第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社は創業以来、地図業界のリーディングカンパニーとして地図関連情報の提供を通じ、社会に貢献し続けることを活動の基本として事業を拡大してまいりました。当社グループは、「知・時空間情報の創造により人びとの生活に貢献します」を企業理念として掲げ、「Maps to the Future」のスローガンのもと、地図情報で未来を創造していくことを使命として企業運営を行い、「情報を地図化する世界一の企業」となることを目指しております。

また、株主の皆様にとって魅力ある企業集団であることを目指すとともに、お客様及び従業員を大切にし、社会に貢献し続けていく企業集団でありたいと考えております。

(2) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略

当社グループが属する地図業界では、これまでは、詳細で正確な情報に基づいた、わかりやすく使いやすい地図やサービスの提供が求められており、当社グループは、地図に付加価値を加えることで市場のニーズに応え、事業を拡大してまいりました。昨今の市場のニーズは、自動運転やMaaSに代表されるように、社会や産業の課題解決を目的とし、人だけでなくシステムが判断するために必要となる三次元化を含めた現実世界の再現にシフトしております。技術革新や高度なネットワーク社会の実現により、現実世界から様々なデータを収集・解析し、現実世界へフィードバックすることで新たなサービスを創造・展開していくことが可能となった現在では、最新技術の活用と大規模資本を背景とした大手IT企業等の参入もあり、当業界の競争は激化しております。

一方で、一般に流通している情報が多すぎるがゆえに、必要な情報を正しく素早く入手することが困難な状況も発生しており、多様化した市場のニーズに対応するためには、情報を過不足なく適時適切に提供することが重要になってまいりました。

当社グループは、位置情報の提供を通じて社会課題の解決を支援することで、持続的な企業成長を目指すサステナビリティ経営を方針として掲げており、6ヵ年の中長期経営計画「ZENRIN GROWTH PLAN 2025(以下、ZGP25)」(2020年3月期~2025年3月期)を2019年4月よりスタートいたしました。ZGP25では、当社グループを取り巻く環境の変化に素早く対応すべく、『ネットワーク社会における「量と質」の最適化』をテーマに、3つの基本方針を掲げ、①事業活動において利用用途をつなげて「コト」を価値化すること、②生産活動において位置情報をつなげて「モノ」を多様化すること、③事業及び生産活動を支えるため、個の知恵をつなげて「ヒト」を人財化することに取り組んでおります。

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

2020年3月期から2022年3月期までの1st Stageは「ビジネスモデル変革時期」と位置づけ、フロー型ビジネスからストック型ビジネスへの転換を着実に進めてまいりました。

2023年3月期から2025年3月期までの2nd Stageは「ビジネスモデル具現化」と位置づけ、次の成長ステージへ飛躍するため、コロナ禍により低迷した業績の早期回復に努めております。2nd Stageの2年目である2024年3月期は、地域課題の解決を支援する観光DXの推進のほか、位置情報の精度向上に係る先行投資に加え、ベースアップなど人的資本への投資を実行いたしました。最終年度である2025年3月期も、ストック型サービスやソリューションサービスの拡大に加え、顕在化した社会課題の解決のため、位置情報と流通情報を最適化し、新たな価値を創造するための位置情報イノベーションへの取り組みを強化してまいります。具体的には、企業との協業により社会課題を解決する「企業共創」、地域社会と連携することで、地域の課題解決や安全・安心な社会を実現する「地域共創」を企業活動方針として掲げ、持続可能なビジネスモデルを具現化し、位置情報の精度向上に係る先行投資や人的資本投資等の投資回収を進めてまいります。

(目標達成のための取り組み)

Ⅰ.事業方針

・既存事業の収益安定化を図ります。具体的には①市場ニーズを捉えたパッケージ商品やオンデマンドサービスの投入によるストック型サービスの拡大、②既存ナビビジネスのシェア拡大に取り組んでまいります。

・不動産、物流、金融業界等の課題解決に向けたソリューションの提供により、利益成長を促します。

・スマートシティ、ドローン物流など、地域の課題解決を支援するためのビジネスモデルを確立し、収益化を目指します。

・観光MaaSや地図デザイン商品などコンシューマー向けビジネスへの取り組みを加速し、事業化に向けた投資を継続します。

Ⅱ.生産方針

スマートシティや社会全体におけるDX推進、さらには多様化するモビリティ社会へと幅広く対応するため、位置に紐づくあらゆる情報を収集・管理し、適切につなげる高精度ネットワークデータベースを構築します。

ネットワークデータベースの元となる空間情報と世の中の流通情報とを機動的につなげ、柔軟に利活用できるよう、多様性と拡張性を持たせた時空間情報の高精度化に継続して取り組んでまいります。

Ⅲ.組織・人事方針

多様な人財が活気溢れる組織でイキイキと活躍し、ステークホルダーに信頼される企業グループを目指します。

当社グループでは、経営戦略や変化する事業環境に対応できる人財の育成こそが、価値創造のマテリアリティであると捉えており、従業員のエンゲージメントレベル向上に資する各種制度の導入・運用により、「働きがい改革」に取り組んでまいります。

さらに、環境負荷低減を目指し、事業活動における温室効果ガスの排出量削減に取り組んでまいります。

Ⅳ.財務方針

利益確保及び資産効率の向上により、健全な財務基盤を維持しつつ、事業基盤強化のため、位置情報ビジネス分野への投資を継続するとともに、利益成長に基づいた株主還元を実施します。

(業績目標)

2024年3月期は、自動車生産の回復によるカーナビゲーション用地図データの販売やストック型サービスの拡大などにより前期比増収となったものの、位置情報の精度向上に係る先行投資やベースアップなどによる営業費用の増加もあり、営業利益は前期比微増にとどまりました。2025年3月期も、2期連続のベースアップなどによる費用増加を見込むものの、ストック型サービスへの移行による売上構成の変化や価格改定などにより限界利益率を向上させるとともに、流通基盤から様々なサービス・ソリューションを創出することにより資本効率を高めることを優先課題として取り組んでまいります。

以上の取り組みを踏まえ、ZGP25の最終年度である2025年3月期は、連結売上高643億円、連結営業利益36億円(連結営業利益率5.6%)、連結自己資本当期純利益率(ROE)5.0%を目指します。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当社グループのサステナビリティ経営の基本方針
   当社グループの事業はその性質上、社会と密接なつながりを持ち、高い公共性を有していることから、位置情報

の活用により社会課題の解決や安全・安心な社会の実現に貢献することが、当社グループの社会的責任・公共的使

命であると考えています。

  当社グループは、「知・時空間情報の創造により人びとの生活に貢献します」を企業理念としており、創業以

来、地図業界のリーディングカンパニーとして、情報の提供を通じて社会に新しい価値を提供するとともに、地域

社会の発展に寄与し、環境保全活動にも積極的に取り組むなど、その社会的責任を果たすべく努めてまいりまし

た。

    今後も、この企業理念に則り、サステナビリティ課題への取り組みと経営の統合をより一層推進することによ

 り、事業活動を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するとともに、経営・事業におけるサステナビリティを強

 化し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指します。

 

(2)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティ課題への対応を重要な経営課題の一つとして考え、取締役会による監督の下、取締役の中から選任されたサステナビリティ責任者及び各本部長により構成されたサステナビリティ委員会を中心としたガバナンス体制を構築しております。

サステナビリティ委員会では、サステナビリティ活動の基本方針やサステナビリティ課題に関する重要なテーマについて審議するほか、下部組織のリスク管理部会を通じて、各部門及び国内外子会社の気候変動対応を含むサステナビリティ課題に関する活動計画の集約及び実施状況をモニタリングしております。また、サステナビリティ委員会の審議内容のうち重要なものについては、経営会議及び取締役会に報告される仕組みとなっております。

 当社のサステナビリティ推進体制は下図のとおりであります。

 

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(3)戦略

    当社グループでは、取り巻く外部環境の正確な把握に努め、サステナビリティ委員会において、リスクと機会を

   分析し、社会とともに継続的に成長していくために、優先的に取り組むべき重要課題を次のとおり特定しておりま

   す。

外部環境認識と分析

外部環境認識

リスク

機会

気候変動

・対応の遅れによる企業価値毀損、

 事業継続危機

・適切な対応により企業価値、信頼性、

  事業継続性向上

・新サービス(付加価値)の創出

技術革新

・対応の遅れによる競争力低下

・参入障壁の低下による競争激化

・IoTの発展による位置情報ニーズの高まり

・新たな技術(外部連携含む)による事業プロセス

  効率化、新サービスの創出

経済・政策の変動

・パンデミックによる景気後退

・働き方改革、金融・税制改革、

  個人情報保護法等の影響

・ニューノーマルにおける新サービスの創出

・規制緩和、法整備等による新事業推進

 (ドローン、自動運転等)

人口動態

(地域格差・

  少子高齢化)

・地方の衰退

・市場縮小

・人材確保の競争激化、スキルミスマッチ

・位置情報を活用した地域活性化支援サービスの

  創出

・人材、組織改革による生産性向上と企業活性化

 

取り組むべき重要課題

事業基盤強化

・外部環境の変化、多様なニーズに対応できるデータベース基盤と提供基盤の構築

・積極的な外部連携による技術力の強化

・最新技術の導入によるデータベース整備の効率化

経営基盤強化

・変化に対応できる人財の育成(人財開発体制の強化)

・多彩な人財がイキイキと活躍できる職場環境づくり

 (中途採用含むダイバーシティの推進、働き方改革、従業員福祉の拡充)

・最適な経営管理プロセスの運用

 

 取り組むべき重要課題において事業基盤の強化を推進するにあたり、気候変動がもたらす当社グループへの影響について、TCFD※のフレームワークに基づくシナリオ分析を実施しております。シナリオ分析にあたっては、抜本的な政策転換や技術革新により脱炭素社会へ急速に進む「1.5℃または2℃シナリオ」と、気候変動対策が現状から進展せず、地球温暖化が進む「4℃シナリオ」を中心に分析・検討を行いました。分析・検討の結果、抽出された重要度の高いリスク及び機会については、事業のレジリエンスを確保する戦略を策定・推進しております。いずれのシナリオにおいても、レベルは異なるものの、カーボンプライシング・BCP対策などによる操業コスト増加や市場構造の変化が予想されますが、気候変動対策に貢献する次世代技術の進展と普及への積極的な対応及び防災・減災支援サービスの拡充等に取り組むことで、事業機会を拡大していくことができると考えております。これは当社グループが現在取り組んでいるSDGs等社会課題に対する取り組みとも整合するものです。今後も、継続的に外部環境、市場動向を注視し、戦略のPDCAを繰り返し実践することにより、レジリエンスの強化を図ってまいります。

※TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース

また、経営基盤の強化においては、当社グループを取り巻く環境は予想を超える速度で変化しており、経営戦略、外部環境の変化やニーズの多様化に対応できる人財と組織の育成が急務であります。当社グループは、「多様な人財が活気溢れる組織でイキイキと活躍し、ステークホルダーに信頼される企業グループを目指す」ことを方針に掲げ、多様性を重視した採用及び登用を行うとともに、最適な育成や適正な評価の実施、適所適材の配置による人財開発の体系化に注力しております。さらに、企業活性化のための必須条件である、安心して働ける職場環境の創出に取り組んでまいります。

 

(4)リスク管理

  当社グループでは、当社取締役の中からサステナビリティ責任者を選任し、その者を委員長とするサステナビリ

ティ委員会を設置することで、当社グループの統合的なサステナビリティ活動を推進しております。リスク管理に

ついては、企業活動に関連する内外の様々なリスクを統合的かつ適切に管理するため、リスク管理の方針をリスク

管理規程に定めるとともに、サステナビリティ委員会の下部組織としてリスク管理部会を設置し、全社的なリスク

の評価、管理を行っております。(体制図については「(2) ガバナンス」参照)

各部門及びグループ各社は、毎年1回、各々所管する業務に関連するリスクの抽出及び特定、優先度の設定、並びにその予防・軽減策及び活動計画をリスク管理部会に報告し、その承認を得て活動しております。気候関連リスクに関しても、リスク管理部会において評価、管理を行っています。同部会において、気候関連リスクの集約及び分析を行うことで、当社グループ全体の気候関連リスク状況を網羅的に把握し、対策立案とその実行を推進しております。

  リスク管理部会の内容は、サステナビリティ委員会においても情報共有され、重要な事案については同委員長で

あるサステナビリティ責任者より、経営会議及び取締役会に報告がなされることで、全社的なリスク管理の強化を

図っております。

 

(5)指標及び目標

    上記「(3) 戦略」に記載した当社グループが取り組むべき重要課題のうち、事業基盤強化において影響の大き

 い気候変動、経営基盤強化における人財確保及び育成、並びに職場環境整備について、次の指標を用いておりま

 す。

 

 ① 気候変動に関する主な指標として「温室効果ガス排出量」を用いており、社用車のハイブリッド車への切替

  えや、事業所等への再生可能エネルギーの導入等により、2050年までにネット・ゼロを目標として掲げてい

  ます。当該指標に関する実績は次のとおりであります。

 

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 ② 人財確保及び育成、並びに職場環境整備について、当社においては関連する指標のデータ管理とともに、

  具体的な取り組みが行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われていないため、当社

  グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する実績及び目標は、当社グループにお

  ける主要な事業を営む当社のものを記載しております。

指標

実績(当事業年度)

目標(2025年3月期末

管理職に占める女性労働者の割合

8.5

12%以上

外国人管理職比率

0.6

現状レベルを維持

中途採用者管理職比率

22.6

30%以上

男性労働者の育児休業取得率

80

現状レベルを維持

労働者の男女の賃金の差異(全労働者)

75.2

77%以上

有給休暇年間取得日数(平均消化率)

14.4(73.9%)

13日以上(70%以上)を維持

えるぼしの認定

2段階目

3段階目

健康経営優良法人の認定

認定

継続認定

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりであります。当社グループは、これらのリスクの存在を認識した上で、その発生を未然に防ぎ、かつ、万一発生した場合でも適切に対処するよう努める所存であります。

なお、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。いずれのリスク要因によっても、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループでは、6ヵ年の中長期経営計画「ZENRIN GROWTH PLAN 2025」(2020年3月期~2025年3月期)を2019年4月よりスタートし、2022年4月に2023年3月期~2025年3月期のローリングプランを発表しました。本計画に沿って、当社グループの持続的利益成長と企業価値の向上に全力で取り組んでおりますが、当該中長期経営計画は、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定したものであります。

従いまして、以下に記載の各リスク等を含む様々な要因により、目標達成又は期待される成果の実現に至らない可能性がありますが、計画達成に向け適切に対処してまいります。

(1) 進化する技術への対応について

当社グループは、紙媒体が主流の頃より地図制作に携わり、地図に付加価値を加え、わかりやすく使いやすい地図やサービスを提供することで事業を展開してきました。また、いち早く地図情報のデータベース化に取り組み、汎用性に優れた地図データベースの構築に成功したことで、IT技術の進歩により拡大した地図情報の用途への対応を可能にし、カーナビゲーション用データの分野でトップシェアを獲得したほか、PC、携帯電話、スマートフォン等への地図データ配信分野においても高いシェアを獲得し、地図業界のリーディングカンパニーとしての地位を確立してきました。

近年の技術革新やあらゆるものがつながる高度なネットワーク社会の実現は、現在の地図制作のプロセスを一変させるだけでなく、ユーザーの地図情報の利活用方法を大きく変容させ、市場ニーズの急激な変化をもたらす可能性があります。当社グループでは、こうした事業環境の変化に対応するため、地図データベースの情報収集から整備、用途に応じた編集、提供までを可能とする情報プラットフォーム「ZENRIN Information Platform」の拡充により、生産性向上とコスト削減を図りつつ、AI等を活用したデータベース整備の効率化や情報を最適化する編集機能の向上に取り組んでおります。

しかしながら、予想を超える急激な技術の進化及び市場ニーズの変化に対応できず、市場ニーズに合致した製品を投入できなかった場合、現在の当社グループの優位性が大幅に低下し、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 位置情報サービス関連事業への依存について

当社グループは、地図データベースの一部を利用した製品及びサービス、あるいは地図データベースそのものを販売、提供する位置情報サービス関連事業を展開し、事業を拡大してきました。当社グループの売上の大部分は、当社独自の地図データベースを基に制作される製品群及び地図データベースそのものの販売による売上に依存しております。

また、当社グループ製品の優位性確保のためには、地図データベースを最新の地図情報に更新する必要があり、毎期継続して多額の整備コストや設備投資が発生しております。

こうしたコストは売上高の増減にかかわらず継続して固定的に発生することから、一定水準の売上を確保できなければ、当該コストを回収しきれず、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 他社の参入・競争激化について

当社グループは、地図に付加価値を加えることで市場のニーズに応え、事業を拡大してまいりましたが、昨今の市場のニーズは、自動運転やMaaSに代表されるように、社会や産業の課題解決を目的とし、人だけでなくシステムが判断するために必要となる三次元化を含めた現実世界の再現にシフトしております。近年の技術革新や、あらゆるものがつながる高度なネットワーク社会が実現したことで、現実世界から様々なデータを収集・解析し、現実世界へフィードバックすることで新たなサービスを創造・展開していくことが可能となりました。

このような最新技術の活用と大規模資本を背景とした大手IT企業等の参入により当社グループの製品を凌駕する高品質の製品や用途を限定した低価格製品等が市場に投入され当業界の競争が激化した場合は当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定の取引先への依存について

当社グループの売上高は、特定の自動車メーカー関連各社及び通信事業者並びにインターネット事業者に対するものが多くを占めております。これらの取引先とは、製品の仕様検討、技術開発、地図データベースの改良などにおいて相互協力関係にあり、取引先を通じて顧客ニーズを充足する努力を続けることで、引き続き良好な協力関係の維持と発展を目指しております。また、自動車メーカー関連各社や、様々な企業との業務提携によるパートナーシップ強化により、地図データベースの技術開発及び各種コンテンツの充実並びに新たな事業領域への進出を目指しております。

しかしながら、これらの取引先の経営方針や生産計画の変更及び業績動向などの影響を受け、当社グループ製品の販売数量の減少、製品価格の引き下げ要請、取引内容変更、契約打ち切り等が生じた場合は、友好的な協力関係がもたらす成果を享受できず、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(5) 企業への投資について

当社グループは、既存事業とのシナジー強化、新たな事業領域への進出、経営効率向上のため、企業買収、第三者との合弁及び戦略的出資を積極的に実施しております。こうした投資には、多額の買収コスト又は統合費用の発生を伴います。

しかしながら、市場環境の変化や競争力の低下などにより、投資先企業が当初想定したとおりの事業展開ができない場合、当該会社の業績・財政状態の悪化、のれんの減損損失を計上する可能性があります。また、これらの投資においては、予め対象会社の法務・財務リスクなどを調査・評価しておりますが、投資時点では顕在化していない内部統制上の問題や、法令に抵触する可能性もあります。

これらの問題が発生した場合、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) コーポレートベンチャーキャピタル事業(CVC事業)について

当社グループは、ベンチャー企業への投資を通じた既存事業の成長と新規事業の創出を目的に、CVC事業に取り組んでおります。当事業においては、実質的な投資リターンよりも、当社グループの事業を相乗的に成長、発展させることに重きを置いておりますが、投資活動であるため、投資検討段階では候補先企業の詳細なデューデリジェンスを行い、投資実行後は投資先企業の事業進捗及び財務状況に対する定期的なモニタリングを徹底し、可能な限りリスクを回避するよう努めております。

しかしながら、投資先企業の業績、財務状況によっては、投資の回収ができなくなる可能性及び評価損を計上する可能性があります。

これらの問題が発生した場合、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(7) 新規ビジネスへの取り組みについて

当社グループは、新たな事業領域における新規ビジネスの開発のほか、スマートシティ、自動運転、MaaS、ドローン等の次世代の社会インフラ分野に関する取り組みも積極的に行っております。

こうした次世代の社会インフラ分野の法令や規制の整備は、現時点では不確定な部分が多く、実行判断においては最新の情報をタイムリーに入手し、慎重に見極めを行っておりますが、今後、法令や規制の整備が進むことで、現在見込んでいる通りの事業に成長しない可能性があります。また、実用化においては、当社グループ単独での展開だけでなく、他の企業グループとの提携も重要な手段の一つと考えており、当社グループでは、複数の企業グループと提携し推進しております。そのため、当社グループと提携する他の企業グループの経営方針、事業計画の変更により、当初計画通りの事業展開ができない可能性があります。

これら新規ビジネスへの取り組みにおいて、資金及び人的資源等の経営資源を投入しておりますが、当初計画通りの展開ができない場合、投入した経営資源に見合う成果を得ることができず、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(8) 商品及び製品の欠陥について

当社グループの製品は、独自の情報収集及び外部から取得した各種情報、製造ノウハウ等の集大成であり、製品化においては高度な技術と情報処理能力を必要といたします。

当社グループではそれらの製造において細心の注意を払うとともに仕入商品を含め欠陥のある商品及び製品を出荷しないように作業工程の各段階で厳重な品質検査を行っておりますがそのことが欠陥のある商品及び製品が市場に流通しないことを絶対的に保証するものではありません。

万一、当社グループが提供した商品及び製品に欠陥が発生した場合には、当該商品及び製品の回収に係るコストが発生するとともに、購入された顧客への賠償問題の発生、ブランドイメージの毀損など、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(9) 人財の確保と育成について

当社グループを取り巻く環境は予想を超える速度で変化しており、外部環境の変化に常に対応できる「知恵」を有する人財を継続的に創出するための人財開発が、重要な経営課題となっております。

多様化する市場ニーズに対応した製品を継続的に市場に投入していくためには、製品企画及び顧客提案スキルを持つ要員や、高い技術スキルを持つシステム開発要員や開発業務管理者が必要であり、また、AI、クラウドサービス等の新しい技術の進化に伴い、地図データベースの整備に関しても、こうした新技術に対応できるスキルを持った人財が欠かせない状況となっております。

このような状況に対応するため、継続的な基本給のベースアップ及び初任給の引き上げといった待遇面の改定や、様々な働き方に対応した勤務形態の導入、教育・成長支援制度の導入等、人事制度の改定も適宜実施し、能力発揮に重点を置いた人事体系とすることで、人財の確保と育成に取り組んでおりますが、こうした人財を確保又は育成できなかった場合には、当社グループの事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。

(10) 個人情報の管理について

当社グループは、顧客情報や従業員情報のほか、住宅地図等の製品に掲載・収録される居住者名、住所等の個人情報を収集・管理しており、個人情報保護法やその他類似法令を遵守し、これらの個人情報を適切に管理することは、当社の事業活動の基本であり、社会的責務であると認識しております。

当社グループでは、個人情報管理規程を定め、個人情報の取得・利用・保管・廃棄に関する手順等の社内ルールの整備、従業員教育、入退室管理等の物理的対策及びコンピュータシステムへのアクセス管理等の情報セキュリティ対策を講じております。

しかしながら、これらの個人情報が、不正アクセスや業務上の過失等により、当社グループ又は業務委託先から漏洩し賠償問題が発生した場合、また、今後関連する法令の改正等により当社が展開するサービスが規制された場合、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(11) 知的財産権の侵害について

当社グループでは、独自に開発した製造技術や新規開発製品に関するもので知的財産の保護の対象となる可能性のあるものについては、必要に応じて特許権や商標権の出願、登録を行っておりますが、必ずしもこれらの権利を取得できるとは限りません。当社グループの技術、ノウハウ又は製品名等が特許権や商標権として保護されずに他社に先んじられた場合には、当社グループの製品開発あるいは販売に支障が生じる可能性があります。

また、当社グループでは、第三者の知的財産権を侵害しないよう十分な調査を行い、注意を払っておりますが、当社グループの調査範囲が十分でかつ完全であるとは保証できません。さらに、第三者の特許権等の知的財産権が当社グループの事業にどのように適用されるのか全てを正確に想定することは困難であり、万一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者から損害賠償請求、使用差し止め等の訴えを起こされる可能性、並びに当該知的財産権に関する対価の支払いが発生する可能性があります。

これらの問題が発生した場合、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(12) 情報システムへの対応について

当社グループの業務遂行にあたっては、情報システムの円滑な運用は今や欠かせない企業基盤となっております。これらの情報システムの安全な運用にあたっては、関連規程を整備の上、各種対策を施し、地震・火災等の罹災及びサイバー攻撃に対しても、情報システムの安全及び安定稼働の確保に努めております。

しかしながら、予期できない水準の情報システム基盤の重大な障害、又は情報システムを支える電力、通信回線等のインフラに大規模な障害が発生する可能性を完全に排除することはできず、このような事態が発生した場合、各種業務活動の停止、重要なデータの喪失、当社サービスの機能低下などが発生する可能性があります。

これらの問題が発生した場合復旧費用の発生当社製品の信用力やブランドイメージの毀損などにより当社グループの事業展開財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります

(13) 自然災害等について

自然災害、火災、流行病の蔓延等により、当社グループの営業拠点及び生産拠点に被害が発生した場合、事業活動に支障が生じる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に代表されるように、流行病の蔓延等が、市況の悪化、取引先の生産計画の変更等を招き、当社グループの取引減少や新規案件開拓の遅延等がリスクとして見込まれます。当社では自然災害等の発生に備え、社員の安否確認システムの導入、自然災害発生に対する防災マニュアルの作成、建物・設備・システム等の耐震対策、必要物資の備蓄等の対策を講じており、緊急事態が発生した場合には、対策本部を設置し、事業継続計画(BCP)や各種マニュアル等に沿って迅速に対応することとしております。

しかしながら、これらによっても自然災害等による被害を完全に回避できるわけではなく、被害が発生した場合には、当社グループの経営成績や事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。

(14) 環境・気候変動について

当社グループは、企業活動と地球環境の調和を目指し、事業活動における温室効果ガスの排出量削減等の環境課題に取り組んでおります。その一環として、社用車のハイブリッド車への切替えや主要事業所における使用電力の再生可能エネルギーへの切替え等の取り組みを推進しております。今後も環境負荷低減に努め、持続可能な社会の実現を目指してまいります。

しかしながら、これらの対応が遅れた場合や適切に行われなかった場合、顧客や投資家等、ステークホルダーからの信用低下を招き、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(15) コンプライアンスについて

当社グループでは、企業理念の「知・時空間情報の創造により人びとの生活に貢献します」及び行動指針の「私たちは信頼される企業市民として、質の高い情報を企画・収集・管理・編集・提供することで、人びとにとってより適した価値を実現します」をサステナビリティ活動の基本方針とする「サステナビリティ管理規程」を定め、コンプライアンス管理体制を構築し、役員・従業員への教育啓発活動を随時実施し、企業倫理の向上及び法令遵守の強化に努めております。

しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクは完全に回避できない可能性があり、関連する法令・規制上の義務を実行できない場合には、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(16) 会計制度・税制の変更等について

当社グループに適用される会計基準や税制が新たに導入・変更された場合、また、税務申告における税務当局との見解の相違により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(17) 固定資産の減損損失について

当社グループは、有形固定資産、ソフトウエア、のれん等の固定資産を保有しております。これらの資産について、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、帳簿価額を減額し、当該減少額を減損損失として計上することとなり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(18) 退職給付制度の影響について

当社グループは、確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度を設けております。年金制度の変更、年金資産の運用状況及び数理計算で使用される割引率などの前提条件の変更により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(19) 有価証券の時価変動について

当社グループでは、CVC事業のほか、経営戦略上重要な業務提携・資金調達・仕入等に必要な企業の有価証券を保有しており、このうち市場価格のない株式等以外のものについては、時価法により評価しております。当該有価証券の保有については、関連する取引や配当金による収益及び保有コスト等を定量的に検証することで、保有先企業の収益性と安定性を精査し、中長期的な経済合理性や将来の見通しの視点より保有の適否を毎年検証しており、検証の結果、保有に適さないと判断した有価証券は売却を行うなど縮減に努めております。

しかしながら当該有価証券の時価の変動により当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(20) 繰延税金資産の取り崩しについて

当社グループでは、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上しておりますが、今後将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じた場合には取り崩しが発生し、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、このところ足踏みもみられるものの、雇用・所得環境が改善するなかで緩やかに回復する動きとなりました。一方、物価上昇や中東情勢のほか金融資本市場の変動など、先行きは不透明な状況が続いております。

このような環境の中、売上高はIoT関連で前期計上した受託案件の反動減や子会社の一部サービス終了による影響があったものの、オートモーティブ関連で自動車生産の持ち直しを背景にカーナビゲーション用データの販売が大幅に増加いたしました。加えて、官公庁向けの住宅地図データの提供や受託案件などが堅調に推移いたしました。

費用面では、増収に伴う売上原価や、位置情報の精度向上に係る地図データベース整備費用などが増加いたしました。加えて、第1四半期連結会計期間からのベースアップの影響などもあり、前年同期比で営業費用が増加いたしました。

以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高61,335百万円(前年同期比2,401百万円増加、4.1%増)、営業利益1,981百万円(前年同期比182百万円増加、10.1%増)、経常利益2,060百万円(前年同期比44百万円減少、2.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,078百万円(前年同期比692百万円減少、25.0%減)となりました。

なお、親会社株主に帰属する当期純利益が前年同期に比べ減少した理由といたしましては、前年同期に子会社の再編に伴う固定資産売却益や子会社出資金売却益等を特別利益に計上したことなどによるものであります。

当社グループの報告セグメントは単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

また、財政状態といたしまして、当連結会計年度末の総資産は、時価評価により投資有価証券が増加したことなどから75,402百万円(前連結会計年度末比5,271百万円増加、7.5%増)となりました。

負債は、短期借入金が減少したものの、前受金や繰延税金負債が増加したことなどから26,081百万円(前連結会計年度末比1,913百万円増加、7.9%増)となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したほか、投資有価証券の時価評価によりその他有価証券評価差額金が増加したことなどから49,321百万円(前連結会計年度末比3,358百万円増加、7.3%増)となりました。

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は13,213百万円(前連結会計年度末比752百万円減少、5.4%減)となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が3,412百万円となり、投資有価証券売却損益1,486百万円、法人税等の支払額510百万円などの減少要因がありましたが、減価償却費5,362百万円、前受金の増加460百万円などの増加要因により6,318百万円の収入(前年同期比222百万円減少)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入1,663百万円などの増加要因がありましたが、有形及び無形固定資産の取得による支出4,772百万円、投資有価証券の取得による支出937百万円などの減少要因があったことにより4,155百万円の支出(前年同期比1,704百万円増加)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額1,447百万円、短期借入金の純減による支出1,016百万円、長期借入金の返済による支出409百万円などの減少要因があったことにより3,114百万円の支出(前年同期比3,629百万円減少)となりました。

③ 生産、受注及び販売の実績

1)生産実績

当社グループは、位置情報及びそれに紐付く様々な情報の提供を主たる事業としており、生産実績を定義することが困難であることから、生産実績につきましては記載を省略しております。

2)受注実績

当社グループは、主に見込み生産を行っております。地図関連やソフトウエアの受託案件等、一部には受注生産も行っておりますが、その多くが短期間で販売するものであることから、受注状況につきましては記載を省略しております。

3)販売実績

当社グループは、位置情報サービス関連事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

位置情報サービス関連事業

61,335

4.1

(注) 主要な取引先(総販売実績に対する割合が10%以上)に該当するものはありませんので、記載を省略しております。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当社グループは、位置情報の提供を通じて社会課題の解決を支援することで、持続的な企業成長を目指すサステナビリティ経営を方針として掲げており、6ヵ年の中長期経営計画「ZENRIN GROWTH PLAN 2025(以下、ZGP25)」(2020年3月期~2025年3月期)を2019年4月よりスタートいたしました。

2020年3月期から2022年3月期までの1st Stageは「ビジネスモデル変革時期」と位置づけ、フロー型ビジネスからストック型ビジネスへの転換を着実に進めてまいりました。2023年3月期から2025年3月期までの2nd Stageは「ビジネスモデル具現化」と位置づけ、次の成長ステージへ飛躍するため、コロナ禍により低迷した業績の早期回復に努め、最終年度である2025年3月期には、連結売上高643億円、連結営業利益36億円(連結営業利益率5.6%)、連結自己資本当期純利益率(ROE)5.0%を目指します。

2nd Stageの2年目である2024年3月期につきましては、売上高がIoT関連で前期計上した受託案件の反動減や子会社の一部サービス終了による影響があったものの、オートモーティブ関連で自動車生産の持ち直しを背景にカーナビゲーション用データの販売が大幅に増加いたしました。加えて、官公庁向けの住宅地図データの提供や受託案件などが堅調に推移いたしました。

損益面では、増収に伴う売上原価や、位置情報の精度向上に係る地図データベース整備費用などが増加いたしました。加えて、第1四半期連結会計期間からのベースアップの影響などもあり、前年同期比で営業費用が増加いたしました。また、投資有価証券売却益を特別利益に計上しております。

以上の結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、連結売上高は61,335百万円(前年同期比2,401百万円増加、4.1%増)、連結営業利益は1,981百万円(前年同期比182百万円増加、10.1%増)となりました。また、ROEは前連結会計年度に比べ1.5ポイント減少し4.4%となりました。

2025年3月期も、2期連続のベースアップなどによる費用増加を見込むものの、ストック型サービスへの移行による売上構成の変化や価格改定などにより限界利益率を向上させるとともに、流通基盤から様々なサービス・ソリューションを創出することにより資本効率を高めることを優先課題として取り組んでまいります。

当連結会計年度末の財政状態につきましては、総資産は、時価評価により投資有価証券が増加したことなどから75,402百万円(前連結会計年度末比5,271百万円増加、7.5%増)となりました。負債は、短期借入金が減少したものの、前受金や繰延税金負債が増加したことなどから26,081百万円(前連結会計年度末比1,913百万円増加、7.9%増)となりました。純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したほか、投資有価証券の時価評価によりその他有価証券評価差額金が増加したことなどから49,321百万円(前連結会計年度末比3,358百万円増加、7.3%増)となりました。

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因及び対応策については、前述の「第2 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

なお、当社グループの報告セグメントは単一セグメントであるため、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容の記載を省略しております。

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

1)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

2)資本の財源及び資金の流動性

(ⅰ) 資金需要

当社グループの資金需要は、運転資金としては、各種地図データベースの構築のための調査業務費用などがあり、設備投資資金としては、主に各種データベース制作システムや地図情報流通基盤ソフトウエアなどへの投資があります。当連結会計年度につきましては5,084百万円の設備投資を行っております。

(ⅱ) 財務政策

当社グループは、現在及び将来の事業活動のために適切な水準の流動性維持及び、効率的な資金の確保を最優先としております。これに従い、営業活動によるキャッシュ・フローの確保に努めるとともに、自己資金を効率的に活用しております。

資金が不足する場合、短期的な運転資金の調達に関しましては、複数の金融機関より確保している融資枠からの短期借入金を基本とし、設備及びM&Aを中心とした投資資金の調達に関しましては、ファイナンス・リースの活用や金利変動リスクを考慮した固定金利の長期借入金を基本としております。なお、余剰資金が生じた場合は、借入金の返済に充当しております。

以上により、当社グループの今後の事業活動において必要な運転資金及び設備投資資金を確保することは可能と考えております。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 1.(1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループは、市場が求める正確で新鮮かつ充実した「知・時空間情報」を継続的に供給するために、事業の根幹である地図データベース制作システムの機能向上に努めております。

また、5G、IoT、MaaS、スマートシティ、メタバースといった最先端の技術・概念に基づく社会変革の実現に寄与するため、データ収集・配信技術や、高精度・高鮮度地図データベースなどをテーマに研究開発に取り組んでおります。

研究開発活動は、当社の研究開発室、㈱ジオ技術研究所(連結子会社)を中心に推進しております。

当連結会計年度における当社グループの研究開発費合計額は1,396百万円であります。

主な研究開発活動は、次のとおりであります。

なお、当社グループの報告セグメントは単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

① 3D情報調査技術

測量用GPS、360度カメラ、高精細カメラ、高精度レーザー計測機器などを搭載した専用車両で収集したデータから、先進運転支援システムや自動運転車で使われる3D時空間情報を、自動車専用道路のみならず、一般道路においても、高精度・高鮮度かつ低コストで作成する技術の研究・開発を行っております。

② 地図自動生成技術

近年、急速な進化を続けているAI技術を活用して、先進運転支援システム用カメラ、通信型ドライブレコーダー等の車載映像や3D点群から、信号機、道路標識、道路標示、建物、商標、文字列など、現実世界に存在するあらゆる地物を自動で認識し、地図上にマッピングすることで、地図データ作成や更新を自動化する技術の研究・開発を行っております。