第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社は創業以来、地図業界のリーディングカンパニーとして地図関連情報の提供を通じ、社会に貢献し続けることを活動の基本として事業を拡大してまいりました。当社グループは、「知・時空間情報の創造により人びとの生活に貢献します」を企業理念として掲げ、「Maps to the Future」のスローガンのもと、「地図で情報を価値化する企業」となることを目指しております。

また、株主の皆様にとって魅力ある企業集団であることを目指すとともに、お客様及び従業員を大切にし、社会に貢献し続けていく企業集団でありたいと考えております。

(2) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略

当社グループが属する地図業界では、詳細で正確な情報に基づいた、わかりやすく使いやすい地図やサービスの提供が求められており、当社グループは、地図に付加価値を加えることで市場のニーズに応え、事業を拡大してまいりました。今後の市場のニーズは、自動運転やMaaSに代表されるように、社会や産業の課題解決を目的とし、人だけでなくシステムが参照するために必要となる三次元化を含めた現実世界の再現にシフトしております。また、技術革新や高度なネットワーク社会の実現により、現実世界から様々なデータを収集・解析し、現実世界へフィードバックすることで新たなサービスを創造・展開していくこと、いわゆるデジタルツイン技術が注目されております。

当社グループを取り巻く環境は、テック企業による破壊的イノベーションにより想定以上のスピードで変化しておりますが、先進技術を活用した地理空間情報の利用価値向上やDXによる社会課題解決のニーズが高まるなど、ビジネスチャンスでもあると捉えております。このような環境の変化に対応し、企業・地域との共創活動により社会的価値を創造し、持続的成長を実現するため、5ヵ年の中長期経営計画「ZENRIN GROWTH PLAN 2030(以下、ZGP2030)」(2026年3月期~2030年3月期)を2025年4月よりスタートいたしました。ZGP2030では、『共創社会における社会的価値創造』を基本方針に掲げ、①事業ポートフォリオマネジメントによる事業収益最大化、②高度時空間データベースによる提供価値の最大化、③グロースマインドセットによるスキル向上で組織力を最大化すべく取り組んでまいります。

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

ZENRIN GROWTH PLAN 2025(以下、ZGP25)期間中は、コロナ禍や自動車減産等の影響を受け一時的に収益が悪化いたしましたが、最終年度である2025年3月期において過去最高の売上高を更新し、従業員のベースアップや先行投資を継続しながら利益を改善してまいりました。一方、既存のビジネス領域での収益基盤、顧客基盤は堅持するものの、地域や企業の顧客基盤の強化や商品開発のスピードなど社内業務プロセスやシステム開発におけるDX化が急務であり、収益面では時空間データベースやサービス提供基盤等の投資回収が課題だと認識しております。

(目標達成のための取り組み)

Ⅰ.事業方針

当社グループの価値創造のバリューチェーンである「知のサイクル(企画・収集・管理・編集・提供)」と、企業共創・地域共創活動の高速化により、顧客起点でサービスを最適化し、パッケージ・セレクション・ソリューションの3つのサービス区分で収益を最大化します。

 ・パッケージ  :位置情報コンテンツと汎用的な業務機能をパッケージにして提供。

          業種・業務に合った汎用サービスで自治体・企業・個店のDXを支援。

 ・セレクション :個々の顧客課題に合わせ、部品化された汎用機能をセレクトして組み合わせて提供。

          企業の個別課題解決を支援。

 ・ソリューション:個々の顧客向けにカスタマイズしたサービスの提供。

          企業共創により社会課題解決を支援。

Ⅱ.技術方針

当社グループの知的資本である時空間データベースの位置精度をさらに向上させるとともに、AI技術を活用した空間情報の拡張や生産性の向上などにより、「高度時空間データベース」へと進化させます。また、サービス提供基盤を拡張し、顧客保有データやオープンデータと連携・活用させることにより、高度時空間データベースへのユーザビリティとアクセシビリティを向上させることで、デジタルツインを実現する情報プラットフォームへ進化させます。

Ⅲ.組織方針

「共創社会における社会的価値創造」を実現するために、多様な人財が能力・資質・経験を組み合わせて成長することで、メンバー間の心理的エネルギーを高める自律型組織へ進化するため、人財開発・組織開発に取り組み、人財輩出と自律型組織を運営する経営情報基盤(DX/仕組み)の構築を進めます。

特に人的資本としての人財開発では、人財ポートフォリオを進化させ、「オープンマインドで変化を受け入れながら自ら成長する人財」を輩出します。

(定量目標)

企業共創・地域共創活動により売上を拡大し、ストックサービスやソリューションサービスへのシフトを加速させることで限界利益率を向上させ、ZGP25期間における投資の早期回収を最優先課題として取り組んでまいります。

以上の取り組みを踏まえ、ZGP2030の最終年度である当社グループの2030年3月期は、売上高780億円、EBITDA150億円(EBITDAマージン19.2%)、営業利益80億円(営業利益率10.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益60億円、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上を経営指標といたします。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当社グループのサステナビリティ経営の基本方針
   当社グループは、「知・時空間情報の創造により人びとの生活に貢献します」を企業理念としています。当社グ

ループの事業はその性質上、社会と密接なつながりを持ち、高い公共性を有していることから、位置情報の活用により社会課題の解決や安全・安心な社会の実現に貢献することが、私たちの社会的責任・公共的使命であると考えています。
 この企業理念に則り、創業以来、地図業界のリーディングカンパニーとして、情報の提供を通じて社会に新しい価値を提供するとともに、地域社会の発展に寄与し、環境保全活動にも積極的に取り組むなど、その社会的責任を果たすべく努めてまいりました。

   今後も、当社グループの経営理念体系、企業行動憲章として定めたこれら活動方針は変わることなく、サステナ

 ビリティ課題への取り組みと経営の統合をより一層推進することにより、事業活動を通じてサステナブルな社会の

 実現に貢献するとともに、経営・事業におけるサステナビリティを強化し、持続的な成長と中長期的な企業価値向

 上を目指します。

 

(2)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティ課題への対応を重要な経営課題の一つとして考え、取締役会による監督の下、取締役の中から選任されたサステナビリティ責任者及び各本部長により構成されたサステナビリティ委員会を中心としたガバナンス体制を構築しております。

サステナビリティ委員会では、サステナビリティ活動の基本方針やサステナビリティ課題に関する重要なテーマについて審議するほか、下部組織のリスク管理部会を通じて、各部門及び国内外子会社の気候変動対応を含むサステナビリティ課題に関する活動計画の集約及び実施状況をモニタリングしております。また、サステナビリティ委員会の審議内容のうち重要なものについては、経営会議及び取締役会に報告される仕組みとなっております。

 当社のサステナビリティ推進体制は下図のとおりであります。

 

0102010_001.jpg

 

(3)戦略、指標及び目標

    当社グループでは、取り巻く外部環境の正確な把握に努め、サステナビリティ委員会において、リスクと機会を

   分析し、社会とともに継続的に成長していくために、優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を経営会

   議での審議を経て、取締役会にて協議し特定しております。当社グループは、中長期経営計画において重要課題に

   対する各種取り組みを実行することで、サステナブルな社会の実現に貢献するとともに、経営・事業におけるサス

   テナビリティを強化し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指します。

 

   外部環境認識と分析

外部環境認識

リスク

機会

気候変動・自然災害

・対応の遅れによる企業価値毀損、

 事業継続危機

・適切な対応により企業価値、信頼性、

 事業継続性向上

・新サービス(付加価値)の創出

技術革新

・テック企業による破壊的イノベーション

 による競争力低下

・AI技術の発展、悪用による技術流出、

 参入障壁の低下による競争激化

・DX対応の遅れによる非効率な業務運営

・地理空間情報の利用価値向上

・DXによる社会課題解決ニーズの拡大、

 新サービスの創出

・DXの推進による業務効率の向上

経済・政策の変動

・パンデミックによる景気後退

・働き方改革、金融・税制改革、

 個人情報保護法等の影響

・ニューノーマルにおける新サービスの創出

・規制緩和、法整備等による新事業推進

 (自動運転、MaaS等)

人口動態

(地域格差・

少子高齢化)

・地方の衰退

・市場縮小

・人材確保の競争激化、スキルミスマッチ

・企業・地域との共創活動により社会課題解決

 支援、地域課題解決支援サービスの創出

・人材、組織改革による生産性向上と企業活性化

 

   取り組むべき重要課題

経営の重要課題

(マテリアリティ)

・時空間情報による地域・社会課題の解決

・事業基盤の強化(ZIP※の進化、社内DXの推進)

・技術進化への対応

・人財基盤の強化

    ※ZIP(ZENRIN Information Platform):当社の事業基盤である情報プラットフォーム。収集した情報をDBとして整備し、

                      各商品・サービスの利用用途に応じて編集、提供する一連の仕組み。

 

  ①気候変動

   1) 気候変動に関する戦略(リスク及び機会に対処するための取組み)

  気候変動は、当社グループの事業にさまざまな影響を及ぼす可能性がありますが、適切な体制の整備と対応戦略

 の実践は、グループの競争力を高め、新たなビジネスの創造・拡大の機会につながると考えています。取り組むべ

 き重要課題を推進するにあたり、気候変動がもたらす当社グループへの影響について、TCFD※のフレームワークに

 基づくシナリオ分析を実施しております。シナリオ分析にあたっては、抜本的な政策転換や技術革新により脱炭素

 社会へ急速に進む「1.5℃または2℃シナリオ」と、気候変動対策が現状から進展せず、地球温暖化が進む「4℃

 シナリオ」を中心に分析・検討を行いました。分析・検討の結果、抽出された重要度の高いリスク及び機会につい

 ては、事業のレジリエンスを確保する戦略を策定・推進しております。いずれのシナリオにおいても、レベルは異

 なるものの、カーボンプライシング・BCP対策などによる操業コスト増加や市場構造の変化が予想されますが、気

 候変動対策に貢献する次世代技術の進展と普及への積極的な対応及び防災・減災支援サービスの拡充等に取り組む

 ことで、事業機会を拡大していくことができると考えております。これは当社グループが現在取り組んでいるSDGs

 等社会課題に対する取り組みとも整合するものです。今後も、継続的に外部環境、市場動向を注視し、戦略のPDCA

 を繰り返し実践することにより、レジリエンスの強化を図ってまいります。

 ※TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース

 

   2) 気候変動に関する指標及び目標

  気候変動に関する主な指標として「温室効果ガス排出量」を用いており、社用車のハイブリッド車への切替え

 や事業所等への再生可能エネルギーの導入等により、2050年までにネット・ゼロを目標として掲げています。

 当該指標に関する実績は次のとおりであります。

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  ②人的資本

   1) 人的資本に関する戦略(リスク及び機会に対処するための取組み、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関す

   る方針及び社内環境整備に関する方針)

  当社グループを取り巻く環境は、テック企業による破壊的イノベーションにより想定以上のスピードで変化して

 おりますが、先進技術を活用した地理空間情報の利用価値向上やDXによる社会課題解決のニーズが高まるなど、ビ

 ジネスチャンスでもあると捉えております。このような変化が激しい現代において経営戦略を実現するために、

 経営基盤のさらなる強化が必要です。人財は当社グループの経営基盤の最も重要な要素であり、外部環境の変化や

 ニーズの多様化に対応できる人財開発と組織開発が急務であると捉えております。当社グループは、多様な人財が

 成長意欲をもって仕事に取り組み、能力・資質・経験を組み合わせて成長することで、メンバー間の心理的エネル

 ギーを高め、組織としても成長し続けたいと考えております。さらに、企業活性化のための必須条件である、安心

 して働ける職場環境の創出に取り組んでまいります。

 

2)人財開発に関する指標及び目標

  中長期経営計画「ZENRIN GROWTH PLAN 2030」の基本方針である「共創社会における社会的価値創造」を実現す

 るため、共創社会に対応できるスキルセットを備えた人財がイキイキと活躍し、個人の成長を実感するとともに、

 企業の成長へとつなげるための人財開発と、「オープンマインドで変化を受け入れながら自ら成長する人財」を継

 続的に輩出するために、多様な人財の確保と個人の成長を実感できる機会の創出に取り組んでまいります。

  重点施策、並びに指標及び目標は以下のとおりであります。

 (ⅰ)多様な人財の確保

      ・従来の新卒採用・キャリア採用に加え、アルムナイ採用・リファラル採用といった即戦力人財やソリュー

      ション人財の積極的な採用

  (ⅱ)成長機会の創出

      ・事業活動である企業共創・地域共創を推進するうえで必要となるスキルマップに基づいた育成プログラム

           の構築

     ・DX教育を含む各種プログラムの拡大

       ・各種研修に加え、選択学習プログラムによる自律的な学習の促進

       ・当社グループ事業の根幹である地理空間情報に係る独自プログラム策定と地図リテラシーの向上

指標

実績(当事業年度)

目標(2030年3月期末

教育研修投資額

総費用

73百万円

100百万円

一人当たり

30千円

40千円

教育研修時間

一人当たり

7.25時間

7時間以上

DX人財の育成

資格保有者(延べ人数)

304

750名以上

  (注)1 教育研修投資額及び教育研修時間は、人事部主催の教育研修を対象に算出したものであります。

     2 資格保有者は、ITパスポート及び基本情報技術者を対象としたものであります。

 

3)組織開発に関する指標及び目標

  働きがいと組織の成長を両立する強い自律型組織へ進化するため、心理的安全性の向上や健康増進等による職場

 環境整備、人財ポートフォリオに基づいた適所適材の配置・多様性を重視した登用等によるDE&Iの向上施策に取り

 組んでまいります。

  重点施策、並びに指標及び目標は以下のとおりであります。

  (ⅰ)働きがいの向上、職場環境の整備

      ・エンゲージメントサーベイ結果による定量的な現状把握、評価、運用改善や新たな取り組みの検討

       ・全従業員を対象としたビジネス応募制度や表彰制度などによる挑戦や称賛の文化の醸成

       ・有給休暇の取得や長時間労働の是正、柔軟な働き方(テレワークやフレックス等)の活用等によるワーク

           ライフバランスの向上

       ・ハラスメントや情報セキュリティ、個人情報保護等のコンプライアンス教育の継続実施

       ・従業員の健康課題の適切な把握と健康増進施策の充実

指標

実績(当事業年度)

目標(2030年3月期末

エンゲージメントスコア

トータル

3.72

3.7以上

有給休暇

平均取得日数(取得率)

13.9(71.1%)

13日(70%)以上

ストレスチェック

総合健康リスク

87

85未満

高ストレス者比率

9.1

9%未満

健康経営優良法人の認定

認定

継続認定

 

 

(ⅱ)多様な人財の活躍

      ・性別、年齢、経験等に捉われない多様性のある登用の促進

       ・イノベーション創出、並びに個人及び組織の成長に資するDE&I向上施策の実行

指標

実績(当事業年度)

目標(2030年3月期末

管理職の女性比率

10.1

12%以上

係長級の女性比率

25.8

30%以上

外国人管理職比率

0.6

0.5%以上

中途採用者管理職比率

22.6

22%以上

育児休業等取得率

女性

100%

100%

男性

46%

100%

障がい者雇用率

2.9

法定雇用率以上

えるぼしの認定

2段階目

3段階目

 

(4)リスク管理

 当社グループでは、当社取締役の中からサステナビリティ責任者を選任し、その者を委員長とするサステナビリ

ティ委員会を設置することで、当社グループの統合的なサステナビリティ活動を推進しております。リスク管理に

ついては、企業活動に関連する内外の様々なリスクを統合的かつ適切に管理するため、リスク管理の方針をリスク

管理規程に定めるとともに、サステナビリティ委員会の下部組織としてリスク管理部会を設置し、全社的なリスク

の評価、管理を行っております。(体制図については「(2)ガバナンス」参照)

各部門及びグループ各社は、毎年1回、各々所管する業務に関連するリスクの抽出及び特定、優先度の設定、並びにその予防・軽減策及び活動計画をリスク管理部会に報告し、その承認を得て活動しております。気候関連リスクに関しても、リスク管理部会において評価、管理を行っています。同部会において、気候関連リスクの集約及び分析を行うことで、当社グループ全体の気候関連リスク状況を網羅的に把握し、対策立案とその実行を推進しております。

  リスク管理部会の内容は、サステナビリティ委員会においても情報共有され、重要な事案については同委員長で

あるサステナビリティ責任者より、経営会議及び取締役会に報告がなされることで、全社的なリスク管理の強化を

図っております。

 サステナビリティに関する考え方及び取組の詳細については、当社ウェブサイトをご参照ください。

  https://www.zenrin.co.jp/company/sustainable/

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりであります。当社グループは、これらのリスクの存在を認識した上で、その発生を未然に防ぎ、かつ、万一発生した場合でも適切に対処するよう努める所存であります。

なお、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。いずれのリスク要因によっても、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループでは、5ヵ年の中長期経営計画「ZENRIN GROWTH PLAN 2030」(2026年3月期~2030年3月期)を2025年4月よりスタートしました。本計画に沿って、当社グループの持続的利益成長と企業価値の向上に全力で取り組んでまいりますが、当該中長期経営計画は、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定したものであります。

従いまして、以下に記載の各リスク等を含む様々な要因により、目標達成又は期待される成果の実現に至らない可能性がありますが、計画達成に向け適切に対処してまいります。

(1) 進化する技術への対応について

当社グループは、紙媒体が主流の頃より地図制作に携わり、地図に付加価値を加え、わかりやすく使いやすい地図やサービスを提供することで事業を展開してきました。また、いち早く地図情報のデータベース化に取り組み、汎用性に優れた地図データベースの構築に成功したことで、IT技術の進歩により拡大した地図情報の用途への対応を可能にし、カーナビゲーション用データの分野でトップシェアを獲得したほか、PC、スマートフォン等への地図データ配信分野においても高いシェアを獲得し、地図業界のリーディングカンパニーとしての地位を確立してきました。

近年の市場ニーズは、社会や産業の課題解決を目的とし、人だけでなくシステムが参照するために必要となる三次元化を含めた現実世界の再現にシフトしております。また、現実世界から様々なデータを収集・解析し、現実世界へフィードバックすることで新たなサービスを創造・展開していく、いわゆるデジタルツイン技術が注目されています。当社グループでは、こうした急激な事業環境の変化に対応するため、地図データベースの情報収集から整備、用途に応じた編集、提供までを可能とする情報プラットフォーム「ZENRIN Information Platform(以下、ZIP)」への継続投資により、生産性向上とコスト削減を図りつつ、AI等を活用したデータベース整備の効率化や情報を最適化する編集機能を向上させ、デジタルツインを実現する情報プラットフォームの進化に取り組んでおります。

しかしながら、予想を超える急激な技術の進化及び市場ニーズの変化に対応できず、市場ニーズに合致した製品を投入できなかった場合やAI技術の悪用により、地図データベース整備に係る技術等の当社ノウハウが流出し、市場への参入障壁が下がった場合及びAI技術の利活用において適切な統制管理ができず誤った情報を取得し、当社が提供する地図データベースに反映された場合等、現在の当社グループの信頼性・優位性が大幅に低下し、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 位置情報サービス関連事業への依存について

当社グループは、地図データベースの一部を利用した製品及びサービス、あるいは地図データベースそのものを販売、提供する位置情報サービス関連事業を展開し、事業を拡大してきました。当社グループの売上の大部分は、当社独自の地図データベースを基に制作される製品群及び地図データベースそのものの販売による売上に依存しております。

また、当社グループ製品の優位性確保のためには、地図データベースを最新の地図情報に更新する必要があり、毎期継続して多額の整備コストや設備投資が発生しております。

こうしたコストは売上高の増減にかかわらず継続して固定的に発生することから、一定水準の売上を確保できなければ、当該コストを回収しきれず、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 他社の参入・競争激化について

当社グループは、地図に付加価値を加えることで市場のニーズに応え、事業を拡大してきましたが、昨今の市場のニーズは、自動運転やMaaSに代表されるように、社会や産業の課題解決を目的とし、人だけでなくシステムが判断するために必要となる三次元化を含めた現実世界の再現にシフトしております。また、技術革新や高度なネットワーク社会の実現により、現実世界から様々なデータを収集・解析し、現実世界へフィードバックすることで新たなサービスを創造・展開していくこと、いわゆるデジタルツイン技術が注目されております。

このような最新技術の活用とテック企業による破壊的イノベーションにより、当社グループの製品を凌駕する高品質の製品や、用途を限定した低価格製品等が市場に投入され、当業界の競争が激化した場合は、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定の取引先への依存について

当社グループの売上高は、特定の自動車メーカー関連各社及び通信事業者並びにインターネット事業者に対するものが多くを占めております。これらの取引先とは、製品の仕様検討、技術開発、地図データベースの改良などにおいて相互協力関係にあり、取引先を通じて顧客ニーズを充足する努力を続けることで、引き続き良好な協力関係の維持と発展を目指しております。また、自動車メーカー関連各社や、様々な企業との業務提携によるパートナーシップ強化により、地図データベースの技術開発及び各種コンテンツの充実並びに新たな事業領域への進出を目指しております。

しかしながら、これらの取引先の経営方針や生産計画の変更及び業績動向などの影響を受け、当社グループ製品の販売数量の減少、製品価格の引き下げ要請、取引内容変更、契約打ち切り等が生じた場合は、友好的な協力関係がもたらす成果を享受できず、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(5) 企業への投資について

当社グループは、既存事業とのシナジー強化、新たな事業領域への進出、経営効率向上のため、企業買収、第三者との合弁及び戦略的出資を積極的に実施しております。こうした投資には、多額の買収コスト又は統合費用の発生を伴います。

しかしながら、市場環境の変化や競争力の低下などにより、投資先企業が当初想定したとおりの事業展開ができない場合、当該会社の業績・財政状態の悪化、のれんの減損損失を計上する可能性があります。また、これらの投資においては、予め対象会社の法務・財務リスクなどを調査・評価しておりますが、投資時点では顕在化していない内部統制上の問題や、法令に抵触する可能性もあります。

これらの問題が発生した場合、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) コーポレートベンチャーキャピタル事業(CVC事業)について

当社グループは、ベンチャー企業への投資を通じた既存事業の成長と新規事業の創出を目的に、CVC事業に取り組んでおります。当事業においては、実質的な投資リターンよりも、当社グループの事業を相乗的に成長、発展させることに重きを置いておりますが、投資活動であるため、投資検討段階では候補先企業の詳細なデューデリジェンスを行い、投資実行後は投資先企業の事業進捗及び財務状況に対する定期的なモニタリングを徹底し、可能な限りリスクを回避するよう努めております。

しかしながら、投資先企業の業績、財務状況によっては、投資の回収ができなくなる可能性及び評価損を計上する可能性があります。

これらの問題が発生した場合、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(7) 新規ビジネスへの取り組みについて

当社グループは、新たな事業領域における新規ビジネスの開発のほか、スマートシティ、自動運転、MaaS等の次世代の社会インフラ分野に関する取り組みも積極的に行っております。

こうした次世代の社会インフラ分野の法令や規制の整備は、現時点では不確定な部分が多く、実行判断においては最新の情報をタイムリーに入手し、慎重に見極めを行っておりますが、今後、法令や規制の整備が進むことで、現在見込んでいるとおりの事業に成長しない可能性があります。また、実用化においては、当社グループ単独での展開だけでなく、各界企業及び自治体・地域企業との共創活動も重要な手段の一つと考えており、当社グループでは、こうした企業及び自治体との提携を推進しております。そのため、当社グループとこれらの提携先の経営方針、事業計画や地域プロジェクト等の停滞、計画変更により、当初計画通りの事業展開ができない可能性があります。

これら新規ビジネスへの取り組みにおいて、資金及び人的資源等の経営資源を投入しておりますが、当初計画通りの展開ができない場合、投入した経営資源に見合う成果を得ることができず、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(8) 商品及び製品の欠陥について

当社グループの製品は、独自の情報収集及び外部から取得した各種情報、製造ノウハウ等の集大成であり、製品化においては高度な技術と情報処理能力を必要といたします。

当社グループでは、それらの製造において細心の注意を払うとともに、仕入商品を含め、欠陥のある商品及び製品を出荷しないように作業工程の各段階で厳重な品質検査を行っておりますが、そのことが、欠陥のある商品及び製品が市場に流通しないことを絶対的に保証するものではありません。

万一、当社グループが提供した商品及び製品に欠陥が発生した場合には、当該商品及び製品の回収に係るコストが発生するとともに、購入された顧客への賠償問題の発生、ブランドイメージの毀損など、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(9) 人財の確保と育成について

当社グループを取り巻く環境は予想を超える速度で変化しており、共創社会に対応したスキルセットを備えた人財の輩出が、重要な経営課題となっております。

多様化する市場ニーズに対応した製品を継続的に市場に投入していくためには、製品企画及び顧客提案スキルを持つ要員や、高い技術スキルを持つシステム開発要員や開発業務管理者が必要であり、また、AI、クラウドサービス等の新しい技術の進化に伴い、地図データベースの整備に関しても、こうした新技術に対応できるDX人財が欠かせない状況となっております。

このような状況に対応するため、継続的な基本給のベースアップ及び初任給の引き上げといった待遇面の改定や、様々な働き方に対応した勤務形態の導入、教育・成長支援制度の導入、DX関連のスキル向上、リスキリングを支援する等、人事制度の改定も適宜実施し、能力発揮に重点を置いた人事体系とすることで、人財の確保と育成に取り組んでおりますが、こうした人財を確保又は育成できなかった場合には、当社グループの事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。

(10) 個人情報の管理について

当社グループは、顧客情報や従業員情報のほか、住宅地図等の製品に掲載・収録される居住者名、住所等の個人情報を収集・管理しており、個人情報保護法やその他類似法令を遵守し、これらの個人情報を適切に管理することは、当社の事業活動の基本であり、社会的責務であると認識しております。

当社グループでは、個人情報管理規程を定め、個人情報の取得・利用・保管・廃棄に関する手順等の社内ルールの整備、従業員教育、入退室管理等の物理的対策やアクセス管理等の情報セキュリティ対策を講じております。

しかしながら、これらの個人情報が、不正アクセスや業務上の過失等により、当社グループ又は業務委託先から漏洩し賠償問題が発生した場合、また、今後関連する法令の改正等により当社が展開するサービスが規制された場合、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(11) 知的財産権の侵害について

当社グループでは、独自に開発した製造技術や新規開発製品に関するもので知的財産の保護の対象となる可能性のあるものについては、必要に応じて特許権や商標権の出願、登録を行っておりますが、必ずしもこれらの権利を取得できるとは限りません。当社グループの技術、ノウハウ又は製品名等が特許権や商標権として保護されずに他社に先んじられた場合には、当社グループの製品開発あるいは販売に支障が生じる可能性があります。

また、当社グループでは、第三者の知的財産権を侵害しないよう十分な調査を行い、注意を払っておりますが、当社グループの調査範囲が十分でかつ完全であるとは保証できません。さらに、第三者の特許権等の知的財産権が当社グループの事業にどのように適用されるのか全てを正確に想定することは困難であり、万一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者から損害賠償請求、使用差し止め等の訴えを起こされる可能性、並びに当該知的財産権に関する対価の支払いが発生する可能性があります。

これらの問題が発生した場合、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(12) 情報システムへの対応について

当社グループの業務遂行にあたっては、情報システムの円滑な運用は今や欠かせない企業基盤となっております。これらの情報システムの安全な運用にあたっては、関連規程を整備の上、各種対策を施し、地震・火災等の罹災及びサイバー攻撃に対しても、情報システムの安全及び安定稼働の確保に努めております。

しかしながら、予期できない水準の情報システム基盤の重大な障害、又は情報システムを支える電力、通信回線等のインフラに大規模な障害が発生する可能性を完全に排除することはできず、このような事態が発生した場合、各種業務活動の停止、重要なデータの喪失、当社サービスの機能低下などが発生する可能性があります。

これらの問題が発生した場合、復旧費用の発生、当社製品の信用力やブランドイメージの毀損などにより、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(13) 自然災害等について

自然災害、火災、流行病の蔓延等により、当社グループの営業拠点及び生産拠点に被害が発生した場合、事業活動に支障が生じる可能性があります。また、感染症の拡大に代表されるように、流行病の蔓延等が、市況の悪化、取引先の生産計画の変更等を招き、当社グループの取引減少や新規案件開拓の遅延等がリスクとして見込まれます。当社では自然災害等の発生に備え、社員の安否確認システムの導入、自然災害発生に対する防災マニュアルの作成、建物・設備・システム等の耐震対策、必要物資の備蓄等の対策を講じており、緊急事態が発生した場合には、対策本部を設置し、事業継続計画(BCP)や各種マニュアル等に沿って迅速に対応することとしております。

しかしながら、これらによっても自然災害等による被害を完全に回避できるわけではなく、被害が発生した場合には、当社グループの経営成績や事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。

(14) 環境・気候変動について

当社グループは、企業活動と地球環境の調和を目指し、事業活動における温室効果ガスの排出量削減等の環境課題に取り組んでおります。その一環として、社用車のハイブリッド車への切替えや主要事業所における使用電力の再生可能エネルギーへの切替え等の取り組みを推進しております。今後も環境負荷低減に努め、持続可能な社会の実現を目指してまいります。

しかしながら、これらの対応が遅れた場合や適切に行われなかった場合、顧客や投資家等、ステークホルダーからの信用低下を招き、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(15) コンプライアンスについて

当社グループでは、企業理念の「知・時空間情報の創造により人びとの生活に貢献します」及び行動指針の「私たちは信頼される企業市民として、質の高い情報を企画・収集・管理・編集・提供することで、人びとにとってより適した価値を実現します」をサステナビリティ活動の基本方針とする「サステナビリティ管理規程」を定め、コンプライアンス管理体制を構築し、役員・従業員への教育啓発活動を随時実施し、企業倫理の向上及び法令遵守の強化に努めております。

しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクは完全に回避できない可能性があり、関連する法令・規制上の義務を実行できない場合には、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(16) 会計制度・税制の変更等について

当社グループに適用される会計基準や税制が新たに導入・変更された場合、また、税務申告における税務当局との見解の相違により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(17) 固定資産の減損損失について

当社グループは、有形固定資産、ソフトウエア、のれん等の固定資産を保有しております。これらの資産について、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、帳簿価額を減額し、当該減少額を減損損失として計上することとなり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(18) 退職給付制度の影響について

当社グループは、確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度を設けております。年金制度の変更、年金資産の運用状況及び数理計算で使用される割引率などの前提条件の変更により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(19) 有価証券の時価変動について

当社グループでは、CVC事業のほか、経営戦略上重要な業務提携・資金調達・仕入等に必要な企業の有価証券を保有しており、このうち市場価格のない株式等以外のものについては、時価法により評価しております。当該有価証券の保有については、関連する取引や配当金による収益及び保有コスト等を定量的に検証することで、保有先企業の収益性と安定性を精査し、中長期的な経済合理性や将来の見通しの視点より保有の適否を毎年検証しており、検証の結果、保有に適さないと判断した有価証券は売却を行うなど縮減に努めております。

しかしながら、当該有価証券の時価の変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(20) 繰延税金資産の取り崩しについて

当社グループでは、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上しておりますが、今後将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じた場合には取り崩しが発生し、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、一部に足踏みが残るものの、雇用・所得環境が改善するなかで緩やかに回復する動きとなりました。一方、物価上昇の継続に加え、米国の通商政策の動向や金融資本市場の変動などにより、先行きは不透明な状況が続いております。

このような環境の中、売上高はオートモーティブ関連でカーナビゲーション用データの増収に加え、IoT関連でAPIサービスや企業向けソリューションサービスが堅調に推移いたしました。なお、カーナビゲーション用データの増収には、一部、過年度の数量報告過少分である一過性の売上を含んでおります。

損益面では、ベースアップの影響などにより人件費が増加いたしましたが、売上構成変化に加え価格改定の効果もあり、増益となりました。

以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高64,363百万円(前年同期比3,028百万円増加、4.9%増)、営業利益3,923百万円(前年同期比1,941百万円増加、98.0%増)、経常利益3,936百万円(前年同期比1,875百万円増加、91.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,606百万円(前年同期比528百万円増加、25.4%増)となりました。

当社グループの報告セグメントは単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

また、財政状態といたしまして、当連結会計年度末の総資産は、減損損失の計上によりソフトウエア及びその他無形固定資産が減少したほか、時価評価により投資有価証券が減少したことなどから73,973百万円(前連結会計年度末比1,429百万円減少、1.9%減)となりました。

負債は、前受金が増加したものの、短期借入金が減少したことなどから24,125百万円(前連結会計年度末比1,955百万円減少、7.5%減)となりました。

純資産は、投資有価証券の時価評価によりその他有価証券評価差額金が減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより49,847百万円(前連結会計年度末比526百万円増加、1.1%増)となりました。

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は13,906百万円(前連結会計年度末比692百万円増加、5.2%増)となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が4,144百万円となり、法人税等の支払額912百万円などの減少要因がありましたが、減価償却費5,527百万円、前受金の増加901百万円などの増加要因により9,640百万円の収入(前年同期比3,321百万円増加)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入312百万円などの増加要因がありましたが、有形及び無形固定資産の取得による支出4,859百万円、投資有価証券の取得による支出471百万円などの減少要因があったことにより5,161百万円の支出(前年同期比1,005百万円増加)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額1,607百万円、短期借入金の純減による支出1,600百万円、長期借入金の返済による支出409百万円などの減少要因があったことにより3,840百万円の支出(前年同期比725百万円増加)となりました。

③ 生産、受注及び販売の実績

1)生産実績

当社グループは、位置情報及びそれに紐付く様々な情報の提供を主たる事業としており、生産実績を定義することが困難であることから、生産実績につきましては記載を省略しております。

2)受注実績

当社グループは、主に見込み生産を行っております。地図関連やソフトウエアの受託案件等、一部には受注生産も行っておりますが、その多くが短期間で販売するものであることから、受注状況につきましては記載を省略しております。

3)販売実績

当社グループは、位置情報サービス関連事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

位置情報サービス関連事業

64,363

4.9

(注) 主要な取引先(総販売実績に対する割合が10%以上)に該当するものはありませんので、記載を省略しております。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当社グループは、位置情報の提供を通じて社会課題の解決を支援することで、持続的な企業成長を目指すサステナビリティ経営を方針として掲げており、6ヵ年の中長期経営計画「ZENRIN GROWTH PLAN 2025(以下、ZGP25)」(2020年3月期~2025年3月期)を2019年4月より推進してまいりました。

2020年3月期から2022年3月期までの1st Stageを「ビジネスモデル変革時期」として、フローからストックサービスへの転換を進め安定した収益基盤を構築いたしました。2023年3月期から2025年3月期までの2nd Stageでは「ビジネスモデル具現化」を目標に掲げ、安定した収益基盤をもとに、時空間データベースの位置精度向上やZENRIN Maps APIによるサービス提供基盤の開発投資を継続し、位置情報サービスを拡充してまいりました。

2nd Stageの最終年度である2025年3月期につきましては、売上高はオートモーティブ関連でカーナビゲーション用データの増収に加え、IoT関連でAPIサービスや企業向けソリューションサービスが堅調に推移いたしました。なお、カーナビゲーション用データの増収には、一部、過年度の数量報告過少分である一過性の売上を含んでおります。

損益面では、ベースアップの影響などにより人件費が増加いたしましたが、売上構成変化に加え価格改定の効果もあり、増益となりました。

以上の結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高は64,363百万円(前年同期比3,028百万円増加、4.9%増)、営業利益は3,923百万円(前年同期比1,941百万円増加、98.0%増)となりました。また、ROEは前連結会計年度に比べ0.9ポイント増加し5.3%となりました。

当連結会計年度末の財政状態につきましては、総資産は、減損損失の計上によりソフトウエア及びその他無形固定資産が減少したほか、時価評価により投資有価証券が減少したことなどから73,973百万円(前連結会計年度末比1,429百万円減少、1.9%減)となりました。負債は、前受金が増加したものの、短期借入金が減少したことなどから24,125百万円(前連結会計年度末比1,955百万円減少、7.5%減)となりました。純資産は、投資有価証券の時価評価によりその他有価証券評価差額金が減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより49,847百万円(前連結会計年度末比526百万円増加、1.1%増)となりました。

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、前述の「第2 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

なお、当社グループの報告セグメントは単一セグメントであるため、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容の記載を省略しております。

2025年4月より、企業・地域との共創活動により社会的価値を創造し、持続的成長を実現するため、『共創社会における社会的価値創造』という基本方針のもと、5ヵ年の中長期経営計画「ZENRIN GROWTH PLAN 2030(以下、ZGP2030)」(2026年3月期~2030年3月期)をスタートいたしました。ZGP2030の最終年度である当社グループの2030年3月期は、売上高780億円、EBITDA150億円(EBITDAマージン19.2%)、営業利益80億円(営業利益率10.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益60億円、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上を経営指標といたします。

企業共創・地域共創活動により売上を拡大し、ストックサービスやソリューションサービスへのシフトを加速させることで限界利益率を向上させ、ZGP25期間における投資の早期回収を最優先課題として取り組んでまいります。

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

1)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

2)資本の財源及び資金の流動性

(ⅰ) 資金需要

当社グループの資金需要は、運転資金としては、各種地図データベースの構築のための調査業務費用などがあり、設備投資資金としては、主に各種データベース制作システムや地図情報流通基盤ソフトウエアなどへの投資があります。当連結会計年度につきましては4,909百万円の設備投資を行っております。

(ⅱ) 財務政策

当社グループは、現在及び将来の事業活動のために適切な水準の流動性維持及び、効率的な資金の確保を最優先としております。これに従い、営業活動によるキャッシュ・フローの確保に努めるとともに、自己資金を効率的に活用しております。

資金が不足する場合、短期的な運転資金の調達に関しましては、複数の金融機関より確保している融資枠からの短期借入金を基本とし、設備及びM&Aを中心とした投資資金の調達に関しましては、ファイナンス・リースの活用や金利変動リスクを考慮した固定金利の長期借入金を基本としております。なお、余剰資金が生じた場合は、借入金の返済に充当しております。

以上により、当社グループの今後の事業活動において必要な運転資金及び設備投資資金を確保することは可能と考えております。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 1.(1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループは、市場が求める正確で新鮮かつ充実した「知・時空間情報」を継続的に供給するために、事業の根幹である地図データベース制作システムの機能向上に努めております。

また、5G、IoT、MaaS、スマートシティ、デジタルツインといった最先端の技術・概念に基づく社会変革の実現に寄与するため、データ収集・配信技術や、高精度・高鮮度地図データベースなどをテーマに研究開発に取り組んでおります。

研究開発活動は、当社の研究開発室、㈱ジオ技術研究所(連結子会社)を中心に推進しております。

当連結会計年度における当社グループの研究開発費合計額は1,179百万円であります。

主な研究開発活動は、次のとおりであります。

なお、当社グループの報告セグメントは単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

① 3D情報調査技術

測量用GPS、360度カメラ、高精細カメラ、高精度レーザー計測機器などを搭載した専用車両で収集したデータから、先進運転支援システムや自動運転車で使われる3D時空間情報を、自動車専用道路のみならず、一般道路においても、高精度・高鮮度かつ低コストで作成する技術の研究・開発を行っております。

② 地図自動生成技術

近年、急速な進化を続けているAI技術を活用して、先進運転支援システム用カメラ、通信型ドライブレコーダー等の車載映像や3D点群から、信号機、道路標識、道路標示、建物、商標、文字列など、現実世界に存在するあらゆる地物を自動で認識し、地図上にマッピングすることで、地図データ作成や更新を自動化する技術の研究・開発を行っております。