第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループの経営理念「世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ」には、事業活動を通じて、世界中の人々への心豊かで快適な暮らしにつながる「やさしい未来」を提供したいとの想いを込めています。

当社グループは経営理念の実現に向けて、以下の4つの柱に重点を置いて、全社一丸となって課題解決に取り組んでいます。

<経営理念 4つの柱>

1.ものづくりへのこだわり

現場・現物・現実に基づいた新たな商品と付加価値の創造・提供を通じて、国際社会から信頼される企業グループであり続けます。

2.地域社会とのきずな

各国・各地域の発展に寄与するために、「良き企業市民」として高い倫理観をもって地域社会との調和ある成長を目指します。

3.安全で働きがいのある企業風土

持続的な企業価値の向上を図るために、安全で働きがいのある企業風土づくりに取り組み、社員相互の信頼関係に基づいた一体運営を推進します。

4.地球環境への貢献

地球環境と調和したグローバルな事業展開を通じて環境問題に積極的に取り組み、持続可能な社会の実現を目指します。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

グループ経営理念「世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ」のもと、長期ビジョン「戦略的に事業ポートフォリオを変革し、持続的に成長し続ける企業グループへ」を掲げ、10年後には、売上高8,000億円~1兆円規模(ホーム&パーソナルケア(以下、「H&PC」という。)事業の構成比50%以上、H&PC海外事業の構成比30%以上)を目指します。

2018年度から2020年度までの3年間を対象期間とする第3次中期事業計画(以下、「第3次中計」という。)では、急激な外部環境変化に対応可能な強靭な企業体質への革進とともに、長期ビジョンを見据えた成長戦略を果敢に実行します。

① テーマ 「Move on  革進と飛翔」

② 業績計画

 第3次中計

 

2017年度実績

第3次中計

2020年度計画

(参考)長期ビジョン

売上高

5,313

億円

6,350

億円

8,000億~1

兆円

営業利益

111

億円

320

億円

800~1,000

億円

(営業利益率)

(2.1

%)

(5.0

%)

(10

%)

H&PC海外売上比率

7.7

15

30

%以上

ROE

2.2

12

%以上

ネットD/Eレシオ

1.6

1.6

1.0

倍未満

(参考)純有利子負債

2,800

億円

3,500

億円

 

 

 

 

 

 

※前提条件

 

 

 

 

為替

110.9

円/ドル

112

円/ドル

ドバイ原油

56

ドル/バレル

62

ドル/バレル

 

 

 

 事業別計画

 

2017年度実績

2020年度計画

 

売上高

(億円)

営業利益

(億円)

売上比

売上高

(億円)

営業利益

(億円)

売上比

紙・板紙事業

3,136

0.2%

3,200

100

3.1%

H&PC事業

1,970

81

4.1%

2,910

200

6.9%

(内訳) 海外事業

411

△13

1,000

70

7.0%

    国内事業

1,559

94

6.0%

1,910

130

6.8%

その他事業

(調整額を含む)

208

23

11.1%

240

20

8.3%

 合 計

5,313

111

2.1%

6,350

320

5.0%

 

 

 設備投資計画

2020年度までの3か年合計で戦略投資 1,150億円、合理化・維持投資430億円、合計1,580億円の設備投資を実行します。

[戦略投資 1,150億円の内訳]

 

 

紙・板紙事業の構造改革投資

370

億円

H&PC事業の成長投資・構造改革投資

520

億円

新規事業 (CNF(注1)、FIT制度(注2)を活用したバイオマス発電他)

190

億円

IT投資 (NEXT.DAIOプロジェクト)

70

億円

戦略投資 合計

1,150

億円

 

 (注)1.CNF:セルロースナノファイバー

2.FIT制度:固定価格買取制度

 

(3) 会社の対処すべき課題

① 紙・板紙事業とH&PC事業を横断した抜本的な構造改革

(a) 当社の強みを活かした製紙事業の生産構造改革

三島工場が持つ以下3つの強みを活かし、生産ポートフォリオの変革を強力に推進します。

1つ目の強みは、競争力のあるクラフトパルプです。針葉樹パルプ(国内最大の生産量)、広葉樹パルプ(国内2位の生産量)を併せ持つ三島工場は、臨海立地であることから木材チップ調達コストも優位性があります。また、2020年7月にクラフトパルプ増産改造工事が完了し、収益性をさらに高めます。

2つ目の強みは、国内屈指の難処理古紙(通常の古紙処理設備では容易にパルプ化できない古紙等)の選別・パルプ化技術です。当社グループ会社の保有する金属・プラスチック・色物の自動選別技術を古紙処理設備に組み込み、安価に集荷した難処理古紙を有効活用することで、競争優位なコスト構造を確立します。将来的には、この技術を磨き、板紙生産における難処理古紙の使用比率を40%まで高める目標です。

3つ目の強みは、国際貿易港に隣接した三島工場の立地です。三島川之江港から中国の上海港までの輸送コストは東京までと大差なく、三島工場を衛生用紙、板紙、クラフト紙の輸出拠点とします。中国をはじめとするアジア諸国を当社にとっての新市場と捉え、アジア市場での新たなマーケット創造を視野に入れています。

(b) 紙・板紙事業の構造改革~「メディア用途の紙」から「梱包・包装用途の紙」へのシフト

ⅰ 新聞・印刷・情報用紙などのメディア用途の紙の安定供給体制

三島工場のスイングマシン(複数品種を生産可能な抄紙機)の特性を活かし、ユーザーへの安定供給体制を維持します。これまで推進してきた品種シフトや「サクラテラス」加盟卸商との協業に継続して取り組むとともに、工場では生産効率とコスト競争力を高め、競争優位性を強化します。

ⅱ 「梱包・包装用途の紙」の生産体制の強化と輸出拡大

需要構造の変化に対応するため、「生産性の高い生産設備」で「難処理古紙を多く使用する」ことによるコスト競争力の高い板紙の生産体制と、クラフト紙の増産体制を構築します。

・三島工場の洋紙生産設備を国内屈指の競争力を有する板紙生産設備に改造(2020年4月予定)

・子会社の大成製紙株式会社(以下、「大成製紙」という。)の板紙生産設備を停止し、大成製紙で生産している白ライナーの生産を三島工場に移管

・三島工場の板紙・特殊クラフト紙の生産設備をクラフト紙生産へシフト

板紙とクラフト紙の増産分は、需要が旺盛な中国をはじめとするアジア諸国への輸出を強化します。板紙の輸出は、当社H&PC海外工場で使用している段ボール需要をベースとして、近い将来、H&PC海外工場の近隣地で段ボール事業を展開していく布石でもあります。

なお、大成製紙は、現状の衛生用紙生産に加え、ウェットティシュー等の加工機を設置して、H&PC国内事業に特化した生産工場へと事業転換します。

 

② H&PC事業のグローバルな事業拡大と収益力強化

(a) 衛生用紙

2018年10月の川之江工場(注)の衛生用紙生産設備稼動後、原反を当社中国法人である大王(南通)生活用品有限公司(以下、「EICN」という。)に輸出し、EICNでプレミアムトイレットロールに加工して中国市場で販売します。ベビー用紙おむつで確立した「エリエール」「大王(ダーワン)」の高級ブランドイメージから、現在中国で実施しているテスト販売は非常に好評で、中国でのプレミアムトイレットロール販売は当初想定よりも早いスピードで拡大すると見込んでいます。

中国での拡販にあわせて川之江工場の衛生用紙を中国等アジア向け輸出に振り替えていく結果、国内市場向けの衛生用紙が不足するため、可児工場に衛生用紙生産設備を新設(2020年4月予定)し、H&PC事業の収益力向上と衛生用紙のリーディングカンパニーとして供給体制を一層強化し、国内で圧倒的シェアNO.1を確立します。

(注)川之江工場は三島工場に隣接しており、配管及び送電線で繋がっています。三島工場からコスト競争力の高いクラフトパルプを川之江工場に流送するとともに、蒸気・電力などのエネルギーも供給します。 三島工場と川之江工場は一体運営します。

(b) 吸収体事業

ⅰ 国内事業

当社の大人用紙おむつ「アテント」は業務用ではトップクラスであるという強みを活かし、厚生労働省が推進する「地域包括ケアシステム」の枠組みの中で、医療介護専用の多職種連携SNSである「メディカルケアステーション」を通じて当社オリジナルアプリを提供する取組みを開始しました。生活者が病院、在宅を循環する社会に対応することにより、業務用紙おむつから市販用紙おむつへのリレーションを強化し、売上・収益の拡大を図ります。

また、アクティブな中高年の生活者の不安を解消して快適な生活をサポートするための軽失禁対応商品(「ナチュラ」ブランド)、少子化の進行に伴い高品質(肌への優しさ、吸水性能など)が求められるベビー用紙おむつ(「GOO.N」ブランド)は、品質への徹底的なこだわりと幅広い商品ラインナップにより、拡販を実現します。

ⅱ 海外事業

中国では、ベビー用紙おむつのスーパープレミアム品の拡販に加え、大人用紙おむつでは、北京と華東地区で高級施設への提案活動を行うなど本格販売を開始しました。また、前述のとおりプレミアム衛生用紙の市場創造も進めており、複合事業化を加速させます。これら販売増加に対応していくための生産体制を強化するため、EICNの既存工場の隣接地を第2工場の用地として2018年度に取得し、第3次中計期間内に稼動させる計画です。

タイではベビー用紙おむつ、フェミニンケア用品、ウェットティシューを生産しており、当社H&PC海外工場の中で最も早く複合事業化をスタートさせました。インドシナ半島を一つの市場と捉え、タイ国内、ベトナム、マレーシア、ミャンマー等への拡販を推進しています。

インドネシアでは、ベビー用紙おむつの需要増加に対応して、生産設備をさらに増設する計画です。市場全体の3割を占める伝統小売店舗(ワルン)や、市場が急激に拡大するEC等の販売チャネルでの拡販も推進しており、生産体制を強化するため、第2工場建設を検討しています。

中東地域の大国であるトルコに2017年9月に出張所を開設し、ベビー用紙おむつの販売を開始しました。生活者から好評を得ており、将来の現地生産を見据えた工場建設の検討に着手しています。

韓国、台湾、ロシアなどの輸出販売国は、各国の消費者マインドの傾向・変化を素早く掴んで商品開発に反映し、販売エリアと複合事業化をさらに拡大します。

 

 

③ H&PC国内事業の成長を支える物流改革

H&PC国内事業の成長を支えるため、運送会社から選ばれる荷主へと変わっていくことで、衛生用紙トップメーカーとして商品の供給体制を一層強化するとともに、販売店の売上・収益拡大を強力にサポートする体制を構築中です。

2018年4月以降、愛媛県四国中央市、岐阜県可児市、静岡県富士宮市の主要生産拠点3か所で大型物流センター4棟(延床面積は4棟合計で約52,000坪)を順次稼働させ、保管効率を約10%改善します。また、専用パレット開発等により、手積み手降ろしからパレット輸送化を推進し、荷役時間を約75%削減します。

 

④ 新規事業(CNF、FIT制度を活用したバイオマス発電他)

CNFの早期事業化を中心とした新規事業の創出を強化し、第3次中計では、素材開発と電化製品、化粧品等への用途開発を加速させます。また、量産化技術確立とコスト低減に取り組み、第3次中計期間内のCNF関連商品の販売開始を目標としています。

なお、FIT制度を活用したバイオマス発電は2020年7月に事業を開始する予定です。

 

⑤ 持続的成長のための基盤構築

(a) ESGへの取組み

環境・社会・ガバナンスそれぞれの課題に対して、事業活動を通じて積極的に課題解決に取り組むことで、企業としての持続的な成長を実現します。

・環境面

FIT制度を活用したバイオマス発電の開始(2020年7月予定)

 

植林・難処理古紙の有効活用・廃棄物の削減等

・社会面

チリの植林地に橋・道路等インフラ整備

 

「地域包括ケアシステム」の枠組みの中での在宅介護者支援等

・ガバナンス面

持続的成長の基盤となる健全なガバナンス体制の整備

 

(b) 業容拡大を見据えたIT投資による業務改革の推進

グループ基幹システムとしてERP(Enterprise Resource Planning:業務統合パッケージ)を導入し、グループ経営の効率向上に取り組みます。さらに、BPR(Business Process Re-engineering:業務プロセス改革)により共通業務の標準化に継続して取り組み、今後の業容拡大を見据えたIT投資による業務改革を推進します。

(c) 働き方改革

グループ全社員の働き方を抜本的に見直し、一人ひとりの生産性・効率性を向上させ、成長分野へ経営資源をシフトします。当社基幹工場の三島工場では製造や物流業務に従事する女性社員が増加しているため、安心して働けるよう、2018年4月に事業所内保育所「GOO.N すくすくはうす」を開設しました。今後も女性活躍の環境づくりの取組みを強化します。

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書等に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重大な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1) 需要・市況変動による影響

当社グループは、紙・板紙事業、ホーム&パーソナルケア事業及びその他の事業を行っていますが、主力製品である紙・板紙製品及び家庭紙製品の需要が大幅に減少した場合や、製品市況が下落した場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 原燃料価格変動、及び為替相場の変動による影響

当社グループは木材チップ・古紙・薬品・重油・石炭等の原燃料を国内及び海外から購入しており、原燃料価格の変動に加え、外貨建てで取引されている原燃料の調達に関しては為替相場の変動も、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループでは為替相場変動による経営成績への影響を軽減する目的で、一部の取引に為替予約を利用したリスクヘッジを実施しています。

また、為替相場変動については海外での販売活動にも影響を与える可能性もあります。

 

(3) 海外事業による影響

当社グループは成長戦略のひとつとして、ホーム&パーソナルケア海外事業部が中心となって主に中国・韓国・ロシア・東南アジア等での事業展開に取り組んでいますが、海外における事業展開には為替相場の変動や現地政府による規制、政治不安等による経済環境の変化等が発生するリスクがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 金利変動による影響

当社グループは有利子負債の削減に取り組んでいますが、大幅な金利の上昇が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 投資有価証券の価格変動による影響

時価のあるその他有価証券は決算日の市場価格等に基づく時価法により評価するため、決算日の株価によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 災害による影響

当社グループの生産及び物流拠点がある地区において災害が発生した場合には、生産設備の破損、操業の中断や遅延及び復旧費用の発生、物流機能の停止、製品・商品の滅失等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 訴訟等による影響

当社グループは、各種法令、環境規制及び社会的規範の遵守等、コンプライアンス体制の強化に取り組んでいますが、国内外の事業活動において、これら法令等に関連した訴訟等のリスクを負っています。訴訟等の結果によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 財務制限条項の付された借入契約による影響

当社は、シンジケーション方式タームローン契約を締結していますが、この契約には各年度の決算期の末日における連結貸借対照表の純資産の部の金額や、各年度の決算期における連結損益計算書の経常損益を基準として財務制限条項が付されており、これに抵触した場合には借入金の返済を求められ、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 固定資産の減損会計による影響

当社は、有形固定資産やのれん等の固定資産を保有していますが、これらの資産については減損会計を適用し、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証しており、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っています。しかし、将来の環境変化により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、次期の見通しについては、不確実性、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と乖離する可能性があります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国の経済は、米国の保護主義的な動きや東アジア地域の情勢など懸念材料はあるものの、好調な企業業績を背景として、雇用環境や個人所得の改善が進み、個人消費も上昇の兆しがみられる等、緩やかな回復基調が続いています。

一方、当社グループを取り巻く経営環境は、新聞用紙・印刷用紙をはじめとする紙の需要が減り続けていることに加え、原燃料価格の高騰により、一段と厳しい状況が続いています。

このような状況の中で、当社グループは2017年度を最終年度とする第2次中期事業計画(2015年5月28日発表)の施策の実行に加え、2017年4月に日清紡ホールディングス株式会社(以下、「日清紡HD」という。)より譲り受けた紙製品事業、及び三浦印刷株式会社(以下、「三浦印刷」という。)を当社グループに加え、洋紙事業やホーム&パーソナルケア事業におけるシナジー効果の早期発現に向け、グループ一体となって取り組んできました。

売上高については、日清紡HDの紙製品事業及び三浦印刷を新規連結した効果等により、目標を313億円上回りました。利益については、人口減少や電子媒体へのシフトによる新聞用紙・印刷用紙の需要減に対して洋紙事業の構造転換を進めてきたこと、及び需要が伸長している板紙・段ボール事業の強化を図ってきたことにより、2015年度・2016年度と利益目標を達成できるレベルに近づいていました。しかし、2016年後半から想定外に国内外の古紙価格が急騰したことで、2017年度の紙・板紙事業のセグメント利益が大きく落ち込んだことにより、利益目標は未達となりました。

なお、財務面については、保有資産の売却等により純有利子負債を削減し、2016年度末にはネットD/Eレシオ1.4倍と第2次中期事業計画の目標1.5倍を1年前倒しで達成しました。しかし、2017年4月のM&Aで335億円を要したこと等により、2017年度末のネットD/Eレシオは1.6倍、純有利子負債は目標に対して300億円増となりました。

第2次中期事業計画の数値目標、及び当連結会計年度の連結業績は以下のとおりです。

 

 

第2次

中期事業計画

2015年度

2016年度

当連結会計年度

(2017年度)

 

 

(数値目標)

連結業績

連結業績

連結業績

売上高

5,000

億円

4,741

億円

4,771

億円

5,313

億円

経常利益

250

億円

213

億円

213

億円

128

億円

経常利益率

5.0

4.5

4.5

2.4

純有利子負債

2,500

億円未満

2,815

億円

2,551

億円

2,800

億円

ネットD/Eレシオ

1.5

1.7

1.4

1.6

自己資本比率

28.0

24.9

26.8

25.9

 

 

当連結会計年度の連結業績は、以下のとおりです。

① 売上高

売上高は、主に連結子会社の増加、紙・板紙事業での板紙・段ボール及びホーム&パーソナルケア事業の海外事業でのベビー用紙おむつの伸長により、前連結会計年度に比べ54,171百万円増加(前年同期比 11.4%増)し、531,311百万円となりました。

② 営業利益

営業利益は、主に古紙や原燃料価格上昇の影響により、前連結会計年度に比べ12,473百万円減少(前年同期比 53.0%減)し、11,062百万円となりました。

③ 経常利益

経常利益は、主に補助金収入3,720百万円により、前連結会計年度に比べ8,568百万円減少(前年同期比 40.1%減)し、12,779百万円となりました。

この結果、売上高経常利益率は前連結会計年度に比べ2.1%低下し、2.4%となりました。

 

④ 特別損益

特別利益は、主に投資有価証券売却益5,754百万円、日清紡HDより譲り受けた紙製品事業及び三浦印刷を新規連結したことによって発生した負ののれん発生益1,034百万円により、前連結会計年度に比べ6,486百万円増加し、7,073百万円となりました。

特別損失は、主に大王パッケージ株式会社に係るのれんの減損損失6,013百万円を含む減損損失6,848百万円により、前連結会計年度に比べ4,912百万円増加し、8,728百万円となりました。

⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ8,165百万円減少(前年同期比 67.3%減)し、3,971百万円となりました。

この結果、1株当たり当期純利益は前連結会計年度に比べ56円3銭減少し、27円25銭となりました。

 

セグメントの経営成績は、次のとおりです。

① 紙・板紙

売上高

313,553

百万円

(前年同期比

7.4%増

セグメント利益

700

百万円

(前年同期比

93.0%減

 

新聞用紙は、新聞の発行部数及び頁数減少の影響等により、販売数量・金額ともに前年同期を下回りました。

新聞用紙を除く洋紙事業は、出版物・カタログ等印刷物の部数減や電子化への移行が進み、国内需要はさらに減少しました。当社も紙事業合計では販売数量・金額ともに前年同期を下回りましたが、塗工紙から非塗工紙・情報用紙・特殊紙への販売シフトを進めてきた結果、情報用紙は販売数量・金額ともに前年同期並、包装用紙・機能材は販売数量・金額ともに前年同期を上回りました。塗工紙については今後の需要減に対して収益改善に繋げるべく、生産量の約8%にあたる三島工場16号抄紙機を2018年4月に停止しました。

板紙・段ボールは通販や飲料を中心とした加工食品分野等の需要増もあり、販売数量・金額ともに前年同期を上回りました。

セグメント利益は、段ボール原紙の値上げにより、通期では黒字転換しましたが、古紙・原燃料価格上昇の影響が大きく、前年同期を下回りました。

 

② ホーム&パーソナルケア

売上高

196,970

百万円

(前年同期比

16.7%増

セグメント利益

8,085

百万円

(前年同期比

20.0%減

 

ホーム&パーソナルケア事業の国内事業の商品カテゴリーごとの状況は、次のとおりです。

衛生用紙は、日清紡HDからの紙製品事業譲受による販売拡大、及びティシュー、トイレット、キッチンタオルの各カテゴリーにおいて高付加価値品への販売シフトを進めた結果、販売数量・金額ともに前年同期を上回りました。

大人用紙おむつは、高齢化社会に向けた地域包括ケアシステムの構築に対応するため、市販ルート営業と業務ルート営業を機能的に融合する組織改革を行なった効果もあり、市販ルートでは新商品と連動した夜1枚安心パッドシリーズの拡販、業務ルートでは新規獲得件数の伸長が図れました。これにより、販売数量・金額ともに前年同期を上回りました。

ベビー用紙おむつは、リニューアルによる通気性アップの品質改善とあわせて価格修正を進めました。しかし、少子化等による市場の縮小により、販売数量・金額ともに前年同期を下回りました。

フェミニンケア用品は、生理対象人口減に伴い全体の市場が縮小する中で、拡大市場である失禁ライナー・ナプキンが大幅伸長しましたが、利益率の低い商品の販売を抑えたことにより、販売数量・金額ともに前年同期並の結果となりました。

上記の衛生用紙、吸収体といった旧来のカテゴリーに属する商品群に加え、当社グループが現在進めている複合事業化、商品展開の多角化の取組みの中で、世界初のセルロースナノファイバー配合のトイレクリーナー「キレキラ!トイレクリーナー1枚で徹底おそうじシート」を上市しました。2017年10月には住宅構造の変化に伴う衛生志向の高まりを受けてフロアワイパー「キレキラ!ワイパー徹底キレイ」を新発売する等、新たな価値を付加した商品を生活者目線で開発、上市しました。今後も紙をベースとした商品ラインナップの充実を図っていきます。

海外事業については、販売数量・金額ともに前年同期を上回りました。商品カテゴリーごとの状況は次のとおりです。

主力のベビー用紙おむつについては、中国で超プレミアムゾーンの「天使シリーズ」のさらに上位に位置付ける「光の羽シリーズ」の品揃えや、販売単価の高いパンツタイプの配荷拡大が進み、ECでも年間最大イベントである「独身の日」企画において高い売上伸長を達成しました。タイにおいても、タイ国内の近代店舗でパンツタイプの配荷が拡大しただけでなく、タイ周辺国においても拡販が進みました。インドネシアでは、既配荷先の店頭活動の強化だけでなく、新たな販売チャネルとしてEC向け販売を開始し、市場が拡大しているパンツタイプの販売が伸長しました。

フェミニンケア用品は、現地生産を開始したタイや、「elis」のブランド認知の拡大及び販売促進活動の強化に取り組んだ韓国で拡販が進みました。大人用紙おむつは、高齢化の進む韓国において流通体制の見直しによる販売エリアの拡大や、台湾で病院・施設向け営業の強化を進め、紙製品では中国で、プレミアムトイレットロールのテスト販売を開始しました。

ベビー用紙おむつを起点に各カテゴリーにおいて取組みを進め、各国で多品種販売による複合事業化を推進しています。

セグメント利益は、国内事業、海外事業ともに販売が順調に推移したものの、原材料価格の高騰や、海外での販売促進費用が一時的に高まった影響により、通期では前年同期を下回りました。

 

③ その他

売上高

20,788

百万円

(前年同期比

27.0%増

セグメント利益

2,024

百万円

(前年同期比

35.0%減

 

主に売電事業、機械事業、木材事業であり、売上高は連結子会社及びチップ販売の増加等により、前年同期を上回りましたが、セグメント利益は、売電価格の下落及びコストの高い木材の販売等により、前年同期を下回りました。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、主に連結子会社の増加、及び川之江工場への衛生用紙生産設備新設による建設仮勘定の増加により、前連結会計年度末に比べ28,394百万円増加し、686,141百万円となりました。

負債は、主に連結子会社の増加及び社債の発行により、前連結会計年度末に比べ26,408百万円増加し、493,076百万円となりました。

純資産は、主に投資有価証券売却によるその他有価証券評価差額金の減少、及び利益剰余金の増加により、前連結会計年度末に比べ1,986百万円増加し、193,065百万円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べて0.9ポイント低下し、25.9%となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較して22,647百万円減少し、60,086百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、30,456百万円の収入(前連結会計年度比32,476百万円の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益11,124百万円、減価償却費31,171百万円、減損損失6,848百万円、法人税等の支払額12,907百万円、及び売上債権の増減額(支出)8,012百万円によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、50,194百万円の支出(前連結会計年度比18,800百万円の増加)となりました。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出27,021百万円、及び有形固定資産の取得による支出31,019百万円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、3,076百万円の支出(前連結会計年度比18,961百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入れによる収入52,150百万円、社債の発行による収入24,890百万円、長期借入金の返済による支出73,362百万円、利息の支払額3,462百万円、短期借入金の純増減額(支出)1,826百万円及び配当金の支払額1,620百万円によるものです。

 

 

(4) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

紙・板紙

279,250

111.9

ホーム&パーソナルケア

131,501

122.2

報告セグメント計

410,751

115.0

その他

17,939

102.6

合計

428,690

114.4

 

(注)金額は製造原価によっています。

 

(5) 受注状況

紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業の製品については、需要を予測して見込生産を行っており、特に受注生産は行っていません。

 

(6) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

紙・板紙

313,553

107.4

ホーム&パーソナルケア

196,970

116.7

報告セグメント計

510,523

110.8

その他

20,788

127.0

合計

531,311

111.4

 

(注)セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

なお、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がないため、「相手先別の販売実績」は記載していません。

 

(7) 次期の見通し

紙パルプ業界においては、洋紙の需要減少、原燃料価格の高止まり等、引き続き厳しい状況が続くものと予想されます。

このような状況の中、当社グループは、紙・板紙事業ではグループ全体の抜本的な構造改革の推進により収益商品への生産シフトを進めるとともに、業界トップクラスの古紙処理技術を活用して難処理古紙の有効利用を進めていくことにより、競争優位性を強化していきます。

ホーム&パーソナルケア事業の国内事業では、川之江工場の最新鋭衛生用紙生産設備の稼働による高付加価値商品の安定供給体制の強化を背景に、2017年4月に日清紡HDから取得した紙製品事業のプロダクト・ミックスの最適化を進め、シナジー効果を最大化していきます。海外事業では、生産拠点や出先のある地域を中心に、主力であるベビー用紙おむつをはじめとして、大人用紙おむつ、フェミニンケア用品、ウエットワイプの各カテゴリーで拡販に取り組んでいきます。さらに、川之江工場で生産した衛生用紙を海外へ展開することで、複合事業化を推進していきます。

2019年3月期の連結業績については、売上高550,000百万円、営業利益18,000百万円、経常利益15,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益10,000百万円を予想しています。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、ユーザーニーズの変化に対応した商品の開発・改良に主眼を置き、高付加価値品の商品化、複合商品等、新規分野の開発及び薬品や新素材の研究開発を進めています。

当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は3,280百万円であり、紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業における研究開発活動の状況は、以下のとおりです。

 

(1) 紙・板紙事業

以下の項目を研究開発の主要課題と位置付け、商品開発に取り組んでいます。

生産本部の技術開発部門を技術開発部への統合後、需要構造が変化していく中で、生産技術の向上、特殊紙の新商品開発強化を図るとともに、品質向上による重点拡販品種の拡販をユーザー視点で進めています。新たに当社グループとなったダイオーペーパープロダクツ株式会社(旧会社名 日清紡ペーパープロダクツ株式会社)の洋紙部門とも技術情報の共有、新商品開発の一体運営を行うことでグループとしての技術力の向上、特殊紙化を進めています。

当連結会計年度における研究開発の取組みは以下のとおりです。

紙・板紙事業では競合他社との差別化を図るために新聞用紙を含めた印刷用紙での嵩高、軽量化の生産技術確立と需要に応じた生産設備のシフトを進めています。

高付加価値化については、情報用紙分野でのインクジェット対応商品の拡充、包装用紙・板紙では機能性を付加した原紙の開発を進めてきました。また、自社商品のFSC認証紙化を関係会社を含めた各工場で進めています。

関係会社を中心とした特殊紙の開発については、耐水・耐油といった機能を有した特殊紙の開発、キャリアテープ・工程合紙に代表される工程紙の拡販を進めてきました。

紙・板紙事業に係る研究開発費は、1,167百万円です。

 

(2) ホーム&パーソナルケア事業

以下の項目を研究開発の主要課題と位置付け、商品開発に取り組んでいます。

国内・海外含め売上拡大が期待されるホーム&パーソナルケア事業において、ユーザーニーズの変化に対応した商品の開発・改良に主眼を置き、付加価値品の売上比率を高めるべく開発を進めています。

国内・海外の市場変化に素早く対応できるよう、開発部門の東京本社統合後、各カテゴリーの開発ブランド・マネジメント部門の中に、国内向けの商品開発だけでなく海外向けの商品開発にも関わる人員を配置し、国内・海外の意思決定も含め、効率的な見直しがタイムリーに且つスピーディーに実施可能な体制としました。

当連結会計年度における研究開発の取組みは以下のとおりです。

衛生用紙のトイレットでは、中国での専売商品を開発し、中国で急速に拡大する衛生用途の水に流せるタイプでユーザーが求める柔らかさと紙質を備えたプレミアムトイレットロールを開発し、新発売しました。

ベビー用紙おむつでは、トルコ向けにプレミアム商品「GOO.N Premium Soft」とスタンダード商品「GOO.N Mutlu Bebek」を開発し、新発売しました。国内では、季節にあわせた水遊び用「GOO.N スイミングパンツ」を開発し、ユーザーの要望にあわせた多枚数(12枚入)を含め、リニューアル販売しました。

大人用紙おむつでは、下着らしい見た目を付加し、身体に優しくフィットするプレミアム伸び・ワザ素材を開発し、「アテント うす型パンツ下着安心プラス」を新発売しました。さらに、1日中紙パンツの中に装着していても安心・快適に過ごせるパッドとして、「アテント 紙パンツにつける尿とりパッド4回吸収/6回吸収」をリニューアル発売しました。

ウエット商品では、薬液処方の技術を応用し、すすぎがいらない洗浄液として、洗浄・保湿・肌保護の3つの機能が同時に可能で、肌を健やかに保つ「アテント Sケア すすぎがいらない洗浄液」を開発し、新発売しました。

フェミニンケア用品では、タイでスタートさせたベビー用紙おむつとあわせた商品の複合事業化として、生理用ナプキンのタイ専用商品3シリーズ「elis Fairy Wings」「elis Sensitive Care」「elis Extra Slim」を開発し、新発売しました。

ホーム&パーソナルケア事業に係る研究開発費は、2,039百万円です。

 

(3) セルロースナノファイバー(CNF)

以下の項目を研究開発の主要課題と位置付け、商品開発に取り組んでいます。

当社グループが保有する木質バイオマスから紙の原料となるセルロース類を取り出す生産技術や、木質資源の調達チャネル等を活かし、環境にやさしい再生可能な木質バイオマスを使ったセルロースナノファイバー(以下、「CNF」という。)事業を、新たな柱となる新規事業として研究開発を進めています。CNFの事業化には、品質、用途開発とともに経済合理性に見合う製造プロセスの確立が課題となっています。

当連結会計年度における研究開発の取組みは以下のとおりです。

当社は、革新的先端材料として注目を浴びているCNFについて、これまでの研究開発成果を基盤として、

① 水分散体パイロット設備(生産能力:年間100t)、2016年4月に稼働

② 成形体(CNF高配合のシート)のサンプル供給、2017年8月開始

③ 乾燥体のパイロット設備(生産能力:年間約10t)、2018年1月サンプル提供開始

により、「水分散体」「成形体」「乾燥体」の3つの形態を「ELLEX(エレックス)」として、サンプル供給を進めてきました。

2017年4月に世界初CNF配合トイレクリーナー「キレキラ!トイレクリーナー1枚で徹底おそうじシート」を発売し、さらに、10月にリニューアルし、トイレクリーナー「キレキラ!」全品にCNFを配合して、販売を拡大しています。実用事例がまだ少ないCNFをいち早く採用した着眼点と先進性が評価され、2018年1月には「2017年日経優秀製品・サービス賞 優秀賞 日経MJ賞」を受賞しました。

さらに、コンクリートへのCNFの配合によりひび割れ低減効果を確認し、その他のCNF配合の効果を活かしたコンクリート材料の数年後の実用化を目指して、国内ではまだ事例が少ない本格的な研究開発の取組みを開始しています。

今後、研究開発を加速化して、共同開発先との研究開発も含め、自動車部材、家電筐体など樹脂やゴム等との複合材料、増粘剤用途、成形体の応用展開、紙・日用品製品への展開など事業化に向けて進めていきます。