第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループは、前中期経営計画(2021年度から2024年度までの4ヵ年計画)において、経営理念「印刷事業を核に、生活・文化・情報産業として社会に貢献する」のもと、グループ経営ビジョン「誠実なコミュニケーションと市場をリードする技術力でお客さまの思いをカタチにし、新たな価値を創出し続ける企業グループ」を掲げ、全社視点での重点施策と各事業における施策を遂行してまいりました。

その間、社会環境の変化が加速度を増し、企業に対する社会や市場からの要請が高度化してまいりました。そこで、当社グループがステークホルダーの期待に応えて持続的な成長を続けるには成長戦略の明確化が不可欠との認識のもと、当社グループの価値観やマテリアリティ等をつぶさに見直し、2025年5月に理念体系を再構築しております。

新しい経営理念「創意と熱意で新たな価値を生み出し、共にある未来を実現する」と、経営理念の実現に向け10年後の2034年度にありたい姿として長期ビジョン「NexTOMOWEL2034 共に挑もう、共に超えよう。」を定め、達成への長期戦略と2025年度を起点とする3カ年の中期経営計画を策定しております。新たな長期戦略と中期経営計画の概要は、次の(2)に記載のとおりです。

 

(2) 中長期的な経営戦略

<長期戦略>

当社グループは、大きく出版印刷や販促・業務支援、ICカードなどを扱う「情報系事業」と、チューブや紙器などの各種包材と吸湿フィルムなどの機能性材料を扱う「生活・産業資材系事業」を行っております。長期戦略はこの二つを柱とし、選択と集中による事業ポートフォリオの変革を進め、資本効率を高めながら営業利益120億円以上を実現することを目標としております。

情報系事業では、売上高の規模を維持しつつ事業の重心を印刷から情報サービス(非印刷)へ移し、情報加工を中心とした質の高いサービスの提供をめざします。生活・産業資材系事業では、食品や日用品の包材製造を引き続き中心としつつ、コア技術である材料加工技術を生かした独自製品の開発で国内外の成長市場・事業分野への展開を強化してまいります。

投資については、2034年度までに総額700億円規模を計画しております。研究開発や人的投資、M&Aを含めた成長投資に400億円程度、生産性向上に向けた設備やDX投資など既存事業への投資に300億円程度を見込んでおります。

 

<中期経営計画>

2025年度からの新たな中期経営計画は長期戦略のファーストステップの位置付けであり、躍進に向けた足場を固めるフェーズです。従来の延長線上ではない新しい挑戦によって既存事業の収益性向上と成長事業の着実な育成に取り組むとともに、事業戦略を支える財務戦略、サステナビリティ経営の深化や人的資本の強化などの非財務戦略にも注力してまいります。

目標は、最終年度にあたる2027年度に営業利益45億円以上、ROE8%以上といたしました。さらに、企業価値の向上と安定的な株主還元を実現するため、DOE3.5%を目安とした配当を行ってまいります。

情報系事業では、まんがなどのIP(知的財産)を活用したオリジナルコンテンツや、BPO等の情報サービス機能の開発及び拡販の強化などで収益を拡大し事業の柱に育てるとともに、生産改革を一層推進してまいります。

生活・産業資材系事業では、効率化投資や継続的な価格改定も進めて食品・日用品向け包材の事業規模を拡大しつつ、高い成長性と収益性が見込める「海外パッケージ」「機能性材料」「産業用包材」の育成に注力します。海外パッケージはラミネートチューブだけでなく軟包装等にも注力して多角化を進めます。機能性材料と産業用包材は、材料加工技術を核とした高付加価値製品の開発・拡販に努めて、早期収益化に取り組みます。

各施策の着実な実行により、中期経営計画の達成と長期戦略で描いた事業ポートフォリオ像の実現を確かなものとしてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 当社グループは、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ課題を収益機会や成長性につながる重要な経営課題と認識し、持続可能な社会の実現及び当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上をめざす「サステナビリティ経営」を推進しております。

 企業の成長は、株主・投資家をはじめ、顧客企業や消費者、取引先、従業員、地域社会など多様なステークホルダーから提供される有形・無形のリソース(資本)によって成り立つものと認識しております。当社グループは、外部環境やステークホルダーから受ける正・負の影響に的確に対応するとともに、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組むことで新たな価値を創出し、その価値をステークホルダーへ適切に還元することで、持続的な成長を実現しております。

 価値創出の原動力である人的資本への取り組みとして、価値創造人材の活躍に向けた多様性の確保や労働環境の整備を進めております。また、環境や人権課題等のESGへの取り組みについては、サプライチェーンへの展開を含め、着実に実行しております。これらの取り組みとともに、ステークホルダーとの透明性のある対話と誠実なコミュニケーションを通じて、経営理念に掲げる「共にある未来の実現」をめざしてまいります。

 

ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティ経営の実現に向けた総合的な施策を検討・推進するため、取締役会の監督・指示のもと、サステナビリティ推進会議を設置しております。本会議では、外部環境が当社グループに与える影響や、企業活動が社会・環境・経済に与える影響を踏まえ、気候変動対応や人的資本への投資など、中長期的な成長の基盤となる重要課題について協議を行い、取締役会に報告・提言しております。また、重要な施策の進捗や成果については、指名報酬委員会を通じて経営陣の報酬制度に反映することで、企業価値の持続的向上と経営陣のインセンティブの整合を図っております。

 サステナビリティ推進会議は、代表取締役社長を議長とし、常務執行役員以上で構成され、必要に応じて社外有識者等を招聘します。本会議では、外部から受ける経営への影響を評価し、当社グループ全体のサステナビリティに関する重要な方針やマテリアリティ(重要課題)、総合的施策等についての協議を行っております。2024年度は、外部有識者とのダイアログを開催し、マテリアリティの見直しに向けたご意見をいただきました。これらの協議結果や意見をもとに、取締役会への定期的な報告・提言を行い、サステナビリティの取り組みをグループ全体に反映しております。(2024年度の開催実績は9回)

 当社グループのサステナビリティ経営推進に関するガバナンス体制は、以下のとおりであります。

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 2024年度開催の取締役会におけるサステナビリティに関する主な議論は以下のとおりであります。

■マテリアリティの重点取り組みテーマ・KPIのモニタリング

■理念体系とマテリアリティの見直しについて

■人権デューデリジェンスの取り組みについて(リスク評価及び対策優先課題の特定等)

 

戦略及び指標・目標

 当社グループでは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上をめざし、社会課題に与える影響を考慮したうえで、中長期的な価値創造能力に重大な影響を与える要素をマテリアリティとして特定しております。2023年度に設定したマテリアリティの重点取り組みテーマ及びKPIに基づき、取り組み状況は取締役会で定期的にモニタリング・評価を行い、今後の取り組み強化につなげていきます。

 重点取り組みテーマにおけるKPIの2024年度実績は以下のとおりであります。なお、当社グループは、2024年度にマテリアリティの見直しを実施し、2025年度より新たなマテリアリティに基づく取り組みを開始しております。本報告書におけるKPIの実績については、従来のマテリアリティに基づき記載しております。

 

◆価値創造領域

多様なライフスタイル ~情報コミュニケーションで、豊かさと幸せを実感できる暮らしをつくる

重点取り組みテーマ

KPI

2024年度実績

誰もがやりがいをもって働ける環境の提供

スマートな働き方支援ソリューションの提供数

(2030年度までに300社以上)

22社

誰もが自らが望む形で生涯学び続けられる機会の提供

生涯学習向けソリューションの提供数

(2030年度までに250社以上)

15社

多様なライフスタイルに合わせたさまざまな体験価値の創出

体験価値創出ソリューションのコンテンツ数

(2030年度までに400本以上)

36本

スマート社会 ~情報セキュリティで、誰もが安心・便利な社会をつくる

重点取り組みテーマ

KPI

2024年度実績

いつでもどこでも簡単に手続きや決済が可能な環境の提供

次世代金融ソリューションのサービスラインアップ数

(2030年度までに5本以上)

2本

いつでもどこでも簡単に行政手続きが可能な環境の提供

スマート自治体向けソリューションの提供数

(2030年度までに導入自治体数20以上)

1団体

すべての人が健康に暮らせる社会への貢献

ヘルスケアソリューションのサービスラインアップ数

(2030年度までに10本以上)

3本

循環型社会 ~革新的なパッケージとサービスで、サステナブルな未来をつくる

重点取り組みテーマ

KPI

2024年度実績

環境配慮製品の提供

環境に配慮した包材・容器の売上高比率

(2030年度までに100%)

39.0%

資源循環システムへの貢献

プラスチック資源循環システムの構築

(2030年度までにPIR※確立とリサイクル材の本格的利用開始)

共同印刷グループ内でのプラスチック循環開始

フードロスの削減に貢献

食品向け包材・容器におけるフードロスソリューションパッケージの売上高比率

(2030年度までに20%以上)

9.5%

 

※PIR(ポストインダストリアルリサイクル):市場に出る前の製品製造工程で発生した廃棄物をリサイクル・再利用すること

 

◆経営基盤領域

地球環境との共生

重点取り組みテーマ

KPI

2024年度実績

気候変動の緩和と適応

GHG排出量削減率

(2030年度までに2022年度を基準とし42%以上)

9.2%

生物多様性の保全

FSC認証紙の調達率<重量ベース>

(2030年度までに30%以上)

25.2%

原材料木材の合法性が確認された用紙の調達率

<購入金額ベース>(2030年度までに100%)

81.2%

価値創造人材の活躍

重点取り組みテーマ

KPI

2024年度実績

・多様な価値観の活用

・価値創造人材の確保と強化

・能力を最大限発揮できる環境の整備

女性管理職比率

2025年度まで10以上)

9.4%※1

デジタル人材※2比率

2030年度までにデジタルを活かせる人材15以上、デジタルを作れる人材15%以上)

デジタルを活かせる人材1.9%、

デジタルを作れる人材10.0%※3

男性の育児休業取得率

2030年度まで80以上)

103.1%※4

年次有給休暇平均取得率

2030年度まで70以上)

65.6

責任ある企業行動

重点取り組みテーマ

KPI

2024年度実績

企業倫理と公正な事業慣行

コンプライアンス教育の受講率(毎年100

100

人権の尊重

人権教育の受講率(毎年100

100

人権デュー・デリジェンス(人権DD)の推進

(2024年度までにDD体制の構築、以降人権DDを継続実施)

人権尊重分科会を中心に人権DDを推進し、経営層の討議等を踏まえ対策優先課題を特定・開示

情報セキュリティとプライバシー

情報セキュリティ教育の受講率(毎年100%)

100%

サイバーセキュリティ訓練の実施(1回/年)

1回実施

統合的なリスクマネジメント

サステナブル調達アセスメントのサプライヤーカバー率<取引金額ベース>

(2030年度までに90%以上)

73.9%

リスクマネジメント活動の高度化

(2030年度までにグループ重大リスク対応の有効性向上及びリスクマネジメント領域の拡大/全従業員のリスク感度向上)

・共同印刷単体の事業部門等を対象にERM教育及びリスクアセスメントを展開

・重大リスク対応策の遂行状況のモニタリング(PDCA)

(注)経営基盤領域の各KPIの対象範囲は、当社及び国内の連結子会社としております。ただし、「GHG排出量削減率」、「人権デューデリジェンスの推進」、「サステナブル調達アセスメントのサプライヤーカバー率」、「リスクマネジメント活動の高度化」については、海外の連結子会社を含みます。なお、「FSC認証紙の調達率」、「原材料木材の合法性が確認された用紙の調達率」、「女性管理職比率」については当社単体としております。

※1.参考:2025年4月1日時点の数値は10.4%

※2.当社グループのデジタル人材の定義

デジタルを活かせる人材:ビジネスモデルやビジネスプロセスの変革をリードする人材

デジタルを作れる人材:市民開発者や部門アナリスト(各部門)、システム開発者やデータサイエンティスト(IT系部門)など

※3.数値は当社単体のみ 連結子会社は展開準備中

※4.出産年度と育児休業等取得年度が異なる従業員を含むため、100%を超過

 

リスク管理

 当社グループでは、外部環境が経営に及ぼす影響や、通常業務を通じて得られる知見を踏まえ、リスク及び機会の識別・評価を行っております。サステナビリティ推進会議においては、識別されたリスク及び機会の影響度を評価し、重要度に応じた対応策を検討・協議したうえで、取締役会へ報告しております。2024年度は、当社グループの中長期的な価値創造能力に重大な影響を及ぼすものとして特定しているマテリアリティに基づき、重点取り組みテーマ及びKPIの進捗状況を取締役会においてモニタリング・評価しました。

 また、グループ全体のリスク管理体制として、全社リスクマネジメント(ERM)を運用しております。ERMでは、経営目標の達成や財務状況に与える影響度及び対応状況を踏まえ、重要度の高いリスク項目を絞り込んだうえで、重大リスクとして特定し、継続的にモニタリング・評価を行っております。これらの重大リスクとマテリアリティは相互に連携しながら、グループ全体でリスク対応を推進しております。

 当社グループの全社リスクマネジメントの詳細については、「3.事業等のリスク」を参照ください。

 

(2)気候変動への対応

 当社グループは「地球環境との共生」をマテリアリティの一つとして特定し、気候変動がもたらす影響を重要な経営課題として認識しております。気候変動は、事業活動におけるリスクであると同時に、新たな事業創出の機会でもあると捉え、2050年カーボンニュートラルの実現を目標に、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しております。その一環として、TCFD提言に基づき、気候変動に関連するリスク及び機会を特定し、シナリオ分析などを通じて事業活動や財務への影響を評価した上で、対応策を講じ、その結果を経営判断や中長期的な戦略策定に反映しております。また、2024年4月には、サプライヤーに遵守いただく事項を定めた「共同印刷グループサステナブル調達基準」を改定し、環境関連の項目を拡充しました。これにより、気候変動をはじめとする環境課題への対応を、サプライチェーン全体で推進しております。

 

ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般に関するガバナンスに組み込まれております。詳細については、「(1)サステナビリティ全般_ガバナンス」を参照ください。

 

戦略

 当社グループでは、TCFD提言に基づく気候変動のシナリオ分析を、事業部門を対象に2つのシナリオ(1.5℃/2℃及び4℃)を用いて実施しました。今後想定されるリスクと機会を幅広く洗い出したうえで、経営層や各事業部門を中心とした協議・検討を経て、当社グループの事業に大きな影響を及ぼす可能性の高い事象とその影響度を評価し、その評価結果に基づいて対応策の検討・策定を行いました。

 

◆対象シナリオ

シナリオ

想定事象

主な参照シナリオ

1.5℃/2℃

シナリオ

・日本を含む世界各国でカーボンプライシングの導入が進み、世界的に炭素税が上昇する

・消費者の嗜好の変化により、低炭素・脱炭素の製品・サービスへの需要が拡大する

・ステークホルダーからの脱炭素化要求が高まり、対応できない企業が淘汰される

・サプライチェーン全体における脱炭素化の加速により、操業及び製造コストが増加する

IEAWorldEnergyOutlook2021 (SDS,NZE2050)

IEAWorldEnergyOutlook2018 (SDS)

IPCC (SSP1-1.9,SSP1-2.6)

4℃シナリオ

・日本を含む世界各国でカーボンプライシングの導入が進まない

・気温上昇に伴い、衛生ニーズなどの新たな消費者ニーズが創出される

・自然災害が激甚化し、生産拠点の被災による操業停止などのリスクが高まる

IEAWorldEnergyOutlook2021 (STEPS)

IEAWorldEnergyOutlook2018 (NPS)

IPCC (SSP5-8.5)

 シナリオ分析の結果、1.5℃/2℃シナリオにおいては、炭素税の導入による操業コストの増加や、エネルギー価格の変動に伴う原材料コストへの影響が大きいことを確認しました。これらのリスクに対しては、温室効果ガス(GHG)排出量の削減と、事業活動の効率化を推進します。一方で、環境配慮型製品・サービスの販売拡大をはじめとする、環境負荷低減に貢献する新たな顧客ニーズを的確に捉えることで、事業成長の機会となり得ることを確認しました。

 また、4℃シナリオにおいては、自然災害の激甚化に伴う物理リスクが事業継続の阻害要因となり得ますが、分析の結果、各生産拠点におけるリスクは軽微でした。今後もリスク分析の精緻化及び災害などへの事前対応を進めることで影響の最小化を図っていきます。

 今後も定期的かつ継続的にシナリオ分析を実施することでその精度を高め、想定されるリスクに柔軟に対応しながら、不確実な将来においても持続可能でレジリエントな経営体制の構築を目指していきます。一方、機会については、気候変動の動向や市場の変化、顧客との対話を重視しつつ、持続的な企業価値の向上につながるよう、柔軟かつ戦略的に取り組みの検討・展開を進めていきます。

 

◆リスクと機会の特定

種別

ドライバー

概要

期間

※1

1.5℃
シナリオ
影響度

※2

4℃
シナリオ
影響度

※2

物理リスク

急性リスク

サイクロン、洪水などの

異常気象の激甚化

洪水・浸水による生産拠点操業に影響するリスクの増加

中長期

慢性リスク

降雨パターンの変化、気象パターンの極端な変動性

降水・気象パターン変化による災害対策コストの増加

中長期

移行リスク

政策及び法規制

GHG排出の価格付け進行(カーボンプライシング)

炭素税や排出権取引制度の導入によるコストの増加

短期

GHG排出量の報告義務の強化

省エネ政策の強化による設備投資の増加

短期

既存製品/サービスに

対する義務化/規制化

環境低負荷プラスチックへの切り替えによるコストの増加

短期

技術

既存製品/サービスの低炭素オプションへの置換

低炭素化への対応遅延による市場の喪失と収益の減少

短期

市場

原材料コストの高騰

サプライチェーン全体における脱炭素化の加速

短期

顧客行動の変化

CO2排出を伴う既存ペーパーメディアの減少

短期

評判

ステークホルダーの不安増大、またはマイナスのフィードバック

投資対象からの除外、株価下落、

資金調達の困難化

中長期

機会

資源効率

効率的な生産及び

流通プロセスの使用

エネルギー使用量削減及び製造コストの削減

短期

製品及びサービス

低排出商品及びサービスの開発・拡大

環境要件への適合や製品ライフサイクルにおけるCO2排出量算定による市場優位性の確保

短期

消費者によるサステナブル志向な購買行動の拡大

短期

消費者の嗜好の変化

デジタルメディア需要の拡大

短期

市場

新しい市場へのアクセス

気温上昇による消費者ニーズの変化

短期

低炭素型ビジネスモデル開発の推進

短期

※1 期間  短期:2023~2030年頃まで 中長期:2030~2050年頃まで

※2 影響度 リスク:基準=営業利益に対する影響額 5億円超(大)/ 2億円超(中)/ 2億円未満(小)

    機会:基準=売上高に対する影響額   10億円超(大)/ 3億円超(中)/ 3億円未満(小)

 

リスク管理

 気候変動に関連するリスク管理は、サステナビリティ全般に関するリスク管理の一環として実施しており、当社グループの持続的な成長に影響を及ぼしうる重要な課題の一つとして位置づけております。これらのリスクは、全社的リスクマネジメント(ERM)の枠組みとも連携しながら、組織横断的に対応を進めております。詳細については、「(1)サステナビリティ全般_リスク管理」を参照ください。

 

指標・目標

 当社グループでは、長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現を両立すべく、「2050年カーボンニュートラル宣言」を掲げております。これは、脱炭素社会への対応を中長期的な競争力の源泉と位置づけ、資本コストの低減や収益性の向上を図るための経営戦略の指針となるものです。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、事業活動に伴うGHG排出量(Scope1+2)については、2022年度を基準年として2030年度までに42%削減する目標を設定しております。また、Scope3については、サプライヤーとの連携を強化し、支出額ベースで90%のサプライヤーが2030年度までにSBT※に準拠したGHG排出量削減目標を設定することをめざしております。なお、当社グループのSBT認定については、2024年度に申請を完了し、2025年度内の取得をめざしております。

※SBT:「Science Based Targets」の略、「科学的根拠に基づく目標」の意味。

パリ協定と整合性のある温室効果ガス排出削減目標を立てていることを示す国際認証。

 

◆GHG排出量削減ロードマップ

GHG排出量(Scope1+2)[t-CO2

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◆GHG排出量実績(海外含むグループ全体)

GHG排出量

(単位:t-CO2

2022年度(基準年)

排出量

2024年度

排出量

基準年比

削減率

Scope1+2+3

492,916

441,489

10.4%

 

Scope1+2

46,387

42,133

9.2%

 

Scope3

446,529

399,356

10.6%

 

 

Scope3_カテゴリー1

(購入した製品・サービス)

291,213

264,775

9.1%

 

 

Scope3_カテゴリー4

(輸送、配送 上流)

27,870

25,257

9.4%

 

 

Scope3_カテゴリー9

(輸送、配送 上流)

12,286

8,111

34.0%

 

 

Scope3_カテゴリー12

(販売した製品の廃棄)

86,408

72,073

16.6%

 

 

Scope3_その他

28,752

29,141

△1.4%

※1 2024年度にGHG排出量算定方法の見直しを実施したため、昨年度報告の実績に基づき、2022年度(基準年)、2023年度、2030年度(目標年)の数値を修正しました。なお、本修正による影響は軽微であると判断しております。

※2 当社グループでは、GHG排出量に関する暫定的な算定結果を報告書に記載しております。最終的な数値は、第三者保証プロセスを経て2025年8月末に確定予定であり、それに基づき変更が生じる可能性があります。確定後、必要に応じて開示内容を更新し、変更点についてはステークホルダーに適切に説明いたします。

 

◆施策の実行状況

 当社グループでは、気候変動への対応を事業戦略や調達戦略、設備投資・運用戦略などに統合的に組み込み、将来的な収益性と資本効率の向上をめざしております。2024年度は、原材料及びエネルギー調達を含む「サステナブル調達基準」を改定し、Scope3対応を起点としたバリューチェーン全体での環境負荷低減に向けた取り組みを推進しております。また、生産体制においては、老朽設備の更新や自動化設備の導入などによりエネルギー効率を高めるとともに、保全コストの抑制にもつなげる施策を推進しております。

 こうした取り組みの結果、Scope1+2のGHG排出量は、2023年度に14.7%、2024年度に9.2%と2年連続で基準年度(2022年度)比の削減を実現しております。2024年度は、使用電力の排出係数(電力会社公表値)の変動により削減幅がやや縮小したものの、当社グループの設備・運用改善による実質的な削減努力は継続しております。Scope3については、基準年度比で10.6%の削減を実現しました。これは、輸配送の効率化、分別活動の徹底、そして有価物化の推進といった、以前から実施している施策を継続的に強化した結果です。今後は、サプライヤーとの連携を一層強化し、削減率のさらなる向上を目指してまいります。

 今後は、低炭素・リサイクル素材を活用した製品の開発・拡充や、それに伴うバリューチェーン全体の見直しを通じて、事業ポートフォリオの高度化を図ってまいります。これにより、気候変動リスクの緩和と環境価値の創出を新たな成長機会として位置づけ、資本コストの最適化にもつなげていく考えです。

 

(3)人的資本への対応

 当社グループでは、「人材」を企業の競争優位性を高め、持続的な成長を実現するための重要な経営資本と位置づけております。すべての従業員が自らの能力を最大限に発揮し、価値を創造する「価値創造人材」として成長できるよう、人材に対する投資を積極的に行っております。

 

ガバナンス

 人的資本に関するガバナンスは、サステナビリティ全般に関するガバナンスに組み込まれております。

 詳細については、「(1)サステナビリティ全般_ガバナンス」を参照ください。

 

戦略

 当社グループでは、「人材育成及び社内環境整備方針」を定めるとともに、「価値創造人材の活躍」をマテリアリティとして特定しております。これらに基づき、目指すべきビジネスモデルや経営戦略に沿った多様な価値観を持つ人材の確保と活用、能力強化、そして、個々の能力を最大限に発揮できる職場環境の整備に取り組んでおります。

 

◆重点取り組みテーマ① 多様な価値観を持つ人材の確保と活用

 社会や事業環境の変化に対応し、新たな価値を社会に提供し続けるためには、多様な価値観を持つ人材が各自の視点や経験、能力を活かすことが重要です。当社グループでは、新たな価値創造と事業変革を牽引する多様な人材の確保と活用、定着に向けた施策を推進しております。

a.多様な人材の確保と活用

 新たな事業領域の拡大に向け、中核人材の強化のために自社にはない能力や経験をもつキャリア人材の採用を加速しております。また他社との人材交流や再雇用制度、自社内ではキャリアチャレンジ制度、自律的にキャリアを考えるキャリアデザイン制度等によって人材流動性を高めるなど、中長期的な企業価値の向上に努めております。

 

b.管理職の価値観の変革と女性活躍推進

 年齢や性別を問わず、潜在能力と意欲、変革力を持つ人材の早期登用を進める制度へ改定するとともに、マネジメント力向上を図る研修プログラムの導入を通し、管理職の意思決定の刷新と多様化を図っております。なかでも女性の登用については、女性管理職比率を2025年度中までに10%とする目標に向け順調に推移しており、部門長や執行役員にも女性を登用するなど、着実に変革を進めております。

 

◇女性管理職比率の推移(共同印刷単体)

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◆重点取り組みテーマ② 価値創造に向けた能力開発

 当社グループを取り巻く環境は、社会全体のデジタル化や生活者の価値観の変容など大きく変化しております。当社グループでは、こうした変化にしなやかに対応し、新たな価値を創造する人材を企業の持続的な成長を支える重要な経営資本として捉え、能力やスキルの開発と育成を推進しております。

 

a.デジタル人材の育成

 当社グループでは、「共同印刷グループDX戦略」のもと、企業としての競争力を強化し、成長性を高めるためにデジタル技術を活用した変革を推進しております。特に、デジタル人材の育成を重要視しており、デジタルリテラシーを持つ人材の確保と育成は、事業基盤の強化や新規事業領域の拡大に不可欠な要素と捉えております。当社グループでは、事業ポートフォリオに基づき、各種DX推進スキルの教育を強化し、グループ全体のデジタルリテラシーの向上を図っております。また、変革を自分ごととして捉え、既存の慣例や風土を乗り越えて新たな価値を創造するためのマインドセットにも力を入れております。

 

◇共同印刷グループのDX戦略の概要

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b.能力開発基盤の強化

 当社グループでは、従業員と組織のパフォーマンスを最大化する人材マネジメントを推進しております。特に自律的なキャリア形成支援に注力しており、2024年度には、当社の社内公募制度(キャリアチャレンジ制度)の利用拡大を図り、募集職場・応募者共に伸長しております。この施策により従業員が主体的に選択したポジションで働くことで、モチベーションが高まり、業務の生産性も向上しております。

 さらに、急速な事業環境の変化に対応するため、新たなスキルの習得や専門性の強化を重視し、オンライン学習サービスの継続導入や資格取得支援を強化しております。

 

◆重点取り組みテーマ③ 能力を最大限に発揮できる職場環境

 企業の生産性と競争力を向上させるには、従業員が働きがいを持てる職場環境を構築し、従業員エンゲージメントを高めることが重要です。当社グループでは、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方の促進やワークライフバランス、健康と安全といった、職場環境の整備に向けた取り組みを推進しております。

 

a.生産性の高い職場環境づくり

 長時間労働の是正や年次有給休暇の取得促進、健康経営の推進によって、従業員のエンゲージメント向上と組織の活性化につなげております。年次有給休暇については、グループ全従業員が年10日以上取得することを目標に掲げ、進捗を管理しながら取り組みを進めております。また、健康経営の推進については、労働生産性に影響を及ぼすプレゼンティーズムへの対応として、女性特有の健康課題に優先的に取り組むなど、課題の重要度に応じた取り組みを進めております。

 また、テレワークの導入をはじめとするハイブリッドワークの推進を通じて柔軟な働き方を促進し、働きやすく生産性の高い職場環境の整備に進めております。

 

b.仕事と家庭の両立支援

 従業員の仕事と家庭の両立を支援することで、優秀な人材の確保と定着、生産性向上を図るだけでなく、従業員自身が多様な価値観を獲得する機会と認識のもと、個の創造性向上につなげております。

 特に、男性の育児休業取得については目標値を設定し、グループ全体で推進しております。具体的な取り組みとして、従業員が望む両立が実現できるよう、マネジメント層への研修の実施や配偶者が出産予定の男性社員と人事部の面談を進めております。

 また、両立支援制度の多くは、法令よりも制度の適用期間を長く設定しており、当社独自の両立支援制度である「ライフサポート休業制度」では、不妊治療や子の不登校時にも休業を認めることで、従業員の離職防止と、従業員エンゲージメントの向上を図っております。

 

リスク管理

 人的資本に関連するリスク管理は、サステナビリティ全般に関するリスク管理の一環として実施しており、当社グループの持続的な成長に影響を及ぼしうる重要な課題の一つとして位置づけております。これらのリスクは、全社的リスクマネジメント(ERM)の枠組みとも連携しながら、組織横断的に対応を進めております。詳細については、「(1)サステナビリティ全般_リスク管理」を参照ください。

 

指標・目標

 人的資本に関する指標・目標は、マテリアリティの重点取り組みテーマ及びKPIに組み込まれております。詳細については、「(1)サステナビリティ全般_戦略及び指標・目標」を参照ください。

3【事業等のリスク】

[基本的な考え方]

企業を取り巻くリスクが増大かつ多様化する中、製品・サービスを安定的に供給し、事業の継続に努めることは、当社グループの社会的責務であると認識しております。その責務を全うするには、リスクを正しく認識して可能な限り低減すると共に、万が一発生した際には損失を最小限にとどめることが重要です。事業計画達成を阻害する経営リスクを未然に防ぐ「リスク管理体制」と不測の事態に対処する「危機管理体制」により、能動的かつ機動的なリスクマネジメントを行っております。

 

[体制]

当社グループのリスク管理については、通常の業務執行におけるリスクの顕在化を防ぐため、各部門が日常的なマネジメントを行っております。全社の推進体制については、取締役の監督のもと、TOMOWEL-ERM事務局が中心となり、「内部統制委員会」「品質保証委員会」「製品安全委員会」「情報セキュリティ委員会」「環境委員会」などの担当執行役員を委員長とする専門委員会と連携して課題解決に努めております。

不測の事態が発生した場合は「危機管理委員会」が中心となって情報を管理・共有し、関連部門と連携して対応にあたります。代表的な危機局面における対応フローをまとめた「危機管理マニュアル」を策定し、事業環境の変化に応じた見直しを随時行いながら有事に備えております。

 

<リスク管理体制図>

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[リスク]

当社グループの経営目標実現及び財政状況に影響を及ぼす度合いと現在の対応状況を踏まえてリスクを洗い出し、重要度の高い項目を絞り込んで、「重大リスク」と定めました。

当社グループの重大リスクは以下のとおりです。いずれも関係部署が密接に連携して管理し、対応状況をTOMOWEL-ERM事務局を通じて取締役会へ定期的に報告することとしております。重大リスクのうち、中長期的な側面も含めて課題への対応と改善の必要性がより高く、一層の注意が当面必要と判断したリスクについては、主管部署を定めて重点的に管理しております。

なお、これらのリスクは当社グループに発生し得る全リスクを網羅したものではなく、文中の将来に関する事項は本書提出日現在において入手可能な情報に基づいて判断したものです。

 

(1)当面の注意を要するリスク

① 人材基盤

  当社グループは、価値創造人材を確保及び強化する仕組みと環境の整備に努めております。しかし、少子化や雇用環境の変化等で労働力の確保が年々困難さを増す中、事業環境に即した多様な人材の確保・育成・定着が図れなかった場合は、必要な人材リソースの不足や人材の能力発揮不足による競争力低下などで企業成長が阻害され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 気候変動

  当社グループは、「第2 事業の概況 2サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応」に記載のとおり、複数の気候変動シナリオに柔軟に対応できるレジリエントな経営体制の構築を進めております。しかし、気候変動に伴う脱炭素社会への移行リスクへ適切に対応できなかった場合は、炭素税や排出権取引制度の導入によるコストの増加、投資対象からの除外と株価下落、資金調達の困難化などの影響を受け、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  なお、気候変動による大規模自然災害の発生などの物理リスクについては、「③災害・パンデミック」においてリスク認識をしております。

 

③ 災害・パンデミック

  当社グループでは、BCP基本方針を定めると共に、データ処理事業を対象とした「事業継続マネジメントシステム(ISO22301)」の認証取得や協力工場等と連携した生産協力体制による事業継続体制の整備、建物や製造設備に対する防火・耐震対策を実施しております。こうした対策で危機の事前回避と有事における対応力強化を図り、経営への影響を最小限にとどめるよう努めております。しかし、大規模自然災害の発生や感染症の流行等で従業員や施設・設備等が予想を超える被害を受けた場合、事業活動停滞による製品供給への支障、設備等の修復にかかる多大なコスト負担などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 法的規制・コンプライアンス

  当社グループは事業を行う上で、環境法、下請法、製造物責任法、独占禁止法等、さまざまな法的規制の適用を受けております。従業員教育や内部監査等を通じた法令順守の徹底と企業風土への定着、内部通報窓口の適正運用によるモニタリング体制の確保、コンプライアンス・リスクの全社統合的管理に努めておりますが、規制の改廃や新設、適用基準等の変更があった場合や、ガバナンス体制の形骸化等で法的規制に抵触する事態が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)その他のリスク

① 事業環境

  当社グループは、情報系事業においてはコンテンツやソリューションを中心としたビジネスへのシフト、生活・産業資材系事業においては環境に配慮した製品及び高機能包材等の開発強化を進め、既存事業の収益性改善に向けた構造変革と新規事業領域の探索に努めております。しかし、デジタル化や少子化、技術革新、消費行動の変化等の環境変化が想定を上回るスピードで進展し、当社グループの対応が大きく遅れた場合は、事業規模の縮小や競争力の低下など業績に影響を及ぼす可能性があります。また、各国の通商政策の変化により取引先の事業戦略等に大きな変化が生じた場合についても、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 情報セキュリティ

  当社グループは、プライバシーマークや情報セキュリティマネジメントシステム(ISO27001)などの外部認証の維持と運用徹底を通じて個人情報や機密情報を安全かつ正確に管理すると共に、危機管理委員会の下部組織である「TOMOWEL-CSIRT」を中心に、不正アクセスや情報の紛失・改ざん、漏洩などへの予防対策を講じて情報セキュリティにおける管理レベル向上と対応力強化へ恒常的に取り組んでおります。しかしながら、サイバー攻撃などを含む意図的、又は過失による情報の紛失・改ざん及び漏洩が万が一生じた場合には、当社グループに対する信用低下や事後対応などのコスト増加により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 原材料の調達

  当社グループの事業を維持するためには、サプライチェーンマネジメントの強化と原材料の安定的な調達による製品供給の安定化が必要です。サプライヤーとのパートナーシップをより強め、協働・共創して社会課題の解決をめざすために、従来のCSR調達を「サステナブル調達」とし、新たに策定した「グループ調達基本方針」及び「グループサステナブル調達基準」に基づく取り組みを推進しております。しかし、調達競争の激化で主要原材料の価格が高騰し、コスト削減や販売価格への適正な転嫁が不十分な場合や、社会課題・災害等によるサプライチェーンの停滞で調達遅延が発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 人権

  当社グループは「すべての事業活動は人の上に成り立つ」という考え方のもと、各種国際規範を支持し、関わるすべての従業員、顧客、取引先の人権を尊重することで、企業の果たすべき責任を担っていくことを基本的な考え方としております。「グループ人権方針」に基づき人権デューデリジェンスや救済窓口の整備を推進し、人権マネジメント体制の整備に努めておりますが、当社グループ及びサプライチェーンにおいて、差別や過剰・不当な労働、ハラスメントなどの問題が生じた場合、労働環境悪化による健康被害、人権侵害の事実発覚による取引停止などで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 製品品質

  当社グループは「グループ品質方針」のもと、製造物責任及び製品安全(PL)に関する全社施策や製品含有化学物質情報伝達スキーム「chemSHERPA」に準じた製品含有化学物質の管理を、製品安全委員会を中心とした製品安全推進体制のもとで推進しております。ISO9001など製品安全や品質に関する各種外部認証を取得し、徹底した品質管理下で製品を製造しておりますが、設計上あるいは製造工程上の不備によって製品・サービスに欠陥が生じた場合、損害賠償や売上の低下により当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績の状況

当期におけるわが国の経済は、一部に足踏みがみられたものの、雇用や所得環境が改善する中で緩やかな回復が続きました。しかし、国内景気の先行きは、米国の通商政策の影響による下振れリスクが懸念されるほか、金融資本市場の変動等の影響に対しても、一層の注意を要する状況となっております。

このような状況の中、当社グループは、中期経営方針「豊かな社会と新たな価値を創造するために未来起点の変革に挑戦」に基づき、各施策を推進しました。

情報系事業では、「印刷事業で培った強みを軸とし、新たな価値創出を実現」するため、版権元との関係性を生かした企画展開催などライセンスビジネスの拡大を進めました。また、当社グループの高いセキュリティ環境を生かし、業務のデジタルシフトを支援する製品・サービスの提案で事業機会の獲得に取り組むとともに、引き続き旺盛な旅客流動に対応するべく、乗車券類とICカードの安定供給体制の維持・整備に努めました。生産体制の効率化に向けては、グループ会社の統廃合及び製造拠点の集約を行いました。

生活・産業資材系事業では、「パッケージソリューションベンダーの地位確立」に向け、製品ラインアップを拡充するべく、生活利便性向上とプラスチック使用量削減の両立に貢献する製品の開発を進め、高付加価値製品の拡販に努めました。また、原材料費の高騰に対応し、適切な価格交渉を推進しました。

以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高は999億7千7百万円(前期比3.1%増)、営業利益は23億3千1百万円(前期比47.8%増)、経常利益は27億4千6百万円(前期比31.8%増)となりました。また、特別利益に投資有価証券売却益28億2千1百万円を計上したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は33億1千万円(前期比121.3%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

情報コミュニケーション部門

出版印刷は、定期刊行物は雑誌の堅調な推移と付録などの増加で前期並みでしたが、書籍はコミックスや単行本の減少により全般的に低調となり、全体では下回りとなりました。一般商業印刷は、Webカタログなどのデジタル制作関連やカタログ・情報誌が好調に推移しましたが、POPの大型案件の減少による不振などが影響し、前期並みとなりました。

以上の結果、部門全体の売上高は346億5千8百万円(前期比0.2%減)、営業損失は1億7千6百万円(前期は営業損失2億8千6百万円)となりました。

 

情報セキュリティ部門

ビジネスフォームは、金融機関向けBPOが低調でしたが、官公庁向けのデータプリントが増加し、前期を上回りました。証券類とカードは、インバウンド需要をはじめとする旺盛な旅客流動の継続により、乗車券類が増加、交通系ICカードも堅調に推移し、前期を上回りました。

以上の結果、部門全体での売上高は307億5千5百万円(前期比7.2%増)、営業利益は19億5千4百万円(前期比45.1%増)となりました。

 

生活・産業資材部門

紙器はラップカートンが減少しましたが、ティシューカートンが増加し、前期を上回りました。軟包装は即席めんなどの食品向けフタ材が好調、日用品向け詰替え用パウチなどのリキッドパッケージも順調に推移し、前期を上回りました。チューブは、歯磨き向けが減少したものの、ヘアケア製品向けの好調により化粧品向けが増加し、前期並みに推移しました。調味料向けのブローチューブは受注が好調、ブローボトルも堅調に推移し、前期を上回りました。産業資材は医薬品向けの受注が増加し、前期を上回りました。

以上の結果、部門全体での売上高は323億3千1百万円(前期比2.8%増)、営業利益は12億1千1百万円(前期比6.4%増)となりました。

 

その他

売上高は22億3千1百万円(前期比5.5%増)、営業利益は1億6千1百万円(前期比20.3%減)となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ12億4千万円増加し121億8千4百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  当連結会計年度において営業活動により得られた資金は、67億4千4百万円(前期比36億3千6百万円増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益46億2千8百万円、減価償却費59億1千3百万円の計上と、仕入債務の減少36億円があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  当連結会計年度において投資活動により使用した資金は、9億2百万円(前期比20億6百万円減)となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出41億1千7百万円と投資有価証券の売却による収入31億5千万円があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  当連結会計年度において財務活動により使用した資金は、46億3千7百万円(前期は2億6千6百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出24億9千万円、自己株式の取得による支出10億円、配当金の支払7億9千2百万円があったことによるものです。

 

生産、受注及び販売の状況

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

情報コミュニケーション部門

34,664

99.7

情報セキュリティ部門

30,884

107.2

生活・産業資材部門

32,468

104.6

その他

2,256

106.5

合計

100,274

103.6

(注)金額は販売価額によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。

 

(2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

情報コミュニケーション部門

35,943

105.3

7,940

119.3

情報セキュリティ部門

30,813

101.6

9,520

100.6

生活・産業資材部門

33,007

107.2

8,195

109.0

その他

2,213

104.1

13

42.3

合計

101,976

104.7

25,670

108.4

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

情報コミュニケーション部門

34,658

99.8

情報セキュリティ部門

30,755

107.2

生活・産業資材部門

32,331

102.8

その他

2,231

105.5

合計

99,977

103.1

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.相手先別販売実績は、総販売実績に対する割合が10%以上の販売先はないため、記載を省略しております。

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

(1) 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

①財政状態の分析

総資産は、1,261億6千8百万円(前連結会計年度末1,318億1千5百万円)となり、56億4千6百万円減少しました。これは主に、投資有価証券が30億4千8百万円、売上債権が16億9千3百万円減少したことによるものです。負債は、632億5千5百万円(前連結会計年度末686億9千5百万円)となり、54億3千9百万円減少しました。これは主に、支払手形及び買掛金が35億8千万円、借入金が24億6千1百万円減少したことによるものです。純資産は、629億1千3百万円(前連結会計年度末631億2千万円)となり、2億7百万円減少しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益33億1千万円の計上と剰余金の配当7億9千2百万円、自己株式の取得10億円、その他有価証券評価差額金20億2千5百万円の減少があったことによるものです。

 

②経営成績の分析

当社グループは、情報コミュニケーション部門における出版印刷と商業印刷、情報セキュリティ部門におけるデータプリントやBPO受託、証券類やICカード製造、生活・産業資材部門におけるチューブ・軟包装・紙器等のパッケージ類と、産業資材等の製造を主な事業としております。

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ3.1%増の999億7千7百万円でした。インバウンド需要をはじめとする旺盛な旅客流動継続による乗車券類の好調など、全体として前期を上回りました。

売上原価は前期比2.6%増の798億4千4百万円、対売上高比率は79.9%となり、前期の80.2%から0.3ポイント低下しました。

販売費及び一般管理費は前期比1.2%増の178億1百万円となりました。対売上高比率は17.8%でのれん償却費の減少などにより、前期の18.1%から0.3ポイント低下しました。この結果、営業利益は前期比47.8%増の23億3千1百万円となり、売上高営業利益率は2.3%と、前期から0.7ポイント上昇しました。また、税金等調整前当期純利益は前期比107.2%増の46億2千8百万円となりました。

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比121.3%増の33億1千万円となりました。また、自己資本利益率(ROE)は、前期の2.5%から5.3%へ2.8ポイント上昇しました。

なお、セグメントごとの経営成績については「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

(2) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等であります。また、投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&A等によるものであります。

当社グループは、運転資金及び設備資金については、安定的な資金調達、調達コスト抑制及び調達方法の分散・多様化を基本方針としております。

なお、当連結会計年度末における借入金、社債及びリース債務を含む有利子負債の残高は130億1千8百万円、現金及び現金同等物の残高は121億8千4百万円となっております。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用している重要な会計方針については、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

(連結子会社間の吸収合併)

当社は2024年4月30日開催の取締役会において、2024年10月1日を効力発生日として、当社の連結子会社である共同印刷西日本株式会社(以下、共同印刷西日本)と共同エフテック株式会社(以下、エフテック)の2社が、共同印刷西日本を存続会社とする吸収合併を実施することを決議し、同日合併契約書を締結しました。2024年5月22日、共同印刷西日本及びエフテックの株主総会におきまして両社の合併も承認され、2024年10月1日付で吸収合併いたしました。

合併の概要は次のとおりであります。

(1)合併の目的

共同印刷西日本のBPOソリューションサービスにエフテックのカードソリューション事業を融合することで、当社グループにおけるカード関連事業の基盤強化及び運営効率向上を目的としております。

(2)合併の方法

共同印刷西日本を存続会社とする吸収合併方式で、エフテックは解散いたします。

(3)合併期日

2024年10月1日

(4)合併に係る割当ての内容

本合併に際して当社の100%子会社間の合併であるため、株式又はその他財産の割当はありません。

(5)合併に伴う新株予約権及び新株予約権付社債に関する取扱い

記載事項はありません。

(6)引継資産、負債の状況

共同印刷西日本は、合併の効力発生日において、消滅会社の一切の資産、負債及び権利義務を承継しております。

(7)吸収合併存続会社となる会社の概要

代表者  :代表取締役社長 江尻 敏也

住所   :大阪府大阪市中央区平野町二丁目1番2号

資本金  :200百万円

事業内容 :印刷・データプリント・BPO業務

 

6【研究開発活動】

  当連結会計年度の研究開発活動は、連結財務諸表提出会社の技術開発本部を中核として、技術部門の総合力を発揮できる体制のもと、新技術及び新素材の研究と蓄積技術を有機的に結びつけ、市場ニーズを先取りする新技術、新製品の開発に努めました。

  なお、セグメント別の主な研究開発活動を示すと次のとおりであり、当連結会計年度の研究開発費の総額は1,052百万円となりました。

 

情報コミュニケーション部門

・高付加価値印刷・加工技術の開発

・サステナブル印刷の開発

・デジタルコミック関連技術

・偽造防止などセキュリティ関連技術

・生産効率化関連技術

について研究開発を行いました。研究開発費の金額は51百万円であります。

 

情報セキュリティ部門

・標章媒体の開発

・抽選券の応用開発

・屋内測位関連技術

・生産効率化関連技術

について研究開発を行いました。研究開発費の金額は128百万円であります。

 

生活・産業資材部門

・液体包材の開発

・高機能蓋材の開発

・チューブ製品の開発

・高機能材料の開発

・偽造防止などセキュリティ関連技術

について研究開発を行いました。研究開発費の金額は363百万円であります。

 

その他

・上記のほか、特定のセグメントに関連付けられないセグメント間に共通する基礎研究等の研究開発費の金額は509百万円であります。