第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、「すべてのステークホルダーとの調和のもと、共存の精神で200年企業をめざす」を経営理念として掲げ、株主、取引先、地域社会、従業員などすべてのステークホルダーにとって存在価値のある、良き企業市民として評価され、事業活動を続けてゆくことを目指しております。

 その実現のため、当社は秩序ある競争の原理と公正の原則をつらぬく経営活動を基本姿勢とし、今後ますますグローバル化が加速する環境に対処するため、社会環境の変化に対応し顧客から信頼される企業を目指した活動を展開するとともに、企業の社会的責任を自覚し、持続的発展が可能な循環型社会の実現のため環境対策の一層の強化に取り組み、企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社は、板紙事業及び美粧段ボール事業の二つの事業を展開しており、岡山本社の工場を生産拠点として中国地方を中心とした地域に根差した事業活動を展開してまいりました。今後も、自らが拠って立つ地域を基盤に事業活動を続けてゆきます。

 板紙事業につきましては、段ボール製造用の「中芯原紙」及び紙や布、フィルム、糸などの巻き芯や図面等を収める紙筒の原紙である「紙管原紙」を主要製品として製造しております。板紙の需要は産業活動全般の動向に左右される部分が大きく、国内景気の変動で販売量が増減します。さらに原材料である古紙その他原燃料の価格形成がグローバルな市況に左右される昨今の環境下で経営目標を達成するため、従来にも増して需要に見合った生産体制の構築と更なるコスト低減、営業面では適正価格の維持と新規取引先の開拓に努め、環境の変化に対応した経営に取り組んでまいります。

 美粧段ボール事業につきましては、電化製品、青果物、医薬品、飲料、食品などの個装箱や贈答品を主要製品として製造しております。商品包装の簡略化の流れ、主力の青果物で担い手不足による流通量の減少など、厳しい経営環境にあるなかで供給者責任を果たしつつ、ユーザーニーズに合致するパッケージを提供することで、より広く新規顧客の開拓に取り組んでまいります。

 競争優位性を確保する施策として、美粧段ボール事業において、段ボールシートへの直接印刷が可能な、日本初導入の6色インクジェットプリンター・Glory1606を導入し、多品種小ロット・バリアブル印刷といった新たなパッケージニーズに対応してまいります。

板紙事業においては、品質の安定化とコストパフォーマンスを実現するため、各工程に自動制御装置を導入し、24時間体制で製造を行っています。

また、製紙工場と加工工場を併設し、美粧段ボール製造の一貫体制を築いています。これにより、品質・納期管理が組織的に可能となり、蓄積された技術とノウハウが活かされ、トータルコストの面でも大きな優位性を発揮します。

 当社は、上記の経営の基本方針、経営戦略のもと、サステナブルな企業経営を実現するための重要課題(マテリアリティ)を特定し、人的資本への投資と環境負荷低減を中心に取り組んでいくことといたしました。

また、生産面では従来にも増して需要に見合った生産体制の構築と更なるコスト低減、営業面では適正価格の維持と新規取引先の開拓に努め、以下の項目を重点課題として認識し、全社一丸となって対応してまいります。

1. サステナブルな企業経営を実現するための取組

 当社が持続可能(サステナブル)な成長を続けるために、人材を最優先すべき資本のひとつと位置づけ、継続的に投資を行うことで競争力を確保することを目指し、人材育成、社内環境整備に取り組んでまいります。また、環境負荷の低減をはじめとしたESG(環境・社会・企業統治)に配慮した事業運営を行うことで、今後もよき企業市民として地域社会と共生し、企業価値向上に向けた活動を続けてまいります。

2. 営業力の強化

 生産・販売の両部門が一体となった体制で非価格競争力を強化し、適正価格の維持と販売量の安定確保を両立させることに努めるとともに採算重視の営業活動に徹します。また、特に美粧段ボール事業ではデジタル印刷を中心とした提案力の強化により新規取引先の開拓を推進し、強固な営業基盤の確立を図るよう役職員一丸となって販売活動を強力に推進してまいります。

3. 省エネ・生産効率向上と製品開発力の向上

 コスト競争力は企業存続の条件との認識にたち、原燃料等の価格変動に対処するため、省エネや省力化、生産効率向上に寄与する投資を積極的に推進し、更なるコスト低減策に取り組むとともに、併せてユーザーニーズに合った製品開発力を強化してまいります。

4. 原材料の安定調達と資材調達コストの低減

 当社にとって原材料の安定調達は企業活動を続けていく上で、最重要課題であると同時に、資材調達コストが即収益に大きな影響を及ぼすことを十分認識し、市況動向等を注視し原材料の計画的かつ安定的な調達に努め資材コスト低減を図ってまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、持続的発展および企業価値向上達成の客観的な指標として、営業利益及びROE(自己資本利益率)を経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として位置付けております。営業利益については5億円を、ROEについては、当社が認識する株主資本コスト6~9%を上回る水準を目標としております。当事業年度においては営業利益10億円、ROE6.3%となっております。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年8月25日)現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 「すべてのステークホルダーとの調和のもと、共存の精神で200年企業をめざす」という当社の経営理念は、まさにサステナブルな事業活動を継続していくという宣言であります。当社は、地元岡山に根差してステークホルダーとの「共存」を図り、古紙を原料とするビジネスモデルを通じた資源循環型経済の実現を追求することで事業価値を創出し、これまでに培ってきた技術と伝統を次の100年へとつなげていくことを目指しています。そのために、行動規範の遵守、内部統制システムの整備と適正な運用に継続して取組み、SDGsへの対応を含めたサステナビリティへの取組みを積極的に進めてまいります。

 また、サステナビリティ経営をより一層強化するため、取組みの指針として以下のとおり2025年2月にサステナビリティ基本方針を策定しました。

<基本方針>

 「すべてのステークホルダーとの調和のもと、共存の精神で200年企業をめざす」という経営理念のもと、持続可能な社会の実現と企業価値向上に努めます。

◆1.事業活動を通じた環境問題への取り組み

古紙を原料とするビジネスモデルを通じた資源循環型経済への貢献、GHG排出量の削減等により環境負担低減に努めます。

◆2.働きがいのある職場環境の実現

社員の健康・活力が事業活動の原動力であるとの考えのもと、一人ひとりの個性を尊重し、安全で働きがいのある環境づくりに努めます。

◆3.地域共生と地域発展への貢献

地域に根差した企業市民として地域社会と共生し、事業活動を通して持続可能な社会の発展に貢献します。

◆4.健全な企業活動の実践

法令及びコンプライアンスを遵守し、あらゆるステークホルダーにとって健全性・透明性の高い経営に取り組み、持続的な企業価値の向上に努めます。

 

①ガバナンス

 以前より気候変動を含むサステナビリティ課題についての取組みは代表取締役社長を最高責任者としておりますが、よりサステナビリティの取り組みを強化・促進するための体制を構築すべく、2024年8月に代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しました。このサステナビリティ委員会では、気候変動や人的資本を含むサステナビリティに関する方針や戦略、取り組みの促進、進捗確認をしております。また、2024年6月には、当社におけるマテリアリティを策定しており、このマテリアリティを基にサステナビリティ方針の決定、施策の審議、進捗管理をサステナビリティ委員会で行い、その結果を取締役会へ報告、取締役会による監督を受けております。

 ガバナンス体制図については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」をご参照下さい。

会議体

役割

メンバーの構成

サステナビリティ委員会

サステナビリティ方針決定、施策の審議、進捗管理のレビュー

委員長:代表取締役社長

委員:取締役、執行役員、本部長、

   部長

 

②戦略

<サステナビリティに関する戦略>

 当社の経営理念の実現に向けて、当社にとっての社会や環境等のサステナビリティ課題を社内で議論し、マテリアリティを特定、取締役会で議論したうえで「岡山製紙マテリアリティ」として定めております。今後は、リスクと機会についての特定をさらに進め、マテリアリティへの取り組みを加速し、当社の事業経営にサステナビリティやSDGs対応を取り込んでまいります。

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<マテリアリティ特定のプロセス>

 当社が直面している事業環境や課題、将来想定される社会課題や環境課題および主なステークホルダーを考慮に入れ、以下のプロセスでマテリアリティを特定しました。

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③リスク管理

 当社では、取締役会を中心とするガバナンス体制の下、「リスク管理規程」を定め、代表取締役社長が中心となってリスクへの対応を行っております。サステナビリティに関するリスク及び機会については、今後は、新しく設置したサステナビリティ委員会にて各部門担当者から情報を収集し、抽出、識別・特定・評価、管理し、その結果は取締役会へ報告、審議、承認されます。なお、承認された内容は取締役会もしくはサステナビリティ委員会を通じて、各役員の管掌分野において部門ごとに対応を進めてまいります。

 また、各部門でのリスク・機会への対応やその進捗およびモニタリング結果は、必要に応じてサステナビリティ委員会または管掌役員から取締役会に報告し、取締役会にて監督してまいります。

 

④指標及び目標

 マテリアリティに対する指標及び目標は、今後、主にサステナビリティ委員会で検討してまいります。

 

 

 

(2)気候変動

<気候変動に関する考え方>

 社会的な課題である環境保全の観点から、紙の合理性、安全性が再び見直される中、一製紙メーカーとして、効率化、省資源、省エネルギー化等の技術を駆使し、資源循環経営を進めていく必要があると考えています。気候変動における事業リスクと機会を認識し、事業戦略へ落とし込み、地域のステークホルダーにとって真に役立つ会社として永続すべく、気候変動問題に対応をしてまいります。

 

①ガバナンス

 当社では代表取締役社長を中心とした環境管理体制のもと、気候変動への対応を含む環境改善を推進しています。代表取締役社長に任命されたエネルギー管理統括者による、省エネ法に基づいたエネルギー管理体制の整備をはじめ、省エネ推進の取組みとして、省エネに関する改善提案等を省エネ推進会議によって評価し実行しています。

 2024年8月には、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を新たに設置し、気候変動を含むサステナビリティ方針や戦略、取り組みの促進、進捗確認をしていきます。

詳細については、「(1)サステナビリティに関する考え方 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

②戦略

 当社は、シナリオ分析をもとに「気候変動対策が進み将来の気温上昇が1.5℃に抑制された世界」と「気候変動対策が停滞し将来の気温上昇が4℃に達してしまう世界」の2つの世界観を記述することで、当社における気候関連のリスクと機会による当社への影響度を明らかにし、気候関連の変化及び不確実性に対する対応策を定めております。

 今回、洗い出しと評価を行ったリスクと機会については、当社のリスク管理体制に則りモニタリングを継続的に実施し、適宜再評価を行ってまいります。

 

<シナリオ分析のステップ>

 気候変動に関するリスク・機会については以下のステップで分析を行います。

今後は本ステップに従い、1年に1度の頻度にて分析の見直しを実施してまいります。

※STEP4については今後本分析を基盤として検討してまいります。

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<シナリオ分析の対象業種>

 当社売上高全体を構成する板紙事業、美粧段ボール事業を対象として分析を行いました。

 

<シナリオの定義>

 当社では、特定した「気候変動対策への対応によって生じるリスク(移行リスク)・機会」と、「気候変動によって生じるリスク(物理リスク)・機会」のそれぞれについて、自社やサプライチェーンへの影響を評価するために、下記の2つのシナリオを参照し2つの世界観を記述しております。

 

参照シナリオ

対象世界

気温上昇が1.5℃に抑制された世界

気温上昇が4℃に達してしまう世界

参照文献・

シナリオ

IEA “World Energy Outlook”

NZEシナリオ

IPCC”第6次評価報告書(AR6)”

SSP5-8.5シナリオ

 

特定したリスク・機会と各シナリオから想定される当社の世界観は下図の通りです。

<1.5℃シナリオ>

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<4℃シナリオ>

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<リスク・機会の当社への影響度の評価>

 当社は、1.5℃シナリオと4℃シナリオという二つの将来世界を設定し、それぞれの気候関連リスク・機会を「時間軸(短期:~2029年、中期:2030~2050年、長期:2050年以降)」と「財務影響度(小:営業利益への影響度1億円未満、中:営業利益への影響度1億円以上~5億円未満、大:営業利益への影響度5億円以上)」で評価しました。

 その結果、1.5℃シナリオでは中長期において①炭素価格の本格導入、②サプライチェーン上流での脱炭素化対応による原材料コストの上昇が、当社にとって最大のリスクとなることが判明しました。

一方、4℃シナリオでは、自然災害の甚大化や感染症のパンデミックが発生した場合、サプライチェーンの混乱や設備の損傷を引き起こす可能性があります。これらの事態は、原材料調達の困難、取引量の減少、修繕費用の増加といった影響につながることが懸念されます。

 機会面においては、1.5℃シナリオ下で2030年頃から、顧客の購買基準が『GHG排出量の少なさ』へと移行し、脱プラスチックの潮流も加速すると想定されます。この変化を受け、製品ライフサイクル全体のGHG排出量を削減した低炭素製品や、代替需要が見込まれる紙製包装の提供を強化することは、当社の競争力向上につながる重要な機会となると考えられます。

 これらの分析を踏まえ、当社は「4℃シナリオの回避」と「1.5℃シナリオ下でのリスク最小化・機会最大化」という二段構えの戦略を掲げます。まず、費用対効果を精査したうえで設備の脱炭素化を段階的に進め、将来の炭素関連コストの上昇に備えます。次に、低炭素製品、美粧段ボール事業への投資を重視し、脱炭素ニーズを先取りすることで2050年時点の取引量減少リスクを抑え、新たな需要を創出します。さらに、炭素関連コストや脱炭素対応による原材料価格上昇リスクに備え、サプライヤーとの排出削減の協働などを軸とした持続可能な調達戦略を構築し、コスト競争力と環境価値を同時に高めることを検討してまいります。

 

 

リスク・機会の種類

要因

当社へ想定影響

時間軸

影響度

移行リスク|1.5℃シナリオ

政策・

法規制

炭素価格の導入

炭素価格導入による事業コスト増(排出枠購入費+原材料コスト転嫁)

中期~長期

排出量報告制度の強化

報告資料作成のために要する作業工程の増加による時間的負担の増加

短期

技術

省エネ・再エネ

技術の進歩・普及

脱炭素設備(省エネ設備等)導入による設備投資増+対応が遅延した場合エネルギーコスト増

中期~長期

市場

顧客が低排出企業を選定

製品ライフサイクルにてGHG排出量削減ができない場合、既存顧客との取引量が減少

中期~長期

サプライヤーが脱炭素対応

サプライチェーン上流企業の脱炭素対応により生じた調達価格上昇

中期~長期

評判

金融機関・投資家の変化

サステナビリティ評価悪化により信用格付けが低下し資金調達が難化、資本コスト(利子・リターン)が上昇

短期

物理リスク|4℃シナリオ

急性

リスク

気象災害の増加・激甚化

災害によるサプライチェーン機能障害(原料調達・輸送・顧客納入の遅延、代替輸送手配、生産設備の停止)

長期

自社施設に対する事前耐災投資+対応が遅れた場合、復旧修繕費の発生

長期

干ばつによる水不足の増加

取水量が足りず自社の生産能力の低下により売上が減少

中期~長期

水不足による農作物減産により輸送量が減少

中期~長期

慢性

リスク

平均気温の上昇

サプライチェーン上流企業の空調コスト増加により生じた調達価格上昇

中期~長期

自社拠点への空調設備追加等投資の増加、空調使用エネルギー増加

中期~長期

海面の上昇

海面上昇によるサプライチェーン全体の混乱(原材料調達の難化、輸送ルートの変更)

長期

感染症の流行

感染症流行に伴うサプライチェーン全体の混乱(原材料調達の難化、取引減少)

長期

機会

資源の

効率性

省エネ製造技術の進歩・普及

高効率設備によりエネルギー消費量を抑え、製造コストを削減

中期

エネルギー源

省エネ・再エネ技術の進歩・普及

再エネ設備の積極的な導入による各拠点でのエネルギーコストの削減

中期

製品/

サービス

顧客が低排出企業を選定

低炭素製品の開発・販売による競争力増加

中期~長期

プラスチック代替包装の開発・販売

中期~長期

市場

金融機関・投資家の変化

環境に配慮した経営を行うことで、投資家からの信頼を得て資金調達力が向上

短期~中期

人財市場の関心の変化

環境に配慮した経営を行うことで、人材市場での企業価値を高め優秀な人材の獲得が可能

短期~中期

レジリエンス

気候リスク管理計画の策定・開示要求

気候リスク計画策定とその開示による市場価値の向上

短期~中期

BCPを強化し災害時も操業継続、競合停止時に受注増

長期

※時間軸・・・(短期)~2029年、(中期)2030年~2050年、(長期)2050年以降

※影響度・・・(小)1億円未満、(中)1億円以上~5億円未満、(大)5億円以上

 

③リスク管理

 気候変動に関するリスクと機会は、全社のサステナビリティに関するリスクと機会に統合され、管理されています。詳細については、「(1)サステナビリティに関する考え方 ③リスク管理」をご参照ください。

 

④指標及び目標

 気候変動への主な対応として、エネルギー使用量削減、非化石エネルギーへの転換、CO2排出量の削減を進めています。前述のシナリオ分析において特定した気候変動に関するリスク・機会についての具体的な指標と目標は今後サステナビリティ委員会を中心に検討、設定してまいります。

 なお、経年のScope1,2の実績は以下の通りです。Scope1,2の削減目標は現在検討中であり、Scope3については今後算定を検討してまいります。

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(3)人的資本

<人的資本に関する考え方>

 当社は資源循環型産業の企業として、古紙を原料とした包装資材のビジネスモデルを創業から110年余続けており、長い間培ってきた高い技術と信頼を得て前進し続けております。次の100年にもこの技術と信頼をつなげていくには、人材への取組みは重要と認識しており、多様な人材の確保・維持・育成と働きがいのある職場環境、職場の安全性の確保など実現していくためあらゆる取り組みを促進してまいります。

 

①ガバナンス

 2024年8月に代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を新たに設置し、人的資本を含むサステナビリティ方針や戦略、取り組みの促進、進捗確認をしていきます。

詳細については、「(1)サステナビリティに関する考え方 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

②戦略

<人材育成方針>

 当社は一世紀以上の歴史がある板紙メーカーとして、主に製造のスペシャリストを多数擁しており、それが事業を支える基盤であると考える一方で、板紙・美粧段ボールによるパッケージ事業ともに経営環境は日々変化しており、その変化に対応して事業をリードする自律的で広い視野を持った人材もまた必要であると考え、現場のスペシャリストと融合するリーダー層両輪の獲得・育成を目指しています。

 少子化による働き手の減少から従業員の確保が年々困難になるなかで、地域に根差したメーカーとして地元から多くのスペシャリスト候補を採用し技術を次代に継承するとともに、当社を進化させる知見ある人材は性別、出身地域、職歴等にとらわれず積極的に採用していきます。

 当社では従来から中途採用を積極的に活用しており、管理職の6割以上が中途採用出身者です。

<社内環境整備方針>

1.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進

 最も重要なステークホルダーのひとつである従業員について、育児・介護との両立等ワークライフバランスを支援する仕組みを導入し、高齢者・女性等の多様な社員が活躍できる職場環境を整備することで、来る労働人口減少時代へのレジリエンスを高めてまいります。

 高齢者については2022年から65歳定年制を導入しており、スペシャリストとしての経験を活かし、モチベーションを保って働ける環境を整えていきます。

 女性活躍では女性の育休取得、復職については高い実績があるため、今後は管理職等多様なポジションで活躍できる環境を整えていきます。

2.健康と安全が確保された環境づくり

 従業員の心身の健康・活力が事業活動の原動力であるとの考えのもと、それを妨げる労働災害の撲滅と、健康経営を強力に推し進めてまいります。

 健康経営に関しては、従来から当社では、法令で定めがある特定業務従事者以外の従業員についても健康診断を年2回実施しており、その受診率はほぼ100%です。また、経済産業省及び日本健康会議の「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)」の継続認定を受けています。認定を機に禁煙外来受診補助を制度化するなど、健康の保持増進を図る取組を進めています。

 安全に関しては、毎月、安全衛生に関する会議の開催と職場パトロールを実施し、労働災害の防止とともに快適な職場環境の形成に努めております。

 

③リスク管理

 人的資本に関するリスクと機会は、全社のサステナビリティに関するリスクと機会に統合され、管理されています。詳細については、「(1)サステナビリティに関する考え方 ③リスク管理」をご参照ください。

 

 

 

④指標及び目標

 当社では、上記「②戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次の通りであります。

指標

目標

2024年度実績

女性管理職の割合

5.02030年度

0.0

女性従業員の割合

10.02030年度

9.8

健康経営優良法人の認定

認定を維持

認定

労働災害度数率

1.5人/100万時間2024年度

2.6人/100万時間

死亡・重篤災害数

02024年度

0

 

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年8月25日)現在において当社が判断したものであります。

 また、以下に記載したリスクは主要なものであり、これらに限られるものではありません。

(1)国内需要の減少及び市況価格の下落

 当社の事業分野別売上高は、板紙事業9割弱、美粧段ボール事業1割強の構成で推移しております。いずれの事業も内需型であり、国内景気の影響を大きく受けます。国内景気の後退による需要の減少や市況価格の下落が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社においては多方面への営業活動及び開発力の強化による新規取引先の発掘、販売代理店を介した原紙の海外輸出の推進、また需要に見合った生産を実施することで、需要及び適正な販売価格の維持に努めております。

 

(2)原燃料購入価格の上昇

 当社が購入する原燃料価格に関しては、主原料の古紙は中国・アジア地域と国内需給動向によって、主燃料の産業用ガスは国際市況や為替相場によってそれぞれ価格が変動し、購入価格が上昇した場合には、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、複数の仕入先の確保や備蓄量の安定的な確保を行うことでリスクの低減をはかっております。

 

(3)災害による影響

 台風、豪雨、地震といった自然災害、事故等の不測の事態が発生した場合には、生産能力の低下や製造コストの増加等により、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの対策として当社はリスク管理規程を定め、その具体的対応策として緊急事態対策規程を策定しております。また、実際に自然災害が発生した場合には、直ちに対策本部を立ち上げ、被害を初期のうちに最小限に防止する体制を整備しております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況の概要

 当事業年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善等により緩やかな回復基調で推移しました。一方で、米国の通商政策による国内景気への影響等、先行き不透明な状況が続いております。

 板紙業界におきましては、景気の回復に後押しを受けながらも、実質所得の伸びが物価上昇に追いつかないことから個人消費が力強さに欠け、国内板紙需要は前年をわずかに下回るペースで推移しました。また、原料古紙価格、物流コストの上昇や資材・燃料価格の高止まりといった外部要因に加え、働き手の減少で人材の確保が難しい状況が続いており、当社を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。

 こうした環境のなか、当社は主要製品である段ボール原紙他板紙の安定した生産と適正価格での販売活動に注力するとともに、サステナブルな企業経営を実現するため、人的資本への投資及び環境負荷低減への取組を継続しています。

 この結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当事業年度末の総資産は、前事業年度末と比べ1,229百万円減少して16,593百万円となりました。負債は、前事業年度末と比べ1,937百万円減少して3,649百万円となりました。純資産は、前事業年度末に比べ707百万円増加して12,944百万円となりました。

 

b.経営成績

 当事業年度の経営成績は、売上高は11,522百万円(前事業年度比0.1%増)、営業利益は1,032百万円(前事業年度比38.6%減)、経常利益は1,147百万円(前事業年度比35.5%減)、当期純利益は798百万円(前事業年度比31.0%減)となりました。

 

各セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

(板紙事業)

当事業関連では、販売数量が前期比0.6%増となりましたが、銘柄構成の変動により売上高は10,188百万円(前事業年度比0.5%減)と減収になりました。セグメント利益は1,077百万円(前事業年度比36.1%減)となりました。

(美粧段ボール事業)

当事業関連では、主力の青果物向け製品は伸び悩んだものの、デジタル印刷製品をはじめとした新規受注でカバーし、売上高は1,334百万円(前事業年度比5.0%増)と増収となりました。損益については配送費や労務費の上昇により、セグメント損失44百万円(前事業年度はセグメント損失3百万円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前事業年度末に比べ2,129百万円減少し、4,466百万円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は、以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は、1,569百万円(前事業年度は1,924百万円の収入)となりました。

 収入の主な内訳は、税引前当期純利益1,133百万円であり、支出の主な内訳は、仕入債務の減少1,051百万円、退職給付引当金の減少499百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、前事業年度比209百万円(113.0%)増の395百万円となりました。

 収入の主な内訳は、利息及び配当金の受取額104百万円であり、支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出446百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、前事業年度比57百万円(53.6%)増の164百万円となりました。

 これは主に、配当金の支払額138百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2024年6月1日

 至 2025年5月31日)

前年同期比(%)

板紙事業(千円)

10,510,424

100.0

美粧段ボール事業(千円)

1,334,070

105.0

合計(千円)

11,844,495

100.5

(注)板紙事業の生産実績は板紙の生産数量(自家消費分を含む)に平均販売価格を乗じた金額を、また美粧

  段ボール事業の生産実績は販売金額を記載しております。

 

b.受注実績

 板紙事業については、顧客が特定しているため需要を予測して見込生産を、また美粧段ボール事業は、受注生産を行っておりますが、いずれの製品も受注から生産・納入に至るまでの期間が短く期末における受注残高は少ないので、次に記載する販売実績を受注実績とみなしても大差はありません。

 

c.販売実績

当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2024年6月1日

 至 2025年5月31日)

前年同期比(%)

板紙事業(千円)

10,188,696

99.5

美粧段ボール事業(千円)

1,334,070

105.0

合計(千円)

11,522,767

100.1

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであり、不確実性を内在、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果とは大きく異なる可能性もありますので、ご留意ください。

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表作成に当たって、当事業年度末における資産・負債の報告数値、当事業年度における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定を用いております。これらの見積り及び仮定については、過去における実績や状況に応じ合理的と考えられる要因等に基づいて行っておりますが、不確実性があるため、実際の結果とは異なる可能性があります。

 財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

 総資産は、16,593百万円で前期末の17,822百万円に比べ、1,229百万円減少いたしました。内訳としては流動資産が1,668百万円の減少、固定資産が439百万円の増加であります。

 流動資産減少の主な要因は、取引先への支払条件見直しと法人税等の支払により現金及び現金同等物が2,129百万円減少したことであります。また、固定資産増加の主な要因は、設備投資により有形固定資産が350百万円増加したことであります。

 負債は、3,649百万円で前期末の5,586百万円に比べ、1,937百万円減少いたしました。内訳としては流動負債が1,565百万円の減少、固定負債が371百万円の減少であります。

 流動負債減少の主な要因は、取引先への支払条件見直しにより電子記録債務が780百万円減少、支払手形が151百万円の減少、及び法人税等の納税により未払法人税等が402百万円減少したことであります。また、固定負債減少の主な要因は、退職給付信託の設定により退職給付引当金が499百万円減少したことであります。

 純資産は、12,944百万円で前期末の12,236百万円に比べ、707百万円増加いたしました。主な要因は繰越利益剰余金659百万円の増加であります。

 

b.経営成績の分析

(売上高)

 当社の主要な販売品目である板紙につきまして、景気の回復に後押しを受けながらも、実質所得の伸びが物価上昇に追いつかないことから個人消費が力強さに欠け、国内板紙需要は前年をわずかに下回るペースで推移しました。

 このような状況の下、当事業年度の板紙製品(中芯原紙・紙管原紙)の販売状況につきましては、販売数量が前事業年度比で100.6%と増加しました。これは年度計画の100.5%の達成率でした。

 板紙販売数量は増加したものの、販売製品の銘柄構成により板紙事業は0.5%の減収となりました。

 他方、美粧段ボール製品の販売状況につきましては、青果物の贈答用向け美粧ケースが、前事業年度比95.2%とやや苦戦しましたが、販売先の多様化、特に段ボールシートへの直接印刷が可能な6色インクジェットプリンター・Glory1606を用いた製品の拡販他の新規受注で補い、売上高は前事業年度比で5.0%の増加となりました。

 以上より、当事業年度の売上高は11,522百万円となり、前事業年度に比べ10百万円(0.1%増)の増収となりました。

 

(営業利益)

 当社の営業利益については、板紙製品の売上高、板紙製造の原料である古紙の価格、および主な燃料であるLNGの価格が大きな影響を与えます。

 まず、原料古紙価格については、当社の主要な材料であることからその調達価格は利益に大きな影響があります。当事業年度におきましては、国内の古紙発生量の減少や円安の影響による海外への流出の影響が大きく、古紙価格は前事業年度比8.0%上昇し、減益の要因となりました。

 次に、LNG価格についても、前事業年度からは下がったものの、高い水準で推移しました。LNG使用量は前事業年度比で2.5%増、調達価格(単価)が前事業年度比2.9%増のため、LNG購入総額では5.6%の増加となり、当事業年度の減益要因のひとつとなりました。

 以上より、当事業年度の営業利益は1,032百万円となり、前事業年度に比べ649百万円(38.6%減)の減益となりました。

 当社の目標とする経営指標のひとつである営業利益5億円については達成することができました。

 

(経常利益)

 当事業年度の経常利益は1,147百万円となり、前事業年度に比べ631百万円(35.5%減)の減益となりました。

 なお、当社の営業外収益の約87%は保有株式の受取配当金であります。

 

(当期純利益)

 当事業年度の当期純利益は798百万円となり、前事業年度に比べ358百万円(31.0%減)の減益となりました。

 ROEは6.3%となり、当社の目標とする経営指標のひとつであるROE6~9%の枠内には収まっているものの、さらに向上させ企業価値を高めてまいりいます。

 また、1株当たり当期純利益は前事業年度から77円88銭減少し、172円31銭となりました。

 

c.キャッシュ・フローの状況

 当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

 当社の資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料・燃料の購入のほか、製造に係る労務費・経費、販売費及び一般管理費、生産設備の取得及び既存設備の改善等に係る投資であります。これらの資金需要について、当社はすべて自己資金でまかなっておりますが、現状キャッシュ・フローについて大きな懸念はないものと認識しております。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 古紙を原料として製品を製造する当社は、環境との調和をテーマに環境負荷軽減を意識した生産技術の開発をはじめとして、常に顧客のニーズに応えるための品質改善、より付加価値の高い製品の産出、印刷技術の向上、生産の効率化など生産現場に密着した活動を行っております。

 当事業年度における研究開発費の総額は28,369千円となっております。なお、当社における研究開発活動は各セグメントに共通するものであり、各セグメントに関連付けた記載を行っておりません。