第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。

 

(1) 企業集団の経営戦略

当社グループは、「革新的価値の創造」、「未来と世界への貢献」、「環境・社会との共生」を経営理念とし、「領域をこえ 未来へ」向かって、中長期的な企業価値向上に取り組んでいます。

これらの経営理念の下、「森のリサイクル」、「水のリサイクル」、「紙のリサイクル」という、バリューチェーンを通じた3つの資源循環を引き続き推進し、事業を通じて社会に対し価値を提供していくことで、真に豊かな社会の実現に貢献していきます。また、企業存続の根幹である「安全・環境・コンプライアンス」を経営の最優先・最重要課題と位置付け、労働災害リスク撲滅、環境事故防止、企業としての社会的責任を果たすための法令遵守等、全役員・全従業員へ確実に浸透させる取り組みを続けていきます。

2021年度を最終年度とする中期経営計画では、「国内事業の収益力アップ」、「海外事業の拡充」、「イノベーションの推進」をグループ経営戦略の基本方針に据え、「持続可能な社会への貢献」を通じて連結営業利益1,000億円以上を安定的に継続するグローバルな企業集団を目指しました。

2021年度の経営目標として、「連結営業利益1,500億円以上」、「海外売上高比率40%」、「ROE10.0%」、「ネットD/Eレシオ0.7倍」を掲げて事業運営を行い、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動の停滞・回復の遅れ等はあったものの、「ROE10.0%」と「ネットD/Eレシオ0.7倍」は目標達成しました。

一方、当社グループは新型コロナウイルス感染拡大により多様化する消費構造やライフスタイル・働き方を見据えた事業構造改革、及び中期経営計画に基づいた企業価値向上施策を着実に進めました。国内では、需要の変化に応じた生産体制再構築、保有設備の有効活用等によって資本効率化を行うと同時に、有望事業に経営資源を集中し、収益力の強化に努めました。海外では、主に東南アジアのパッケージング事業において既存拠点からの有機的な拡大や事業・拠点間シナジーの創出を進めました。さらに、環境・社会ニーズに対応した新事業・新製品の開発促進と早期事業化を図りました。これらの諸施策により、2021年度は営業利益1,201億円と過去最高益を達成しました。

 


 

そしてこの度、さらなる発展を遂げるために、経営理念を踏まえ、当社グループのあるべき姿として、森林を健全に育て、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていくという存在意義を新たに定義しました。

健全に育て管理された森林は、二酸化炭素を吸収、固定するだけではなく、洪水緩和、水質浄化等の水源涵養、防災という機能の他に、生物多様性や人間の癒し、健康増進等にも貢献する効果があります。そして、森林資源を活かした木質由来の製品は、その原料が再生可能であり、化石資源由来のプラスチック、フィルムや燃料等を置き換えていくことができます。当社グループは、森林を健全に育て管理し、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、地球の温暖化や環境問題に取り組み、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていきます。

また、当社グループのあるべき姿の実現に向け、2030年までの長期ビジョンとして、「成長から進化へ」をグループ基本方針に据え、具体的な取り組みとして「環境問題への取り組み -Sustainability-」、「収益向上への取り組み -Profitability-」、「製品開発への取り組み -Green Innovation-」の三本柱を掲げました。「環境問題への取り組み -Sustainability-」では、石炭使用量ゼロ化に向けた燃料転換、再生可能エネルギーの利用拡大による温室効果ガス削減の推進や、植林地を取得・拡大し、有効活用することによる森林によるCO2純吸収量の拡大など、環境問題への対策を継続して進めていくことで事業の価値を高めていきます。「収益向上への取り組み -Profitability-」では、更なる最適な生産体制の構築等を通じ、既存事業を掘り下げ深めると同時に、海外パッケージング事業や、環境配慮型製品の拡販等、有望及び新規市場へ事業を伸ばしていくことで事業の価値を高めていきます。「製品開発への取り組み -Green Innovation-」では、環境配慮型素材や製品の開発、プラスチック代替品の商品化等、木質由来の製品を新しく世に出していくことで、事業の価値を高めていきます。これらの取り組みを通じ、2030年度までに売上高2.5兆円、及び2020年9月に制定した「環境行動目標2030」を達成し、「森林を健全に育て、その森林資源を生かした製品を創造し、社会に届けることで、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていく」企業として、社会へ貢献してまいります。


 

この2030年までの長期ビジョンに基づき、その目指すべき姿の実現のためにこれからの3年間で取り組むべき戦略・目標を中期経営計画としてまとめました。この2022年度から2024年度を最終年度とする新たな中期経営計画では、以下の数値目標を設定しています。

 

2024年度経営目標

連結営業利益

連結純利益

海外売上高比率

ネットD/Eレシオ

1,500億円以上

1,000億円以上

(安定的に1,000億円

以上を継続)

40%

(将来的には50%を

目指す)

0.7倍

(2022年3月末0.7倍)

 

※ ネットD/Eレシオ=純有利子負債残高/純資産

 

 

具体的には以下の取り組みを行います。

 

(a) 生活産業資材

・産業資材(段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業)

海外では、引き続き東南アジア地域を中心にパッケージング事業の拡大を図ります。2021年10月にマレーシアで段ボール原紙の新マシンが稼働したことにより、東南アジアにおける原紙・加工一貫での事業展開を一段と推し進め、コスト競争力を強化していきます。川下の段ボール事業では、旺盛な需要に応えるべく、新工場建設やM&Aにより積極的に事業を拡大しています。2021年3月にはインドネシアでは初となる段ボール工場を稼働させ、ベトナム、マレーシアにおいても段ボール新工場の建設を進めており、2022年度上期から2023年度上期にかけて順次稼働予定です。インドでは2021年10月に段ボールの製造・販売を行うEmpire Packages社の発行済み株式の80%を取得しました。これにより、同社が持つ顧客基盤とその信頼関係を通じてインドにおける段ボール事業をより一層推進していきます。ニュージーランドでは、クライストチャーチ市にある段ボール工場の移転を行い、2021年11月以降順次稼働を開始するなど、事業基盤のさらなる強化に努めています。

国内では、原紙・加工一貫での生産体制を一層強化し、より品質の高い製品を持続的かつ効率的に供給する体制を整えます。2021年10月には王子製紙苫小牧工場において段ボール原紙マシンが稼働し、収益力向上を図っているほか、段ボール需要の伸びが特に大きいと期待される関東において、船橋地区では段ボール新工場を稼働させ、宇都宮地区では段ボール原紙生産工場敷地内へ段ボール工場の移転(2023年1月完成予定)を行います。さらに、段ボール・紙器・製袋といったあらゆる包装資材について、素材加工一貫の製造・販売・製品開発・提案等、グループ総合力を活かしたトータルパッケージングを推進しています。具体的な取り組みの一つとして、自動包装システム「OJI FLEX PACK’AGE」の提供及びその包装資材である連続段ボールシート「らくだん」の販売を行い、包装資材の削減や省人化、配送費削減など、お客様のニーズに合わせた包装ソリューションの提供を進めています。

また、世界的な環境意識の高まりに伴い、紙製品への一層の期待が集まる中、脱プラスチック製品の開発・拡販を一段と進めていきます。さらに、既存事業である液体紙容器についても国内外への販路をますます拡大していきます。

 

・生活消費財(家庭紙事業、紙おむつ事業)

家庭紙事業では、森林認証を取得した環境配慮型製品や「鼻セレブ」に代表される高品質製品を取り揃えた製品展開により、一層の「ネピア」ブランドの価値向上に努めています。関東地区の新加工拠点では、中国で製造した家庭紙原紙を加工しており、さらに自社物流倉庫の設置を決定しています(2022年8月稼働予定)。家庭紙加工拠点と配送拠点の一体化により関東圏での家庭紙・紙おむつ事業の拡大を図っていきます。環境配慮型製品の開発にも積極的に取り組んでおり、2022年1月には、クラフト紙で包装したティシュ製品「nepia krafco mini」を発売しました。また、2022年4月には、パッケージを紙素材に変更した「ネピeco」シリーズの新商品として、キッチンタオルとボックスティシュを発売しました。

新型コロナウイルス感染症の流行以降、自社開発医療用ガウン製品、マスク製品の提供を開始しています。2021年11月には「ネピア 長時間フィットマスク」シリーズを発売しました。中でも「ネピア 長時間フィットマスク ブロックフィルタープラス サージカル」は、医療用マスク規格において最高クラスであるクラスⅢに適合と審査されており、最高クラスの医療用マスクを市販品として発売することで、お客様に安心と安全をお届けしていきます。また、2022年3月には、「ネピeco」シリーズから、不織布に植物由来の素材を80%使用した「ネピア ネピeco バイオマスマスク」を発売し、2022年4月には、株式会社タイタンとコラボレーションした新しい包装形態のマスク「ネピア 鼻セレブポケットマスク」を発売しました。本製品は、マスク装着が日常化し、予備のマスクを持ち歩くユーザーが増えた一方で、一般に販売されているマスクのパッケージはどれもサイズが大きくかさばり、小さなカバンやポーチに入れて持ち運べないという不満を解消するアイデア商品です。当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大の早期終息に少しでも貢献できるよう今後も努めていきます。

紙おむつ事業の子供用分野では、国内外で統一ブランドとして展開しており、2021年4月にリニューアルを行った「Genki!(ゲンキ!)」の販売を通して、紙おむつ事業においても「ネピア」ブランドの価値向上に努めていきます。マレーシアでは紙おむつ加工機の新設を含む生産体制再構築により生産能力を増強し、インドネシアでは合弁会社における現地紙おむつ工場での製造及び販売によって、コスト競争力の確保と事業基盤の強化を図り、周辺国を含めて一層の事業拡大を進めています。さらに、中国では品質と性能をより高めた「Whito Premium(ホワイトプレミアム)」の拡販を進めています。国内における大人用紙おむつについては、要介護・要支援人口の増加に伴い、成長が見込まれていることを受け、2022年9月に福島県で新たな加工機の稼働を予定しています。

また、2022年2月には、株式会社レデイ薬局と協業で、在宅介護向けECショップ「ネピア×くすりのレデイハートショップ 介護のしたく。おうち介護のかんたん通販」を開設しました。在宅介護が初めての方にも分かりやすいよう、病院や介護施設にも販売している大人用紙おむつに加えて、在宅介護に必要な製品を幅広くラインアップしています。2022年3月には、医療・福祉施設向け製品「ネピアテンダー」シリーズから、介護をする方・される方、双方にとって介護負担の軽減を目指した「ぬれタオル」、「おしりふき」、「おしり洗浄液 つるんとさん」、「介護用タオル おしぼりの素」を発売しました。引き続き、高齢化が進むわが国の介護現場が抱える課題を解決する製品の開発を進めていきます。

環境への配慮や品質を重視した製品展開をもとに、顧客ニーズ、時代の変化に応じ、「ネピア」ブランドの再構築を行い、さらなる新製品の開発、価値創出を目指していきます。

 

(b) 機能材(特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業)

海外では、南米での旺盛な感熱紙需要に対応するため、ブラジルで生産能力をほぼ倍増とする設備増強・増設工事を実施、2022年1月から稼働しました。欧州においても感熱紙の設備増強(2024年1月稼働予定)を決定しました。東南アジア・南米・中東・アフリカ等の新興国市場の経済発展に伴って拡大する需要に応じて、これまで培ってきた「抄紙」や「紙加工(塗工・粘着)」、「フィルム製膜」といった当社グループの強みである基幹技術をベースに事業エリアの拡大を図ると同時に、既存拠点での競争力強化を目指していきます。

国内では、高機能・高付加価値製品の迅速な開発に継続して取り組んでおり、2021年12月には、従来両立が困難であった高い遮熱性と光線透過性を両立した自動車用ウィンドウフィルムの開発に成功しました。2022年2月には、従来は廃棄されていた繊維・端切れ・回収衣料等を紙原料として配合した循環資源混抄紙「MEGURISH(綿)」を開発しました。また、植物由来のセルロースとポリ乳酸を主原料とし、生分解性を有した不織布素材「キナリト」を開発しました。「キナリト」は、立体成型が可能で、プラスチック容器の代替やデザイン性を重視したアイテムへの展開が期待されることに加え、茶葉やコーヒーかす等の従来は廃棄されてきたバイオマスを配合することができるため、廃棄物削減等の新たな価値を提案することも可能です。さらに、機能材市場の需要構造の変化に応じて生産体制の継続的な見直しを行い、競争力・収益力を高めることで既存事業の基盤を強化しています。また、脱炭素社会への転換がグローバルに進行し電動車が急速に普及していることを受け、電動車のモーター駆動制御装置のコンデンサに用いられるポリプロピレンフィルムの生産設備を滋賀県に2基増設することを決定しています(2023年、2024年稼働予定)。これにより、生産能力は2022年2月時点に対し、倍増する予定です。

今後も環境配慮型素材及び製品の開発を進めるとともに、市場ニーズを先取りし、期待を超える製品やサービスを迅速に提供できるよう、新たな事業領域の拡大に積極的に取り組んでいきます。

 

(c) 資源環境ビジネス(パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業)

パルプ事業では、パルプ市況の変動に耐え得る事業基盤を強化するため、主要拠点において戦略的収益対策を継続して実施しています。ニュージーランドのOji Fibre Solutions社では、操業の安定化及び効率化対策に取り組み、ブラジルのCelulose Nipo-Brasileira社では製造設備の最新鋭化等による継続的な収益対策を進めています。国内の溶解パルプ事業ではレーヨン用途向け製品に加えて、医療品材料や濾過材用途等の高付加価値品の生産を行い、収益力の強化を進めています。

エネルギー事業では、再生可能エネルギーの利用拡大を目指しさらなる事業拡大を進めています。2022年9月には、伊藤忠エネクス株式会社と合弁で建設しているバイオマス発電設備が徳島県で稼働予定です。また、エネルギー事業の拡大に合わせバイオマス燃料事業の強化を進めており、国内では未利用木材資源を活用した燃料用チップの調達増、海外では適法性と持続性を確保しつつ、インドネシアやマレーシアにおける燃料用パーム椰子殻の調達増に向けた取り組みを行っています。

植林・木材加工事業では、アジア・オセアニア・ブラジル地域を中心に持続可能な森林資源の確保及び生産能力増強に取り組みます。また、国内では建築資材分野での拡販等を通じ、収益力の強化を図ります。

 

(d) 印刷情報メディア(新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業)

新型コロナウイルス感染症の流行により、人々の生活様式が変化しており、企業においてもテレワークの活用等、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが加速しています。これら事業環境の変化に伴うグラフィック用紙市場への影響を見極め、継続的な生産体制の再構築とコストダウンを徹底するとともに、キャッシュフローの増大を図ります。

具体的な取り組みとして、国内では、2021年10月には王子製紙苫小牧工場において新聞用紙マシンから改造した段ボール原紙マシン、2022年4月には王子マテリア名寄工場より同工場に移設した特殊ライナー・特殊板紙マシンが稼働しています。また、引き続き、三菱製紙株式会社との業務提携を進め、収益力の強化を図ります。

中国では数少ない紙パルプ一貫生産体制の強みを最大限に活かしたコストダウンを継続して行い、さらなる競争力強化に取り組んでいます。

 

(e) イノベーションの推進と持続可能な社会の実現に向けた取り組み

当社グループは、「環境・社会との共生」の経営理念の下、環境経営の推進を掲げ、環境と調和した企業活動を展開しており、また、「革新的価値の創造」を行うべく、柔軟かつ効率的な研究開発活動を充実させ、新たなニーズの探索に取り組み、イノベーションの推進による新製品・新事業の創出を進めています。これらの活動により、真の豊かさと持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

次世代素材として幅広い産業に応用が期待されているセルロースナノファイバー(CNF)については、CNFの粘度適性を利用した生コンクリートの圧送先行剤用添加剤や、化粧品原料「アウロ・ヴィスコCS」の化粧品メーカーでの採用に加え、塗料向け添加剤としても採用されています。また、CNFシートの卓球ラケット本体への採用拡大等、多方面での活用が進んでいます。さらに、自動車部材への採用に向けた取り組みとして、ゴムや汎用樹脂との複合材料や、ポリカーボネートと複合した透明樹脂の開発を進めており、石油由来樹脂の使用量削減や、ガラス代替による軽量化・燃費向上への貢献を目指しています。今後も、様々な用途への活用を積極的に推し進め、CNFの普及に貢献していきます。

地球規模の課題である気候変動や海洋プラスチック問題への対応として、プラスチックに替わる紙パルプ製品の需要が高まっている中、環境配慮型素材・製品の開発に積極的に取り組んでいます。紙マーク対応製品であるマルチバリア紙「SILBIO(シルビオ)シリーズ」では、既存の「SILBIO BARRIER(シルビオ バリアー)」に、3製品をラインアップに加えることにより、従来品ではカバーできなかった遮光性、透明性、容易なヒートシール機能などを必要とする幅広い用途への対応も可能となりました。また、プラスチック代替として、マレーシアにおいてNestlé Group(ネスレグループ)製品のパッケージ素材に採用されました。今回でNestlé社への採用はタイ、日本に続き3か国目となり、より幅広い普及が実現しました。2021年12月には株式会社デルタインターナショナルの製品のパッケージ素材にも採用されるなど、多様な展開を進めています。他にも、滑らかな表面と自由な立体成形性が特徴のパルプモールド製品「PaPiPress(パピプレス)」においても様々な分野のお客様からの引き合いに対応し、2021年6月には全日本空輸株式会社(ANA)の国際線での機内使用紙コップ蓋に、7月には株式会社アルビオンの化粧品容器に採用されました。今後もさらなる展開を進めていきます。

プラスチック代替となるバイオマス素材の製造技術についても開発中です。石油資源を原料とする従来のプラスチックに替わり、植物を起点とした糖液(グルコース)から、乳酸やエタノールを製造し、さらにポリ乳酸やポリエチレンを製造する実証試験を進めています。これにより、化石燃料由来のCO2排出を抑制し、地球温暖化防止についても貢献することを目指していきます。また、当社グループの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)製造で培った原料樹脂の混合技術と高度な製膜技術を駆使し、植物由来原料のポリ乳酸樹脂を配合した環境配慮型OPPの開発に成功しました。OPPはプラスチック製の包装材料として幅広く使用されていますが、原料に植物由来のポリ乳酸を配合することにより、石油由来のポリプロピレンの使用量を削減することが可能となりました。この製品は、日本有機資源協会のバイオマスマーク商品に認定され、2022年1月より販売を開始しています。今後はヒートシール性を付与した銘柄の開発など、ラインアップ拡充を目指していきます。さらに、当社独自の不織布製造技術を応用して開発したセルロースマットのサンプル提供も開始しています。このセルロースマットは、セルロース繊維とポリオレフィン系繊維が均一に分散されており、熱加工することでプラスチックより変形に強く、割れにくい樹脂成形体となります。絞りのある立体的な形状にも成形できるため、自動車部材などへの適用が期待されます。従来のポリプロピレン樹脂成形体との比較で、石油由来のプラスチック使用量を最大で約70%削減できます。今後も、私たちの暮らしに欠かせないプラスチック製品を石油由来から資源循環型の素材に切り替えていくことで、環境問題の解決へ貢献していきます。

木質主要成分の一つであるヘミセルロースの産業利用においては、化学修飾した「硫酸化ヘミセルロース」の医薬品化を王子ファーマ株式会社が進めており、動物用医薬品申請に向けた試験を開始しています。さらに、人体用医薬品の開発も並行して行っており、2023年度には非臨床試験への移行を目指しています。また、同じく木質由来の医薬品開発を進める株式会社レクメドとの共同開発を進めています。今後も、大学や製薬企業との連携を推進し、木質資源由来の医薬品開発を推進していきます。

水処理技術の分野では、当社グループが長年培ってきた技術や操業ノウハウを活かした幅広いニーズに対応できる水処理システムを提供し、工業・生活用水の製造設備や排水処理設備が国内外で採用されています。また、これらの設備にIoT技術を活用した遠隔監視機能を組込むことにより最適な水処理設備の運用のサポートを可能にしています。今後も、安定した技術を提供し限りある水資源を有効活用することで、持続可能な社会の実現を目指します。

当社グループは事業を通じて社会に様々な価値を提供していくことで、真に豊かな社会の実現に貢献していくとともに、常に時代のニーズを先取りし、イノベーションに挑戦して、持続的に成長する企業グループを目指していきます。

 

(2) サステナビリティについての取り組み

当社グループは「環境・社会との共生」の経営理念のもと、国内外に保有する広大な社有林の多方面での活用、各製造現場における環境負荷低減策の追求などを通じ、サステナビリティについての取り組みを推進しております。また、2003年から国連グローバル・コンパクトに参加して「人権・労働・環境・腐敗防止」に関する10原則を支持し、日々の事業活動における実践に努めております。

当社グループの具体的な取り組みについて環境及び社会に関する事項に整理し、以下に記載します。

 

①環境に関する事項

(a) 気候変動への対応

当社グループは、気候変動問題を経営上の重要課題と認識しており、この問題に積極的に取り組むことにより、事業活動の持続可能性を高めることができると考えています。

この方向性を明確に示すため、当社グループが目指す姿「ネット・ゼロ・カーボン」を中核とする、2050年に向けた「環境ビジョン2050」と、そのマイルストーンとして「環境行動目標2030」を20209月に制定しました。

「環境ビジョン2050」の中核は、海外植林推進と森林保全により「森のリサイクル」を進め、二酸化炭素(CO2)の吸収・固定を図り、また、エネルギー消費の効率化、再生可能エネルギー利用の拡大など生産活動による温室効果ガス排出量の削減等により、2050年のネット・ゼロ・カーボン(温室効果ガス(GHG)排出の実質ゼロ)を目指すものです。

その過程として、GHG排出量を2030年度に2018年度対比で70%以上削減する目標を設定し、併せて、資源の有効活用の推進や様々な環境負荷の低減、生物多様性の維持保全等について、総力を挙げて取り組み、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

<TCFDへの対応>

当社グループは、各国の金融関連省庁及び中央銀行からなる金融安定理事会により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設置された、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に賛同しており、TCFDの提言に基づいた「気候変動が事業に与えるリスク・機会」について、ガバナンス・戦略・リスク管理等を俯瞰した情報開示を進めています。

 

(ⅰ) ガバナンス

サステナビリティへの取り組みについて、企業に対して期待される役割と果たすべき責任は増しており、当社グループではグループ全体でサステナビリティへの取り組みをさらに推進することを目指し、グループCEOを委員長とするサステナビリティ推進委員会を新たに設立しました。サステナビリティ推進委員会では、気候変動対策や持続可能な森林経営、サプライチェーン対策、環境負荷の低減、人権の尊重、インクルージョン&ダイバーシティの推進等のサステナビリティに関する重要課題や推進状況を協議し、必要に応じてグループ経営会議へ付議します。付議された重要事項はグループ経営会議の審議を経て、取締役会において執行決定を行います。また、サステナビリティ推進委員会の直下に、サステナビリティ推進本部を王子ホールディングス株式会社に設置しました。サステナビリティ推進本部ではグループ各社の取り組みを統括管理し、グループ一体となったサステナビリティに関する取り組みを推進していきます。

 

 

 ■サステナビリティ推進体制


(ⅱ) リスク管理

当社グループでは、取締役会が整備・監督するリスク管理体制の下「グループリスク管理基本規程」を定め、コーポレートガバナンス本部がグループ全体の共通リスクを一元管理しています。リスクの類型によって管掌役員と所管部門を明確化し、経営層への確実な伝達と迅速かつ的確な対応を可能としています。このような体制の下、気候変動に関するリスクについても「グループリスク管理基本規程」に基づき、当社グループの事業活動に不確実性や経済損失をもたらす類別されたリスクについて、サステナビリティ推進本部がグループ各社を統括し、グループ横断的なリスク管理を行っています。

 

(ⅲ) 指標と目標

「2050年ネット・ゼロ・カーボン」を掲げた環境ビジョン2050、そのマイルストーンとして「2030年温室効果ガス(GHG)排出量70%削減(基準年2018年比)」を2020年9月に策定しました。目標の達成に向けて、サステナビリティ推進本部でグループ各社の取り組みを統括し、推進していきます。また、その他にも石油由来プラスチック代替のバイオマス原料、新素材の開発、製紙技術を応用した水処理事業やバイオマス発電事業にも力を入れていきます。


 

 

(ⅳ) リスクと戦略・対応策

当社グループでは、気候変動に関する重要なリスクについて、2℃シナリオによる移行リスクと4℃シナリオによる物理的リスクを整理し、下表の通り抽出しました。移行リスクにおけるGHG排出量の規制強化、化石エネルギー価格の上昇によるリスクは、従来より進めている省エネルギーの徹底・強化、石炭使用量の削減、持続可能な森林経営等により、事業へのインパクトの軽減を図っていきます。物理的リスクにおける異常気象の激甚化等による水害、異常乾燥によるリスクは、従来より継続しているBCPの策定による事業継続性への対応、原材料調達の多角化、災害情報の水平展開による類似災害予防対策の実施等により、事業へのインパクトを低減していきます。

 


 

(b) 持続可能な森林経営の実践

森林は木を植え、育て、伐採した後、再植林することによって再生産できる、持続可能な資源です。当社グループは、「木を使うものは、木を植える義務がある」との理念の下、木を育て、森を受け継ぎ、現在では国内外に約58万ヘクタール(ha)もの広大な社有林を保有しています。その内訳は、環境に配慮しつつ、木材生産を主目的とした生産林が約45万ha、生物多様性や流域保全を主目的とした環境保全林が約13万haです。「環境行動目標2030」では、2030年度までに現在より14万haの森林面積を増やすことを目標としています。

植林事業開始当時の目的は製紙原料の安定確保でしたが、時代の変化に伴い、森林は持続可能な資源として見直され、その利活用に対して、さまざまな分野から注目が集まっています。さらに近年は、“資源”としてはもちろん、国土や生活環境の保全、水源の涵養、生物多様性の保全、そしてCO2の吸収・固定など、森林が持つ“機能”にも、多くの期待が寄せられています。

当社グループでは、事業と直結した持続可能な森林経営を実践するとともに、脱炭素社会の実現に向けて、森林資源の価値を高め、さらなる社有林の拡大も視野に歩みを進めています。

なお、20224月、当社グループが所有・管理する森林に関する「王子グループ持続可能な森林管理方針」を定め、また、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全するための取り組みを進める「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しました。

 

(c) 環境配慮型素材・製品の開発

地球規模の課題となっている気候変動問題や海洋プラスチックごみ問題への対応として、プラスチック代替製品へのニーズが急速に高まっています。これを受け、当社グループでは環境配慮型素材・製品の開発に積極的に取り組んでおり、未来を担う「グリーンイノベーション」に注力しています。

プラスチックフィルムに替わる紙製パッケージ素材やプラスチックのように自由な立体成形が可能なパルプ100%のパルプモールド製品、植物由来の新不織布素材などを開発しプラスチックの代替として様々な引き合いに対応しています。

また、プラスチックに替わるバイオマス素材の製造技術についても開発を進めています。次世代素材として幅広い産業に応用が期待されているセルロースナノファイバー(CNF)では、自動車部材への採用に向けた取り組みも進めており、石油由来樹脂の使用量削減やガラス代替による軽量化・燃費向上への貢献を目指しています。

私たちの暮らしに欠かせないプラスチック製品を石油由来から資源循環型の素材に切り替えていくことで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

 

(d) バリューチェーンを通じた資源循環

当社グループの基盤となるサステナブル・ビジネスモデルは、

・木を育て収穫し、また木を植えるという持続可能な森林経営を実践する「森のリサイクル」

・製造工程における水の循環・再利用による水使用量削減、排水浄化に取り組む「水のリサイクル」

・紙製品の回収と再資源化を図る「紙のリサイクル」

という3つのリサイクルに支えられています。このモデルをグローバルに展開することにより、私たちの事業そのものが、持続可能な社会の構築に繋がるよう、取り組んでいます。

 

②社会に関する事項

(a) 職場の安全衛生の確保

当社グループは、「安全・環境・コンプライアンス」が最優先の方針のもと、労働安全衛生について、王子グループ企業行動憲章や行動規範に定めています。グループ従業員一人ひとりが責任を認識して実践・遵守し、労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成の促進、より良い職場安全風土の構築等、当社グループで働く仲間が、安全な環境で安心して働くことができる企業であるよう、取り組んでいます。

グループ各社は、毎年策定される王子グループ安全衛生推進計画に基づき、各社・各事業場の安全衛生推進計画と具体的な活動計画を策定し、グループ従業員だけでなく、協力会社や臨時入構業者が一体となって、労働災害撲滅を目指した活動を推進しています。

新型コロナウイルスに対しては、主に下記を実施しています。

・マスクの着用、こまめな手指の消毒、出社時の検温の徹底

・在宅勤務、時差出勤、フレックスタイム制等の活用

・座席や会議室等へのパーテーションの設置

・事業所内共用部分の定期的な消毒

・本社地区等におけるワクチン職域接種

・ワクチン接種及び副反応発生時の特別休暇の導入

 

(b) 人権の尊重

当社グループは、「人権を尊重する責任は、重要なグローバル行動基準」と考え、人権尊重の取り組みをより一層推進・実践するため、2020年8月に「王子グループ人権方針」を制定しました。方針周知に向けて、「王子グループ人権ハンドブック」の作成、新任管理職研修等における人権教育などを実施しており、今後も本方針の周知徹底を図っていきます。さらに、2022年度に「人権デュー・ディリジェンス」を開始し、人権尊重に係る企業責任を履行してまいります。

 

(c) 人材に関する取り組み

企業価値の向上を目指すには、社員一人ひとりが価値観の多様性と発想の柔軟性を身につけ、能力を高めていくことが重要と考えています。当社グループは、グローバル企業として「領域をこえ未来へ」成長するべく、「企業の力の源泉は人材にあり」という大原則のもと、王子グループ共通の人材理念に基づき、企業価値向上のための人材戦略を進めています。

取り組みの概要は次のとおりです。

・人材育成

経営戦略の完遂に向けた人材の育成、特にグローバル人材育成に注力しています。

・働き方改革・健康経営

総労働時間削減や業務効率化に取り組むほか、従業員の健康に配慮した健康経営にも力を入れています。

・インクルージョン&ダイバーシティ

背景の異なる全ての従業員が安心した状態でその能力を最大限発揮できる環境づくりに向けて、ダイバーシティ推進方針に沿って取り組みを継続しています。

 

(d) 地域・社会への貢献

当社グループでは世界中に広がる拠点それぞれで、「未来と世界への貢献」、「環境・社会との共生」といった経営理念に則した、文化・スポーツの推進など様々な社会貢献活動に取り組んでいます。

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには、以下のようなものがあります。

なお、これらはすべてのリスクを網羅的に記載したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在し、それらのリスクが投資家の判断に影響を与える可能性があります。また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

また、リスク管理の体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレートガバナンスの状況等」に記載しています。

 

(1) 長期的な課題に対するリスク

主要なリスクの内容

主要なリスクへの主な対応策

気候変動に関するリスク

 気候変動に関するリスクの内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

 気候変動に関するリスクへの主な対応策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

パンデミックに関するリスク

新型コロナウイルスの感染症は、世界各国で甚大な影響を及ぼしています。また、今後も同様に、感染症が世界的に拡大した場合、様々な方面で甚大な影響を及ぼすことが想定されます。

このような感染症は、当社グループに対して影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループでは、グループリスク管理基本規程を定め、グループ全体で対応すべき重大な事案が発生した場合には、グループ緊急時対策本部を設置し、従業員の安否確認や被災状況の把握、顧客企業への供給継続のための対応を図ることとしています。また、BCP(事業継続計画)の継続的な見直しや、製造、マーケティング、事務処理等へのデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進などにより、事業活動への影響を最小化するよう努めていきます。

なお、新型コロナウイルスの感染が継続している中、当社グループでは、段ボールや新聞用紙、衛生資材等の人々の暮らしに不可欠な製品の供給を維持すべく、感染防止に細心の注意を払いながら、生産を継続しています。

 

 

 

(2) グループ経営戦略に関するリスク

主要なリスクの内容

主要なリスクへの主な対応策

イノベーションの進展による構造的な需要の変容によるリスク

新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の生活様式が変化しており、また、企業においても、テレワークの活用等、デジタルトランスフォーメーションの取り組みが加速しています。これらの事業環境の変化は、市場縮小等の構造的な需要の変容を一層に進め、当社グループの財政状態及び経営成績に対し、従来より速い速度で影響を及ぼす可能性があります。また、長期的なトレンドでの需要減少による収益力の低下は、投資回収期間の長期化による設備更新の遅れ、調達量の減少による原料調達活動の非効率化、余剰設備の停止等にも繋がり、当社グループの事業ポートフォリオそのものに影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループでは、中期経営計画として「収益向上への取り組み-Profitability-」「製品開発への取り組み-Green Innovation-」を掲げ、市場が縮小している国内事業については、生産体制再構築を進めるとともに業界他社との業務提携等によって合理化を追求し、コスト削減の徹底及び効率的な設備投資により、キャッシュ・フローの確保に努めています。得られたキャッシュは、需要の伸びが期待できる国内事業や海外において経済発展が見込まれる地域への投資、及び新素材の製品開発等に振り向け、ポートフォリオの拡充を図っています。
 また、その他にも中長期的な企業価値向上を図り、持続的発展を遂げるため、多様な人材が活躍できるよう働き方改革とダイバーシティの推進にも取り組んでいきます。

需要の変動によるリスク

国内における景気の変動や、人口の継続的な減少等は、当社グループの製品需要に影響を及ぼす可能性があります。需要の減少により、販売数量の減少や販売価格の低下が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に対し影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループでは、徹底したコストダウン等により市況変動に耐え得る事業基盤の強化に取り組んでいます。

また、産業資材分野においては、トータルパッケージングの推進や、素材・加工一貫経営によって製品開発力を強化することにより他社との差別化を図り、需要が変動した場合でも販売への影響を抑制するとともに、コスト競争力を確保する取り組みを行っています。その他の事業分野でも、脱プラスチック化となる紙製品や新たな特性を付与した機能紙等、新製品の開発を進め、収益の向上に努めています。

国際市況の変動に関するリスク

当社グループのチップ・重油等の原燃料調達価格は、需要動向や各国の貿易政策の変化、戦争等の影響を受け変動します。また、各種パルプの販売価格は国際市況価格と連動します。これらの価格変動は、当社グループの財政状態及び経営成績に対して影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループでは、原燃料調達関連市場のモニタリングや多様な調達先の確保等に努め、有利調達を推進するため、横断的にグループの調達戦略を担う部門を設置しています。

また、「王子グループ・パートナーシップ調達方針」を定め、サプライチェーン全体で原材料の安全性・合法性を確認し、さらなる環境や社会に配慮した調達活動に取り組むとともに、サプライヤーとの関係を強化しつつ、安定調達を図っています。

古紙の調達については、古紙リサイクルシステムの維持に努めるとともに、関係各社との関係強化により、古紙の安定調達を図っています。

これらの取り組みやコストダウン等の推進により国際市況変動影響の緩和に努めています。

海外事業に関するリスク

当社グループでは、経済発展が見込まれる地域への事業進出を進めています。しかしながら、これらの地域の一部では、戦争、政治・社会情勢の不安、経済成長の鈍化、法規制・税制等の改定、金融情勢の不安定化、人権問題等のリスクがあり、当社グループの現行の海外プロジェクトや将来の計画に対して影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループでは、周辺国の政治・経済・社会情勢に関する情報収集を専門的に行う地域統括会社を設置し、リスクが顕在化する前に、先回りした対応が取れるように努めています。また、事業展開においては、幅広い国々に展開することにより、リスクを分散しています。さらに、現地の有力企業と合弁で事業展開をすることにより、情報収集力を高めるとともに、投資額を抑制し、かつリスク低減を図っています。金融リスクに対しては、状況に応じて、デリバティブの活用による為替変動影響の緩和策の実施やグループファイナンス等の活用により手許流動性を確保しています。人権問題については、「王子グループ人権方針」を制定し、周知徹底を図るとともに、人権尊重の取り組みを行っています。

 

 

(3) 事業遂行の過程で発生するリスク

主要なリスクの内容

主要なリスクへの主な対応策

災害等の発生リスク

当社グループは、災害等による影響を最小限に留めるための万全の対策をとっていますが、災害等によるすべての影響を防止・軽減できる保証はありません。当社グループは、国内外に多くの生産拠点を持ち、各々が多くの取引先とサプライチェーンで繋がっています。そのため、甚大な被害をもたらす自然災害や戦争等は、当社グループに対し、その影響を直接的、間接的に与えます。また、火災や労働災害、環境事故等の不測の事態が発生する可能性もあります。

災害等による影響を防止・軽減できなかった場合、事業活動の停滞、停止等により、当社グループの財政状態及び経営成績に対して影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループでは、災害等による事業中断リスクに対して、BCP(事業継続計画)を策定するとともに、防災教育や防災訓練を定期的に実施しています。また、グループ防災事務局を常設し、最新情報を迅速に入手できる体制を整えるとともに、災害における事例の原因や対策を当社グループ内で横断的に情報共有し、被害極少化に努めています。サプライチェーンについては多様な調達先の確保等に努め、安定調達を図っています。環境面では、環境規制値よりも自主管理値を厳しく設定する等、環境事故の防止に努めています。安全面では、生産設備の安全対策や安全作業手順書の整備、周知徹底を図るとともに、安全衛生管理体制を構築し、労働災害の防止に努めています。

法規制等に関するリスク

当社グループの事業は、環境関連、知的財産、製品及び原材料の品質・安全性、競争関連、労働関連、税務関連等の様々な法規制等の適用を受けており、それらの法規制等を遵守し、事業活動を行っていますが、グローバル展開により国内だけでなく、様々な国の法規制等への対応が必要となってきており、法規制等について、遵守できなかった場合や変更・改正があった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に対して影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループでは、コンプライアンスの遵守は、当社グループの企業活動における重要経営課題の中でも最上位に位置づけています。「王子グループ企業行動憲章・行動規範」は国内だけでなく、各海外拠点においてもそれぞれの言語に翻訳、周知し、実践に努めるとともに、所管する部門が中心になって法規制等についての研修を行う等、法令違反となる行為が発生しないよう、徹底を図っています。

訴訟等に関するリスク

当社グループの事業の過程で訴訟、紛争、その他の法的手続きの対象となった場合、訴訟等のリスクにさらされる可能性があります。訴訟等の結果によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に対して影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループへの訴訟等に対しては、取引先との協議や契約内容の明確化により紛争を未然に防止するとともに、訴訟等を受けた場合は、弁護士事務所と連携し、対応する体制を整備しています。

また、訴訟等によりレピュテーションに悪影響を及ぼす事象が生じた場合は、対象の事象に迅速に対応するとともに、必要に応じて適切な情報を公表し、当社グループのレピュテーションの維持に努めます。

製造物責任に関するリスク

当社グループの製品は、製造物責任に基づく損害賠償請求を受ける対象となっています。現在のところ重大な損害賠償請求を受けていませんが、将来的に直面する可能性があります。なお、製造物責任に係る保険(生産物賠償責任保険)を付保していますが、当社が負う可能性がある損害賠償責任を補償するには十分ではない可能性があります。

 

当社グループでは、「グループ品質管理規程」を定め、品質管理体制を構築し、関連法規の遵守及び自主管理値に従った品質設計及び製造を行うことで、安全・安心な製品の提供を行っています。

また、「グループ製品安全管理規程」を定め、グループ各社の品質管理部門が行う製品の安全管理を、グループ横断的に統括する部門が支援及び監査を行い、製造物責任に関するリスクの発生防止に努めています。

為替変動リスク

当社グループは、東南アジア、中国、ブラジル、ニュージーランド等、世界各地に拠点を持ち、製品販売、原材料調達等の事業活動において、様々な通貨を用いて取引を行っており、為替レートの変動は、当社グループの財政状態及び経営成績に対して影響を及ぼす可能性があります。

また、連結財務諸表は、日本円で表示するため、為替レートの変動により換算額に影響を受けます。

 

為替の動向や当社グループの業績への影響等を適宜モニタリングし、必要に応じ、先物為替予約取引や通貨オプション取引及び通貨スワップ取引等のデリバティブを活用してヘッジを行います。

また、国内においては、外貨建ての営業債権と外貨建ての営業債務をグループ国内会社間で相互に融通しあうことで、為替変動リスクの一定部分をヘッジしています。

 

 

 

主要なリスクの内容

主要なリスクへの主な対応策

情報漏洩に関するリスク

当社グループでは、販売管理、操業管理等、様々な活動で情報システムを活用しており、外部からのサイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により、機密情報が流出する可能性があります。このような事態が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループでは、「グループ情報システム利用・リスク管理規程」により、リスク管理運用体制・組織及びその役割について明確化するとともに、情報システム利用者が遵守すべき事項を網羅的に定めることにより、グループ横断的なリスク管理を行っています。また、機密性の高い情報については、規程による利用方法の厳格化を行い、不正アクセス、データ盗取、メールのなりすまし等に対する防止策等を講じています。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況及び経営者の視点による分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものですが、予測しえない経済状況の変化等さまざまな要因があるため、その結果について当社が保証するものではありません。

 

① 経営成績に関する説明

当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルスの感染拡大により停滞した経済活動の再開が進むにつれ、緩やかに需要が回復しつつあることに加え、パルプ販売価格の上昇もあり、前期を1,112億円(8.2%)上回る14,702億円となりました。なお、当社グループの海外売上高比率は前期を4.3ポイント上回る33.5%となりました。

営業利益は、原燃料が急騰してきましたが、販売量の増加やパルプ販売価格の上昇に加え、グループ全体でコストダウンに取り組んだこと等により、前期を353億円(41.7%)上回る1,201億円となりました。経常利益は、営業利益の増加に加え外貨建債権債務の評価替えによる為替差益の発生等により、前期を520億円(62.7%)上回る1,351億円となり、税金等調整前当期純利益は前期を484億円(59.8%)上回る1,293億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期を379億円(76.3%)上回る875億円となりました。

なお、当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用し、収益認識に関する会計処理方法を変更しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりです。

2019年度から2021年度を対象とする中期経営計画では、「国内事業の収益力アップ」、「海外事業の拡充」、「イノベーションの推進」をグループ経営戦略の基本方針に据え、「持続可能な社会への貢献」を通じて連結営業利益1,000億円以上を安定的に継続するグローバルな企業集団を目指しました。

2021年度の経営目標として「連結営業利益1,500億円以上」、「海外売上高比率40%」、「ROE10.0%」、「ネットD/Eレシオ0.7倍」を掲げて事業運営を行い、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動の停滞・回復の遅れ等があったものの、「ROE10.0%」、「ネットD/Eレシオ0.7倍」は目標達成しました。

一方、当社グループは新型コロナウイルス感染拡大により多様化する消費構造やライフスタイル・働き方を見据えた事業構造改革、及び中期経営計画に基づいた企業価値向上施策を着実に進めました。国内では、需要の変化に応じた生産体制再構築、保有設備の有効活用等によって資本効率化を行うと同時に、有望事業に経営資源を集中し、収益力の強化に努めました。海外では、主に東南アジアのパッケージング事業において既存拠点からの有機的な拡大や事業・拠点間シナジーの創出を進めました。さらに、環境・社会ニーズに対応した新事業・新製品の開発促進と早期事業化を図りました。これらの諸施策により、2021年度は営業利益1,201億円と過去最高益を達成しました。

 

当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち、経済的特徴、製品の製造方法又は製造過程、製品を販売する市場又は顧客の種類等において類似性が認められるものについて集約を実施し、「生活産業資材」、「機能材」、「資源環境ビジネス」、「印刷情報メディア」の4つとしています。報告セグメントに含まれない事業セグメントは、「その他」としています。

 

各セグメントの主要な事業内容は以下のとおりです。

生活産業資材・・・・・段ボール原紙・段ボール加工事業、白板紙・紙器事業、包装用紙・製袋事業、家庭紙事業、紙おむつ事業

機能材・・・・・・・・特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業

資源環境ビジネス・・・パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業

印刷情報メディア・・・新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業

その他・・・・・・・・不動産事業、エンジニアリング、商事、物流 他

 

 

なお、会計方針の変更に記載のとおり、当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用し、収益認識に関する会計処理方法を変更したため、事業セグメントの利益又は損失の算定方法を同様に変更しています。

当該変更により、従来の方法に比べて、当連結会計年度の「生活産業資材」の売上高は25億円減少、「機能材」の売上高は134億円減少、「資源環境ビジネス」の売上高は6億円減少、「印刷情報メディア」の売上高は267億円減少、「その他」の売上高は67億円減少しています。なお、各セグメント利益又は損失に与える影響は軽微です。

 

○生活産業資材

当連結会計年度の売上高は前期比8.2%増収7,007億円、営業利益は同31.4%減益261億円となりました。

国内事業では、段ボール原紙・段ボール、白板紙、包装用紙等、多くの品種において全体的な需要回復がみられることに加え、段ボール原紙・段ボールでは新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛等から通販向けが引き続き堅調に推移していること等により、売上高は前年に対し増収となりました。また、紙おむつは前年に対し減収となりましたが、家庭紙は前年に引き続き堅調に推移しました。

海外事業では、紙おむつはマレーシアでの同感染拡大に伴い大手小売店の販売が不調に推移しましたが、段ボール原紙・段ボールで主に東南アジアでの販売が好調だったことに加え、段ボールの値上げが浸透した影響等により、売上高は前年に対し増収となりました。

 

連結売上高:

7,007

億円(前期比

8.2%増収

)

連結営業利益:

261

億円(前期比

31.4%減益

)

 

 

○機能材

当連結会計年度の売上高は前期比1.3%増収1,847億円、営業利益は同33.0%増益153億円となりました。

国内事業では、電動車向けのコンデンサフィルムや一般工業用フィルム、食品・雑貨等の包装用フィルムが堅調に推移しましたが、収益認識に関する会計基準の適用による減収の影響等もあり、売上高は前年に対し減収となりました。

海外事業では、感熱紙は、同感染拡大防止のための外出自粛や経済活動停滞の影響等が継続したものの、需要は回復傾向にあり、売上高は前年に対し増収となりました。

 

連結売上高:

1,847

億円(前期比

1.3%増収

)

連結営業利益:

153

億円(前期比

33.0%増益

)

 

 

○資源環境ビジネス

当連結会計年度の売上高は前期比28.2%増収3,145億円、営業利益は同233.1%増益555億円となりました。

国内事業では、エネルギー事業は、国内各工場の操業率向上により自家使用電力が増加したことから売電量が減少しましたが、パルプ事業では主に溶解パルプの中国向け輸出が同感染拡大に伴う経済活動停滞から回復がみられることにより、売上高は前年に対し増収となりました。

海外事業では、パルプ事業は販売量が前年に対し減少しましたが、パルプ販売価格の上昇を受けて、売上高は前年に対し増収となりました。

 

連結売上高:

3,145

億円(前期比

28.2%増収

)

連結営業利益:

555

億円(前期比

233.1%増益

)

 

 

○印刷情報メディア

当連結会計年度の売上高は前期比0.2%増収2,445億円、営業利益は同59.5%増益178億円となりました。

国内事業では、新聞用紙及び印刷用紙の出版用途は需要の減少傾向が継続しているものの、印刷用紙の商業印刷用途における前年の同感染拡大に伴う経済活動停滞の反動もあり、販売量は前年に対し増加しましたが、収益認識に関する会計基準の適用により、売上高は前年に対し減収となりました。

海外事業では、江蘇王子製紙有限公司において、中国国内が同感染拡大に伴う経済活動停滞から回復がみられることから、売上高は前年に対し増収となりました。

 

連結売上高:

2,445

億円(前期比

0.2%増収

)

連結営業利益:

178

億円(前期比

59.5%増益

)

 

 

○その他

当連結会計年度は全体的な需要回復がみられ、商事事業、物流事業等で増収となった結果、当連結会計年度の売上高は前期比9.8%増収2,965億円、営業利益は同3.8%増益70億円となりました。

 

連結売上高:

2,965

億円(前期比

9.8%増収

)

連結営業利益:

70

億円(前期比

3.8%増益

)

 

 

② 生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

生活産業資材

739,867

6.4

機能材

178,003

7.5

資源環境ビジネス

253,238

36.0

印刷情報メディア

230,579

△11.6

報告セグメント計

1,401,688

7.2

その他

9,113

0.7

1,410,802

7.1

 

(注) 生産高は自家使用分を含めて記載しています。

 

(b) 受注実績

当社グループは、エンジニアリング等一部の事業で受注生産を行っていますが、その割合が僅少であるため、記載を省略しています。

 

 

(c) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

生活産業資材

642,402

7.9

機能材

171,471

0.9

資源環境ビジネス

275,113

27.9

印刷情報メディア

200,126

△4.9

報告セグメント計

1,289,115

8.2

その他

181,046

7.9

1,470,161

8.2

 

(注) セグメント間取引については相殺消去しています。

 

③ 財政状態

当連結会計年度は、原燃料価格が急騰してきたものの、新型コロナウイルスの感染拡大により停滞した経済活動の再開が進むにつれ、緩やかに需要が回復しつつあることに加え、パルプ販売価格の上昇やコストダウン等により、当社グループの売上高及び営業利益は前連結会計年度に対し増収増益となりました。また、営業利益の増加に加えて、外貨建債権債務の評価替えによる為替差益の発生等により、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益についても大幅な増益となりました。このような中、同感染拡大による影響の収束を見据え、将来のための成長戦略を進めており、2021年5月にはCelulose Nipo-Brasileira社の親会社である日伯紙パルプ資源開発株式会社が非支配株主の保有する株式を自己株式として取得し、当社グループは同社の全議決権を保有しました。この取得に当たっての必要資金は、外部からの調達と手許現金により充当しました。

この結果、当連結会計年度末の純有利子負債(有利子負債-現金及び現金同等物等)は前連結会計年度末に対し833億円増加し、5,947億円となり、ネットD/Eレシオ(純有利子負債残高/純資産残高)は0.7倍となりました。

当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金等が減少しましたが、売掛金、棚卸資産及び有形固定資産等の増加等により、前連結会計年度末に対して723億円増加し、20,538億円となりました。負債は支払手形及び買掛金、未払法人税等の増加により、前連結会計年度末に対して625億円増加し、11,783億円となりました。純資産は、非支配株主持分等が減少しましたが、利益剰余金及び為替換算調整勘定等の増加により、前連結会計年度末に対して99億円増加し、8,755億円となりました。

 

④ キャッシュ・フローの状況

当社グループでは、市場が縮小している事業では、生産体制再構築等によってコスト削減を徹底し、キャッシュ・フローの確保を図る一方、需要の伸びが期待できる国内事業や海外の経済発展が見込まれる地域へ投資を行い、ポートフォリオの拡充を図っています。

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、555億円(前連結会計年度末は1,357億円)となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に対して165億円収入が増加し、1,436億円(前連結会計年度は1,271億円の収入)となりました。主なキャッシュの増加は、税金等調整前当期純利益に減価償却費を加えた1,951億円(前連結会計年度は1,436億円)及び仕入債務の増加339億円(前連結会計年度は119億円の減少)であり、主なキャッシュの減少は、売上債権の増加210億円(前連結会計年度は19億円の減少)、棚卸資産の増加260億円(前連結会計年度は202億円の減少)及び法人税等の支払額223億円(前連結会計年度は392億円の支払)によるものです。

 

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出等により、926億円の支出(前連結会計年度は916億円の支出)となりました。有形及び無形固定資産の取得による支出の主な内容は、能力増強・更新や品質改善、省力化、生産性向上、安全及び環境のために必要な設備投資です。

財務活動によるキャッシュ・フローは、子会社の自己株式の取得による支出、連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出等により、1,360億円の支出(前連結会計年度は199億円の収入)となりました。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(a) 資金需要の主な内容

当社グループの営業活動に関する資金需要は、生産・販売活動のために必要な運転資金(製品製造のための原燃料の購入・製造費や人件費、製品の輸送・保管費等)や研究開発費等が主な内容です。投資活動に関する資金需要は、経営戦略の遂行に必要な投資や品質改善・省力化・生産性向上・安全・環境のために必要な設備投資等が主な内容です。

今後も海外事業や有望な事業等の成長分野に対しては、M&Aや設備投資、研究開発投資等を積極的に行っていく予定であり、所要資金の調達については、自己資金と外部調達との最適なバランスを検討し実施していきます。

 

(b) 財務政策

営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローは配当及び投資資金に充当し、有利子負債残高を適正水準に保ちながら、不足資金については借入金やコマーシャル・ペーパー、社債の発行等による外部からの資金調達を行い、余剰資金については有利子負債の削減に充当します。

なお、長期借入金や社債等の長期資金については、中期経営計画に基づく資金需要見通しや金利動向等の調達環境、既存の借入金や社債償還時期等を総合的に勘案の上、調達規模、調達手段等を適宜判断して実施することとしています。

当社は、主要連結子会社との間でグループファイナンスを行い、資金の一元管理を行うことにより、運転資金の効率的な運用を図っています。

 

⑥ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、全体の研究開発を統括するイノベーション推進本部と各事業会社の研究開発部門、各工場の研究技術部等が連携しながら取り組んでいます。イノベーション推進本部は、新事業の創出並びに既存事業の競争力強化を念頭に、技術革新のシーズ開発から、よりビジネスに密着した新市場の開拓と新製品開発を行っています。

 

グループ全体の既存事業の競争力強化として、植林、パルプ、抄紙、塗工の各分野で蓄積・体系化された技術と、海外拠点との連携、新製品開発及び既存製品の品質改善に取り組んでいます。国内外の工場では、品質向上・操業の安定化、コストダウンの推進を図っています。

 

当連結会計年度末における当社グループの保有特許権・実用新案権・意匠権の総数は国内2,332件、海外648件です。また、保有商標権の総数は国内895件、海外1,011件です。

当連結会計年度の研究開発費の総額は9,209百万円となっています。なお、当連結会計年度における各セグメントの研究開発活動を示すと、次のとおりです。

 

(1) 生活産業資材

産業資材事業では、古紙利用拡大、抄紙条件、薬品の最適化によるコストダウン、品質・操業性改善を推進してきました。これらの国内で培った基盤技術を活用して新製品開発を進めるとともに、カンパニーの枠を越え、当社グループ会社の各海外拠点へ水平展開を進めています。

パッケージング関係では、紙容器関連事業のさらなる発展のため、国内原紙の抄紙から飲料パッケージングまでの国内一貫生産システムを構築しています。これら日本国内での一貫した生産体制を基盤に、大きな需要が期待される海外での事業も拡大していきます。

段ボール事業では、インターネット通販市場の急速な拡大に伴うさまざまな業界での梱包・物流に関する課題解決に向けて、次世代の包装ソリューション「OJI FLEX PACK’AGE」の提供を行っています。「OJI FLEX PACK’AGE」では、当社グループの連続段ボールシート「らくだん」を使用した、商品のサイズにあわせた梱包を可能とする「3辺可変システム」等のラインアップを取り揃えており、梱包作業の省人化や配送料削減など物流コストの削減をサポートします。この取り組みは、世界包装機構主催のワールドスターコンテスト2022において、ワールドスター賞を受賞しています。

当事業に係る研究開発費は444百万円です。

 

(2) 機能材

機能材事業では、温室効果ガスの排出量削減や循環型社会の実現に貢献する環境配慮型素材及び製品を積極的に開発しています。また、当社グループのコア技術であるシートの製造・加工技術を活用した新製品開発も進めています。

特殊紙関連の環境配慮型素材及び製品としては、酸素や水蒸気の侵入を防ぎ、内容物の劣化を抑えることができるバリア性紙素材として、プラスチックに代わる紙素材「SILBIO BARRIER」を製品化し、続けて、蒸着フィルム並みの高いバリア性を有する「SILBIO ALBA」、中身が見える「SILBIO CLEAR」、フィルムなしで熱シール可能な「SILBIO EZ SEAL」をラインアップしました。さらなる機能向上にも取り組んでいます。また、バイオマスプラスチックを利用したラミネート紙やヒートシール紙などの開発をしています。その他、医薬用包材や衛生材料関連素材など、成長市場に向けた製品開発も進めています。

粘着関連では、機能進化するタッチパネルに対応した各種粘着シートや高機能粘着フィルムの開発に注力しており、ノートPC、ゲーム機、車載ディスプレイなどへの採用が進んでいます。また、高い遮熱性と光線透過性を両立した自動車用ウィンドウフィルムなど、新たな市場開拓を目指した製品開発にも取り組んでいます。

フィルム関連では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの技術によるコンデンサ用フィルムの開発や、バイオプラスチックフィルムの開発を進めています。ハイブリッド車や電気自動車の電気駆動系に用いられるフィルムコンデンサは、その主力材料である高性能ポリプロピレンフィルムの厚みが薄いほど小型化が可能になります。当社グループは高耐電圧ポリプロピレンフィルムの超薄型化技術の開発を推進し、世界的な需要拡大が見込まれる電動車両向けの電子部品の小型軽量化に貢献しています。バイオプラスチックフィルムでは、植物由来原料のポリ乳酸樹脂を配合した二軸延伸ポリプロピレンフィルムを開発し、バイオマスマーク認定商品「アルファンG(グリーン)」を製品化しました。

当事業に係る研究開発費は2,259百万円です。

 

(3) 資源環境ビジネス

資源環境ビジネス事業では、王子製紙株式会社米子工場で生産している溶解パルプに関する技術開発を行っています。溶解パルプは、レーヨン、医薬品や食品の添加剤、セルロース誘導体などの原料として使用され、今後は世界的な人口増加により需要拡大が期待されています。既に繊維原料メーカーや医薬品原料メーカーへの販売を行っており、現在は高価格品の生産性アップやコストダウンによる収益向上を進めています。

当事業に係る研究開発費は379百万円です。

 

(4) 印刷情報メディア

印刷情報メディア事業では、パルプ製造工程から紙製造工程までの製紙工程全般に関する技術開発に取り組んでいます。使用薬品や操業条件の最適化によるコストダウン、欠点・断紙削減等の操業性改善、代替薬品の利用促進によるBCP(事業継続計画)対応強化を推進し、収益向上に繋げています。

当事業に係る研究開発費は1,009百万円です。

 

(5) その他の研究開発活動

グループ内の関連部門と強く連携しながら、イノベーション推進本部を中心に機動的かつ効率的な研究開発活動を実施しています。セルロースナノファイバー(CNF)や、環境配慮型素材及び製品をはじめ、木材成分のヘミセルロースを利用した医薬品原薬、セルロースからのバイオマスプラスチック開発等の多角的な革新的価値創造に取り組んでいます。

セルロースナノファイバー(CNF)は、引き続き用途開発に精力的に取り組んでいます。CNFスラリー「アウロ・ヴィスコ」は、個々のお客様のニーズに応じてスラリーの特性である透明性や粘度などをカスタマイズした開発を推進し、生コンクリートの圧送先行剤への採用に加え、化粧品原料として国内外の化粧品メーカーでの採用が進んでいます。さらに、グローバルに大きな市場を持つ工業用製品にも採用されています。

また、自動車の窓ガラス用途で、当社グループ独自のCNFシート「アウロ・ヴェール」をポリカーボネートと複合化する素材開発を進めています。CNFシートを複合化することで、透明樹脂の透明性を保持したまま、弾性率向上と熱膨張率低減を実現できました。無機ガラスに比べて大幅な重量低減効果が期待され、今後も製品化に向けた開発を継続していきます。さらに、個々のお客様のニーズに応じ、シートの特性である強度やフレキシブル性などをカスタマイズした開発を進め、様々な産業分野における適用性検討を継続しています。更に、CNFで培ったノウハウと当社グループのコア技術を活かし、マイクロサイズのセルロース繊維と樹脂繊維を複合化させた変形に強く割れにくいセルロースマットの開発も進めています。

今後も上記の用途に加え、樹脂、ゴムの補強等、より幅広い分野での用途開発を進め、CNFの実用化を牽引し、市場普及を積極的にリードしていきます。

環境配慮型素材及び製品として、生分解性プラスチックとセルロースの複合材「リソイルグリーン」の量産体制が整い、試験販売を開始しました。また、滑らかな表面と自由な立体成形性が特徴のパルプモールド製品「PaPiPress」(iFデザインアワード2021・2022、グッドデザイン賞2021受賞)は、プラスチックの代替パッケージとして様々な分野のお客様からの引き合いに対応しています。

パルプを原料としたプラスチックの製造についても目下開発中です。従来の石油を原料としたプラスチックを持続可能なバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックに置き換えることにより、温室効果ガスの排出量削減し、地球温暖化防止に貢献することを目指します。一般的なバイオマスプラスチックはトウモロコシなどの可食原料から製造されますが、当社グループのバイオマスプラスチックは非可食である樹木由来のパルプを原料とすることにより食品資源との競合を無くすことができます。これにより、持続可能な社会にさらに深く貢献できる非可食バイオマスプラスチックの普及を目指すことができます。

 新規開発分野として、独自の微細構造形成技術「ナノドットアレイ」を用いて、ライフサイエンス分野への展開を進めており、iPS創薬や再生医療開発などに役立つ微細構造つき細胞培養基材を開発し、培養シャーレを試験販売中です。その他、反射防止構造体や光取出し構造体等、各種光学材料分野の開発も行っています。また、木質主要成分の一つであるヘミセルロースの産業利用においては、化学修飾した「硫酸化ヘミセルロース」の医薬品化を王子ファーマ株式会社が進めています。医薬事業への参入に向けた取り組みを加速するため、大学や製薬企業との連携を推進しています。

水処理技術の分野では、当社グループが長年培ってきた製紙技術を通じて蓄積された用水製造・排水処理のノウハウを多様なニーズと組み合わせることにより、あらゆる水環境に適した水処理システムを提供しています。またIoTを導入した遠隔監視システムにも対応しています。今後も、水処理システムの技術革新を進めながら、国内のみならずアジア各国をはじめとする諸国の水環境発展に貢献していきます。

その他の研究開発活動に係る研究開発費は5,116百万円です。

 

なお、(1)~(4)の各セグメントに関わる研究開発活動のうち、事業化段階に無い、探索段階及び開発段階の研究開発活動の研究開発費が含まれます。