第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

 当社グループは、従来から一貫して経営理念を「ユニークで存在感のある企業集団として、社会と環境に貢献する」と定め、「技術と信頼で顧客と共に未来をひらく オンリーワンビジネス企業」を目指すべき企業像としております。株主を中心とし、従業員、取引先、地域社会、環境面での様々なステークホルダーからの信頼を得ると共に、持続可能な社会実現への貢献を通じて当社グループの企業価値の向上を追求することをもって経営方針としております。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社が経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標としては、収益稼得水準の観点から営業利益を最も重視しており、これに持分法による投資損益等を反映した経常利益や、株主に対する還元の基準となる親会社株主に帰属する当期純利益についても重要視しております。加えて、中長期目標達成、及びPBRの改善に向けては、今まで以上に資本コスト・資本収益性を意識した経営を実践するため、事業別ROA・ROI(投資利益率)を管理項目として設定しております。具体的には、事業本部総資産利益率(=税引後貢献利益÷事業本部総資産)で事業効率を測るとともに、ROI(投資利益率)が総資産利益率(目標ROA)を上回っていることをもって投資判断の基準としております。

 

(3)中長期的な経営戦略

 当社グループは、長期目標として、2034年度での経常利益130億円、ROE9.0%以上の達成を掲げております。この目標達成に向けては、セクターに捉われず、成長が見込まれる環境関連事業をもう一つの主軸とした事業ポートフォリオへの変革を推進し、自己資本の最適化による資本収益性の改善とともに、資本市場との対話を通じた株主資本コストの低減と株式売買取引高の改善に取り組んでまいります。

 2023年4月~2026年3月を対象期間とする第6次中期経営計画においては、製紙事業と環境関連事業の両輪での成長を実現するべく、「環境関連事業への資源投入」と「製紙事業における製品ポートフォリオの入替」 および「経営基盤の強化」に取り組んでおります。「環境関連事業への資源投入」では、産業素材事業の新ボイラー稼働に向けて、シナジーを発揮できるサーマルリサイクル事業の拡大を図るとともに、リサイクルの高度化を図るべく、特にマテリアルリサイクルの技術開発とリサイクル事業の拡大を目指します。「製紙事業におけるポートフォリオの入替」では、成長領域への製品投入とともに、既存の紙に捉われない新たな紙需要を開拓し、製紙事業の更なる推進につなげます。「経営基盤の強化」では人的資本の価値向上策をはじめ、ガバナンスの強化、社有林の有効活用と生物多様性の保全・保護に努めます。これらを推進することで、第6次中期経営計画の全社KGIとした営業利益50億円、経常利益80億円、ROE7.0%の達成を目指しております。

 

営業利益

経常利益

ROE

2025年3月期実績

39億円

62億円

4.6%

第6次中期経営計画目標値

50億円

80億円

7.0%

 

(4)経営環境

 ①企業構造

 当社は、2010年、特種製紙株式会社と東海パルプ株式会社を吸収合併することで設立され、製紙業においては「産業素材事業」「特殊素材事業」「生活商品事業」、製紙業以外においては成長が見込まれる「環境関連事業」によって構成されております。また、横の連携も円滑に行うことを目的とした“事業本部制”を採用することにより、各セグメントが持つ技術や生産力をより相乗的に発揮できるように運営を行っております。

 「産業素材事業」は、段ボール原紙やクラフト紙等の産業用紙事業において日本製紙株式会社と合弁事業を行っており、当事業の売上については、その大半が持分法適用会社である日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社向けのものです。したがって、当事業の業績は主に持分法利益の取り込みにより経常利益に反映されることになります。

 

 「特殊素材事業」は、ファンシーペーパー等の特殊印刷用紙及び特殊機能紙など高付加価値製品の製造・販売を行っており、事業の主体は特種東海製紙本体となります。

 「生活商品事業」は、子会社2社により構成されており、業務用ペーパータオルや食材紙、トイレットペーパーといった衛生用紙、ラミネート紙及びコート紙の製造・販売を行っております。

 「環境関連事業」は、当社保有の南アルプス社有林の有効活用を目的とした自然環境活用事業、当社サプライチェーンを起点としたリサイクルビジネスの拡大を目的とした資源再活用事業によって構成され、当社グループ成長の要として更なる拡大を進めてまいりたい事業分野であります。

 以上のように、規模の経済が働く事業分野においては他企業との合弁事業にて、独自の強みを活かすことのできる「多品種・小ロット・高付加価値」事業である特殊素材事業については、特種東海製紙本体により事業を推進、他のセグメントについては基本的に子会社による事業展開を行う体制を採っており、この事業本部制は適切に機能していると判断しております。

 

 ②市場環境・顧客動向

 a.産業素材事業

 当事業においては、段ボール等包装材に用いられる段ボール原紙、クラフト紙の製造を行っております。産業用包装素材の需要については国内の物価高による買い控え等の影響はあるものの堅調な通販需要等により今後も底堅いものと認識しております。

 b.特殊素材事業

 当事業においては、出版向けやハイエンドパッケージ向け特殊印刷用紙、製品ごとに異なるユーザー・用途が存在する特殊機能紙等、小ロット多品種・高付加価値を特徴とする製品の製造・販売を行っております。従来からのデジタル化の影響により、出版や商業印刷物向け等情報伝達媒体として使用される紙については市場が縮小傾向にありますが、脱・減プラスチックの流れによりパッケージ用途の需要は底堅い他、特殊機能紙における海外向け一部製品についても引き続き堅調な需要を見込んでおります。

 c.生活商品事業

 当事業においては、ペーパータオルやトイレットペーパー等の衛生用紙、及びラミネート紙等加工品の製造・販売を行っております。衛生用紙につきましては生活必需品であることから堅調な需要を見込んでおりますが、紙加工品は一般消費の減退により減少傾向にあります。

 d.環境関連事業

 当事業においては、南アルプス社有林の自然価値を活かす取り組みの一環としてウイスキー製造を行うと共に、廃プラスチックを主たる材料とする固形燃料(RPF)の製造販売や産業廃棄物の中間処理、廃家電の再資源化(都市鉱山事業)、廃プラスチックの再生原料化等、幅広いリサイクルビジネスを展開しております。リサイクルビジネスにつきましては、中長期的には国内外の社会課題解決に向けた動きとともに、環境負荷低減を目指した資源リサイクルの活動は重要性を増し、関連する事業のニーズは今まで以上に伸びるものと認識しております。

 

 ③競合他社の状況

 当社グループは事業セグメントごとに異なった競合他社が多数存在します。

製紙3事業においては、総需要に対して生産能力が超過気味であり、業界全体での競争は厳しさを増しているということが共通認識となっております。その中で、比較優位にある分野を強化しつつ如何に差別化できる業務を行っていくかが極めて重要であると認識しております。

 環境関連事業のうち資源再活用事業においては化石燃料価格の高騰及び脱炭素化の社会的背景に伴い廃棄物燃料のニーズが高まりつつあることから、固形燃料の主材料である廃プラスチック等の集荷面で競合が強まりつつあります。こうした中、物流を考慮した同業との連携を図ると共に、M&A等による集荷エリア拡大に取り組んでいくことが重要であると認識しております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 ①資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

a.現状分析・評価

 当社グループは、2018年3月期~2025年3月期の直近8年間において業績を堅調に推移させてきた一方で、PBRは定常的に1.0倍を下回る状況が続いております。この度、残余利益モデルを用いた推計や株主・投資家との対話を通し現状分析・評価について改めて検討を行った結果、当社の指標とすべき株主資本コストはCAPM算定値の4.6%ではなく9.0%程度であると分析いたしました。PBR=ROE×PERを前提とした場合、現状のROEは推計株主資本コストを下回って推移しているとともにPERも低水準であることから、より資本収益性の高い事業領域へ進出するとともに、成長性の訴求と将来リスクを低減することで市場評価を獲得していくことが必要であると認識しております。

b.資本収益性改善への取組み

0102010_001.jpg

c.市場評価向上への取組み

0102010_002.jpg

 

 ②製紙以外の新たな事業領域の拡大

 当社グループは、環境関連事業を製紙3事業に次ぐ新たなコア事業と位置づけ、将来の収益基盤を強化するべく、当事業領域の拡大を対処すべき課題として認識しております。

 なかでも、資源再活用ビジネスは高度循環型社会を目指す機運の高まり等を背景に今後も持続的な成長が期待される分野であり、2020年1月にグループ入りした株式会社駿河サービス工業を端緒に、第4次中期経営計画以降当該分野へ経営資源を傾注してまいりました。マテリアルリサイクルへの展開も視野に2023年4月資本参加したトーエイホールディングス株式会社に続き、2024年4月には東京都の西部を基盤とする産業廃棄物処理業者である株式会社貴藤の持株会社、株式会社貴藤ホールディングスをグループ会社といたしました。㈱貴藤ホールディングス及び㈱貴藤は、2024年8月1日を効力発生日として㈱貴藤を吸収合併存続会社、㈱貴藤ホールディングスを吸収合併消滅会社とする吸収合併を行いました。またトーエイホールディングス㈱及びトーエイ㈱は、2024年11月1日を効力発生日としてトーエイ㈱を吸収合併存続会社、トーエイホールディングス㈱を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行いました。当社グループは、引き続き環境関連事業へ積極的な投資を行い、循環型社会の実現に貢献するとともに企業価値の向上に努めてまいります。

 

 ③製品ポートフォリオの変革

 デジタル化の進展により情報伝達媒体としての紙需要は減退する一方、循環型社会への移行に伴って脱・減プラスチックへの需要は増進しつつある等、紙製品に対する需要構造は大幅に変化しており、当社グループはこれを対処すべき課題として認識しております。

 当社グループはこの課題に対応するため、既存事業の体質強化による収益基盤の安定化を図るとともに、プラスチック容器に代替するウエットモウルドや、幅広い機能性を活用したTT-PACKAGE等環境配慮型製品の開発に注力してまいります。

 

 ④原燃料価格の高騰

 急速に変化する地政学的リスクと昨今の為替相場の動向から、日本企業の原燃料調達に係る不確実性が高まっております。その結果、パルプをはじめとする各種原燃料価格の高騰が進んでおり、当社グループの製紙業全般にとって利益圧迫要因及びリスクとなっていることから、当社グループはこれを対処すべき課題として認識しております。

 当社グループはこの課題に対応するため、燃料調達構造の見直しや分散化等業務プロセスを全社的に見直すとともに、徹底した経費削減及び原価低減努力、製品価格の適正化等既存事業の体質強化を実施し、不確定性が高い事業環境において収益の改善・安定化を図ってまいります。

 

 ⑤持続可能な社会に向けた対応

 当社グループは、カーボンニュートラルをはじめとした持続可能な社会に向けた取り組み、及びそれに関わる情報開示の充実を対処すべき課題として認識しております。低炭素社会実現に向けては、使用エネルギーの効率化や化石燃料からの転換(島田工場での新廃棄物ボイラー設置計画:2027年10月完工予定)といった生産活動における従来からの取り組みに加え、2024年3月に認証を受けた森林由来のJ‐クレジットの活用についても検討してまいります。また、生物多様性保全の面では、2023年10月「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域(自然共生サイト)」に当社グループ社有林が認定されました。今後も地球環境との共生を図っていくとともに、こうした取り組みを通じて当社グループへの理解を深めていただけるよう、統合報告書を主な媒体として更なる情報開示の充実に努めてまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社グループは、持続可能な社会実現へ貢献すると共に企業価値を永続的に向上させていくため、「自然との共生」「社会・文化発展への貢献」「ステークホルダーとの信頼関係」、この3軸で構成される特種東海製紙グループサステナビリティ基本方針を制定しております。当方針の下、国内外の主要なフレームワークを参考とした社会課題の調査(外部環境の整理)、及び自社における取組内容の調査(内部環境の整理)を実施し、重点的に取り組むべきマテリアリティを抽出いたしました。以下に示す7つのマテリアリティの改善・解決に向けた企業活動を実施していくことで、社会・環境との共生を果たし、当社グループが成長し続けられるよう努めてまいります。

 

 

マテリアリティ

KPI

定性目標

定量目標

地球環境との共生

気候変動問題への対応

・生産活動に伴うCO₂排出量の削減

・生産活動に伴う化石エネルギー起源CO₂を2030年までに2013年度比38%削減

社有林の活用と

生物多様性への貢献

・30by30に基づく

生物多様性保全活動の推進

・森林資源維持活用

・希少な高山植物保護を目的とした防鹿柵エリア及び群生地の監視・巡視による植生保全状態の確認(監視・巡視:2回/年)

・井川社有林におけるCO₂吸収量(t‐CO₂)の維持

持続可能な

サプライチェーンの維持

・「木材調達に関する基本指針」に
 基づく責任ある原料調達の推進

・ホワイト物流の推進

・人権DDと社内教育の実施

・木材原料(製紙用チップ・バージンパルプ)におけるトレーサビリティ100%の維持

・目標(静岡ロジスティクスのドライバーの残業時間960時間/年未満)達成済みのため2023年度実績水準を維持

・島田工場構内における2時間以上待機トラック数0台

資源の有効活用と

環境負荷の低減

・古紙利用率の向上

・廃棄物最終処分率の低減

・2025年度目標(古紙利用率65%以上の維持)達成済みのため2023年度水準を維持

・2025年度目標(生産活動に伴って発生する廃棄物の最終処分率1.6%以下の維持)達成済みのため2023年度実績水準を維持

安定した製品提供と

新製品の開発

・顧客満足度の向上

・環境配慮型製品の拡充

・環境配慮型製品のラインナップ150製品以上

地域・社会との共生

地域・社会への貢献

・地域社会との対話の推進

・貢献活動・コミュニケーション数100件以上/年

安心安全に働ける

職場環境づくり

・女性活躍の推進

・休業災害の撲滅

・エンゲージメントの強化

①管理職及び管理職候補者層における女性比率 10%

②育児休業取得後の女性社員、および配偶者出産後の男性社員の仕事と家庭との両立支援制度利用率 20%

・休業災害度数率1.05以下

・休業災害強度率0.09以下

・ワークエンゲージメント製造業平均以上(2026年度)

・エンプロイーエンゲージメント全産業平均以上(2026年度)

 

(2)サステナビリティに関する取組

①ガバナンス

 すべてのステークホルダーとの信頼関係を強化し、当社グループの持続的な企業価値向上を図るべく、サステナビリティに係る各課題への対応をはじめ、IR・広報活動等を所管するサステナビリティ推進室を2024年7月に新設いたしました。サステナビリティ推進室では各事業本部との対話によってリスクや機会、対応策等の妥当性や重要性の検証を行うと共に、担当役員を通じて検討結果に基づく方針や重要事項について取締役会へ付議・報告を行うこととしております。

 当社グループのガバナンス体制及びサステナビリティに係る役割は以下のとおりであります。なお、コーポレート・ガバナンスの体制図につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。

 

取締役会

サステナビリティ全般課題にかかる評価、審議、監督および承認

気候変動リスクの対応策、機会追求施策についての承認

サステナビリティ担当役員

サステナビリティ全般課題にかかる業務遂行における統括責任者

サステナビリティ推進室

サステナビリティ全般課題にかかる戦略、管理運用方針の立案および改変提案

気候変動リスク、機会項目および対応策についてのヒアリング
(各事業本部の担当部門との対話)

TCFD、TNFD提言に沿った開示情報の検討・とりまとめ

リスク管理委員会

気候変動リスクを含めたリスクアセスメントのレビュー、指導

各事業本部

気候変動課題も含めたリスクアセスメントの実行

気候変動課題にかかる収益機会の認識と改変提案

対応策(投資等)の付議と実行

経営管理本部

リスク管理委員会の総括管理

リスク、機会の影響度の検討

サステナビリティ推進室との気候変動課題にかかる戦略の協議、情報の共有

 

②戦略

ⅰ.気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

 当社グループは2022年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言へ賛同、同年6月にはTCFDフレームワークに準じた情報開示を行いました。シナリオ分析にあたっては、IPCCやIEAのレポート等に示されている情報を参照し、以下に示す2つのシナリオを設定いたしました。

 

●4℃シナリオ=現状のまま何もしない状況で推移した場合の2030~2050年ごろの状況

●2℃シナリオ=2050年カーボンニュートラルに向けて法規制等も強化された場合の2030年ごろの状況

 

 

 設定したシナリオに基づき、社会・経済情勢や自然的状況の変化を予測するとともに、当社グループの主要事業におけるリスク・機会を可能な限り洗い出し、このうち事業への影響が大きいと想定される事項を抽出・整理いたしました。また、重要なリスクと機会については、その一部について財務的インパクトの算定に向けた検討に着手し、社内での議論を進めております。

 株主・投資家等ステークホルダーとのエンゲージメント強化のため、開示情報の更なる充実に努めてまいります。

 

0102010_003.png

 

ⅱ.化石エネルギー起源CO排出量の削減

 当社グループでは、生産活動の効率化や化石燃料からの転換といったCO2排出量の削減対策に取り組んできました。この結果、主要な生産4社におけるCO2排出量は、直近3ヵ年は横ばい傾向にあるものの2023年度のCO2排出量は2013年度比で約34%の削減となりました。

0102010_004.jpg

 以上のように、現時点においても低炭素操業を実現できているものと認識しておりますが、これを更に推進するため、エネルギー起源CO排出量を2030年度までに2013年度比で38%削減、2050年度までにCO排出量ネットゼロを目指すロードマップを策定いたしました。2030年度目標の設定にあたっては、日本国が掲げる2013年度比▲46%のうちの産業部門に求める目標値▲38%に準拠すると共に、各事業本部より施策を抽出し2030年度のCOの削減予測量を算定いたしました。かねてより推進してまいりました省エネルギー化を継続すると共に、再生可能エネルギーの利用を拡大することで低炭素社会実現への貢献を目指してまいります。

 

ⅲ.人材の育成及び社内環境の整備

a.人事基本方針及び人材育成方針

 当社グループは、2008年4月に人事基本方針として「人を最も重要な財産と位置づけ、従業員一人ひとりと信頼で結ばれ、全従業員が高いモチベーションを維持しつづける環境を整備すると共に、会社が永続的に成長できる組織風土を醸成する」を掲揚いたしました。これに基づく人財育成方針、社内環境整備方針を定め、従業員にとって「明るく生き生き働ける会社」、「誇りを持って働ける会社」、「夢を持って働ける会社」、「安全で安心して働ける会社」を目指してまいります。

 また、人財育成方針につきましては、2017年に第4次中期経営計画 “NEXT 10”の策定と併せて制定し、10年後を見据えた「成長戦略」と「基盤事業の強化と変革」を実現するための人財育成に取り組んでおります。

 

 

人財育成方針

1.能動的な人財

・指示待ちではなく、自ら考え判断し、責任を持って行動する人財

・常に問題意識を持ち、自分で新たな課題を発掘し、 自分で解決する人財

・周囲に対して自ら積極的に提案や働きかけができる人財

2.スペシャリスト

・特定の専門領域で、自ら知見を高め、イノベーションを起こす人財

・他社(人)には真似できない、当社(自分)固有の技術や技能を探求し続ける人財

・当社の財産である技術や技能を、次世代に伝承する人財

3.海外に通用する人財

・将来を見据えて、海外でのビジネスや事業構築にチャレンジする人財

・外国語力や国際的教養の向上に努め、外国人とのコミュニケーション力を有する人財

・当社の技術・技能を海外ニーズに適応させ、当社価値を国際的に広め伝える人財

4.多様な人財の活躍推進

・多様な価値観や育児介護等の制約条件のもと、能力を最大限に発揮し職務を全うする人財

・ワークライフバランスの実現に向けて、職務の工夫や改善により労働生産性を向上させる人

 財

・仲間一人ひとりの違いを受け止め、相互協力できるチーム形成に貢献できる人財

 

b.人財育成方針実現に向けた具体的な取組

(専門人財の採用・育成)

 事業ポートフォリオの変革やオンリーワンビジネス追求のため、キャリア採用比率を高めるとともに、キャリアコースに高度な専門性を認定するエキスパート職を設け、管理職と同等の処遇とすることでスペシャリストの育成を図っています。今後も、継続的な賃上げを実施することで優秀な人材を確保し、リスキリングやキャリア形成支援運用の強化を通じ、専門人材の育成に注力いたします。

(主体的なキャリア形成)

 目指すキャリアや働き方について従業員が主体的に考え、上司との面談を通じて中長期的な計画を策定しキャリアコース選択や教育研修、ジョブローテーション、配置などに反映させるキャリアプラン制度を導入しております。その他にも、公募による新規事業への配置国内外の大学・大学院またはこれに準ずる教育研究機関に留学派遣する制度、公的資格取得奨励制度等、能動的なキャリア形成を支援しています。

(DE&Iの推進)

 2024年度から、ダイバーシティを「DE&I」と広く捉え直し、企業価値向上のための諸施策の1つとして位置づけました。これに従い、人事部門が所管していた「ダイバーシティ推進チーム」を2024年7月に新設した「サステナビリティ推進室」へ移管し、従来の「女性活躍推進」から、当社グループの持続的な価値向上に資する取組に範囲を広げました。

具体的には、次の7つの観点から取組みを行っています。

 1)女性活躍に限定しない「ダイバーシティ」の推進

 2)グループ全体への取組みの拡大

 3)社外との積極的な交流

 4)取組みや関連情報の発信強化

 5)コミュニケーションの円滑化による従業員間の信頼関係醸成

 6)多様な人財が管理職を目指す風土や意識の醸成

 7)エンゲージメントの向上

 

c.社内環境整備方針

 社内環境整備方針として「『明るく生き生き働ける会社』『安全で安心して働ける会社』を目指し、安全第一を最優先として位置付け、労働災害の撲滅と心身の健康維持増進を達成するため、一人ひとりが快適で働きやすい職場づくりを進める」を定め、安全衛生、ワークライフバランス、エンゲージメントの向上の取り組みを推進しております。

 

d. 社内環境整備方針実現に向けた具体的な取組

(安全衛生の取組)

 「安全衛生年次方針」を定め、この方針を元に各事業所において具体的な取組みを実施しております。「安全」については、「危険の特定と低減対策の実施」及び「ルールの順守と危険感受性の向上」、「衛生」については、「心身の健康状態の把握と維持改善の習慣作り」を掲げており、リスクアセスメント活動や安全体感機等を用いた安全教育、生活習慣病予防対策の啓発等に取り組んでおります。

(健康経営の推進)

 「従業員一人ひとりが心身ともに健康で安心して働ける会社を目指し、積極的に健康経営に取り組みます」と宣言し、各事業所の安全衛生部門が人事教育部門や健康保険組合と連携して、「健康維持増進」、「疾病予防」、「メンタルヘルス対策」、「働き方改革」の各種施策を実施しております。

(従業員エンゲージメントの向上)

 2024年5月調査のエンゲージメントサーベイの結果、当社の特徴として会社や組織に対する愛着・一体感が高い一方、仕事に対する熱意・姿勢に課題がある傾向となりました。要因として「上司や同僚との関係」、「企業理念やビジョンへの共感」との相関が大きいことが判明したため、上司や同僚間のコミュニケーション促進及び社内広報活動強化に努め、会社への理解・関心を深める取組みを実施しています。また、ワークライフバランス推進として、フレックスタイム制度のコアタイムの廃止や居住地最寄りの拠点・自宅を併用したハイブリッド型勤務導入による通勤負担の軽減など、働き方に係る施策にも注力しています。

 

③リスク管理

 企業を取り巻く環境が複雑かつ多様化する中、当社グループでは、リスクマネジメントを経営戦略や事業目的を遂行していく上で不可欠なものと位置付け、リスク管理委員会を中心として全事業所・従業員と共に取り組んでまいりました。

 当社グループでは、特種東海製紙グループリスク管理規程に基づき、2018年に「リスク管理マニュアル」を制定し、所管部門ごとのリスク洗い出しと対応策の設定、これのモニタリングを実施しております。また、これらリスクアセスメントの状況はリスク管理委員会での定期的なレビューの結果を踏まえ、毎年見直しを行いながら進めております。

 サステナビリティに係るものを含むリスク及び機会の管理体制につきましては、所管部門およびグループ会社自らが評価、重要度の高いリスク及び機会への対応策を検討・実行することにより、リスクの低減及び機会創出に努めてまいります。

 

0102010_005.jpg

 

 

④指標と目標

項目

指標

目標値

実績

気候変動問題への対応

生産活動に伴うCO₂排出量の削減(SCOPE1,2)

化石エネルギー起源CO₂を2013年度比38%削減(2030年度)

34%削減
(2023年度)

女性活躍の推進
(注)1

女性のキャリア形成の支援

管理職及び管理職候補者層における女性比率102025年度

9.6%(2024年度)

(注) 1.当該指標と目標の対象範囲は提出会社単体であります。

2.女性活躍の推進にあたっては、拠点や事業内容等によって人的資本に関する状況や適切な戦略が異なることから、女性活躍推進法等に基づき各グループ会社で施策を実施しております。以上の理由から連結会社ベースでの開示が困難であるため、提出会社単体ベースでの開示を行っております。

3.女性活躍の推進の指標につきましては、上記「女性キャリア形成の支援」の他に「女性の職域拡大」「柔軟な働き方に資する制度の利用率向上」を掲げ各種取組みを進めております。

4.女性活躍の推進の対象は提出会社原籍者とし、他社への出向者を含み、他社からの出向者を除きます。

 

 

 

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 また、リスク管理の体制については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。

 

(1)需要及び市況の変動

 当社グループは、事業セグメントごとに異なったリスクがあるものと認識しております。

 ①産業素材事業

 段ボール原紙及びクラフト紙等を扱う産業素材事業においては、経済環境の悪化に伴って物流活動が急激に停滞した場合、また、悪天候により農産物の収穫量・流通量が著しく低下した場合、産業用包装材の需要が減少し、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、さらなる低コスト・高能率の生産体制確立に努めてまいります。

 ②特殊素材事業

 特殊印刷用紙及び特殊機能紙等を扱う特殊素材事業においては、デジタル化の進展やそれに伴う出版部数の減少等の影響により情報伝達媒体としての紙需要は縮小傾向にあります。また、製品ごとに異なるユーザー・用途が存在する製品群においては、社会潮流の変化により用途そのものが消滅することで製品への需要も急減し、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、生産体制の集約・効率化を図っていくとともに、引き続き潜在的ニーズを追求し、製品構成の入れ替えに努めてまいります。

 ③生活商品事業

 ペーパータオルやトイレットペーパー等を扱う生活商品事業においては、供給過多や価格競争等市況が変動しやすく、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、製品のさらなる品質向上を推進すると共に、ネットワークの強化に努めてまいります。

 

 ④環境関連事業

 環境関連事業に含まれる資源再活用事業につきましては、脱化石燃料への社会的背景から今後も旺盛な需要を見込んでおりますが、いっぽうで廃棄物燃料へのニーズが急速に高まることで廃棄物集荷における競争が激化した場合、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、物流を考慮した同業との連携を図ると共に、M&A等による集荷エリア拡大に取り組んでまいります。

 

(2)原燃料価格の変動

 製紙3事業においては多量の原燃料を使用するため、その事業の主たる原料価格に変動があった場合、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。また、原燃料の輸入取引について為替変動リスクを負っており、主として米ドルに対して円安が生じた場合、業績に負の影響を与える可能性があります。

 産業素材事業において主たる原料である段古紙の価格は、中国およびASEAN諸国をはじめとした海外情勢の影響を受けやすくなっております。したがって、海外情勢に著しい変化があった場合、調達価格が高騰し、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。

 生活商品事業において使用する上質の古紙の価格は、ペーパーレス化の進展に伴い、年々その発生量が減少し、古紙需給の影響を受けやすい状況となっております。したがって、更なるペーパーレス化の進展により、上質の古紙の発生量が減少した場合、調達価格が高騰し、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。

 古紙の調達価格上昇リスクについては、運送費のより安価な近場からの安定調達に注力するとともに、長年の取引関係を勘案した安定調達先の確保に努め、さらに段古紙については、日本製紙株式会社との共同調達の実施などにより対応しております。

 特殊素材事業において多量に使用するパルプについては、その多くを諸外国から調達していることから、主として米ドルに対する為替変動リスクを負っております。また、パルプ生産国における経済活動の変容や世界的な需要の高まり等、海外市況の影響により調達価格が高騰することで、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、調達先を国内外で多様化するとともに、各取引先との良好な関係づくりに注力しております。

(3)取引先の信用リスク

 当社グループの取引先の経営状況が、市場の変動や業界再編成等により財務上の問題に直面した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性については、現時点では確認しておりませんが、各事業本部が密に連携し、一層の管理体制強化を図ってまいります。

 

(4)資金調達

 資金調達については、現状の経済情勢下においては重大なリスクはないものと認識しておりますが、金融市場の混乱や当社に対する信用が著しく損なわれる事象が発生した場合、資金調達が困難になる可能性があると考えております。当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりませんが、金融機関との良好な取引関係の構築及び資金管理体制の強化に努めてまいります。

 

(5)法的規制

 製造販売業務を主体とする当社グループにつきましては、環境規制に加えて、労働安全衛生法、製造物責任法、知的財産権に関する規制等の様々な法規制の適用を受けております。このため、これらの規制の改定等に対応することや、これらの規制に関連した訴訟等を受けることにより、事業活動の制限、高額な費用負担や環境対策設備の設置等コストの増加につながることがあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応について、当社グループでは常設の機関としてコンプライアンス委員会を設置し、常に法令遵守を念頭に置いた経営管理に努めるとともに環境関連の法改正及び環境保全に係る社会的要請の動向を引き続き注視してまいります。

 

(6)災害や感染症及び事故による影響

 当社グループは、製造ラインの突発的な中断による潜在的なマイナス影響を最小限にするため、定期的な予防保全を行っております。また、災害事故等不測の事態発生に備え、影響を最小限にするための教育・訓練等を実施しており、特に地震対策については、当社内に緊急時の対応組織を設け、臨機応変に対応することにしております。しかし、これらの影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。また、当社グループの工場及び施設の多くは静岡県にあり、大規模な地震やその他の操業を中断する事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 また、従業員が重大な感染症に罹患した場合、従業員及びその家族への感染拡大を防ぐため、工場の操業を停止する可能性があり、停止の期間やその範囲は想定しておりません。先般の新型コロナウイルスの世界的な拡大を受け、当社グループでは、リモートワークの導入をはじめとした社内施策を講じ感染防止に努めております。

 

(7)環境の激変に伴う所有資産価値の変動

 ①投資有価証券の減損に係るリスク

 当社グループは、時価のある有価証券を保有しておりますが、時価が著しく下落した場合には、取得原価と時価との差額を当該期の損失とすることとなり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ②固定資産の減損に係るリスク

 当社グループは、製紙業に関係する生産設備等の多くの有形固定資産を有しております。「固定資産の減損に係る会計基準」の適用に伴い、時価の下落や当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの状況によっては減損処理が必要な場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ③のれんの減損に係るリスク

 当社グループは、第13期連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)に株式会社駿河サービス工業、第17期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)にトーエイホールディングス株式会社、第18期連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)に株式会社貴藤ホールディングスを連結子会社化したことに伴い、のれんを計上しております。当該のれんにつきましては、事業価値及びシナジー効果が発現された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、景気変動等の影響により収益性が低下した場合には、減損損失計上により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における当社グループの事業環境は、企業収益や雇用・所得環境の改善などにより、景気は緩やかな回復基調にある一方で、物価上昇の継続、米国新政権及び中国経済の動向など、先行きは不透明な状況で推移しました。

 このような状況の中、当社グループは、第6次中期経営計画(2023年度から2025年度の3ヶ年計画)で掲げた「営業利益50億円、経常利益80億円、ROE7.0%」の目標達成のため、合成繊維シート(アラミドペーパー)等の成長分野の拡販や、事業ポートフォリオの変革を目指して、今後成長が見込まれる環境関連事業のリサイクルビジネスの更なる拡大に注力してまいりました。当社は2024年4月に株式会社貴藤の株式を取得し、環境関連事業の拡大を図りました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ6,457百万円増加し、139,436百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ4,551百万円増加し、53,602百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,906百万円増加し、85,834百万円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高94,800百万円(前年同期比9.6%増)、営業利益3,928百万円(前年同期比71.0%増)、経常利益6,227百万円(前年同期比0.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,607百万円(前年同期比21.4%減)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

1) 産業素材事業

 主力製品である段ボール原紙及びクラフト紙につきましては、日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社を通じて販売しており、国内の物価上昇による買い控え等の影響により段ボール等包装材の需要全体が低調に推移したことで、販売数量は前年同期を下回りました。また、赤松水力発電所が設備トラブルにより停止したことで、電力販売による売上及び利益は前年同期を下回りました。

 この結果、当セグメントの売上高は44,793百万円(前年同期比5.5%増)、営業利益は1,089百万円(前年同期比15.0%減)となりました。

2) 特殊素材事業

 特殊印刷用紙につきましては、第3四半期に価格改定を実施し、販売単価は上昇しましたが、国内向けの需要減少による影響が大きく、売上は前年同期を下回りました。また、特殊機能紙につきましては、電子化等の影響により国内向けの販売数量は前年と比べて減少しましたが、海外向け一部製品の需要が増加したことにより、売上は前年同期を上回りました。

 利益面につきましては、パルプ市況、円安などの影響により期中の原材料コストは上昇傾向にありましたが、販売数量・単価、固定費等の複合的な要因により前年同期比で増益となりました。

 この結果、当セグメントの売上高は21,467百万円(前年同期比5.1%増)、営業利益は1,638百万円(前年同期比230.8%増)となりました。

3) 生活商品事業

 トイレットペーパーにつきましては、前第4四半期からの価格改定により増収増益となりました。ペーパータオルにつきましては、新たなサステナブル製品が高評価を得ており、売上高は前年同期を上回りました。ラミネート等の加工品につきましては、販売数量の増加に伴い売上高は前年同期を上回りました。

 この結果、当セグメントの売上高は18,646百万円(前年同期比2.7%増)、営業利益は532百万円(前年同期比6.0%減)となりました。

 

4) 環境関連事業

 自然環境活用分野につきましては、建設事業の完成高が堅調に推移いたしました。また、資源再活用分野につきましては、前期に子会社化し前第2四半期より損益を連結したトーエイ株式会社や、期初に連結子会社化し第2四半期より損益を連結した株式会社貴藤が売上高に寄与したこと等により、大幅な増収となりました。

 この結果、当セグメントの売上高は16,783百万円(前年同期比41.3%増)、営業利益は529百万円(前年同期比333.2%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は10,599百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,088百万円の減少となりました。

  当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動の結果得られた資金は8,773百万円となり、前連結会計年度に比べ2,623百万円の減少となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益5,481百万円、減価償却費6,243百万円、棚卸資産の増減額△1,896百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動の結果使用した資金は9,366百万円となり、前連結会計年度に比べ3,264百万円の増加となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出9,905百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,525百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動の結果使用した資金は1,495百万円となり、前連結会計年度に比べ1,086百万円の減少となりました。主な内訳は、長期借入れによる収入6,900百万円、長期借入金の返済による支出5,265百万円、配当金の支払額1,532百万円であります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 

生産高(百万円)

 

前年同期比(%)

産業素材事業

48,040

4.4

特殊素材事業

18,135

△0.5

生活商品事業

16,270

△0.1

環境関連事業

1,590

70.5

合計

84,038

3.2

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっており、自社利用分も含まれております。

 

b.受注実績

  当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

環境関連事業

3,589

2.5

2,364

2.2

合計

3,589

2.5

2,364

2.2

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

    2 受注実績は、建築土木工事について記載しております。

 

c.販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 

販売高(百万円)

 

前年同期比(%)

産業素材事業

42,080

5.5

特殊素材事業

20,796

5.9

生活商品事業

18,467

2.8

環境関連事業

13,455

49.4

合計

94,800

9.6

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社

33,962

39.3

36,058

38.0

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

 1) 財政状態

  (資産)

 当連結会計年度末の総資産は、139,436百万円となり、前連結会計年度末に比べて6,457百万円の増加となりました。主な要因は、新廃棄物ボイラー建設等に係る建設仮勘定の増加によるものであります。

  (負債)

 当連結会計年度末の負債は、53,602百万円となり、前連結会計年度末に比べて4,551百万円の増加となりました。主な要因は、有利子負債の増加によるものであります。

  (純資産)

 当連結会計年度末の純資産は、85,834百万円となり、前連結会計年度末に比べて1,906百万円の増加となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加によるものであります。自己資本比率は56.3%となり、前連結会計年度末に比べて1.5ポイント低下しました。

 

 

 2) 経営成績

  (売上高)

 当連結会計年度の売上高は94,800百万円となり、前連結会計年度に比べて8,283百万円(9.6%増)の増加となりました。セグメントごとの売上高につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

  (売上総利益)

 当連結会計年度の売上総利益は12,702百万円となり、前連結会計年度に比べて2,336百万円(22.5%増)の増加となりました。これは主に、売上高が増加したことによるものであります。

  (営業利益)

 当連結会計年度の営業利益は3,928百万円となり、前連結会計年度に比べて1,631百万円(71.0%増)の増加となりました。これは主に、売上総利益が増加したことによるものであります。

  (経常利益)

 当連結会計年度の経常利益は6,227百万円となり、前連結会計年度に比べて39百万円(0.6%増)の増加となりました。これは主に、営業利益が増加したことによるものであります。

  (親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は3,607百万円となり、前連結会計年度に比べて983百万円(21.4%減)の減少となりました。これは主に、減損損失を計上したことによるものであります。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループが経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標としては、収益稼得水準の観点から営業利益を最も重視しており、また営業外の活動を反映する経常利益や、株主に対する還元の基準となる親会社株主に帰属する当期純利益についても重要視しております。加えて、投下資本の生産性を示す指標としてROAやROEについても、重要な経営指標と考えております。当社グループは、将来目指すべき姿として長期目標(営業利益100億円、経常利益130億円、ROE8.0%)を定め、更なる成長の機会探索と既存事業の体質強化に取り組んでおります。

 当連結会計年度における営業利益は39億円、経常利益は62億円、ROEは4.6%となりました。第6次中期経営計画を推進することで、引き続き当該指標の改善に邁進していく所存でございます。

 

d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 また、資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

  (資金需要)

 当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、運転資金需要と投資資金需要の二つがあります。運転資金需要の主なものは原材料及び商品仕入れ、製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資資金需要の主なものは維持更新投資、エネルギー関連投資、研究開発関連投資、環境関連投資等、固定資産購入、事業戦略に必要な投資によるものであります。

 

  (財務政策)

 当社グループは、短期運転資金等の短期性資金については、主に金融機関からの短期借入金にて調達し、長期運転資金及び設備投資等の長期性資金については、内部資金及び金融機関からの長期借入金並びに金融機関を引受先とする社債(私募債)発行等により調達しております。なお、資金の性格、今後の資金需要、金利動向等の調達環境、予想される貸借対照表の流動比率及び借入金長短比率等を総合的に考慮し、調達額及び調達方法を適宜判断して実施しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発活動は、原材料の開発、製品開発と生産工程に関わる技術開発及び新事業探索に重点をおいて行っております。また、引続き将来のための4つの技術 NaSFA(Nano technology,Security,Fusion,Art)の更なる検討、展開を進めております。

 研究開発は、パッケージ事業部、総合研究所が中心となり進めております。

 当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は574百万円であります。

 

(1)産業素材事業

 産業素材事業では、ライナー、中芯、クラフト紙の品質改善とコストダウンに注力しております。原材料・処方・設備などの全ての面で検討、見直しを行っております。

 当セグメントに係る研究開発費は18百万円であります。

 

(2)特殊素材事業

 特殊素材事業では、PFAS代替ニーズが顕在化したノンフッ素耐油紙の改良品を、当期に上市しました。ノンフッ素耐油紙については、市場ニーズに応えるため、新グレードを導入予定で検討を進めております。その他機能紙については、3件検討を続けており、3件中2件は次期の上市を目指して進めております。新規事業の領域については、着手していた新技術の領域で2件の新規事業テーマを推進しておりましたが、そのうちの1件については中断、1件については技術開発が進展し、当期に新たに2件の特許出願をしました。引続き事業化に向けた製造技術の確立、投入市場の精査を行い、技術確立を目指し検討を進めます。

 パッケージ分野では、特徴あるコンバーター技術と特殊紙の組み合わせを中心に開発を進め、新たな分野に2件の新製品の販売に成功しました。また、前期に引続きエンタメ系に新たな製品を採用いただきました。意匠性以外に、食品向け機能性パッケージの開発にも成功し、次期に本格販売の予定です。新製品投入により、販売分野も、徐々に拡がりつつあります。ウエットモウルド分野では、当期、食品分野で1件の大型案件の開発、上市に成功しました。また、新たな分野へ3件の新製品開発に成功しました。引続き市場の関心が高く、複数の開発案件を進めております。当期、パッケージ、ウエットモウルド併せて12件の新製品を市場に投入しました。

 当セグメントに係る研究開発費は509百万円であります。

 

(3)生活商品事業

 生活商品事業では、これまでの環境配慮型製品の開発に加え更に当社だからできること、オンリーワンの製品につながる技術の開発に取り組みました。家庭紙関係ではこれまでのペーパータオルにはない表面加飾技術の確立により軽くても厚みがあり、それでいてしっかりと水分を吸収する新製品を開発いたしました。加工品関係では前期に続き、水蒸気や酸素に対して高いバリア性を有する製品の開発に加え、基材間の接着強度コントール技術や遮光原紙の製造技術開発に着手するなど新たな価値創造に向けて挑戦を始めております。

 当セグメントに係る研究開発費は45百万円であります。

 

(4)環境関連事業

 環境関連事業では、2020年11月より、豊かな自然環境を誇る南アルプス井川社有林の木材資源、天然湧水、熟成環境を活かしたウイスキー造りを「井川蒸溜所」にて開始いたしました。当期には、初となるシングルモルトジャパニーズウイスキーの販売を開始いたしました。

 当セグメントに係る研究開発費は0百万円であります。

 

(5)知的財産について

 期間中に出願した特許等の知財の件数は18件(特許16件、商標2件)、登録された特許等の知財の件数は6件(特許2件、商標4件)となりました。