第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

(1)会社の経営の基本方針

私たちは、経営理念である「世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ」を実現するため、「誠意と熱意を持つ者が事を成す」という創業の精神を胸に、衛生・人生・再生の「3つの生きる」を成し遂げていきます。この「3つの生きる」は経営理念の4つの柱「ものづくりへのこだわり」「地域社会とのきずな」「安全で働きがいのある企業風土」「地球環境への貢献」を通じて展開しています。

 

<大王グループのパーパス>

「誠意と熱意」をもって、「3つの生きる」を成し遂げ、「やさしい未来」を実現する。これが私たちの存在意義です。すなわち経営理念「世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ」そのものです。

 

<大王グループのビジョン:3つの生きる>
衛生:人々の健康を守る
人生:人生の質を向上させる
再生:地球を再生する

 


 

 

<経営理念4つの柱>

1.ものづくりへのこだわり(Dedicated)

現場・現物・現実に基づいた新たな商品と付加価値の創造・提供を通じて、国際社会から信頼される企業グループであり続けます。

2.地域社会とのきずな(Attentive)

各国・各地域の発展に寄与するために、「良き企業市民」として高い倫理観を持って地域社会との調和ある成長を目指します。

3.安全で働きがいのある企業風土(Integrated)

持続的な企業価値の向上を図るために、安全で働きがいのある企業風土づくりに取り組み、社員相互の信頼関係に基づいた一体運営を推進します。

4.地球環境への貢献(Organic)

地球環境と調和したグローバルな事業展開を通じて環境問題に積極的に取り組み、持続可能な社会の実現を目指します。

 

<大王グループのマテリアリティ>

大王グループでは、ステークホルダーの関心ごとと当社グループにおいて、今対応しなければ、近い将来企業価値に影響を与えるという視点から、リスクと機会(対応)を抽出するとともに、将来のありたい姿からやるべき事項を抽出し、現時点では何が重要かを取締役会などで議論し、10のマテリアリティ(重要課題)を特定しています。

 


 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループの長期ビジョンである2026年度達成目標「売上高8,000億円~1兆円、営業利益率10%」の実現に向けて、2021年度から2023年度までの3年間を対象期間とする第4次中期事業計画(以下、「第4次中計」という)は、さらなる成長を加速する重要な3年間と位置付けています。

第4次中計のスローガン『GEAR UP 次なる成長、新たな未来へ』を掲げ、構造改革・戦略投資の効果の最大化により、さらなる成長の実現を目指します。

 

第4次中計の基本方針は以下の通りです。

① 強靭な事業ポートフォリオの確立

(a)紙・板紙事業はこれまでの戦略投資の効果発現と構造改革の継続により競争優位性を構築

(b)ホーム&パーソナルケア事業は複合事業化の加速とさらなるM&Aも視野に、当社の成長・拡大を牽引

(c)セルロースナノファイバー(以下、「CNF」という)等の新規事業により、将来の成長機会を創出

② 財務体質の強化

(a)第4次中計の3ヶ年の設備投資は案件を厳選しながら、第5次中計でのさらなる成長を可能とするキャッシュ創出力の強化とキャッシュ・フロー改善を図り、第4次中計期間中の信用格付A格取得を目指す

(b)資本コスト・資本収益性を意識した経営の推進に向けて、事業別収益性評価・投資判断基準の社内管理指標の一つとしてROICを導入

③ 気候変動問題への対応(2050年カーボンニュートラルの実現)

(a)再生可能エネルギーの利用を促進し、2050年までに石炭ゼロ化を目指す

(b)植林の適正管理と植林面積の拡大に継続的に取り組む

(c)CNF・脱プラスチック製品の事業推進により、環境にやさしい素材転換を推進

 

 

1.スローガン 「GEAR UP 次なる成長、新たな未来へ」

 

2.数値計画

 

 

第4次中計

2023年度目標

2023年度計画

第5次中計

2026年度のイメージ

売上高

7,200

億円

7,000

億円

8,000億

~1兆円

営業利益

510

億円

180

億円

800~1,

000億円

(営業利益率)

(7.1

%)

(2.6

%)

(10.0

%)

ホーム&パーソナルケア事業

海外売上比率

18.8

14.3

30.0

%以上

ROE

10.0

%以上

1.7

%以上

12.0

%以上

ネットD/Eレシオ

1.0

1.6

1.0

倍以下

(参考)純有利子負債

2,700

億円

3,900

億円

 

 

 

 

 

 

 

  (事業別計画)

 

 

第4次中計

2023年度目標

2023年度計画

 

売上高

(億円)

営業利益

(億円)

売上比

売上高

(億円)

営業利益

(億円)

売上比

紙・板紙事業

3,300

180

5.5%

3,700

115

3.1%

ホーム&パーソナルケア事業

3,600

300

8.3%

3,000

40

1.3%

(内訳) 国内事業

2,250

230

10.2%

2,000

40

2.0%

    海外事業

1,350

70

5.2%

1,000

0

-

その他事業

(調整額を含む)

300

30

10.0%

300

25

8.3%

 合 計

7,200

510

7.1%

7,000

180

2.6%

 

 

第4次中計は、2021年5月27日に公表し、2023年度計画は足元の事業環境等を考慮し2023年5月26日に公表したものです。

 

 

(3) 会社の対処すべき課題

2022年度は原燃料価格の高騰、急激な為替変動に加え、いわき大王製紙のバイオマスボイラートラブルが発生し、連結営業赤字の決算となりました。2024年度より始まる第5次中期事業計画の土台を再構築すべく、第4次中期事業計画の基本方針の実現に向けた課題を抽出し、対処してまいります。

 

基本方針1.強靭な事業ポートフォリオの確立の実現に向けた課題と対処

第4次中期事業計画ではホーム&パーソナルケア事業を成長エンジンと位置づけ、同事業が紙・板紙事業の売上を超えるエポックメイキングな中期事業計画とすることを想定していました。しかし2022年度はホーム&パーソナルケア事業が当初計画通りにトップライン伸長を実現できず、また海外事業の黒字化も遅れています。加えて原燃料価格の急激な高騰によって、既存事業全体の採算が悪化しました。

この課題に対して、段階的な価格改定の実施、石炭の調達先と品種の見直しによるコストダウン、さらには生産体制変更を含む構造改革の推進に着手しました。価格改定は2022年度中にほぼ全てのユーザーと交渉を妥結しています。コストダウン、構造改革の計画通りの進行、並びに改定後の価格を維持するための追加施策の立案・実行を行い、改めて強靭な事業ポートフォリオの確立を目指します。

 

基本方針2.財務体質の強化の実現に向けた課題と対処

2021年度に信用格付評価でA格を取得したものの、2022年度の業績悪化により、純有利子負債が3,877億円となり、前年度比で903億円増加しました。

この課題に対して、第4次中期事業計画3ヵ年の投資方針を当初計画枠内に抑えつつ、エネルギー転換投資を優先するものに変更しました。具体的には現中計期間中は設備投資枠を1,250億円、M&A投資枠を300億円としていましたが、M&Aの検討を凍結し、エネルギー転換投資に回します。こうすることで当初総投資枠1,550億円の水準を維持し、財務規律を守りながら営業キャッシュ・フローの改善、ひいては財務体質の強化に取り組みます。

 

基本方針3.気候変動問題への対応の実現に向けた課題と対処

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、当社では植林面積の拡大、CNFや脱プラスチック製品の事業推進、そして2030年度までに化石由来のCO2排出量を2013年度比で46%削減することを目指しています。このマイルストーンに対して南米チリにおける植林面積の拡大、脱プラスチックを目指したエリプラシリーズの拡充が進んでいます。2022年度は、いわき大王製紙のバイオマスボイラートラブルによりバックアップ用重油ボイラーを稼働させましたが、三島工場や大日製紙での石炭使用量削減の取り組みを実施したことにより、2021年度に対してGHG排出量は削減できる見込みです。

更に2023年3月には、三島工場にあるFIT用バイオマス発電所での売電を止め、自社使用に切り替えました。また2023年4月には三島工場新聞用紙製造設備であるN3号抄紙機を休機し、エネルギー総使用量を削減しました。加えて、中期的には三島工場に新たにリサイクルボイラーを建設(現在環境アセスメントを実施中)し、石炭からの燃料転換を進めることで化石燃料由来のCO2排出量を減らす対策を進める予定です。

その他、サステナブルな企業体であるために新規事業展開やグローバル化に向けた体制の構築が課題となりますが、それぞれの課題には以下取り組み・対策を進めていきます。

・新規事業展開(セルロースナノファイバー(CNF))

CNFは、研究開発の段階を経て、この数年の間に自社商品「キレキラ!トイレクリーナー」へのCNF配合、卓球ラケット用部材への活用、レースカーの車体外装全体・内装へのCNF実装といった商業化・用途展開を進めてきました。第4次中計では、2022年3月に稼働したパイロットプラントで一貫製造工程の技術確立に向けた実証を進め、自動車部材・家電製品など幅広い用途展開が期待できるCNF複合樹脂の生産性向上とコストの大幅低減を実現し、商業化プロセスに向けて、用途展開を加速させ、CNF配合による軽量化やプラスチック使用量削減等により、CO2削減にも貢献していきます。

・コーポレート部門のグローバル対応

当社グループ発展のためには、海外事業の拡大が不可欠であり、海外の成長市場への投資とともに、適切なリスクマネジメントが重要な要素であると考えています。そのため、人事・法務・経理・財務部等のコーポレート部門では、「事業の成長・拡大に必要な経営資源の安定調達と最適配分」、「グループガバナンス体制の一層の強化とリスクマネジメントの充実」に重点を置いて、事業部門との一体運営で海外事業の拡大に取り組んでいきます。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)大王グループサステナビリティ・ビジョン

大王グループでは、当社グループのサステナビリティ戦略として、2021年5月に「大王グループサステナビリティ・ビジョン」を策定しました。その戦略に沿った取組を推進するため、当社グループは、経営に社会課題解決を織り込んだサステナビリティ活動を進めて行きます。

  ・大王グループサステナビリティ・ビジョン

   https://www.daio-paper.co.jp/wp-content/uploads/2021_daio-sustainability-vision.pdf

 

① ガバナンス

大王グープでは、「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティに関する戦略や方針等を議論しています。サステナビリティ戦略である「大王グループサステナビリティ・ビジョン」についても「サステナビリティ委員会」で議論の上、取締役会で策定しました。

「サステナビリティ委員会」の下部会には、サステナビリティを巡る動きやマテリアリティと連動する8つの部会(①地球温暖化対策部会、②物流GHG削減部会、③環境負荷低減部会、④SDGs調達推進部会、⑤TCFD対応部会、⑥森林・生物多様性対応部会、⑦価値共創部会、⑧ESG情報開示充実部会)を設置し、具体的なマイルストーンや取組項目を決めて実行しています。

「サステナビリティ委員会」では部会の具体策を評価・進捗確認し、これらを含めたサステナビリティの課題や進捗を定期的に取締役会に諮る体制とし、機能させています。

なお、委員長は「サステナビリティ委員会」設立時より代表取締役副社長が務めていましたが、2023年7月以降は代表取締役社長を委員長として、サステナビリティ経営の強化を図ってまいります。

 

② 戦略

当社グループのパーパスは、社是「誠意と熱意」をもって「3つの生きる(衛生・人生・再生)」を成し遂げ、「やさしい未来」を実現することです。経営理念の4つの柱「ものづくりへのこだわり」「地域社会とのきずな」「安全で働きがいのある企業風土」「地球環境への貢献」を体現するなかで、過去から取り組んできた社会課題解決とSDGsを連動させて、ありたい姿「やさしい未来」を実現していきます。

ありたい姿「やさしい未来」の実現にあたっては、マテリアリティに沿って取組を進めています。マテリアリティについては、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)会社の経営の基本方針を参照ください。

マテリアリティのうち、「気候変動への対応」「循環型社会の実現」「森林保全と生物多様性の維持」は、「3つの生きる(衛生・人生・再生)」の3つ目の「再生(地球を再生する)」に関する重要課題であり、特に「気候変動への対応」は当社グループにとっての最重要課題と認識しています。

また、当社グループは、持続的な企業価値の創造に挑戦する人財を育成していくため、安全で働きがいのある企業風土の構築を目指しています。その実現のために、「人権尊重と人財育成、社員への思いやり」をマテリアリティの一つとしており、人的資本への対応を重要課題と位置づけ、取組を進めています。

 

③ リスク管理

大王グループでは、サステナビリティに関する総合的な管理は「サステナビリティ委員会」に集約しています。

「サステナビリティ委員会」では、その下部会である8つの部会(①地球温暖化対策部会、②物流GHG削減部会、③環境負荷低減部会、④SDGs調達推進部会、⑤TCFD対応部会、⑥森林・生物多様性対応部会、⑦価値共創部会、⑧ESG情報開示充実部会)で議論されたサステナビリティに関する取組、国内外の動向や当社グループを取り巻く状況変化、取組のKPIに対する進捗状況などの報告を受け、審議しています。

「サステナビリティ委員会」で審議された事項は、四半期に1回、取締役会に報告され、当社グループの運営に反映されます。同様に、コンプライアンス違反、不祥事を含む経営に重大な影響を及ぼす恐れのあるリスクの識別・評価は、リスク・コンプライアンス担当の取締役を委員長とする「リスク・コンプライアンス委員会」で審議され、取締役会に定期的に報告の上、反映されます。

 

④ 指標及び目標

大王グループでは、マテリアリティやサステナビリティ戦略と連動する以下のKPIを設定しています。上記のガバナンス体制に沿って、各指標の進捗状況を具体的に評価・確認し、サステナビリティに取り組んでいます。

経営理念の

4つの柱

マテリアリティ

事業戦略・主な取組

事業を通じた主な社会課題解決
および目標とする指標(2030年度KPI)

2020年度

実績(注1)

2021年度

実績(注1)

1.ものづくりへのこだわり

事業ポートフォリオの戦略的変革

新聞・洋紙事業

●洋紙から板紙への転抄

 

(注2)

(注2)

●生産体制・販売構成の見直し

 →マシン稼働継続による雇用維持

 

●川下の印刷事業の強化

 

 

産業用紙・段ボール事業

 

 

●国内での安定供給の継続

 

 

●海外展開の加速

 

 

グローバル展開の加速

H&PC国内事業

●海外各拠点での地域発展に貢献

(注2)

(注2)

●吸収体事業と国内シェア向上

 →技術・開発能力の向上・雇用維持

●衛生用紙と複合事業モデル確立

 

 

H&PC海外事業

 

 

●既進出国での複合事業化

 

 

●新規市場に進出し事業基盤構築

 

 

新規事業の創出

新規事業

●セルロースナノファイバーの商品・用途開発

(注2)

(注2)

●セルロースナノファイバー

●RFIDによる業務効率化・働き方改革

●RFID(ICタグ)

●環境対策商品(脱プラスチック等)の販売

 

●感染症対策商品(マスク・除菌ウェット等)の販売

2.地域社会とのきずな

地域社会との
共生

●南米チリで地域の農業・酪農を支援する生活・灌漑用水の安定供給

(注2)

持続可能なサプライチェーンの構築

●CSR調達

調達アンケート回収率

100%

87%

95%

 

5段階評価で3.5以上の取引先数

90%

56%

62%

●森林認証

国内外での森林認証の維持継続

100%

100%

100%

3.安全で働きがいのある企業風土

人権尊重と人財育成、社員への思いやり

(注3)

公正で透明性の高い経営

4.地球環境への貢献

気候変動への対応

●バイオマス由来燃料への転換、廃棄物燃料の有効利用など

化石由来のCO2排出量削減
(対2013年度比)(注4)

46%

9.3%

2.1%

循環型社会の実現

●難処理古紙の利用促進

板紙への配合率

30%

16.7%

16.2%

●ゼロエミッション

再資源化率

100%

98.7%

98.4%

●水の循環・再利用、適正な用排水処理による排水の浄化

用水・排水COD売上高当り原単位

(対前年度比)

1%/年削減

用水 1.6%
COD 3.0%

用水 5.6%
COD 9.9%

森林保全と生物多様性の維持

●南米チリの天然記念物「アレルセ」を現地NPOと連携し保護

(注2)

●希少淡水魚「カワバタモロコ」を徳島県と連携し、繁殖・放流

(注2)

 

 

(注1)2022年度実績につきましては未確定のため2021年度までの実績を掲載しています。

(注2)KPIの設定については今後検討してまいります。

(注3)取組やKPIにつきましては、2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本への対応を参照ください。

(注4)2022年度に株式取得をした吉沢工業株式会社(2022年5月)と株式会社大貴(2022年10月)を除き、基準年である2013年度以降に当社グループとなった連結子会社も含め、算定しています。

 

(2)気候変動への対応

当社グループでは、「気候変動への対応」をマテリアリティの1つに挙げ、最重要課題として位置づけ、取り組んでいます。

2021年5月の「大王グループサステナビリティ・ビジョン」の策定と同時にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しており、TCFDの提言に沿った気候変動関連のリスク・機会評価を行い、経営戦略やリスク管理などに反映させ、財務上の影響などの情報開示の充実を進めています。

 

  ① ガバナンス

気候変動への対応に関する基本的なガバナンスはサステナビリティ戦略全体のガバナンスに含まれます(詳細は2 サステナビリティに関する考え方及び取組(1)大王グループサステナビリティ・ビジョンを参照)。

当社グループでは、特に「気候変動の対応」をマテリアリティのひとつに挙げ、石炭ゼロ化の推進に力を入れています。サステナビリティ戦略全体のガバナンスの中で、気候変動に関する具体的な取組については「サステナビリティ委員会」の8つの下部会のうち、「地球温暖化対策部会」「TCFD対応部会」「物流GHG削減部会」「森林・生物多様性対応部会」の4部会を中心に検討・推進し、取組の進捗も含め管理しています。

 

  ② 戦略

大王グループは、国内紙・板紙部門とホーム&パーソナルケア部門において、2℃未満シナリオと4℃シナリオの2つの気候変動シナリオを基に、事業への影響を分析しました。1.5℃未満シナリオについても現在分析を進めており、把握・開示に努めてまいります。

各シナリオの前提条件はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)のシナリオなどを参照し、物理的リスクについてはWRI(世界資源研究所)や文部科学省気象庁、Four Twenty Seven、Encoreのデータを基にリスク評価を行いました。

  <気候変動におけるリスクと機会>

以下で示す気候変動のシナリオ分析におけるリスクと機会の財務インパクトは、大:300億円以上、中:150億円~300億円、小:50億円~150億円、微小:50億円未満です。

 

リスク項目

予測される事象

財務インパクト

戦略・対応策

移行リスク
(2℃未満シナリオ)

政策・法規制

CO2排出量削減の義務化
GHG排出量の規制強化
カーボンプライシングの上昇

●GHG排出規制とカーボンプライシングの導入
●エネルギー価格上昇による原価アップ

●2030年までにリサイクルボイラー2缶設置、
石炭ボイラー1缶停止による化石燃料から廃棄物燃料への転換
●省エネルギー技術導入、投資継続実施
●太陽光などの再生可能エネルギーの導入
●植林面積の拡大
●四国中央市カーボンニュートラル協議会などの取組推進

●炭素税導入により、各種資材価格が上昇

●商品開発段階からGHG排出量がより少ない資材を選定しコスト上昇を抑制

技術

商品物流を低炭素
エネルギーへ転換

●物流手段の低炭素化の取組として新技術の導入などによるコスト増加

●トラックから内航船・RORO船へのモーダルシフトと輸送距離の短縮を推進中。今後の自動運転や水素・アンモニアトラックなどの技術革新にあわせて導入を推進

 

 

 

リスク項目

予測される事象

財務インパクト

戦略・対応策

物理的リスク
(4℃シナリオ)

急性的

台風の多発、
集中豪雨の多発

●自然災害による生産活動への影響(洪水)
●道路・鉄道・港湾設備被害によるサプライチェーン寸断、商品や原材料輸送の停止

微小

●BCP(事業継続計画)・BCM(事業継続マネジメント)対応の推進

慢性的

降水・気象パターンの
変化や平均気温上昇

●植林地、原料調達先が被害を受け、安定調達に影響が出る

●調達先の多角化による調達の安定化
●植林の推進による原材料の調達量の確保
●植林する地域・気候に適した樹種の選定、育種開発

 

 

 

機会項目

予測される事象

財務インパクト

戦略・対応策

機会

商品と
サービス

需要家の
品質要求が変化
技術革新による
新商品・サービスの開発

●環境配慮型商品(FSC商品、脱プラ・減プラ商品)の需要増加
●環境貢献商品(制汗、防災・避難グッズ商品)の需要増加
●リサイクルに対する認識の変化
●産業廃棄物を減らす風潮
●水資源の節約から
節水型商品の増加

微小

〈紙・板紙部門〉
●脱プラ製品、包装機能材の拡大
●FSCなどの認証品拡大
●CNF素材、RFIDの開発推進、製品拡大
〈H&PC部門〉
●脱プラ包装材への転換
●マスク、衛生用品などの気候変動対応商品の拡大
●制汗商品、熱中症対策商品の開発、販売拡大
●水に溶けやすい商品などの開発、節水支援

プラスチック
リサイクル

●プラスチックリサイクル需要、
バイオマス由来の補強素材への需要が増加

●リサイクルプラスチックをCNFにより補強する技術
の開発を具現化

エネルギー源

再生可能エネルギーの
利用拡大
リサイクル、ゴミゼロ
エミッションの強化

●現在、有効利用されていない廃棄物由来燃料を調達することで燃料コスト改善
●単純焼却されている廃棄物をサーマルリサイクル
●夾雑物が多く単純焼却や埋設処理されている古紙をマテリアルリサイクル

微小

●地域全体に寄与するリサイクルボイラーの建設
●有効利用されていない産業廃棄物・一般廃棄物の調査
●難処理古紙及び夾雑物(プラスチック類)の利用拡大

資源
効率

原料のリサイクル
資材の再利用

●原材料のリサイクルシステム構築による費用低減
●消費者環境政策要求の満足度向上

●使用済み紙おむつを回収、リサイクルする仕組みの構築
●資材を再利用する設備導入
●環境配慮型商品の上市

 

  ③ リスク管理

気候変動への対応に関する基本的なリスク管理はサステナビリティ戦略全体のリスク管理に含まれます(詳細は2 サステナビリティに関する考え方及び取組(1)大王グループサステナビリティ・ビジョンを参照)。

特に、気候関連リスクの識別・評価においてはシナリオ分析を行い、移行リスク、物理的リスク、機会に分けて網羅的に抽出して、財務に影響を与える項目を整理しました。また、リスクの特定や不確実性の高/低の評価、定性的・定量的な財務インパクトの検討を行っています。

気候変動リスクの識別・評価は、「サステナビリティ委員会」の8つの下部会のうち、「地球温暖化対策部会」「TCFD対応部会」「物流GHG削減部会」「森林・生物多様性対応部会」を中心に実施しています。

 

  ④ 指標と目標

2021年5月の大王グループサステナビリティ・ビジョンの公表・TCFDへの賛同表明と同時に、事業戦略と連動させる形で、地球温暖化対策の長期ビジョンとして「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを発表しました。そのマイルストーンとして、Scope1+2における「2030年化石由来CO2排出量46%削減(2013年度比)」を宣言し、ロードマップも開示しています。

・大王グループ統合レポート2022(P57-58)

 https://www.daio-paper.co.jp/wp-content/uploads/pdf/ir/2022_all_l.pdf

ロードマップでは、2050年までに主要工場の三島工場で保有する石炭ボイラー全3缶停止の方針をかかげ、再生可能エネルギーや低炭素燃料(LNGなど)への燃料転換、省エネルギーを推進するとともに、地域における廃棄物等を燃料とするリサイクルボイラー(現在環境アセスメントを実施中)の導入により、地域全体でのCO2削減を進めていきます。

さらに、植林拡大によるCO2吸収・固定量増にも取り組み、排出削減と吸収・固定で2050年までにカーボンニュートラルを実現していきます。

Scope3は、現在グループ全体の定量把握を進めており、大王製紙単体の2021年度実績については集計が完了し、2023年5月に第三者保証を取得しました。今後、グループ全体の目標を設定し開示するとともに、サプライチェーン全体での排出削減に取り組んでいきます。

 

<2021年度実績>

化石由来CO2排出量:3,657千トン

化石由来CO2排出量削減率(2013年度対比):2.1%

GHG排出量:4,388千トン (注)

          (うち、Scope1:3,878千トン、Scope2:510千トン)

 

(注) 2022年度に株式取得をした吉沢工業株式会社(2022年5月)と株式会社大貴(2022年10月)を除く、

国内・海外の連結グループ全社の実績です。

2022年3月期グリーン電力証書販売分を含むGHG排出量は4,518千トンです。

Scope3は、大王製紙単体の2021年度実績のみであることから、2021年度のGHG排出量に含めていません。なお、2021年度の大王製紙単体のScope3排出量は1,782千トンでした。

 

  <四国中央市カーボンニュートラル協議会について>

当社グループは地域全体での脱炭素化に取り組んでいくため、四国中央市カーボンニュートラル協議会に幹事会社の1社として積極的に関わっています。2023年3月には「四国中央市カーボンニュートラル実現に向けたロードマップ」を公表しました。本協議会は、事業者、自治体、地元地方銀行、地元教育機関、地元業界団体等の結節点として、地域のカーボンニュートラル実現および地域課題の解決に今後も貢献してまいります。

・四国中央市カーボンニュートラル実現に向けたロードマップ(当社ホームページ開示資料)

 https://www.daio-paper.co.jp/wp-content/uploads/Attachment-Roadmap.pdf

 

(3)人的資本への対応

当社グループは、社員一人ひとりの「働きがい」(エンゲージメントの向上)が企業の持続的成長に繋がるという考えのもと、「人権尊重と人財育成、社員への思いやり」をマテリアリティの一つとして掲げ、人的資本への対応を経営の重要課題と位置づけ、取り組んでいます。

  ① ガバナンス

人的資本への対応に関する基本的なガバナンスはサステナビリティ戦略全体のガバナンスに含まれます(詳細は2 サステナビリティに関する考え方及び取組(1)大王グループサステナビリティ・ビジョンを参照)。

 

  ② 戦略

・人財育成方針:自ら考え、決断して実行する「自律型人財」の育成

めまぐるしく変化する経営環境や事業リスク、多様化する生活者のニーズ等に柔軟に対応して持続的に企業価値の向上を図っていくため、果敢にチャレンジして「自ら考え、決断して実行する」自律型人財の育成が必要であり、当社グループの競争力の強化につながると考えます。

「誠意と熱意を持つ者が事を成す」という創業の精神に基づき、公正な評価・処遇を通じて自らの成長・働きがいが実感できる仕組みや、安全・安心を最優先とした環境において「自律型人財」を育成し、社員一人ひとりが能力を最大限発揮しイノベーションを生み出すことで、経営理念「世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ」を実現します。

・社内環境整備方針

(a)ダイバーシティ&インクルージョンの推進

当社グループの発展を支えるのは海外事業や新規事業等の拡大、いわゆるイノベーションであり、その実現には多様な人財の育成・活躍が欠かせません。当社グループでは代表取締役社長を委員長とするダイバーシティ委員会を設置し、多様な人財が挑戦・活躍できる風土改革及び環境整備を進めています。

<人権尊重の取組について>

当社グループが目指す「やさしい未来」には、すべての人が生まれながらにして持つ自由と尊厳、権利が尊重される社会の実現が必要であると考え、マテリアリティ(重要課題)の中に「人権尊重」を明示しています。

2021年10月には大王グループ人権方針を策定しており、今後もこの方針のもと、グローバルに事業展開を進める中で、ビジネスパートナーからの協力も得ながら、人権デュー・ディリジェンスプロセスの確立や人権尊重の教育の徹底等に取り組んでいます。

<女性活躍推進について>

当社グループの成長事業であり、かつ女性の活躍フィールドが広がってきているホーム&パーソナルケア部門を中心に、積極的に女性の採用・配置を増やすとともに、異業種交流研修等を通じてリーダーの育成に取り組んでいます。

<男性育休取得推進について>

当社グループは、「男性育休100%宣言」を掲げ、社内制度として、「GOO.N子育てサポートプログラム」(おむつケーキのプレゼント、GOO.N商品の特別割引、ベビーシッター利用補助等)、「GOO.Nすくすく休暇」(育児目的有給休暇)、事業所内保育所「GOO.N すくすくはうす」(愛媛県四国中央市)等を整備、推進することで、男性社員含め育児と仕事の両立を支援しています。

2022年度は、男性社員の育児休業取得率は大王製紙単体で8割を超え、当社グループにも取組を拡大しています。今後も働き方改革を通じて、多様な人財が活躍できる風土づくり、社員満足度の向上に繋げていきます。

(b)成長と挑戦を支援する人財育成

社員が働きがいを持つことができ、持続的な挑戦と成長を支援する人事制度及び環境を整備します。

自律型人財の育成を目指し、「Daio Career Challenge」(キャリア選択社内公募制度)を設ける等、社員が自律的にキャリア形成・能力開発できる体制を整えています。また、中長期的な働きがいやモチベーションの向上のために、管理職には株式報酬制度を導入しています。

次世代リーダーや当社の成長エンジンであるホーム&パーソナルケア事業部門、海外事業を担う人財の育成・強化にも力を入れており、若手社員の内から海外留学や国内外MBAの取得支援等に挑戦できる制度を整備し、計画的な育成に取り組んでいます。

(c)安全で活力ある安心第一の職場環境づくり

安全・安心を最優先に社員が生き生きと働ける「安全で活力のある安心第一の職場環境づくり」を推進します。

災害ゼロを目指し、「安全な意識」「安全な環境」「安全な仕事」を3本柱に事業所内で働くすべての人の安全を守ります。また、「働き方改革宣言」及び「大王グループ健康宣言」に基づき、柔軟な勤務制度の導入などのライフ・ワークバランスの推進、心身の健康増進の各種取組を通じ、人生100年時代に適応した社員が安心して働ける環境を整備していきます。

 

  ③ リスク管理

人的資本への対応に関する基本的なリスク管理はサステナビリティ戦略全体のリスク管理に含まれます(詳細は2 サステナビリティに関する考え方及び取組(1)大王グループサステナビリティ・ビジョンを参照)。

 

  ④ 指標と目標

主なKPI

単体

連結

対象範囲

2022年度
実績

2022年度
実績

2030年度
目標

一般社員時間外労働時間

23.0h/月

19.9h/月

10.0h/月

提出会社および国内・海外の連結子会社

年次休取得率

75.0%

72.6%

90.0%

提出会社および国内・海外の連結子会社

障がい者雇用率

2.3%

2.2%

2.8%

提出会社および障がい者の雇用義務がある常時雇用の労働者43.5名以上の国内連結子会社

女性管理職比率
(管理職に占める女性労働者の割合)

2.7%

5.2%

10.0%

提出会社および国内・海外の連結子会社
(性自認が多様であり性別管理を行っていない一部海外連結子会社を除く)

男性育休取得率
(男性労働者の育児休業取得率)

82.7%

79.3%

100.0%

提出会社および男性育休取得率の開示義務がある常時雇用の労働者1,000名を超える国内連結子会社

3年後新卒定着率(総合職)

82.2%

-

90.0%

新卒総合職定期採用制を導入している大王製紙(提出会社)
※2018年度~2020年度入社者の平均値を算出

 

人的資本において、まだ十分に開示できていないリスクと機会やそれに対応する施策やKPIについては、引き続き把握に努めるとともに、開示の拡充を進めてまいります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書等に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重大な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1) 需要・市況変動による影響

当社グループは、紙・板紙事業、ホーム&パーソナルケア事業及びその他の事業を行っていますが、主力製品である紙・板紙製品及び家庭紙製品の大幅な需要減少、製品市況の著しい下落により販売数量・販売金額の減少が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

紙・板紙事業部門においては、品種毎の需要変動や市況変動に対し、基幹工場である三島工場・可児工場にて柔軟に生産品種のシフトを行うといった生産体制の整備・見直しを実施しています。

また、ホーム&パーソナルケア事業部門においては、家庭紙製品における大幅な需要減少、製品市況の著しい下落により販売数量・販売金額の減少が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対して、特定の商品カテゴリーにおける需要変動または市況下落が全体に及ぼす影響を極小化できるよう、衛生用紙から吸収体製品まで幅広い商品ラインナップを持ち、それらを複合的に組み合わせた営業戦略を遂行するとともに、価格で売る営業から品質・付加価値で売る営業へのシフトを加速させ、市況の変動に負けない強い営業スタイルを確立しています。

 

(2) 原燃料価格変動、及び為替相場の変動による影響

当社グループは木材チップ・古紙・薬品・重油・石炭等の原燃料を国内及び海外から購入しており、原燃料価格の変動に加え、外貨建てで取引されている原燃料の調達に関しては為替相場の変動も、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、為替相場変動については、海外への紙・板紙製品及び家庭紙製品の輸出販売や海外子会社での販売活動にも影響を与える可能性があります。なお、当社グループでは為替相場変動による経営成績への影響を軽減する目的で、一部の取引に為替予約を利用したリスクヘッジを実施しています。また、原燃料価格変動に対する取引先を含めた体制強化や情報交換の活発化の重要性を踏まえ、「SDGs調達」を推進することで、取引先と一体となってCSRやSDGsに配慮しつつ、公平・公正な取引の実現、品質・技術力の向上、事業継続計画の策定による安定供給体制の確保を図っています。

 

(3) 海外事業による影響

当社グループは成長戦略のひとつとして、ホーム&パーソナルケア海外事業部が中心となって中国、韓国、東南アジア諸国、トルコ、ブラジル等での事業展開に取り組んでいますが、海外における事業展開には為替相場の変動や現地政府による規制、外交関係や国民感情の悪化、政治不安等による経済環境の変化等が発生するリスクがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

これらに対し当社グループでは、グループ各社や日本の担当部署が収集した最新情報を関係者間で共有し、適切に対応することで、リスクの最小化を図っています。

 

(4) 金利変動による影響

当社グループは有利子負債の削減に取り組んでいますが、大幅な金利の上昇が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループでは金利変動による経営成績への影響を軽減するため、主として固定金利の長期借入にて資金調達を行うことにより、短期的な金利上昇リスクへの対応を図っています。

 

(5) 投資有価証券の価格変動による影響

時価のあるその他有価証券は決算日の市場価格等に基づく時価法により評価するため、決算日の株価によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループでは政策保有株式の縮減を進めており、保有株式を削減することで価格変動による影響も総額として縮小させていく方針です。

 

(6) 災害による影響

当社グループの生産、物流拠点等がある地域で災害が発生した場合には、生産設備の破損、操業の中断や遅延、物流機能の停止、原材料・製品・商品の滅失、復旧費用の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そうした中で当社グループでは、災害発生時の被害の極小化、事業の早期復旧を図るため、グループを横断したBCM(事業継続マネジメント)の整備、実効性向上に向けた取り組みを進めています。

 

(7) 法的規制・訴訟による影響

① 法的規制に関するリスク

当社グループは、地球温暖化防止に関するCO2排出量等の環境規制、知的財産権に関する法令や商品の表示に関する各種規制、独占禁止法その他事業の遂行に関連する各種法令、ならびに諸外国の類似の法令に則って事業を行っています。

当社グループでは、法令、社会的規範の遵守等、コンプライアンス体制の強化に取り組んでいますが、法的規制に変更が生じた場合には当社グループの事業または業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 訴訟に関するリスク

当社グループは事業活動に関連して各種の訴訟等に巻き込まれるおそれがあり、その結果によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 財務制限条項の付された借入契約による影響

当社グループが複数の金融機関との間で締結している借入契約の一部には、各年度の決算期の末日における連結貸借対照表の純資産の部の金額や、各年度の決算期における連結損益計算書の経常損益等を基準として財務制限条項が付されており、これに抵触した場合には借入金の返済を求められ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 固定資産の減損会計による影響

当社グループは、有形固定資産やのれん等の固定資産を保有していますが、これらの資産については減損会計を適用し、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証しており、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っています。しかし、将来の経営環境の変化等により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 新型コロナウイルス感染症等拡大の影響

当社グループは、顧客、取引先及び社員の安全を第一に考え、WHO及び各国保健行政の指針に従った感染防止策の徹底、従業員の体調管理、テレワークの導入や出張・会議の制限等の対応を各部門で継続しています。今後、新型コロナウイルス感染症等の再拡大が起れば、世界的な景気の悪化により販売数量の減少や原材料価格の高騰、原材料確保の難化、物流機能の低下等が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、次期の見通しについては、不確実性、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と乖離する可能性があります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が大幅に緩和され、外食産業や小売業等のサービス分野を中心に経済活動は正常化に向けた動きが加速しつつあるものの、ロシア・ウクライナ情勢の長期化に起因する資源価格の高騰や食品をはじめとする生活必需品の相次ぐ値上げが家計を圧迫し、景気に力強さはありません。

当社グループにおいては、当連結会計年度は2021年度から2023年度までの3カ年計画である第4次中期事業計画の2年目となりますが、資源価格の上昇に歴史的な円安進行が重なったことで、石炭、重油、チップ、パルプ等の主要な原燃料の調達価格が高止まりし、物流費、荷資材価格上昇も加わり、紙、加工品、あらゆる製品の製造コストが大幅に悪化しました。

厳しい事業環境においても業績のⅤ字回復への足掛かりを確かなものとし、再成長へと繋げていくために、「第4次中期事業計画の進捗説明-業績回復とレジリエンス強化に向けた施策の実行-」(2023年2月)にて公表したとおり、当連結会計年度は紙・板紙事業、ホーム&パーソナルケア事業のほぼ全ての製品において、複数回にわたり販売価格の改定に取り組み、主要工場でのエネルギー構成や生産体制の見直し、省力化を含む聖域なきコストダウンを着実に進めてまいりました。

2023年度以降は、こうした販売価格の改定の効果がフルで業績に寄与するほか、構造改革、固定費の削減効果も見込まれます。業績回復を確かなものとし、フラッフパルプの内製化等を始めとする従来から取り組んでいる第4次中期事業計画の紙・板紙事業からホーム&パーソナルケア事業への構造転換による「強靭な事業ポートフォリオの確立」に向けた諸施策を加速してまいります。

 

当連結会計年度の連結業績は、以下のとおりです。

① 売上高

売上高は、紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業において、国内需要の回復や価格改定が浸透したこと等により、前連結会計年度に比べ33,898百万円増加(前年同期比 5.5%増)し、646,213百万円となりました。

② 営業損失

営業損失は、主要な原燃料の調達価格の高騰や、物流費、荷資材の価格上昇も加わったことで、紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業において、あらゆる製品の製造コストが大幅に悪化したこと等により、前連結会計年度に比べ59,010百万円減少(前年同期は営業利益37,569百万円)し、21,441百万円となりました。

③ 経常損失

経常損失は、営業損失及び支払利息の増加により、前連結会計年度に比べ61,747百万円減少(前年同期は経常利益37,696百万円)し、24,050百万円となりました。

④ 特別損益

特別利益は、主に国庫補助金の増加により、前連結会計年度に比べ4,697百万円増加し、8,412百万円となりました。特別損失は、主に減損損失の増加により、前連結会計年度に比べ18,739百万円増加し、23,562百万円となりました。

⑤ 親会社株主に帰属する当期純損失

親会社株主に帰属する当期純損失は、前連結会計年度に比べ58,427百万円減少(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益23,721百万円)し、34,705百万円となりました。

この結果、1株当たり当期純利益は前連結会計年度に比べ351円92銭減少し、△209円01銭となりました。

 

当連結会計年度のセグメントの状況は、次のとおりです。

① 紙・板紙

売上高

347,037

百万円

(前年同期比

6.0%増

セグメント損失(△)

△12,407

百万円

(前年同期はセグメント利益22,328百万円)

 

セグメントの売上高、営業利益の推移、当連結会計年度の品種別販売数量・金額の増減要因は以下の通りです。なお、表中の金額は、四捨五入して表示しています。

 


 

紙・板紙事業においては、新聞用紙では、新聞発行部数及び頁数の減少により販売数量は減少しましたが、販売価格の改定に取り組んだ結果、販売金額は前年同期を上回りました。洋紙事業(新聞用紙を除く)は、グラフィック用紙の更なる需要減少に伴いチラシやパンフレット用途の販売数量は減少しましたが、あらゆる製品の価格改定に取り組んできた結果、販売金額は前年同期を上回りました。板紙・段ボールは、新型コロナウイルス感染症による経済・社会活動の停滞からの回復により国内需要が比較的堅調に推移したことや、製造コストの販売価格への転嫁が進んだことで販売金額は前年同期を上回りました。

これらの結果、紙・板紙事業では、売上高は前年同期を上回りましたが、原燃料価格の上昇による製造コストの悪化を吸収するには至らずセグメント利益は前年同期を下回りました。

 

② ホーム&パーソナルケア

売上高

270,308

百万円

(前年同期比

5.1%増

セグメント損失(△)

△12,570

百万円

(前年同期はセグメント利益11,924百万円)

 

セグメントの売上高、営業利益の推移、当連結会計年度の品種別販売数量・金額の増減要因は以下の通りです。なお、表中の金額は、四捨五入して表示しています。

 


ホーム&パーソナルケア事業において国内事業では、衛生用紙は、需要が伸びているソフトパックティシュー等の販売が堅調に推移しましたが、トップメーカーとして率先して販売価格の改定をおこなった結果、第1四半期において一時的にシェアを落とし、販売数量、金額とも前年同期を下回りました。紙加工品では、生理用品の入手に困っている学生を対象に、生理用ナプキンを1年間無償提供する取り組みが大きな反響を得たほか、大手アパレルメーカーや著名人とのコラボレーション商品、人気キャラクターを採用したデザイン企画品など各種新製品、リニューアル品を市場に連続投入し好評を得ました。国内事業全体としては、アフターコロナの行動回帰によるマスクの需要減もあり、販売数量、販売金額ともに前年同期を下回りました。

海外事業においては、中国、ブラジル等、各国でベビー用紙おむつの販売価格の改定に取り組み、何れの国においても改定後の価格の一定の浸透が図れました。中国ではフェミニンマシンの増設や衛生用紙の拡販、タイではフェミニンケア商品の拡販など各国で複合事業化の取り組みを進めたことも寄与し、販売金額は前年同期を上回りました。

これらの結果、ホーム&パーソナルケア事業においては、海外事業の価格改定や為替の影響によって売上高は前年同期を上回りましたが、国内、海外ともにパルプや荷資材価格の上昇による製造コストの悪化を販売価格の改定や省エネ、コストダウンといった自助努力では補いきれずセグメント利益は前年同期を下回りました。

 

③ その他

売上高

28,866

百万円

(前年同期比

4.6%増

セグメント利益

3,500

百万円

(前年同期比

6.2%増

 

主に売電事業、機械事業、木材事業及び物流事業であり、木材事業が堅調であったことから売上高は前年同期を上回りました。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、受取手形、売掛金及び契約資産等の増加により、前連結会計年度末に比べ83,090百万円増加し、923,531百万円となりました。

負債は、長期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べ105,124百万円増加678,860百万円となりました。

純資産は、利益剰余金の減少等により前連結会計年度末に比べ22,033百万円減少244,670百万円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べて5.3ポイント減少し、25.5%となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較して13,508百万円増加し、102,405百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、26,233百万円の支出(前連結会計年度比97,628百万円の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失39,201百万円、減価償却費43,128百万円、棚卸資産の増加(支出)23,874百万円によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、57,950百万円の支出(前連結会計年度比4,470百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出46,611百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出12,550百万円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、96,437百万円の収入(前連結会計年度比147,047百万円の増加)となりました。これは主に、長期借入れによる収入163,053百万円、長期借入金の返済による支出66,840百万円によるものです。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

事業活動における資金需要の主なものは、運転資金需要と投資資金需要です。運転資金需要のうち主なものは、生産・販売活動における原材料及び商品仕入、製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資資金需要の主なものは、事業戦略の遂行に必要な投資や品質改善・安全・環境のために必要な設備投資等です。

運転資金につきましては主に金融機関からの短期借入金で調達し、投資資金につきましては主に長期社債及び金融機関からの長期借入金により調達しています。また、今後の資金需要や金利動向等の調達環境、既存借入金や長期社債の償還時期等を総合的に考慮し、調達額及び調達手段等を適宜判断して実施することとしています。

なお、当社は国内子会社との間で導入しているキャッシュマネジメント・システムの一層の機能充実による資金効率化により、成長投資を進めながらも財務規律の維持に努めています。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表及び財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、新型コロナウイルス感染拡大による影響は翌連結会計年度以降も継続するものの、各国において徐々に経済が回復し堅調に推移すると見込んでいます。一方で、ウクライナ危機に起因する原油価格の高騰や円安の進行が長期化する恐れがあるなど、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクも生じています。コロナ禍の拡大や国際情勢の変化による経済活動への影響は不確定要素が多いことから、上記の仮定に変化が生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

紙・板紙

333,854

121.9

ホーム&パーソナルケア

211,613

122.8

報告セグメント計

545,468

122.2

その他

25,894

111.6

合計

571,362

121.7

 

(注)1.金額は製造原価によっています。

2.当連結会計年度において、為替の影響や原燃料価格の高騰により紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業で製造コストが悪化したこと等により、両事業の製造原価が上昇しました。

 

(7) 受注状況

紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業の製品については、需要を予測して見込生産を行っており、特に受注生産は行っていません。

 

(8) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

紙・板紙

347,037

106.0

ホーム&パーソナルケア

270,308

105.1

報告セグメント計

617,346

105.6

その他

28,866

104.6

合計

646,213

105.5

 

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しています。

 なお、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がないため、「相手先別の販売実績」は記載していません。

 

(9) 次期の見通し

国内においては、コロナウイルス感染症は2023年5月より感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同等の5類へと引き下げられたことにより、経済・社会活動への制約がほぼなくなる「アフターコロナ」への流れが進行し、インバウンド需要や個人消費は回復基調となると見込んでいます。しかし、ロシア・ウクライナ情勢の長期化にともなう資源・エネルギー価格の高止まりや為替相場の影響による諸物価の上昇など、国内景気の先行きについては依然として懸念も多く残っています。また、海外においても、アメリカ、ヨーロッパでのインフレ警戒感による金融資本市場の不安定化、ロシア・ウクライナ情勢や米・中間の対立等の地政学リスクもあり、景気の先行きは不透明な状況です。

紙パルプ業界においても、新聞用紙、印刷用紙などのグラフィック用紙の市場縮小は加速し、重油、石炭等の資源価格の高止まりや為替相場の円安進行による原燃料費、物流費などのコストアップの影響は、2024年3月期においても一定期間は続くと想定しており、厳しい事業環境に変わりはありません。

このような状況の中、当社グループは、「第4次中期事業計画の進捗説明 ―業績回復とレジリエンス強化に向けた施策の実行-」にて公表しています諸施策を着実に実行し、業績の完全回復を果たしたうえで、第4次中期事業計画の主要施策である「強靭な事業ポートフォリオの確立」に向け、軸足を紙・板紙事業からホーム&パーソナルケア事業にシフトしつつ、両セグメントにまたがる構造改革を進めてまいります。

主要製品の需要が縮小し続けている紙・板紙事業においては、三島工場の生産体制の再構築による製造コスト低減を進めるとともに、省エネルギーやFIT発電を自社消費に切り替えるなどで石炭使用量の削減に取り組んでいます。また、これから堅調な需要が見込まれるSDGsの取り組みに対応した脱プラスチック、減プラスチック商品の開発に引き続き取り組みます。さらに、梱包・包装用途の紙では、川上(原紙)から川下(最終製品)までトータル提案が可能な当社のグループ力を最大限に活用して拡販につなげていく考えです。

一方、ホーム&パーソナルケア事業においては、紙おむつ等の加工品に使用するフラッフパルプの内製化を開始(2023年6月)し、重要資材の安定調達と三島工場の競争力のあるパルプを活用したコスト低減を進めます。衛生用紙では、需要が伸びているソフトパックティシュー市場での商品の供給体制を強化するために、2022年11月に子会社のエリエールペーパーで国内最大級のソフトパックティシュー加工機を稼働しました。また、営業、マーケティング、システム、物流、工場部門より人員を選抜し、新部署を立ち上げ(2023年4月)、ロジスティクスの改善を通じた収益構造の一層の強化を図り、事業部全体で収益構造を変革してまいります。

海外では、主力であるベビー用紙おむつを中心として、フェミニンケア用品や紙製品、大人用紙おむつ、ウエットワイプなど多様なカテゴリー商品の生産・販売による複合事業化や高付加価値化によって売上拡大を引き続き推進するとともに、ブラジルの生産拠点であるサンテルでの事業拡大を進め海外売上高の構成比を高めていきます。

これらの取り組みにより、2024年3月期の連結業績については、売上高700,000百万円、営業利益18,000百万円、経常利益9,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益4,000百万円を予想しています。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は3,533百万円であり、紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業等における研究開発活動の状況は以下のとおりです。

 

(1) 紙・板紙事業

紙・板紙事業では、メディア用途の紙から梱包・包装用途の紙へのシフトを進めており、営業と工場部門が一体で行動することで、マーケットの変化や需要動向をいち早く捉え商品開発に生かせるよう取り組んでいます。

研究体制は、商品開発・企画推進グループでは、特殊紙分野の新商品開発を担当し、昨今の脱プラスチック・環境配慮の要求に対応しながら、市場ニーズに合った紙製品・プラ代替商品の企画提案・開発を中心に行っています。生産技術グループでは、ユーザーと直接対話を行いながらFSC認証製品化、再生紙化といった国内ユーザーのニーズを満たす製品のリニューアルや新規紙製品開発の他、海外で差別化が図れる高強度の板紙生産技術開発に取り組んでいます。また、昨今の古紙資源の海外輸出増加による古紙不足に対応するため、未利用古紙(難処理古紙)のリサイクル技術確立も進めています。

当連結会計年度における研究開発の取組は以下のとおりです。

① 脱プラ・減プラ商品の開発に関する取組

紙という生分解性があり再生可能な原料を使用して脱プラ・減プラに貢献できるよう「FSエリプラ」ブランドの開発を進めてきました。

(a)プラスチック代替素材の開発

ナイフ、マドラーなどの高い剛性と耐水・耐油性が求められるプラスチックの代替として、「FSエリプラペーパー」、「FSエリプラ+(プラス)」など3品種とこれらの加工品も上市しています。

(b)プラ製フィルム包材やラベルの代替素材の開発

・従来のフィルム包材と同等の強度を持ちながら印刷適性も良好なラミネート紙「FSエリプラライト」

・ラミネートしなくてもヒートシール適性を持つ「FSエリプラヒートシール」等

・耐水性を持つ紙製ラベルの「FSエリプラ耐水紙ラベル」

2022年2月に新たなブランドとして立ち上げた「~環境にやさしい「紙」の新ブランド~『エリプラシリーズ』」は、現在19品種になります。

② 輸出向け高破裂強度板紙開発の取組

デジタル化による印刷用紙の需要減少に対し、新興国で需要が拡大する板紙需要を取り込むため、2020年4月にN7マシンの板紙への転抄を行い、海外への販売を強化しています。輸出先の要求品質に合わせた『JPK』ブランドを立ち上げ、一般品とN7マシンの特徴を生かせる高破裂強度ライナーを品揃えし増産・拡販を進めてきました。現在は自動車部品のような重量物を運ぶケースや紙製パレットに使用される高米坪で強度の高い板紙をN2マシンで開発済みであり、新たな需要を取り込んでいきます。

③ 紙おむつ用フラッパルプ開発の取り組み

印刷用紙から板紙以外への転換として、15号マシンをフラッフパルプ生産設備へ転換する工事を進めており、2023年6月から運転を開始しました。それに対応するため、フラッフパルプの試作と各オムツ工場でのテスト使用を重ねながら、現在輸入している海外産フラッフパルプと同等の性能を持った製品開発を完了しました。

紙・板紙事業に係る研究開発費は、1,226百万円です。

 

(2) ホーム&パーソナルケア事業

ユーザーニーズの変化に対応した新商品開発と既存商品の改良に加え、SDGs推進の一環として環境配慮型商品に主眼を置き、付加価値商品の売上比率を増やすべく開発を進めています。

研究体制は、国内・海外の市場変化への素早い対応だけでなく、グローバル市場全体で品質とブランド価値を確立できるよう東京本社と国内2工場に開発部員を配置しています。また、中国、タイ、インドネシア、トルコ、ブラジルの海外子会社5社にも開発部員を配置し、世界で共通した商品価値の提供ができるようにしています。

当連結会計年度における研究開発の取組は以下のとおりです。

① 衛生用紙での取組

保湿ローションに新規なめらか成分を配合した独自のうるおいバリア製法で、エリエール史上“最高のやさしさ”を実現した「エリエール 贅沢保湿ティシュー」をリニューアルしました。リサイクルパルプ配合の「エルフォーレ トイレットティシュー」を、環境に配慮したFSC認証のピュアパルプ100%仕様に変更しリニューアルしました。また、コットン配合の天然素材100%ティシュー「エリエール コットンフィールティシュー」の柔軟剤配合技術を向上させることで、ふんわり感とやわらかさをアップしリニューアルしました。

② ウエットワイプでの取組

SDGs推進の一環として、2022年4月にキレキラ!トイレクリーナーの本体容器プラスチック量削減と詰替用外装フィルムの紙化を実施しました。また、新型コロナ禍の中で生活者の様々なニーズに継続対応すべく、キレキラ!ブランドでは2022年12月にフロアワイパーウエットシートにて「ダニよけプラス」、また新機軸として防カビ性能を有した「バスルームクリーナー」を新発売しました。また、除菌・抗ウィルスブランドでは2022年10月に水解性不織布を用いた「流せるタイプ」と、食卓テーブル用で「大判タイプ」を新規にラインナップしました。

③ ベビー用紙おむつでの取組

SDGs推進の一環として、2022年10月に「グーンプラス肌快適設計パンツMサイズ紙パッケージ」をEC限定で発売しました。また、11月に「グーンプラス低出生体重児用(4S/5Sテープタイプ、5Sフラットタイプ)」をリニューアルし、赤ちゃんに優しいおむつを最優先しつつも、NICU(新生児集中治療室)の看護師さんが使いやすい(ケアしやすい)品質を実現しました。また、共働き世帯の増加に伴い、長時間使用時(夜間等)のモレが不安、昼と夜で使い分けることが手間、といった生活者の不満を解決すべく、2023年3月に「グーン12時間ぐんぐん吸収パンツ」を新発売しました。

④ 大人用紙おむつでの取組

スキントラブル発生リスク軽減を目指して東京大学との共同研究成果を元に商品化した「アテントSケア軟便安心パッド」を、2022年9月になめらか加工の表面材と通気性を付与し、さらに肌へのやさしさを向上させるリニューアルをしました。また、2023年3月には「夜1枚安心パッド(市販・業務)」の製品幅をコンパクトにしてアウターに装着しやすくしながらも吸収体スリット構造の変更により尿の拡散スピードを上げることで、より効率的に吸収体を活用できる商品にリニューアルしました。

⑤ フェミニンケアでの取組

生理用ナプキンセグメントにおいては、表面材、個包装およびパッケージを石油由来原料から紙原料へ切り替えた、環境配慮型商品「エリス素肌のきもち ナチュラルシリーズ」を新規上市しました。「エリス朝まで超安心」シリーズでは、新しい吸収体構造により吸収量をアップし、より安心して使用できる商品としました。インコンチネンスセグメントにおいては、多くの女性の悩みに応えるべく、極少量用の3ccのラインナップを追加しました。

⑥ マスクでの取組

ユーザーニーズの多様化に合わせて、2022年春に呼吸しやすい立体型の「かお・スマ」シリーズを新たに上市し、秋には本体と耳紐の色が異なるデザイン性を高めたバイカラータイプを追加ラインナップしました。また、夏場の暑い時期に対応して冷感効果を持たせた「ムレ爽快クーリッシュ」や、冬場の乾燥に対応できるようマスク表面に保湿成分を配合した「贅沢保湿」シリーズを新規上市し、ニーズやシーンに合わせた商品ラインアップを構築しました。

ホーム&パーソナルケア事業に係る研究開発費は、2,290百万円です。

 

(3) CNF(セルロースナノファイバー)

CNFの5次中計での本格的事業化を目標に、市場が期待でき汎用性材料としてコスト優位性がキーとなる複合樹脂について、2021年度に稼働させたパイロット設備での一貫製造プロセス開発を進め、三島工場内への商用設備の導入を目指して開発を進めています。また、これまでに卓球ラケット、レースカー部材での採用実績がある成形体や水分散液、乾燥体も複合樹脂に引き続いて事業化を目指すべく、既存パイロット設備での用途展開と量産プロセス開発を進めていきます。

当連結会計年度は、複合樹脂についてはパイロット設備での開発成果としてCNF高濃度化に成功し、水分散液は建設会社と共同でコンクリートに配合して実施工しました。乾燥体はスキー・スノーボードワックス材料として採用され商品上市しました。成形体はレースカーへの実装取組を継続し、60kgの車体軽量化を実現しました。

研究体制は、CNF事業化に向けて、2021年度に稼働させた複合樹脂設備を含む3つの実証設備にてCNF量産化を検討する事業化グループ、CNFの用途展開を進める開発グループ、ユーザーと連携した用途開拓を進める東京駐在グループの3グループ制で開発を進めています。また、東京本社には、技術営業部隊としてCNF事業化プロジェクトを配置しています。

当連結会計年度における研究開発の取組は以下のとおりです。

① CNF複合樹脂ペレットに関する取組 

複合樹脂は、パイロット設備を活用して、ユーザーニーズが高いCNF高濃度化を検討し、従来の55%から67%への高濃度化に成功し、2022年11月よりサンプル供給を開始しました。

② 水分散液に関する取組 

水分散液は、清水建設株式会社と共同で、コンクリートへの配合について検証を進め、CNF配合により流動性が改善できることを見出し、当社グループ会社の建屋にて実施工し、コンクリート打設時間の短縮、現場労務の改善が現れたとの評価が得られました。これにより、現場設備の運転・アイドリング時間短縮による環境負荷低減や、現場作業者負荷の平準化につながることも期待されています。

③ 乾燥体に関する取組 

乾燥体はスキー・スノーボードワックス材料として、求められる環境性能や滑り性を持つことが評価され、採用が決定し、2022年10月にチームレスキュー合同会社からスキー・スノーボード用ワックス『RESCUE ZERO ver1.3』が上市されました。

④ CNF成形体に関する取組

成形体は2018年から取り組んでいるレースカーへの実装取組を継続し、電気自動車(日産リーフe+)のルーフ、ドア全てに実装して60kgの車体軽量化を実現しました。新たに、愛媛大学、川之江造機株式会社と共同開発中の連続成形体をフロントボディ、リアボディに実装、ドアミラー筐体は高濃度化したCNF67%の複合樹脂を実装しました。

CNFに係る研究開発費は、紙・板紙事業に係る研究開発費に含んでいます。