバルな企業集団を目指すにあたり、これまでと同様、事業の選択と集中を進め、当社グループ全体としての最適生産体制を築くと同時に、成長が見込まれる有望事業の強化や新しい軸となり得る新規事業の創出に取り組んでいきます。一方で、経営環境の変化には迅速かつ的確に対応していきます。これまで、世界情勢、国内情勢を機敏に察知し、先回りして様々なアクションを取りながら、多彩なポートフォリオを築いてまいりました。幅広く展開している事業の領域、地域の領域、そのそれぞれが補完し合い、相乗効果を生み、さらなる成長を追求できるよう、これまで以上に強靭で外部環境に対する耐性を持った事業ポートフォリオの構築を推し進めていきます。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は内外経済を下振れさせており、当社グループにつきましても、国内外で印刷用紙を中心に足元で需要が落ち込んでいます。今後は緩やかに回復するものと思われますが、引き続き、グループ経営戦略に沿った諸施策を着実に推し進め、収益力の強化、中長期的な企業価値向上に努めてまいります。

 

 なお、当中期経営計画の最終年度である2021年度の経営数値目標は以下のとおりです。

 

 

2021年度経営目標

連結営業利益

海外売上高比率

ROE

ネットD/Eレシオ

1,500億円以上

40%

10.0%

0.7倍

(2018年度実績を維持)

※ネットD/Eレシオ=純有利子負債残高/純資産

 

 「国内事業の収益力アップ」では、国内需要の変化に応じて生産体制再構築や保有設備の有効活用等によって資本効率化を図る一方、有望事業に経営資源を集中し、キャッシュを稼ぐ力を強化いたします。「海外事業の拡充」では、既存拠点からの有機的拡大や事業、拠点間シナジーの創出を進めていきます。また、「イノベーションの推進」では環境・社会ニーズに対応した新事業・新製品の開発推進と早期事業化を図り、これらの取り組みを通して「持続可能な社会への貢献」を進めていきます。

 

 具体的には以下の取り組みを行っています。

 

(a)生活産業資材

・産業資材(段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業)

 海外においては、事業基盤をより強固なものとするため、マレーシアで段ボール原紙マシンの増設(2021年4月稼働予定)とエネルギー供給及び用排水設備更新を進めています。また、2020年2月にカンボジアで3箇所目、2020年3月にインドで4箇所目の段ボール工場が稼働、インドネシアでは初となる段ボール工場(2020年中稼働予定)の建設を進めており、マレーシアに9箇所目の段ボール新工場建設も決定致しました。さらに、ニュージーランドでは、クライストチャーチ市にある段ボール工場の新設・移転を進めています(2021年上期稼働予定)。今後も、東南アジア・インド・オセアニアにおける事業展開をさらに進めるために、既存の現地拠点からの有機的拡大を図っていきます。

 国内では、段ボール需要の伸びが特に大きいと期待される関東において国内最大規模の段ボール工場を船橋地区で建設(2020年7月より営業生産開始)するとともに、段ボール原紙についても製造設備の停機・移設等により生産体制の再構築を実施し、国内需要の構造的な変化に対応しています。また、グループ全体のパッケージングに関する研究開発を一元的に担うパッケージング推進センターを中心に、段ボール原紙・白板紙・包装用紙から段ボール・紙器・製袋まで一貫した製造・販売・製品開発・提案等のトータルパッケージングを推進しています。その具体的な取り組みの一つとして、次世代の包装ソリューションとして包装資材の削減や省人化、配送費削減などにつながる「OJI FLEX PACK’AGE」の提供及びその包装資材である連続段ボールシート「らくだん」の販売を開始しました。

 また、2019年12月に石塚硝子株式会社と紙容器関連事業に協同で取り組み、同事業に参入することを決定しました。経営資源及びノウハウを相互に活用して、同事業の基盤強化及び新製品開発による新たな事業領域への進出を図るとともに、世界的な環境意識の高まりを背景に拡大する紙素材のニーズに対応し、国内外へ拡販していきます。

 全国に広がる販売チャネルと素材・加工一貫による提案力を軸に幅広く事業を拡大し、競争力・収益力の向上を図っていきます。

 

・生活消費財(家庭紙事業、紙おむつ事業)

 家庭紙事業では、森林認証を取得した環境配慮型製品や「鼻セレブ」に代表される高品質製品を取り揃えた製品展開により、一層の「ネピア」ブランドの価値向上に努めています。また、昨年開始した三菱製紙株式会社との家庭紙合弁事業では、同社八戸工場の充実したインフラや東北地区で初となる家庭紙事業拠点の立地を生かした拡販と物流合理化等を進めています。さらに2020年7月に中国の家庭紙原紙製造設備が稼働し、2020年10月からはその原紙を活用した関東地区の新加工拠点が稼働する予定となっており、首都圏での拡販を進めて市場プレゼンスを高めるとともに、今後も安定した需要が期待される家庭紙事業の拡大を図っていきます。

 紙おむつ事業の子供用分野では、国内外の統一ブランドとして展開しており、2020年5月にリニューアルを行った「Genki!(ゲンキ!)」の拡販に加えて、新技術で赤ちゃんの快適性を追求した最高品質のブランド「Whito(ホワイト)」で高品質・高価格帯市場を開拓することにより、おむつ事業においても「ネピア」ブランドの価値向上に努めていきます。中国では「Genki!(ゲンキ!)」に加え「Whito(ホワイト)」の販売を開始し拡販に努めており、マレーシアでは2拠点での製造販売を展開しています。さらにインドネシアでは合弁会社での販売に加え、2020年1月の現地紙おむつ工場の稼働によって、コスト競争力の確保と事業基盤の強化を図り、周辺国を含めて一層の事業拡大を進めています。大人用紙おむつについては、高齢化が進むわが国の介護現場が抱える課題を解決する商品の開発を続けていきます。

 新型コロナウイルス感染症の流行による医療現場での資材不足を受け、2020年5月から王子ネピア株式会社名古屋工場で不織布の生産体制を増強し、医療用ガウン用の素材供給を開始しました。また、2020年6月からは自社開発の医療用ガウン製品の提供も開始しています。さらに、全国的なマスク需要の高まりを受け、2020年6月から新タック化成株式会社山本工場でマスクの生産を開始しています。当社は、新型コロナウイルス感染症拡大の早期終息に少しでも貢献できるよう今後とも努めていきます。

 

(b)機能材(特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業)

 東南アジアでの中心事業である感熱紙・粘着紙については、原反生産・販売の川上事業をより強固で確実なものとするため、マレーシアで感熱紙・粘着紙の加工・印刷及び販売を行う川下事業会社のM&Aにより素材加工一体型ビジネスを推し進め、エンドユーザーニーズを適時的確に把握し、事業領域の拡大を図っています。

 また、ブラジルでは南米での旺盛な感熱紙需要に対応するため、生産能力をほぼ倍増とする設備増強・増設工事を行うことを決定しました(2021年12月完成予定)。今後も東南アジア・南米・中東・アフリカ等の新興国市場の経済発展に伴って拡大する需要に応じて、これまで培ってきた「抄紙」や「紙加工(塗工・粘着)」、「フィルム製膜」といった当社グループの強みであるコア技術を梃子に新たな事業エリアの拡大を図っていきます。

 国内については、生産体制の継続的な見直し等により、競争力・収益力を高めることで既存事業の基盤を強化しています。具体的にはノーカーボン紙事業について、2020年7月1日より、三菱製紙株式会社への生産・販売移管を開始しています。これは、需要構造の変化や電子化によるノーカーボン紙市場の縮小が続く中、同事業の生産及び販売を三菱製紙株式会社へ集約することで、王子グループでは経営資源の選択と集中を進め、生産性の向上及び競争力の強化を図るものです。一方、三菱製紙株式会社でもシェア拡大と収益性の改善を見込んでいます。

 特殊紙事業においては、脱プラスチック化の対応として紙トレー・容器・ストロー等に使用される各種素材の提案を進めています。このほかセルロースを他素材と組み合わせた複合素材や耐熱性・低誘電性に優れた耐熱ガラスペーパーなどの開発を行っており、引き続き様々な分野のニーズに応えるべく新製品の開発・普及を進めていきます。

 今後も、コア技術と新素材との融合により、高機能・高付加価値製品の迅速な開発を継続し、また、研究開発型ビジネスのたゆまざる追求により、電気自動車用コンデンサフィルムの拡販等の新たな事業領域の拡大に取り組んでいきます。

 

(c)資源環境ビジネス(パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業)

 パルプ事業では、パルプ市況の変動に耐え得る事業基盤を強化するため、主要拠点において戦略的収益対策を継続して実施しています。ニュージーランドでは、当社グループのノウハウや操業管理手法等を導入・活用し、操業の安定化及び効率化対策に取り組み、ブラジルでは製造設備の最新鋭化等による継続的な収益対策を進めています。国内の溶解パルプ事業ではレーヨン用途向け製品に加えて、医療品材料や濾過材用途等の高付加価値品の生産を開始し、事業拡大を進めています。

 エネルギー事業では、さらなる事業拡大を進めており、三菱製紙株式会社との合弁事業によるバイオマス発電設備が昨年に稼働しました。さらに、伊藤忠エネクス株式会社と合弁で徳島県にバイオマス発電設備を建設することを決定し、2022年の稼働に向けて準備を進めています。また、エネルギー事業の拡大にあわせバイオマス燃料事業の強化を進めており、国内では、未利用木材資源を活用した燃料用チップの生産拡大、海外では、インドネシアやマレーシアにおける燃料用パーム椰子殻の調達増に向けた取り組みを行っています。

 植林・木材加工事業では、アジア・オセアニア地域を中心に森林資源の確保及び生産能力増強に取り組んでいます。また、中国・東南アジアに設立した販売拠点で、パルプ・木材製品等の拡販を進めています。

 2019年11月に原料調達コストの削減を目的として製紙事業の主原料である輸入木材チップについて、中越パルプ工業株式会社並びに三菱製紙株式会社と3社で共同調達を開始しました。これにより、チップ船の効率的な運用、直接貿易の拡大、調達先の最適化、業務の効率化などによるコスト削減を進めていきます。

 

(d)印刷情報メディア(新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業)

 国内では、ICT化の進展等に伴う事業環境の変化を見極めつつ、生産性・稼働率の向上等を図るべく洋紙マシンの停止や段ボール原紙マシンへの改造による最適生産体制の構築及び保有設備の有効活用を進め、国際競争力の強化を進めるとともにキャッシュ・フローの増大を図っていきます。また、交錯輸送の解消によるコストダウン等、三菱製紙株式会社との業務提携効果を早期に発現させ、競争力・収益力の向上を図っていきます。

 また、中国では数少ない紙パルプ一貫生産体制の強みを最大限に活かしたコストダウンを継続して行い、さらなる競争力強化に取り組んでいます。

 

(e)イノベーションの推進と持続可能な社会の実現に向けた取り組み

 当社グループは、経営理念の一つである「環境・社会との共生」の下、環境経営の推進を掲げ、環境と調和した企業活動を展開しています。柔軟かつ効率的な研究開発活動を充実させ、新たなニーズの探索に取り組み、イノベーションの推進による新製品・新事業の創出を通じて、真の豊かさと持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

 次世代素材として幅広い産業に応用が期待されているセルロースナノファイバー(CNF)については、これまで、CNFスラリーの「アウロ・ヴィスコ」がカーケミカル用品の増粘剤や生コンクリートの圧送先行剤として採用されてきました。加えて、オランダで開催された世界最大級の化粧品原料展でシルバー賞を受賞した「アウロ・ヴィスコCS」は、2019年4月に製品化しています。そして、2019年10月には「東京モーターショー」の環境省ブースにて、CNFとポリカーボネートを複合した樹脂ガラスが自動車部品として展示されました。この複合材は、無機ガラスに比べて軽量なため、自動車重量の大幅な低減効果が期待されています。さらに、当社独自の技術開発により実現したCNFシート「アウロ・ヴェール」が2020年2月に卓球ラケット用素材に採用されました。これらの用途で採用されたスラリー、複合樹脂、シートの他に、有機溶剤に分散可能なCNFパウダーも多様なCNFのラインアップに加え、今後もより幅広い分野での用途開発を進め、CNF実用化を牽引し、市場普及を積極的にリードしていきます。

 海洋プラスチック問題への対応として世界中でプラスチックに替わる紙製品の需要が高まっている中、地球環境に配慮した素材・製品開発に積極的に取り組んでいます。素材の開発においては、生分解性プラスチックとパルプの複合材、再生循環型の包装材料、耐水性を持ったパルプ製トラベラーリッド等の開発を加速しています。プラスチックストローの代替では、耐水性を有するストローの原紙が国内ストローメーカーに採用されました。また、水蒸気と酸素の両方に対してバリア性を有する紙素材「SILBIO BARRIER」は、多くの引き合いに対応し、製品化を進めながら、さらなる機能向上にも取り組んでいます。そして、市場においては、Nestlé Group製品のパッケージ素材に当社グループ紙製品がプラスチック代替として、タイに続き日本でも採用されました。今後もパッケージ素材のサプライヤーとして、地球環境へ配慮した取り組みに貢献していきます。

 パルプを原料としたプラスチックの製造についても目下開発中です。従来の石油を原料としたプラスチックから、持続可能なバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックに置き換えることにより、化石燃料由来のCO2排出を抑制し、地球温暖化防止に貢献することを目指していきます。一般的なバイオマスプラスチックはトウモロコシなどの可食原料から製造されますが、当社グループのバイオマスプラスチックは非可食である樹木由来のパルプを原料とすることで食糧資源との競合を無くし、持続可能な社会にさらに深く貢献していきます。

 土木分野においては、従来から仮設資材に利用されていた鋼材や木材の代替として、人と環境に優しく、取扱いが容易な紙素材を活用した仮設施工の生産性向上技術である「KAMIWAZA」を清水建設株式会社と共同開発しました(第49回日本産業技術大賞で審査委員会特別賞受賞)。引き続き、紙素材を活用した新たなソリューションを進めていきます。

 また、木質成分の1つであるヘミセルロースにおいては、当社グループの独自技術により抽出・精製した「加水分解キシラン」が化粧品原料素材として使われています。また、ヘミセルロースのさらなる高付加価値化を目指し、化学合成した「硫酸化ヘミセルロース」を医薬品として開発することを進めています。医薬事業への参入に向けた取り組みを加速するため、2020年4月に「王子ファーマ株式会社」を設立し、大学や製薬企業とのコラボレーションを推進しています。

 水処理技術の分野では、長年培ってきた用水製造・排水処理技術を活かし、競争力のある水処理システムを実用化しています。当社水処理システムはタイの工業団地で稼働しているほか、新たにミャンマー最大手のビール会社の用水製造設備や、2021年竣工予定のミャンマーの大型複合施設の生活用水製造設備並びに排水処理設備でも採用されました。排水処理設備、工業用水設備、生活用水製造設備の全てにおいて、IoT技術を活用した遠隔監視機能を組み込むことができ、より最適な水処理設備の運用をサポートしています。これからも水処理システムの技術革新を進めながら普及拡大を目指し、国内外の水環境改善に貢献していきます。

 今後も地球温暖化対策、生物多様性保全、環境配慮型製品の提供等も含め、地球環境に配慮した取り組みを進めていくとともに、持続可能な森林経営を推進し、木材原料をはじめとする原材料の責任ある調達に努めていきます。

 また、中長期的な企業価値向上を図り、持続的発展を遂げるため、多様な人材が活躍できるよう働き方改革とダイバーシティの推進に取り組んでいきます。

 多様なステークホルダーとの信頼関係を構築しながら、経営の効率性、健全性及び透明性を確保し、企業価値の向上と社会から信頼される会社を実現するため、コーポレートガバナンスの充実を経営上の最重要課題の一つと位置づけ、継続的に強化に努めていきます。

 

 当社グループはこれらの諸施策を通して、社会に様々な価値を提供し、持続可能な開発目標(SDGs)達成の貢献をすると共に、常に時代のニーズを先取りし、イノベーションに挑戦して、持続的に成長する企業グループを目指していきます。

 

(3)研究開発活動

 当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、2,280百万円です。

 なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

3【経営上の重要な契約等】

 当第1四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。