DNPグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものです。
DNPグループは、サステナブルな社会の実現を目指し、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを企業理念に掲げています。この理念に基づき、持続可能なより良い社会、より心豊かな暮らしを実現するため、長期を見据えて、自らがより良い未来をつくり出していく事業活動を展開していきます。
さまざまな活動を通じて、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値を創出し、それらの価値を生活者の身近に常に存在する「あたりまえ」のものにしていきます。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けることで、DNP自身が「欠かせない存在」になるように努めており、こうした姿勢を「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで表明しています。
経営の基本方針に沿った取り組みを通じて、持続的に事業価値・株主価値を創出していきます。事業活動の評価指標としてROEとPBRを用いて、価値向上の達成状況を評価していきます。
DNPグループは、経営の基本方針に基づき、2026年3月期を最終年度とする3か年の新しい中期経営計画を2023年4月から実行しています。この計画では、「事業戦略」を中心に持続的な価値創出の具体策を実行するとともに、それを支える経営資本の強化に向けて「財務戦略」と「非財務戦略」を推進し、事業価値・株主価値を高めていきます。
<三つの戦略>
〔1:事業戦略〕
〔1-1:中長期の事業ポートフォリオの考え方〕
新しい「事業戦略」では、「市場成長性・魅力度」と「事業収益性」を基準に、目指すべき中長期の事業ポートフォリオを明確に示しました。「市場成長性・魅力度」が高い「成長牽引事業」と「新規事業」を「注力事業領域」と位置付けています。この「注力事業領域」の五つの事業に集中的にリソース(経営資源)を投入し、必要な組織・体制なども十分に整備して、利益の創出を一層加速・拡大させていきます。また、コアバリューの進化と深耕、独自の強みを持った企業に対するM&A、DNPならではの社会・関係資本である多様なパートナーとの共創などによって、「NO.1」を獲得していく戦略を推進していきます。
*成長牽引事業:デジタルインターフェース関連、半導体関連、モビリティ・産業用高機能材関連
*新規事業:コンテンツ・XRコミュニケーション関連、メディカル・ヘルスケア関連
一方で、市場成長性・魅力度の伸び率は低水準ながら収益性の高い「基盤事業」は、事業効率を高め安定的にキャッシュを生み出していきます。また、市場成長性が低く収益性の厳しい「再構築事業」については、生産能力や拠点の縮小・撤退を含めた最適化を進めるとともに、注力事業領域へのリソースの再配分や、その中でも強みを持つ製品・サービスの強化による構造改革を推進していきます。
*基盤事業:イメージングコミュニケーション関連、情報セキュア関連
*再構築事業:既存印刷関連、飲料事業
〔1-2:各セグメントにおける戦略〕
事業領域とその戦略をより明確化し、具体的な施策の実行を加速させるため、セグメントの名称を2023年度から、「情報コミュニケーション部門」を「スマートコミュニケーション部門」に、「生活・産業部門」を「ライフ&ヘルスケア部門」に変更します。それにともない、快適な人々の暮らしに一層寄与していくため、関係の深い「飲料事業」を「ライフ&ヘルスケア部門」に移行し、「飲料部門」のセグメントを廃止します。
〇スマートコミュニケーション部門
当部門では、投下資本とキャッシュ創出のバランスを見ながら効率的・効果的な投資を行うほか、DNPのコアバリューを活かし、国内外の企業との協業・サービス開発を進めていきます。また、「再構築事業」の紙メディア印刷関連は、市場規模に対応した合理化・適正化を進めます。
当部門の「注力事業領域」である「コンテンツ・XRコミュニケーション関連」では、リアルとバーチャルの空間をシームレスかつセキュアに行き来できる世界を実現し、人々の体験価値を拡大していきます。日本だけでなく世界中の多様なIP(Intellectual Property:知的財産)ホルダーやクリエーターとのネットワーク、アーカイブ事業や情報セキュア関連事業で培った高精細画像処理技術や版権処理の実績と信頼、そして、個人や情報を安全に認証しながら大量のデータを流通させ、複雑なビジネスプロセスを統合・最適化させる能力などのDNPならではの強みを活かしていきます。また、着実に事業収益を積み上げる「基盤事業」として、写真プリント等の多様な製品・サービスをグローバルに展開する「イメージングコミュニケーション関連」、企業・団体等の最適な業務プロセスを設計して関連業務を受託するBPO事業、国内トップシェアのICカード関連事業、各種認証サービス等の「情報セキュア関連」事業を推進します。
具体的な施策としては、「イメージングコミュニケーション関連」や、「情報セキュア関連」ではグローバルでの拡大投資を進めるほか、企業や自治体の業務効率化、DX化のニーズを捉えたBPO事業の拡大も図ります。「コンテンツ・XRコミュニケーション関連」では、国内外の多数のパートナーとの連携を深めて、新規市場を創出していきます。
〇ライフ&ヘルスケア部門
当部門の「注力事業領域」の一つである「モビリティ・産業用高機能材関連」では、世界シェアトップのリチウムイオン電池用バッテリーパウチのEV向けのグローバル拡大展開を積極的な設備投資で推進します。この製品と、モビリティ(移動用車両)用の多様な内外装加飾材を起点として、2040年、2050年に向けてEVの航続距離の延伸や自動運転、快適な移動空間の実現に取り組んでいきます。もう一つの「注力事業領域」である「メディカル・ヘルスケア関連」では、出版・包装・半導体等の事業で培った画像処理技術やカラーマネジメント技術、無菌・無酸素充填技術、ミクロ・ナノ造形技術や精密有機合成技術などを掛け合わせて、原薬製造、製剤、剤形変更、医療パッケージ製造などの製薬サポート事業を展開します。また、画像診断やオンライン診療などのスマートヘルスケア事業の拡大に努め、人々の健康寿命の延伸に貢献していきます。
一方、競争の厳しい包装関連事業等では拠点の再編などによる収益性の改善・向上を図るとともに、DNP-IB(Innovative Barrier)フィルム等の独自製品や環境配慮包材の拡大による構造改革を進めます。
具体的な施策としては、リチウムイオン電池用バッテリーパウチの米国拠点検討やバリアフィルム、環境配慮包材等のグローバル供給能力拡大のほか、メディカル・ヘルスケア関連では、社外のパートナーとのシナジー最大化などにも取り組んでいきます。
〇エレクトロニクス部門
当部門では、積極的な設備投資を推進するほか、コアバリューを活かした新製品開発や、社外のパートナーとのアライアンスによる半導体サプライチェーンへの提供価値拡大などにより事業を拡大していきます。
当部門の「注力事業領域」の一つである「デジタルインターフェース関連」では、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクやディスプレイ用光学フィルムなど、グローバルシェアNO.1の製品を中心に、技術革新の潮流を活かし、リアルとバーチャル、アナログとデジタルをつなぐことで新しい価値を創出していきます。もう一つの「注力事業領域」である「半導体関連」では、自動運転や遠隔教育・遠隔医療、クラウド環境やデータセンターなど、データ流通量がワールドワイドで飛躍的に増大するなかで、半導体サプライチェーン全体に不可欠なファインデバイスを開発・提供していきます。
〔2:財務戦略〕
持続的な事業価値と株主価値の創出に向けて、財務の安定性を維持した上で、キャッシュを成長投資に振り向けるとともに、株主還元にも適切に配分していきます。
〇キャッシュ・アロケーション戦略
「注力事業領域」への積極的な投資と既存事業の効率化を推進することで、成長投資の原資となる営業キャッシュ・フローを安定的に創出していきます。資産効率の改善に向けて、政策保有株式の売却を加速し、遊休不動産の縮減に着実に取り組んでいきます。また、有利子負債の活用を含む、適切な資金調達方法を検討するなど、資金効率の最大化に努めていきます。
創出したキャッシュは、「注力事業領域」に集中的に投資を行うとともに、経営基盤の構築に向けた投資にも配分していきます。長期にわたって企業活動を推進し、社会や人々に価値を提供していくために、成長投資の推進と株主還元のバランスを考慮した上で、株主還元にも積極的に配分していきます。
〔3:非財務戦略〕
〇人的資本の強化
DNPグループは、2022年に「人的資本ポリシー」を発表し、これに基づいて積極的に進めている「人への投資」をより明確に企業価値の向上に結びつけていくため、グローバルでの「人的創造性(付加価値生産性)」を飛躍的に高めていくことを目指し、以下の取り組みを進めていきます。
価値創造に向けた社員のキャリア自律支援と組織力の強化に向けて、DNP版「よりジョブ型も意識した処遇と関連施策」を展開しており、複線型のポスト型処遇とキャリア自律支援に向けた人的投資、競争力の高い報酬水準・体系の維持・確保、組織開発の充実などを進めています。
また、「DNPグループ健康宣言」に基づき、多様な個の強みを引き出すチーム力の強化とマネジメント改革に向けて、「DNP価値目標制度(DVO制度:DNP Value Objectives)」の浸透や組織のエンゲージメントを高める施策を展開し、社員の幸せ(幸福度)を高める健康経営を推進します。
事業戦略に対する適材適所の実現については、タレントマネジメントシステムを活用したICT人材・DX人材のスキルレベルの可視化や、人材ポートフォリオに基づく採用・育成、人材再配置に必要となるリスキリングの強化を進めていきます。
DNPグループはまた、多様な社員を活かし、一人ひとりの強みを掛け合わせることが価値の創出に欠かせないと考え、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進に取り組んでいます。D&I推進の基本方針である「多様な人材の育成」「多様な働き方の実現」「多様な人材が活躍できる風土醸成」の具現化に向けた施策を進めていきます。
〇知的資本の強化
DNP独自の強みと社外のパートナーとの連携を活かして、知的資本を強化していきます。
研究開発の方針として、DNPがつくり出したい“より良い未来”の姿を描き、それを起点とした“未来シナリオ”を実現していくため、独自の技術を強化し、新製品・新サービスの開発・提供につなげていきます。「注力事業領域」を中心とした新規テーマの創出、基盤技術の強化と新製品開発、オープンイノベーションによる戦略的な技術の獲得と製品化・事業化などを推進していきます。また、ライフ&ヘルスケアの領域を中心とした海外展開の加速や、海外マーケティング・研究開発の強化にも努めます。これまで多様な事業で獲得してきた特許等の知的資本の新製品・新サービスの開発への展開、社内外の強みを積極的に掛け合わせる組織風土の構築などにより、既存事業と新規事業の両方で新しい価値を創出していきます。
DNPグループにとってのDXは、アナログとデジタル、リアルとバーチャル、モノづくりとサービスなど、両極端ともいえる強みを融合し、独自のビジネスモデルや価値を生み出すことだと位置付けています。この基本方針に沿って、新規事業の創出と既存事業の変革、生産性の飛躍的な向上、社内の情報基盤の革新などを進めていきます。
〇環境への取り組み
DNPグループは常に、事業活動と地球環境の共生を考え、環境問題への対応を重要な経営課題の一つに位置付けています。「価値創造(事業の推進)」と「基盤強化」の両輪で環境課題の解決に取り組むことで、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に貢献していきます。
「価値創造(事業の推進)」については、環境負荷の低減と事業の付加価値の向上をともに実現する事業ポートフォリオへの転換、環境をテーマとした新規事業の創出、低炭素材料・素材の開発・活用、製品単位のCO2排出量の算定と削減、循環型社会に向けたリサイクルスキームの構築、リサイクル材の活用促進などに取り組んでいきます。
「基盤強化」では、環境負荷の見える化、再生可能エネルギーの導入、環境負荷を考慮した省エネ設備への投資、生産拠点の最適化、プラスチックを中心とした資源の効率的な利用、原材料のトレーサビリティの確保、生態系への負荷の低減などに取り組んでいきます。
〔4:ガバナンス〕
DNPグループは、環境・社会・経済の急激な変化等、経営に大きな影響を与えるリスクを評価して中長期的な経営戦略に反映し、また、そのリスクを事業機会に転換していくプロセスの強化に取り組んでいます。
この取り組みを一層加速させるため、2022年4月に代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を始動させました。「サステナビリティ推進委員会」は、中期経営計画を実行していく過程で、環境・社会・経済の急激な変化をとらえて、適切に経営戦略に反映すべく、経営会議・取締役会に報告・提言していきます。
DNPグループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてDNPグループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
DNPグループは、サステナブルな地球の上で初めて、健全な社会と経済、快適で心豊かな人々の暮らしが成り立つと捉えています。近年は特に、環境・社会・経済が急激に変化しており、経営に影響を与えるリスク(変動要素)もますます多様かつ広範囲に及んでいます。
このようななか、環境・社会・経済の持続可能性を高め、DNPグループ自身の持続的な成長をさらに推進していくため、2022年4月に「サステナビリティ推進委員会」を代表取締役社長を委員長、代表取締役専務を副委員長とし、本社の各部門を担当する取締役・執行役員を委員として構成する体制に再編し、機能を強化しました。自然災害等の有事発生時でも社員の安全を確保して生産活動を維持していくための「BCM推進委員会」と、社員のコンプライアンス意識の向上を図ってリスクの低減を図る「企業倫理行動委員会」と連携することで、全社的リスクを網羅し、柔軟で強靭なガバナンス体制を構築しています。
サステナビリティ推進委員会は、サステナビリティに係るDNPグループの在り方を適切に経営戦略に反映していくことを目的として、年2回の定例開催を基本として必要に応じて適宜開催し、以下の内容の協議などを行い、取締役会に報告と提言を行います。
①サステナビリティに関する中長期的な経営リスク管理、事業機会の把握及び経営戦略への反映
②サステナビリティ活動方針の構築と各部門での実行の統括
③サステナビリティに関する課題の掌握、目標・計画の策定、計画推進・活動状況の評価及び是正・改善
④長期環境ビジョンの達成に向けた活動の推進
取締役会は、当委員会で協議・決議された事項の報告・提言を受け、サステナビリティに関するリスク及び機会への対応方針並びに実行計画等について、審議・監督を行っています。
(2)戦略
DNPグループは、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを企業理念に掲げ、持続可能なより良い社会、より心豊かな暮らしの実現に努めています。この理念に基づき、サプライチェーン全体を通じて、あらゆるリスクのマイナスの影響を抑えるとともに、プラスのインパクトをもたらす価値を生み出して、企業としての持続可能性と環境・社会・経済の持続可能性をともに高めていきます。特に事業活動のグローバル化が進むなかで、人権の尊重が今まで以上に重要になると認識しており、2020年3月に、「DNPグループ人権方針」を策定し、人権尊重のマネジメントを強化しました。サプライチェーン全体で人権に配慮した調達に取り組んでおり、リスク評価やトレーサビリティの確保など取り組みを進めています。
事業活動を通じて、中長期的に新しい価値を創造し、サステナブルに成長していくためには、その基盤として財務・非財務の双方の資本を強化することが重要であり、「価値の創造」と「価値創造を支える基盤の強化」の両軸で、推進すべき重点テーマを定めています。非財務資本の強化では、ステークホルダーの関心や事業活動への影響の大きさ、影響を及ぼす可能性の観点から、特に注力すべき重要課題(マテリアリティ)として、人的資本・知的資本・環境への取り組みを加速させています。
① 人的資本の強化
価値創出の要であり、成長の原動力である「人的資本の強化」に関しては、「人的資本ポリシーに基づき人への投資を拡大する」という方針のもと、
・価値創造に向けた社員のキャリア自律支援と組織力の強化
・社員の幸せ(幸福度)を高める健康経営の推進
・人材ポートフォリオに基づく採用、注力分野への人材配置とリスキリングの展開
・多様な個を活かすダイバーシティ&インクルージョンの推進
を進めていきます。
その為の人材育成方針として、社員一人ひとりが自律した個として主体的に必要な知識と技術を身につけ、最大限に自身の役割を果たし、自らの成長と自己実現を図ることができる人材の継続的な輩出を目指します。社内環境整備方針としては、ダイバーシティ宣言や健康宣言に基づき、多様な個人の強みを引き出す、チーム力や組織力の強化に向けてDVO制度によるチーム目標の設定や組織のエンゲージメントを高める施策などを推進していきます。
これらの方針に基づく具体的な取り組みとして、「キャリア自律型」の仕組みであるDNP版「よりジョブ型も意識した処遇と関連施策」などを展開します。社員は自律的にキャリアを描くなかで自らを磨き、会社は「価値創造に向けた社員のキャリア自律」を支援していくことで、人的資本ポリシーに謳う「社会(社内・社外)で活躍できる人財」の輩出を目指していきます。
こうした取り組みを通じて、人への投資を企業価値の向上に結び付けていく中で、グローバルでの『人的創造性(付加価値生産性)』の飛躍的向上を実現していきます。
② 知的資本の強化
DNPグループは、他社と差別化してグローバルな競争力を高めていくため、コアバリューである「P&I」(印刷と情報)の独自の強みを進化・深耕させるとともに、社外のパートナーとの連携を深めることで知的資本の充実を図っていきます。研究開発の投資として、毎年300億円以上を投入しており、特に、注力事業領域を中心に、知的資本を有効に掛け合わせて、製品化・事業化を加速させる取り組みを強化しています。近年ではまた、事業の成長と生産性の革新の両面で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を強力に推進しており、そのための技術や人材の充実も図っています。重要な成長戦略の一つとして、社内のDX人材の育成と必要な外部人材の獲得、パートナー企業との連携など、DXによる価値創出のためのリソースをさらに拡充していきます。
こうした「事業の推進」、「技術・研究開発」とその活動を支える「知的財産の戦略的獲得」を三位一体で強力に推進していきます。
③ 環境への取り組み
DNPグループは常に、事業活動と地球環境の共生を考え、環境問題への対応を重要な経営課題の一つに位置付けており、行動規範の中に「環境保全と持続可能な社会の実現」を掲げています。近年特に、地球環境に対する負荷の低減が強く求められるなか、サプライチェーン全体で環境を強く意識した活動を推進しています。2020年3月には「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定し、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けた取り組みを加速させています。
特に気候変動対応を重要課題の一つに位置付けており、事業活動にともなう気候変動リスクの抽出と長期リスクに対する戦略検討のため、シナリオ分析による定性的・定量的な財務影響の評価・分析を実施しています。また、環境ビジョン2050に掲げる「脱炭素社会」の構築に向けて、グループ全体におけるGHG排出量(Scope1、2、3)を把握し、実績の分析に基づいて削減に取り組んでいます。具体的には、事業ポートフォリオの転換、省エネルギー活動の強化、再生可能エネルギーの導入などにより、自社拠点での事業活動にともなう温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすることを目指すとともに、製品・サービスを通じて脱炭素社会の構築などに貢献していきます。また、「循環型社会」の実現に向けて、サプライチェーン全体で資源の効率的な循環利用を進めており、自社で生じるプラスチック不要物を中心に、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルの取り組みを進め、資源循環率の向上に努めています。さらに、「自然共生社会」の実現に向け、サプライチェーン全体で生物多様性への影響の最小化と地域生態系への調和を目指しており、原材料調達のトレーサビリティ確保や生態系に配慮した事業所内の緑地づくりを進めています。
(3)リスク管理
DNPグループは、柔軟で強靭なガバナンス体制のもとに、変動要素(リスク)によるマイナスの影響を最小限に抑えるとともに、事業機会の拡大につなげるため、統合的なリスクマネジメントを推進しています。
環境・社会・経済に関するリスクと機会は、サステナビリティ推進委員会が年に1回以上特定し、評価・管理しています。また、事業計画や財務的影響、ステークホルダーの関心や環境・社会に与える影響の大きさ、発生可能性等の観点を踏まえ、活動の優先順位付けや目標の設定を行い、経営に反映させています。特に重要度や優先度が高いリスクについてはリスク管理部門を選定し、経営会議の協議を経て事業戦略・計画に反映され、各組織が中心となって対応しています。機会については、DNPグループ全体で重点テーマを管理し、戦略的な事業展開につなげています。
(4)指標・目標
DNPグループは、サステナビリティに関する取り組みについて、的確な進捗管理を可能とし、着実に実行するため、具体的な指標と目標を設定しています。これらの進捗状況は、サステナビリティ推進委員会のガバナンスにおいてモニタリングされています。
人的資本・知的資本・環境への取り組みについては、次の指標を用いております。
①人的資本の強化
DNPグループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
②知的資本の強化
③環境への取り組み
*自社独自の基準により特定した環境配慮に優れた製品・サービス
DNPグループは、地球環境の持続可能性を高め、健全な社会と経済、快適で豊かな人々の暮らしを実現していく新しい価値の創出に努めており、それによってDNP自身の持続的な成長を達成していきます。また、その実現に向けて、環境・社会・経済に関するさまざまな課題と、変動要素としてのリスクを正しく認識し、統合的なリスクマネジメントを行う取り組みに注力しています。これら事業環境の変化におけるリスクを、DNP独自の「P&I」(印刷と情報)のコアバリューの進化・深耕によって成長機会への転換を推進しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてDNPグループが判断したものであります。
・気候変動による自然災害の頻発・激甚化、渇水や洪水等水リスクの高まり
・プラスチック汚染や生物多様性の損失の加速
○地球環境保全に関連した制度や市場動向の変動要素
・気候変動リスクや自然関連情報等の開示の強化、グローバル化
・GHG排出量の規制強化、エネルギー関連施策の見直し、循環経済への移行の加速
・環境負荷削減に資する製品・サービスの市場拡大、技術革新の加速 など
DNPグループは事業活動と地球環境の共生を絶えず考え、「DNPグループ環境ビジョン2050」に掲げる「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けた取り組みを加速させています。例えば、自然災害等への対応としては、製造設備その他の主要施設に防火・耐震・水害対策等を施すとともに、製造拠点や原材料調達先の分散を図り、生産活動の停止や製品供給の混乱を最小化する事業継続計画(BCP)を策定し、その適切なマネジメント(BCM)を推進しています。また、各種保険によるリスク移転も図っています。しかしながら、甚大な自然災害や感染症の流行など、社会インフラの大規模な損壊や機能低下、生産活動の停止につながるような予想を超える事態が発生した場合は、業績に大きな影響を与える可能性があります。
長期環境ビジョンの達成に向けて、DNPグループは中期目標を設定し、環境負荷の削減を計画的に進めています。しかしながら、GHG排出量削減のさらなる強化や脱石化製品への移行の加速、代替素材への切り替え要請の高まりによる削減目標の引き上げや製品仕様の見直し等によって、事業への影響や追加的措置が必要となる場合があり、企業活動に大きく影響する可能性があります。
またDNPグループの事業は、印刷用紙など森林資源由来の原材料調達や、製造工程で使用する水や再生可能エネルギーなど、さまざまな形で自然の恩恵を受けています。さらに、グローバルなサプライチェーンの構築など、社会と密接に関係しながら事業活動を展開しています。こうした状況をグループ全体で明確に認識し、環境の持続性を確保しつつ、社会とともに持続的に成長するため、サプライチェーン全体における環境負荷の把握・削減、トレーサビリティの確保を進めています。しかしながら、地球環境の急激な変動や生物多様性の損失の加速などによって、DNPが必要とする自然資本に想定以上の変動がある場合は、企業活動への影響が大きくなります。
国内外では、気候変動への対応や生物多様性の保全などに関する法的規制や国際規範の強化が進み、社会課題の解決に取り組む姿勢を重視して企業価値を判断する傾向がますます強まっています。特にカーボンニュートラルの実現や循環経済への移行は、緊急度と深刻度が増し、ネイチャーポジティブに向けた各種インフラや事業構造の変革がさらに強く求められています。DNPグループはこうした変化を先取りすることに加え、自ら主体的に変化を起こすことによって、価値創造と基盤強化の両輪で環境課題の解決に取り組みます。
・少子高齢化や労働力不足、雇用の流動化の加速
・多様な社会で生きる多様な人々の尊厳に関する課題の変化
・あらゆる人が心地よく生きるための諸条件の変化(心身の健康・安全・衛生など)
・サプライチェーン全体における人権リスク対応の重要性の高まり
○健全な社会の構築に向けた制度や市場動向の変動要素
・各国・地域の法制度・政治制度の変更、サプライチェーン上のリスク対応の強化
・地政学的リスク/カントリーリスクの拡大
・文化や制度・ルールの違いによる各種リスクの顕在化 など
DNPグループは、「人的資本ポリシー」に基づき、社員の心理的安全性が高く健康で活力ある職場の実現に注力するほか、社員一人ひとりの状況に配慮した働き方を実現し、多様な強みを掛け合わせていく「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)」の取り組みを推進しています。しかしながら、国内外の雇用情勢の急激な変化にともない、高い専門性を有する人材や、変化に柔軟に対応しながら業務を遂行できる人材の確保・育成ができない場合など、競争優位性の高い組織体制の構築が難しくなる可能性があります。
近年は特に、海外での事業活動やグローバルに拡大するサプライチェーンに関して、多様な社会的・政治的・経済的変動要素が顕在化しています。世界各地での労働環境の適正化や人権への配慮がますます重要となるなか、「DNPグループ人権方針」に基づき、社会的責任を果たし続けていくことが、企業として長期的に発展していくための重要な基盤となります。それに対して、各国・地域や経済圏などで、人権デュー・デリジェンスの重要性の高まり等、社会関連の法律や規制の予期しない制定や変更、地政学的リスクやカントリーリスクの増大などが起きることによって、DNPグループの国内外の事業活動や原材料調達に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。
DNPグループは、果たすべき3つの責任として「価値の創造」「誠実な行動」「高い透明性(説明責任)」を掲げており、社員全員に対して企業倫理の浸透・徹底を図っています。すべての企業活動において法令等を守るだけでなく、高い倫理観を持ち、常に公正・公平な態度で、社会の維持・発展に寄与することで、将来にわたって信頼を得るべく努めています。しかしながら昨今、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の広がりを背景として、企業に対する批判的な評価や評判によって企業のレピュテーションが低下するような事案が国内外で発生する可能性があります。そのため、国内外のSNS等のモニタリングを行い、早期のリスク発見と適宜適切な対応に努めています。
(3)経済関連のリスク
○各国・地域とグローバルな市場における経済活動の短期および中長期の変動要素
・ビジネスモデル/技術/製品・サービス等の開発の加速
・デジタルトランスフォーメーション(DX)やグローバルネットワーク等の加速
・各種経済指標の急激な変動(国内外の景気・業界動向・消費意欲・物価・為替・GDP他)
・世界経済の地政学的要因によるバランスの変化や分断化
○経済活動の基盤となる制度や市場動向の変動要素
・資本主義の見直し、バーチャルな経済圏の確立等による金融インフラの変動
・情報インフラ関連の変動(GDPR等各種ルール・規制の強化/緩和、情報セキュリティへの脅威) など
DNPグループは、特定の業種に偏らない数万社の企業や、自治体・各種団体・生活者等と多様な事業活動を行っています。この強靭で安定的な事業基盤を強みにするとともに、オールDNPの強みの掛け合わせと、社外のパートナーとの連携を推進しながら成長牽引事業・新規事業からなる注力事業領域と長期間安定的にキャッシュを生み出す基盤事業を中心に価値の創出に努めています。しかしながら、国内外の景気や消費の動向などが想定以上に低迷した場合や、特に新興国での生産や需要の変化が大きい場合など、生産量の減少や単価の下落等によって業績が影響を受ける可能性があります。また、新規のビジネスモデルや技術、製品・サービスの開発において、さらなる競争の激化や変化に対する対応の遅れ、予想を上回る商品サイクルの短期化、市場動向の変化などが業績に影響を与える可能性があります。戦略的な事業・資本提携や企業買収は、事業拡大の迅速化や効果の拡大に有効ですが、提携先・買収先等を取り巻く事業環境が悪化し、当初想定していたような相乗効果が得られない場合、業績に影響を与える可能性があります。
原材料等の調達については、国内外の複数のメーカーから印刷用紙やフィルム材料を購入するなど、安定的な数量の確保と最適な調達価格の維持に努めています。しかしながら、地政学リスクの高まり、石油価格や為替の大幅な変動や新興国での急激な需要の増加、天然資源の枯渇、気候変動の影響、サプライチェーンにおける人権の問題などにより、需給バランスが崩れる懸念もあります。また為替相場については、現地生産化や為替予約などによって変動リスクをヘッジしていますが、これらの状況が急激に変動する場合には、業績に影響を与える可能性があります。
また、事業活動において、世界規模のコンピュータネットワークなど情報システムを活用するなかで、ソフトウェアやハードウェアの不具合のほか、日々巧妙化・高度化するサイバー攻撃によるコンピュータウイルスへの感染、個人情報の漏えいなどの発生リスクが高まっており、更なる自社防御強化が必須です。DNPグループは、個人情報を含む重要情報の保護、つまり情報セキュリティを経営の最重要課題のひとつとして捉え、体制の強化や社員教育などを通じてシステムとデータの保守・管理に万全を尽くしていますが、万一、DNPグループのサプライヤーやパートナーにおいてサイバー攻撃による被害や重要情報に関連する事故などが発生した場合には、事業の停止等事業活動に影響を与える可能性があります。
事業活動において自社が保有する知的財産やノウハウ等を適切に保護、管理、活用することが不可欠です。DNPグループでは、自らの技術・ノウハウ等の流出を防止するための管理を厳重に行っていますが、不測の事態による外部流出の可能性があります。一方で他者の知的財産を必要とする事業や製品開発において当該知的財産を利用できない場合、事業拡大や業績に影響を与える可能性があります。また、他者の知的財産権を尊重し、侵害しないよう対応していますが、他者から訴訟等を提起され、差止請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。
当連結会計年度におけるDNPグループの状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、コロナ禍からの社会・経済活動の回復に加えて、人々の働き方や暮らしを変える取り組みが徐々に進みました。国内では特に、今年に入ってから規制等が緩和され、インバウンド需要も回復傾向にあるなど、緩やかな景気の持ち直しの動きが見られました。
一方で、地政学リスクの顕在化やグローバルサプライチェーンの不安定化などによって、原材料やエネルギーの価格、物流コストの上昇などが続きました。海外の多くの地域でも、インフレと金融引き締め等によって景気の減速が見られるなど、国内外の事業環境は厳しさを増しました。
こうした状況のなかで、DNPグループは、持続可能なより良い社会、より心豊かな暮らしの実現に向けた取り組みを強力に推進しました。DNP独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせる「P&Iイノベーション」という事業ビジョンのもと、多くのパートナーとの連携も深めて、社会の課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値の創出に努めました。
当期は、特に高い収益性と市場成長性を見込んでいる「IoT・次世代通信」「データ流通」「モビリティ」「環境」関連のビジネスを「注力事業」と定めて、これらの事業に財務資本と人材や知的財産等の非財務資本を重点的かつ最適に配分し、多くの成果につなげてきました。
「IoT・次世代通信」関連では、第5世代移動通信システム(5G)のSub6周波数帯に対応し、意匠性・耐候性・屈曲性に優れたフィルム型アンテナを開発しました。DNPの独自技術等を掛け合わせ、パターン設計から加工まで一貫した体制を構築して、早期の事業化を進めていきます。
「データ流通」関連では、2022年10月に、証明写真機「Ki-Re-i」で撮影した顔写真データを活用した顔認証システムの提供を開始し、非接触での入退室管理と検温を同時に行うことで、セキュリティリスクと感染症リスクのワンストップでの軽減を可能にしました。また、同年12月には、株式会社読売新聞東京本社、SMN株式会社と業務提携し、各社で保有する新聞・雑誌等・テレビに接する生活者の行動データを組み合わせることで、より効果的な広告配信を実現するプラットフォーム「Media X(メディアエックス)」のサービスを開始しました。
「モビリティ」関連では、環境負荷の低減やエネルギー効率の向上、より高い情報セキュリティや安全性・快適性が求められる「次世代のモビリティ社会」に向けた製品・サービスの開発に努めました。その一環で2023年2月には、配送管理の効率化等を目指し、MaaS(Mobility as a Service)を活用し、物流の最終拠点から生活者の手元まで配送物を届けるラストワンマイル物流の実証事業をフィリピン共和国で実施しました。
「環境」関連では、2022年10月に、DNPの多様な技術・ノウハウを掛け合わせ、企業の環境関連の課題解決に貢献する部門横断型の環境配慮デザインチーム「DNP GREEN PARTNER」を発足させました。環境と事業の長期にわたる共生を目指し、さまざまな課題の解決に向けたサービスを企業に提供していきます。
これらの「注力事業」に加え、競争力強化のための構造改革にグループ全体で取り組み、より強靭な事業ポートフォリオの構築を推進しました。長期的な成長を支える経営基盤の強化に向けて、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進による生産性の向上や情報基盤の強化、環境関連の取り組み、人材・人権関連の取り組みを加速させました。
DNPグループは引き続き、環境・社会・経済の変化に対応するだけではなく、自らが主体となってあらゆる変革を起こし、より良い未来をつくり出していきます。
これらの結果、当連結会計年度のDNPグループの売上高は1兆3,732億円(前期比2.2%増)、営業利益は612億円(前期比8.3%減)、経常利益は836億円(前期比3.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は856億円(前期比11.8%減)となりました。また、DNPグループが収益性指標の一つとしている自己資本利益率(ROE)は7.9%となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
情報イノベーション事業は、POP(店頭販促ツール)・商業印刷物・ビジネスフォーム等の紙媒体が減少したものの、金融機関向けのICカードやマイナンバーカード、政府の経済対策案件のBPO(Business Process Outsourcing)事業等が増加し、全体で増収となりました。
イメージングコミュニケーション事業は、主力の米国に加え、欧州・アジアの市場でも、写真の撮影・プリント用の部材とサービスが好調に推移し、増収となりました。
出版関連事業は、雑誌等の紙媒体の市場縮小にともなう印刷受注減に加え、紙と電子の両方に対応したハイブリッド型総合書店「honto」が前年の巣ごもり需要からの反動の影響を受け、減収となりました。
その結果、部門全体の売上高は7,202億円(前期比3.0%増)となりました。営業利益は、注力事業の売上増加や為替のプラス効果がありましたが、出版関連事業の減収のほか、原材料・エネルギー・物流関連のコスト上昇の影響を受け、267億円(前期比3.2%減)となりました。
包装関連事業は、70年以上にわたって身近な食品・日用品等のパッケージを展開してきた強みを活かし、人々の暮らしをより心豊かなものにデザインしていく取り組みを強化しました。また、環境に対する人々の意識の高まりを受けて、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING」の開発・販売にも努めました。その結果、フィルムパッケージは数量が前年並みとなりましたが、価格転嫁が進み、プラスチック成型品も増加したことにより、当事業全体で増収となりました。
生活空間関連事業は、国内の新設住宅着工戸数減少にともなって住宅用の内外装材が落ち込み、海外向けもインフレによる景気低迷の影響を受けて欧米市場を中心に減少しましたが、価格転嫁に努めたことによって前年並みとなりました。
産業用高機能材関連事業は、国際的なインフレを背景にスマートフォンやノートPC等の需要低迷が続き、IT向けのリチウムイオン電池用バッテリーパウチが減少しました。一方、自動車の生産回復にともない車載向けのバッテリーパウチが増加したほか、太陽電池用の封止材が世界的な需要拡大によって増加し、当事業全体では前年並みを確保しました。
その結果、部門全体の売上高は4,002億円(前期比3.4%増)となりました。営業利益は、原材料やエネルギー等のコスト上昇分の価格転嫁にタイムラグが生じたことに加え、収益性の高い注力事業も伸び悩んだため、73億円(前期比45.8%減)となりました。
ディスプレイ関連製品事業は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが、スマートフォンの有機ELディスプレイ採用拡大にともなって堅調に推移しました。一方で光学フィルムが、国内の巣ごもり需要からの反動減や世界的な消費低迷によるサプライチェーン全体の在庫調整の影響で減少したため、当事業全体では減収となりました。
電子デバイス事業は、伸長していた半導体市場が減速し、これにより半導体パッケージ用部材のリードフレーム等が、一部で顧客企業の在庫調整の影響を受けて期の後半で減少しましたが、年間では前年を上回りました。また、半導体製造用フォトマスクも、顧客企業の製品開発向けの需要が堅調に推移し、当事業全体で増収となりました。
その結果、部門全体の売上高は2,035億円(前期比3.6%減)となりました。営業利益は、メタルマスクやフォトマスクなどの事業が伸長したことに加え、為替のプラス効果もあり、469億円(前期比1.0%増)となりました。
原材料価格や物流コストの上昇の影響にともない、大型PETボトル商品や小型パッケージ商品等の価格改定を実施しました。また、物価高騰にともなう生活者の節約志向に対応した“まとめ売り”企画や、SDGsへの意識の高まりを受け、環境にやさしいラベルレス商品の展開などに注力しました。
その結果、部門全体の売上高は、コンビニエンスストアでの販売が回復したほか、飲食店やネット販売の伸長もあり、516億円(前期比3.8%増)となりました。営業利益は、価格改定やコストダウンに努めましたが、原材料やエネルギー等の価格高騰の影響が大きく、6億円(前期比12.9%減)となりました。
当連結会計年度末の資産、負債、純資産については、総資産は、投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べ462億円減少し、1兆8,303億円となりました。
負債は、補修対策引当金や繰延税金負債の減少などにより、前連結会計年度末に比べ460億円減少し、6,821億円となりました。
純資産は、当期利益による増加や、自己株式の取得、剰余金の配当、その他有価証券評価差額金の減少などにより、前連結会計年度末に比べ1億円減少し、1兆1,482億円となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ350億円減少し、2,583億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,197億円、減価償却費517億円などにより379億円の収入(前連結会計年度は820億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出503億円などにより250億円の支出(前連結会計年度は392億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出258億円、配当金の支払額171億円などにより524億円の支出(前連結会計年度は577億円の支出)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、飲料部門においては、受注を主体とした生産を行っていないため、受注状況の記載を省略しております。
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)セグメント間取引については相殺消去しております。
経営者の視点によるDNPグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
DNPグループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度(以下「前期」)に比べて290億円増加し、1兆3,732億円(前期比2.2%増)となりました。
売上原価は、前期に比べて300億円増加して1兆812億円(前期比2.9%増)となり、売上高に対する比率は前期の78.2%から78.7%となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べて45億円増加して2,306億円(前期比2.0%増)となり、この結果、営業利益は前期に比べて55億円減少して612億円(前期比8.3%減)となりました。
営業外収益は、受取配当金、持分法による投資利益の増加等により前期に比べて81億円増加して266億円(前期比43.9%増)となり、営業外費用は、寄付金の増加等により前期に比べて1億円増加して42億円(前期比4.3%増)となりました。この結果、経常利益は前期に比べて24億円増加して836億円(前期比3.0%増)となりました。
特別利益は、退職給付制度改定益の減少等により、前期に比べて101億円減少して444億円(前期比18.5%減)となり、特別損失は、固定資産売却損、固定資産除却損の減少や、減損損失の増加等により前期に比べて5億円減少して84億円(前期比6.0%減)となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は856億円(前期比11.8%減)となりました。
DNPグループの経営成績に重要な影響を与えた要因は以下のとおりです。
当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、コロナ禍からの社会・経済活動の回復に加えて、人々の働き方や暮らしを変える取り組みが徐々に進みました。国内では特に、今年に入ってから規制等が緩和され、インバウンド需要も回復傾向にあるなど、緩やかな景気の持ち直しの動きが見られました。一方で、地政学リスクの顕在化やグローバルサプライチェーンの不安定化などによって、原材料やエネルギーの価格、物流コストの上昇などが続きました。海外の多くの地域でも、インフレと金融引き締め等によって景気の減速が見られるなど、国内外の事業環境は厳しさを増しました。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
情報コミュニケーション部門については、出版印刷物や商業印刷物の伸び悩みに加え、ハイブリッド型総合書店「honto」では、前年の巣ごもり需要からの反動の影響があったものの、イメージングコミュニケーション事業のほか、金融機関向けのICカードやマイナンバーカード、政府の経済対策案件のBPO事業等が増加した結果、部門全体の売上高は前期比3.0%増の7,202億円となりました。営業利益は、原材料・エネルギー・物流関連のコスト上昇の影響などによって、前期比3.2%減の267億円となりました。営業利益率は、前期の4.0%から0.3ポイント低下し、3.7%となりました。
生活・産業部門については、包装関連事業は、フィルムパッケージは数量が前年並みとなりましたが、価格転嫁が進み、プラスチック成型品も増加したことにより、当事業全体で増収となりました。生活空間関連事業は、住宅用の内外装材が国内向け海外向けとも落ち込みましたが、価格転嫁に努めたことによって前年並みとなりました。産業用高機能材関連事業は、IT向けのリチウムイオン電池用バッテリーパウチが減少した一方で、車載向けのバッテリーパウチが増加したほか、太陽電池用の封止材も増加し、当事業全体では前年並みを確保しました。その結果、部門全体の売上高は前期比3.4%増の4,002億円となりました。営業利益は、原材料・エネルギー等のコスト上昇分の価格転嫁にタイムラグが生じたことや、注力事業の伸び悩みもあり、前期比45.8%減の73億円となりました。営業利益率は、前期の3.5%から1.7ポイント低下し、1.8%となりました。
エレクトロニクス部門については、ディスプレイ関連製品事業は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが、堅調に推移しましたが、光学フィルムが減少したため、減収となりました。電子デバイス事業は、フォトマスクでは、顧客企業の製品開発向けの需要が堅調に推移したほか、半導体パッケージ用部材のリードフレーム等も、期の後半で減少しましたが、年間では前年を上回り、増収となりました。その結果、部門全体の売上高は前期比3.6%減の2,035億円となりました。営業利益は、メタルマスクやフォトマスクなどの事業が伸長したことに加え、為替のプラス効果もあり、前期比1.0%増の469億円となりました。営業利益率は、前期の22.0%から1.1ポイント上昇し、23.1%となりました。
飲料部門については、コンビニエンスストアでの販売が回復したほか、飲食店やネット販売の伸長もあり、部門全体の売上高は前期比3.8%増の516億円となりました。営業利益は、価格改定やコストダウンに努めましたが、原材料やエネルギー等の価格高騰の影響が大きく、前期比12.9%減の6億円となりました。営業利益率は、前期の1.4%から0.2ポイント低下し、1.2%となりました。
セグメント資産の状況については、情報コミュニケーション部門は前期末に比べて、654億円減少して8,177億円(前期末比7.4%減)となりました。
生活・産業部門は前期末に比べて、53億円減少して4,533億円(前期末比1.2%減)となりました。
エレクトロニクス部門は前期末に比べて、69億円増加して2,424億円(前期末比3.0%増)となりました。
飲料部門は前期末に比べて、9億円減少して481億円(前期末比1.9%減)となりました。
報告セグメント合計では前期末に比べて、647億円減少して1兆5,616億円(前期末比4.0%減)となりました。
DNPグループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期末に比べ350億円減少し、2,583億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,197億円、減価償却費517億円などにより379億円の収入(前期は820億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出503億円などにより250億円の支出(前期は392億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出258億円、配当金の支払額171億円などにより524億円の支出(前期は577億円の支出)となりました。
a.財務戦略の基本的な考え方
DNPグループは、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値の創出のため、成長領域を中心とした事業へ集中的に事業投資(研究開発投資、設備投資、戦略的提携やM&A投資)を行うとともに、それらを支える人財投資に経営資源を投入していきます。そのほか、資本効率の向上、財務基盤の安定化と株主還元の実施など、さまざまな資本政策を総合的に勘案して推進していきます。
b.DNPグループの資本の財源
DNPグループは、主に営業活動により確保されるキャッシュ・フローにより、成長を維持・発展させていくために必要な資金を確保しております。
設備投資資金などの資金需要については自己資金で賄うことを基本としておりますが、自己資金に加え、他人資本も活用し、成長投資資金を調達していきます。
c.DNPグループの経営資源の配分に関する考え方
DNPグループは、成長領域を中心とした注力事業への投資などを進めていきます。
重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源泉等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)新設等」に記載のとおりであります。
また、利益の配分については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。
DNPグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。
DNPグループは、新規事業の創出・新製品開発から生産技術の開発に至るまで、幅広い研究開発活動を続けており、その活動は事業活動の原動力として機能しております。
DNPグループの研究開発は、研究開発・事業化推進センター、技術開発センター、AB(アドバンストビジネス)センター及び各事業分野の開発部門を中心に推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
当連結会計年度における各事業部門の主な研究開発とその成果は次のとおりです。
(1) 情報コミュニケーション部門
コンテンツ分野では、アニメ市場のグローバル成長が期待されていますが、制作負荷の高さからアニメ化が進まない優れたマンガが存在しています。そのため、マンガ原稿の活用により制作負荷を大幅に低減できる独自のアニメーション制作フロー「ライトアニメ」を開発しました。この制作フローを軸に、マンガを中心としたコンテンツの創出・制作・変換を支援する「Manga Creative Studio」を構築し、デジタルシフトが進むコンテンツ市場の発展を支援していきます。
認証・セキュリティ分野では、社用車の安全運転管理に関して管理者の負担軽減や安全管理の精度向上を狙いとしたシステム化が進んでいます。そこで、電子鍵の不正な取得を防止する認証・セキュリティの機能が組み込まれた「デジタルキープラットフォーム」を活用し、社用車の効率的な管理を支援する「社用車管理サービス」を開発しました。モビリティやスマートシティ等の領域で、認証・セキュリティの機能を拡充して、ヒトとモノの移動を安全・安心に支えるサービスを推進していきます。
BPO(Business Process Outsoursing)分野では、接客現場におけるBPOサービスの派遣スタッフの折衝力や対応力などのスキル標準化が課題となっています。そのため、人の多様な行動や振る舞いを統合的に捉え、人の特徴・状態・関心等を推定し把握する「行動認識AI(人工知能)」を本BPOサービスに導入しました。接客スタッフをはじめとする来訪者の行動データの収集・蓄積・分析を通して、派遣スタッフのパフォーマンスやエンゲージメントの向上を実現していきます。
XRコミュニケーション分野では、地域活性化のための課題解決や魅力向上にデジタル技術の活用が図られています。そのため、リアルとバーチャルを融合する「XR(Extended Reality)」の技術を活用し、自治体や施設管理者公認のメタバースやCG空間を構築・運用する「地域共創型XRまちづくり」の事業を推進しています。地域の課題解決につながる空間開発や機能設計により、リアルな空間との連動を強化することで体験価値向上を図り、地域活性化を目指します。
イメージングコミュニケーション分野では、「写真」の価値を高める撮影サービスの提供や証明写真画像の活用が図られています。証明写真機「Ki-Re-i」を活用したリアルな撮影とイベントや観光地でのバーチャル背景とを融合させた新たなフォトプリント体験の提供や、マイナンバー申請が可能な機種「ID-Spot」を拡充しました。
当部門に係る研究開発費は
(2) 生活・産業部門
包装分野では、脱アルミの動きが加速しています。そのため、「DNP透明蒸着フィルムIB-FILM®」の開発・提供で培った技術・ノウハウを応用して、高いバリア性を有するハイバリアアルミ蒸着フィルムを開発しました。酸素・水蒸気バリア性と遮光性が一般的なアルミ蒸着フィルムと比較して大幅に向上できたため、アルミ箔の代替品として使用でき、材料調達時、製造時を合わせたサプライチェーンでCO2排出量の削減に繋がります。今後も独自の材料加工技術を生かして、バリア性や耐熱性、強度などの性能を高めた製品ラインナップを充実させ、環境配慮製品・サービスの開発を進めていきます。
生活空間分野では、DNPの印刷・塗装技術を生かした化粧金属板で、鋼製ドア・エレベーター・間仕切りのほか、医療施設・高齢者施設の内装等で、幅広い用途で使用されるエリオ鋼板において、PIAJ製品認証(※)を取得した抗ウイルス製品を「DNP抗菌・抗ウイルスマテリアル『Pure Effects®』」のラインアップに加えました。これからも「安全・安心」と「環境配慮」に加え、「衛生」に配慮した取り組みを推進していきます。
※PIAJ製品認証とは、光触媒工業会が性能、利用方法等が適切であることを認めた光触媒製品に与える製品認証制度です。
モビリティ分野では、既存のガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトを加速する技術として、非接触でEVに充電するワイヤレス充電技術が注目を集めています。DNP、ダイヘン、双日の3社は、DNPが開発した「ワイヤレス充電用シート型コイル」を搭載した車両側受電コイルおよび地上側送電コイル設備のシステム化に成功しました。2023年2月にワイヤレス充電機能を搭載した商用EVでは国内初となる改造車登録の認可を軽自動車検査協会より取得し、実用化に向け公道での走行を開始しました。
高機能マテリアル分野では、透明蒸着バリアフィルムを使用した中身の視認性と防錆機能を両立した包装材を開発し、2022年12月に開催された「サステナブルマテリアル展」に出展しました。金属製の部品等が長期間の保管や輸出の際に温度・湿度の影響で錆が発生する課題を解決するため、防錆添加剤を使用せず、中身の視認性と防錆機能を両立した包装材となります。部品の脱脂・洗浄が不要なため、洗浄剤や水の削減に繋がり、工程の環境負荷を低減できるとともに、透明性があるため保管・輸送中の検査で開梱せずに検査をすることが可能となります。
当部門に係る研究開発費は
(3) エレクトロニクス部門
データ流通量の急拡大を背景に、異なる複数の半導体チップを1つの基板上に高密度で実装して性能向上を実現する次世代半導体パッケージが注目されています。そのため、高密度実装用基板として、“TGV(Through Glass Via:ガラス貫通電極)ガラスコア基板”を開発しました。基板の表裏の配線を接続するために貫通孔の内壁に金属膜を薄く形成する「コンフォーマルタイプ」で、ガラスコア基板の板厚の制約が少ない特長を有します。開発済みのガラス貫通孔に銅を埋め込む「充填タイプ」に加えて、今回開発した「コンフォーマルタイプ」も製造プロセスの大型化が可能で、パネルサイズ約50cm角へのスケールアップを進めます。
道路区画線整備の工事で基準線・区画線等を路面上に表示する用途や、高速道路の規制工事でスムーズな車線変更を促すために表示する用途で、明るく明瞭なパターンを投影する要望があります。このような作業の効率化やコスト削減、車線誘導技術などのニーズの高まりに対して、多様な光制御技術を駆使し、遠方まで光で線や矢印などさまざまなパターンを明瞭に表示できるパターンライトを開発し、試験販売を開始しました。
当部門に係る研究開発費は
(4) 飲料部門
該当事項はありません。