第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループの経営理念「世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ」には、事業活動を通じて、世界中の人々への心豊かで快適な暮らしにつながる「やさしい未来」を提供したいとの想いを込めています。

当社グループは経営理念の実現に向けて、以下の4つの柱に重点を置いて、全社一丸となって課題解決に取り組んでいます。

<経営理念 4つの柱>

1.ものづくりへのこだわり

現場・現物・現実に基づいた新たな商品と付加価値の創造・提供を通じて、国際社会から信頼される企業グループであり続けます。

2.地域社会とのきずな

各国・各地域の発展に寄与するために、「良き企業市民」として高い倫理観をもって地域社会との調和ある成長を目指します。

3.安全で働きがいのある企業風土

持続的な企業価値の向上を図るために、安全で働きがいのある企業風土づくりに取り組み、社員相互の信頼関係に基づいた一体運営を推進します。

4.地球環境への貢献

地球環境と調和したグローバルな事業展開を通じて環境問題に積極的に取り組み、持続可能な社会の実現を目指します。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

 当社グループの長期ビジョンである2026年度達成目標「売上高8,000億円~1兆円、営業利益率10%」の実現に向けて、2021年度から2023年度までの3年間を対象期間とする第4次中期事業計画(以下、「第4次中計」という)は、さらなる成長を加速する重要な3年間と位置付けています。

第4次中計のスローガン『GEAR UP 次なる成長、新たな未来へ』を掲げ、構造改革・戦略投資の効果の最大化により、さらなる成長の実現を目指します。

 

第4次中計の基本方針は以下の通りです。

①強靭な事業ポートフォリオの確立

(a)紙・板紙事業はこれまでの戦略投資の効果発現と構造改革の継続により競争優位性を構築

(b)ホーム&パーソナルケア事業は複合事業化の加速とさらなるM&Aも視野に、当社の成長・拡大を牽引

(c)セルロースナノファイバー(以下、「CNF」という)等の新規事業により、将来の成長機会を創出

②財務体質の強化

(a)第4次中計の3ヶ年の設備投資は案件を厳選しながら、第5次中計でのさらなる成長を可能とするキャッシュ創出力の強化とキャッシュ・フロー改善を図り、第4次中計期間中の信用格付A格取得を目指す

(b)資本コスト・資本収益性を意識した経営の推進に向けて、事業別収益性評価・投資判断基準の社内管理指標の一つとしてROICを導入

③気候変動問題への対応(2050年カーボンニュートラルの実現)

(a)再生可能エネルギーの利用を促進し、2050年までに石炭ゼロ化を目指す

(b)植林の適正管理と植林面積の拡大に継続的に取り組む

(c)CNF・脱プラスチック製品の事業推進により、環境にやさしい素材転換を推進

 

1.スローガン 「GEAR UP 次なる成長、新たな未来へ」

 

2.数値計画

 

 

第4次中計

2023年度計画

第5次中計

2026年度のイメージ

売上高

7,200

億円

8,000億~1

兆円

営業利益

510

億円

800~1,000

億円

(営業利益率)

(7.1

%)

(10.O

%)

ホーム&パーソナルケア事業

海外売上比率

18.8

30.O

%以上

ROE

10.0

%以上

12.0

%以上

ネットD/Eレシオ

1.0

1.0

倍以下

(参考)純有利子負債

2,700

億円

 

 

 

 

 

  (事業別計画)

 

 

2023年度計画

 

売上高

(億円)

営業利益

(億円)

売上比

紙・板紙事業

3,300

180

5.5%

ホーム&パーソナルケア事業

3,600

300

8.3%

(内訳) 国内事業

2,250

230

10.2%

    海外事業

1,350

70

5.2%

その他事業

(調整額を含む)

300

30

10.0%

 合 計

7,200

510

7.1%

 

 

3.投資計画

成長分野のホーム&パーソナルケア事業に投資を優先配分し、第4次中計の3ヵ年合計で、成長投資765億円、維持投資485億円、合計1,250億円の設備投資を実行します。

さらに、300億円のM&A投資を計画し、オーガニック成長と組み合わせて成長スピードを加速させていきます。

 

 (設備投資1,250億円の内訳)

 

投資区分

 

事業・内容

 

設備投資額

(億円)

成長投資

ホーム&パーソナルケア

555

 

紙・板紙

105

 

その他(CNF・IT・物流)

105

 

765

維持投資

485

合計

 

1,250

 

 

(3) 会社の対処すべき課題

① 事業部門別戦略

(a)紙・板紙事業

・戦略方針:更なる品種シフトを見据えた生産・販売体制の検討と川下事業の強化

新聞・印刷用紙といった「メディア用途の紙」の需要縮小が加速する中で、生産品種を入れ替えながらマシンの稼働率を維持していくことで、より筋肉質な事業へ深化させていきます。特に国内外で堅調な需要増が見込まれる板紙・段ボール分野では、三島工場のN7段ボール原紙マシンを増産し、アジア諸国への輸出拡大と国内の供給体制強化を図ります。
 また、段ボール事業、印刷事業のM&A等も活用しながら拡大し、製紙と川下事業の一体運営によってトータルでの収益力強化を実現していきます。

 

(b)ホーム&パーソナルケア国内事業

・戦略方針:品揃え強化と設備投資による衛生用紙のさらなる成長と吸収体事業等パーソナルケア商品のシェアアップ

コロナ禍を背景とした衛生志向の高まりにより、生活者ニーズの細分化・高付加価値化が進む国内衛生用品市場において、衛生用紙は高付加価値商品の積極的な投入による品揃え強化を通じた売場での競争力アップと、生産能力強化を背景とした供給能力のさらなる向上により、衛生用紙全カテゴリーシェアNo.1のポジションをさらに盤石にしていきます。
 パーソナルケア商品は紙おむつ等のカテゴリーブランドのラインナップ拡充、近隣カテゴリーへの新規参入により、エリエールブランドの強みを最大限に活用して、衛生用紙との両輪でホーム&パーソナルケア国内事業全体を拡大させていきます。

 

(c)ホーム&パーソナルケア海外事業

・戦略方針:成長エンジンの柱として、既進出国での複合事業化と新規市場への進出

中国を中心としたアジア地域の事業拡大とM&Aにより本格進出したブラジル・トルコでのシナジー効果の発現に加えて、海外の成長市場での新規M&Aも検討していくことによって、成長スピードを加速していきます。
 さらに、海外で主力のベビー用紙おむつの拡販を継続しながら、衛生用紙・生理用ナプキン、大人用紙おむつの販売構成を高めて、日本で築いた複合事業化モデルを海外各国でも拡大していくことにより、確固たる事業基盤を構築します。

 

(d)新規事業展開(CNF(セルロースナノファイバー))

CNFは、研究開発の段階を経て、この数年の間に自社商品トイレクリーナー「キレキラ!」へのCNF配合、卓球ラケット用部材への活用、レースカーの車体外装全体・内装へのCNF実装といった商業化・用途展開を進めてきました。第4次中計では、2022年3月に稼働したパイロットプラントで一貫製造工程の技術確立に向けた実証を進め、自動車部材・家電製品など幅広い用途展開が期待できるCNF複合樹脂の生産性向上とコストの大幅低減を実現し、商業化プロセスに向けて、用途展開を加速させ、CNF配合による軽量化やプラスチック使用量削減等により、CO2削減にも貢献していきます。

 

(e)コーポレート部門のグローバル対応

当社グループ発展のためには、海外事業の拡大が不可欠であり、海外の成長市場への投資とともに、適切なリスクマネジメントが重要な要素であると考えています。そのため、人事・法務・経理・財務部等のコーポレート部門では、「事業の成長・拡大に必要な経営資源の安定調達と最適配分」、「グループガバナンス体制の一層の強化とリスクマネジメントの充実」に重点を置いて、事業部門との一体運営で海外事業の拡大に取り組んでいきます。

 

② サステナビリティの取組み

当社のパーパス(存在意義)は社是「誠意と熱意」をもって「3つの生きる(衛生・人生・再生)」を成し遂げ、「やさしい未来」を実現することです。経営理念の4つの柱「ものづくりへのこだわり」「地域社会とのきずな」「安全で働きがいのある企業風土」「地球環境への貢献」を体現する中で、過去から取り組んできた社会課題解決とSDGsを連動させて、事業展開を通じてSDGsの達成に貢献していきます。

 

(a)気候変動への対応

当社グループは、昨年、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、4つの要素「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「目標と指標」について、2022年4月にホームページ上で開示しました。また、TCFD提言への賛同表明と同時に、事業戦略と連動させる形で、「2050年カーボンニュートラルの実現」を目指すことと、マイルストンとして「2030年化石由来のCO2排出量46%削減(2013年比)」を宣言し、そのロードマップも開示しました。カーボンニュートラルを実現するため、基幹工場である三島工場の石炭ボイラー(全3缶)を順次停止していく計画です。まず、2030年までに、廃棄物を燃料としたリサイクルボイラーを導入し1缶目を停止します。2缶目は、現状、外部へ売電しているバイオマス(黒液回収)ボイラーによる電力を自家消費に切り替えることで停止します。3缶目は、新たな燃料・技術・設備により停止する計画であり、単独での導入が難しいとして、2021年6月に当社を含む地元企業・自治体・金融機関と協働で「四国中央市カーボンニュートラル協議会」を設立しました。これらの燃料転換の取り組みに加え、更なる省エネの推進や植林事業の拡大によってCO2削減に貢献し、カーボンニュートラルを実現していきます。

 

(b)人的資本に関する課題

従業員も当社にとって重要な経営資源であり、人財育成とダイバーシティ&インクルージョンにも取り組んでいます。当社の成長エンジンである海外事業を担う人財を計画的に育成するため、従来からの海外留学等に加え、若手の海外研修、海外勤務ワークショップ、グローバルマインドセット研修等を実施しています。また、「自ら考え、決断して実行する」自律型人財の育成を目指し、外部機関でのマネジメント研修、MBAの取得、キャリア選択社内公募制度を設ける等、社員が自律的にキャリア形成・能力開発できる体制を整えており、継続して取り組んでいきます。また、多様な人財、特に女性の活躍推進は、当社の成長に不可欠と考えており、「ダイバーシティ経営」を推進しています。積極的に女性の配属を増やし、管理職への登用を推進するため、経営層・管理職を対象とした推進の目的・効果を正しく理解し実践するための研修等にも、継続して取り組んでいきます。

 

(c)グローバルな社会貢献・地域社会との共生

当社グループの発展のため、グローバル展開を加速させ、世界中での「衛生改善(衛生習慣の普及)」や「女性の自立支援」を目指しています。ザンビアにおける生理を含む健康相談・衛生知識の普及活動、女性の自立を支援する「ハートサポートプロジェクト」や、中国での児童病院への紙おむつの寄贈を継続して実施していきます。また、地域社会との共生も重要視しており、植林事業を展開するチリで地域住民に対して、果樹栽培の技能実習を継続して実施する等、地域経済発展にも取り組んでいきます。こうした社会貢献・地域社会との共生により企業としての責任を果たしながら、事業活動を通じた社会課題解決によりSDGsの達成に貢献し、当社グループの経営理念を実現していきます。

 


 

 

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書等に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重大な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1) 需要・市況変動による影響

当社グループは、紙・板紙事業、ホーム&パーソナルケア事業及びその他の事業を行っていますが、主力製品である紙・板紙製品及び家庭紙製品の大幅な需要減少、製品市況の著しい下落により販売数量・販売金額の減少が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

紙・板紙事業部門においては、品種毎の需要変動や市況変動に対し、基幹工場である三島工場・可児工場にて柔軟に生産品種のシフトを行うといった生産体制の整備・見直しを実施しています。

また、ホーム&パーソナルケア事業部門においては、家庭紙製品における大幅な需要減少、製品市況の著しい下落により販売数量・販売金額の減少が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対して、特定の商品カテゴリーにおける需要変動または市況下落が全体に及ぼす影響を極小化できるよう、衛生用紙から吸収体製品まで幅広い商品ラインナップを持ち、それらを複合的に組み合わせた営業戦略を遂行するとともに、価格で売る営業から品質・付加価値で売る営業へのシフトを加速させ、市況の変動に負けない強い営業スタイルを確立しています。

 

(2) 原燃料価格変動、及び為替相場の変動による影響

当社グループは木材チップ・古紙・薬品・重油・石炭等の原燃料を国内及び海外から購入しており、原燃料価格の変動に加え、外貨建てで取引されている原燃料の調達に関しては為替相場の変動も、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、為替相場変動については、海外への紙・板紙製品及び家庭紙製品の輸出販売や海外子会社での販売活動にも影響を与える可能性があります。なお、当社グループでは為替相場変動による経営成績への影響を軽減する目的で、一部の取引に為替予約を利用したリスクヘッジを実施しています。また、原燃料価格変動に対する取引先を含めた体制強化や情報交換の活発化の重要性を踏まえ、「SDGs調達」を推進することで、取引先と一体となってCSRやSDGsに配慮しつつ、公平・公正な取引の実現、品質・技術力の向上、事業継続計画の策定による安定供給体制の確保を図っています。

 

(3) 海外事業による影響

当社グループは成長戦略のひとつとして、ホーム&パーソナルケア海外事業部が中心となって中国、韓国、東南アジア諸国、トルコ、ブラジル等での事業展開に取り組んでいますが、海外における事業展開には為替相場の変動や現地政府による規制、外交関係や国民感情の悪化、政治不安等による経済環境の変化等が発生するリスクがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
 これらに対し当社グループでは、グループ各社や日本の担当部署が収集した最新情報を関係者間で共有し、いち早く変化の兆候をとらえることで、リスクの最小化を図っています。

 

(4) 金利変動による影響

当社グループは有利子負債の削減に取り組んでいますが、大幅な金利の上昇が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループでは金利変動による経営成績への影響を軽減するため、主として固定金利の長期借入にて資金調達を行うことにより、短期的な金利上昇リスクへの対応を図っています。

 

(5) 投資有価証券の価格変動による影響

時価のあるその他有価証券は決算日の市場価格等に基づく時価法により評価するため、決算日の株価によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループでは政策保有株式の縮減を進めており、保有株式を削減することで価格変動による影響も総額として縮小させていく方針です。

 

(6) 災害による影響

当社グループの生産、物流拠点等がある地域で災害が発生した場合には、生産設備の破損、操業の中断や遅延、物流機能の停止、原材料・製品・商品の滅失、復旧費用の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そうした中で当社グループでは、災害発生時の被害の極小化、事業の早期復旧を図るため、グループを横断したBCM(事業継続マネジメント)の整備、実効性向上に向けた取り組みを進めています。

 

(7) 法的規制・訴訟による影響

①法的規制に関するリスク

当社グループは、地球温暖化防止に関するCO2排出量等の環境規制、知的財産権に関する法令や商品の表示に関する各種規制、独占禁止法その他事業の遂行に関連する各種法令、ならびに諸外国の類似の法令に則って事業を行っています。
 当社グループでは、法令、社会的規範の遵守等、コンプライアンス体制の強化に取り組んでいますが、法的規制に変更が生じた場合には当社グループの事業または業績に影響を及ぼす可能性があります。
②訴訟に関するリスク

当社グループは事業活動に関連して各種の訴訟等に巻き込まれるおそれがあり、その結果によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 財務制限条項の付された借入契約による影響

当社グループが複数の金融機関との間で締結している借入契約の一部には、各年度の決算期の末日における連結貸借対照表の純資産の部の金額や、各年度の決算期における連結損益計算書の経常損益等を基準として財務制限条項が付されており、これに抵触した場合には借入金の返済を求められ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 固定資産の減損会計による影響

当社グループは、有形固定資産やのれん等の固定資産を保有していますが、これらの資産については減損会計を適用し、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証しており、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っています。しかし、将来の経営環境の変化等により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 新型コロナウイルス感染症拡大の影響

当社グループは、顧客、取引先及び社員の安全を第一に考え、さらなる感染拡大を防ぐため、WHO及び各国保健行政の指針に従った感染防止策の徹底、従業員の体調管理、テレワークの導入や出張・会議の制限等の対応を各部門で継続しています。今後、感染症の再拡大が起れば、世界的な景気の悪化により販売数量の減少や原材料価格の高騰、原材料確保の難化、物流機能の低下等が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、次期の見通しについては、不確実性、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と乖離する可能性があります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症が一時的な収束と変異株の出現等による再拡大を繰り返し、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が断続的に出されたことにより、様々な経済活動が長期にわたり制約を受け、景気回復には依然として力強さはありません。また、世界的な原油、石炭等の燃料価格の高騰は、ロシアのウクライナへの軍事侵攻による国際情勢の不安定化により長期化し、景気の先行きは極めて不透明な状況となっています。

このような状況の中で当社グループは、当連結会計年度より新たな3カ年計画である第4次中期事業計画「GEAR UP 次なる成長、新たな未来へ」(2021年5月)をスタートさせました。「強靭な事業ポートフォリオの確立」に向け、ペーパータオル生産設備の稼働(同年7月)や、衛生用紙の生産設備の増設(同年10月)等の「紙・板紙事業とホーム&パーソナルケア事業を横断した構造改革」を着実に実行し、三島工場の競争力のあるパルプを最大限に活用した高付加価値品への生産シフトを進めています。

当連結会計年度の紙・板紙事業においては、前年度のコロナ禍による経済活動の停滞から回復しつつある状況を反映して、チラシなどの広告需要が増加し、輸出向けの段ボール原紙の需要も堅調に推移したことで、洋紙、板紙・段ボールは販売数量・販売金額とも前年同期を上回りました。一方で、物流費、原燃料費の高騰、温暖化ガス削減等の環境対策費用の増加等を受け、生産体制の見直しや経費削減など徹底したコストダウンを続けるとともに当第4四半期からは販売価格の修正にも取り組んできました。

ホーム&パーソナルケア事業において、国内事業は、新たな生産設備の稼働による供給能力の強化を背景に需要が伸長しているペーパータオルやソフトパックティシュー等の衛生用紙の拡販が順調に進みました。吸収体カテゴリーでは、キャラクター商品のラインナップ拡充や幅広い生活者層に対して訴求力のある著名人や有名ブランドとのコラボレーション商品の投入、ウエットワイプやマスクなどのカテゴリーではデザイン性の高い企画品を連続投入したことで、国内事業においては販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。一方、海外事業においては、主要生産拠点のあるタイ、インドネシア、ブラジルでのコロナ禍による行動制限などが影響し、販売数量・販売金額ともに期初の計画には届きませんでした。

これらの結果、紙・板紙事業では増収増益となり、ホーム&パーソナルケア事業では、パルプ、荷資材等の価格高騰によるコストアップや海外拠点での主にコロナ禍による減益の影響により、増収減益となりました。

なお、当連結会計年度の売上高、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも前年同期を上回り、売上高については9期連続の増収且つ7期連続で過去最高を更新し、経常利益については2期連続、親会社株主に帰属する当期純利益については3期連続で過去最高を更新しました。

 

当連結会計年度の連結業績は、以下のとおりです。

① 売上高

売上高は、主に紙・板紙事業において、国内需要の回復や段ボール原紙の輸出が堅調であったことで、前連結会計年度に比べ49,386百万円増加(前年同期比 8.8%増)し、612,314百万円となりました。

② 営業利益

営業利益は、主に紙・板紙事業においてメディア用途の紙から需要の伸長が見込める品種へのシフトや継続的な生産性の改善、ホーム&パーソナルケア国内事業での販売が好調に推移したこと等により、前連結会計年度に比べ695百万円増加(前年同期比 1.9%増)し、37,569百万円となりました。

③ 経常利益

経常利益は、営業利益の増加及び為替差益の増加により、前連結会計年度に比べ3,217百万円増加(前年同期比 9.3%増)し、37,696百万円となりました。

④ 特別損益

特別利益は、主に為替差益の減少により、前連結会計年度に比べ628百万円減少し、3,715百万円となりました。特別損失は、主に固定資産除売却損の減少により、前連結会計年度に比べ1,282百万円減少し、4,822百万円となりました。

⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,605百万円増加(前年同期比 7.3%増)し、23,721百万円となりました。

この結果、1株当たり当期純利益は前連結会計年度に比べ4円18銭増加し、142円91銭となりました。

 

セグメントの経営成績は、次のとおりです。

① 紙・板紙

売上高

327,429

百万円

(前年同期比

8.3%増

セグメント利益

22,328

百万円

(前年同期比

14.1%増

 

新聞用紙は、広告掲載がコロナ禍による停滞から回復傾向にあり、新聞頁数が増加したことで、販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。

洋紙事業(新聞を除く)では、チラシ及びパンフレット等の需要が回復しつつあることや、ワクチン接種券や受診票等のコロナ関連の需要の増加もあり販売数量・販売金額とも前年同期を上回りました。

板紙・段ボールは、コロナ禍による経済活動の制限が解除されつつある状況を反映して、国内需要が回復してきたことから販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。また、段ボール原紙の輸出についても、海外での感染症の影響や直近の国際情勢の不安定化があるものの通年では需要は堅調に推移しました。

売上高及びセグメント利益は、原燃料価格の高騰の影響を大きく受けているものの、収益性の高い品種へのシフトや生産性改善、徹底したコスト削減等によって、前年同期を上回りました。

 

② ホーム&パーソナルケア

売上高

257,282

百万円

(前年同期比

8.1%増

セグメント利益

11,924

百万円

(前年同期比

19.1%減

 

国内事業において、衛生用紙は、川之江工場の生産能力増強を背景に、需要が伸長するペーパータオル、キッチンペーパー、長尺トイレットを中心とした新商品の上市や、基幹商品である「エリエールティシュー」のリニューアルの効果もあり、販売が順調に拡大し、販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。

ベビー用紙おむつは、好評のディズニーデザインを「スイミングパンツ」「グーンプラス」にも採用し、より親しみ易い商品ラインナップにするとともに、「グーンまっさらさら通気」のデザイン企画品を投入し、いずれも生活者から高評価を得ました。これらの結果、販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。

大人用紙おむつは、市販ルートで販売している「夜1枚安心パッド」シリーズ及びリニューアルした「下着爽快プラス」の拡販が順調に進みました。業務ルートでは、「Sケア夜1枚安心パッド」による交換回数削減の提案が多くの病院・施設で受け入れられ、新規配荷が大きく伸長しました。これらの結果、販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。

フェミニンケア用品は、写真家・映画監督の蜷川実花氏やフィンランドのテキスタイルブランド「Finlayson(フィンレイソン)」とコラボレーションした「エリスコンパクトガード」の企画品が好評を得ました。これらの結果、販売数量は前年同期を大きく上回りましたが、市況単価下落の影響を受け、販売金額は前年同期並みとなりました。

ウエットワイプは、「キレキラ!」ブランドのフロア用ウエットシートやキッチンクリーナー、抗菌成分をプラスした除菌ウエット等、当期にラインナップ化した新商品がいずれも好評で、販売数量については前年同期を上回りましたが、市況単価下落の影響により、販売金額は前年同期を下回りました。

マスクは、国内の需給が安定する中、通気性の高い「ハイパーブロックマスクムレ爽快」、カラーマスク等の新商品が好調で、販売数量・販売金額ともに前年同期を上回りました。

海外事業において、中国では、ベビー用紙おむつの販売は、伸長が著しいパンツタイプの拡販と、出生人口が減少する中でも経済発展により市場伸長が見込まれる地方都市での展開商品の拡充と販促強化に取り組みました。また、複合事業化として品揃えや配荷拡大を進めた紙製品、ウエットワイプ、ナプキン等の売上増加により、販売金額は前年同期を上回りました。

東南アジア諸国では、タイではウエットワイプやナプキン等の拡販を進め、インドネシアでは伸長しているEコマースでの販売を強化しましたが、コロナ禍の行動制限によるベビー用紙おむつの販売減少の影響が大きく、販売金額は前年同期を下回りました。

海外事業全体では、前年第1四半期末から連結範囲に含めたブラジル・トルコの子会社の業績が、当期では期首より寄与したこともあり、販売金額は前年同期を上回りました。

これらの結果、ホーム&パーソナルケア事業では、売上高は、前年同期を上回りましたが、パルプ等の原材料価格の高騰や、海外事業の販売減を国内事業で補いきれず、セグメント利益は前年同期を下回りました。

 

③ その他

売上高

27,602

百万円

 (前年同期比

22.8%増

セグメント利益

3,295

百万円

 (前年同期比

30.7%増

 

主に売電事業、機械事業、木材事業及び物流事業であり、売上高は前年同期を上回り、黒液発電設備の電力販売や、海外での木材チップの販売が順調であったこと等により、セグメント利益も前年同期を上回りました。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金の減少等により、前連結会計年度末に比べ9,360百万円減少し、840,441百万円となりました。

負債は、長期借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べ29,275百万円減少573,736百万円となりました。

純資産は、利益剰余金の増加等により前連結会計年度末に比べ19,915百万円増加266,704百万円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べて2.6ポイント上昇し、30.8%となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較して41,403百万円減少し、88,897百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、71,395百万円の収入(前連結会計年度比7,184百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益36,588百万円、減価償却費37,810百万円によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、62,420百万円の支出(前連結会計年度比41,281百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出63,789百万円、無形固定資産の取得による支出3,314百万円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、50,609百万円の支出(前連結会計年度比114,198百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入の返済による支出65,157百万円によるものです。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

事業活動における資金需要の主なものは、運転資金需要と投資資金需要です。運転資金需要のうち主なものは、生産・販売活動における原材料及び商品仕入、製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資資金需要の主なものは、事業戦略の遂行に必要な投資や品質改善・安全・環境のために必要な設備投資等です。

運転資金につきましては主に金融機関からの短期借入金で調達し、投資資金につきましては主に長期社債及び金融機関からの長期借入金により調達しています。また、今後の資金需要や金利動向等の調達環境、既存借入金や長期社債の償還時期等を総合的に考慮し、調達額及び調達手段等を適宜判断して実施することとしています。

なお、当社は国内子会社との間で導入しているキャッシュマネジメント・システムの一層の機能充実による資金効率化により、成長投資を進めながらも財務規律の維持に努めています。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表及び財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響は、ワクチンの普及や治療薬の開発等により緩和されつつありますが、オミクロン株による世界的流行は継続しており、感染対策と経済活動の両立は過去に例の無い課題となっています。また、ロシア・ウクライナ情勢に起因した原材料価格の高騰等、国際情勢に重大な影響を及ぼす事象の発生は続いており、現時点で予測することは困難な状況です。これら外部環境の変化による業績予想及び会計上の見積りへの影響については、世界的な経済低迷やイベントの自粛、テレワークの拡大等によって洋紙の需要は縮小しているものの、一方では生活者の衛生意識の向上によりマスクやウエットティシューの需要は拡大しており、コロナ禍が一時的な拡大と収束を繰り返すことと連動して各製品の需給も変化しながら、状況は徐々に回復に向かうと仮定した見積りに基づき、固定資産の減損等の会計上の見積りを行っています。しかし、世界的な景気の回復には相当の時間を要する見込であること、また、コロナ禍の拡大や国際情勢の変化による経済活動への影響は不確定要素が多いことから、上記の仮定に変化が生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

紙・板紙

273,954

109.4

ホーム&パーソナルケア

172,310

106.4

報告セグメント計

446,264

108.2

その他

23,206

104.7

合計

469,470

108.0

 

(注)金額は製造原価によっています。

 

(7) 受注状況

紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業の製品については、需要を予測して見込生産を行っており、特に受注生産は行っていません。

 

(8) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

紙・板紙

327,429

108.3

ホーム&パーソナルケア

257,282

108.1

報告セグメント計

584,712

108.2

その他

27,602

122.8

合計

612,314

108.8

 

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しています。

 なお、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がないため、「相手先別の販売実績」は記載していません。

 

(9) 次期の見通し

国内においては、新型コロナウイルス感染症は一時的な収束と再拡大を繰り返しながら経済活動が一定の制約を受けるウィズ・コロナの生活スタイルは、制約は緩やかになりながらもしばらくは続くものと予想しています。また、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって国際情勢が不安定化し、国際物流の滞留や長期的な資源価格高騰により物価が上昇する等、国内外における景気の先行きは極めて不透明な状況です。紙パルプ業界においても、洋紙の市場はさらなる縮小が見込まれ、重油、石炭等の価格高騰による原燃料費、物流費などの急激なコストアップが影響し、過去にないほどの厳しい経営環境が続くものと予想します。

このような状況の中、当社グループは、紙・板紙事業では、三島工場のコスト競争力のあるパルプを最大限活用した高付加価値な紙製品への生産シフトを継続するとともに、堅調な板紙のさらなる拡販やSDGsの取組みに対応した脱プラスチック・減プラスチック商品の開発に取り組みます。また、梱包・包装用途の紙では、川上(原紙)から川下(最終製品)までトータル提案が可能な当社のグループ力を最大限に活用して拡販につなげていく考えです。

一方、ホーム&パーソナルケア事業については、2021年10月に川之江工場での2台目となる衛生用紙の生産設備の増設により、高付加価値商品をより安定供給できる体制を構築し、トップブランドとしての地位を盤石なものとしました。また、コロナ禍での新たな生活様式に対応したマスクや除菌ウエット、ペーパータオルの生産体制の強化などにより、今後も需要動向の変化に柔軟に対応して参ります。海外では、主力であるベビー用紙おむつを中心として、フェミニンケア用品や紙製品、大人用紙おむつ、ウエットワイプなど多様なカテゴリー商品の生産・販売による複合事業化を推進し、ブラジルの子会社サンテルなどの新たな生産拠点での事業拡大を進め海外売上高の構成比を高めていきます。

これらの取り組みにより、2023年3月期の連結業績については、売上高650,000百万円、営業利益25,000百万円、経常利益21,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益10,000百万円を予想しています。

 

4 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5 【研究開発活動】

当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は3,547百万円であり、紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業等における研究開発活動の状況は以下のとおりです。

 

(1) 紙・板紙事業

商品開発・パッケージ化推進グループでは、特殊紙分野の新商品開発を担当しており、昨今の脱プラスチック・環境配慮の要求に対応しながら、市場ニーズに合った商品の企画提案・開発を行っています。生産技術グループでは、ユーザーと直接対話を行いながらFSC認証製品化、再生紙化といった国内ユーザーのニーズを満たす商品のリニューアルや新規商品開発の他、海外で差別化が図れる高強度の板紙生産技術開発に取り組んでいます。また、昨今の古紙資源の海外輸出増加による古紙不足に対応するため、未利用古紙(難処理古紙)のリサイクル技術確立を進めています。

当連結会計年度における研究開発の取組みは以下のとおりです。

① フィルム代替商品の開発に関する取組み

食品・菓子類の2次包材をフィルムからラミネートに変更し減プラを進める動きが増えています。これにはユーザーが使用している既存の封かん設備を流用したいとの要望が強く、薄くて強度がありかつ印刷適性の良い紙が求められ、2020年「FS-RPSペーパー」(Reduction Plastic Support)を上市し、大手菓子メーカーの2次包材に採用されたほか、当社家庭紙商品の包材への展開も順次計画しています。

② プラスチック代替素材の開発に関する取組み

紙製ナイフ、マドラー等の原紙として必要な剛性を持つプラスチック代替素材の高密度厚紙「エリプラペーパー」に、耐水性・耐油性を付与することにより、水分や油分を多く含む食品の容器としても使用可能な「エリプラ+(プラス)」の開発、改良に取り組んでいます。また、協力企業とともに加工・成型に関わる技術の改良も進め、見た目の美しさや使用感の向上にも取り組んでいます。

③ ラミネート紙代替素材の開発に関する取組み

揚げ物やホットスナック等の包装用原紙として必要な機能である耐油性とヒートシール性を併せ持つ、ラミネート紙代替素材の「ヒートシール耐油紙」の開発、改良に取り組んでいます。当製品はポリプロピレンやポリエチレンを貼り合わせたラミネート紙と比較して、プラスチック原料の使用量を30%以下(当社製品比)にできる環境に配慮した素材です。また、ラミネート紙に比べて透湿性があるため、電子レンジで温めた際に食感を保持することができます。

④ フィルムタック分野での取組み

合成紙タック紙の品揃え拡充のため、粘着剤に植物性由来の原料を使用することで環境に配慮した「バイオマス粘着剤フィルムタック紙」を開発し、販売を開始しました。古紙としてのリサイクルし易さを向上させるため、当社情報用紙の平版ラベルへの採用も行っています。

⑤ 輸出向け高破裂板紙開発の取組み

2020年4月にN7マシンの板紙への転抄を終え、当初計画では25,000t/月の販売を計画していましたが、現状は32,000t/月まで増加しています。中国・ベトナムで拡販を進めるため高破裂強度かつFSC対応も可能な製品の開発を進めながら、電気製品用の箱を中心に順調に20,000t/月以上を海外販売しています。今後は、中国・ベトナム企業が追随できない高強度で高米坪な商品群も開発に加え、自動車部品や農産物などの重量物の運搬用途へ展開を図ります。

紙・板紙事業に係る研究開発費は、1,117百万円です。

 

(2) ホーム&パーソナルケア事業

中期事業計画の売上及び収益の目標達成を目指し、国内・海外含め売上拡大が期待されるホーム&パーソナルケア事業において、ユーザーニーズの変化に対応した新商品開発と既存商品の改良に主眼を置き、付加価値商品の売上比率を増やすべく開発を進めています。

当連結会計年度における研究開発の取組みは以下のとおりです。

① 衛生用紙での取組み

トイレットペーパーの「芯」に特許取得の消臭技術を採用した「エリエール 消臭+トイレットティシュー」に、壁や床に付着した尿臭の発生を抑える防臭機能を新たに追加し、リニューアルしました。また、エリエール史上初となる3.2倍巻の長巻タイプでありながらも、やわらかな肌ざわりを実現させた「エリエールi:na(イーナ)トイレットティシュー 3.2倍巻」を新発売しました。

② ベビー用紙おむつでの取組み

2020年秋にワンランク上の肌ケア商品として上市したGOO.Nプラスは2021年12月にリニューアルしました。特にパンツはお腹周りのシャーリング糸ゴムと不織布の接着をホットメルト(糊)から超音波接着に変更し、大幅に柔らかさと伸縮性を向上させ、肌への摩擦・擦れを大きく低減させました。また、社会全体のコロナ禍による閉塞感の中で、少しでも育児が楽しくなり、お子様とのコミュニケーション、育成の手助けとなるよう、通常品のまっさらさら通気に加えて、GOO.Nプラスもディズニーデザインに一新しました。

③ 大人用紙おむつでの取組み

当社独自の「伸び・ワザ素材」採用の「下着爽快プラス超うす型パンツ」において、通気性を従来品より約20%アップ、立体ギャザーを柔らかくして足回りにフィットさせる改良で、さらに快適な履き心地の商品にリニューアルしました。

④ フェミニンケア用品での取組み

生理用ナプキンセグメントにおいて、「エリス 素肌のきもち」シリーズでは、保湿成分を配合した表面材や東北大学大学院との共同研究結果をもとに考案した中空構造ギャザーの採用など、肌へのやさしさを追求したリニューアルを実施しました。また、活動的な女性に向けた「エリス コンパクトガード」シリーズでは、機能性とデザイン性を備えた商品にリニューアルしました。
 インコンチネンスセグメントにおいては、女性の悩みに寄り添う吸水ケアブランド「ナチュラ」としてブランドを一新するとともに、摩擦の少ない表面材や体の動きにフィットしやすいエンボス構造などを新たに採用し、ナチュラルな着け心地を実現した商品としてリニューアルしました。

⑤ ウエットワイプでの取組み

2020年初頭からのコロナ禍の中で生活者の様々なニーズに対応するため、2021年10月に除菌・抗ウイルスブランドでは「抗菌成分プラス(48時間抗菌)」を新規上市すると共に、全品種にボトルタイプに加えてBOXタイプも品揃えしました。また、「キレキラ!」ブランドにおいては、テーブル・家電・家具等への掃除・除菌ニーズが高まっていることから、リビング専用の除菌・抗ウイルスウエット「キレキラルームクリーナー」を新規上市しました。更に、Puanaブランドでは2022年3月に、従来の「Puana純水99%」を、手・口周りを清潔に保ちつつ保湿剤によりお肌も潤う対人用の化粧水ウエットにリニューアルしました。

⑥ マスクでの取組み

マスク装着の長時間化が習慣化するなか、色付きマスクの需要が拡大しています。このような生活者動向の変化に合わせて、「ハイパーブロックマスク」シリーズに肌なじみのよいやさしい色合いの4色(ローズ、ピンクベージュ、グレー、ナチュラルホワイト)のカラーマスクを新規上市しました。

ホーム&パーソナルケア事業に係る研究開発費は、2,405百万円です。

 

(3) CNF

CNFは、紙やパルプにはない特異的な性質を活かして、多種多様な用途への展開が期待されています。また、植物バイオマスから取り出した天然由来の繊維であり、製紙事業で培った技術を活かしながら、CNFの製造とその利活用を見出すことで低炭素社会の実現にも貢献できるよう研究開発を進めています。

当連結会計年度における研究開発の取組みは以下のとおりです。

① CNF複合樹脂ペレットに関する取組み

第5次中計での本格的事業化を目標に、市場が期待できる汎用性材料としてコスト優位性がキーとなる複合樹脂を中心に、一貫生産プロセスの開発を進め、三島工場内にプラントを導入し商業運転開始を目指して開発を進めています。

② CNF成形体に関する取組み

2018年度から取り組んできたレースカーへの実装について2021年度も継続し、引き続き車体外装への成形体、ドアミラー筐体への複合樹脂の実装を進め、31㎏(47%)の軽量化を達成しました。また、レースカーへの実装事例を基に、道後プリンスホテル株式会社(松山市)の公道走行バスのフロントバンパーをヤマセイ株式会社(松山市)と共同で製作し実装しました。鉄製だったフロントバンパーをCNF成形体を積層したハンドレイアップ品としたことにより、2.1kg(42%)の軽量化を実現しました。

③ CNF量産化に関する取組み

量産化に向けたCNF複合樹脂一貫製造プロセス開発として、NEDO助成事業として取り組んできたCNFの前処理プロセスの開発、複合樹脂生産性の飛躍的改善を目指した芝浦機械株式会社との共同開発を進め、その成果を基に三島工場にパイロットプラントを設置し、3月に稼働させました。また、新たに稼働させた複合樹脂プラントを含む3つの実証設備にてCNF量産化を検討する事業化グループ、CNFの用途展開を進める開発グループ、ユーザーと連携した用途開拓を進める東京駐在グループの3グループ制で開発を進めています。

CNFに係る研究開発費は、紙・板紙事業に係る研究開発費に含んでいます。