第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)  会社の経営の基本方針

当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化しており、企業価値の拡大を目指すお客様のニーズは、情報技術の進化やコーポレート・ガバナンスを取り巻く制度整備、ESG情報の開示に関する対応要請などを受け、高度化ならびに多様化しております。また、制度開示書類をはじめとした企業活動にかかわる文書の翻訳や海外上場のサポートなど、グローバルなソリューションへのニーズも増加の一途を辿っています。

私たちは経営理念である「社会の公器としての使命を果たす」を指針とし、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題に事業活動を通じて貢献するとともに、ディスクロージャーを起点として、様々なソリューションで企業の成長を支援するIT・専門性のあるテック企業として、「グローバルなオンリーワン企業集団」、「専門分野に特化したコンサルティングファーム」への進化を進めてまいります。

 

 持株会社体制としている目的

 1. グループの一体化と戦略機能の強化

グループ全体の視点に立った経営戦略の立案により、グループ内経営資源の配分を最適化します。ディスクロージャー&IRのサービス提供を通じて築き上げた顧客基盤と、当社グループの“ブランド”への信頼を活かし、既存分野から周辺へサービス提供を拡げるべく、グループの一体経営を推進します。同時に、子会社事業も独自性・専門性の発揮による成長を目指し、戦略機能の強化を図ります。

 2. 新規事業創出機能の強化

事業領域の拡大に向けて、当社グループとの親和性が高い外部企業を傘下に迎え入れる器づくりと、機動的な戦略的事業提携に対応し得る体制を実現します。

 3. 経営者人財の確保・育成

グループ全体の変革を推進する次世代リーダーの育成に向けて、事業会社における幹部登用を積極化します。また、事業会社間の人事交流を活性化させ、グループ内で人財の流動性を高めることで、社員の成長を促進する機会を実現します。事業領域の拡大に合わせて、活躍の場を求める多様な資質を持つ人財を確保していきます。

 4. スピーディーな意思決定が可能な経営体制の実現

各事業会社への権限委譲とともに経営責任の明確化を図り、それぞれの事業展開におけるスピーディーな意思決定と独立性を担保しつつ、全社視点でのマネジメントを確立します。

 5. ダイバーシティ環境の実現

全社視点に立ったマネジメントの強化、適材適所の人財配置、事業内容に応じた組織デザインと事務プロセスの効率化を進め、さらなるダイバーシティ環境の推進を図ります。

 

 

 

■企業理念、目指す姿、行動指針

私たちは、事業を通してお客さまの情報化社会におけるコミュニケーションを支援し、資本市場にとって「なくてはならない企業」であり続けます。お客さまをはじめとするすべてのステークホルダーとともに私たちの使命を果たしながら、持続可能な社会づくりに貢献してまいります。

 


 

気候変動をはじめとしたサステナビリティ課題への取組み

当社グループは、気候変動をはじめとしたサステナビリティ課題を経営課題の一つと認識しており、サステナビリティ委員会を設置し、検討を進めております。サステナビリティ基本方針のもと以下の5つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、各マテリアリティにおいてアクションプラン基本方針、2030年までのアクションプランを定め、これを実行し、実現することを目標としております。

① 専門知識の蓄積、研鑽と発信

② ガバナンスの深化

③ 従業員の幸せ

④ 環境問題解決に向けたソリューションの創出

⑤ ステークホルダーとの共栄

環境への取り組みとしては、当社グループはこれまで環境保全活動に積極的に取り組んでおり、電力使用量の測定・削減、用紙使用量削減・再生紙活用の推進、汚染物資・化学物質の削減、産業廃棄物排出量の削減等を進め、継続的に環境負荷の軽減を図ってまいりました。今後は気候変動が当社グループの業績に与える影響について検討を進め、FSB(金融安定理事会)により設立されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を参照し、サステナビリティ委員会において検討のうえ、枠組みに沿った情報開示を進めてまいります。

 

(2)  経営環境

当社グループの主要事業であるディスクロージャー関連の事業環境はこれまで、金融庁の電子開示システムEDINETの改訂、金融関連商品に対するディスクロージャーの詳細化、会社法の改正に伴う会社・株式制度の改革及び株主総会プロセスの電子化の促進、企業のIR活動の拡充、コーポレート・ガバナンスの充実、ESG情報の開示、海外投資家に向けた英語での会社情報の開示への一層の取組みなど、近年、大きく変化いたしました。また、EDINETの高度化やIFRSの適用など、更なる環境の変化が見込まれ、足元では2025年4月以降の決算・適時開示情報における和英同時開示がプライム市場上場企業を対象に義務化され、また投資家が株主総会の前に有価証券報告書を確認できるよう早期提出への出来る限りの対応が求められるなど、大きく、激しく変化しております。

このような事業環境において、多様化・高度化する情報開示に対するシステムの技術革新等を含めた対応要請、オンライン化、並びに事業体のグローバル化への動きは、今後も一層進展していくものと想定しております。

このような環境の中、当社はグループ一体となり、重要な経営目標である「中期経営計画2026」のもと、引き続きお客様の様々なニーズに応えるとともに、グループ会社間のシナジーを最大化させ、業績の拡大に努めております。

2025年5月期の連結業績は、事業環境が大きく変化する中、「中期経営計画2026」の2年目にあたり、その進捗は堅調に推移いたしました。顧客基盤の増強により各商材の成約、受注が好調に推移し売上高は増収となりました。営業利益については、両事業ともに人件費や職場環境の改善などにより経費の増加があったことから減益となりましたが、固定資産の譲渡に伴う特別利益の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は増加となりました。

中期経営計画2026の最終年度となる2026年5月期は、当社グループの各事業分野での更なる強化を見据え、2025年7月9日に最終年度の業績目標を修正いたしました。

 

 

「中期経営計画2026」の進捗状況

 

2025年5月期の状況

 

ディスクロージャー関連事業

・株主総会プロセスの電子化の更なる進展を想定したサービス体系構築

・決算開示アウトソーシング、制度変更起点のニーズに応えるコンサルティングの拡充

・有価証券報告書の株主総会前提出等、開示環境変化に対応するWizLaboの機能拡充

・WizLaboの機能追加により決算開示プロセスの効率化を実現

 (API連携拡大、WizLabo Box強化、WizLabo Library CMS機能強化)

・海外情報、サステナビリティ情報キャッチアップ機能の強化(㈱宝印刷D&IR研究所)

・改組によるIPO検討企業へのアプローチ力を大幅に強化

・IPOコンサル組織対応の強化(㈱タスクとの連携)

・ファンド案件、再上場案件の管理徹底

 

通訳・翻訳事業

・開示/IR関連文書の翻訳需要の増加に対応可能な、量と品質両面での翻訳体制を強化

・グループ内での勉強会・人材交流により、サービス品質を向上

・サイマル・アカデミーのディスクロージャー翻訳講座を通じた人材発掘を推進

・開示書類翻訳へのAI翻訳導入を見据え、グループ内各社との連携による自社利用AI翻訳エンジンの育成、MTPEサービスの本格提供に向けた取組みを推進

・MTPEについて、特定文書の翻訳に際し人手翻訳と同等の翻訳品質を実現すべく、特有の注意点を洗い出し、当該情報を蓄積/共有

・サイマル/十印/THPLの連携営業の強化

・各種イベント等でのプレゼンテーション強化

・中国・東南アジア言語を中心とした英語以外の言語の翻訳対応力を強化

 


 

(3)  経営戦略

当社は上記の経営環境の認識の下、2023年7月7日に、2024年5月期~2026年5月期の「新・中期経営計画2026」を発表し、以下の目指す姿、基本方針を策定・発表しました。

 

1.TAKARA & COグループが目指す2030年に向けたあるべき姿

特定した5つのマテリアリティにおける2030年までのアクションプランを実行し、これらを実現していくことを通じて当社グループの使命を果たし、人的資本の持続的な成長と信頼関係の発展を図りながら、各社の企業価値を高めていく。

 

2.「新・中期経営計画2026」における基本方針

・サステナビリティ経営の推進

・グローバル化の拡大促進

・新事業領域の拡大

・グループ戦略立案とグループ連携の強化

・グループ各社の企業価値向上

 

上記基本方針のもと、以下の成長戦略、具体的施策を推進していきます。

 

① ディスクロージャー関連事業

・四半期制度見直し、会社法改正など制度変更に伴うビジネスの創出

・開示支援システムの技術革新、オンライン・Webサービスの強化

・統合報告書、サステナビリティ、タイムリーディスクロージャー等情報開示の多角化、高度化への対応

・IPOサービス体制の強化、コンサルティングの拡大

 

② 通訳・翻訳事業

・通訳翻訳の更なる使いやすさとクリエイティブな品質の追求

・通訳翻訳業界の認知向上と次世代を担う通訳者、翻訳者の育成

・機械翻訳、遠隔通訳等の技術進化への対応

・海外顧客向け高付加価値サービスの拡大、取り扱い言語数の拡大

 

③ 価値共創基盤の強化(両事業の融合)

・マテリアリティに沿った活動の着実な推進

・人材育成と従業員の幸せの実現

・海外投資家向け情報開示の品質強化、キャパシティ拡大

・グループシナジーの進展

・M&Aによる事業領域の拡大

・経営基盤のDX化、RPAの推進

 


 

 

 

(4)  優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

1. グループ経営の強化

当社グループは、継続的に中期経営計画を策定・公表しております。この目標を達成するために、サステナビリティ経営を推進し、グループ間シナジーの創出を通じて企業価値向上を持続的に実現してまいります。

 

2. 新規事業の開拓と育成

当社グループがさらに飛躍するためには、新規事業の開拓と育成が必要と考えております。当社グループは、ディスクロージャー&IR事業を基盤として、その周辺分野へサービスの範囲を拡大していく事のほか、当社グループのビジネスに関連するM&Aやアライアンスの実施も視野に入れた新たな事業展開等へ100億円の成長投資枠を確保しており、新規事業の開拓と育成を進めてまいります。

 

3. 開示支援サービスの信頼性向上

ディスクロージャー&IR事業の環境の変化とお客様のニーズを的確に捉え、統合型ビジネスレポートシステム「WizLabo」をプラットフォームとした、総合ディスクロージャーソリューション企業として、ワンストップでのソリューション提供を通じた顧客体験の更なる向上を図ります。

具体的には、「WizLabo」へのAI実装本格化・データ収集機能強化を始めとした機能拡充、更なる株主総会プロセスの電子化進展に対応する電子化商材の機能強化と拡販、投資家向け情報開示のグローバル化によるニーズ拡大を踏まえたAI翻訳等新技術の積極的な利活用、高度な開示領域で高まる顧客ニーズに対応したコンサルティングサービスの拡大等に努めます。お客様に満足していただけるサービスの提供を通じて、信頼性の向上を図り、法定開示書類、任意開示書類の受注拡大、IPO等における受注拡大を図ってまいります。

 

4. 通訳・翻訳事業の拡大と高品質+αの競争優位の確立

通訳事業では、引き続き堅調な需要が見込まれる中、次世代通訳者の不足、AIの進化等、業界における課題が変化しております。当社グループでは次世代通訳者の獲得・育成、AI関連サービスの商品化を主要課題として、質・量ともに業界リーダーとしての強みを生かし、更なる業績拡大を推進してまいります。翻訳事業では、ディスクロージャー翻訳、ビジネス翻訳など、高い専門性が求められる分野の品質向上に引き続き注力するとともに、新商材「SIMULwiz」の拡販等AIを始めとしたテクノロジーの活用を積極的に進めてまいります。また、ビジネスのグローバル化に伴う、企業のWebサイト・広告・書籍等における多言語ローカライズニーズに対応するトランスクリエーション(マーケティング/クリエイティブ色の強い翻訳)サービスの強化にも注力しております。

これら各種サービスの提供を通じて、お客様の利便性・信頼性の向上を図り、通訳・翻訳事業の高品質+αの競争優位性の確立を実現してまいります。

 

(5)  経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

過去3期の実績、および2024年5月期から2026年5月期における経営数値目標は、「新・中期経営計画2026」として2023年7月7日開催の取締役会にて決議し、同日付で開示いたしました。また、2026年5月期の目標を進捗の状況および今後の業績を勘案し修正することについて、2025年7月9日開催の取締役会で決議し、開示しております。

その計画期間最終期となる2026年5月期における経営数値目標は、売上高330億円、営業利益44億円、営業利益率13.3%、親会社株主に帰属する当期純利益31億円、ROE10.0%として設定しております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、役員および社員がグループ行動規範を共有し、各社の専門性を磨き、常に高い倫理観と社会的良識をもって行動することで、ディスクロージャー&IRのパイオニアとして公平な資本市場の発展に資するとともに、通訳・翻訳事業を通じてグローバルなコミュニケーションの発展に寄与し、社会から信頼される企業グループとして評価され、持続的に発展するよう努めています。また、自然災害等への危機管理を怠らず、事業継続のために必要な対策を実施するとともに、気候変動などの地球環境に配慮した事業活動の推進を強化していきます。

取締役会は、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、当社の持続的な成長に資するよう、経営全般に対する監督機能を発揮して経営の公正性・透明性を確保するとともに、当社が直面する重大なリスクの評価および対応策の策定、ならびに当社の重要な業務執行の決定等を通じて、当社のために最善の意思決定を行うため、取締役会の諮問機関として独立社外取締役や外部有識者を主要な構成員に含むサステナビリティ委員会を設置しております。

当社は、サステナビリティ委員会の提言により、多様性の観点から一般社員や管理職を含むさまざまな経歴の社員が参加するサステナビリティ実行委員会を構成し、マテリアリティ(重要課題)特定のための準備作業を行い、サステナビリティ委員会での審議を経て、以下(2)の戦略において記載した5点をマテリアリティとして特定するとともにサステナビリティ基本方針を制定しております。

 

当社のサステナビリティ基本方針については、以下をご参照ください。

 基本方針  https://www.takara-company.co.jp/sustainability/philosophy.html

 

(2)戦略

当社グループは、気候変動をはじめとしたサステナビリティ課題を経営課題の一つと認識しており、サステナビリティ委員会を設置し、検討を進めております。サステナビリティ基本方針のもと以下の5つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、各マテリアリティにおいてアクションプラン基本方針/2030年までのアクションプランを定め、これを実行し、実現することを目標としております。

① 専門知識の蓄積、研鑽と発信

② ガバナンスの深化

③ 従業員の幸せ

④ 環境問題解決に向けたソリューションの創出

⑤ ステークホルダーとの共栄

 

環境への取り組みとしましては、当社グループはこれまで環境保全活動に積極的に取り組んでおり、電力使用量の測定・削減、用紙使用量削減・FSC®森林認証用紙活用の推進、汚染物資・化学物質の削減、産業廃棄物排出量の削減等を進め、継続的に環境負荷の軽減を図ってまいりました。今後は気候変動が当社グループの業績に与える影響について検討を進め、FSB(金融安定理事会)により設立されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を参照し、サステナビリティ委員会において検討のうえ、枠組みに沿った情報開示を進めてまいります。当該対応の一環として、国際的なESG評価機関であるCDP(Carbon Disclosure Project)質問書への回答を実施しております。なお、TCFD提言への対応など、企業のサステナビリティに関する取り組みへの関心が非常に高まっている状況から、気候変動への世界的な意識の高まりとともに、サステナビリティ開示の重要性がクローズアップされてきており、収益機会という観点からは、サステナビリティ開示支援/コンサルティングサービスが、当社グループの事業にとって大きな柱になっていく可能性があると認識しております。

 

また、当社グループの最も重要な基盤は、当社グループの役職員、事業に関わる協力パートナーを含む、全ての人材であります。2030年に向けたあるべき姿の実現に向け、各マテリアリティにおいて定めた2030年までのアクションプランを実行し、実現することを目標としていくことで、持続的に企業価値を高め、人的資本の成長と信頼関係の発展を図ってまいります。その実現のための人材育成方針と社内環境整備方針は以下の通りであります。

 

人材育成方針

目指す人材像が持つ要素

育成方針

最善のサービスへの探求心と実現に向けた向上心

一人一人の価値観とキャリアに真摯に向き合い、さまざまな価値観を組織として受け入れ、皆が同じ目標に向かい一体となる体制を構築する。

クライアントニーズへの対応力

一人一人のキャリアビジョンを踏まえ、役職員、協力パートナーの専門能力の成長に繋がるチーム組成を推進し、クライアントニーズへの対応力の向上を図る。

チームスピリット

特定の能力、特定のキャリアパスに捉われることなく、ジェンダー、世代、

国籍、理念等の違いを超え、ダイバーシティの尊重を浸透させる。

高い成長意欲

サステナブルなビジョンを共有し、人材育成の支援体制を構築する。

 

 

社内環境整備方針

グループとしての一体感を持ち、各社の特徴を活かしたサービスを展開していくことが、時代の変化に速やかに対応しサステナブルな企業環境を創出することになると考えます。

そのためには、専門的な知識に加え、多様な視点を持つ人材が必要となります。グループ経営の基盤となる人材を確保し定着させるためには、個々の社員が、キャリアビジョンを描け、可能性を追求し、成長を実感できる、働きやすい社内環境を整備しなければならないと考えます。

グループ各社の枠を超えた横断的な交流を加速させ、課題を共有し解決策を図る場を今以上に整え、従来の方法にとらわれることのない学びの場や、働きやすい環境(社員の健康に配慮した制度の構築、フリーアドレス等オフィス環境の整備、カウンセリングルームの設置、テレワーク等による多様な働き方の展開等)を創出していきたいと考えております。また、従業員エンゲージメントサーベイを実施し、双方向・全社的な職場環境改善を推進します。

グループ各社に適合した社内環境の整備が、当社グループの推進力となり、ひいては従業員の幸せに結びつくよう、今後も継続して効果的な施策を検討し社内環境の整備に努めてまいります。

 

(3)リスク管理

当社は、気候変動を含む全社的なリスクについて、事業遂行上想定される影響度や発生可能性を考慮のうえ、取締役会において総合的な評価を行い、BCPの策定を含めて必要な対策について検討を行っております。

当社は、サステナビリティ委員会の提言により、サステナビリティ実行委員会を構成して準備作業を行っております。

当社グループの事業は、ディスクロージャー関連事業及び通訳・翻訳事業が主体であり、気候変動への将来的な影響は僅少であると認識しておりますが、今後の気候変動が当社グループの事業に対して与えるリスクについては、取締役会において慎重に検討してまいる所存であります。

各事業において改めてリスクと機会を洗い出し、認識したリスクおよび機会に対して、リスクについてはその統制可能性に照らし許容可能な水準まで低減させるために必要な具体的な対策を進めており、また機会については、各事業が取り組むべき施策を特定したマテリアリティの重要テーマに沿って中長期の視点で検討し、取締役会へ報告しております。引き続き検討および評価を継続してまいります。

 

(4)指標及び目標

当社グループは、(2)戦略で記載の通り、環境に対する様々な取り組みを行ってきました。今後も、この取り組みを深化させ継続してまいります。そして地球規模の気候変動に対応するため、国際機関・国内行政機関や関係各所の提言等に対し、マテリアリティアクションプランと連動し解決を図る具体的指標、及び当社グループとしての目標を、適切な時点で定めていきたいと考えています。

 

また、各マテリアリティを解決するためには、人的資本の持続的な成長と信頼関係の発展を図る必要があります。社員一人一人のもつ多様性を認め活かすことで、グループの重要基盤である人材のキャリア形成を支援し、エンゲージメントの向上を図り、企業価値を持続的に高めてまいります。そのために、『管理職に占める女性労働者の割合』『男性労働者の育児休業取得率』『労働者の男女の賃金の差異』を指標とし、ジェンダーギャップの解消の進捗や、人材の多様性の確保の状況を把握してまいります。また、働きやすい環境整備の進展と相関関係にあるワーク・ライフ・バランス度合いを計る上で、『有給休暇取得率』は有効なデータとなると考え指標としています。なお、具体的な目標数値については、当社グループ各社共通の最も適当な値の検討を進めており、今後設定してまいります。

 

そのために、

■管理職に占める女性労働者の割合

■男性労働者の育児休業取得率

■労働者の男女の賃金の差異

を指標とし、ジェンダーギャップの解消の進捗や、人材の多様性の確保の状況を把握してまいります。

また、働きやすい環境整備の進展と相関関係にあるワーク・ライフ・バランス度合いを計る上で、

■有給休暇取得率

は有効なデータとなると考え指標としています。

なお、具体的な目標数値については、当社グループ各社共通の最も適当な値の検討を進めており、今後設定してまいります。

指標

現況

管理職に占める女性労働者の割合(注1、2、4)

18.6%

男性労働者の育児休業取得率(注1、3、4)

100.0%

労働者の男女の賃金の差異(注1、2、4)

71.4%

有給休暇取得率(注1、4)

66.3%

 

(注) 1.連結ベース各社の事業年度が異なるため、各指標の数値につきましては、異なる事業年度ベースで集計しています。

2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。 

4.連結ベース各社においては、各社異なる人事制度を運用していますが、性別を理由に待遇・条件が異なることはございません。

 

3 【事業等のリスク】

当社は、取締役会がリスク管理体制を構築する責任と権限を有し、これに従い2006年よりリスク管理に係る危機管理規程を制定・施行し、リスク管理体制を構築しております。また、2022年1月に設置したサステナビリティ委員会において、リスク項目の定期的な見直しを議論し、新たな対応策の検討・モニタリングを実施しております。

取締役会として、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項として、以下のようなものを認識しております。ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、別段の表示が無い限り、当該事項は提出日現在において判断したものです。


①  情報漏洩等に関するリスク(影響度:大)

当社グループが取扱う顧客のデータの中には、インサイダー取引規制に該当するものも含む開示前機密データや個人情報があり、万一情報漏洩や情報流出、インサイダー取引等が生じた場合は、当社グループの信用および業績に多大な影響を与える可能性があります。このため、当社グループにおいては、プライバシーマーク認証の取得や情報セキュリティに対応するためのISMS認証を取得するなど(※)、システムと運用の両面で整備、強化するとともに、インサイダー取引管理規程をはじめとする諸規程を制定し、従業員教育を徹底するなど機密保持に努めております。

また、サイバー攻撃によるランサムウェアへの感染によって業務停止やシステムサービスの停止が発生した場合、当社グループの事業に重大な影響を与えることが懸念されるため、2022年2月に設置した情報セキュリティ委員会における重要課題として、システムセキュリティの強化や従業員への作業ルールの周知徹底を図っております。顧客に対するサービス内容は、EDINETをはじめとしたディスクロージャーのIT化の流れを踏まえ、IT技術を有効に活用したものとなってきております。そのため、当社グループは情報漏洩の事故防止の観点から顧客の情報セキュリティの確保を最重要課題と位置づけ、より強固な管理体制の構築に努めております。また、社内の資料等につきましても、情報管理規程の見直しを行い、更にその施行細則である情報管理実行マニュアルを制定・運用し、情報の管理に努めております。

(※)認証範囲の詳細については、当社ホームページ

(https://www.takara-company.co.jp/sustainability/mark.html)をご確認ください。

 

②  人的資本に係る影響~人材採用リスク(影響度:大)

当社グループは、従業員の高度な専門性を生かした顧客へのサービス提供を強みとしており、ディスクロージャー制度の変革やICT技術の進化に対応し、持続的な成長を継続するには優秀な人材を獲得し育成することが不可欠です。国内の急速な人口減を背景として、長期的に必要となる人材の確保および育成が進まなかった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、マテリアリティ(重要課題)の一つとして「従業員の幸せ」を特定しております。当該マテリアリティに即したアクションプランを着実に実行していくことで、ウェルビーイングの実現を重視した従業員教育や福利厚生の充実を図り、従業員にとって柔軟な職場環境を整備することで、専門性の高い人材を獲得し、高い成長を実現できる、働きやすい企業であり続けられるよう取り組んでまいります。

 

 

③  人的資本に係る影響~人材成長リスク(影響度:大)

当社グループの事業においては高度な専門性が必要であり、ステークホルダーへの提供価値を最大化するためには事業に関わるすべての人材の成長が不可欠となります。人材成長が進まなかった場合、新商品やシステム新機能の開発の停滞による競争力の低下、アドバイザリーの品質低下等による顧客からの信頼性の低下等の影響を与える可能性があります。当社グループでは以下施策を実施することにより、すべての人材が成長を志向し、高い成長性を実現できるよう取り組んでまいります。

・OJTの充実と共に、各社、各部の教育プログラムを見える化し、ベストプラクティスを共有する体制を推進

・ナレッジ共有システムにより、専門能力を強化する機会を拡充

・定型業務のDX化の推進により、専門能力向上に充てる時間を拡大

・ICTリテラシーの向上のための施策を実施

・人材成長に繋がる異動の積極化

 

④  気候変動、自然災害および不測の事態等による損害リスク(影響度:大)

国内外における大規模な震災や津波、台風、洪水等の自然災害、インフラの停止、政情不安、爆発等の人災その他の不測の事態が発生した場合には、仕入先の被災に起因する供給不足、交通、流通サービスおよびサービスチャネルの障害、電気・水道等の停止、需要の減少、従業員の被災等により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があり、気候変動による自然災害リスクへの影響や地政学・経済安全保障リスクの顕在化について、継続的に留意してまいります。

 

⑤  ディスクロージャー関連法令等の改正および会計基準の変更が業績に大きな影響を与えるリスク(影響度:大)

当社グループ事業の根幹であるディスクロージャー関連書類の多くは、金融商品取引法および会社法に基づいて作成されておりますが、近年は投資家保護の観点等から、より適切な開示内容が求められ、法律や関連する諸制度の改正が頻繁に行われております。また、わが国の会計基準はIFRSとのコンバージェンスを進め、毎年多くの改正が行われております。

これらの改正等により、当社グループが受注しているディスクロージャー関連書類は、記載内容の変更等に伴いページ数や印刷物の必要部数の増減が生じるなど、当社グループの売上に影響を与えることがあります。

EDINETの高度化、株主総会資料の電子提供制度の開始、四半期開示制度の見直しなど、ディスクロージャーの開示手段および方法も度々変更されており、大規模なシステム改修を行うことによって、顧客のディスクロージャー実務の支援を継続しなければならない場合もあります。

当社グループは、このような改正の動向を一早く把握し、対応策を素早く講ずることができるよう、常にディスクロージャー制度や会計基準に関するあらゆる情報を収集・分析するとともに、社内各部署と十分に情報共有を行い対応しております。特に、昨今の国内のサステナビリティ開示の動きをリードする国際ディスクロージャー動向の情報収集機能については、更なる拡充を検討してまいります。

 

⑥ 技術革新や国際的な紛争・感染症等により、通訳・翻訳に係る市場環境に大きな影響を与えるリスク(影響度:大)

当社グループが顧客とする企業のグローバル化、そして顧客の株主のグローバル化等、当社グループを取り巻く環境は年々ボーダレス化しており、英語を始めとした翻訳ニーズの高まりは続くと考えております。

しかしながら、AIや自動翻訳の進展による翻訳ニーズの減少や感染症の世界的拡大の影響による国際展示会、国際カンファレンス等の減少、見合わせにおける通訳ニーズの減少などが発生することがあります。これらに対して、より高品質な翻訳支援ツールや遠隔地からの同時通訳を可能にするシステム等の機能向上と運用拡充など対応を進めております。

 

 

⑦ AI化の進展による市場変化により競争力が低下するリスク(影響度:大)

当社グループの提供価値である、高度な専門性を生かして積み重ねたノウハウが、日進月歩のAI化の進展により、無力化・陳腐化する可能性があります。当社グループは、ディスクロージャー関連事業、通訳・翻訳事業ともにAI技術の変化を適時把握する体制を構築し、競争優位を確保するため迅速な製品・サービスへのAI技術取り込みを進めております。

 

⑧  新規上場会社数減、上場会社数減、ファイナンス件数減等による株式市場からのマイナス影響が生じるリスク(影響度:中)

当社グループが専門領域としているディスクロージャー関連書類の作成につきましては、有価証券報告書や株主総会招集通知などの継続開示書類と、株式の新規上場時の申請書類やファイナンスに関する書類などの不定期開示書類とがあります。このうち不定期開示書類関連の受注は、株式市場動向の影響を受けやすく、当社グループの売上および利益が大きな影響を受けることがあります。

また、上場会社数の減少は、当社グループにとって顧客の減少に繋がることから、売上および利益の減少要因となります。

当社グループはこの影響を軽減するため、継続開示に関するサービスの拡充を図るとともに、グループシナジーを発揮した通訳・翻訳案件等の受注品目の拡大、未上場企業向け新規サービスの拡大等を通じて、業績の安定を進めております。

 

⑨  M&Aの失敗により生じるリスク(影響度:中)

当社グループは、事業戦略上、企業価値の向上を目的として必要に応じて他企業の買収、他企業への出資、他企業との提携および協力体制構築等を入念に調査、分析、検討し、その結果、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合には、今後も企業や事業の買収、組織再編等を行うことも考えられます。

しかしながら、下記に想定される事象があった場合等には、のれんに係る減損損失の発生等により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループ会社間におけるシナジーが当初想定したほど発揮されない場合、または想定しなかった重大な問題点が買収後に発見された場合

・異なる企業文化等により営業、人員、技術および組織の統合ができない場合

・買収又は提携した事業におけるサービスに対する継続的な需要を維持し又はかかるサービスを販売することができない場合

・当社グループの内部統制体制を買収した事業に適用することができない場合

・効果的なブランドおよびサービスポートフォリオを構築することができない場合

・異なるサービスラインにおける販売および市場戦略の連携ができない場合

 

⑩  環境問題への対応が不十分なことによるブランド毀損等のリスク(影響度:中)

気候変動、水リスク等の環境問題の深刻化は国内外における環境規制強化につながっています。印刷に係る原材料およびその処理は十分な対応を施しておりますが、規制に準じるだけではなく、環境配慮認定を受けた自社工場印刷工程の更なる改善、FSC認証紙使用の提案や「ネットで招集」など電子化に対応する各種サービスの拡充など、環境問題へ対応する活動を積極的に行っております。

 

⑪  売上高の季節的変動を要因として業績停滞に繋がるリスク(影響度:中)

当社グループの売上高は、ディスクロージャー関連事業において顧客の決算期が3月に集中していることに伴い季節的変動があり、第1四半期および第4四半期の売上高が他の四半期に比べて大きくなる傾向があります。このような受注量の変動に対しては、好業績となる時期にずれがある通訳・翻訳事業サービスの更なる拡充、ならびにディスクロージャー関連新事業領域の創出・拡大による業績の分散化を図るとともに、当社グループ内での機械および人的リソースの活用等によって内製化率の向上を図るなどのグループシナジーを発揮し、生産体制の更なる向上にも注力しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、経済活動の正常化に伴うインバウンド需要の大幅な回復や堅調な企業業績等を背景に、雇用・所得環境の改善など景気は緩やかな回復が続きましたが、原材料・エネルギー価格の高止まりや継続する物価上昇など設備投資や個人消費が下振れする懸念要素もあり、また米国による今後の政策変更や、中東における紛争のほか海外情勢の緊迫化など依然として不透明な状況が続いております。

こうした状況のもと、当社グループのディスクロージャー関連事業に関係が深い国内株式市場においては、国内景気の本格的な回復および業績好調な半導体関連株への期待等を背景に昨年7月初旬には再び日経平均株価は40,000円台を回復しました。8月初旬には過去最大の下げ幅を記録した後は緩やかな持ち直しを見せるも、本年4月には米国および中国の関税政策への不透明感等から一時大幅な下落に転じるなど不安定な状況は続き、日経平均株価は31,000円台から42,000円台の水準で推移しました。

このような事業環境において、多様化・高度化する情報開示に対するシステムの技術革新等を含めた対応要請、オンライン化、事業体のグローバル化への動きは今後も一層進展していくものと考えております。

ディスクロージャー関連事業では、企業価値の拡大を目指すお客様のニーズにお応えするべく、決算開示実務の一層の利便性向上を推進する統合型ビジネスレポートシステム「WizLabo(ウィズラボ)」の導入社数の増加に注力し、「ネットで招集」や株主総会の動画配信(ライブ・オンデマンド)を始めとする株主総会プロセスの電子化への対応、各種製品・サービスへの先進的テクノロジーの組み入れ対応にも引き続き取り組んでまいりました。また、改訂コーポレートガバナンス・コード適用や資本コストを意識した経営の実現に向け積極性を増すステークホルダーとの対話、海外投資家に向けた英語での会社情報の開示への一層の取り組みに際して必要となるIR支援・翻訳サービスのほかにも、サステナビリティ情報を含む非財務情報開示の充実化への需要に対する統合報告書の作成や環境関連のコンサルティング等、各サービスにおける提案力・制作体制・品質の強化を進めてまいりました。このほか、日常の定形的な業務等においてはグループ内にあるRPAの担当部署が連携する形でロボによる自動化、効率化をより一層推進し、年間合計で3万時間超の業務代行をRPAの活用で対応している状況となっております。

通訳・翻訳事業では、通訳事業においては、日本での国際会議、イベントが復活し、コロナ禍で需要が増えたオンラインでの社内会議が安定的に推移したことにより、オンサイトでの会議、オンラインとの組み合わせによるハイブリッド型会議など、大型イベントに落ち着きが見られるものの様々な形式で顧客数が増加しております。翻訳事業においては受注件数が増加しており、体制の強化に努めるとともに、通訳翻訳業界におけるAI影響のリサーチを行い、変化する顧客ニーズに対応する新たな製品として翻訳プラットフォーム「SIMULwiz(サイマルウィズ)」や「AI通訳」の販売を開始するなど、提供体制を整えることにも注力してまいりました。

 

その結果、当連結会計年度の売上高は29,678百万円(前連結会計年度比400百万円増、同1.4%増)となりました。利益面については、営業利益は4,048百万円(同182百万円減、同4.3%減)、経常利益は4,239百万円(同68百万円減、同1.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,075百万円(同1,061百万円増、同35.2%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

なお、セグメントの業績数値は、セグメント間の内部売上高または振替高を相殺消去し記載しております。

(ディスクロージャー関連事業)

当セグメントにおきましては、統合型ビジネスレポートシステム「WizLabo」や目論見書等の売上が増加したことにより、売上高は21,761百万円(同689百万円増、同3.3%増)となりましたが、製造コスト及び人件費、経費の増加等により、セグメント利益は3,361百万円(同7百万円減、同0.2%減)となりました。

「ディスクロージャー関連事業」を製品区分別にご説明いたしますと、次のとおりであります。

・金融商品取引法関連製品

統合型ビジネスレポートシステム「WizLabo」の導入顧客数の増加や、目論見書の売上が増加したことにより、売上高は8,727百万円(同895百万円増、同11.4%増)となりました。

 

・会社法関連製品

お客様の多くが3月決算会社のため、株主総会関連製品の納品が5月から6月に集中します。近年は株主総会招集通知の早期開示傾向の影響により、関連する売上が5月に移行する動きが見られます。前連結会計年度は電子提供の定着化を背景にその傾向がより顕著となりました。これにより売上高は6,505百万円(同95百万円減、同1.4%減)となりました。

・IR関連製品

統合報告書の売上が増加したことにより、売上高は4,907百万円(同173百万円増、同3.7%増)となりました。

・その他製品

企業の開示プロセス支援に係るシステム開発の売上が減少したことにより、売上高は1,621百万円(同284百万円減、同14.9%減)となりました。

 

なお、当セグメントの売上高はお客様の決算期が3月に集中していることに伴い季節的変動があり、第1四半期および第4四半期の売上高が他の四半期に比べて多くなる傾向があります。

 

(通訳・翻訳事業)

当セグメントにおきましては、売上高は7,917百万円(同289百万円減、同3.5%減)となりました。

通訳事業においては、2023年5月前後からコロナ禍で中止、延期となっていたイベントや国際会議などが実施され需要が一気に増えましたが、2023年後半から通常に戻りつつあります。コロナ禍で増えたオンラインでの社内会議は引き続き需要があり、オンサイトでの会議、オンラインとの組み合わせによるハイブリッド型会議など様々な形式での案件があり、取引社数及び受注数は対前連結会計年度比で増加したことでほぼ2023年5月期並みで推移しました。

翻訳事業においては海外顧客からの発注は堅調ではあるもののプロジェクトの延期、また、国内においてはAI翻訳の影響もあり、売上高は前連結会計年度を下回りました。

また、利益面では、売上高が減少したのに加え、体制強化による販管費の増加や機械翻訳による効率化を進めるための初期費用の計上があり、セグメント利益は388百万円(同139百万円減、同26.5%減)となりました。

 

また、当連結会計年度における財政状態の概況は次のとおりであります。

・資産

流動資産は、前連結会計年度末に比べて4,612百万円(21.5%)増加し、26,111百万円となりました。これは、現金及び預金が4,505百万円、仕掛品が132百万円それぞれ増加したことなどによります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて749百万円(5.1%)減少し、13,946百万円となりました。これは、のれんが503百万円、退職給付に係る資産が140百万円それぞれ増加し、土地が792百万円、ソフトウエアが131百万円それぞれ減少したことなどによります。

この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて3,863百万円(10.7%)増加し、40,058百万円となりました。

・負債

流動負債は、前連結会計年度末に比べて621百万円(8.9%)増加し、7,567百万円となりました。これは、買掛金が249百万円、未払費用が257百万円それぞれ増加したことなどによります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて516百万円(41.4%)増加し、1,763百万円となりました。これは、繰延税金負債が433百万円増加したことなどによります。

この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて1,137百万円(13.9%)増加し、9,331百万円となりました。

・純資産

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて2,725百万円(9.7%)増加し、30,727百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益4,075百万円の計上による増加と剰余金の配当1,103百万円による減少などによります。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ4,505百万円(31.0%)増加し、19,041百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

・ 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果得られた資金は4,366百万円(前連結会計年度比30.1%増)となりました。

収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益6,017百万円であり、支出の主な内訳は、固定資産売却益1,794百万円および法人税等の支払額1,350百万円であります。

・ 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果得られた資金は1,271百万円(前連結会計年度は832百万円の使用)となりました。

収入の主な内訳は、有形固定資産の売却による収入2,742百万円であり、支出の主な内訳は、有形・無形固定資産の取得による支出956百万円および連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出508百万円であります。

・ 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果使用した資金は1,127百万円(前連結会計年度比17.8%減)となりました。

支出の主な内訳は、配当金の支払額1,100百万円であります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは、「第5  経理の状況 1 連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおり「ディスクロージャー関連事業」、「通訳・翻訳事業」の2つを報告セグメントとしております。

なお、「ディスクロージャー関連事業」の生産、受注及び販売の実績につきましては従来と同様に、金融商品取引法関連、会社法関連、IR関連、その他の4製品区分別に記載しております。

 

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメント別及び製品区分別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

製品区分別の名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

ディスクロージャー
関連事業

金融商品取引法関連

8,727,610

111.4

会社法関連

6,505,273

98.6

IR関連

4,907,338

103.7

その他

1,621,154

85.1

ディスクロージャー関連事業 計

21,761,376

103.3

通訳・翻訳事業

通訳・翻訳

7,917,408

96.5

合  計

29,678,785

101.4

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメント別及び製品区分別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

製品区分別の名称

受注高
(千円)

前年同期比
(%)

受注残高
(千円)

前年同期比
(%)

ディスクロージャー
関連事業

金融商品取引法関連

8,660,170

104.6

3,464,846

98.1

会社法関連

6,642,405

104.5

1,492,848

110.1

IR関連

4,630,895

96.0

1,235,098

81.7

その他

1,647,820

82.1

277,302

110.6

ディスクロージャー
関連事業 計

21,581,292

100.5

6,470,096

97.3

通訳・翻訳事業

通訳・翻訳

7,906,362

96.5

18,397

62.5

合  計

29,487,654

99.4

6,488,494

97.1

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント別及び製品区分別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

製品区分別の名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

ディスクロージャー
関連事業

金融商品取引法関連

8,727,610

111.4

会社法関連

6,505,273

98.6

IR関連

4,907,338

103.7

その他

1,621,154

85.1

ディスクロージャー関連事業 計

21,761,376

103.3

通訳・翻訳事業

通訳・翻訳

7,917,408

96.5

合  計

29,678,785

101.4

 

(注) 最近2連結会計年度において、総販売実績の10%以上を占める販売顧客に該当するものはありません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(財政状態の分析)

当連結会計年度末の総資産については、前連結会計年度末に比べて3,863百万円(10.7%)増加し、40,058百万円となりました。これは主に、現金及び預金が4,505百万円増加し、土地が792百万円減少したことなどによります。現金及び預金の増加要因は、統合型ビジネスレポートシステム「WizLabo」や目論見書、統合報告書の売上が増加したことや、経営資源の効率的活用等を目的とした土地・建物の売却などによります。

負債については、前連結会計年度末に比べて1,137百万円(13.9%)増加し、9,331百万円となりました。これは主に、買掛金が249百万円、未払費用が257百万円繰延税金負債が433百万円増加したことなどによります。

 

純資産については、前連結会計年度末に比べて2,725百万円(9.7%)増加し、30,727百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益4,075百万円の計上による増加と剰余金の配当1,103百万円による減少などによります。

(経営成績の分析)

当社グループの当連結会計年度の売上高は29,678百万円(前連結会計年度比400百万円増、同1.4%増)となりました。その要因についてセグメントごとにご説明いたしますと次のとおりであります。

なお、セグメントの業績数値は、セグメント間の内部売上高または振替高を相殺消去し記載しております。

 

a. ディスクロージャー関連事業

当セグメントにおきましては、統合型ビジネスレポートシステム「WizLabo」や目論見書、統合報告書等の売上が増加したことにより、売上高は21,761百万円(同689百万円増、同3.3%増)となりましたが、製造コスト及び人件費、経費の増加等により、セグメント利益は3,361百万円(同7百万円減、同0.2%減)となりました。

製品区分別に売上高をご説明いたしますと、次のとおりであります。

・金融商品取引法関連製品

当製品の売上高は8,727百万円(同895百万円増、同11.4%増)となりました。

主な増加要因は、統合型ビジネスレポートシステム「WizLabo」の導入顧客数が増加したことや、目論見書の売上が増加したことによります。当社グループの専門性を生かし、決算業務の支援から開示書類の作成支援、制度開示用書類作成システムの入力代行サポートまで幅広い対応を行うことで売上が増加いたしました。また、新規上場(IPO)支援につきましても受注が増加しており、2024年は新規上場会社数に対する当社シェアが52%と過半数を超える件数の上場支援を手掛けております。

・会社法関連製品

当製品の売上高は6,505百万円(同95百万円減、同1.4%減)となりました。

主な減少要因は、株主総会招集通知の売上が減少したことによります。お客様の多くが3月決算会社のため、株主総会関連製品の納品が5月から6月に集中します。近年は株主総会招集通知の早期開示傾向の影響により、関連する売上が5月に移行する動きが見られます。前連結会計年度は上場会社で株主総会資料の電子提供制度義務化が2年目を迎え、株主との建設的な対話促進等を理由として早期提供の傾向がより顕著となりました。この影響により、顧客数は増加しているものの、前連結会計年度との増減比較では減少となりました。

・IR関連製品

当製品の売上高は4,907百万円(同173百万円増、同3.7%増)となりました。

主な増加要因は、非財務情報を投資判断に盛り込むESG投資の広がりを背景に、財務・非財務情報を結び付けて企業価値向上の取り組みを発信する場として統合報告書を発行する企業数が増加したことなどによります。また発行企業の多くが英文版も発行しており、翻訳ニーズの増加も売上増加の要因となりました。

・その他製品

当製品の売上高は1,621百万円(同284百万円減、同14.9%減)となりました。

主な減少要因は、前期に企業の開示プロセス支援に係るシステム開発を受注したことなどによります。

 

b. 通訳・翻訳事業

当セグメントにおきましては、売上高は7,917百万円(同289百万円減、同3.5%減)となりました。

通訳事業においては、2023年5月前後からコロナ禍で中止、延期となっていたイベントや国際会議などが実施され需要が一気に増えましたが、2023年後半から通常に戻りつつあります。コロナ禍で増えたオンラインでの社内会議は引き続き需要があり、オンサイトでの会議、オンラインとの組み合わせによるハイブリッド型会議など様々な形式での案件があり、取引社数及び受注数は対前連結会計年度比で増加したことでほぼ2023年5月期並みで推移しました。

翻訳事業においては海外顧客からの発注は堅調ではあるもののプロジェクトの延期、また、国内においてはAI翻訳の影響もあり、売上高は前連結会計年度を下回りました。

 また、利益面では、売上高が減少したのに加え、体制強化による販管費の増加や機械翻訳による効率化を進めるための初期費用の計上があり、セグメント利益は388百万円(同139百万円減、同26.5%減)となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

当社グループにおける資金需要の主なものは、製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用による運転資金および設備投資資金であります。当社グループの資金の源泉は主として営業活動によるキャッシュ・フローであります。

当社グループは、営業活動により獲得したキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計を重要な資金の調達源として位置づけております。

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フロー及び投資活動によるキャッシュ・フローは、統合型ビジネスレポートシステム「WizLabo」の機能向上に係るシステム開発などによる支出を、「WizLabo」の導入顧客数増加や目論見書、統合報告書等の売上増加に伴う収入が上回ったことに加え、土地・建物の売却により、5,638百万円の収入となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額1,100百万円などにより、1,127百万円の支出となりました。以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比4,505百万円増加し、19,041百万円になりました。

なお、当社グループは十分な水準の手元流動性を確保しております。一方で、今後の事業展開に伴う新たなる資金需要に対しての機動的対応策として金融機関からの借入も選択の範囲においております。当社グループと各取引金融機関は現在良好な関係にあり、新たなる借入負担に対する余力を備えております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、資産の評価や引当金の計上など一部に将来の合理的な見積りが求められているものもあります。これらの見積りは当社グループにおける過去の実績・現状・将来計画を考慮し、合理的と考えられる事項に基づき判断しておりますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表  注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは2024年5月期から2026年5月期までの3年間を計画期間とする中期経営計画を「新・中期経営計画2026」として2023年7月7日開催の取締役会にて策定しております。また、2026年5月期の目標を進捗の状況および今後の業績を勘案し修正することについて、2025年7月9日開催の取締役会で決議しており、目標達成に向けて取り組みを進めております。

この計画の2年目となる当連結会計年度においては、売上高296億円、営業利益40億円、親会社株主に帰属する当期純利益40億円、営業利益率13.6%、ROE14.1%となりました。親会社株主に帰属する当期純利益に関しては最終年度の計画値を上回る着地となりましたが、特別利益の計上に伴う一過性の要因によるものです。

増収要因は、ディスクロージャー関連事業の主力製品である統合型ビジネスレポートシステム「WizLabo」の導入顧客数の増加、目論見書や統合報告書等の売上が増加したことなどによります。営業利益の減益要因は、人件費や職場環境の改善などの経費の増加などによります。親会社株主に帰属する当期純利益の増益要因は、特別利益である固定資産売却益の計上などによります。

計画期間最終期となる2026年5月期における経営数値目標は、売上高330億円、営業利益44億円、営業利益率13.3%、親会社株主に帰属する当期純利益31億円、ROE10.0%以上として設定しております。

なお、本見通しは2025年7月9日現在において見積もったものでありますが、現時点で変更はございません。

 

 

5 【重要な契約等】

当社は、当連結会計年度において、株式会社ジェイ・トラストの全株式を譲り受ける株式譲渡契約を締結し、2025年5月23日付で子会社化いたしました。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。