当連結会計年度におけるわが国経済は、政府・日銀による財政・金融政策などもあり、当初輸出産業を中心とする企業業績や雇用情勢の改善により個人消費にも明るい兆しが見られたものの、中国経済の減速懸念の高まりを受けた株価下落による資産価値の減少や物価上昇への根強い警戒感などもあり、消費者マインドが低下いたしました。また、これまでわが国経済にプラスの作用をもたらしてきたインバウンド消費も、英国のEU離脱や米国の大統領選挙などの海外情勢の不透明感による円高の影響などで陰りが見え始め、さらに本年4月の熊本地震の経済に与える影響も懸念されるなど、引き続き景気下振れリスクを拭えない状況が続いております。
当社グループの事業領域であります出版業界は、依然として市場規模の縮小が続いております。出版科学研究所によりますと、出版物の推定販売金額は、当連結会計年度も書籍、雑誌とも前年を下回り、合計で前期比マイナス4.1%と、改善の兆しを見出せない状況にあります。
このような状況の中、当社グループは、新しい顧客層の開拓に挑戦し、顧客ニーズを満たすコンテンツ開発、返品減少対策を主要なテーマに活動を行いました。
以上により、当連結会計年度の業績は、売上高3,189,075千円(前年同期比2.6%増)、営業利益121,456千円(前年同期比34.5%増)、経常利益132,994千円(前年同期比17.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益95,266千円(前年同期比71.9%増)となりました。
事業別の概況は次のとおりです。
会計分野では、任意適用企業が増加しつつあるIFRSに関しては、わが国唯一の公式翻訳書『IFRS基準2016』をはじめとして、市場動向を踏まえて『詳細解説IFRS実務適用ガイドブック<第2版>』『実務入門IFRSの新リース会計』など、関連する実務書の開発を行ってきました。さらに、ビジネススクールの人気講義を書籍化した『会計参謀』が発売早々から版を重ねています。また、良質な研究書として『最新中小企業会計論』や『非営利組織体財務報告論』『動的資産配分の投資理論と応用』なども刊行いたしました。なお、雑誌「企業会計」は、記事内容の見直し等で徐々に売上減少から持ち直しつつあります。
経営・経済分野では、企業経営の実務に役立つ『組織を動かす経営管理』『新版 人事の定量分析』などのほか、ホットな話題に対応した『IoT時代の競争分析フレームワーク』『図解カードビジネスの実務』などが好調な成績を収めました。また、これからの大学教育に求められる能動的学修(アクティブラーニング)に資するテキストを目指し、昨年度から「ベーシック+(プラス)」シリーズを創設しましたが、今期は『財政学』『金融論』『経営管理』など7点を刊行し、ラインアップは全12点となりました。同シリーズ以外にも、『実証分析のための計量経済学』『コーポレート・ファイナンス』『テキスト現代経営入門』など、各分野の第一人者による多数のテキストを開発し、好評を得ております。
税務分野では、制度が大きく動いた相続・贈与税に強い関心が寄せられ、なかでも『相続発生後でも間に合う土地評価減テクニック』と『税務調査官の着眼力Ⅱ 間違いだらけの相続税対策』は、書名と内容がマッチしたことにより好評を博し、数ヵ月にわたり相続税カテゴリーでの上位ランキングを継続しております。また、手帳分野で絶対的な人気を誇り、ロングランを続ける『税務手帳』の特別版として、見やすく書きやすい日記欄と豊富で便利なメモ欄付の『税務手帳プラス』を刊行いたしました。さらに、長年「黄色い法規集」の愛称で親しまれてきた各種税法の法規・通達集シリーズに『登録免許税・印紙税法規集』を新たに加え、判型を大判にするなど大幅リニューアルを図りました。
法律分野では、法改正に対応した書籍として『詳解 平成27年改正労働者派遣法』『平成27年施行 改正会社法と商業登記の最新実務論点』を、学会の主要な研究者による『ドイツ会社法・資本市場法研究』『大系租税法』を刊行いたしました。さらに、企業法務に役立つ書籍として『持分会社・一般社団法人・信託の法務・税務』『国際法務の技法』『労働条件変更の基本と実務』『契約書に活かす税務のポイント』『秘密保持契約の実務』などが部数を伸ばしました。また、身近な法律問題をテーマにした『ストーリーから学ぶ交通事故の示談金を受け取るまで』が好評を得ました。
企業実務分野では、最新の経営動向に着目した実務書として『FinTech2.0 金融とITの関係がビジネスを変える』、『金融機関のためのネッティングの実務』『ガバナンス・コード実践ガイドブック』を、M&Aに関するテーマとして『Q&AでわかるM&A実務のすべて』『カーブアウト型M&Aの実務』を刊行しました。また、会計処理の問題を取り上げた『こんなときどうする?「会計上の見積り」の実務』『ここが変わった!税効果会計』や、人事、総務、企画部門のための『社員300名までの人事評価・賃金制度入門』『‘不確実性’の時代を生き抜く最強の「経営企画部」』が読者の支持を得ました。
資格試験分野では、東京商工会議所が新たに立ち上げた検定試験用『ビジネスマネジャー検定試験公式テキスト』が引き続き好調に売上げを伸ばしたほか、各種資格試験受験者のための『司法書士試験 解法テクニック50』『司法書士試験 すくに結果が出る勉強メソッド55』『公認会計士試験 社会人が独学合格する方法』『通勤時間で攻める!中小企業診断士スタートアップテキスト』『2016年 社労士出るとこマスター』『行政書士試験 手を広げずに楽して合格する方法』がヒットいたしました。また、雑誌「会計人コース」では、Web教育を行っている「資格スクエア」と提携するなど、新たな取り組みも行っております。
高水準の研究成果の書籍開発として、『会計制度の経済分析』が日経・経済図書文化賞など4つの賞を、『大学発ベンチャーの組織化と出口戦略』が商工総合研究所中小企業研究奨励賞など4つの賞を、『会計規制の研究』が日本会計研究学会太田黒澤賞など2つの賞を、『実験制度会計論』『銀行の不良債権処理と会計・監査』が日本公認会計士協会学術賞を、『戦略経営における予算管理』『会計基準と経営者行動』『会計記録の研究』『サプライチェーン・マネジメント論』が各学会賞を、さらに『グリーンMOT叢書(全5巻)』が環境情報科学センターから特別賞を受賞するなど、多くの書籍が表彰されました。
生活実用分野では、大口顧客から編集業務の委託を受けていた雑誌の廃刊があったものの、引き続き新規顧客及び商流の積極的な開拓を行いました。2年にわたる隔週刊のキット付き手芸マガジンや企業広報の定期刊行物の編集業務を新規に受注したほか、ムックの企画提案を旺盛に行いアウトドア系の編集売上が増加いたしました。また、愛犬家、愛猫家からの投稿を集めた日めくりカレンダー『犬めくり』『猫めくり』を新たに開発し生活雑貨チェーンの商流を構築した結果、大ヒット商品となりました。さらに、これからの書籍販売のチャネルとして注目を集めるコンビニエンスストアのプライベートブランド商品として企画した『図解 今すぐ役立つ、頼りになる社会保障オールガイド』がベストセラーとなりました。
その結果、当社グループの出版事業では売上高3,094,752千円(前年同期比4.7%増)、営業利益141,846千円(前年同期比63.2%増)となりました。
当社グループの専門雑誌を中心とする広告宣伝の請負代理が主である出版付帯事業は、いくつかの新規顧客を開拓したものの、広告媒体が多様化し紙媒体への広告が大幅に減少する中で、厳しい状況が続いております。
その結果、売上高94,323千円(前年同期比37.9%減)、営業利益9,368千円(前年同期は営業損失1,311千円)となりました。
営業活動の結果得られた資金は45,554千円(前年同期比119,229千円減)となりました。これは主に、売上債権の増加52,760千円(前年同期は29,326千円の減)、税金等調整前当期純利益133,326千円(前年同期は117,523千円)があったものの、返品調整引当金の減少19,880千円(前年同期は3,288千円の減)、たな卸資産の減少16,137千円(前年同期は33,472千円の増)、仕入債務の減少15,824千円(前年同期は40,379千円の増)などがあったことによるものです。
投資活動の結果得られた資金は1,428千円(前年同期は48,398千円の減)となりました。これは主に、貸付による支出25,000千円(前年同期比9,700千円増)、有形固定資産の取得による支出16,524千円(前年同期比31,494千円減)があったものの、貸付金の回収による収入32,351千円(前年同期比1,957千円減)、保険積立金の解約による収入10,959千円(前年同期は積立による支出3,840千円)などがあったことによるものです。
財務活動の結果使用した資金は37,235千円(前年同期比41千円増)となりました。これは主に、配当金の支払額37,235千円(前年同期比41千円増)があったことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物(資金)の期末残高は2,184,442千円となり、前連結会計年度末に比べて9,746千円の増加となりました。
当社グループの事業は、出版事業及び出版付帯事業の単一セグメントであるため、事業別に記載しております。
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。
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事 業 |
当連結会計年度 (自 平成27年10月1日 至 平成28年9月30日) (千円) |
前年同期比(%) |
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出版事業 |
3,122,153 |
104.5 |
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出版付帯事業 |
94,323 |
62.1 |
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合計 |
3,216,476 |
102.5 |
(注) 1 事業間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
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事 業 |
当連結会計年度 (自 平成27年10月1日 至 平成28年9月30日) (千円) |
前年同期比(%) |
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出版事業 |
3,094,752 |
104.7 |
|
出版付帯事業 |
94,323 |
62.1 |
|
合計 |
3,189,075 |
102.6 |
(注) 1 事業間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 総販売実績に対する割合が、100分の10以上の相手先別の販売実績及びその割合は、次のとおりであります。
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前連結会計年度 |
日本出版販売㈱ |
870,764千円 |
28.0% |
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㈱トーハン |
538,573千円 |
17.3% |
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当連結会計年度 |
日本出版販売㈱ |
922,352千円 |
28.9% |
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㈱トーハン |
575,619千円 |
18.0% |
わが国の出版市場は、長期的な縮小傾向に歯止めがかかっておらず、また当社グループの出版領域についても、近年大きな制度改正がないことや読書習慣の減退、購買意欲の低下など、引き続き厳しい環境が続くものと考えております。
一方で、「企業の経営問題とその対処」、「時代によって移り変わる企業経営の実務」を主要な出版テーマとする当社グループにとって、変化が絶え間なく起こる昨今の経済環境は、求められる社会的使命をますます果たす好機とも捉えております。
このような環境下において、当社グループが持続的な成長を実現し、企業価値の最大化を図るためには、機動的かつ柔軟な経営判断を可能にするグループ経営体制を構築することが望ましいと判断し、平成28年1月1日をもって持株会社体制へ移行いたしました。
以上を踏まえ、今後も持続的に成長し競争力を高めるために、引き続き以下の課題に取り組みます。
第一に新しい読者の創造です。企業社会が大きく変貌する中で、求められる経営実務、知識は何かについて不断に研究を続け、必要とされるコンテンツを開発してまいります。
第二に読者ニーズへの対応です。近年読書スタイルや読書に費やす時間は大きく変化しており、どのような企画・構成・誌面が読者ニーズを満たすのか、編集力の更なる向上を図ってまいります。
第三に有限な経営資源の効率的な活用です。従来の取引慣行が制度疲労をきたしている中、出版業界の返品問題に対し正面から取り組み、解決策を多方面から検討し、無駄を極力排しながら、必要な本を確実に届ける効率的な出版ビジネスモデルを追求するとともに、需要が減少しているジャンルから増加が期待できるジャンルへ編集者を配置換えするなどして、経営効率を追求してまいります。
以上、当社グループがこれまで培ってきたブランドとノウハウを活かし、これらの試みを更に積極的に行い、「所有する価値ある専門書づくり」、「社会の変化に敏感に対応した本づくり」を1冊1冊丁寧に行いながら今後も対応してまいります。
当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主な事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
① 再販制度について
当社グループの製作、販売する書籍、雑誌の著作物は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という)」第23条の規定により、再販売価格維持契約制度(以下「再販制度」という)が認められております。
独占禁止法は、再販制度を不公正な取引方法の1つであるとして原則禁止しておりますが、著作物については再販制度が認められております。
公正取引委員会の「著作物再販制度の取扱い」(平成13年3月28日公表)によると、「競争政策の観点からは同制度を廃止し…」としながらも、「同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない」として、当面この再販制度が維持されることとなっております。この再販制度が廃止された場合、業界全体への影響も含め、当社グループへの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 委託販売制度について
著作物再販制度のもとに、出版業界には委託販売制度があります。取次会社及び書店に委託販売した書籍、雑誌等の出版物について、一定期間内に限り、返品を受け入れることを条件とするこの販売制度を当社グループも採用しております。
当社グループは、近時、「返品減少」を重点政策の1つに掲げ、適量送本を徹底し、大きな成果を得てきました。
また、返品による損失に備えるため、会計上、出版物に係る期末の売掛債権を基礎として、過去の返品実績率を勘案した所要額を返品調整引当金として計上しております。そのため、返品率の増加は当社グループの経営成績に影響を及ぼします。
③ 個人情報保護について
個人情報の保護に関しては万全を期しておりますが、予期せぬ事態により流出する可能性があります。このような事態が生じた場合、当社グループのブランド価値の低下を招くとともに、多額の費用が発生する可能性があります。
④ 係争・訴訟について
当連結会計年度において当社グループの業績に重要な影響を及ぼす係争・訴訟は提起されておりません。しかし、業績に影響を及ぼす訴訟や社会的影響の大きな訴訟等が発生し、当社グループに不利な判断がなされた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 大規模自然災害の発生について
当社グループの事業所、倉庫施設の周辺地域において大地震や台風等の災害或いは予期せぬ事故等が発生し、事業所、倉庫施設等に損害が生じ、当社グループの販売活動や流通・仕入活動が阻害された場合、さらに人的被害があった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
特記すべき事項はありません。
特記すべき事項はありません。
(資産)
流動資産につきましては、金銭の信託の減少199,960千円、仕掛品の減少25,287千円があったものの、現金及び預金の増加207,383千円、受取手形及び売掛金の増加52,760千円、商品及び製品の増加9,903千円、繰延税金資産の増加2,057千円などにより前連結会計年度末に比べ50,166千円増加して、4,014,619千円となりました。
固定資産につきましては、投資有価証券の減少24,211千円、のれんの減少19,501千円、ソフトウェアの減少14,782千円、事業保険積立金の減少10,959千円、繰延税金資産の減少9,887千円、建物及び構築物の減少6,054千円などにより前連結会計年度末に比べ82,872千円減少して、1,055,329千円となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ32,705千円減少して、5,069,949千円となりました。
(負債)
流動負債につきましては、未払法人税等の減少32,725千円、支払手形及び買掛金の減少15,824千円により前連結会計年度末に比べ38,617千円減少して、861,366千円となりました。
固定負債につきましては、退職給付に係る負債の減少14,533千円により前連結会計年度末から14,533千円減少して、294,908千円となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ53,151千円減少して、1,156,274千円となりました。
(純資産)
純資産につきましては、その他有価証券評価差額金の減少37,534千円があったものの、利益剰余金の増加57,960千円により前連結会計年度末に比べ20,445千円増加して、3,913,674千円となりました。
当連結会計年度は、売上高3,189,075千円(前連結会計年度比2.6%増)、差引売上総利益1,112,799千円(前連結会計年度比3.3%増)、営業利益121,456千円(前連結会計年度比34.5%増)、経常利益132,994千円(前連結会計年度比17.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益95,266千円(前連結会計年度比71.9%増)となりました。
書籍の出版点数は前連結会計年度を若干下回りましたが、既刊書の積極的な販売活動や増刷頻度の向上、また適正配本による返品の減少などにより売上、利益とも増加いたしました。これにより、営業利益率が前連結会計年度を0.90ポイント、売上高に対する親会社株主に帰属する当期純利益率が前連結会計年度を1.20ポイント上回りました。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローについては、「1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。