文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 企業集団の経営戦略
当社は、1909年の創業以来、わが国における段ボール産業のパイオニアとしての誇りと、業界のトップメーカーとしての地位を保ちながら、広くユーザーを開拓し、技術力を高め、新しい需要を創造し続けてきました。
現在、当社グループの事業領域は、板紙から段ボールまでの強固な一貫生産体制に、紙器や軟包装、重包装が加わり、国内外で多様なパッケージング・ソリューションを生み出しております。当社グループは、高い倫理観と公正な経営姿勢をもって経営資源を効率的に活用のうえ、収益力の向上と企業価値の極大化に努め、株主・取引先・従業員・地域社会などさまざまなステークホルダーとの良好な関係を構築し、あわせて適正かつ魅力ある還元を行うことにより広く社会に貢献していきたいと考えております。
同時に、環境および社会に配慮した企業活動を通じて、事業の持続可能性を高めていくサステナビリティ経営についても、全社的な取組みを行っております。
当社グループは、「製紙」「段ボール」「紙器」「軟包装」「重包装」「海外」の6つのコア事業を中心に多彩な事業を展開し、包装全般にわたり幅広くソリューションを提供してきました。今後も、たゆまぬ意識改革とイノベーションを通じて、産業全般に積極的に働きかける提案型の企業集団「ゼネラル・パッケージング・インダストリー」=GPIレンゴーを目指してまいります。また、当社グループは、コア事業および周辺事業において、ユーザーオリエンテッド(顧客志向)を基本方針とし、より高い品質とサービスを提供することによる顧客満足度の向上に努め、持続的な成長を図ってまいります。
製紙事業については、需要に見合った供給体制の維持に努めるとともに、生産性の向上、コスト削減、新製品の開発に、継続的に取り組んでおります。
段ボール事業については、グループ全体での営業力の強化、最適な生産体制の構築を進めております。また、お客様のニーズにお応えする「提案型営業」へ積極的に取り組み、競争力向上に努めております。
紙器事業については、求められる機能に対応する最適なパッケージを提供するとともに、これまで蓄積してきた知識、技術を集結して、新時代のパッケージづくりを追求してまいります。
軟包装事業については、当社子会社である朋和産業株式会社およびアールエム東セロ株式会社(2024年4月にサン・トックス株式会社と三井化学東セロ株式会社のパッケージソリューション事業を統合し、社名変更)を中心に展開しております。お客様の要望にお応えできる高機能な製品を、最新の設備で提供し、当社グループの軟包装事業のさらなる競争力と収益基盤の強化を図ってまいります。
重包装事業については、当社子会社である日本マタイ株式会社を中心に展開しております。当社グループにおける相乗効果を追求すると同時に、お客様の商品の価値を高める重包装製品を提供し続けるために、社会の変化に対応する技術革新に取り組んでまいります。
海外事業については、今後の成長分野として事業の拡大を図ると同時に、「選択と集中」による経営資源の有効活用を目指した施策にも、積極的に取り組んでまいります。中国・東南アジアでの事業展開を強化するとともに、当社グループが近年拠点を拡充しているインド、ヨーロッパおよび北米等の地域についても、トライウォールグループを通じて新しい展開を推進してまいります。
当社グループは、各コア事業と周辺事業の総力を結集し、お客様の包装に関わるプロセス全体に対して、最適なソリューションを提供することにより、企業価値の向上に取り組んでまいります。
また、環境負荷の低減、社会貢献活動への取組みといった、企業が果たすべき社会的責任についても積極的に遂行し、さまざまなステークホルダーの信用と信頼に足る企業グループとなるべく、鋭意努力してまいります。
以上の経営戦略を踏まえて、当社は中期の経営指針として、2026年3月期から創業120周年にあたる2030年3月期までの5カ年を対象期間とするレンゴーグループ中期ビジョン「Vision120(ビジョンイチニーマル)」を2025年5月に公表しました。Vision120においては、「人本主義(人間中心主義)」および「Less is more.」を引き続き企業経営の基礎に据え、これまで着実に築き上げてきた事業規模を活かして、業容の質的向上を図ってまいります。
当社グループが2030年3月期に目標とすべき重要な経営指標は次のとおりであります。
・売上高 :1兆2,000億円
・経常利益 :720億円
・ROE(自己資本利益率) :8.5%
・D/Eレシオ :0.7倍
なお、当連結会計年度においては、売上高993,251百万円、経常利益39,178百万円、ROE 6.5%、D/Eレシオ 1.0倍であります。
「Vision120」の詳細につきましては、当社ウェブサイトで開示しております。
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後のわが国経済は、雇用・所得環境の改善や各種の政策効果が緩やかな回復を支えることが期待される一方で、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが高まっております。加えて、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響なども景気を下押しするリスクとなっております。
このような状況のもと、揺るぎない経営基盤を構築するために、以下の課題に対し、グループ全体で取り組んでいく考えであります。
① 製品の適正価格の維持
当社グループは、板紙、段ボール、紙器、軟包装、重包装など、それぞれの製品において、継続的なコスト削減努力や製品の品質向上、安定供給の取組みと同時に、需要に見合った生産および設備能力の実現を目指し、再生産可能な適正価格水準の維持に尽力してまいります。
② 環境問題への取組みの強化
当社グループは、地球環境の保全に配慮した経営を実践することが、企業の持続的発展には不可欠であるという認識に立ち、全力をあげて環境保全活動に継続的に取り組んでまいります。
また、環境負荷の小さい製品の研究・開発および設計に努め、環境配慮製品を提案・推進してまいります。
③ コスト競争力の強化
製造コストおよび物流コストの低減や生産性の向上については、産業界全般にわたる課題でもある全要素生産性(TFP:Total Factor Productivity)改善の観点を踏まえ、従来からの取組みに加え、新たな発想で諸問題を創造的に解決するためのプロジェクトチームを必要に応じ発足させ、活動しております。
④ グループ経営の強化
コア事業、その他周辺事業ともに、当社各事業部門を軸とし、グループ各社との連携強化へ向けての取組みを加速してまいります。その一環として、「グループ経営会議」と、その分科会である「営業戦略部会」および「財務戦略部会」を設置し、情報と戦略の共有を図り、グループ全体の業容の拡大とともに、財務体質の改善に取り組んでまいります。
⑤ 海外事業の拡大と収益向上
今後の成長に向けた原動力として、新たな海外への事業展開を検討してまいります。また、既存の海外事業においては、これまで培ってきた国内外でのネットワークの有効活用による日系企業、多国籍企業との取引拡大、および現地化を推進するとともに、「選択と集中」をキーワードとして、経営資源の配分を見直し、収益の向上を図ってまいります。あわせて、グローバルなフィールドに対応した人材育成に取り組んでまいります。
⑥ DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進
当社グループは、最新のデジタル技術を活用し、製造・物流・営業・管理の各方面で、業務の効率化、新たな付加価値の創造、働き方改革への対応を進めてまいります。代表取締役社長を委員長とする「DX推進検討委員会」を設置し、全社ビジネスの各フェーズのデジタル化を俯瞰的、横断的に検討し事業プロセスの進化を図ります。同時に、情報セキュリティ対策の強化やDX人材育成にも取り組んでまいります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティについてのガバナンス
当社グループは、気候変動などの地球環境問題、人権の尊重、従業員の健康・安全、公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しており、これらの課題に積極的に取り組んでおります。
あわせて、経営品質の向上と将来のリスクの低減あるいは回避などを目的に、代表取締役会長を委員長とするCSR委員会を設置し、コンプライアンス、環境、災害、品質、情報等に係るリスク管理については、各担当部門およびCSR委員会の下部組織である倫理、環境、安全衛生、CS(顧客満足)、広報、情報セキュリティの6つの委員会が協力して、社内規程の制定、マニュアルの作成等を行うとともに、グループ全体の状況の監視を行っております。
取締役会は、これらの取組み状況について、各部門を管掌または担当する取締役および各委員会の委員長から報告を受けるとともに、必要に応じて改善策等を審議、決定しております。
コーポレートガバナンス体制図(2025年6月26日)

※上記の図表は、有価証券報告書提出日現在の状況を表示しております。
当社は、2025年6月27日開催予定の第157回定時株主総会の議案(決議事項)として「取締役10名選任の件」および「監査役1名選任の件」を提案しておりますが、当該議案が承認可決された場合の状況は上記と同様であります。
(2) マテリアリティ(重要課題)とその取組
当社は、当社グループが取り組む重要課題をマテリアリティとして特定し、ステークホルダーに対して当社の戦略とその重要性を明確に伝えるため、2023年6月にその内容を開示しました。
さらに、変化する経営環境や社会的要請に対応するため、2025年3月にマテリアリティの改定を実施しました。
改定版では、当社グループのマテリアリティを「パッケージプロバイダー」としての新たな価値創出、地球環境との共生、人を中心におく経営、持続的成長に向けた経営基盤の強化の4つとし、これらの実現に向けた14項目の取組みテーマと中期目標を設定しました。
詳細については当社ウェブサイト等に開示しております。
レンゴーグループのマテリアリティ(重要課題)
(3) 環境への取組
① 2050年に向けての環境の取組
当社グループは2021年、優先的に取組むべき環境に関わる6つのマテリアリティを特定し、取組みを推進してきました。その後、環境課題の多様化やステークホルダーの期待など外部環境の変化と、当社グループの事業領域拡大を踏まえて、2025年3月にマテリアリティの見直しを行い、あわせて2025年4月、課題解決に向けた長期・中期の環境目標を改定しました。当社グループは、地球環境とともに生きる社会の実現に向けて、「気候変動」、「循環経済」、「自然資本」への対応を取組みの柱とし、新たな目標達成に向けて取組みを進めてまいります。
詳細については当社ウェブサイト等に開示しております。
[長期目標] レンゴーグループ環境アクション2050(2025年4月改定)
[中期目標] エコチャレンジ2030(2025年4月改定)
② 温室効果ガス排出量の削減
最も優先すべき課題である気候変動への対応については、2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを掲げ、2030年度までに国内における温室効果ガス排出量(*)を2013年度比で46%削減することを目指して取組みを進めております。2024年度は2013年度比で14.0%の削減となりました。2025年度には、当社金津工場で石炭からLNGへの燃料転換を実施するなど、2030年度の目標達成に向けて、徹底した省エネルギー化とともに、石炭・重油ボイラの燃料転換、バイオマスボイラの新設、太陽光発電設備などの再生可能エネルギーの導入促進に取り組んでまいります。
(*)「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく調整後温室効果ガス排出量

③ TCFD提言への取組(気候変動への対応)
当社グループは、気候変動によるリスクおよび機会に関連する影響評価、対応策の立案と推進に向け、2021年12月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しております。これまでに開示してきた板紙・紙加工関連事業および軟包装・重包装関連事業におけるリスクおよび機会の評価結果に加え、環境委員会の下で行っている温室効果ガス排出削減に向けた活動実績を追加することで開示の充実を図りました。その詳細な結果を含む直近の情報を当社ウェブサイト等に開示しております。
[ガバナンス]
経営品質の向上と将来のリスクの低減あるいは回避等を目的に、代表取締役会長を委員長とするCSR委員会の下部組織として環境経営推進部の責任者を委員長とする環境委員会を設置しております。環境委員会の開催頻度は年4回で、CSR委員会は議事の報告を受けております。CSR委員会に報告される内容は、案件の重要性や緊急度に応じ、適宜取締役会にも連携されており、環境経営に対する監視と指導が有効に働く体制としております。
環境委員会の下部組織である「脱炭素ワーキンググループ(以下、「脱炭素WG」という。)」「グループ環境活動会議」では、温室効果ガス排出削減に関する情報収集や当社各部門およびグループ全体の活動計画・進捗状況を管理しております。
活動実績
[リスク管理]
当社は重要な環境側面ならびに環境法規制等を考慮の上、環境委員会での審議を経て、環境経営の推進にかかる事業計画上のリスク・機会を特定しております。
環境委員会およびCSR委員会では、リスク・機会を特定の上、その発生可能性と影響度を評価するとともに、即時ないし中長期といった対応の時間軸を念頭に取組みの優先順位付けを行い、リスク・機会に対応した事業計画を検討しております。また、社内規程の制定、マニュアルの作成等を指揮するほか、グループ全体の状況を監視しております。
取締役会では、特定されたリスク・機会の認識を踏まえ、環境経営にかかる事業計画の遂行を監督するとともに、グループ全体の状況を踏まえ、必要に応じて改善策等を審議・決定しております。
環境経営推進部は、これらのリスク・機会の認識に則した対応の戦略的枠組みを具体化し、当社各部門およびグループ全体で運用するため、現場人材の育成支援やモニタリング等の運用全般を調整・指導しております。当社グループでは、これらのパフォーマンスにおいて改善の機会を特定し、その後のパフォーマンス改善につながる施策を遂行するとともに、その効果をモニタリングするサイクルを継続することで、気候変動に対するレジリエンスの向上に努めております。これらのマネジメントシステムにおいては、その全体にトップマネジメントが関与し、環境パフォーマンスの継続的な改善を指揮することで、当社グループ全体のマネジメントシステムの一つとしての実効性確保を図っております。
[戦略]
(シナリオ分析に基づくリスク・機会の特定)
当社は2022年度に主要事業である板紙・紙加工関連事業を対象に、2030年時点における外部環境の予測に基づいたシナリオ分析を実施したことに続き、2023年度は軟包装関連事業および重包装関連事業にシナリオ分析の範囲を拡大しております。シナリオについては、パリ協定を踏まえて低炭素経済に移行する1.5℃シナリオと、現状の想定以上の気候変動対策は実施されない4℃シナリオを設定しております。
部門横断型ワークショップ等で議論を重ね、気候変動によるリスク・機会の絞り込み、予想される財務影響の把握、対応策の検討を行った結果、4℃シナリオでも、リスク・機会の両面で影響が生じる可能性が確認されましたが、低炭素社会への移行が進む1.5℃シナリオでは、移行リスクと機会における影響がより大きくなる可能性が高いとの認識に至っております。当社グループでは、各シナリオにおけるリスクおよび機会を考慮し、環境経営を推進しております。
(リスク・機会の認識と対応策)
当社ではシナリオ分析に基づき、2030年度において事業継続または利益への影響が懸念される要因として、炭素税の導入をはじめとする政策・法規制の変更や、電力小売価格等の上昇を含む移行リスクのほか、災害の激甚化と頻繁化に伴い施設への影響等が懸念される物理リスクを認識しております。
当社グループではこれらへの対応策として、移行リスクについては、エネルギー転換のための設備投資や財務影響を最小化する適正な製品価格の実現を基本としつつ、工場の稼働や調達の平準化による原燃料価格変動リスクの制御等を図るとともに、物理リスクについては、BCPの策定とその実効性確保、生産拠点における水害対策(嵩上げ、止水板、非常用電源等の設置)を行うほか、有事の際の分散調達も可能とするサプライチェーンマネジメントの強化等を図っております。
また、これらのリスク回避の一方、物流効率化に資する包装設計やグリーンロジスティクス、ライフサイクルアセスメント(LCA)に基づく低炭素化を戦略的に推進するとともに、一連の取組みに関する情報開示の拡張と深化を図ることで、新たな機会の獲得に努めております。
なお、これらのリスク・機会の認識と対応策の詳細につきましては、直近の情報を当社ウェブサイト等に開示しております。
[指標と目標]
当社グループは、2025年4月に環境に関する中長期目標の見直しを実施しております。2050年を目途とする長期目標「レンゴーグループ環境アクション2050」を掲げ、温室効果ガス排出量実質ゼロの達成を目指しております。また、2030年度を目途とする中期目標「エコチャレンジ2030」では、国内グループ各社を対象に削減目標を設定するとともに、最終的にはSBT(Science Based Targets)を達成すべく着実に取組みを進めております。
(4) 人的資本・多様性に関する取組
[戦略]
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針は次のとおりであります。
当社グループは、人本主義を会社経営の柱に据えて、人への投資、人づくりを通して、持続的な成長と生産性向上に取り組んでおります。
人材育成に関しては、優秀な人材を確保し適正に配置したうえ、「現場にこそ真理がある」をモットーに、それぞれの持ち場におけるニーズに対応した職種別や階層別教育を計画的に実施するとともに、グローバル人材の育成、自己啓発の支援といった教育制度を整備・拡充し、自己の成長を実感できる取組みを進めております。
生産性についてあらゆる要素を分析し、技術革新とともに人の働き方、心のありようも意識しながら全要素生産性を高めることに労使一致協力して取り組んでおり、2022年度からは、「生産性とは人間の心の持ちようである」という基本に立ち返り、「心をみがこう」をスローガンとする人づくりの研修を3事業年度にわたり全社展開しました。第一弾は製造現場の係長・主任を対象とした全国研修、その後は全国事業所や事業所・部門ごと、また階層別・職種別に順次開催し、特に、職場におけるコミュニケーションは、働く人と人を結びつけ、組織力・現場力の源になる重要なものと考えており、メインテーマとしました。そして、研修を通して浮かび上がった課題について、実行委員会および労使の議論を経て人事諸施策へ反映させました。2025年3月までに約4,500名の全従業員が受講を完了しました(研修回数305回、延べ6,609名が参加)が、さらなる現場力の強化、生産性の向上を図るため、人への投資、人づくりに今後も継続して取り組み、グループ全体にも展開させてまいります。
多様な人材が互いに尊重かつ受容し、個々の能力を最大限に発揮することによってイノベーションが生まれる企業を目指しております。2014年4月に女性活躍推進室を設置して女性が能力をさらに発揮できる企業風土づくりや環境整備に取り組み、2022年4月にはD&I推進室への改称を経て2025年1月にDEI推進部に改組し、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンを推進・強化しております。
中でも女性の活躍推進については、「女性の活躍推進に関する行動計画」に掲げる目標の達成はもとより、採用促進と職域拡大に注力し女性比率を高めるとともに、教育・キャリア形成の強化・充実を図っております。さらに、管理職登用についても積極的に取り組み、女性の役員登用につなげてまいります。
また、生涯現役の考えのもと、2019年4月に導入した65歳定年にあわせて「レンゴーはつらつ健康宣言」を策定し、誰もが健やかで心豊かなはつらつとした生活を実現するために、日々の健康づくりと安全・安心な職場づくりに取り組み、健康経営を実践しております。
少子化対策と次世代育成支援の一環として、2006年4月より第3子以降の出産には100万円の祝い金を贈呈し、子育てを制度面と経済面の両方からサポートしております。制度実施以降は毎年30名前後の受給者が発生し、2024年9月には延べ500名に達しました。
さらに、2025年4月には改正育児・介護休業法への対応に加え、当社独自に法令以上としていた両立支援制度をより一層充実させて改定し、安全かつ安心して働くことができる職場環境を整備しております。
[指標および目標]
当社グループにおける、上記[戦略]において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針について、提出会社においては次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は、次のとおりであります。なお、当社グループにおいては事業特性や企業規模が多様であるため、各社の課題に応じた取組みを行っております。
① 女性の活躍推進に関しては行動計画(期間:2021年4月1日から5年間)を策定し、次の目標を掲げております。
1.総合職女性採用比率を3割以上とする
2.業務職女性採用比率を2割以上とする
3.女性管理職数を1.5倍以上とする(2020年度40名 → 60名以上)
4.男性の育児休業取得率を8割以上とする
② 誰もが働きやすい職場環境を整える中で、障がい者の雇用促進や職域拡大に積極的に取り組んでおります。2025年3月時点の障がい者雇用率は2.6%と法定雇用率を満たしております。また、障がいに関する正しい理解のもと当事者意識をもって行動できる従業員を増やすため、2018年度より「ユニバーサルマナー検定研修」を行っており、2024年度は管理職や新入社員が順次受講し、同研修の修了者は約800名となりました。
③ 2015年より「全要素生産性(TFP)向上による総労働時間削減」に取り組んでおります。年次有給休暇取得促進については、2024年度の取得率は目標とする65%を超えました。引き続き取得率の向上に向けて取組みを着実に進めてまいります。
④ 社内研修の実施や社内外の相談窓口の設置などを通じて、メンタルヘルス対策を推進しており、ストレスチェックの受検率100%を目指すとともに、職場環境改善を通じて従業員エンゲージメントの向上を図っております。
※第三者(株式会社アドバンテッジリスクマネジメント)が提供するストレスチェックで測定し、偏差値で算出。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 製品需要、市況動向
当社グループの主力製品である板紙、段ボール製品は、国内の景気動向の影響を大きく受けます。景気後退による需要の減少、競争の激化等による市況の悪化要因により、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し当社グループでは、安定した需要が見込まれる食品向けの受注に加えて、特定業種における需要の減少等の影響を相対的に低減させるべく、幅広い業種の取引先と良好な関係を構築するよう努めるとともに、より付加価値の高いパッケージづくりを通じて、提案型営業を推進することで競争力を高め、リスクの最小化に努めております。
(2) 原燃料価格
当社グループの主要原材料である段ボール古紙の価格は、東南アジアをはじめとする海外の需要動向の影響を受けます。国内における需給バランスに変動が生じた場合には、購入価格の上昇によるコスト増加要因となり、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおいては、主に都市ガス、LNG、バイオマスを燃料として利用しております。これらの価格は、国際商品市況の影響を受けるため、市況が上昇した場合には、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し当社グループでは、生産性の向上や省資源・省エネルギーに資する設備投資等の実施によって原単位の改善、燃料の多様化に取り組み、リスクの最小化に努めております。
(3) 自然災害、疫病
当社グループの製造拠点等が、大規模な地震、台風等の自然災害によって多大な被害を受けた場合、事業活動の中断等により、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
また、大規模感染症の流行等によって当社グループの事業活動が中断等を余儀なくされた場合、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し当社グループでは、特定の事業所において事業活動の中断等が起こった場合は、全国に展開している製造拠点から製品の供給が行えるよう、供給責任を果たす体制の構築に努めております。
(4) 海外事業
当社グループは、中国、インド、東南アジア、ヨーロッパならびに北米を成長市場と位置づけ、板紙・紙加工関連事業、軟包装関連事業、重包装関連事業を展開しております。海外進出に対し、当社グループは、リスクを十分に検討したうえで投資の意思決定を行っていますが、海外における事業活動については、為替変動リスク、自然災害・疫病等のリスクあるいは国ごとにさまざまな経済的、政治的リスクが存在しており、これらの顕在化により、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し当社グループでは、早期に適切な対応が取れるよう、グループ各社や当社の担当部門が適時に情報の収集および共有をし、リスクの最小化に努めております。
なお、当連結会計年度の当社グループの海外売上比率は21.7%であります。
(5) 金利の変動
当社グループの有利子負債は、当連結会計年度末現在において448,529百万円であります。有利子負債については、削減に鋭意取り組んでいますが、金利変動リスクを有しているため、市場金利が上昇した場合には、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 株価の変動
当社グループは、取引先を中心に株式を保有していますが、市場性のある株式においては、各種要因による株価の下落により、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおける年金資産は、株価水準の影響を受けるため、退職給付費用に変動が生じます。
(7) 為替の変動
当社グループは、製品、原材料および燃料の輸出入取引において、為替変動の影響を受けることがあり、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 事業再構築
当社グループは、企業価値の増大に向けて事業の選択と集中に取り組んでおり、この過程における一時損失が発生し、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 訴訟
当社グループは、国内外で継続して事業活動を行う過程において、知的財産関連、環境関連等の訴訟を提起されるリスクを負っており、訴訟の内容によっては、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し当社グループでは、法令順守等のコンプライアンス経営に努めており、役員、従業員のコンプライアンス意識向上のために階層別に研修・教育を実施し、リスクの最小化に努めております。
(10) その他
当社グループは、上記の事項以外にも、予期せぬ事態によるリスクを負う可能性があり、これらの内容によっては、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は、次のとおりであります。
当連結会計年度のわが国経済は、物価上昇や人手不足などさまざまな課題に直面しましたが、雇用・所得環境が改善に向かう中で、インバウンド需要の増加や設備投資に持ち直しの動きがみられたことから、一部に足踏みが残るものの、緩やかな回復基調が続きました。
このような経済環境の中で、板紙業界におきましては、輸出が低調に推移したものの、堅調な国内需要に支えられ、生産量は前年並みとなりました。
段ボール業界におきましては、天候不順により青果物向けの需要が低迷した一方、飲料を含む加工食品向けが好調に推移し、生産量は前年並みとなりました。
紙器業界におきましては、ギフト関連市場の縮小が引き続き見られるものの、人流の増加により土産物や地域特産品の包装需要が堅調に推移し、生産量は前年並みとなりました。
軟包装業界におきましては、インバウンド需要の増加に加え、期の後半から個人消費に持ち直しの動きがみられ、生産量は前年を上回りました。
重包装業界におきましては、石油化学関連の需要が減少し、生産量は前年を下回りました。
以上のような状況のもとで、レンゴーグループは、2024年度を最終年度とする中期ビジョン「Vision115」の完遂に全力を傾注するとともに、あらゆる産業の全ての包装ニーズをイノベーションする「ゼネラル・パッケージング・インダストリー」=GPIレンゴーとして、営業力の強化、積極的な設備投資やM&A等を通じ、業容拡大と収益力向上に鋭意取り組んでまいりました。
また、物流費や労務費の上昇、環境対策や労働環境改善のための設備投資等、バリューチェーン全体にわたるコスト構造の変化に対して自社努力だけでは抗し難い状況となったことから、段ボール製品、紙器製品、コート白ボールについて、再生産可能な価格体系への取組みを推し進めてまいりました。
昨年4月、軟包装事業における一貫体制の拡充のため、サン・トックス株式会社(東京都台東区)と三井化学東セロ株式会社(東京都千代田区)のパッケージソリューション事業を統合、新たにアールエム東セロ株式会社(東京都千代田区)として子会社化しました。また、バイオ事業への展開を見据えバイオベンチャー企業である株式会社Biomaterial in Tokyo(福岡県大野城市)を子会社化しました。7月には株式会社柴田段ボール(愛知県豊橋市)を子会社化、10月には村瀬段ボール株式会社(愛知県江南市)に資本参加し、段ボール事業の強化を図りました。また、トライウォールジャパン株式会社(東京都港区)が株式会社ジェイパック(神奈川県川崎市)を子会社化し、輸出梱包・通関業など多様なサービスを提供する総合物流事業に参入しました。
海外におきましては、昨年8月、トライウォール社(中国香港)が米国の重量物包装資材メーカーであるコンセプト・パッケージング社に資本参加するとともに、12月にはプロンク・インド社(インド)の株式を取得、また、本年3月にはプロンク・ドバイ社(アラブ首長国連邦)の持分を取得し、グローバル戦略のさらなる充実を図りました。
ESG経営における環境への取組みは、“Less is more.”をキーワードに掲げるレンゴーグループとして最も優先すべき課題であり、2030年度における温室効果ガス排出量削減目標「2013年度比46%削減」に向け、重要課題(「脱炭素社会の形成」「循環型社会の形成」「水リスクの管理」)についての取組みを一段と前進させました。
この結果、当連結会計年度の売上高は993,251百万円(前期比110.3%)、営業利益は37,408百万円(同76.6%)、経常利益は39,178百万円(同81.6%)、親会社株主に帰属する当期純利益は28,979百万円(同87.7%)となりました。主な内容は次のとおりであります。
売上高につきましては、連結子会社の増加および製品価格の改定等が寄与し、増収となりました。
一方で、固定費の増加や原燃料価格の上昇の影響が大きく、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となりました。
当連結会計年度の売上高経常利益率については、3.9%と目標を2.1ポイント下回りました。これは主に人件費等の固定費の増加や原燃料価格の上昇によるものですが、当該コストアップを回収できる適正な製品価格の水準の維持に努めております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
[板紙・紙加工関連事業]
板紙・紙加工関連事業につきましては、製品価格の改定が寄与し増収となったものの、固定費の増加や原燃料価格の上昇等により減益となりました。
この結果、当セグメントの売上高は514,720百万円(同100.7%)、営業利益は23,443百万円(同67.0%)となりました。
主要製品の生産量は、次のとおりであります。
(板紙製品)
板紙製品につきましては、堅調な国内需要に支えられ、生産量は2,467千t(同101.6%)となりました。
(段ボール製品)
段ボール製品につきましては、天候不順により青果物向けの需要が低迷した一方、飲料を含む加工食品向けが好調に推移し、生産量は段ボール4,226百万㎡(同100.2%)、段ボール箱3,581百万㎡(同101.4%)となりました。
[軟包装関連事業]
軟包装関連事業につきましては、製品価格の改定および連結子会社の増加により増収増益となりました。
この結果、当セグメントの売上高は181,614百万円(同149.8%)、営業利益は5,062百万円(同106.1%)となりました。
[重包装関連事業]
重包装関連事業につきましては、工業樹脂製品が好調に推移したことにより増収増益となりました。
この結果、当セグメントの売上高は44,977百万円(同101.4%)、営業利益は1,684百万円(同185.9%)となりました。
[海外関連事業]
海外関連事業につきましては、連結子会社が増加したこと等により増収となりましたが、欧州における重量物包装事業の採算悪化等が影響し減益となりました。
この結果、当セグメントの売上高は213,094百万円(同112.6%)、営業利益は4,931百万円(同72.7%)となりました。
[その他の事業]
その他の事業につきましては、連結子会社の増加および運送事業の採算改善等により増収増益となりました。
この結果、当セグメントの売上高は38,844百万円(同110.9%)、営業利益は1,963百万円(同168.9%)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当社グループにおいては、紙器機械等一部の事業で受注生産を行っておりますが、その重要性が乏しいため記載を省略しております。
その他の製品については、見込み生産を行っているか、受注生産であっても生産と販売の関連において製品の回転が極めて速く、月末(または期末)における受注残高が少ないため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 当連結会計年度において、軟包装関連事業の販売実績が著しく増加しております。これは、連結子会社が増加したことによるものであります。
当連結会計年度末の総資産は、主に棚卸資産や有形固定資産及び投資有価証券の増加により、1,243,116百万円となり、前連結会計年度末に比べ70,601百万円増加しました。
負債は、主に長短借入金やリース債務、支払手形及び買掛金の増加により742,872百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,335百万円増加しました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加や、為替レートの変動に伴う為替換算調整勘定の増加により、500,244百万円となり、前連結会計年度末に比べ61,266百万円増加しました。
この結果、自己資本比率は37.3%となり、前連結会計年度末に比べ1.0ポイント上昇しております。
また、D/Eレシオについては1.0倍となっております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は70,551百万円となり、前連結会計年度末の残高と比べ33,231百万円減少しました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
営業活動による資金の増加額は77,008百万円(前連結会計年度に比べ12,620百万円の収入の減少)となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益42,788百万円、減価償却費55,958百万円、法人税等の支払額19,787百万円であります。
投資活動による資金の減少額は97,283万円(前連結会計年度に比べ21,250百万円の支出の増加)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出96,121百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出7,546百万円、定期預金の純減額4,583百万円であります。
財務活動による資金の減少額は14,485百万円(前連結会計年度に比べ31,750百万円の収入の減少)となりました。主な内訳は、長短借入金の純増額5,800百万円、社債の償還による支出5,010百万円、配当金の支払額8,235百万円、リース債務の返済による支出6,350百万円であります。
資本の財源および資金の流動性について、当社グループは、資金調達については銀行借入および社債発行により行っております。また、キャッシュマネジメントサービスを国内子会社に導入しており、グループ全体における効率的な資金活用による有利子負債の削減と金融収支の改善を図っております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは第5「経理の状況」 1「連結財務諸表等」「注記事項」 (重要な会計上の見積り)に記載しております。
当社は、安定的な資金調達を図るため、金融機関との間でシンジケートローン契約を締結しておりますが、本契約には一定の財務上の特約(財務制限条項)が付されており、当社がこれらに抵触した場合、期限の利益を喪失し、一括返済を求められる等、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における財務制限条項の主な内容は以下のとおりであります。
① 各連結会計年度の末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額から新株予約権、非支配株主持分および繰延ヘッジ損益を控除した金額を、直近の連結会計年度末日における連結貸借対照表に記載される同金額の75%に相当する金額(1億円未満切上)以上に維持すること。
② 各事業年度の末日における単体貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額から新株予約権および繰延ヘッジ損益を控除した金額を、直近の事業年度末日における単体貸借対照表に記載される同金額の75%に相当する金額(1億円未満切上)以上に維持すること。
対象となる契約内容は以下のとおりであります。なお、複数の契約を集約して記載しております。
当社中央研究所において、製紙、段ボール、紙器、軟包装および機能材の各事業とその周辺領域に研究開発の中心を置き、地球環境に配慮した独創的で付加価値の高い新商品と新技術の開発を進めております。また、当社パッケージング部門技術開発本部および包装システム開発推進本部において、紙器機械の開発・改良を進めております。さらに、情報システム本部において、新規の情報技術の開発を進めております。
アールエム東セロ株式会社では軟包装関連事業において、顧客と連携しながら主に食品包装における様々な社会課題解決に向けたフィルム・シートの新製品開発および品質改良を行っております。
日本マタイ株式会社では国内の重包装関連事業において、江蘇中金瑪泰医薬包装有限公司では海外の軟包装関連事業において、それぞれ安全・環境への配慮と市場の要求に沿って、新製品の開発および品質改良を行っております。
当社グループでの研究開発費の総額は
当社において、CO2排出量削減に向けた段ボール貼合技術および接着剤の開発、白板紙の品質向上技術の開発、ならびにデジタル印刷の周辺技術の開発を進めております。また、生産工程における省人化と生産性向上を目指しDX化の研究を行っております。
さらに当社で使用する紙器機械について、他社にない独自の機械装置・システムの開発を通じて、品質・生産性向上、省力・省エネ、作業環境の改善等に取り組んでおります。当連結会計年度において注力したのは、品質・生産性向上設備としては、全面全数検査装置付き平盤ダイカッタラインの開発で、東京工場に新たに2ライン導入しました。また、新名古屋工場にて開発中の高精度ロータリーダイカッタ向けに、付帯設備(ロボットパレタイザ・パレット梱包機等)を導入、ラインを単独化し生産設備として本格運用を開始しました。検査装置としては、貼合工程の表裏全面検査装置の旧機種を更新し検査精度を向上させました。また、製函工程においては、以前から運用している印刷検査装置の機能を拡充させ検査精度を向上させております。管理装置としては、開発した次世代コルゲータ管理装置のRYCC-DXの水平展開・機能拡充を行いました。また、製函工程にて必要な印刷設計書や製作指示書を電子データ化するシステム“SpecView”も、11工場で展開が完了しており作業負荷軽減やペーパーレス化の促進に寄与しております。
加えて、2024年度においては、全社での安全に管理された生成AI利用環境を整備しました。また、その派生技術である「RAG(注)」の導入もあわせて完了しております。
当事業にかかる研究開発費は
(注) Retrieval Augmented Generation の略語。社内資料を読み込んで生成AIに回答させる技術。
当社において、「2R(リデュース、リサイクル)+リニューアブル」を基本とするプラスチックの資源循環に向けた取組みとして、モノマテリアル包材の開発やマテリアルリサイクル技術の開発をグループ会社と連携して進めております。また、海洋プラスチック問題に対応するため、当社で生産しているセロファンや紙と生分解性樹脂などを組み合わせた生分解性と高バイオマス度を有するパッケージシリーズ「REBIOS®(レビオス)」を開発・上市し、拡販に向けてラインアップ拡充や機能性向上に取り組んでおります。なお、セロファン製造の際に発生するトリム屑など端材の再原料化技術の開発も進めております。
アールエム東セロ株式会社において、主に食品包装に使用されるポリオレフィンフィルム、無延伸ポリオレフィンフィルムならびに発泡シートを主軸とする多彩な製品群の開発を行っております。サーキュラーエコノミー達成のため、化石原料由来プラスチック削減や温室効果ガス排出低減に向けた「バイオマスフィルム」「モノマテリアル包装フィルム」「リサイクルフィルム」、食品の鮮度や品質を保持する「バリアフィルム」「鮮度保持フィルム」ならびに人々の生活の質向上に貢献する「イージーオープンフィルム」等の開発、製品展開を進めております。
当事業にかかる研究開発費は
日本マタイ株式会社において、機能性フィルム、樹脂加工製品、ラミネート製品および重包装製品の開発を行っております。
機能性フィルム・樹脂加工製品においては、「塗装代替フィルム」「加飾用PPシート」等を進め、モビリティ市場を中心とした装飾・加飾分野での製品展開を図っております。コンパウンドマシンを活用した独自性機能製品の開発に向けて引き続き強化しております。
また、環境にやさしい製品開発をコンセプトとして取り組んでおり、モノマテリアル、リサイクルを意識した軽包装製品および紙製品の開発、製品展開を進めております。
当事業にかかる研究開発費は
江蘇中金瑪泰医薬包装有限公司において、大学研究機関と共同でナノ機能性コーティング技術(バリアコート/親水・疎水コート)開発および転写・エンボス加工技術の確立を行いました。
また、PTPアルミ箔製品のコーティング処方改良によるエージング時間短縮を実現する研究開発を行いました。
当事業にかかる研究開発費は
当社において、木材の主成分であるセルロースを素材とする球状粒子「ビスコパール®」、カラシ・ワサビ成分を用いた天然系抗菌防カビ剤「ワサヴェール」、パルプ繊維内部でゼオライトを高密度に結晶化させた高機能繊維「セルガイア」など、これまでに開発してきた環境と機能を両立した素材を応用した商品開発に取り組んでおります。また、当社が有するセロファン製造技術を応用した木材パルプ由来の機能性素材であるセルロースナノファイバーの事業化を目指し、製造実証、製品ラインアップの拡充、用途開発を進めサンプルワークを行っております。その他、木質バイオマスを用いたバイオエタノール製造技術の開発を進めております。
さらに、通販業界においては、人手不足や物量の増加などに対応するため、自動機の導入が進んでおります。これまで当社では自動機をメインで販売してまいりましたが、導入コストが低く半自動的に使用できる装置を構築しました。形式上は1つのラインとして構成しておりますが、半自動製函機、ユニークコード印字機、ケースストック棚、最適ケースを選定するBOXエンジン、商品を固定するバンド装置、半自動ランダム封函機、自動送り状ラベル貼り機、照合装置など、単体でも採用可能な標準機器の構成となっており、その組み合わせもユーザーの仕様に合わせて変えることができます。
また、新たに国産開発した高さ可変ランダム封函機(J-RexS)は量産型をベースに、高さ検知方法や封緘方法の新しい技術を開発しオプションとして拡充を図りつつ、多くのユーザーニーズを取り込めるように日々研究開発を進めております。今後は国内だけではなく海外市場にも目を向け、協力会社と資材供給の目途をつけて海外展開も進めてまいります。
当事業にかかる研究開発費は