第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

① 会社の経営の基本方針

当社グループは、「北越グループ企業理念」のもと、紙パルプ事業及びパッケージング・紙加工事業を核として、魅力ある商品とサービスを広く社会に提供し、顧客、株主、取引先、地域社会をはじめとする総てのステークホルダーの支持と信頼に基づいた企業グループの安定的かつ持続的な成長と企業価値の向上を図ることを経営の基本方針としております。 

また、「北越グループ企業理念」に掲げる「自然との共生」を達成するため、原料から製品に至るまでの環境へのあらゆる影響を最小限にとどめることにより、持続可能な社会の実現に貢献することを目的に「北越グループサステナビリティ基本方針」を制定しております。特に環境については、2050年までにCO2排出実質ゼロに挑戦するなど、気候変動問題に対する取組みを積極的かつ能動的に推進してまいります。

 

② 目標とする経営指標

当社グループは、事業活動の成果を示す売上高、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益を重要な経営指標と位置付け、この向上を通じて、企業価値の拡大を図ってまいります。

 

③ 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは長期経営ビジョン「Vision 2030」に基づき、グローバル企業としての持続的な成長を目指してまいります。「Vision 2030」における企業グループイメージは、環境経営を基軸として、持続可能な社会の発展に貢献する企業グループ、多様な労働力と最新技術を活用し、時代に適応した新たな事業領域に挑戦する企業グループ、夢・希望・誇りが持てる働きがいのある企業グループであります。
 また、長期経営ビジョン「Vision 2030」の企業グループイメージ実現に向けた第2ステップとして2023年4月より「中期経営計画 2026」をスタートさせました。「中期経営計画 2026」では、事業ポートフォリオシフト、「コスト」「環境」「安全」にかかる競争力強化及びサステナビリティ(ESG)活動推進の3つを基本方針としております。更に、より一層サステナビリティ活動を推進するために、2025年4月にサステナビリティ推進本部を新設いたしました。今後も基本方針を柱とする経営施策を迅速かつ強力に推進することにより、更なる企業価値の向上を目指してまいります。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

① 経営環境認識

世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢の不安定化などの地政学リスクに加え、主要国の政治情勢や政策運営に対する不確実性が一層高まっており、サプライチェーンの混乱や為替の急激な変動などの先行きリスクを抱えております。

国内紙パルプ産業においては、デジタル化の進展や少子高齢化などによる需要構造の変化に加え、世界情勢の不安定化を背景にしたエネルギー・原材料価格の高止まりなど、厳しい事業環境が継続しております。

 

② 対処すべき課題

イ 事業ポートフォリオシフト

当社グループは北米のパルプ事業や欧州の機能材事業に進出するなど、グローバルな事業展開を目指すとともに、国内では段ボール原紙事業の開始やプラスチック代替素材の商品開発などにより、事業ポートフォリオシフトを積極的に進めてまいりました。

また、2025年4月には、需要特性に適応した敏速な推進体制を構築するため、洋紙・白板紙国内営業本部及び国際営業本部を洋紙営業本部と白板紙営業本部に再編し、品種別販売競争力を強化する組織体制を整えました。その他、セルロースナノファイバーの活用など新規商品の開発や、既存商品の用途拡大等による高付加価値商品への注力、並びにM&Aによる新規事業への進出など、将来の中核となる新たな事業を開拓することにより、事業ポートフォリオシフトを加速し、更なる持続的成長を目指します。

 

ロ 競争力強化

当社グループは、30年以上前から環境問題を経営課題と捉え、業界の中でも先陣を切ってそれらの課題解決のための設備投資を実行し、競争優位な位置をキープしております。更に「中期経営計画 2026」においては、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による先進的CCS(二酸化炭素回収・貯留)事業化への取組みにも参画しております。引き続き2030年の北越グループ環境目標の達成を目指し、気候変動問題解決に向けた改善努力を積み重ね、環境競争力を更に強化してまいります

コスト競争力について、当社は近年の原燃料のコストアップをカバーすべく昨年8月に洋紙・白板紙、9月に機能材の価格改定を公表いたしましたが、一方で外部環境の変化にあわせた最適生産体制による生産効率の向上、安価原料の導入等により、生産・販売部門のコスト競争力の更なる強化を目指しております。このような当社の経営努力による環境競争力、コスト競争力強化を基盤とした安定的経営が評価され、株式会社格付投資情報センターは、一昨年、当社格付の方向性を「A-」(安定的)から「A-」(ポジティブ)に上げ、昨年は更に「」(安定的)へ格付を上げました。

また、昨年5月からスタートした大王製紙株式会社との戦略的業務提携基本契約は、生産技術、製品物流、原材料購買などの各部会、更に下部組織である各分科会の交流が活発に行われており、製造コスト、輸送コスト面等で想定を上回る効果を上げております。特に輸送コスト面では、製品のラウンド輸送やチップ専用船の相互活用など具体的なアクションもスタートしており、両社間の交流を更に深め、収益体質の改善、強化を進めてまいります。

安全競争力については、2020年度からスタートした「hSA25(hokuetsu Safety Action 2025)」計画が、第3期となる最終年度を迎えますので、目標の達成に向けて設備の安全対策を着実に実施してまいります。

 

ハ サステナビリティ(ESG)活動推進

詳細は「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ共通

企業の事業活動においてサステナビリティ課題への解決に向けた取り組みは、益々重要となっております。

当社グループでは「北越グループ企業理念」を実現するため、従業員一人ひとりがあらゆる活動において遵守すべきルールである「グループ行動規範」に則り業務を遂行するとともに「長期経営ビジョン」をはじめとした中長期的な企業価値の向上を推進するため「北越グループサステナビリティ基本方針」を制定し、ESGをはじめとしたサステナビリティ課題解決へ向けた取り組みを実行しております。

 

北越グループ企業理念

 

 私たちは人間本位の企業として、自然との共生のもと技術を高め最高のものづくりによって、世界の人々の豊かな暮らしに貢献します。

 

 


 

 

北越グループサステナビリティ基本方針

 

 当社グループは、グループ企業理念に掲げる「自然との共生」を達成するため、原料から製品に至るまでの環境へのあらゆる影響を最小限にとどめることにより、持続可能な社会の実現に貢献します。

 

・2050年までにCO2排出実質ゼロに挑戦します。

・長期経営ビジョンに基づき、事業を通じて社会的課題の解決に取り組みます。

・取引先のお客様とともに法規制等の遵守を徹底し誠実な企業であり続けます。

 

 

① ガバナンスに関する事項

当社グループは、代表取締役社長CEOをはじめとした取締役、執行役員等が出席するグループサステナビリティ委員会並びに当社各事業場及びグループ会社の各サステナビリティ委員会を組織し、グループ一体となってサステナビリティ活動を展開しております。また、取締役会は、グループサステナビリティ委員会が審議・決定した内容や活動推進目標の達成状況の監督を行っております。

なお、サステナビリティ活動の推進とモニタリング強化及び情報開示の充実を図るために、2025年4月1日付でサステナビリティ推進本部を設置しました。

 


 

 

② 戦略に関する事項

当社グループは、3年毎に更新される「中期経営計画」に連動して、国際規格等を参考に社会からの要請・期待と当社グループの事業における重要度からESGの3分野に関する9項目のマテリアリティ(重要課題)を明確化し、リスクと機会を識別した上で、サステナビリティ活動推進目標とグループ共通KPIを設定しております。

2024年度では、

(E)環境に関しては、CO2排出量削減にむけた取り組みの継続など気候変動問題への対応、グループ原材料調達基本方針に基づく調達、適正な社有林および管理林運営

(S)社会に関しては、無災害職場の構築、人的資本経営の推進、責任ある製品品質の提供、「脱プラ」など環境配慮型製品の開発、IR・SRミーティングの充実によるステークホルダーとのエンゲージメント強化

(G)ガバナンスに関しては、先住民族や地域社会の権利への配慮を重要視するTNFD提言に基づく情報開示や先住民コミュニティの伝統・文化を尊重する取り組み、人権デューディリジェンスプロセスに沿った取り組みの推進

など、事業活動を通じよりよい社会への実現にむけたサステナビリティ活動を推進しております。

 


 

 

「サステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)に対する、リスクと機会及び活動推進目標(グループ共通KPI含む)」

 

区分

マテリアリティ

(重要課題)

リスク及び機会

[戦略]

サステナビリティ活動

推進目標

[指標及び目標]

グループ共通KPI

 

(E)

気候変動問題への対応※

・異常気象(大雨、洪水、台風、大雪、渇水等)や自然災害(地震、津波、火山爆発、森林火災等)による工場操業停止、物流停止

・サプライチェーンにおけるESGに配慮しない企業の存在

・環境破壊、自然破壊による野生動物等の減少をはじめとした生物多様性の崩壊

・バイオマスエネルギーや最新技術の活用によって2050年までにCO2排出を実質ゼロとする「ゼロCO22050」の達成をめざす

・2030年のCO2排出量を2005年度比43%削減

 

責任ある

原材料調達

・「北越グループ原材料調達基本方針」に基づき、環境と社会に配慮したCSR調達を推進する

・環境、社会、人権に配慮して生産された木質製紙原料の調達

 

・再生可能エネルギーのニーズ拡大

・先進的環境配慮(気候変動対策等)に対する共感

・GXの推進による社会からの評価向上

・持続可能なサプライチェーンの構築

・社有林管理の推進によるイメージアップ

 

森林管理と

生物多様性

の保全

・森林の多面的機能を活かすべく、社有林、管理林の適正かつ持続可能な経営を維持する

・社有林、管理林の生物多様性の保全、また社有林、管理林を通じた地域交流に努める

・社有林、管理林のCO2吸収量の維持・拡大

・生物多様性に関する地域交流の強化

 

(S)

職場の安全

衛生の確保

・工場等の設備事故による事業停滞

・重篤災害や過重労働等の発生

・メンタルヘルスやハラスメント等によるモチベーション低下

・製品クレームによる売上の低下

・安全衛生活動

 「hSA25」を推進することにより、無災害職場の構築を図る

・重篤災害ゼロ

・労働災害(軽微な災害含む)件数25件以下

 

人的資本

経営の実現

・人的資本経営を推進することにより、人材の確保と育成を加速させ、グループ全体の競争力強化を図る

・経営陣、管理職層における女性、外国人、社外経験者等の割合を現状(2021年度)の約1割から2030年に倍増させる

・(新卒・社外経験者)定着率の改善

・従業員一人当たり教育訓練投資額の増加

・研修受講者人数の集計

・資格・免許保有数の増加

・女性管理職比率の向上

・男性の育児休業取得率の向上

 

・安全パフォーマンスの向上による労働災害の減少

・人材育成、健康経営、働き方改革などの制度の充実による従業員満足度向上

・環境配慮型製品の増加による収益拡大

・新規顧客の開拓、既存顧客との関係強化

・ステークホルダーの信頼獲得

 

責任ある

製品品質の

提供と

新製品開発

・製品品質と安全性を確保する

・環境配慮型の製品開発を推進する

・製造物責任事故0件(単体)

・環境配慮型製品の拡充

・ナノテクノロジーを利用した製品の開発

 

ステークホルダーとの対話

・ステークホルダー(株主・投資家、販売先・調達先、消費者、従業員、地域社会)との良好な関係を継続する

・ステークホルダー・エンゲージメントの向上(IR・SRミーティングの実施、工場見学・インターンシップの受け入れ、従業員意識調査の実施など)

・各種アンケートへの回答

・社会貢献活動の継続

 

 

 

区分

 

マテリアリティ

(重要課題)

リスク及び機会

[戦略]

サステナビリティ活動

推進目標

[指標及び目標]

グループ共通KPI

 

(G)

コーポレートガバナンスの充実

・規制や法令違反等による社会的信用の低下

・サプライヤー管理の不徹底による人権問題の顕在化

・コーポレートガバナンスの継続的な改善を進める

・リスクマネジメント活動の強化を図る

・開示内容の拡充

・リスク低減活動の継続

 

人権の尊重

・企業価値向上に向けた経営体制の維持・強化

・人権尊重の対応を通じた社会からの信頼

・人権尊重に関する対応を推進する

・国連グローバル・コンパクトへの署名

・人権方針の策定

・人権尊重に関する対応の確立

 

 

※ 詳細については「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ共通 (2)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づく事項」に記載しております。

 

③ リスク管理に関する事項

当社グループでは、様々な経営リスクを適切に管理し企業価値を保全するため、毎年、影響度と発生可能性に基づいて取り巻くリスクを評価しております。

リスク評価の結果、グループサステナビリティに関連する重要リスクに対しては、当社各事業場及びグループ会社サステナビリティ委員会においてリスクを回避・移転・低減するための対策の実施状況を点検し、代表取締役社長CEOをはじめとした取締役、執行役員等が出席するグループサステナビリティ委員会において点検結果やコントロールの状況を管理しております。当社グループ事業に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクと対応状況については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

④ 指標及び目標

サステナビリティ活動推進の具体的な指標及び目標としてグループ共通KPIを設定し、年度末毎に実績を点検しております。

2024年度活動実績は以下のとおりです。

 

 

(E)

CO2排出量の削減や社有林などの育成及び管理、自然資本及び生物多様性関連リスク・機会の分析等に取り組んだ結果、国際的な非営利団体CDPの「気候変動」の分野において、最上位レベルのリーダーシップレベルに位置する「A-」を前年に引き続き獲得するとともに、「フォレスト」において「A」、「水セキュリティ」において「A-」を獲得した。

・JOGMECの委託業務『令和6年度「先進的CCS 事業に係る設計作業等」』を受託し、建設コスト及び運転コストの算定、評価を行い、ネガティブエミッションとなるCCS事業の検討を進めた。

・グループ原材料調達基本方針に則り、紙の主原料である木材チップ及びパルプについてはFSC®認証品又はコントロールウッド品を使用した。また、原料デューディリジェンスを通じ合法性また非紛争木材の確認、第三者によるデューディリジェンス手法の検証を実施した。

・国内社有林等の森林管理、生物多様性の保全については、岩手県内の外川山林で取得しているFSC®FM(森林管理)認証(FSC-C023503)を維持するとともに、他地域の社有林においても同認証制度の理念に沿って管理している。

・海外においては、カナダアルバータ州の管理林では、森林管理プログラムの一環として針葉樹の苗木を140万本植樹した他、州政府や環境保護団体と提携し、カリブー(トナカイ)の生息地の回復等、生物多様性の保全や各種モニタリングに関わるプロジェクトの支援や、先住民コミュニティとのコミュニケーションを継続した。南アフリカの社有林では、FSC®FM認証(FSC-C012171)を維持するともに、動植物モニタリング、保護樹帯・延焼防止帯の整備や自然災害等に関する注意喚起を継続して、ステークホルダーとの関係強化を図った。

(S)

・職場の安全衛生に関しては、当社事業場の他に新たに関連事業所18拠点を加えてISO45001認証(IQA-OH0341)を維持するとともに、ウェアラブル機器を活用した熱中症予防及び外部機関を起用した安全人材育成トレーニングなどを実施して職場における安全衛生レベルアップを図った。さらに、安全体感VR、画像認識技術の導入や労働安全衛生規則第144条に適合した設備対策の推進により回転体巻き込まれ災害リスクが低減した結果、グループ労働災害件数は前年比減少した。

・人的資本経営の実現にむけて、人材育成と能力開発に重点を置いた新人事制度の定着を図る評価者研修を定期的に実施するとともに、業務に必要な資格及び免許の取得促進や多様な人材の確保や登用を進めた。また、女性の健康課題研修の開催、ウェルネス休暇の新設、メンタルヘルスやハラスメント等によるモチベーションの低下を予防する取り組みなど健康経営に注力した結果、昨年に引き続き健康経営優良法人の認証を得た。

・グループにおいて製造物責任事故の発生はなかった。また、古紙配合率の検証、食品接触用途製品の管理、品質規格等の適合状況の点検を実施し、適正かつ適切に運用していることを確認した。

・環境配慮型紙製品の開発や用途開発を推進するとともに、ナノカーボン素材を活用した電磁波ノイズ抑制シートが産業用機器に初めて採用された。また、電磁波吸収体を新規開発した。

・ステークホルダーから理解・評価を得るべくIR及びSR活動を継続的に実施し、機関投資家、アナリスト、金融機関等との対話を通じて得られた気付き事項等を事業活動に反映して、サステナビリティ活動の深化とコーポレートガバナンスの強化を図った。

(G)

・環境・社会・ガバナンスに関するリスクと機会を識別し、サステナビリティ情報開示の充実を図った。

・リスクマネジメント活動の一環として、前年に引き続き異常気象や自然災害等に伴う事業停止リスクを軽減するため、主要事業場のBCP(事業継続計画)の見直しを実施した。また、工場設備の故障や突発事故による事業停滞リスクを軽減するため、設備保全や修繕計画・管理の強化を図った。

・人権デューディリジェンスを実施し、サプライチェーンにおいて発生可能性のある人権侵害を特定するとともに、グループ各社および主要サプライヤーに対する調査を通じて人権リスクの把握に努めた。

 

 

 

(2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づく事項

当社グループは2021年2月に、TCFDの提言に賛同を表明し、1.5℃~2℃シナリオ(IEAのSDS等)や4℃シナリオ(IPCCのRCP8.5等)をベースとした気候変動がもたらすリスクや機会、その影響の定量評価に基づいた取り組みを開示しております。2024年度の取り組みは、国際的な非営利団体CDPの「気候変動」、「フォレスト」「水セキュリティ」の各分野において、最上位レベルの評価を獲得しました。当社グループは、引き続き環境経営の取り組みを通じ、社会のカーボンニュートラルの実現と、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みに貢献してまいります。

 

「1.5℃~2℃シナリオ(IEAのSDS等)や4℃シナリオ(IPCCのRCP8.5等)をベースとした気候変動がもたらすリスクや機会の分析」

 

分類

リスク

リスクの詳細

影響度

リスク低減に向けた戦略・対応策

移行

リスク

政策・

法規制

CO2排出に関する規制強化

・炭素税や排出量取引制度等、カーボンプライシングの導入・強化

・「北越グループ ゼロCO2 2050」「北越グループ環境目標2030」の実現

・省エネルギーのさらなる推進

・パルプ製造工程で発生する黒液等のバイオマスエネルギーの積極的な活用

・カーボンニュートラル燃料の活用

・CO2排出量の少ない鉄道等へのモーダルシフトの推進

・高効率なチップ専用船の導入

・木材由来のCO2を分離回収することによる、ネガティブエミッションとなる先進的CCS導入検討

再生可能エネルギー普及に向けた規制強化

・再生可能エネルギーの発電促進に向けた賦課金の単価上昇

市場

化石エネルギーの価格高騰

・脱炭素社会実現に向けた石油開発投資減少等による化石燃料由来のエネルギー価格の高騰

評判

環境配慮不足に対する非難の高まり

・気候変動対策や森林保全等における環境配慮不足に対する、消費者等からの非難の高まりや製品の不買運動

・上記の気候変動対策の推進

・「北越グループ原材料調達基本方針」「木材原料調達の基本方針」実行

・非認証材の排除やトレーサビリティーシステムの活用、第三者機関による監査、当社社員による現地調査等を通じた、合法性、持続可能性が証明された木材原料の調達

・工場見学の積極的な受け入れ、環境活動通信誌「KINKON」の発行、環境等をテーマにした出張講義等を通じた、当社グループの環境保全活動の情報発信

投資家からの評価低下

・気候変動への取り組み遅れによるESG投資における評価低下や投資撤退(ダイベストメント)

物理的

リスク

急性

異常気象増加による事業への影響

・豪雨や洪水、巨大台風等の異常気象による自社の工場、設備の損壊

・異常気象による電力や水等のインフラ損壊によるサービス供給停止

・異常気象による道路、鉄道、港湾設備損壊によるサプライチェーンの寸断

・工場における自然災害リスクの評価と対策

・「緊急事態対応規程」に基づいたBCP(事業継続計画)の見直し

・サプライヤーの多様化等による有利購買・安定調達の推進

慢性

気象パターン変化による原料調達への影響

・気温の上昇や山火事の頻発、病虫害の発生等による、紙パルプ原料樹木の生育悪化、調達への悪影響

・森林の多面的機能の向上を目指した山林経営の推進

・サプライヤーの多様化等による有利購買・安定調達の推進

 

 

分類

機会

機会の詳細

影響度

機会活用に向けた戦略・対応策

機会

製品と

サービス

環境配慮型製品・サービスへのニーズ拡大

・消費者の意識高まりに伴う、環境配慮型製品・サービスへのニーズ拡大

・FSC®認証製品(FSC-C005497)の提供

・脱プラスチックに向けた紙素材等のプラスチック代替材料の開発と拡販

・最先端のバイオマス素材であるセルロースナノファイバーと炭素繊維の複合材料開発

・バッテリーセパレーターの開発と拡販

先進的な環境配慮に対する共感

・気候変動対策や森林保全等における環境配慮に対する、消費者や取引先からの共感の高まりや製品の積極的な購入

・上記の環境配慮型製品・サービスの積極的な展開や、気候変動対策や森林保全等の取り組みの推進

・工場見学の積極的な受け入れ、環境活動通信誌「KINKON」の発行、環境等をテーマにした出張講義等を通じた、当社グループの環境保全活動の情報発信

投資家からの評価向上

・先進的な気候変動への取り組みによるESG投資における評価向上や投資誘引

市場

CO2排出量取引制度の普及

・e-メタンなど化学製品へのバイオマス由来、カーボンネガティブCO2導入機運の高まり

・木材由来のCO2を分離回収することによる、ネガティブエミッションとなる先進的CCS導入検討

エネルギー源

再生可能エネルギーへのニーズ拡大

・カーボンニュートラル実現に向けた再生可能エネルギーへのニーズ拡大

・太陽光、バイオマス等の再生可能エネルギー発電事業の展開

資源効率

森林資源への関心の高まり

・CO2を吸収・固定し、気候変動問題に貢献する、森林吸収源に対する関心の高まり

・植林事業や森林認証取得を通じた持続可能な森林経営の推進

・森林経営計画に基づく間伐の実施

・建築や合板、燃料用チップ等における間伐材の有効活用

水資源への関心の高まり

・気候変動等により水量減少・水質悪化が懸念される水資源への関心の高まり

・水処理にあたり、強度を増すために使用するシートである分離膜支持体の提供

・製紙事業で培った排水処理技術を活用した水処理事業の検討

 

 

 

(3) 人的資本及び多様性に関する事項

① 戦略に関する事項

当社グループは、「北越グループ企業理念」のもと、「北越グループダイバーシティ基本方針」、「多様性の確保のための人材育成及び社内環境整備方針」及び「北越グループ人材育成方針」に則り取り組みを推進しております。

人的資本経営を推進することにより、人材の確保と育成を加速させ、グループ全体の競争力強化を図ることをサステナビリティ活動推進目標として定め、人的資本及び多様性に関する取り組みを推進しております。

 

北越グループダイバーシティ基本方針

 

当社グループは、グループ企業理念において、「人間本位の企業」として人の多様性を尊重し、人を活かすというビジョンを、また、グループ行動規範においても、各国・地域の文化・宗教・慣習等を尊重し、価値観の多様性を理解したうえで行動することを共有しています。

これらの基本認識に基づき、事業環境の急激な変化に応じて事業ポートフォリオの転換やイノベーションを迅速に推進するために、その原動力となり得る中核人材の登用等における多様性の確保により企業価値の持続的な向上を目指します。

 

 

多様性確保のための人材育成及び社内環境整備方針

 

性別や国籍に関わらず、社員一人ひとりが自らのキャリアを主体的に形成することによって、個人のモチベーション向上と組織の活性化を図るとともに、社員の自主性とチャレンジ精神を尊重した人材育成により、多様な人材の活躍を支援し、働きやすい会社風土の醸成を目指します。

勤務制度の改定による柔軟な働き方の実現および育児・介護などの事由を抱える社員に向けた両立支援制度の拡充、健康経営の推進により、多様性確保のための環境整備を行い、仕事と生活の調和を目指します。

 

 

北越グループ人材育成方針

 

北越グループは、「世界の人々の豊かな暮らしに貢献する」というミッションを果たすため、イノベーションを追求し、技術力を高め、「最高のものづくり」を担う人材を育成します。

 

求める人物像

 

 

・はじめの一歩を踏み出す

・現場・現物・現実を見て原理・原則で考え問題を解決する

・周りを巻き込みチームで成果を出す

 

人材育成のための社内環境整備

 

 

・人材育成を目的とした評価制度の導入

・階層別研修(新入社員、中堅リーダー、係長層、新任管理職、管理職層)

・自律的な学びとキャリア形成の支援

(自己啓発通信教育支援、海外トレーニー、MBA取得、公的資格・免許取得支援、キャリアデザイン研修など)

 

 

② 指標及び目標

指標及び目標については「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ共通 ②戦略に関する事項」の表内「(S)社会 ⑤人的資本経営の実現」の欄に記載しております。

2024年度活動実績については「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ共通 ④指標及び目標」の表内「(S)社会」の欄に記載しております。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下「経営成績等」といいます。)に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクと対応の状況は、以下のとおりであります。

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(特に重要なリスク)

(1)製品需要及び価格の変動について

当社グループは、紙パルプ事業及びパッケージング・紙加工事業を主力事業としており、景気後退や需要構造の変化等による需要減少の影響を受けることがあります。また、当社グループの製品は市況商品の割合も高いため、経済情勢の変動に伴い製品価格が変動するリスクがあります。これらの製品需要及び価格変動が、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、「中期経営計画 2026」において「事業ポートフォリオシフト」、「競争力強化(コスト、環境、安全)」及び「サステナビリティ(ESG)活動推進」を基本方針に掲げ、更なる事業基盤強化による収益拡大に向け取り組んでおります。

 

(2)原燃料市況の変動について

当社グループは、主として木材チップ、古紙、薬品、ガス、重油等の原燃料を購入しておりますが、ロシア・ウクライナ問題、中東地域の政情不安などの国際情勢の変化に端を発する国内外の市況変動により、物流費用や原燃料等購入価格が変動するリスクがあります。その結果、これら原燃料費等の価格変動が当社グループの営業成績等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、「北越グループ原材料調達基本方針」を踏まえて、サプライヤーの多様化等により有利購買、安定調達に努めております。

 

(3)海外の政治、経済情勢の変動について

当社グループは、木材チップ、重油等の原燃料の多くを海外から調達しております。また、カナダ、フランスで紙パルプ事業を、中国で紙加工事業を展開しております。現地の政局や経済情勢の変化による原燃料確保の困難な状況や価格の乱高下、または現地政府による規制や政治不安等による経済環境の悪化等のリスクがあり、それらが発生した場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、海外子会社では、現地弁護士やコンサルタント等のアドバイスに基づき法改正等に対する迅速な対応を行うことでリスクを軽減する体制を構築しております。

 

(4)法規制及び訴訟等について

当社グループは、労働安全衛生法、労働基準法、環境規制、知的財産権や製造物責任法等様々な法令規制の適用を受けており、それらの変更・改正によって、追加の費用が発生する可能性があります。また、訴訟等のリスクに晒される可能性がないとは言えません。それらが発生した場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループは「北越グループ企業理念」及び「北越グループ行動規範」を制定し、当社グループ全社員に対し、法令・定款の遵守は勿論のこと、社内規程の遵守も徹底しております。

 

(5)設備投資について

紙パルプ産業は装置産業であり、当社グループでは、生産コストの削減、品質向上、効率化等を目的とした設備投資を行っており、多くの有形固定資産を保有しております。設備投資の決定は、製品市場の需給予測など当社グループの慎重な分析に基づいております。しかし、将来的な事業環境の急激な変化等により、固定資産の価値が予想以上に減少した場合、減損処理が必要となり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。そのため、設備投資後も市場動向を常に注視し、最適な生産体制を維持する努力を続けております。

 

 

(6)自然災害・設備トラブルについて

地震、洪水、台風、大雪等の自然災害、事故やテロ、突発的な設備トラブルの発生等のような予測不可能な事由により、当社グループの生産設備が大きな損害を受け、生産の継続が困難になるとともに、公共交通機関や公共道路の断絶等によるサプライチェーンの寸断等、復旧に多大な時間と費用が掛かる場合もあるため、当社グループの企業業績等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループは日常の保全体制の継続と設備トラブル発生時に適用される各種損害保険の付保や「緊急事態対応規程」に基づくBCP(事業継続計画)及び緊急事態対応規程等を策定しており、自然災害をはじめとした緊急事態に対処する態勢をとっております。

 

(7)気候変動について

気候変動による地球温暖化や異常気象は、干ばつや森林火災、集中豪雨、大型台風、土砂災害などをもたらす原因となり、木材原料やその他の原材料の調達に影響を及ぼすほか、当社グループの所有する森林資産の価値を棄損する等のリスクになります。また、当社グループのみならずサプライチェーンが被害を受けることにより様々な事業活動に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは従来から気候変動リスクを低減するため、バイオマス燃料などへの燃料転換の設備投資を進め、率先して温室効果ガスの発生削減に取り組んでおり、TCFDに基づきリスクや機会を経営戦略に反映して、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする環境経営を推進しております。こうした取り組みの結果、2024年度、国際的な非営利団体CDPより、「気候変動」の分野において前年に引き続き「A-」、「フォレスト」の分野において「A」、「水セキュリティ」の分野で「A-」の評価を獲得しました。

 

(8)情報セキュリティについて

当社グループは、主にプライベート・クラウド上に業務システムを構築しており、それらにサイバー攻撃等による情報セキュリティ事故が発生した場合、業務遂行に支障をきたし、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループでは「北越グループ情報セキュリティ基本方針」を定め、リスクの特定とその低減・回避・移転策を実施しています。具体的には、役職員に対する教育及び標的攻撃型メール訓練、工場閉域環境を対象としたセキュリティ脆弱性診断等により、ウイルス感染やサイバー攻撃によるシステム障害、社外への情報漏洩の防止に努めております。また、グループ各社の守るべき情報資産のバックアップ体制の構築、またサイバー保険への加入等により、インシデント発生時の緊急対応体制の整備も図っております。

 

(9)人材の確保について

昨今の少子高齢化等による労働力不足により、人材の確保が困難となる可能性があります。また、労働環境の悪化や職場の安全衛生管理上の問題、従業員のモチベーションの低下等により、労働生産性の悪化、更には人材流出につながる可能性があります。それらが発生した場合には、当社グループの営業活動等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループは、「北越グループダイバーシティ方針」及び「北越グループ人材育成方針」に則り、新規採用、経験者採用、多様な人材の採用及び確保並びに働きやすい会社風土の醸成及び仕事と生活の調和のための施策等、人的資本経営の推進を進めております。

 

(10)労働安全衛生について

当社グループでは、抄紙機をはじめ多数の生産設備を保有しており、重篤な労働災害が発生した場合、生産活動等に支障をきたし、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループでは、安全と健康が経営の根幹であることを基本とした「北越グループ安全衛生基本方針」を掲げ、その実現に向けて、安全衛生活動「hSA25」の策定・実行、労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格である「ISO 45001」の認証取得などにより、安全衛生パフォーマンスのさらなる向上を目指しています。

 

 

(11)企業買収等について

当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の企業価値の源泉を十分に理解したうえで、当社の企業価値ないし株主の皆様共同の利益を中長期的に確保し、向上させる者でなければならないと考えております。しかしながら、株式の大規模買付行為等の中には、経営を一時的に支配して当社の有形・無形の重要な経営資産を大規模買付者又はそのグループ会社等に移譲させることを目的としたものなど、当社の中長期的な企業価値ないし株主の皆様共同の利益を棄損するものがあります。そのため、当社の企業価値ないし株主の皆様共同の利益を毀損する大規模買付行為等を行おうとする者に対しては、株主の皆様の検討のための時間と情報の確保に努めるなど、会社法、金融商品取引法、企業買収における行動指針その他関連法令に基づき、適切な措置を講じてまいります。

 

(重要なリスク)

(12)株価の変動について

当社グループは、取引先を中心に株式を保有しておりますが、市場性のある株式については、各種要因による株価の変動により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、特に政策保有株式の保有による企業価値向上効果やリスクについて、毎年取締役会で検証しております。

 

(13)為替変動について

当社グループは、製品輸出取引、原燃料輸入取引及び海外子会社の業績において為替変動の影響を受けることがあります。この為替変動が、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらの影響を回避するため、一部為替予約によるリスクヘッジを実施しております。

 

(14)金利変動について

当社グループの総資産に対する有利子負債の比率は、前連結会計年度末が25.1%、当連結会計年度末が21.2%となっております。今後の金利動向によっては、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、グループファイナンスの実施等、グループ資金の効率化に努めております。

 

(15)連結子会社の内部統制について

当社グループは、国内の他、カナダ、フランスで紙パルプ事業を、中国で紙加工事業を展開しております。

国内外連結子会社における内部統制に予期せぬ脆弱性があった場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。そのため、当社の内部監査部門であるグループ統制管理室による管理下で、経営から独立した専任の内部監査人の設置、海外連結子会社においては内部監査部門の設置または現地の専門コンサルタントによるアドバイザリー業務の実施等により、内部統制の強化を図っております。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当社グループにおきましては、国内紙需要の減退が継続し、原燃料をはじめとするコストアップはあったものの、輸出販売における数量及び価格上昇、海外子会社におけるパルプの販売価格の上昇等により、増収増益となりました。当社グループの当期における業績は以下のとおりです。

売  上  高

305,718

百万円

(前連結会計年度比

2.9%増

)

営 業 利 益

19,727

百万円

(前連結会計年度比

29.2%増

)

経 常 利 益

18,759

百万円

(前連結会計年度比

5.6%増

)

親会社株主に帰属する当期純利益

15,529

百万円

(前連結会計年度比

85.1%増

)

 

 

主なセグメント別の経営成績は、下記のとおりであります。

 

 紙パルプ事業

紙パルプ事業につきましては、輸出販売における数量及び価格上昇、海外子会社におけるパルプの販売価格の上昇等により、増収増益となりました。品種別には、洋紙につきましては、価格改定の実施により、全般的に販売価格が上昇しました。国内販売は、需要の低迷等により、販売数量が減少しましたが、輸出販売は、販売数量が増加し、増収となりました。

板紙につきましては、販売数量は増加し、増収となりました。グレード別には、特殊白板紙及びコート白ボールは、食品の持ち帰り用途向けが堅調に推移したことや、大手出版社で表紙用途向けに新規採用されたこと等拡販に注力したことにより、販売数量は増加し、高級白板紙は、店頭POP用途向けや各種はがき用途の需要が減少し、販売数量は減少しました。段ボール原紙は、需要低迷により、販売数量は減少したものの、輸出販売における価格上昇により、増収となりました。

機能材につきましては、機能紙分野においては、電子部品搬送用のチップキャリアテープ原紙の需要は回復基調が続き、特殊紙・情報用紙分野においては、コンビニエンスストア向けの食品包装材は需要が低迷したものの、OCR用紙で官庁向け大型案件の受注及び、圧着ハガキ用紙の拡販に注力したことにより、増収となりました。

パルプにつきましては、海外子会社において販売価格の上昇等により、増収増益となりました。

以上の結果、紙パルプ事業の業績は以下のとおりとなりました。

売上高

280,243

百万円

(前連結会計年度比

2.7%増

)

営業利益

18,251

百万円

(前連結会計年度比

33.4%増

)

 

 

 

 パッケージング・紙加工事業

パッケージング・紙加工事業につきましては、紙容器・包材事業の受注拡大等により、増収となりましたが、損益面におきましては、加工原紙の高騰や外注加工費の負担増加等により、減益となりました。

 この結果、パッケージング・紙加工事業の業績は以下のとおりとなりました。

売上高

16,655

百万円

(前連結会計年度比

6.1%増

)

営業利益

228

百万円

(前連結会計年度比

18.9%減

)

 

 

 その他

木材事業、建設業、運送・倉庫業、古紙卸業をはじめとするその他事業につきましては、主に木材事業において外部受注が増加により、増収となりましたが、損益面におきましては、物流費の高騰等により、減益となりました

この結果、その他事業の業績は以下のとおりとなりました。

売上高

8,818

百万円

(前連結会計年度比

5.1%増

)

営業利益

856

百万円

(前連結会計年度比

1.1%減

)

 

 

総資産は、前連結会計年度末に比べて3,189百万円増加し、418,882百万円となりました。これは主として、現金及び預金5,504百万円商品及び製品1,532百万円、有形固定資産が5,477百万円それぞれ増加した一方で、受取手形、売掛金及び契約資産9,290百万円減少したことによるものです。

負債は、前連結会計年度末に比べて10,215百万円減少し、153,012百万円となりました。これは主として、有利子負債が15,389百万円減少した一方で、支払手形及び買掛金1,294百万円未払法人税等3,702百万円それぞれ増加したことによるものです。

純資産は、前連結会計年度末に比べて13,405百万円増加し、265,870百万円となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純利益等により利益剰余金が11,344百万円為替換算調整勘定3,246百万円それぞれ増加した一方で、その他有価証券評価差額金1,411百万円減少したことによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べて3,008百万円増加し、25,148百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は40,932百万円(前連結会計年度比83.4%増)となりました。

収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益21,538百万円減価償却費13,142百万円、売上債権の減少額9,108百万円、利息及び配当金の受取額2,487百万円、支出の主な内訳は、棚卸資産の増加額1,766百万円、未払消費税等の減少額1,198百万円であります。

投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果使用した資金は18,816百万円(前連結会計年度は15,494百万円の支出)となりました。

支出の主な内訳は、投資有価証券の取得による支出3,571百万円有形固定資産の取得による支出17,653百万円定期預金の預入による支出2,481百万円、収入の主な内訳は、投資有価証券の売却による収入7,145百万円であります。

財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果使用した資金は19,121百万円(前連結会計年度は3,801百万円の支出)となりました。

支出の主な内訳は、コマーシャル・ペーパーの減少額7,000百万円、長期借入金の返済による支出16,990百万円配当金の支払額3,373百万円、収入の主な内訳は、長期借入れによる収入8,000百万円であります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、その内容、構造、形式等は必ずしも一様ではありません。このため、セグメントごとの生産高を表示することは困難であります。そこで、紙パルプ事業の主要生産会社である当社及びAlberta-Pacific Forest Industries Inc.の当連結会計年度における主たる品種別生産実績を示すと、次のとおりであります。

 

区分

生産高(t)

前年同期比(%)

洋紙

1,040,575

100.3

板紙

367,590

78.8

合計

1,408,166

93.6

パルプ

1,490,432

103.0

 

(注) 当連結会計年度において、板紙の生産実績に著しい変動がありました。これは、前連結会計年度において、連結子会社であった星輝投資控股有限公司の株式を一部譲渡したことに伴い、同社の完全子会社である江門星輝造紙有限公司を連結の範囲から除外したことによるものであります。

 

b. 受注実績

当社グループは、一部受注生産を行っているものもありますが、大部分は一般市況及び直接需要を勘案して計画生産を行い、自由契約に基づき販売しております。このため、グループ会社の受注実績を把握することが困難であります。そこで、受注実績については記載を省略しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

紙パルプ事業

280,243

102.7

パッケージング・紙加工事業

16,655

106.1

その他

8,818

105.1

合計

305,718

102.9

 

 

(注)  主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

新生紙パルプ商事㈱

36,356

12.2

36,669

12.0

国際紙パルプ商事㈱

19,627

6.6

19,419

6.4

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
 
a.経営成績の分析

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月期)

当連結会計年度

(2025年3月期)

連結業績予想

(2025年3月期)

売上高

297,056

305,718

310,000

営業利益

15,267

19,727

20,000

経常利益

17,757

18,759

21,000

親会社株主に帰属する当期純利益

8,387

15,529

16,000

 

 

 当連結会計年度においては、輸出販売の数量増加やパルプ販売価格上昇により、売上高は過去最高額を更新し、海外売上高比率は37.2%に増加いたしました。

 利益においては、原燃料や物流費のコストアップがありましたが、上記事由による増収効果により、営業利益は増益となりました。経常利益は、持分法による投資損失を計上したものの、為替差益等が加わり増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に計上した特別損失の解消に加え投資有価証券売却益もあり増益となりました。

 なお、上表記載の連結業績予想(2024年11月14日開示)との比較においては、経常利益は持分法による投資損失の計上等により乖離したものの、売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益は概ね連結業績予想並みの結果となりました。

 

b.財政状態の分析

当連結会計年度末の流動資産合計は、現金及び預金が増加した一方、前連結会計年度末日の休日要因により売上債権が減少し、392百万円減少しました。固定資産合計では、投資その他の資産は減少しましたが、減価償却費を上回る設備投資を実施したことにより、3,582百万円増加しました。

負債合計は、仕入債務が増加した一方、有利子負債が15,389百万円減少したことにより、10,215百万円減少しました。純資産合計においては、利益剰余金の増加に加え、為替換算調整勘定の増加により13,405百万円の増加となりました。

以上により、財務健全性指標の一つである自己資本比率は63.3%と前連結会計年度より2.7ポイント上昇しており、財政状態の健全性は引き続き維持できているものと認識しております。

 

c.キャッシュ・フローの分析

営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、税金等調整前当期純利益の増加、及び必要運転資金の減少により、前連結会計年度から18,611百万円増加し40,932百万円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、各種設備投資の実施や定期預金の預入により、18,816百万円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローを有利子負債返済に充当したことや配当金の支払い等により、19,121百万円の支出となりました。以上から、現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度から3,008百万円増加の25,148百万円となっております。

 

d.当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの取扱商品は市況商品が多く、需給動向や市場価格等の影響を大きく受けます。国内印刷情報用紙事業においては、構造的な需要減退が継続しており、市販パルプ事業は、世界的な需給バランスに加え、投機的な市場価格形成の影響が発生することから、大きな価格変動が生じます。

当社グループが購入している原燃料につきましても市況商品が多く、価格変動リスクに晒されております。また国内事業においては輸入原燃料を多用しており、為替変動リスクだけでなく、各国の通商政策や地政学的リスクも、当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

かかる認識の下、当社グループは事業ポートフォリオシフトに注力しており、取扱商品及び販売市場の拡充及び分散、特に輸出を含めた海外売上高比率の向上等による為替リスク軽減等に努めております。

 

e.当社グループの資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業活動に必要な流動性の安定確保と財務健全性の維持を基本方針としております。コマーシャル・ペーパーや長期社債発行等による直接調達及び金融機関借入等による間接調達を活用し、機動的かつ分散調達により安定的な財務基盤を確立しております。

運転資金につきましては主にコマーシャル・ペーパーや短期借入金にて調達しており、いずれも調達枠には十分な余力を有しています。また、設備投資等につきましては主に長期社債、長期借入金等にて調達し、市場環境を鑑みながら調達手段を選択しております。

安定的な財務基盤の指標の一つとして、有利子負債残高から現預金残高を差し引いた後のネット有利子負債残高を自己資本にて除したネットD/Eレシオを用いております。ネットD/Eレシオは一定水準以上であり、財務健全性は維持できております。なお、当社グループでは財務健全性を維持しつつ、有利子負債の有効活用により、財務レバレッジ改善を努め、資本コスト低減を進めてまいります。

 

 

(単位:百万円)

 

2024年3月期

(前期)

2025年3月期

(当期)

有利子負債残高

104,362

88,972

現預金残高

22,140

27,644

ネット有利子負債残高

82,222

61,328

自己資本

251,709

265,052

ネットD/Eレシオ

0.33倍

0.23倍

 

また、円滑な資金調達を継続するために株式会社格付投資情報センター(以下、「R&I」といいます。)及び株式会社日本格付研究所(以下、「JCR」といいます。)から格付を取得しております。2024年11月にはR&Iより、事業ポートフォリオ改革の成果により収益源の分散が事業・地域の両面で進み、収益力・キャッシュ・フロー創出力の底堅さが増していること評価され、(長期)発行体格付がA-からAへと格上げとなりました。引き続き、格付の維持向上に努めてまいります。

 

R&I

JCR

短期格付

a-1

(長期)発行体格付

 

 

f.当社グループの経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、全てのステークホルダーと共に持続的な成長を目指し、企業価値を向上させるために2030年を目標とする長期経営ビジョン「Vision 2030」を2020年5月に策定いたしました。その企業グループイメージの実現に向けた第2ステップとして、2023年4月より「事業ポートフォリオシフト」「競争力強化」「サステナビリティ(ESG)活動推進」を基本方針とした「中期経営計画 2026」に取り組んでおります。2年目となる当連結会計年度の進捗状況は下表のとおりです。

 

 

(単位:億円)

 

中期経営計画 2026

(2026年3月期)

2025年3月期

(実績)

売上高

3,300

3,057

営業利益

200

197

経常利益

240

187

親会社株主に帰属する当期純利益

200

155

ROE

8.0%

6.0%

EBITDA

390

328

 

 
上記に加え、2021年に制定した「北越グループサステナビリティ基本方針」の下、「北越グループ ゼロCO2 2050」に挑戦すると共に、長期的な重要課題に積極的・能動的に取り組んでおります。2024年はCDPスコアにおいて、フォレスト分野では最高評価のA評価、気候変動分野はA-評価、水セキュリティ分野はA-評価となり、全ての分野で最上位のリーダーシップレベルを獲得いたしました。また、CCS事業につきましては、前年のJOGMEC「先進的 CCS 事業の実施に係る調査」に引き続き、2024年9月にはJOGMEC「先進的 CCS 事業に係る設計作業等」を共同受託し、2030年の東新潟地域における事業の実現を目指しております。2025年4月には、サステナビリティ活動に特化した組織として、サステナビリティ推進本部を設置いたしました。今後は、当該本部を中心に環境課題に関する取り組みを含めたサステナビリティ活動を推進し、企業価値を高めてまいります。

 

また、2024年5月に大王製紙株式会社と戦略的業務提携を開始以降、生産技術、原材料購買、製品物流の各分野において積極的に活動しております。初年度となる当連結会計年度においても提携効果を発現し、増益に寄与しました。両社共通の経営課題である「競争力強化」「事業ポートフォリオの変革」の解決に向けて、中長期的な企業価値向上に資する取り組みを推進してまいります。

 

g.主なセグメント別の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
紙パルプ事業のセグメント売上高は280,243百万円と前連結会計年度比2.7%の増加となり、セグメント利益は18,251百万円となりました。

当該セグメントの売上高は連結売上高の91.7%を占めております。また当該セグメントの資産は総資産の94.9%を占め、当該セグメントの財政状態及び経営成績が連結財政状態及び経営成績に大きな影響を与えるものと考えております。

当連結会計年度においては、国内では紙需要減退により販売数量は減少しましたが、輸出販売の数量増加により、紙販売数量合計は前年を上回りました。また、国内販売価格については、再生産可能な利益を確保することを目的に価格改定に取り組み、輸出販売価格については円安進行により上昇しました。一方、円安進行による原燃料や国内外物流費のコストアップ影響は大きく、生産効率改善にも努めましたが減益となりました。

カナダにおける市販パルプ事業では、工場の余剰電力を販売する売電収益は減少したものの、国際的なパルプ市況の回復や販売数量の増加により、増収増益となりました。

2025年4月には、複雑化する顧客ニーズに的確に対応すべく取り扱い商品毎に組織を再編し、洋紙営業本部、白板紙営業本部、機能材営業本部の3営業本部体制としました。当該セグメントの売上高及び収益力を安定かつ強化するべく、引き続き事業ポートフォリオシフトに取り組んでまいります。

 

パッケージング・紙加工事業のセグメント売上高は16,655百万円と前連結会計年度比6.1%の増加となり、セグメント利益は228百万円となりました。

当該セグメントの国内事業においては、食品一次容器の新規受注増加や液体容器の価格改定等から増収となりました。利益面では、新規受注商品の外注加工費の増加や円安進行による輸入原材料のコストアップ等により、減益となりました。また、中国における紙加工事業においては、販売数量増加や生産コスト削減に取り組んだことにより増収増益となりました。

パッケージング事業の一層の成長を目指し、2025年4月の組織改定にて、紙パルプ事業セグメント内の白板紙事業との連携を強める体制としました。また、加工内製化に向けた設備投資も完了しており、当社グループの素材開発・原紙生産から製品まで一貫生産できる強みを活かし、需要増加が期待される紙容器・包材等のパッケージング事業に注力してまいります。

 

その他事業のセグメント売上高は8,818百万円と前連結会計年度比5.1%の増加となり、セグメント利益は856百万円となりました。

当該セグメントは木材事業、建設業、輸送・倉庫業、古紙卸業等の多岐に亘っております。主に再生可能エネルギー向け燃料チップ販売が増加したこと等から増収となりましたが、物流費等のコスト上昇により減益となりました。引き続き、当社グループが有する経営資源の有効活用を目的に安定した利益確保に努めてまいります。

 

② 次期の見通し

我が国経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果により緩やかな回復の継続が期待されるものの、米国の通商政策の影響による景気変動リスクや長期化する地政学的リスク等による不確実性は高まっております。

次期の見通しにつきましては、輸出販売の数量増加を計画する一方、輸出販売価格の低下や国内紙販売の数量減少により、売上高は減収を見込んでおります。利益面では、円高及び原油安による原燃料価格低下のコストダウンが見込まれるものの、修繕費負担が増加する年度であることから営業利益は減益を予想しております。経常利益は持分法による投資損益の回復により増益、親会社株主に帰属する当期純利益は特別利益の減少により減益を計画しております。

当社グループは、「北越グループサステナビリティ基本方針」に掲げる持続可能な社会の実現に貢献すべく、最終年度に入った「中期経営計画 2026」の基本方針に則した事業活動を推進し、企業価値向上を目指してまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。  

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【重要な契約等】

  戦略的業務提携基本契約

契約会社名

相手方の名称

契約締結日

契約内容

契約期間

北越コーポレーション㈱

大王製紙㈱

2024年5月15日

戦略的業務提携
生産技術、原材料購買、製品物流に関する協業等

2024年5月15日から
5年間(以後1年毎の自動更新規定あり)

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発部門は、生産技術本部下にある研究所と機能材営業本部下にある商品開発室を中心に構成されております。また、カップ事業推進室も紙容器や軟包材関連製品の新規採用にも注力しております。生産技術本部はこれらの研究開発活動を総括し、生産技術部が営業部門や工場の製造部門及び研究所と緊密な連携をとり、お客様の要望に直結した新製品開発を行っております。

紙パルプ事業及び新規分野の研究開発活動の項目は以下のとおりであります。

  (セグメント別では、紙パルプ事業の占める割合が大きいため、その他のセグメントについては省略しております。)

 

(1) 洋紙及び白板紙分野

洋紙分野では、カップ用途など紙器用途の開発、生産を積極的に行っており輸出向けに加えて国内向けの採用案件も増加しております。また新潟、紀州両工場の設備特性を活用した感熱用紙やタックシール紙等の加工原紙の開発にも注力し、国内外で新たに採用いただきました。今後も新規品種開発、並びにその要求特性に応じた設備対応を積極的に実施してまいります。

白板紙分野でも、印刷情報及び紙器用途に加え、食品一次容器向け等の拡充を図るべく開発を進めております。紙器用途で培った製品設計、生産技術を応用し、加工適性等で好評を得ております。白板紙としては、古紙入手難等課題はありますが、関東工場の立地を活かしつつ、持続可能な生産体制を構築し、安定供給と他社に負けない品質づくり、コストダウンに注力し、競争力強化に努めてまいります。

(2) 機能材分野

機能紙分野では、マイクロチップ向けチップキャリアテープ原紙、逆浸透膜(RO膜)支持体の品質改善及び新規開発に取り組むと共に、需要に応じた生産体制の構築を継続しております。また、濾過・分離分野においては、脱フッ素、生分解性のフィルタの開発を進めております。特殊紙分野では、金属合紙の品質改善と拡販を進め、また、環境に配慮した紙素材の開発として、脱プラスチック、減プラスチックを目標に食品向け包材・容器、透明紙、フック・ハンガー等、分野を問わず取り組んでまいります。

(3) 段ボール原紙分野

段ボール原紙分野では、製品品質の安定と供給体制を拡充すると共に、薄物原紙を拡充いたしました。新潟工場6号機の特性を生かし、中芯用途以外のニーズにもお応えできるように、製品開発を継続推進してまいります。

(4) 新規開発分野

研究所では、空気、水、脱プラスチック、生分解、脱フッ素等をキーワードとする環境面に配慮した新製品開発に取り組んでおります。特に注力している開発は、ULPA、HEPAに代表される国内屈指の高性能エアフィルタ濾材及び逆浸透膜支持体、脱プラスチック紙基材分野であります。フィルタ分野においては、低圧損高効率フィルタ、多層フィルタ、ノンフッ素フィルタ、生分解性フィルタ等、市場の変化や顧客ニーズを反映した開発に取り組んでおります。逆浸透膜支持体は、既存製品の市場競争力向上を進めるとともに高機能化を図った新たな製品の市場展開を進めております。脱プラスチック紙基材分野では、ポリエチレンラミネートを使用していない水系塗工液を塗布した紙基材「パンセ」の用途拡大を進めると共に、バリア性を付与した紙基材、リサイクル可能なクリアファイル向け透明紙、ノンフッ素耐油紙等、環境に配慮した製品の開発及び上市を進めております。今後は更なる機能性強化を視野に入れて、新規製品開発に注力してまいります。

商品開発室では、ナノセルロースやナノカーボンなどの先端素材の応用から、紙製のパッケージング材料の開発まで幅広い領域で活動しております。ナノカーボンを用いた電磁波ノイズ抑制シートは、産業用機器のノイズ対策で採用され、その効果が実証されております。従来品より幅広い周波数帯に対応しており、次世代通信機器、電子機器での評価が進んでおります。さらに、紙づくりの技術を応用した新規の電磁波吸収体も開発いたしました。軽量、耐熱、難燃でありながら幅広い周波数帯に対応し、例えば航空宇宙機器や近年浸透しつつある無線給電技術の安全・信頼性を高めることができます。紙製のパッケージング分野においては、ユーザーやコンバーターと協力して各種包材原紙の開発を進めており、食品用の軟包材やカップ・トレイなどとして採用される例も増えてまいりました。今後も引き続きユーザーとの接点を増やし、ユーザーにとってメリットのある紙の提案を進めてまいります。

当連結会計年度の当セグメントにおける研究開発費は791百万円であります。
 なお、パッケージング・紙加工事業における研究開発費は14百万円であり、パッケージング・紙加工事業等を含めた全セグメントの研究開発費は805百万円であります。