第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、永続的発展のため、ひたむきに人を大切にしたものづくりに努め、国際競争を勝ち抜く、強い企業創りを目指しております。

その実現のため、経営理念に“愛され信頼される企業に”を第一に掲げ、コンプライアンスに徹し、真摯で誠実な企業活動を旨として、品質第一主義と弛まざる技術革新で顧客満足を希求するとともに、地域社会との共存共栄を図ってまいります。さらに企業の社会的責任の視点に立って、環境と社会に貢献し、向上心あふれる働きがいのある会社づくりに励み、企業価値を高めてまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

① 2025年度までに、営業利益40億円、ROE5%の収益を確保します。

② 製造工程における化石燃料由来のCO₂排出量を2030年度までに2013年度比50%削減することを目標として掲げ、達成に向けて取り組んでまいります。

 

(3) 会社の経営戦略

当社グループは、2030年に目指す姿を「ビジョン2030」として掲げており、既存事業の発展・環境ビジネスの発展・イノベーションにより、森林資源の有効活用を通した循環型社会の構築と、持続可能な未来の実現に取り組みます。またカーボンニュートラル社会の実現に向けて、事業活動におけるCO₂排出量削減の新たな目標に向けた取り組みを進めています。

「ビジョン2030」の実現に向けて、「既存事業の構造転換」「森林資源を活用した環境投資・環境ビジネス推進」を柱とした「中期経営計画2025」の取り組みを進めています。

 

(4) 会社の対処すべき課題

当社グループを取り巻く環境は、人件費や物流費のさらなる上昇、継続する物価上昇、米国関税施策等の動向による国内・海外景気の下振れリスクなど厳しい環境が想定されるなか、国内紙需要については引き続き減少する見通しとなっております。

このような状況下、以下の諸施策に取り組んでまいります。

 

① 「中期経営計画2025」

2025年度は「中期経営計画2025」の最終年度であり、中期経営計画に掲げる収益目標「営業利益40億円、ROE5%以上」を継続的にクリアできる事業基盤の確立に取り組むとともに、さらなる企業価値向上に向けた新中期経営計画の検討を進めております。

最終年度となる2025年度は、以下項目を重点的に取り組んでまいります。

・家庭紙事業

2024年2月に営業運転を開始した家庭紙マシンは順調に稼働しております。今後も安定操業と効率改善を図り、収益に貢献してまいります。

・セルロース・ナノファイバー(以下「CNF」)事業

畜産・農業資材、樹脂・ゴム・再生プラスチック分野などの環境配慮型用途に重点を置き、中期的視野に立った販売活動を展開し、売上規模の拡大を図ってまいります。

・カーボンニュートラル

化石燃料使用量の削減、省エネ対策の実施、植林事業の推進によりCO₂の削減を推進します。

 

 

② 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組み

2025年1月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組み」を開示いたしました。当社の財務体質は2021年度以降、収益性・効率性が良化傾向にあり、業界平均以上の水準となっておりますが、PBRが1倍を下回っていることの課題に対し、収益力の強化、政策保有株式の縮減、キャッシュアロケーションの見直し等によるROEの向上と、積極的なIR関連情報の発信、株主還元のさらなる充実等によるPERの向上に努め、PBR改善の取り組みを進めてまいります。

 

③ 上場維持基準適合に向けた取り組み

当社は2025年3月31日基準日時点において、プライム市場上場維持基準の「流通株式時価総額」基準を充たしておらず、2026年3月末まで1年間の改善期間に入っております。プライム市場上場維持基準適合に向け、引き続き企業価値向上に取り組んでまいります。

 

④ サステナビリティの取り組み

当社グループは「ビジョン2030」に掲げた「既存事業の発展・環境ビジネスの発展・イノベーションにより、森林資源の有効活用を通じた循環型社会の構築と持続可能な未来を実現する」ために、サステナビリティ活動を推進しております。

 

a.気候変動対応

当社は、「ビジョン2030」において2030年度までの環境目標を定め、化石燃料由来CO₂削減の取り組みを進めております。さらに、2024年度にはGXリーグ*に参画し、2050年度までのカーボンニュートラル達成に向けたロードマップを策定し、省エネやボイラー燃料等の非化石燃料、低炭素燃料への転換等を推進しております。

*GXリーグとは、カーボンニュートラルの実現に向け、グリーントランスフォーメーション(GX)への挑戦を行う企業群が官・学と協働し、目標達成に向けて取り組む場のこと。

 

b.人権に関する取り組み

サプライチェーンにおける人権尊重の取り組みに向けて、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた人権方針を2025年3月に制定しました。本方針に基づき、当社グループが果たすべき責務を明確にし、人権尊重の取り組みをより実効的なものとするとともに、グループ従業員への周知教育を通じて人権意識の向上を図ってまいります。

 

c.人的資本への取り組み

当社は「人材育成に関する方針」「社内環境整備に関する方針」を定めるとともに、管理職に占める女性労働者・中途採用者の合計割合および男女育児休業取得率に関する指標と目標を定め、取り組みを進めております。2024年4月には定年を60歳から65歳まで引き上げる定年延長制度を導入するなど、多様な人材の確保と教育や環境の整備に努めております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1. 気候変動

 (1) ガバナンス

当社グループでは気候変動対応を重要課題の一つとして捉えており、気候変動対応を含む環境全般を管掌する環境管理担当取締役の下、環境管理統括部を事務局とし組織横断的なメンバーで構成される気候変動対応推進グループを2022年6月に設置しました。環境管理担当取締役は気候変動対応の責任者として、グループ会社を含めた全社の気候関連問題を管理しています。重要事項は常務会及び取締役会へ付議・報告し、取締役会による全体的な監督を受けています。

 


 

 

 (2) 気候変動に関する戦略

当社グループは、気候変動に関する複数のシナリオを用いて当社の戦略に与えるリスクと機会の影響を分析し、気候関連リスク・機会による事業への影響を評価し、その結果を気候変動戦略として事業戦略に反映することで、気候関連リスクへの対応を進め、また気候関連の機会実現を図っています。当社グループにおける事業戦略への影響または財務的影響をもとに算出した重要なリスク・機会項目は以下のとおりです。

 


 

 

 (3) リスク管理

気候変動対応推進グループ内の各施設・部門において、気候関連リスクの識別、評価を行います。事務局である環境管理統括部がリスクの管理と低減を指示・推進し、取り組み状況を環境管理担当取締役へ報告します。重要なリスクは環境保全委員会及び環境監査委員会に報告されます。環境管理担当取締役は常務会へ年1回以上報告を行い、結果は全社のリスク・マネジメントプロセスへ統合されます。事業存続に大きく関わる重要なリスクは取締役会に付議・報告し対処していきます。

 


 

 

 (4) 指標及び目標

カーボンニュートラル社会の実現に向け、気候関連リスク・機会を評価する指標としてGHG(温室効果ガス)Scope1,2排出量の削減を実施すべく製造工程における化石燃料由来のCO₂排出量を2030年度までに2013年度比50%削減する目標を中期経営計画にて掲げています。2024年度にGXリーグに参画し、2050年度までのカーボンニュートラル宣言をしました。2025年度からは、GHG排出量のScope1,2については2050年ネットゼロ、Scope3についてはサプライヤーと協力してGHG排出量の削減を目標として設定し、取組を進めてまいります。

 

化石燃料由来のCO₂排出量

2013年度
基準排出量

[千t-CO₂]

2023年度
実績排出量

[千t-CO₂]

削減割合
[%]

2030年度
目標排出量

[千t-CO₂]

削減割合
[%]

411

260

36.7

205

50.0

 

※化石燃料由来のCO₂排出量は、中越パルプ工業株式会社単体の排出量です。

 

GHG排出量

 

2022年度

2023年度

目標排出量

Scope1排出量

[千t-CO₂]

473

414

2050年ネットゼロ

Scope2排出量

[千t-CO₂]

59

52

 

※Scope1,2は中越パルプ工業グループ全体の排出量です。

 

 

2. 人的資本

 (1) 人的資本の取り組み

当社では経営理念として「愛され信頼される企業に」「環境と社会に貢献する企業に」「向上心あふれる働きがいのある会社に」を示し、永続的に発展していくために、ひたむきに人を大切にしたものづくりに努め、強い企業づくりを目指しております。

人材は創造性を発揮し企業価値を高める源泉であり、当社のビジョン2030で示した「既存事業の発展・環境ビジネスの発展・イノベーションにより、森林資源の有効活用を通した循環型社会の構築と持続可能な未来を実現する」ために、人材の育成と多様な人材の確保を目的に教育や環境の整備を進めております。

 

 ①人材育成に関する方針

「人・もの・心」を大切にする人材育成を行い、森林資源の有効利用を通じた循環型社会を構築し、持続可能な未来を実現してまいります。いかなる情勢の変化にも対応し、リスクを吸収できる創造力豊かな人材を育てるため人的資本への投資を行っております。

具体的には、採用した人材に職位・職能毎に必要なスキル・知識を身につけさせる研修制度だけでなく、担当職場での収益改善提案等の論文研修、従業員の自己啓発のための様々な通信教育コースの提供と受講料の一部負担、会社が選定した資格の取得者へ報奨金の支給も行っております。

 

 ②社内環境整備

継続的に企業価値を向上するためには、多様な人材を確保すること、従業員の個性と能力を十分に発揮できる職場環境を整えていくことが重要な課題と捉えております。

人材の多様性により、様々な視点やアイデアが生まれ、業務の改善や新たな収益基盤創造の可能性が高まると考えております。

労働者不足の対応の観点からも、性別や年齢などに関係なく様々な人材が活躍できる環境や仕組みを整備し、人材が意欲をもって活躍できる生き生きとした組織の構築を進めてまいります。

優秀な人材を確保するため、新卒を対象とした定期採用に加え、即戦力として期待できる中途採用も積極的に行っております。

従業員一人ひとりが働きがいを持って能力を十分に発揮できる様、年に一度、自己申告表(自己評価・希望職場や勤務地・家族を含めた健康状態・今後1年間の目標・会社への要望等を記載)を上司に提出し、上司は部下の1年間の評価表を作成・提示し、部下との1対1での面接で状況の把握と今後1年の目標のすり合わせ等を実施し、自律的なキャリア構築の支援も行っております。

 

  a.安全について

企業価値の向上の大前提には従業員が健やかに働く環境の形成があります。

無事故・無災害を目標に一人ひとりが強い意識を持ち、築き育む安全職場を目指しております。

毎月、安全衛生に関する会議の開催と職場パトロールを労使合同で実施し、労働災害の防止と健康の保持増進を図るとともに快適な職場環境の形成を促進しております。

近年は安全性の確保を目的とした設備改善投資を進めるとともに作業の軽減を図っております。

 

 

  b.コンプライアンスについて

当社グループの行動指針として「企業理念」および「中越パルプ工業グループ企業行動憲章」を定め、全役職員に周知を図るとともに、コンプライアンスがあらゆる企業活動の前提条件であることを明文化しております。

コンプライアンスミーティングをグループ会社含め各職場で毎月行い、ハラスメントは勿論、社会問題になっている案件の他、リスクマネジメント方針に則ったテーマについても討議しております。

最近のテーマとして、2023年度は各職場でBCP手順・ツール類の不備を検証のうえ訓練を実施し、2024年度はメンタルヘルスを重点テーマとし個人の幸福感や生産性の向上に取り組みました。

コンプライアンスミーティングへの参加率はグループ全体で100%を目標に取り組んでおります。

また、討議内容・問題点と改善策を内部統制委員が取り纏めた上で内部監査室に報告し、内部監査室長は必要に応じ内部統制委員会で報告するとともに水平展開を図ることで、風通しの良い職場づくりを行っております。

さらに、内部通報制度を規定し、社内外の通報窓口の設置と通報者や相談者の保護を徹底、不正行為・法令違反行為・その他経営に重大な影響を及ぼす恐れのある行為の早期発見と是正を図り、コンプライアンス経営の強化を図っております。

 

  c.健康増進について

当社は2008年から社長自らが「健康企業中パ」を宣言し、会社・労働組合・健康保険組合が三位一体となって「健康経営」を推進しております。

健康診断の受診率は、再検査の2次検診も含め100%を目標と定め、継続して実現しております。

健康診断でメタボリック症候群と判断された従業員には特定健康指導を積極的に実施し、従業員の健康増進を図っております。

毎年、春の健康診断に合わせてストレスチェックを実施し、分析結果は個人が特定されないように各職場の上長にフィードバックされ、健康リスク指数が全国平均を上回る場合は低減させる対策を計画・実施しており、健康リスク指数は安定しております。

また、高ストレスと判定された社員本人から申し出があれば産業医の面談を実施しております。

 

  d.労働時間について

当社では組合員の1か月の時間外労働を法定時間(45時間)を下回る35時間以下とする労使協定を取り交わし、過重労働の防止に努めております。

また、コアタイムの無いフレックスタイム制度を導入し、柔軟な働き方を促進しております。

更に、毎月全従業員の時間外労働を確認し、長時間勤務者に対し産業医との個別面談を設定し、産業医が面談により把握した健康状態に懸念されることがあれば会社側に改善策を含めて報告を行い、会社側は産業医のアドバイスに基づき早急に対処するなど、会社と産業医が連携し従業員の健康支援を行っております。

 

  e.ワークライフバランスについて

ワークライフバランスの充実のため、コアタイムの無いフレックスタイム制の導入(操業部門を除く常昼管理部門が対象)とともに、年次有給休暇の取得を奨励し、その取得率は80%程度で推移しております。

年休取得の推進として、ゴールデンウィーク、年末年始などの大型連休や飛び石連休の合間の平日の一部を年休奨励日として設定し、長期の連休取得を可能にすることにより、心身ともにリフレッシュし労働生産性の向上を図っております。

また、リフレッシュ休暇制度を設け、勤続年数に応じ休暇の付与と金額の補助を行い、労をねぎらうと共に更なる勤労意欲の醸成を図っております。

 

 

  f.女性活躍の推進について

当社の女性従業員は、家族的な企業風土により、勤続年数は長く、育児休業取得率は100%で推移し、長期的なキャリアを形成しております。

直近5年以内に採用した総合職の約3割を女性が占めており、管理者としての育成を行い、本人の能力や適性を評価した上で、管理職として登用を進めてまいります。

男女間の賃金の公正性・公平性は、各個人の能力・資質に応じた平等性の観点から評価しております。

 

  g.中途採用について

採用環境は、労働人口の減少、景気回復に伴う求人の大幅な拡大により、新卒採用の厳しさが年々増しております。

この環境下でも人材の流動性が一定量あることから、操業維持のために中途採用を進めていくことが重要となっております。

また、中途採用者には、前職で培ったスキルやノウハウを生かし、新しい視点で当社の組織活性化・生産性向上などへの貢献を期待しております。

 

  h.高齢者雇用について

当社は2013年に再雇用制度を導入し、厚生年金受給開始年齢まで本人が希望すれば雇用を継続しておりましたが、2024年4月から65歳までの定年延長制度を導入するとともに再雇用時短勤務制度を制定致しました。

労働人口が減少する中、定年を延長することで働く意欲のある高齢者の雇用条件を改善し、組織パフォーマンスの維持を図っております。

再雇用時短勤務制度は、60歳を機にマイペースで仕事を継続したい人に向けて、働き方を自由に設計できる制度として制定致しました。

 

 (2) 指標及び目標

人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針に係る指標について、連結グループに属する全ての会社での記載が困難なため、当社における指標と目標および実績について記載いたします。

 

指標

目標

実績
(当連結会計年度)

補足説明

管理職に占める
女性労働者・中途採用者の割合

2033年3月まで25

16.5%

多様性を進める具体的な目標として、2033年3月までに管理職に占める女性と中途採用の合計割合を25%以上としております。

女性育児休業取得率

2026年3月まで100

100.0%

女性の育児休業取得率100%を維持しつつ、男性の取得率100%を目標といたします。男性の取得率を上げるため、子の出生が明らかになった際には、必ず当該社員に制度の内容を伝え取得を促しております。

男性育児休業取得率

2026年3月まで100

80.0%

育児休業取得率

2026年3月まで100

86.7%

労働者の男女の賃金差異

70.1%

交替手当や深夜勤務手当のある3交替勤務職場に女性を配属していないこと、以前は女性の総合職採用が極端に少なく女性管理職が少数であることにより、男性比で賃金が低くなっております。

コンプライアンスミーティング参加率

100

99.0%

育児・介護休暇取得者および休職者を除く参加率。

健康診断および2次検診受診率

100

100.0%

会社として従業員の健康を重視し、2次検診を義務化しております。

 

 

 

3. 人権の取り組み

当社グループでは、「中越パルプ工業グループ企業行動憲章」、「木材原料の調達方針」、「社会・健康・安全方針書」に人権尊重に関する基本指針を掲げ、労働や人権に関する取組を行ってまいりました。

2025年3月、サプライチェーンにおける人権尊重の取組について、当社グループが果たすべき責務を明確にするため、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、新たに「中越パルプ工業グループ人権方針」を制定しました。

人権デューディリジェンスの一環として下記取組を毎年継続して実施してまいります。

  ①当社グループの人権方針をすべてのサプライヤーへ案内

  ②サプライヤーアンケートを実施するサプライヤーの選定と質問項目の検討

  ③サプライヤーアンケートの送付と回答の回収

  ④アンケート結果の集計を行い、サプライヤーの人権侵害リスクを把握

  ⑤人権侵害リスクが把握されたサプライヤーに対する教育・改善指導の実施

  ⑥取締役会で人権尊重の取組状況を報告

  ⑦人権尊重の取組の進捗状況について、ウェブサイト等での開示

 

当社グループの全従業員が、「中越パルプ工業グループ人権方針」に基づき、さらに人権尊重に取り組んでいくことで、企業の社会的責任を果たし、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

① 国内需要及び市況の変動リスク

当社グループの売上高の8割を占める紙・パルプ製造事業は概ね内需型産業であり、国内景気の影響を大きく受けます。国内景気の浮沈による国内需要の動向や市況価格の変動により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。紙の国内需要については既に減少傾向にあり、当該リスクへの対応を喫緊の課題として認識して、「中期経営計画2025」で既存事業の構造転換を計画し、家庭紙分野への新規参入やパルプの増産、販売強化に取り組んでおります。

② 原材料購入価格の変動リスク

当社グループはチップ、重油、古紙、薬品などの諸原燃材料を購入しておりますが、それぞれの国際市況、国内市況の変動により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 地球環境に対するリスク

当社グループは、気候変動対策を目的に、化石燃料使用の規制強化やそれに伴うコストの増加、紙をつくる上で、重要な原材料である木材の持続可能ではない調達の規制強化により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ 地域環境汚染に対するリスク

当社グループは、環境規制遵守ができないことによる環境保護に関する風評リスク(地域社会との関係悪化に伴う反対運動の発生など)により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 為替レートの変動リスク

当社グループは輸出入取引をしており、このため当該国との取引通貨が為替変動することにより、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 金利の変動リスク

当社グループは、従来よりグループファイナンスによる資金の効率化に取り組んでおりますが、今後の金利の変動によっては経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 災害リスク

天変地異などの自然災害、テロなどの人的災害などによって、当社グループの生産設備に多大な被害を被ることにより、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応としてBCP(事業継続計画)を策定しております。

⑧ 感染症に関するリスク

新型コロナウイルス感染症に代表される未知の感染症が流行した場合には、感染症拡大による需要減少、当社グループ従業員が感染した場合や、政府・地域行政機関からの要請等により生産活動を一時的に停止した場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、流行期における基本的な感染対策の推奨等、感染拡大防止に取り組みながら事業活動を継続しております。

⑨ 訴訟リスク

当社グループの事業活動の遂行に当たっては、様々な法規制の適用下にあって、それらによる訴訟等のリスクにさらされる可能性があり、その結果、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑩ 偶発債務

当社グループは、上記以外の項目に関しても偶発債務に起因する損失が発生するリスクがあり、その結果、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当社グループを取り巻く経済環境は、インバウンド需要の増加や雇用・所得環境の改善等を背景として、景気は緩やかな回復基調を辿りました。一方で、中国・欧州経済の停滞、不安定な為替変動、ロシア・ウクライナや中東の情勢、米国の関税政策の行方など、先行きは不透明な状況が続いております。

このような状況のなか当社グループは、人口減少やデジタル化進行などの社会的構造要因によるグラフィック用紙の需要減少に対応するため、新設した家庭紙マシンのフル生産および効率向上に取り組むとともに、既存マシンの安定操業、効率生産による原価低減に取り組み、収益確保に努めました。

当期の経営成績につきましては、国内スポット案件の受注、輸出拡販、衛生用紙販売に積極的に取り組んだことにより増収となりましたが、原燃料価格や物流費の上昇、修繕費等の固定費高によるコストアップを補いきれず減益となりました。

また、当社連結子会社の中越エコプロダクツ株式会社の2025年6月末を目途とした解散決議に伴い、同社が保有する固定資産の減損損失2,726百万円を計上いたしました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は111,009百万円(前年同期比3.0%増収)となり、営業利益は4,843百万円(前年同期比21.5%減益)、経常利益は5,114百万円(前年同期比25.0%減益)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,761百万円(前年同期比52.4%減益)となりました。

 

事業の種類別セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

 

(紙・パルプ製造事業)

◎ 新聞用紙

新聞社における夕刊の廃止から発行部数が減少し、広告出稿減等により頁数も伸び悩むなど全体的な需要減に歯止めがかからず、数量・金額ともに前期を下回りました。

 

◎ 印刷用紙

国内販売につきましては、デジタル化や出版部門の不振等を背景に販売数量が伸び悩むなか、スポット案件を積極的に取り込んだこと、輸出につきましては、アジア地域を中心に拡販に努めた結果、数量・金額ともに前期を上回りました。

 

◎ 包装用紙

国内販売につきましては、ファストフード需要が堅調に推移し、通信販売における段ボールからの代替需要があったこと、輸出につきましては、中東情勢悪化に伴う紅海問題での欧州品値上がりを受けた当社品への切替え等があった結果、数量・金額ともに前期を上回りました。

 

◎ 特殊紙・板紙及び加工品等

壁紙は、住宅着工件数の減少に伴い数量は前期を下回りました。板紙及び加工品は、顧客に在庫積み増しの動きがあったことにより数量は前期を上回りました。また、衛生用紙の販売を本格的に開始したことによる数量増もあり、金額は前期を上回りました。

 

 

◎ パルプ

数量は前期を下回りましたが、円安や市況回復等により金額は前期を上回りました。

これらにより、当事業の業績は以下のとおりとなりました。

 

連結売上高   101,407百万円(前年同期比   4.7%増収)

連結営業利益    3,663百万円(前年同期比  33.5%減益)

 

(発電事業)

売電単価の下落に伴い一部の発電設備を停止したことにより売上高は減少しましたが、燃料価格の上昇を固定費等の原価低減でカバーし増益となりました。

これらにより、当事業の業績は以下のとおりとなりました。

 

連結売上高   5,622百万円(前年同期比 20.1%減収

連結営業利益    547百万円(前年同期比 33.3%増

 

(その他)

紙断裁選別包装・紙運送事業の取扱量が増加しましたが、建設関連事業の受注が減少したことなどにより売上高は前期並みでした。利益については、紙・パルプ製品取扱量の増加やコスト削減の取り組みなどにより増益となりました。

これらにより、当事業の業績は以下のとおりとなりました。

 

連結売上高   17,051百万円(前年同期比   0.1%増収)

連結営業利益    544百万円(前年同期比  95.0%増益

 

財政状態は、次のとおりであります。

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,035百万円減少し、121,888百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ7,375百万円減少し、65,946百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ340百万円増加し、55,941百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,665百万円減少し、9,005百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は10,360百万円(前連結会計年度比23.6%減少)となりました。

これは主として、税金等調整前当期純利益1,840百万円、減価償却費6,165百万円、減損損失2,726百万円によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は6,013百万円(前連結会計年度比23.9%減少)となりました。

これは主として、有形固定資産の取得による支出6,356百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は6,012百万円(前連結会計年度比93.8%増加)となりました。

これは主として、長期借入による収入1,550百万円、長期借入金の返済による支出6,087百万円、配当金の支払額838百万円によるものです。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称等

数量

前年同期比(%)

紙・パルプ製造事業

610,850 t

104.6

パルプ

741,548 t

104.0

 

(注) パルプは未晒総生産量であり自家消費量を含んでおります。

 

b. 受注実績

当社グループは、大部分が市況を勘案した見込み生産を行っており、グループ全体の受注状況を把握することは困難であるため、該当事項については記載を省略しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称等

金額(百万円)

前年同期比(%)

紙・パルプ製造事業

88,426

104.5

パルプ

12,981

106.1

101,407

104.7

発電事業

 

5,622

79.9

その他

3,979

100.5

合計

111,009

103.0

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

新生紙パルプ商事㈱

19,862

18.4

19,860

17.9

国際紙パルプ商事㈱

16,680

15.5

16,885

15.2

日本紙パルプ商事㈱

16,355

15.2

16,686

15.0

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績等は、国内スポット案件の受注、輸出拡販、衛生用紙販売に積極的に取り組んだことにより、売上高は111,009百万円と前期に比べ3,183百万円の増収(前年同期比3.0%増)となりました。収益面では、燃料価格や物流費の上昇、修繕費等の固定費高によるコストアップを補いきれず、営業利益4,843百万円(前年同期比21.5%減)、経常利益5,114百万円(前年同期比25.0%減)となりました。また、当社連結子会社の中越エコプロダクツ株式会社の2025年6月末を目途とした解散決議に伴い、同社が保有する固定資産の減損損失2,726百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は1,761百万円(前年同期比52.4%減)となりました。

セグメント別の売上高については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

④ 経営戦略の現状と見通し

2026年3月期の国内経済につきましては、人件費や物流費のさらなる上昇、継続する物価上昇、米国関税施策等の動向による国内・海外景気の下振れリスクなど厳しい環境が想定されるなか、国内紙需要については引き続き減少する見通しとなっております。

2025年度は『中期経営計画2025』の最終年度であり、総点検として、新設した家庭紙マシンの安定操業と効率改善、nanoforest®(CNF:セルロースナノファイバー)事業の売上規模拡大、化石燃料使用量の削減や省エネ対策の実施、植林事業推進によるCO₂削減に注力し、現中期経営計画に掲げる収益目標「営業利益40億円、ROE5%以上」を継続的にクリアできる事業基盤の確立に取り組むとともに、さらなる企業価値向上に向けた新中期経営計画の検討を進めてまいります。

 

 

⑤ 財政状態及びキャッシュ・フローの分析

当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べ5.5%減少し、121,888百万円となりました。これは主として、現金及び預金が1,665百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が2,367百万円、有形固定資産が3,257百万円減少したことによります。

負債につきましては、前連結会計年度末に比べ10.1%減少し、65,946百万円となりました。これは主として、金融機関からの借入金が4,538百万円、支払手形及び買掛金が716百万円減少したことによります。

純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ0.6%増加し、55,941百万円となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純利益1,761百万円、配当金の支払841百万円、自己株式の取得604百万円などにより利益剰余金が増加したことによります。また自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ3.6ポイント増加し46.7%となりました。

当社グループのキャッシュ・フローにつきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

(資本の財源及び資金の流動性についての分析)

当社グループの資金計画は、設備投資資金については営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主な財源としておりますが、銀行借入やコミットメントラインの利用などによって流動性を保持しております。

また、当社グループはCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、資金融通を行うことで資金効率を高めております。

当社グループの当連結会計年度末の資金は、前連結会計年度末に比べ1,665百万円減少し、9,005百万円となりました。

なお、当連結会計年度末の金融機関からの借入金の内訳は以下のとおりであります。

                                           (単位:百万円)

 

合計

 返済
 1年以内

返済
1年超

短期借入金

18,828

18,828

長期借入金

18,269

9,774

8,494

合計

37,098

28,603

8,494

 

 

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について

当社グループは、常に市場ニーズに密着し、創造的で信頼性の高い技術をもって、人と環境にやさしい「紙」の開発と安定した製品の供給により、経済・社会・文化の発展に寄与することを社会的使命と認識し「紙」の文化の創造に果敢に挑戦しております。

そして、「株主重視」「顧客重視」に心がけ、当社グループの総合力に対する信頼性と収益性の確保・向上を目指し、株主・顧客・地域社会・社員・企業の共存共栄を図るとともに、社会に対する貢献を重点に企業活動を行ってまいります。

また、グローバル化に対応し、迅速な情報開示に努め、透明な経営姿勢を保ち、加えて効率的な連結経営を行うことで、国際競争力の強化を図り、当社グループの存在価値を高めてまいります。

 

 

5 【重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

近年、気候変動への対応や資源循環の推進、脱炭素社会の実現といったグローバルな課題への関心が高まっており、自然由来の原料を取り扱う紙・パルプ産業に求められる役割も大きく変化してきています。こうした社会情勢に応えるべく、当社グループでは、開発本部、生産本部、工場技術研究部門及び連結子会社技術研究部門といった社内での連携に加え、大学、研究機関、公設試、他業種の企業などの社外機関との連携も取り入れながら、社会に貢献し得る新素材・新製品の創製に努め、企業としての社会的責任を果たすことをコンセプトに、セルロースナノファイバー(CNF)などのバイオマス由来の機能性素材や脱プラスチックを実現する環境配慮型製品の開発など、SDGs達成に資する新たな価値創造に挑戦しています。

当連結会計年度の研究開発費は370百万円でありましたが、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っておりません。

具体的な研究開発活動は次のとおりであります。

 

1.紙製品への展開

(1) 環境配慮製品の開発

  ・非フッ素系耐油紙の開発

(2) 現行品の品質改善

  ・家庭紙の品質改善

(3) 新規市場の開拓

  ・低透気クラフト紙の開発

  ・コミック用紙や新規筆記用紙の開発

 

2.天然資源の高度活用技術開発への展開

(1) セルロースナノファイバー(ナノフォレスト)の利用拡大

  ・ナノ化及び樹脂化製造技術の更なる向上と、製造コスト削減

  ・畜産、農業、化粧品分野での利用拡大と拡販推進

  ・樹脂、ゴム分野への展開加速

  ・高機能CNFのサンプル提供拡大と製造技術の確立

(2) 新分野へのパルプの利用拡大

 

3.脱プラスチックへの取組

(1) 紙によるプラスチック代替技術の開発

  ・プラスチック素材の性能を持つ紙の開発

  ・プラスチック材料を紙材料に置換

(2) プラスチック素材への紙やパルプ、CNF配合技術の開発

(3) プラスチックリサイクルへのCNF活用技術の開発