第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、「お客様の満足」「利益の確保」「株主への還元」の三つのバランスを取りつつ、同時に充足させることが必要と考え、経営に取り組んでおります。

 当社グループは創業以来、生産物を全国に安心・安全・適正な形でお届けするために必要な製品を開発し、提供していくことで、社会に貢献することを目指してきました。そのためには、顧客満足の向上と同時に、従業員はもとより、お取引先、株主・投資家、そして地域社会の皆さまと良好な関係を構築していくことが重要であると認識しております。

 また、当社グループは、取り巻く経営環境が大きく変化するなか、持続的な成長を目指すべく、2022年に新たに企業理念を制定いたしました。当社が、重包装袋の製造販売会社として、長年の経験と技術開発力を活かし、安心・安全な製品を提供し続けることで、物流という社会基盤を支えるとともに、当社グループは常に時代の要請に敏感な企業集団として、環境の保全に対応した製品開発活動で、クリーンで豊かな社会の維持向上に貢献してまいります。

新しい企業理念、ミッション、ビジョン、バリュー、行動指針は以下のとおりであります。

●新しい企業理念

「お客様からお客様へ、安心で豊かな未来を願い包装の“カタチ”を創り続ける」

●ミッション(使命)

「安心・安全な製品を、安定供給することで物流という社会基盤を支える」

●ビジョン(目指す未来)

「お客様と社会の様々なニーズに応える最適な製品を開発、製造、納入できる体制を整備し、豊かな未来をクリエイトする」

●バリュー(約束する価値)

 ①信頼の供給力

 ②確かな品質

 ③新しい提案力

 ④環境に対応する力

 ⑤誠実な経営

●行動指針

①課題解決に向けスピードをもって実践する

②あらゆる可能性を粘り強く探求する

 ③お客様と仲間に尊敬と感謝の心を持ち、ともに成長していく

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

 当社は、2022年度を初年度とする中期経営計画「PAXXS Vision-2030」を策定いたしました。計画は2段階の構想とし、段階的に取り組むべき経営課題に向き合い、解決していくことを想定しています。「ニーズをカタチに」のプロジェクトでは、お客様からご要望が多い環境対応型商品の開発を進めており、加工食品用途として内容物の賞味期限を延ばすことでフードロスの減少につながる窒素置換包装と窒素充填装置の納入を開始しました。「品質の追求を」のプロジェクトでは、製品検査にAI・画像センサーを導入し不良品の検出精度が向上しました。「仕事に自信を」のプロジェクトでは、工場の技術・技能の伝承と若手オペレーターの教育のため、製造工程や検査工程のマニュアルを動画に収録し各工場で成果が上がっております。今年度は1st STAGE(2022~2026年度)の4年目にあたり、引き続き企業運営基盤の整備と意識改革を推進します。開発体制、生産設備、人への投資を積極的に行ない、持続的成長と企業価値の向上を目指します。続く2nd STAGE(2027~2030年度)では1st STAGEでの取組みを着実に推進して、製品・サービスを拡充させ顧客満足度を高めます。さらに次のSTAGEへ向けて新しい価値の創造・投資に取り組んでまいります。

 

中期経営計画「PAXXS Vision-2030」

 「ニーズをカタチに」:お客様が満足される製品を開発・供給する

 「品質の追求を」:いつも安心・安全な品質を素早くお届けする

 「仕事に自信を」:“働くことの満足感”を得られる職場環境づくり

 

 重包装分野では、得意とする合成樹脂用途をはじめ各需要分野で、時代の趨勢にあった生産・販売体制、即ちAI・画像センサーによる品質管理システムや、新しい顧客ニーズに素早く対応できる営業体制の構築でシェア拡大を図り、フィルム分野では、産業用フィルム、農業用フィルムの両面で機能開発、用途開発を行って販売活動を更に推し進めるなど、現有事業の強化拡大に努めてまいります。物流・包装に係る新製品開発・新市場創造および新事業進出に積極的に取り組んで新たな成長を図ります。

 お客様の新たなニーズに「最適な包装のカタチ」でお応えすることで、持続可能な社会に貢献を続ける100年企業を目指します。

 

(3)経営環境

 当社グループの事業は産業用包装資材の製造・販売であり、当社グループの収益は、大口顧客である素材産業や農水産業の生産高の増減、ひいては景気の動向に大きく左右されます。海外経済の回復などによる国内生産の動向が当社の業績に大きな影響を与えるものと考えております。

 また、労働環境・品質の改善につながる設備投資やデジタル化を進めるためのシステム投資を積極的に行っていきますが、一方でその減価償却費やメンテナンス費用などの負担が増加し、短期的に大きな利益圧迫要因となることは避けられない状況です。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 優先的に対処すべき事業上の課題は、当社グループが取り扱う原材料価格が高止まりしている上、賃上げ、投資設備完成による減価償却費およびメンテナンス費用などの負担が増加し、利益圧迫要因となることは避けられない情勢です。こうした原価上昇要因および製造・管理コスト増をカバーすべく、新たに更新する設備を活かして生産を効率化してまいります。

 財務上の課題は、設備導入・更新やリスク対応に必要な資金を投じながらも、健全な財務体質を保ち続けることです。また、東証スタンダード市場に上場する企業としてコーポレートガバナンスコードに従い、企業理念「お客様からお客様へ、安心で豊かな未来を願い包装の“カタチ”を創り続ける」の実践を通じ、100周年を迎えることを目指します。

 

(5)目標とする経営指標

 経営指標としては、1株当たり当期純利益(EPS)、株主資本利益率(ROE)を重視して経営にあたっており、実績は以下の通りとなります。当連結会計年度の実績は、1株当たり当期純利益(EPS)及び株主資本利益率(ROE)いずれも前期を上回りました。

項目

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

1株当たり当期純利益(EPS)

248.24円

213.51円

216.74円

297.41円

株主資本利益率(ROE)

5.8%

4.8%

4.4%

5.7%

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社はサステナビリティの実現を目指し、リスク管理規程に基づきリスク評価を実施し、その内容を中期経営計画「PAXXS Vision-2030」の各分科会の活動に落とし込み、対応を検討しています。取締役会は年4回中期経営計画の活動内容、進捗状況の報告を受け、議論を行い、必要に応じて指示を行います。

 

(2)リスク管理

 リスクの評価は、リスク管理規程に基づき各部門の部門長をリスク管理担当者としてリスクへの対応のための検討を経て、生産・営業・管理の各本部長が常務会及び取締役会に状況および施策の提言を行います。

 

(3)重要なサステナビリティ項目

 上記、ガバナンスおよびリスク管理を通して識別された重要なサステナビリティ項目は、次のとおりであります。

(気候変動)

①戦略

 具体的なリスクとしては、炭素税の導入や再生可能エネルギーへの移行に伴うエネルギーコストの上昇(影響度中)、対応の遅れによる取引の減少(影響度大)、自然災害の激甚化によるサプライチェーンの混乱・事業活動の停滞(影響度大)、平均気温上昇による労働環境の悪化(影響度中)等が挙げられますが、具体的な戦略は中期経営計画の活動において検討中であります。

②指標及び目標

 指標及び目標については現在検討中であります。

 

(人的資本)

①戦略

 中期経営計画の主要テーマの一つである「仕事に自信を:“働くことの満足感”を得られる職場環境づくり」にて人材育成方針を決定し、持続的な成長に向けた人材への投資の3つの柱として「ワーク・ライフ・バランスをかなえる雇用環境と働きやすい職場づくり」「プロフェッショナル職業人の育成」「ジェンダー平等の推進」を据えています。人事制度の見直し、多様な人材の育成に努め、従業員が働きがいを感じながら、会社とともに成長していける組織を目指します。

②指標及び目標

 男性育児休業取得率については、今期実績値54.5%に対し2030年までに目標値100%としています。また、その他実績値は、管理職に占める女性労働者の割合が0%、全労働者の男女賃金の差異が56.8%、平均有給取得日数が14.2日、障害者雇用率が2.43%となっております。今後、中期経営計画の活動の中で、持続的な成長に向けた人材への投資の指標と目標を設定することで、プロジェクトの方向性を明確にし、的確な進捗管理を実施してまいります。なお、連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)」の規定による公表義務の対象でないため、指標及び目標、並びに実績については、提出会社のみを対象として記載しております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものでありますが、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難である場合は記載しておりません。

 当社は、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの未然防止を図っております。

○景気変動の影響について

 事業の性質上、当社グループの業績は景気変動の影響を大きく受けます。景気の後退で顧客である素材産業や食品産業、農水産業の生産が縮小した場合、当社グループの売上もそれに応じて縮小が避けられません。また、自然災害や感染症の流行などが発生し、鉱工業、農水産業の生産に影響が及んだ場合も同様です。加えて、資源価格の高騰や世界的なサプライチェーンの混乱などによる景気の変調が懸念され、その場合は、当社グループの売上も制約を受けることになります。

○為替変動の影響について

 当社グループの事業、業績および財務状況は、為替相場の変動によって影響を受けます。タイ昭和パックス㈱における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算されております。換算時の為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらずとも円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。また、為替動向は外貨建てで取引されている製品価格および売上高にも影響を与える可能性があります。なお、タイ昭和パックス㈱の売上、資産が連結財務諸表に占める割合はいずれも10~20%の範囲であり、リスクの規模は自ずと限定されます。

○原材料の市況変動の影響について

 重包装袋セグメントではクラフト紙、フィルム製品セグメントではレジン(ポリエチレン・ポリスチレン樹脂)を主要な原材料として使用しております。この原材料価格が当社グループの原価率を左右するため、現在の趨勢の通りに上昇を続けた場合は、当社の業績に相当な影響が及ぶことが危惧されます。なお、原材料市況は国内外の様々な要因で変動するものであり、予測は困難です。

○投資有価証券について

 当社グループは株式等の投資有価証券を保有しており、株式市況の変動でその時価が大幅に下落した場合は、評価損の発生により一時的に当社グループの業績と財務状況に影響が及ぶ可能性があります。株式市況の2025年3月期末は前期末より下落しました。当社が保有する投資有価証券はもともと取得原価が低く、2025年3月期末の時価総額は取得原価を大幅に上回っております。銘柄別にみても取得原価を下回るものはごく僅かであります。

○退職給付債務について

 当社の退職給付費用および退職給付債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当期にあっては前提条件から大きく異なることはありませんでした。

○法的規制変更の影響について

 当社グループが事業を展開する国および地域において、当社グループは、予想外の規制の変更、法令の適用および行政の運用における不透明性ならびに法的責任にかかる不透明性に関連する多様なリスクにさらされています。当社グループが事業を展開する国および地域における規制または法令の重要な変更は、当社グループの事業、業績および財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 また、当社グループの事業は、大気汚染、水質汚濁、有害物質の使用および取扱い、廃棄物処理、製品リサイクルならびに土壌、地下水汚染を規制する様々な環境法令の適用を受けております。過去、現在および将来の製造に関し、当社グループは環境責任のリスクを抱えております。将来、環境に関する規制がより厳しくなり、有害物質等を除去する義務がさらに追加された場合には、これにかかる費用が当社グループの事業、業績および財務上に悪影響を与える可能性があります。

 当期末時点において対応を迫られるような事例はないと認識しておりますが、将来の予測は困難です。

○災害発生の場合の影響について

 地震、台風等の自然災害、火災等の事故災害が発生した場合、当社グループの拠点の設備等が損壊し、その一部または全部の操業が中断して生産および出荷が遅延する可能性があります。また、損壊した設備等の修復に多額の費用が必要となって、当社グループの事業、業績および財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。本リスクについても予測は困難です。

 

〇貸倒リスク

 当社グループ取引先の信用不安により予期せぬ貸倒リスクが顕在化し、貸倒引当金の計上が必要となり財政状態または経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのような事態に備え、当社グループは信用度が低いと判断される会社については保証会社と売掛債権の保証契約を一部締結しております。また売上債権の保全を図るとともに信用状態を管理しておりますが、予想し得ない貸倒が発生するリスクがあります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)のわが国経済は、賃上げによる個人消費の増加が内需を押し上げると期待されましたが、海外経済減速や物価高が重石となり伸び悩みました。また、鉱工業生産の基調判断については7月以降「一進一退」に据え置かれ、また米国の関税政策などで先行きの不透明感が払拭できない状況です。

 このような状況の中で当社グループの連結売上高は23,316百万円で前期比1,664百万円の増収でした。損益では営業利益1,377百万円(前期比356百万円の増益)、経常利益1,626百万円(同377百万円の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益1,320百万円(同357百万円の増益)となりました。売上数量が伸び悩む状況が続きましたが、一方で製品価格改定による採算の良化や原価抑制に努めた結果、親会社株主に帰属する当期純利益は増益となりました。

 当社単独では売上数量が伸び悩みましたが製品価格改定より売上高は増収、一方で賃上げ、投資設備完成による減価償却費およびメンテナンス費用などの負担が増加して営業利益及び経常利益は減益となりました。当期純利益は投資有価証券売却益により増益となりました。

 

 当社グループの最近3年間におけるセグメント別の業績推移は、下表のとおりであります。

回      次

 第127期

 第128期

 第129期

決 算 年 月

 2023年3月期

 2024年3月期

 2025年3月期

 項      目

金額(千円)

百分比

(%)

前期比

(%)

金額(千円)

百分比

(%)

前期比

(%)

金額(千円)

百分比

(%)

前期比

(%)

売  上  高

22,277,145

100.0

+3.1

21,651,665

100.0

-2.8

23,316,657

100.0

+7.7

 

重包装袋

13,512,254

60.7

+1.9

13,824,301

63.8

+2.3

15,294,702

65.6

+10.6

フィルム製品

4,326,658

19.4

+10.4

4,105,785

19.0

-5.1

4,278,367

18.3

+4.2

コンテナー

2,035,180

9.1

+5.7

2,077,467

9.6

+2.1

1,884,641

8.1

-9.3

不動産賃貸

244,750

1.1

-4.5

222,546

1.0

-9.1

227,170

1.0

+2.1

その他

2,158,301

9.7

-3.3

1,421,564

6.6

-34.1

1,631,776

7.0

+14.8

営業利益

1,115,585

5.0

-20.5

1,021,577

4.7

-8.4

1,377,754

5.9

+34.9

経常利益

1,349,907

6.1

-14.8

1,248,704

5.8

-7.5

1,626,630

7.0

+30.3

親会社株主に帰属する当期純利益

947,991

4.3

-14.0

962,353

4.4

+1.5

1,320,253

5.7

+37.2

 

連結子会社の概況は次のとおりであります。

 

 タイ昭和パックス㈱は会計期間が1~12月です。主要取引先の増産などの影響で売上数量は増加し、現地通貨と円貨で増収増益となりました。九州紙工㈱は売上数量が増加して増収増益となりました。㈱ネスコは主要顧客との取引が好調で増収、追加の与信費用が負担となりましたが増益となりました。山陰製袋工業㈱、山陰パック㈲の2社は会計期間が1~12月です。山陰製袋工業㈱は売上数量が増加して増益となりました。

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

 

○重包装袋

 重包装袋セグメントの主力製品であるクラフト紙袋の当連結会計年度の業界全体の出荷数量(ゴミ袋を除く)は前期比2.1%の減少となりました。農水産物、飼料、合成樹脂、セメントの用途が大きく減少した他、その他鉱産物、プラスターの用途が減少しました。米麦、砂糖・甘味、その他食品及びその他の用途は前期の数量を上回りました。重包装袋の主原材料であるクラフト紙の価格は原燃料費上昇によるコスト高を理由として値上がりした後、高止まりしています。

 当社の売上数量は前期比1.6%の増加となりました。業界の傾向と同じく、その他鉱産物、セメント、プラスター、その他の用途が減少し、米麦、砂糖・甘味、その他食品の用途は増加しました。合成樹脂、飼料、農水産物、化学薬品の用途は、業界の傾向に反して増加に転じました。

 子会社の九州紙工㈱の売上数量はセメント用途が減少しましたが、塩および米麦用途で増注となり、全体で前期比5.0%の増加でした。タイ昭和パックス㈱の当連結会計年度(1~12月)は主要取引先の増産もあり、売上数量は前期比10.1%の増加でした。山陰製袋工業㈱の当連結会計年度(1~12月)は米麦袋が減少しましたが、一般袋で一部ユーザーの増注もあり、売上数量は前期比1.7%の増加となりました。

 当セグメントの連結売上高は15,294百万円で、前期に対して1,470百万円の増収になりました。

 

○フィルム製品

 フィルム製品の業界全体の当連結会計年度の出荷量は前期から産業用、農業用ともに減少となりました。主原材料であるポリエチレン樹脂の価格は、ナフサ価格の高騰による値上げに加えて物流費など諸経費の上昇によるコスト高を理由に値上がり後、高止まりしています。

 当社の売上数量は業界の傾向と同様に産業用、農業用ともに減少し、合計では前期比1.0%の減少となりました。産業用ではストレッチフィルム「エスラップ」、アスベスト隔離シート、ポリスチレンフィルム「エスクレア」が増加しましたが、熱収縮包装フィルム「エスタイト」は減少しました。農業用では「バーナルハウス」等ハウスフィルムで微増となりましたが、牧草用途で微減となりました。

 当セグメントの連結売上高は4,278百万円で、前期に対して172百万円の増収になりました。

 

○コンテナー

 フレキシブルコンテナの業界全体の当連結会計年度の出荷量は国内生産品と海外生産品を合わせると化学工業品、窯業土石品、食品、その他の用途が増加となりましたが、合成樹脂、飼料の用途が大きく減少しました。全体では前期から増加となりました。海外からの輸入量全体は前期から増加しました。

 当社のフレキシブルコンテナ「エルコン」の売上数量は米麦用途で大きく減少し、前期比3.0%の減少となりました。液体輸送用1,000ポリエチレンバッグ「エスキューブ」は新規用途が増注となり、前期比27.1%の増加となりました。ドライコンテナー用インナーバッグ「バルコン」は前期比28.5%の大幅減少となりました。

 当セグメントの連結売上高は1,884百万円で、前期に対して192百万円の減収でした。

 

○不動産賃貸

 当連結会計年度に新規の賃貸契約があり、当セグメントの連結売上高は227百万円となり、前期から4百万円の増収でした。

 

 この結果、当連結会計年度末の当社グループの総資産は33,384百万円で、前連結会計年度末に比べて67百万円増加しました。主な増加要因は現金及び預金495百万円、有形固定資産672百万円、投資その他の資産のその他に含まれる長期性預金600百万円および退職給付に係る資産118百万円です。主な減少要因は受取手形及び売掛金172百万円および投資有価証券1,562百万円です。

 負債合計は9,105百万円で、前連結会計年度末に比べ411百万円減少しました。主な増加要因は営業外電子記録債務261百万円です。主な減少要因は支払手形及び買掛金329百万円および繰延税金負債436百万円です。

 純資産合計は24,279百万円で、前連結会計年度末に比べて479百万円増加しています。主な増加要因は利益剰余金1,142百万円および為替換算調整勘定543百万円です。主な減少要因はその他有価証券評価差額金1,176百万円です。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金および現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べて367百万円減少の7,579百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、得られた資金は1,974百万円(前期比981百万円の収入増)となりました。この主な内訳は税金等調整前当期純利益1,878百万円、減価償却費700百万円、売上債権の減少額229百万円および貸倒引当金の増加額159百万円による資金の増加、仕入債務の減少額367百万円および法人税等の支払額482百万円による資金の減少です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は2,287百万円(同1,586百万円の支出増)となりました。この主な内訳は投資有価証券売却による収入289百万円、有形固定資産の取得による支出989百万円および定期預金の預入による支出と払戻による収入の差額1,419百万円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、使用した資金は326百万円(同85百万円の支出増)となりました。この主な内訳は配当金の支払額177百万円です。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

重包装袋

(千円)

14,300,887

9.3

フィルム製品

(千円)

3,155,140

△0.7

コンテナー

(千円)

185,741

△19.9

合計

17,641,769

7.0

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.商品仕入実績

 当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

重包装袋

(千円)

790,670

6.0

フィルム製品

(千円)

977,758

1.4

コンテナー

(千円)

1,529,447

△8.4

その他

(千円)

1,251,928

1.5

合計

4,549,804

△1.4

(注)金額は仕入価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

重包装袋

(千円)

15,421,683

10.0

1,067,846

13.5

フィルム製品

(千円)

4,347,877

6.6

255,151

37.4

コンテナー

(千円)

1,874,827

△2.9

195,097

△4.8

合計

21,644,388

8.1

1,518,095

14.0

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

重包装袋

(千円)

15,294,702

10.6

フィルム製品

(千円)

4,278,367

4.2

コンテナー

(千円)

1,884,641

△9.3

不動産賃貸

(千円)

227,170

2.1

その他

(千円)

1,631,776

14.8

合計

23,316,657

7.7

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)財政状態の分析

当連結会計年度末における財政状態は、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」のとおりであります。

当社グループの自己資本比率は当連結会計年度末で70.2%となっており、財政状態については大きな懸念はないものと認識しております。今後も、中長期的な成長のために、設備投資や研究開発等に必要な資金を投じつつ、安定した配当を実施、着実に利益を上げて健全な財政状態を保って企業価値の向上に努めてまいります。

2)経営成績の分析

当連結会計年度における経営成績は、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」のとおりであります。目標とする経営指標としては1株当たり当期純利益、株主資本利益率を重視しておりますが、当連結会計年度は増益となった結果、1株当たり当期純利益と株主資本利益率は前連結会計年度を上回りました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」のとおりであります。

 なお、当社グループの資金需要は、原材料費、人件費、運賃などの経費、設備投資および配当などが主なものです。その財源としては自己資金や外部資金を有効に活用しており、調達に不安はありません。設備投資については、通常の維持更新は原則として減価償却費の範囲内で行うこととしておりますが、重要かつ緊急を要するもの、及び新規導入や製造環境改善を含む戦略的な投資はその範囲にこだわらずに実行しております。当連結会計年度の設備投資額は1,243百万円ですが、この資金はすべて自己資金によりました。

 また、次期以降の設備投資額が増えてもキャッシュ・フロー上の懸念はないものと認識しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績などを勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表および2財務諸表等 (1)財務諸表の注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

5【重要な契約等】

 当社は、2025年3月25日開催の取締役会において、当社を吸収合併存続会社、当社の完全子会社である山陰パック有限会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行うことを決議し、同日付で、山陰パック有限会社との間で吸収合併契約を締結いたしました。

 詳細は、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 「注記事項(追加情報)(連結子会社の吸収合併について)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは顧客ニーズに対応した、社会の要請する新製品開発の推進を最重点に取り組み早期の収益化を目指してまいりました。研究開発は、昭和パックス㈱の技術部門である製袋技術部、樹脂製品技術部およびフィルム事業企画部を中心に推進しております。

 当連結会計年度における研究開発費は237,398千円であり、セグメント別の研究の目的、内容および成果は次の通りです。

[重包装袋]

 生産性面では、第126期に亀山工場に導入したBAX生産設備をベースに、更なる生産性向上、品質向上を目指す機能を追加した生産設備を東京工場に2ライン導入し、稼働を開始しました。また防府工場にピンチバッグ生産設備を第130期に導入する前準備として、既設設備の改造による生産型体の見直し、集約などを行い、より効率的な生産体制の構築を図っています。

 品質面では、画像検査装置導入による不良検出の対象拡大を進めており、更なる検査精度の向上を図っています。

 

[フィルム製品]

 産業用部門では、マスキング用フィルムにて、新規顧客への販売を開始しました。他の分野においても、新規顧客獲得に向け研究開発を進めております。

 農業用部門では、地球温暖化に対応した製品開発に取り組んでおります。農業ハウス用フィルムにおいて、ハウス内に入る太陽光のうち散乱光の割合を向上させた「サンラーンバーナル」の販売を開始しました。散乱光の効果により、作物の焼け等の高温障害の抑制や色むら低減が期待できます。

 また、環境配慮型製品として、バイオマス素材を配合した防錆フィルムやパレットカバーを開発し、TOKYO PACK2024に出展しました。

 

[コンテナー]

 20フィート粉粒体輸送用コンテナー内袋バルコンにおいて、充填排出テストを実施しながら改良を重ね、新規顧客への販売を開始することができました。

 1,000リットル用液体輸送用コンテナー内袋エスキューブは、増注が見込まれるため、作業手順の見直しや生産ラインの変更を検討しております。