第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社の企業理念であります「21世紀の人づくりを通じて、社会に貢献する教育と文化の創造企業をめざそう」を常に念頭に置き、現場第一主義の姿勢を堅持し、社内外の英知を結集して多様化する教育現場のニーズに対応した教材づくりに邁進してまいります。

 また、“若さとアイデアに生きる文溪堂”に相応しい行動力とアイデアを駆使し、株主様はもとより、お客様やお取引先様からの信頼と期待に応えるべく、企業変革の必要性を認識しつつ、常に活性化した“ゆめ企業=文溪堂”を目指して鋭意努力してまいります。

 

(2)経営戦略等

 新学習指導要領が小学校では2020年度から、中学校では2021年度から完全実施されました。当社グループとしましては、新しい教育の方向性を見定めながら、社会の変化や教育現場のニーズを的確に捉え、下記の5項目に重点をおいた経営を進めてまいります。

① 当社グループの主体事業である出版部門においては、児童・生徒や教師を支えるための良質で有益な教材やサービスの提供を目指し、従来からの教材の既成概念にとらわれない新しいタイプの教材を開発してまいります。

② 出版以外の部門においては、教材・教具の商品企画の充実や販売網の拡充を図るとともに、中学校・高等学校への教材・教具の販路拡充を推進してまいります。

③ 学校のICT環境の整備の充実に対応し、ペーパーとデジタルを融合させたハイブリッド型教材や、校務の負担を軽減し教師を支援するソフトウエアなどの開発・販売に取り組んでまいります。また、販売網の拡充を目指してまいります。

④ 知的所有権がますます尊重されるなか、当社グループの商品開発力を駆使してアイデア性、独創性の高い教材・教具類の開発と、その権利化を図ってまいります。

⑤ 当社グループの連結経営機構の発展を推進し、業務の効率化や収益力の向上を図ってまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの主力商品であるテスト・ドリル等の出版物、裁縫セット・家庭科布教材等の教材・教具の販売市場である小学校及び中学校においては、少子化傾向が進み、児童・生徒数の減少という構造的な課題を抱えております。そのような状況のなか、2021年3月期(売上高130億円、売上高経常利益率6.7%)から売上高135億円、売上高経常利益率8%を目標値としてまいりました。

 そして、2024年3月期は売上高128億円、売上高経常利益率8.1%となりました。売上高経常利益率は目標値を達成できたものの売上高は目標値に至っていないため、今後はGIGAスクール構想実現の加速化に対応したデジタルの特性を生かした企画の提案や他社との差別化を図った教材の研究開発と提供に努めてまいります。また、業務の効率化や商品ラインナップの精選などによる製造原価の低減にも力を入れ、グループ全体での売上高135億円、売上高経常利益率は小学校・中学校教材の各会計年度における教科書改訂に伴う編集費用負担額の増減により変動はあるものの、8%の維持を目指してまいります。

 

(4)経営環境

 わが国においては、様々な社会的要因により出生数が減少しており、少子化傾向がさらに進行しております。そのために教育現場では学校の統廃合が進んでおります。

 教育界においては、変化が激しく予測困難な社会のなかでも、子供たちが未来を切り拓いていくために必要な資質・能力を着実に身に付けることが求められております。情報社会に続く超スマート社会で活躍できる人材の育成を目指して、これらの変化に対応した教育現場への提案がますます重要性を増しております。

 また、文部科学省はこれからを生きる子供たちに必要な資質・能力の育成と学びを保障するため、GIGAスクール構想によりICT環境の整備を実施いたしました。学校では、学習用端末を効果的に活用すべく研究を重ねております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 教育界においては、2020年度から始まったGIGAスクール構想により1人1台の学習用端末が整備され、児童・生徒の学びの充実や教師の働き方改革への活用が進められております。

 このような情勢のなか、当社グループは教育現場から求められる様々な課題を解決するために、ICTの活用によるさらなる教育の充実に対応したペーパーとデジタルを融合させたハイブリッド型教材の開発、教師の業務の負担軽減を支援するソフトウエアの研究・開発・充実に取り組み、引き続き成長・発展を目指してまいります。さらに、当業界における先駆的な企業グループとしての自覚を持ち、商品ラインナップの精選、製作コストの削減、諸経費の見直しに向けて積極的に取り組み、企業価値の向上を目指してまいります。

 また、財務上の課題としましては、文部科学省が2024年度から段階的にデジタル教科書の導入を進めるなど学校のデジタル機器の活用への急激な傾斜により、従来のビジネスモデルの急激な変化による業績への大きな影響が発生した場合の対応として、自己資本の充実の重要性を認識しております。2024年3月期の自己資本比率は74.9%であり、70%以上の自己資本比率を維持してまいりたいと考えております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

サステナビリティに対する取組姿勢

当社は、中長期的な企業価値の向上のためのサステナビリティを巡る課題への対応については、経営の重要課題であると認識しております。企業価値の向上に資するために設立した「ブランド戦略委員会」の中で当社のサステナビリティに関する取り組みについての基本方針を策定し、持続可能な開発目標の達成に向けて統合的に検討を進めてまいりました。さらに今後の取り組みを強化・推進するために、2023年9月に「SDGs運営委員会」を発足いたしました。各部のSDGsに関わる諸活動を集約し、課題を洗い出し、目標を数値化することで明確なビジョンを持って取り組みを進めております。気候変動要素に関わる課題については、「SBT推進委員会」から活動を継承した「SDGs運営委員会」において引き続き取り組みを進めております。

また、取締役会では、人的資本への投資の重要性を認識し、経営資源の配分や事業ポートフォリオに関する戦略について、実効性を含めて審議を行い、監督を行っております。

 

(1)環境(気候変動関連)への取り組み

当社は、『21世紀の人づくりを通じて、社会に貢献する教育と文化の創造企業をめざそう』という企業理念のもと、2020年12月に文溪堂SDGs宣言を行いました。また、重点的に取り組む事項として「教育と文化の創造」「環境への配慮」「社会との共生」を定めており、特に「環境への配慮」では、事業活動に伴う環境負荷を低減し、環境に配慮した取り組みを行っております。また、持続的な消費・生産形態である循環型経済を促進するため、3R(リデュース・リユース・リサイクル)活動により廃棄物の削減に加え、科学的見地と融合した二酸化炭素の排出削減目標の達成を目指しております。

 

①ガバナンス

SDGs運営委員会は、気候科学に基づく「共通基準」で評価・認定された排出削減目標である「温室効果ガス排出量ゼロ」の達成を目指して、グループ全体で脱炭素社会の実現に向けて取り組んでおります。また、委員会で協議した内容は、業務執行取締役を構成員とした経営会議へ報告し、必要な対応を実施するとともにその重要度に応じて取締役会へ適宜報告しております。

 

②戦略

当社は現在、気候科学に基づく「共通基準」で評価・認定された排出削減目標を設定するSBT(Science Based Targets)について2023年4月に申請を行い2023年6月に認定取得しております。

その過程において、いわゆるScope1・2と呼ばれる化石燃料に由来するエネルギーや電力の使用量を把握し、その消費に起因する温室効果ガスの排出量をパリ協定が求める「温室効果ガス排出量ゼロ」の達成を目標として、グループ全体で脱炭素社会の実現に向けて取り組んでおります。

 

③リスク管理

当社の気候変動に関するリスク管理としては、SDGs運営委員会において、グループ全体の二酸化炭素の排出削減目標の達成状況を常に把握するとともに、気候変動に影響を及ぼすと推測されるリスクを識別した場合は、経営会議へ速やかに報告しております。

 

a)気候変動に係るリスクを識別・評価するプロセス

SDGs運営委員会は、グループ各社におけるScope1・2の目標の達成状況を常に把握し、気候変動の要因となりうる温室効果ガスの排出量増減理由を分析し、影響を及ぼすと推測されるリスクを識別するとともに、その具体的な対処案を立案し、経営会議へ報告しております。経営会議では、識別された気候変動に関するリスクの評価を行っております。

 

b)気候変動に係るリスクを管理するプロセス

SDGs運営委員会は、識別した気候変動に関するリスクについて、グループ各社に気候変動に係るリスクの管理を行うとともに、評価したリスクの最小化に向けてグループ各社に対して具体的な対処を指示し、その達成状況について監督しております。

グループ各社から気候変動に係るリスクの報告を受けた場合は、その内容を客観的に評価し、グループ全体で情報共有を図るとともに、適切な対応策を検討し、経営会議へ報告しております。

経営会議において、リスクの最小化に向けた対処案の指示を委員会が受けた場合は、グループ各社に指示するとともに、その実施状況について監督しております。

 

④指標及び目標

岐阜本社の本館ビルで使用する電力のすべてを、実質再生可能エネルギー100%の電力に切り替えております。発電方法は、森林の機能維持を目的に間伐等で伐採された未利用木材を活用した「木質バイオマス発電」によるものです。燃焼時に排出される二酸化炭素は、その樹木の成長過程における光合成での吸収量と相殺される「カーボンニュートラル」を実現しております。2024年3月には、岐阜本社第二物流棟において人感センサー付LED照明器具へ変更し、一定時間無人となった場所の消灯及び消し忘れ防止による電力消費の削減を行っております。

今後も、当社グループが使用する化石燃料や電力の使用に起因する二酸化炭素の排出量の削減に向けて、照明器具の更新や空調設備の運用の見直し、省エネルギー型運搬機器への転換、化石燃料の使用を低減する社有車への更新等を進め、温室効果ガスの排出量を2030年までに42%削減、2045年にはパリ協定が要求する「温室効果ガス排出量ゼロ」の達成を目標として、グループ全体で脱炭素社会の実現に向けて取り組んでまいります。

 

(2)人的資本、多様性等への取り組み

①人材育成方針及び社内環境整備に関する方針

当社は「社会との共生 21世紀をきみと創る」という基本方針を掲げております。従業員の安全・安心な労働環境を整備するとともに、生産的な雇用と働きがいのある仕事・職場を提供し、地域の一員であるとの自覚のもと様々な社会活動に貢献することにより、地域社会とのパートナーシップの構築を進めてまいります。

人的資本への投資等については、会社にとって最大の資産は「人」であると考え、今後も未来を担う子供たちを支え続ける企業であり、さらに企業体質を強化していくために必要なものは、会社を支える人材に対する社員教育だと考えております。定期的に資質向上のための階層別研修を実施するとともに、総合的な能力向上を目的とした自己啓発活動にも支援を行い、人材の多様化を目指した教育に努めております。また、仕事と家庭等の両立支援については、出産の前後の育児における休暇制度や時短勤務制度等の諸制度を導入するなど、働きやすい職場環境整備に積極的に取り組んでおり、男性の育児休業の取得促進にも力を入れております。

なお、実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率、及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

②具体的な取り組み

・女性の管理職の登用について

当社は、年齢・性別等で差別することなく、管理職への登用に際しては意欲のある優秀な従業員が機会を得られる人事考課制度を導入しております。2024年3月末時点で当社における女性労働者の割合は46.8%であります。女性の管理職及び監督職の育成に向け、社内プロジェクトメンバーへの積極的な登用を行うとともに、異業種交流による経験値の向上を目的として外部セミナーへ積極的に派遣するなど、女性の管理職及び監督職の比率の向上を目指してまいります。

 

・管理職に占める経験者採用者の割合について

事業の安定的な発展を目指し、外部の専門的な人材を積極的に採用しております。管理職への登用については、その経験や知識・能力を公平に評価しております。2024年3月末時点での当社における管理職に占める経験者採用者の割合は36.3%となっております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)主力商品の市場について

 当社グループの主力商品であるテスト・ドリル等の出版物、裁縫セット・家庭科布教材等の教材・教具の販売市場は、小学校及び中学校であります。当連結会計年度における当社グループの売上高に占める小学校・中学校向けの出版物、教材・教具の売上の割合は約90%であり、今後も現場第一主義の姿勢を堅持し、教育のICT化を見据えつつ教育現場のニーズに対応した教材づくりに邁進してまいります。しかしながら、日本が抱える少子化傾向が予想以上に進行し市場が著しく縮小した場合や、デジタル教科書の本格導入などの影響により従来のビジネスモデルが急激に変化した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2)法的規制について

 当社グループの主力商品である出版物は、日本の教育・文化の普及のために、独占禁止法の再販売価格維持制度の対象となっておりますが、この制度が廃止された場合、当社グループの業績(セグメントの出版)への影響はもちろんのこと、出版業界全体にも大きな影響を与える可能性があります。

 

(3)自然災害等に伴うリスクについて

 当社グループは、全国の小学校及び中学校に対して出版物、教材・教具の企画、製造、販売を行っております。その製造過程においては、大部分の工程を協力会社に委託しております。また販売においても、全国の特約代理店に販売を委託しております。各地域において、大規模な地震や風水害、気候変動を起因とする台風・豪雨等の自然災害等が発生した場合、協力会社や販売店等の建物や設備の損壊、交通経路の遮断等により、製造及び販売が困難となり、当社グループの財務状況及び業績が影響を受ける可能性があります。

 このような自然災害等に伴うリスクを回避するために、特に製造における委託先については、同じエリアに集中しないように分散化に取り組んでおります。

 

(4)原材料価格の高騰について

 当社グループは、セグメントの教具において、プラスチックを主原料とする製品を企画、製造、販売をしております。不安定な世界情勢や原油価格の上昇に起因する原材料価格の高騰への対策として、企画の見直しによる原材料の削減やプラスチック再生原料の採用等による使用量の削減を行っております。しかしながら、原油価格の上昇や円安によるプラスチックの高騰に加え、セグメントの出版における用紙代も高騰しており、該当セグメントにおける業績に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、社会経済活動の正常化が進むなか、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で、ウクライナ情勢の長期化による原材料価格の上昇や世界的なインフレの進行とあわせ、円安の進行や物価の高騰など、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 教育界においては、現行の学習指導要領のもと、2024年度に小学校用教科書が改訂されました。また、「英語」では小中学校でともに紙の教科書とあわせてデジタル教科書が導入され、教科書においてもデジタル化が浸透しつつあります。

 現在、教育現場では、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を通して、現行の学習指導要領が目指す「主体的・対話的で深い学び」が実現されるよう授業研究・実践が進められております。その一方で、いじめや不登校、特別な配慮や支援が必要な児童・生徒への対応など、多種多様な課題への取り組みに追われております。さらに教師不足も重なり、教師の業務負担軽減への取り組みは解決すべき重要な課題となっております。このような状況について、中央教育審議会の特別部会では、「教師の働き方は危機的な状況にあり、社会全体で取り組むべき」とする緊急提言が2023年8月にまとめられ、教師の負担軽減が期待される小学校高学年での「教科担任制」実施の前倒しをはじめとする様々な対応策が挙げられました。

 今後に向けては、次期学習指導要領の議論も活発化し、方向性が徐々に示されていくなかで、「GIGAスクール構想」によって普及した教育インフラを積極的に活用することで、児童・生徒の学力向上及び教師の業務負担軽減等の実現が期待されております。

 このような情勢を背景に、当社グループは、主力である小学校図書教材においては定価や付録などの厳しい競争が続くなか、基礎・基本の定着や活用する力の育成と評価を念頭に、ペーパーとデジタルを効果的に活用しながら教育現場のニーズに応えられるよう改訂を進めてまいりました。また、教師の負担軽減にも寄与できるように、デジタルを活用した連絡支援システムや児童・生徒の心のケアを図るシステムなど、教材以外のシステム開発も行ってまいりました。

 以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比較して225,679千円増加し、19,793,127千円となりました。当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比較して312,181千円減少し、4,959,559千円となりました。当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比較して537,861千円増加し、14,833,568千円となりました。当連結会計年度末の自己資本比率は74.9%で引き続き比較的高い数値を維持しております。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高12,871,978千円(前年同期比0.9%増)と、増収となりました。利益につきましては、営業利益986,743千円(前年同期比7.6%減)、経常利益1,049,980千円(前年同期比6.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益687,256千円(前年同期比2.4%減)と、減益となりました。

 なお、主力商品であるテスト・ドリル等の出版物は、文部科学省が定める学習指導要領や教科書に準拠する必要があるため、その定期的な改訂に伴い内容を見直す必要があります。教科書改訂は小学校においては2024年度に実施され、教育現場のニーズに対応した教材が提供できるかどうかが売上に影響を及ぼします。また、日本が抱える少子化傾向が進行し市場が縮小することも売上に影響を及ぼします。

 

セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

・出版

 小学校図書教材においては、教育現場の実態や動向を分析し多様なニーズを的確に捉えたことにより、求められる「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力等」を育み評価できる教材が教育現場に支持されました。

 評価教材では、各教科で「見方・考え方」を働かせながら、基礎・基本から活用までの学習内容を的確に評価できる企画が教育現場から好評を得ることができました。また、小単元ごとに定着を確認できるデジタル教材や、記載された二次元コードを読み取ることで「自らの学び」をサポートする動画などのデジタルコンテンツの企画が支持され、売上高が増加いたしました。

 

 一方、習熟教材やしあげ等の季刊物教材では、基礎的な学習内容が確実に定着する企画に加え、学習用端末の活用に対応した企画を提案してまいりましたが、教育現場のニーズの変化や各自治体が導入するデジタル教材などの影響により、売上高が減少いたしました。

 中学校図書教材においては、入試対策教材が大幅な改訂により好評を得た一方、夏休み教材や冬休み教材が学習用端末の活用の影響を受け、売上高が減少いたしました。

 この結果、当セグメントの売上高は8,955,255千円(前年同期比0.2%減)、営業利益は1,541,924千円(前年同期比6.1%減)となりました。

 

・教具

 小学校教材・教具においては、各教科の授業運営がコロナ禍前の状態にほぼ戻りましたが、採用時期の変化や購入方法の多様化などにより、採用状況に変化が見受けられました。

 「書道セット」や「画材セット」「彫刻刀」などの希望採用品では、長く使い続けられるデザインと機能性の高さが受け入れられたことにより、売上高が増加いたしました。

 「家庭科布教材」では、児童の嗜好の変化などが影響し、売上高が減少いたしました。

 中学校・高等学校向けの家庭科教材ブランド「クロッサム」では、新規採用校が増加したものの、廉価な教材の採用増の影響により、売上高が減少いたしました。

 この結果、当セグメントの売上高は3,916,723千円(前年同期比3.7%増)、営業利益は435,675千円(前年同期比12.1%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較して199,913千円減少して6,403,279千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金収支は472,822千円で、前連結会計年度と比較して311,583千円減少(前年同期の資金収支は784,405千円)となりました。営業活動によるキャッシュ・フローが減少した主な要因は、売上債権の増減額が64,443千円増加、棚卸資産の増減額が355,383千円減少、仕入債務の減少額が213,403千円増加、法人税等の支払額が155,573千円減少したことによります。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、セグメントの出版において、原材料価格の上昇と定期的に行われる教科書改訂に伴う出版物の内容見直しによる改訂編集費用の増加により、キャッシュ・フローが減少します。決算期ごとに営業活動によるキャッシュ・フローの推移をみていきますと、2019年3月期925,684千円、2020年3月期455,248千円、2021年3月期781,903千円、2022年3月期739,807千円、2023年3月期784,405千円、2024年3月期472,822千円となっております。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金収支は△350,270千円で、前連結会計年度と比較して715,981千円減少(前年同期の資金収支は365,710千円)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローが減少した主な要因は、投資有価証券の取得による支出が200,000千円増加、投資有価証券の償還による収入が510,000千円減少したことによります。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、株式の取得による支出はほとんどありませんが、社債の取得による支出と償還による収入の増減により影響を受けます。また、設備投資につきましては、セグメントの出版における製品の製作は外注の印刷会社に委託いたしますので、印刷機械等の有形固定資産の取得による支出はほとんどありません。セグメントの教具における製品の製作も外注に依存しておりますが、裁縫セット、画材セット等を製作するために必要な金型の取得による支出が発生する場合があります。その他の有形固定資産の取得による支出の主な内容は本社建物等の改修費用であり、無形固定資産の取得による支出は主に基幹システムの再構築や販売目的のソフトウエアの開発による支出であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金収支は△322,465千円で、前連結会計年度と比較して36,611千円増加(前年同期の資金収支は△359,076千円)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローが増加した主な要因は、短期借入金の純増減額が35,000千円減少、長期借入れによる収入が100,000千円増加、長期借入金の返済による支出が40,000千円増加したことによります。

 

 財務活動によるキャッシュ・フローは、2008年3月期より配当金の支払額については、文溪堂単体の当期純利益の40%相当額を目処に年間配当金総額を決定しており、配当金の支払額は当期純利益により変動いたします。また、借入金につきましては、文溪堂単体の借入金は発生しておりませんが、子会社の㈱学宝社において借入金が発生しております。現在のところ、財務活動による資金調達は内部資金及び金融機関からの借入金で対応できると認識しております。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

出版(千円)

8,226,910

97.5

教具(千円)

2,560,824

96.5

合計(千円)

10,787,735

97.2

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

出版(千円)

8,955,255

99.7

教具(千円)

3,916,723

103.7

合計(千円)

12,871,978

100.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 (a)財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は19,793,127千円となり、前連結会計年度末と比較して225,679千円増加しました。

 流動資産の残高は13,524,336千円で、前連結会計年度末と比較して323,555千円増加しました。流動資産の主な増減は、現金及び預金の減少199,913千円、有価証券の増加299,700千円、商品及び製品の減少244,622千円、セグメントの出版における小学校図書教材の改訂編集費用の増加により仕掛品の増加479,189千円であります。

 固定資産の残高は6,268,791千円で、前連結会計年度末と比較して97,875千円減少しました。固定資産の主な増減は、ソフトウエアの増加207,656千円、ソフトウエア仮勘定(無形固定資産その他)の減少137,541千円、投資有価証券の減少148,284千円であります。

 流動負債の残高は4,149,182千円で、前連結会計年度末と比較して423,722千円減少しました。流動負債の主な増減は、支払手形及び買掛金の減少156,556千円、電子記録債務の減少120,841千円、短期借入金の減少100,000千円であります。

 固定負債の残高は810,377千円で、前連結会計年度末と比較して111,540千円増加しました。固定負債の主な増減は、長期借入金の増加100,000千円、繰延税金負債の増加56,426千円であります。

 純資産は14,833,568千円で、前連結会計年度末と比較して537,861千円増加しました。純資産の主な増減は、利益剰余金の増加362,649千円、その他有価証券評価差額金の増加120,710千円であります。

 

 (b)経営成績の分析

 当連結会計年度における売上高は12,871,978千円(前年同期比0.9%増)となりました。売上高が増加した主な要因は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 売上原価は7,547,964千円(前年同期比1.5%増)、売上総利益は5,324,013千円(前年同期比0.1%増)となりました。売上原価が増加した主な要因は、セグメントの出版において、原材料の上昇と2024年度の教科書改訂による企画全面改訂に伴い、2023年度品の在庫処分が増加したことによります。また、売上総利益が増加した主な要因は、売上高が増加したためであります。

 販売費及び一般管理費は4,337,270千円(前年同期比2.0%増)となりました。主な増減は、セグメントの出版において次期の販売促進のための出版物の無料見本の減少等により広告宣伝費が27,530千円減少、給与及び手当が46,037千円減少、再構築したクラウド対応の新基幹システムの稼働などの固定資産の増加に伴い減価償却費が52,180千円増加、修繕費(その他の経費)が30,560千円増加いたしました。以上の結果、営業利益は986,743千円(前年同期比7.6%減)となりました。

 営業外収益は前連結会計年度の59,416千円から増加し64,203千円となりました。主な増減は、雑収入が3,411千円増加となります。以上の結果、経常利益は1,049,980千円(前年同期比6.8%減)となりました。

 特別損失は固定資産除却損を166千円計上いたしました。法人税等合計は362,557千円(前年同期比2.6%減)となりました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は687,256千円(前年同期比2.4%減)となりました。

 なお、当社では、セグメントの出版では、定期的に実施される教科書改訂に伴い出版物を改訂しているために、下記のような出版物の改訂年度の編集費用の処理方法を行っております。「第5〔経理の状況〕2〔財務諸表等〕(1)〔財務諸表〕5.その他財務諸表作成のための基本となる重要な事項」参照

 教科書改訂に伴う出版物の改訂編集費用は、改訂初年度50%、2年度30%、3年度20%に按分して製品原価を計算しております。当期の小学校図書教材においては、2023年度品の出版物は改訂4年目にあたるため、教科書改訂に伴う改訂編集費用はありません。なお、2024年度に小学校教科書の改訂がなされました。そのため、2024年度品の出版物は、改訂に伴う編集費用の50%にて計算いたします。

 上記の出版物の改訂年度の編集費用の処理により、通常は、改訂初年度50%にて計算された原価の製品を販売した決算期の売上原価が高くなり、2年度目、3年度目、4年度目と売上原価が小さくなる傾向があります。ただし、仮に改訂初年度の決算期における売上が減少し、売上を挽回するために2年度目に製品の部分改訂を実施し、編集費用が増加すると売上原価が上昇する要因となります。この2年度以降の部分改訂の編集費用は繰り延べ処理をせずに製造原価を計算しております。また、改訂初年度の前年の決算期においては、改訂する前の製品が次期(改訂初年度)に使用することができず在庫処分となり、その費用が売上原価の増加につながります。なお、通常、中学校の教科書改訂に伴う出版物の改訂は小学校の1年後に実施されます。

 

 セグメントごとの経営成績に関する分析・検討内容は次のとおりであります。

 売上高につきましては、出版が8,955,255千円、教具が3,916,723千円となっており、売上高割合は出版が69.6%、教具が30.4%となっております。

 報告セグメントに配分していない管理部門の販売管理費等の全社費用を除いたセグメント利益では、出版が1,541,924千円で売上高セグメント利益率は17.2%、教具が435,675千円で11.1%であります。両セグメントの利益率の差の主な要因は、出版は製作ロット数が多くなれば1冊当たりの原価が低くなりますが、教具は1個当たりの原価が低くならないことが挙げられます。

 

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、「第2〔事業の状況〕3〔事業等のリスク〕」に記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。営業活動による資金収支に影響を与える要因として編集費用があります。教科書改訂に伴う出版物の改訂編集費用が発生した決算期は、改訂編集費用の支払いが多くなり、営業活動による収支が悪化する傾向にあります。

 運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は借入により資金調達することとしております。決算日現在、短期借入金は280,000千円、長期借入金は100,000千円であります。

 当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原材料や加工賃、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。資金繰りの面では必要な手元資金を確保しておりますが、原油価格の上昇に起因する原材料価格の高騰や円安傾向による販管コストの増加を受け、事業活動に影響が出て、突発的な資金手当てが必要となった場合には、借入金にて十分な対応が可能と判断しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用した会計方針は、「第5〔経理の状況〕1〔連結財務諸表等〕(1)〔連結財務諸表〕〔注記事項〕」をご参照下さい。

 また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5〔経理の状況〕1〔連結財務諸表等〕〔注記事項〕(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(繰延税金資産)

 当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。