文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「基本方針」を次のとおり定めております。
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・当社は、世界で最も優れた商品を造り創る。 ・当社は、世界に安心を売る会社である。 ・当社は、世界の未来の技術のニーズに挑戦する。 ・当社は、世界のために役立つ仕事をしている集団である。 |
上記基本方針にもとづき、当社グループは、エレクトロニクス産業に不可欠な部材であるアルミ電解コンデンサ用セパレータおよび機能材を供給することにより顧客満足度を高め、エレクトロニクス産業の発展に寄与し、世界に役立つ仕事をしている集団であることを企業理念として事業活動を展開しております。今後も、当社社員一人一人が能力向上と自己革新に取り組みながら多様化・複雑化するニーズに応え、お客様との強固な信頼関係を構築することでさらなる企業価値の向上をはかってまいります。
当社は、2020年6月に経済産業省の2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」に選定されました。これは、アルミ電解コンデンサ用セパレータにおいて高い世界シェアを有するとともに、技術開発型企業としてオンリーワンのモノづくりをおこなってきたことが評価されたものと受けとめております。また、健康経営に関しては、2022年3月に「健康経営優良法人2022(大規模法人部門ホワイト500)」に4年連続で選定されました。従業員の「こころと身体の健康の保持増進」、「安心して働ける職場環境づくり」などの当社の取り組みが評価されたものと認識しております。
これからも、次のふたつの重点方針を掲げ、持続可能な企業として事業活動を展開してまいります。
①安全・健康はすべてに優先する
安全・健康管理体制の確立と従業員に対する安全衛生教育の徹底をはかり、無事故・無災害の職場を実現するための取り組みにより、安全で健康な職場づくりを進めてまいります。
②人と自然にやさしい企業活動
地球環境の保全が全人類共通の最重要課題のひとつであることを認識し、「人と自然にやさしい企業活動」を通じて、SDGs達成および脱炭素社会の実現に貢献してまいります。これにより、持続可能な社会の実現を通して、お客様、株主、従業員、地域社会など様々なステークホルダーから信頼される企業づくりを進めてまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、「高機能セパレータの安定供給を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する」という長期ビジョンの達成に向け、3ヵ年中期事業計画(2022年3月期~2024年3月期)において、次の経営数値目標を設定しております。
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経営指標 |
2024年3月期 目標 |
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連結売上高 (うち機能材売上高) |
190億円 (46億円) |
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連結営業利益 |
35億円以上 |
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自己資本当期純利益率(ROE) |
10%以上 |
(3) 経営環境
足元の世界経済およびわが国経済は、コロナ禍からの経済正常化により引き続き景気拡大が進展するものと思われますが、新型コロナウイルスの感染状況、サプライチェーンの混乱、ウクライナ情勢、エネルギー価格をはじめとする物価上昇などが懸念され、先行きは極めて見通しにくい状況にあります。
当社グループの関連市場であるエレクトロニクス業界におきましては、長期化する世界的な半導体の供給不足による自動車生産への影響が懸念されますが、自動車の電装化・電動化の進展や設備投資の増加により、引き続き関連部品の需要増加が見込まれます。
中長期的には、自動運転などに代表されるCASE市場の伸張が見込まれる車載向け、省力化につながる工作機械などの需要が旺盛な産業機器向け、省エネニーズ拡大によるインバータ化率上昇が続くエアコンなどの白物家電市場に加え、市場拡大が続く通信設備関連向けにおけるアルミ電解コンデンサ用セパレータの需要増加を見込んでおります。機能材におきましては、世界的に脱炭素化が加速するなか、環境関連市場におけるリチウムイオン電池用や電気二重層キャパシタ用セパレータの需要拡大を見込んでおります。
(4) 中長期的な経営戦略および会社の対処すべき課題
当社グループは、事業内容について選択と集中を基本に重点課題を明確にし、経営資源の有効な投入および活用を進めることで、企業価値向上をはかってまいります。
3ヵ年中期事業計画(2022年3月期~2024年3月期)では次の4つの基本戦略をもとに、中期事業計画の目標達成に向け各取り組みを進めてまいります。
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基本戦略 |
主な取り組み内容 |
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①成長分野における重点的取り 組み |
車載、通信関連、環境関連市場で成長が期待できる重点3製品の販売拡大の推進 ・導電性高分子固体コンデンサ用セパレータ ・リチウムイオン電池用セパレータ ・電気二重層キャパシタ用セパレータ |
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②競争力の強化 |
・顧客ニーズの高度化に対応できる高付加価値セパレータの開発体制強化 ・デジタル技術を活用した業務プロセス改革 ・効率的な生産体制の構築と生産プロセスにおける自動化、省力化 ・お客さまの更なる信頼獲得に向けた安定供給体制の強化 |
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③人材への投資 |
・次世代人材(DX、リーダーシップ等)の育成に向けた教育訓練の充実 ・健康経営の推進 |
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④社会の持続的発展に貢献する CSR経営の推進 |
・省エネ活動の推進とクリーンエネルギー設備(LNG、太陽光発電)の導入 ・社有林を活用した生物多様性の確保およびJ—クレジットの認証取得 ・意識改革と活躍できる職場の拡大による女性の活躍推進 ・コーポレートガバナンス体制の構築、向上に向けた取り組み |
また、アルミ電解コンデンサ用セパレータおよび機能材ともに、生産性改善によるコスト低減およびSCMの観点から本社・本社工場、安芸工場敷地の有効活用などによるサプライチェーンの最適化、ならびに原料の安定調達に努めてまいります。なお、高知県内生産拠点との同時被災リスクの低い米子工場において、将来の需要拡大が見込まれる車載用途など高付加価値セパレータの生産能力増強、および製品出荷までの各工程(抄紙~裁断~出荷)を完結できる体制を構築するための設備投資を計画しており、2024年7月稼働開始に向けて、安定供給体制のさらなる強化の取り組みを進めてまいります。
また、当社グループは、ESG(環境、社会、ガバナンス)を念頭に置き、環境負荷軽減につながる設備導入などによる地球環境の保全に加え、地域社会への貢献、グループ全体のガバナンス体制の強化、企業倫理の徹底などを通じて、社会や市場の中で信頼され、必要とされる企業を目指して努力してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)特定品目への依存について
高い市場シェアを有している主力のアルミ電解コンデンサ用セパレータの売上が、当連結会計年度の売上高全体に占める割合は約8割であり、世界の需要動向が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。需要拡大が見込まれる機能材を拡販することで、業績の安定に努めてまいります。
(2)設備投資による影響について
アルミ電解コンデンサ用セパレータにおいて高い市場シェアを有している当社グループでは、ユーザーへの安定供給体制を確保していくため、需要予測にもとづく生産能力増強のための設備投資を計画的に実施いたします。製造設備の新設・増設には多額の設備投資を必要とする業態であり、多額の投資を実施した直後の年度においては、売上高に対する減価償却費の比率が比較的高くなる傾向があります。
また、減価償却費負担および借入金増加による支払利息の増加などにより、一時的にグループの業績に影響を与える可能性があります。
(3)自然災害および火災による影響について
当社グループは、南海トラフ地震などの地震、台風や大雨などの風水害による自然災害および火災発生によるリスクを軽減するため、同時被災防止の観点で、高知県内の3工場に加え、抄造工程を受け持つ米子工場を稼働させ、裁断工程を受け持つ子会社をマレーシアに設立するなど、安定供給体制の構築をはかっております。生産拠点の分散をはじめ、様々な災害を想定した対策を実施しておりますが、災害が発生した場合には、従業員の安全の確保や原材料の確保、生産の継続などに支障をきたし、グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、全社組織である「BCM推進会議」の運営を通じて、「従業員の安全確保」および「お客様への安定供給」のより全社的な推進・浸透をはかっております。こうした当社の取り組みは、2014年に日本政策投資銀行(DBJ)の「BCM格付融資」において、最高ランクで認定されるなど、しっかりと評価されているものと認識しております。
今後も、災害を想定した訓練や早期復旧につながる保険付保などの対策に加え、グループ全体での生産体制の構築、サプライチェーンの強化に向けてBCMの実効性・実用性について評価・改善に取り組んでおります。
(4)感染症によるリスクについて
当社グループでは、マレーシアの現地子会社を含めた各事業所において新型コロナウイルスなどの感染症が発生した場合、事業所の閉鎖や操業停止などにより製品供給に支障をきたし、また、原材料や製品などの輸送に必要な物流網の混乱が長期化した場合、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、従来から顧客への製品の安定供給責任を果たすためにBCM活動に取り組んでおり、今般の新型コロナウイルス感染拡大に際しても、原材料および製品在庫の確保に加え、不測の事態に備えた手元資金の積み増しなどの対策をおこなっております。「安全・健康はすべてに優先する」という経営方針のもと、「感染しない・させない、ウイルスを持ち込まない」ために、手洗い、消毒、マスク着用、適度な換気およびソーシャルディスタンス確保などの基本的対策も継続・徹底してまいります。
(5)価格競争について
当社グループは、これまで顧客と築いてきた信頼関係をもとに、高品質・高信頼性製品を安定供給できることが大きな強みであり、成長市場での拡販に努めております。アルミ電解コンデンサにつきましては、コンデンサメーカーにおけるグローバルでの競争が激しくなっており、将来的に当社のアルミ電解コンデンサ用セパレータ販売価格への下落圧力が強まる可能性があります。機能材におきましては、リチウムイオン電池市場が成長しているものの、激しい価格競争の影響を受け、使用する部材の低価格化が進んでおります。今後も、他社と差別化できる高品質・高信頼性製品の開発・安定供給をもって事業を運営してまいりますが、価格競争リスクが当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(6)原材料調達リスクについて
当社グループは、製品の主要原材料であるパルプの多くを海外から輸入しております。気候変動や政情不安による供給不足が発生した場合に備えて原則2社購買とするとともに、供給不安が少ない原材料に切り替えるなど安定調達に努めておりますが、品質、需給悪化などの問題から調達コストの上昇や調達が困難となった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(7)為替レートの変動による影響について
当社グループの製品販売および原材料仕入は、一部外貨建ての取引となっているため、為替相場の変動は、外貨建て取引により発生する資産・負債に影響を与える可能性があります。為替相場の変動リスクを軽減するために、為替変動リスク管理規定を設け、為替予約や外貨建て借入を実行できる体制となっておりますが、完全に排除できるものではなく、為替変動リスクが当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(8)エネルギー価格変動による影響について
当社グループは、セパレータの製造において電力、LNG、重油を使用しております。省エネ効果が得られる設備投資や省エネ活動の推進によりエネルギー使用量の削減に努めておりますが、電力、LNGおよび重油価格の変動が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(9)人材確保におけるリスクについて
当社グループの競争力を維持、向上させるためには、製品開発および製造などに必要な人材を安定して採用、確保し続ける必要があります。計画的な新卒採用や中途採用に加え、「安全・健康はすべてに優先する」という経営方針のもと、働きやすい職場づくりに努め、人材の定着をはかっておりますが、少子高齢化にともなう労働人口の減少などにより優秀な人材の確保が困難となり、当社グループの事業展開などに影響を与える可能性があります。
(10)海外展開におけるリスクについて
当社は、海外に子会社を保有しています。グループ間で常に情報を共有し対応できる体制を整備しておりますが、進出国において、法規制の改正や変更、政治情勢および経済状況の変化、戦争やテロによる社会的混乱、労働争議などが発生した場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(11)企業の社会的責任に関するリスクについて
当社グループは、持続可能な社会の実現のため、地球環境への配慮・労働環境の整備・人権の尊重などに代表される企業の社会的責任を重要な経営課題と認識し、取り組んでおります。事業活動において、環境汚染、労働災害の発生などの労働安全衛生に関する問題、または、サプライチェーンにおける児童労働、強制労働などの人権に関する問題が生じた場合、当社グループの社会的な信用が低下し、顧客からの取引停止、または、事業からの一部撤退などにより、業績に影響を与える可能性があります。
(12)気候変動に関するリスク
当社グループでは、気候変動に対する国内外の政策および法規制を踏まえ、重油と比較して温室効果ガス排出量が少ないLNGへのボイラー燃料転換や本社工場屋上への太陽光発電設備導入、および南国工場において再生可能エネルギー由来の電力を使用するなどの取り組みをおこなっておりますが、世界的な脱炭素社会の実現の流れを受けた日本政府の規制強化や温室効果ガスの排出に関する新たな税負担などが生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(13)情報セキュリティに関するリスクについて
当社グループは、技術情報などの機密情報や顧客などに関する情報を保有しております。外部への情報流出を防止するためのセキュリティシステム強化、定期的な社内教育の実施などの対策をおこなっておりますが、コンピュータウイルス感染やサイバー攻撃などにより情報が流出した場合、当社グループの社会的信用の失墜による企業価値の低下、情報流出により被害を受けた顧客などへの補償により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(1) 業績等の概要
当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。これによる財政状態および経営成績への影響は軽微であります。
①業績
当連結会計年度における世界経済は、米国を中心に回復が継続したものの、夏場以降における新型コロナウイルス感染再拡大やそれにともなうサプライチェーン混乱の影響があったことに加え、ウクライナ情勢の悪化や原材料・エネルギー価格の上昇によるインフレの長期化が懸念されるなど、先行き不透明な状況が続いております。わが国経済は、海外経済の回復を背景に製造業での改善傾向が続きましたが、断続的な新型コロナウイルスの感染拡大により経済活動が制限されるなど、回復は緩やかなものとなりました。
当社グループの関連市場であるエレクトロニクス業界におきましては、長期化する世界的な半導体の供給不足などの影響が自動車生産において見られたものの、自動車の電装化および電動化の進展や設備投資の回復が継続したことなどにより関連部品の需要が増加しました。
このような状況の中、アルミ電解コンデンサ用セパレータは、年間を通じて車載向けや産業機器向けが好調を維持し、通信設備関連の需要も堅調に推移したこともあり、当連結会計年度の売上高は14,210百万円(前連結会計年度比2,247百万円、18.8%増)となりました。
機能材は、リチウムイオン電池用セパレータが好調に推移したものの、海外における風力発電向けの電気二重層キャパシタ用セパレータが減少したため、当連結会計年度の売上高は3,863百万円(前連結会計年度比91百万円、2.3%減)となりました。
この結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は18,074百万円(前連結会計年度比2,155百万円、13.5%増)となりました。
利益面におきましては、原材料やエネルギー価格上昇の影響はありましたが、売上高の増加にともなう稼働率向上および効率的な生産推進の取組みによる原価率の低減などもあり、営業利益は4,066百万円(前連結会計年度比1,304百万円、47.3%増)、経常利益は4,232百万円(前連結会計年度比1,436百万円、51.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,918百万円(前連結会計年度比912百万円、45.5%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は4,435百万円(前連結会計年度末比104百万円、2.3%減)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益4,182百万円、減価償却費1,359百万円、棚卸資産の増加額807百万円、退職給付に係る負債の減少額683百万円、法人税等の支払額1,091百万円等により、営業活動の結果得られた資金は2,907百万円(前連結会計年度比311百万円、9.7%の収入減)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出1,822百万円等により、投資活動の結果使用した資金は1,837百万円(前連結会計年度比848百万円、85.8%の支出増)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
長期借入金の約定返済964百万円、配当金の支払額290百万円等により、財務活動の結果使用した資金は1,255百万円(前連結会計年度は541百万円の収入)となりました。
(2) 生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
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セパレータ事業(千円) |
18,217,767 |
12.4 |
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合計(千円) |
18,217,767 |
12.4 |
(注)金額は、販売価格により表示しております。
②受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
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セパレータ事業 |
18,371,654 |
9.5 |
2,086,512 |
16.6 |
|
合計 |
18,371,654 |
9.5 |
2,086,512 |
16.6 |
(注)金額は、販売価格により表示しております。
③販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
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セパレータ事業(千円) |
18,074,074 |
13.5 |
|
合計(千円) |
18,074,074 |
13.5 |
(注)主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する当該販売実績の割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
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金額(千円) |
総販売実績に対する割合(%) |
金額(千円) |
総販売実績に対する割合(%) |
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|
王子エフテックス㈱ |
9,195,533 |
57.8 |
12,648,552 |
70.0 |
(3) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態に関する分析
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ1,137百万円増加し、26,163百万円となりました。
流動資産は、商品及び製品の増加、原材料及び貯蔵品の増加等により、前連結会計年度末に比べ795百万円増加し、15,351百万円となりました。
固定資産は、有形固定資産の減価償却実施等がありましたが、有形固定資産の取得等により、前連結会計年度末に比べ342百万円増加し、10,812百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ1,593百万円減少し、6,831百万円となりました。
流動負債は、未払法人税等の増加等がありましたが、未払金、設備関係未払金の減少等により、前連結会計年度末に比べ91百万円減少し、4,888百万円となりました。
固定負債は、長期借入金の約定返済、退職給付に係る負債の減少等により、前連結会計年度末に比べ1,501百万円減少し、1,943百万円となりました。
純資産は、剰余金の配当の実施、親会社株主に帰属する当期純利益2,918百万円を計上したことによる利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ2,731百万円増加し、19,331百万円となりました。
②経営成績に関する分析
「第2 事業の状況、3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析、(1) 業績等の概要、①業績」をご参照ください。
③キャッシュ・フローに関する分析
当社グループの「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、期中における営業活動の成果である税金等調整前当期純損益および減価償却費のほか、売上債権、棚卸資産、仕入債務の増減および法人税等の支払に大きく影響を受けております。
当連結会計年度の状況は、「第2 事業の状況、3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析、(1) 業績等の概要、②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
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区分 |
第90期 2020年3月 |
第91期 2021年3月 |
第92期 2022年3月 |
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税金等調整前当期純利益(百万円) |
970 |
2,784 |
4,182 |
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減価償却費(百万円) |
1,254 |
1,279 |
1,359 |
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売上債権の増減額(百万円) |
△274 |
△665 |
84 |
|
棚卸資産の増減額(百万円) |
54 |
365 |
△807 |
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仕入債務の増減額(百万円) |
△113 |
△607 |
136 |
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法人税等の支払額(百万円) |
△28 |
△268 |
△1,091 |
|
その他(百万円) |
576 |
331 |
△956 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
2,438 |
3,219 |
2,907 |
④資本の財源および資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品の主要原材料であるパルプの購入費用および動力費のほか、製造費、販売費及び一般管理費の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、セパレータ事業における設備投資等によるものであります。
また、当社グループは、設備投資計画に照らして、必要な資金を主に銀行等金融機関からの借入により調達するとともに、短期的な運転資金を銀行借入および売掛債権の流動化により調達しております。
2022年3月31日現在の主な契約債務の概要は以下のとおりであります。
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|
年度別要支払額(百万円) |
|||||
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契約債務 |
1年以内 |
1年超 2年以内 |
2年超 3年以内 |
3年超 4年以内 |
4年超 5年以内 |
5年超 |
|
短期借入金 |
600 |
- |
- |
- |
- |
- |
|
長期借入金(*1) |
839 |
715 |
444 |
251 |
- |
- |
|
合計 |
1,439 |
715 |
444 |
251 |
- |
- |
(*1)1年内返済予定長期借入金は、長期借入金に含めております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準にもとづき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、中長期計画の達成状況や過去の実績を勘案するなど、可能な限り合理的な根拠を有した仮定や基準を設定した上で実施しております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しをおこなっておりますが、見積りには不確実性がともなうため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
また、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(5) 経営上の目標の達成状況について
当社グループは、株主利益重視の観点から、資本効率を高めるために、収益性の向上を目標として事業を推進しており、安定的に自己資本当期純利益率(ROE)8%以上を目標としております。
当連結会計年度における自己資本当期純利益率(ROE)は16.2%(前連結会計年度比3.4ポイントプラス)でした。引き続き当該指標の達成に向けて取り組んでまいります。
アルミ電解コンデンサ用セパレータの継続的売買に関する契約
当社は1972年8月、本州製紙㈱(現:王子エフテックス㈱)との間で、アルミ電解コンデンサ用セパレータの生産・販売に関する業務提携ならびに資本提携をおこない、「業務提携に関する基本契約」ならびに取引細目についての覚書を締結いたしました。これにもとづき、両社が契約するアルミ電解コンデンサ用セパレータは当社が生産し、同社を通じて全量当社商標で販売してまいりました。
この契約のうち、1995年8月、資本提携等に関する条項の削除について両社合意し、2020年10月、取引細目に関する条項の統合について両社合意し、改めて「売買取引基本契約」として契約更改し締結いたしました。
契約の内容は、次のとおりであります。
|
「売買取引基本契約」 |
|
|
契約期間 |
1年間、以後1年間単位で異議申し立てのない限り自動延長 |
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契約内容 |
① 当社は、同社に対してアルミ電解コンデンサ用セパレータを継続的に売渡し、同社はこれを買受ける。 |
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|
② 同社が販売を望む当社のアルミ電解コンデンサ用セパレータは、全量同社が販売するものとし、当社は同社が必要とする全量を同社に供給する。 |
|
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③ 当社のアルミ電解コンデンサ用セパレータは、全て当社の商標で販売するものとする。 |
当社グループは、ユーザーの技術動向に対応し、各ユーザーとの情報交換・技術交流を密接におこなっており、ニーズに適合した製品の改良・新製品の開発に取り組み、さらに今後の技術発展動向とニーズを先取りしていく技術開発を重視し、研究開発活動をすすめております。
また、当社製品の品質に適合した原料および新素材の研究開発に継続的に取り組んでおります。
当社グループの研究開発活動は、当社のセパレータ事業および全社でおこなっており、当連結会計年度における主な研究開発分野および成果は次のとおりであります。
セパレータ事業
(アルミ電解コンデンサ用セパレータ)
アルミ電解コンデンサの小型大容量化・高温長寿命化・高周波低インピーダンス化・耐リップル性を改善するセパレータの開発をおこなっております。
当連結会計年度においては、省エネ家電や太陽光発電・風力発電等のインバータ用途等に向け、高耐圧で電気特性に優れた中高圧コンデンサ用セパレータの開発を進めました。また、電動化や自動運転など電子化が進むxEVや、5Gなどの高速通信を利活用したIoTやデータセンターなどの情報通信産業の市場拡大に応えるため、薄型で耐ショート性能に優れた信頼性の高い低圧コンデンサ用セパレータの開発を進めるとともに、耐熱性能に優れた導電性高分子固体コンデンサ用セパレータの開発を進めました。
(機能材)
脱炭素社会への関心の高まりによる電気自動車などの省エネ型車両用途や太陽光発電・風力発電等のクリーンエネルギー分野の拡大に対応するため、より高性能・高品質のセパレータの開発をおこなっております。
当連結会計年度においては、ユーザーニーズへの細やかな対応をおこなうため、電気二重層キャパシタ用セパレータのラインナップ拡充やリチウムイオン電池用セパレータの更なる薄型化、耐熱性の向上、各種電解液との親和性向上、急速充放電特性の向上に取り組みました。
全社
新素材および新技術を用いた製品開発等の基礎研究をおこない、当社の技術・素材を活かした用途展開を進めております。
なお、当連結会計年度における研究開発費をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(千円) |
|
セパレータ事業 |
369,584 |
|
全社(注) |
54,728 |
|
合計 |
|
(注)特定のセグメントに区分できない研究開発費であります。