文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、従来から一貫して経営理念を「ユニークで存在感のある企業集団として、社会と環境に貢献する」と定め、「技術と信頼で顧客と共に未来をひらく オンリーワンビジネス企業」を目指すべき企業像としております。株主を中心とし、従業員、取引先、地域社会、環境面での様々なステークホルダーからの信頼を得ると共に、持続可能な社会実現への貢献を通じて当社グループの企業価値の向上を追求することをもって経営方針としております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社が経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標としては、収益稼得水準の観点から営業利益を最も重視しており、これに持分法による投資損益等を反映した経常利益や、株主に対する還元の基準となる親会社株主に帰属する当期純利益についても重要視しております。加えて、中長期目標達成、及びPBRの改善に向けては、今まで以上に資本コスト・資本収益性を意識した経営を実践するため、事業別ROA・ROI(投資利益率)を管理項目として設定しております。具体的には、事業本部総資産利益率(=税引後貢献利益÷事業本部総資産)で事業効率を測るとともに、ROI(投資利益率)が総資産利益率(目標ROA)を上回っていることをもって投資判断の基準としております。
(3)中長期的な経営戦略
当社グループは、持続的な成長のために必要な将来の事業成績として営業利益100億円、経常利益130億円、ROE8.0%を長期目標に設定しております。この目標達成に向けては、既存製紙業への依拠から脱し、成長が見込まれる環境関連事業を主軸とした事業ポートフォリオへ変革していくことが必要不可欠であると認識しております。具体的には、デジタル化に伴って縮小傾向にある既存製紙分野を補うため環境配慮型製品等の新製品を投入、製品構成の入れ替えを行うと共に、製紙以外の事業領域である環境関連へ今まで以上に経営資源を投入し、新たなコア事業へ成長させる所存であります。
こうした長期ビジョンへの中間点として、2023年4月~2026年3月を対象期間とする第6次中期経営計画を策定いたしました。当中期経営計画は、前中期経営計画期間で始動させた合成繊維(アラミドペーパー)等の製紙の成長分野については取込、取込が始まったリサイクルビジネスについては更なる拡大を目指す期間と位置付けており、3ヶ年の累積で製紙の成長分野に35億円、リサイクルビジネス拡大に48億円の成長投資を計画しております。こうした経営資源の投入に加え、かねてから取り組んできた販売価格改定や工場における生産合理化等基盤強化により、厳しい経営環境を迎えた2023年3月期から大きな利益改善を目指してまいります。
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営業利益 |
経常利益 |
ROE |
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2024年3月期実績 |
22億円 |
61億円 |
6.2% |
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第6次中期経営計画目標値 |
50億円 |
80億円 |
7.0% |
(4)経営環境
①企業構造
当社は、2010年、特種製紙株式会社と東海パルプ株式会社を吸収合併することで設立され、製紙業においては「産業素材事業」「特殊素材事業」「生活商品事業」、製紙業以外においては成長が見込まれる「環境関連事業」によって構成されております。また、横の連携も円滑に行うことを目的とした“事業本部制”を採用することにより、各セグメントが持つ技術や生産力をより相乗的に発揮できるように運営を行っております。
「産業素材事業」は、段ボール原紙やクラフト紙等の産業用紙事業において日本製紙株式会社と合弁事業を行っており、当事業の売上については、その大半が持分法適用会社である日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社向けのものです。したがって、当事業の業績は主に持分法利益の取り込みにより経常利益に反映されることになります。
「特殊素材事業」は、ファンシーペーパー等の特殊印刷用紙及び特殊機能紙など高付加価値製品の製造・販売を行っており、事業の主体は特種東海製紙本体となります。
「生活商品事業」は、子会社2社により構成されており、業務用ペーパータオルや食材紙、トイレットペーパーといった衛生用紙、ラミネート紙及びコート紙の製造・販売を行っております。
「環境関連事業」は、当社保有の南アルプス社有林の有効活用を目的とした自然環境活用事業、当社サプライチェーンを起点としたリサイクルビジネスの拡大を目的とした資源再活用事業によって構成され、当社グループ成長の要として更なる拡大を進めてまいりたい事業分野であります。
以上のように、規模の経済が働く事業分野においては他企業との合弁事業にて、独自の強みを活かすことのできる「多品種・小ロット・高付加価値」事業である特殊素材事業については、特種東海製紙本体により事業を推進、他のセグメントについては基本的に子会社による事業展開を行う体制を採っており、この事業本部制は適切に機能していると判断しております。
②市場環境・顧客動向
a.産業素材事業
当事業においては、段ボール等包装材に用いられる段ボール原紙、クラフト紙の製造を行っております。産業用包装素材の需要については国内の物価高による買い控え等の影響はあるものの堅調な通販需要等により今後も底堅いものと認識しております。
b.特殊素材事業
当事業においては、出版向けやハイエンドパッケージ向け特殊印刷用紙、製品ごとに異なるユーザー・用途が存在する特殊機能紙等、小ロット多品種・高付加価値を特徴とする製品の製造・販売を行っております。従来からのデジタル化の影響により、出版や商業印刷物向け等情報伝達媒体として使用される紙については市場が縮小傾向にありますが、脱・減プラスチックの流れによりパッケージ用途の需要は底堅い他、特殊機能紙における海外向け一部製品についても引き続き堅調な需要を見込んでおります。
c.生活商品事業
当事業においては、ペーパータオルやトイレットペーパー等の衛生用紙、及びラミネート紙等加工品の製造・販売を行っております。衛生用紙につきましては生活必需品であることから堅調な需要を見込んでおりますが、紙加工品は一般消費の減退により減少傾向にあります。
d.環境関連事業
当事業においては、南アルプス社有林の自然価値を活かす取り組みの一環としてウイスキー製造を行うと共に、廃プラスチックを主たる材料とする固形燃料(RPF)の製造販売や産業廃棄物の中間処理、廃家電の再資源化(都市鉱山事業)、廃プラスチックの再生原料化等、幅広いリサイクルビジネスを展開しております。リサイクルビジネスにつきましては、中長期的には国内外の社会課題解決に向けた動きとともに、環境負荷低減を目指した資源リサイクルの活動は重要性を増し、関連する事業のニーズは今まで以上に伸びるものと認識しております。
③競合他社の状況
当社グループは事業セグメントごとに異なった競合他社が多数存在します。
製紙3事業においては、総需要に対して生産能力が超過気味であり、業界全体での競争は厳しさを増しているということが共通認識となっております。その中で、比較優位にある分野を強化しつつ如何に差別化できる業務を行っていくかが極めて重要であると認識しております。
環境関連事業のうち資源再活用事業においては化石燃料価格の高騰及び脱炭素化の社会的背景に伴い廃棄物燃料のニーズが高まりつつあることから、固形燃料の主材料である廃プラスチック等の集荷面で競合が強まりつつあります。こうした中、物流を考慮した同業との連携を図ると共に、M&A等による集荷エリア拡大に取り組んでいくことが重要であると認識しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
a.現状分析
当社グループは、2018年3月期~2024年3月期の直近7年間において業績を堅調に推移させているものの、PBRは定常的に1.0倍を下回る状況が続いており、これは、株主・投資家の皆様が把握する実質株主資本コストがCAPMによる算定よりも高い値であり、当社の資本収益性がその水準に達していないことが要因であると認識しております。したがって、PBR改善にあたっては収益性及び資産効率の改善が課題であると当社の現状を分析いたしました。
b.PBR改善の対応方針
第6次中期経営計画に則った事業戦略を実行することで「利益率の向上」、「資産効率の改善」、「資本構成の見直し」を図るとともに、株主・投資家の皆様とのコミュニケーションをこれまで以上に充実させてまいります。成長分野への事業ポートフォリオ変更を軸とする当社の中長期戦略への理解・評価を広く得ることで、PBR改善に取り組んでまいります。
c.主な取り組み
②製紙以外の新たな事業領域の拡大
当社グループは、環境関連事業を製紙3事業に次ぐ新たなコア事業と位置づけ、将来の収益基盤を強化するべく、当事業領域の拡大を対処すべき課題として認識しております。
なかでも、資源再活用ビジネスは高度循環型社会を目指す機運の高まり等を背景に今後も持続的な成長が期待される分野であり、2020年1月にグループ入りした株式会社駿河サービス工業を端緒に、第4次中期経営計画以降当該分野へ経営資源を傾注してまいりました。マテリアルリサイクルへの展開も視野に2023年4月資本参加したトーエイホールディングス株式会社に続き、2024年4月には東京都の西部を基盤とする産業廃棄物処理業者である株式会社貴藤の持株会社、株式会社貴藤ホールディングスをグループ会社といたしました。当社グループは、引き続き環境関連事業へ積極的な投資を行い、循環型社会の実現に貢献するとともに企業価値の向上に努めてまいります。
③製品ポートフォリオの変革
デジタル化の進展により情報伝達媒体としての紙需要は減退する一方、循環型社会への移行に伴って脱・減プラスチックへの需要は増進しつつある等、紙製品に対する需要構造は大幅に変化しており、当社グループはこれを対処すべき課題として認識しております。
当社グループはこの課題に対応するため、既存事業の体質強化による収益基盤の安定化を図るとともに、プラスチック容器に代替するウエットモウルドや、幅広い機能性を活用したTT-PACKAGE等環境配慮型製品の開発に注力してまいります。
④原燃料価格の高騰
急速に変化する地政学的リスクと昨今の為替相場の動向から、日本企業の原燃料調達に係る不確実性が高まっております。その結果、パルプをはじめとする各種原燃料価格の高騰が進んでおり、当社グループの製紙業全般にとって利益圧迫要因及びリスクとなっていることから、当社グループはこれを対処すべき課題として認識しております。
当社グループはこの課題に対応するため、燃料調達構造の見直しや分散化等業務プロセスを全社的に見直すとともに、徹底した経費削減及び原価低減努力、製品価格の適正化等既存事業の体質強化を実施し、不確定性が高い事業環境において収益の改善・安定化を図ってまいります。
⑤持続可能な社会に向けた対応
当社グループは、カーボンニュートラルをはじめとした持続可能な社会に向けた取り組み、及びそれに関わる情報開示の充実を対処すべき課題として認識しております。低炭素社会実現に向けては、使用エネルギーの効率化や化石燃料からの転換(島田工場での新バイオマスボイラー設置計画:2027年1月完工予定)といった生産活動における従来からの取り組みに加え、2024年3月に認証を受けた森林由来のJ‐クレジットの活用についても検討してまいります。また、生物多様性保全の面では、2023年10月「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域(自然共生サイト)」に当社グループ社有林が認定されました。今後も地球環境との共生を図っていくとともに、こうした取り組みを通じて当社グループへの理解を深めていただけるよう、統合報告書を主な媒体として更なる情報開示の充実に努めてまいります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループは、持続可能な社会実現へ貢献すると共に企業価値を永続的に向上させていくため、「自然との共生」「社会・文化発展への貢献」「ステークホルダーとの信頼関係」、この3軸で構成される特種東海製紙グループサステナビリティ基本方針を制定しております。当方針の下、国内外の主要なフレームワークを参考とした社会課題の調査(外部環境の整理)、及び自社における取組内容の調査(内部環境の整理)を実施し、重点的に取り組むべきマテリアリティを抽出いたしました。以下に示す7つのマテリアリティの改善・解決に向けた企業活動を実施していくことで、社会・環境との共生を果たし、当社グループが成長し続けられるよう努めてまいります。
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マテリアリティ |
KPI |
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定性目標 |
定量目標 |
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地球環境との共生 |
気候変動問題への対応 |
・生産活動に伴うCO₂排出量の削減 |
・生産活動に伴う化石エネルギー起源CO₂を2030年までに2013年度比38%削減 |
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社有林の活用と 生物多様性への貢献 |
・30by30に基づく 生物多様性保全活動の推進 ・森林資源維持活用 |
・希少な高山植物保護を目的とした防鹿柵エリア及び群生地の監視・巡視による植生保全状態の確認(監視・巡視:2回/年) ・井川社有林におけるCO₂吸収量(t‐CO₂)の維持 |
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持続可能な サプライチェーンの維持 |
・「木材調達に関する基本指針」に ・ホワイト物流の推進 ・人権DDと社内教育の実施 |
・木材原料(製紙用チップ・バージンパルプ)におけるトレーサビリティ100%の維持 ・静岡ロジスティクスドライバーの残業時間 960時間/年未満 ・島田工場構内における2時間以上待機トラック数0台 |
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資源の有効活用と 環境負荷の低減 |
・古紙利用率の向上 ・廃棄物最終処分率の低減 |
・古紙利用率65%以上を維持(2025年度) ・生産活動に伴って発生する廃棄物の最終処分率1.6%以下を維持(2025年度) |
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安定した製品提供と 新製品の開発 |
・顧客満足度の向上 ・環境配慮型製品の拡充 |
・環境配慮型製品のラインナップ150製品以上 |
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地域・社会との共生 |
地域・社会への貢献 |
・地域社会との対話の推進 |
・貢献活動・コミュニケーション数100件以上/年 |
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安心安全に働ける 職場環境づくり |
・女性活躍の推進 ・休業災害の撲滅 ・エンゲージメントの強化 |
①管理職及び管理職候補者層における女性比率 10% ②育児休業取得後の女性社員、および配偶者出産後の男性社員の仕事と家庭との両立支援制度利用率 20% ・休業災害度数率1.3以下 |
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(2)サステナビリティに関する取組
①ガバナンス
サステナビリティに係る各課題に対応するため、非財務情報等の取りまとめ及びグループを先導する組織として2022年7月にSDGs推進室を設置いたしました。SDGs推進室では各事業本部との対話によってリスクや機会、対応策等の妥当性や重要性の検証を行うと共に、担当役員を通じて検討結果に基づく方針や重要事項について取締役会へ付議・報告を行うこととしております。
当社グループのガバナンス体制及びサステナビリティに係る役割は以下のとおりであります。なお、コーポレート・ガバナンスの体制図につきましては、「
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取締役会 |
環境全般課題にかかる評価、審議、監督および承認 気候変動リスクの対応策、機会追求施策についての承認 |
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SDGs担当役員 |
環境全般課題にかかる業務遂行における統括責任者 気候関連での各種の取締役会への付議および報告 TCFD開示に関する重要な対外的説明 |
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SDGs推進室 |
環境全般課題にかかる戦略、管理運用方針の立案および改変提案 気候変動リスク、機会項目および対応策についてのヒアリング TCFD提言に沿った開示情報のとりまとめ |
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リスク管理委員会 |
気候変動リスクを含めたリスクアセスメントのレビュー、指導 |
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各事業本部 |
気候変動課題も含めたリスクアセスメントの実行 気候変動課題にかかる収益機会の認識と改変提案 対応策(投資等)の付議と実行 |
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経営企画本部 |
リスク管理委員会の総括管理 SDGs推進室との気候変動課題にかかる戦略の協議、情報の共有 |
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財務・IR本部 |
リスク、機会の影響度の検討 気候変動影響を落とし込んだ財務情報の検討 |
②戦略
ⅰ.気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応
当社グループは2022年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言へ賛同、同年6月にはTCFDフレームワークに準じた情報開示を行いました。シナリオ分析にあたっては、IPCCやIEAのレポート等に示されている情報を参照し、以下に示す2つのシナリオを設定いたしました。
●4℃シナリオ=現状のまま何もしない状況で推移した場合の2030~2050年ごろの状況
●2℃シナリオ=2050年カーボンニュートラルに向けて法規制等も強化された場合の2030年ごろの状況
設定したシナリオに基づき、社会・経済情勢や自然的状況の変化を予測するとともに、当社グループの主要事業におけるリスク・機会を可能な限り洗い出し、このうち事業への影響が大きいと想定される事項を抽出・整理いたしました。また、重要なリスクと機会については、その一部について財務的インパクトの算定に向けた検討に着手し、社内での議論を開始いたしました。
株主・投資家等ステークホルダーとのエンゲージメント強化のため、開示情報の更なる充実に努めてまいります。
ⅱ.化石エネルギー起源CO₂排出量の削減
当社グループでは、生産活動の効率化や化石燃料からの転換といったCO2排出量の削減対策に取り組んできました。この結果、主要な生産4社におけるCO2排出量は、直近3ヵ年は横ばい傾向にあるものの2022年度のCO2排出量は2013年度比で30.4%の削減となりました。

以上のように、現時点においても低炭素操業を実現できているものと認識しておりますが、これを更に推進するため、エネルギー起源CO₂排出量を2030年度までに2013年度比で38%削減、2050年度までにCO₂排出量ネットゼロを目指すロードマップを策定いたしました。2030年度目標の設定にあたっては、日本国が掲げる2013年度比▲46%のうちの産業部門に求める目標値▲38%に準拠すると共に、各事業本部より施策を抽出し2030年度のCO₂の削減予測量を算定いたしました。かねてより推進してまいりました省エネルギー化を継続すると共に、再生可能エネルギーの利用を拡大することで低炭素社会実現への貢献を目指してまいります。
ⅲ.人材の育成及び社内環境の整備
a.人事基本方針及び人材育成方針
当社グループは、2008年4月に人事基本方針として「人を最も重要な財産と位置づけ、従業員一人ひとりと信頼で結ばれ、全従業員が高いモチベーションを維持しつづける環境を整備すると共に、会社が永続的に成長できる組織風土を醸成する」を掲揚いたしました。これに基づく人財育成方針、社内環境整備方針を定め、従業員にとって「明るく生き生き働ける会社」、「誇りを持って働ける会社」、「夢を持って働ける会社」、「安全で安心して働ける会社」を目指してまいります。
また、人財育成方針につきましては、2017年に第4次中期経営計画 “NEXT 10”の策定と併せて制定し、10年後を見据えた「成長戦略」と「基盤事業の強化と変革」を実現するための人財育成に取り組んでおります。
人財育成方針
1.能動的な人財
・指示待ちではなく、自ら考え判断し、責任を持って行動する人財
・常に問題意識を持ち、自分で新たな課題を発掘し、 自分で解決する人財
・周囲に対して自ら積極的に提案や働きかけができる人財
2.スペシャリスト
・特定の専門領域で、自ら知見を高め、イノベーションを起こす人財
・他社(人)には真似できない、当社(自分)固有の技術や技能を探求し続ける人財
・当社の財産である技術や技能を、次世代に伝承する人財
3.海外に通用する人財
・将来を見据えて、海外でのビジネスや事業構築にチャレンジする人財
・外国語力や国際的教養の向上に努め、外国人とのコミュニケーション力を有する人財
・当社の技術・技能を海外ニーズに適応させ、当社価値を国際的に広め伝える人財
4.多様な人財の活躍推進
・多様な価値観や育児介護等の制約条件のもと、能力を最大限に発揮し職務を全うする人財
・ワークライフバランスの実現に向けて、職務の工夫や改善により労働生産性を向上させる人
財
・仲間一人ひとりの違いを受け止め、相互協力できるチーム形成に貢献できる人財
b.人財育成方針実現に向けた具体的な取組
(専門人財の採用・育成)
新たな事業領域への挑戦や成長分野の強化のため、キャリア採用比率を高めるとともに、キャリアコースに高度な専門性を認定するエキスパート職を設け、管理職と同等の処遇とすることでスペシャリストの育成を図っています。
(主体的なキャリア形成)
キャリアプラン制度により、社員が主体的・能動的に目指すキャリアや働き方について考え、上司との面談を通じて中長期的なキャリアプランを策定し、資格制度上のキャリアコース選択や教育研修、ジョブローテーションや配置等に反映させるしくみとしています。
また、公募による新規事業への配置や、自ら手を挙げて国内外の大学・大学院またはこれに準ずる教育研究機関に留学派遣する制度、公的資格取得奨励制度などを整備し、能動的な人財を支援・育成しています。
教育研修においては、コロナ禍で控えていた対面型研修を増やすとともに、次世代経営人財の選抜研修、DX人財の育成を重点課題として推進したいと考えています。
(ダイバーシティの推進)
当社グループでは、ダイバーシティ推進の中核として女性活躍推進を位置づけ、女性活躍推進法に基づく行動計画である「管理職および候補者層における女性の比率の向上」、「職域の拡大」、「仕事と家庭の両立支援策の充実と利用促進」の実現にむけて、アンコンシャスバイアスの払拭やキャリア意識の醸成といった意識改革、工場職場への女性配置に関する職場ヒアリング、両立支援制度の情報発信など、様々な取り組みを行っています。
c.社内環境整備方針
社内環境整備方針として「『明るく生き生き働ける会社』『安全で安心して働ける会社』を目指し、安全第一を最優先として位置付け、労働災害の撲滅と心身の健康維持増進を達成するため、一人ひとりが快適で働きやすい職場づくりを進める」を定め、安全衛生、ワークライフバランス、エンゲージメントの向上の取り組みを推進しております。
d. 社内環境整備方針実現に向けた具体的な取組
(安全衛生の取組)
「安全衛生年次方針」を定め、この方針を元に各事業所において具体的な取組みを実施しております。「安全」については、「危険の特定と低減対策の実施」及び「ルールの順守と危険感受性の向上」、「衛生」については、「心身の健康状態の把握と維持改善の習慣作り」を掲げており、リスクアセスメント活動や安全体感機等を用いた安全教育、生活習慣病予防対策の啓発等に取り組んでおります。
(健康経営の推進)
「従業員一人ひとりが心身ともに健康で安心して働ける会社を目指し、積極的に健康経営に取り組みます」と宣言し、各事業所の安全衛生部門が人事教育部門や健康保険組合と連携して、「健康維持増進」、「疾病予防」、「メンタルヘルス対策」、「働き方改革」の各種施策を実施しております。
(従業員エンゲージメントの向上)
自律的なキャリア形成支援、ダイバーシティの取組みに加えて、時間や場所にとらわれない働き方の実現や総労働時間の削減により働きがいの向上を目指しています。
具体的には、長距離通勤や赴任をできる限りなくし、居住地から最寄りの拠点を本拠地として、必要に応じて在宅勤務や他拠点を併用するハイブリッド型勤務への転換を図っています。
また、フレックスタイム制度の見直しや育児・介護と仕事の両立支援策の充実などの施策により、業務の生産性向上を図り、ワークライフバランスを推進します。
昨年度よりエンゲージメントサーベイを導入し、全社員のエンゲージメント状況を定量的、定期的に把握して課題の抽出や改善施策の検討に活用することで、エンゲージメントレベルの向上を目指します。
従前に比べて増加傾向にある離職率の低減にも繋げたいと考えております。
③リスク管理
企業を取り巻く環境が複雑かつ多様化する中、当社グループでは、リスクマネジメントを経営戦略や事業目的を遂行していく上で不可欠なものと位置付け、リスク管理委員会を中心として全事業所・従業員と共に取り組んでまいりました。
当社グループでは、特種東海製紙グループリスク管理規程に基づき、2018年に「リスク管理マニュアル」を制定し、所管部門ごとのリスク洗い出しと対応策の設定、これのモニタリングを実施しております。また、これらリスクアセスメントの状況はリスク管理委員会での定期的なレビューの結果を踏まえ、毎年見直しを行いながら進めております。
また、気候変動を主としたサステナビリティに係る新たなリスクが可視化されたことを受け、モニタリングや新たなリスクの把握を行っていくため、前述したガバナンス体制と併せリスク管理体制の見直しを行いました。具体的には、所管部門およびグループ会社自らが他の事業リスクとともに気候変動リスクを評価し、重要度の高いリスクについては対応策を検討・実行することにより、リスクの低減に努めてまいります。なお、気候変動等にかかるリスク評価の妥当性や対応策の有効性についての検討は、持続可能な社会実現に向けた当社グループの経営戦略にも直結することから、SDGs推進室において一元的に情報管理をしてまいります。
④指標と目標
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項目 |
指標 |
目標値 |
実績 |
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気候変動問題への対応 |
生産活動に伴うCO₂排出量の削減(SCOPE1,2) |
化石エネルギー起源CO₂を2013年度比38%削減(2030年度) |
30.4%削減 |
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女性活躍の推進 |
女性のキャリア形成の支援 |
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(注) 1.当該指標と目標の対象範囲は提出会社単体であります。
2.女性活躍の推進にあたっては、上記「女性キャリア形成の支援」の他に「女性の職域拡大」「柔軟働き方に資する制度の利用率向上」を指標として掲げ各種取り組みを進めております。
3.女性活躍の推進の対象は提出会社原籍者とし、他社への出向者を含み、他社からの出向者を除きます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
また、リスク管理の体制については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
(1)需要及び市況の変動
当社グループは、事業セグメントごとに異なったリスクがあるものと認識しております。
①産業素材事業
段ボール原紙及びクラフト紙等を扱う産業素材事業においては、経済環境の悪化に伴って物流活動が急激に停滞した場合、また、悪天候により農産物の収穫量・流通量が著しく低下した場合、産業用包装材の需要が減少し、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、さらなる低コスト・高能率の生産体制確立に努めてまいります。
②特殊素材事業
特殊印刷用紙及び特殊機能紙等を扱う特殊素材事業においては、デジタル化の進展やそれに伴う出版部数の減少等の影響により情報伝達媒体としての紙需要は縮小傾向にあります。また、製品ごとに異なるユーザー・用途が存在する製品群においては、社会潮流の変化により用途そのものが消滅することで製品への需要も急減し、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、生産体制の集約・効率化を図っていくとともに、引き続き潜在的ニーズを追求し、製品構成の入れ替えに努めてまいります。
③生活商品事業
ペーパータオルやトイレットペーパー等を扱う生活商品事業においては、供給過多や価格競争等市況が変動しやすく、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、製品のさらなる品質向上を推進すると共に、ネットワークの強化に努めてまいります。
④環境関連事業
環境関連事業に含まれる資源再活用事業につきましては、脱化石燃料への社会的背景から今後も旺盛な需要を見込んでおりますが、いっぽうで廃棄物燃料へのニーズが急速に高まることで廃棄物集荷における競争が激化した場合、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、物流を考慮した同業との連携を図ると共に、M&A等による集荷エリア拡大に取り組んでまいります。
(2)原燃料価格の変動
製紙3事業においては多量の原燃料を使用するため、その事業の主たる原料価格に変動があった場合、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。また、原燃料の輸入取引について為替変動リスクを負っており、主として米ドルに対して円安が生じた場合、業績に負の影響を与える可能性があります。
産業素材事業において主たる原料である段古紙の価格は、中国およびASEAN諸国をはじめとした海外情勢の影響を受けやすくなっております。したがって、海外情勢に著しい変化があった場合、調達価格が高騰し、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。
生活商品事業において使用する上質の古紙の価格は、ペーパーレス化の進展に伴い、年々その発生量が減少し、古紙需給の影響を受けやすい状況となっております。したがって、更なるペーパーレス化の進展により、上質の古紙の発生量が減少した場合、調達価格が高騰し、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。
古紙の調達価格上昇リスクについては、運送費のより安価な近場からの安定調達に注力するとともに、長年の取引関係を勘案した安定調達先の確保に努め、さらに段古紙については、日本製紙株式会社との共同調達の実施などにより対応しております。
特殊素材事業において多量に使用するパルプについては、その多くを諸外国から調達していることから、主として米ドルに対する為替変動リスクを負っております。また、パルプ生産国における経済活動の変容や世界的な需要の高まり等、海外市況の影響により調達価格が高騰することで、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、調達先を国内外で多様化するとともに、各取引先との良好な関係づくりに注力しております。
(3)取引先の信用リスク
当社グループの取引先の経営状況が、市場の変動や業界再編成等により財務上の問題に直面した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性については、現時点では確認しておりませんが、各事業本部が密に連携し、一層の管理体制強化を図ってまいります。
(4)資金調達
資金調達については、現状の経済情勢下においては重大なリスクはないものと認識しておりますが、金融市場の混乱や当社に対する信用が著しく損なわれる事象が発生した場合、資金調達が困難になる可能性があると考えております。当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりませんが、金融機関との良好な取引関係の構築及び資金管理体制の強化に努めてまいります。
(5)法的規制
製造販売業務を主体とする当社グループにつきましては、環境規制に加えて、労働安全衛生法、製造物責任法、知的財産権に関する規制等の様々な法規制の適用を受けております。このため、これらの規制の改定等に対応することや、これらの規制に関連した訴訟等を受けることにより、事業活動の制限、高額な費用負担や環境対策設備の設置等コストの増加につながることがあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応について、当社グループでは常設の機関としてコンプライアンス委員会を設置し、常に法令遵守を念頭に置いた経営管理に努めるとともに環境関連の法改正及び環境保全に係る社会的要請の動向を引き続き注視してまいります。
(6)災害や感染症及び事故による影響
当社グループは、製造ラインの突発的な中断による潜在的なマイナス影響を最小限にするため、定期的な予防保全を行っております。また、災害事故等不測の事態発生に備え、影響を最小限にするための教育・訓練等を実施しており、特に地震対策については、当社内に緊急時の対応組織を設け、臨機応変に対応することにしております。しかし、これらの影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。また、当社グループの工場及び施設の多くは静岡県にあり、大規模な地震やその他の操業を中断する事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、従業員が重大な感染症に罹患した場合、従業員及びその家族への感染拡大を防ぐため、工場の操業を停止する可能性があり、停止の期間やその範囲は想定しておりません。先般の新型コロナウイルスの世界的な拡大を受け、当社グループでは、リモートワークの導入をはじめとした社内施策を講じ感染防止に努めております。
(7)環境の激変に伴う所有資産価値の変動
①投資有価証券の減損に係るリスク
当社グループは、時価のある有価証券を保有しておりますが、時価が著しく下落した場合には、取得原価と時価との差額を当該期の損失とすることとなり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②固定資産の減損に係るリスク
当社グループは、製紙業に関係する生産設備等の多くの有形固定資産を有しております。「固定資産の減損に係る会計基準」の適用に伴い、時価の下落や当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの状況によっては減損処理が必要な場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③のれんの減損に係るリスク
当社グループは、第13期連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)に株式会社駿河サービス工業、第17期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)にトーエイホールディングス株式会社を連結子会社化したことに伴い、のれんを計上しております。当該のれんにつきましては、事業価値及びシナジー効果が発現された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、景気変動等の影響により収益性が低下した場合には、減損損失計上により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループの事業環境は、ウクライナ情勢等の地政学リスクや、インフレに伴う金融引き締め等の影響により世界経済が緩やかに減速する中、原燃料価格の高止まりや為替相場の円安基調等、年間を通して先行き不透明な状況が続きました。
このような状況の中、当社グループは、岐阜工場閉鎖による生産合理化を図り、既存製紙事業の基盤強化に努めました。また、第6次中期経営計画(2023年度から2025年度の3ヶ年計画)の「営業利益50億円、経常利益80億円、ROE7.0%」の目標達成のため、合成繊維シート(アラミドペーパー)等の成長分野の拡販や、事業ポートフォリオの変革を目指して、今後成長が見込まれる環境関連事業のリサイクルビジネスの更なる拡大に注力してまいりました。第1四半期においては、トーエイホールディングス株式会社の株式を取得し、環境関連事業の拡大を図りました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ9,631百万円増加し、132,978百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ4,279百万円増加し、49,050百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ5,351百万円増加し、83,927百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高86,517百万円(前年同期比2.8%増)、営業利益2,296百万円(前年同期比40.0%増)、経常利益6,188百万円(前年同期比52.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,590百万円(前年同期比11.1%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
1) 産業素材事業
主力製品である段ボール原紙及びクラフト紙につきましては、日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社を通じて販売しており、国内の物価高による買い控え等の影響により段ボール等包装材の需要全体が低調に推移したことで、販売数量は前年同期を下回りました。
利益面につきましては、赤松水力発電所が台風の影響で停止した前年同期に対し、売電事業が順調に推移したことで前年同期を上回りました。
この結果、当セグメントの売上高は42,455百万円(前年同期比2.4%減)、営業利益は1,282百万円(前年同期比31.1%増)となりました。
2) 特殊素材事業
特殊印刷用紙につきましては、国内向けの需要減少が続いていますが、価格改定による販売単価の上昇と海外向けファンシーペーパーの販売増加により、売上は前年同期並みとなりました。他方、特殊機能紙につきましては、価格改定により販売単価は上昇しましたが、電子化等の影響により販売数量が前年と比べて減少し、売上は前年同期を下回りました。
利益面につきましては、価格改定の浸透により第3四半期以降収益性は回復しつつあるものの、販売数量減と円安による原材料コスト上昇により、前年同期比で減益となりました。
この結果、当セグメントの売上高は20,427百万円(前年同期比1.1%減)、営業利益は495百万円(前年同期比19.5%減)となりました。
3) 生活商品事業
ペーパータオルにつきましては、新型コロナウイルス分類変更以降の使用量が減少しました。ラミネート等の加工品につきましては、包装用途での需要が低下しました。それにより販売数量は前年同期を下回りましたが、価格改定の浸透により前年同期比で増収となりました。また、トイレットペーパーにつきましても、価格改定が浸透したことにより前年同期比で増収となりました。
この結果、当セグメントの売上高は18,151百万円(前年同期比4.6%増)、営業利益は567百万円(前年同期は営業損失139百万円)となりました。
4) 環境関連事業
自然環境活用分野につきましては、建設事業の完成高が前年同期並みとなりました。また、資源再活用分野につきましては、新たに連結子会社化したトーエイホールディングス株式会社の子会社であるトーエイ株式会社が第2四半期から売上高に寄与したこと等により、大幅な増収となりました。
この結果、当セグメントの売上高は11,875百万円(前年同期比39.7%増)、営業利益は122百万円(前年同期比44.5%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は12,687百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,713百万円の増加となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は11,397百万円となり、前連結会計年度に比べ8,815百万円の増加となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益5,909百万円、減価償却費6,166百万円、持分法による投資損益△3,227百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は6,101百万円となり、前連結会計年度に比べ4,951百万円の増加となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出6,310百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出589百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は2,582百万円となり、前連結会計年度に比べ598百万円の減少となりました。主な内訳は、長期借入れによる収入4,968百万円、長期借入金の返済による支出4,604百万円、配当金の支払額1,183百万円であります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円)
|
前年同期比(%) |
|
産業素材事業 |
46,002 |
△2.4 |
|
特殊素材事業 |
18,221 |
3.5 |
|
生活商品事業 |
16,279 |
△0.0 |
|
環境関連事業 |
933 |
595.0 |
|
合計 |
81,437 |
0.4 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっており、自社利用分も含まれております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
環境関連事業 |
3,502 |
60.1 |
2,315 |
29.8 |
|
合計 |
3,502 |
60.1 |
2,315 |
29.8 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 受注実績は、建築土木工事について記載しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円)
|
前年同期比(%) |
|
産業素材事業 |
39,899 |
△3.2 |
|
特殊素材事業 |
19,644 |
0.3 |
|
生活商品事業 |
17,963 |
4.7 |
|
環境関連事業 |
9,009 |
45.8 |
|
合計 |
86,517 |
2.8 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
販売高(百万円) |
割合(%) |
販売高(百万円) |
割合(%) |
|
|
日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社 |
35,820 |
42.6 |
33,962 |
39.3 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1) 財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、132,978百万円となり、前連結会計年度末に比べて9,631百万円の増加となりました。主な要因は、子会社の新規連結に伴う資産の増加によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、49,050百万円となり、前連結会計年度末に比べて4,279百万円の増加となりました。主な要因は、子会社の新規連結に伴う負債の増加によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、83,927百万円となり、前連結会計年度末に比べて5,351百万円の増加となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加によるものであります。自己資本比率は57.8%となり、前連結会計年度末に比べて0.7ポイント低下しました。
2) 経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は86,517百万円となり、前連結会計年度に比べて2,386百万円(2.8%増)の増加となりました。セグメントごとの売上高につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
(売上総利益)
当連結会計年度の売上総利益は10,366百万円となり、前連結会計年度に比べて1,568百万円(17.8%増)の増加となりました。これは主に、売上高が増加したことによるものであります。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は2,296百万円となり、前連結会計年度に比べて655百万円(40.0%増)の増加となりました。これは主に、売上総利益が増加したことによるものであります。
(経常利益)
当連結会計年度の経常利益は6,188百万円となり、前連結会計年度に比べて2,129百万円(52.5%増)の増加となりました。これは主に、持分法による投資利益が増加したことによるものであります。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は4,590百万円となり、前連結会計年度に比べて459百万円(11.1%増)の増加となりました。これは主に、経常利益が増加したことによるものであります。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標としては、収益稼得水準の観点から営業利益を最も重視しており、また営業外の活動を反映する経常利益や、株主に対する還元の基準となる親会社株主に帰属する当期純利益についても重要視しております。加えて、投下資本の生産性を示す指標としてROAやROEについても、重要な経営指標と考えております。当社グループは、将来目指すべき姿として長期目標(営業利益100億円、経常利益130億円、ROE8.0%)を定め、更なる成長の機会探索と既存事業の体質強化に取り組んでおります。
当連結会計年度における営業利益は22億円、経常利益は61億円、ROEは6.2%となりました。第6次中期経営計画を推進することで、引き続き当該指標の改善に邁進していく所存でございます。
d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
また、資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
(資金需要)
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、運転資金需要と投資資金需要の二つがあります。運転資金需要の主なものは紙パルプ製造・販売における原材料及び商品仕入れ、製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資資金需要の主なものは紙製造工程の維持更新投資、エネルギー関連投資、研究開発関連投資、環境関連投資等、固定資産購入、事業戦略に必要な投資によるものであります。
(財務政策)
当社グループは、短期運転資金等の短期性資金については、主に金融機関からの短期借入金にて調達し、長期運転資金及び設備投資等の長期性資金については、内部資金及び金融機関からの長期借入金並びに金融機関を引受先とする社債(私募債)発行等により調達しております。なお、資金の性格、今後の資金需要、金利動向等の調達環境、予想される貸借対照表の流動比率及び借入金長短比率等を総合的に考慮し、調達額及び調達方法を適宜判断して実施しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(株式取得による会社等の買収)
当社は、2024年3月21日開催の取締役会において、株式会社貴藤ホールディングスの全株式を取得し子会社化することを決議し、2024年4月1日に株式譲渡等契約を締結いたしました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)(株式取得による会社等の買収)」に記載のとおりであります。
当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発活動は、原材料の開発、製品開発と生産工程に関わる技術開発及び新事業探索に重点をおいて行っております。また、引続き将来のための4つの技術 NaSFA(Nano technology,Security,Fusion,Art)の更なる検討、展開を進めております。
研究開発は、フィブリック事業本部、開発推進本部が中心となり進めております。
当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1)産業素材事業
産業素材事業では、ライナー、中芯、クラフト紙の品質改善とコストダウンに注力しております。原材料・処方・設備などの全ての面で検討、見直しを行っております。
当セグメントに係る研究開発費は
(2)特殊素材事業
特殊素材事業では、既存製品の領域で、環境配慮や次世代成長の領域に合致する製品の品質改良を行ってきました。次期には2件の上市を計画しております。また、新規事業の領域については、着手していた新技術の領域で2件の新規事業テーマを推進しており、特許出願、性能評価を実施し、良好な結果が得られております。事業化に向けた製造技術の確立、ターゲットを明確にした性能評価を実施していき、次期には投資判断を行う計画で検討を進めます。
パッケージ分野では、新たなパッケージ用紙とともに、特徴あるコンバーター技術と特殊紙の組み合わせによる差別化されたパッケージ自体の開発も進め、当期、エンタメ系を中心に大型案件2件の上市に成功しました。又、それ以外にも、食品用途等、いくつかの新製品の販売に成功しました。これら新製品は市場で好評を得ており、更に拡大していく予定です。ウエットモウルド分野では、当期、化粧品分野で2件の大型案件の開発、上市に成功しました。又、タンブラーや、文房具関連等、いくつかの新製品の開発、販売に成功しています。次期はこれら数量を拡大させていきます。
当セグメントに係る研究開発費は
(3)生活商品事業
生活商品事業では、引続き環境配慮型の製品開発に注力しております。家庭紙では包装フィルムの減容化や植物由来の樹脂の配合技術を当期において確立しました。現在は再生原料の幅を広げた製品の開発に取り組んでおります。紙ラミネート技術では、植物由来や生分解性・離解性樹脂の使用に取り組むとともに、水性コートにおいても生分解性薬品の塗工技術を当期において確立しました。現在は高耐水性(高防水性)・酸素バリア性等の高機能バリア製品の開発を継続しております。
当セグメントに係る研究開発費は
(4)環境関連事業
環境関連事業では、2020年11月より、豊かな自然環境を誇る南アルプス井川社有林の木材資源、天然湧水、熟成環境を活かしたウイスキー造りを「井川蒸溜所」にて開始いたしました。2024年11月には、初となるシングルモルトジャパニーズウイスキーの販売を予定しています。
当セグメントに係る研究開発費は
(5)知的財産について
期間中に出願した特許等の知財の件数は17件(特許10件、商標7件)、登録された特許等の知財の件数は12件(特許4件、実用新案1件、商標7件)となりました。