第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当期の世界経済の情勢は、中国では経済成長のペースが鈍化し、資源国を含む新興国の経済も一部減速するところもあったが、雇用情勢が堅調な米国を中心に、先進国では、緩やかな回復基調を堅持した。こうした中、国内経済は、個人消費に力強さはみられないものの、円安や原油価格の低下等を背景に企業収益・雇用情勢は改善傾向が続いた。

当社グループを取り巻く事業環境については、一部で市況や出荷が低迷したところもあったが、上記の経済情勢を背景に、総じて堅調に推移した。
 このような状況の下、当社グループは、販売価格の是正、販売数量の拡大に引き続き注力するとともに、徹底した合理化によるコスト削減に取り組み、全社を挙げて業績改善に努めてきた。
 この結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ2,749億円減少し、2兆1,018億円となった。損益面では、営業利益は1,644億円、経常利益は1,712億円、親会社株主に帰属する当期純利益は815億円となり、それぞれ前連結会計年度に比べ増加した。
 当連結会計年度のセグメント別の業績の概況は、次のとおりである。

 

(石油化学)

石油化学品や合成樹脂は原料価格の下落により、市況が下落した。また、千葉工場の石油化学事業再構築、およびラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニー(ペトロ・ラービグ社)の定期修繕等の影響により、石油化学品や合成樹脂の出荷も減少した。一方、円安による在外子会社の邦貨換算差の影響があった。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ、2,752億円(29.5%)減少し6,571億円となったが、交易条件の改善や一時的なライセンス収入により、営業利益は前連結会計年度に比べ80億円増加し288億円となった。

また、生産規模は、約4,960億円となった。(販売価格ベース)

 

(エネルギー・機能材料)

アルミニウム市況が大きく下落したほか、合成ゴムも原料価格の下落により市況が下落した。レゾルシン(接着剤用原料)は需要の低迷により、出荷が減少した。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ、184億円(9.1%)減少し1,845億円となり、営業損益は前連結会計年度に比べ28億円悪化し20億円の損失となった。

また、生産規模は、約1,100億円となった。(販売価格ベース)

 

(情報電子化学)

タッチセンサーパネルは、販売価格は下落したが、需要の増加により出荷は増加した。偏光フィルムも販売価格が下落した。また、円安による在外子会社の邦貨換算差の影響もあった。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ、39億円(1.0%)増加し4,091億円となったが、販売価格下落の影響が大きく、営業利益は前連結会計年度に比べ77億円減少し247億円となった。

また、生産規模は、約3,490億円となった。(販売価格ベース)

 

 

(健康・農業関連事業)

メチオニン(飼料添加物)は市況の上昇により大幅な増収となった。農薬は海外での出荷増加により販売が増加した。更に円安による影響もあり、この結果、売上高は前連結会計年度に比べ、136億円(3.9%)増加し3,590億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ214億円増加し775億円となった。

また、生産規模は、約1,790億円となった。(販売価格ベース)

 

(医薬品)

国内では、アイミクス(高血圧症治療剤)等の販売が伸長したが、長期収載品の出荷減少の影響が大きく、減収となった。北米では、ラツーダ(非定型抗精神病薬)の販売が大きく伸長したことに加え、アプティオム(抗てんかん剤)の販売が拡大した。また、円安による在外子会社の邦貨換算差の影響もあった。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ、319億円(7.9%)増加し4,355億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ137億円増加し427億円となった。

また、生産規模は、約4,110億円となった。(販売価格ベース)

 

(その他)

上記5部門以外に、電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務、物性分析・環境分析等を行っている。前連結会計年度には、これらに加えてペトロ・ラービグ社向けの役務提供が含まれていたことなどから、売上高は前連結会計年度に比べ、308億円(35.3%)減少し566億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ78億円減少し78億円となった。

 

※当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいている。
 
 なお、持分法投資利益は、前連結会計年度に比べ37億円減少し、202億円となった。
 ペトロケミカル コーポレーション オブ シンガポール(プライベート)リミテッドは交易条件の改善により業績が改善したが、ペトロ・ラービグ社は定期修繕等の影響により、業績が悪化した。

 

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益は増加したものの、前連結会計年度はラービグ第2期計画に係る立替金の回収があったこと等により、前連結会計年度とほぼ横ばいの、2,612億円の収入となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の売却による収入が減少した一方、投資有価証券の売却による収入が増加した結果、前連結会計年度に比べ30億円増加し、537億円の支出となった。

この結果、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動および投資活動によるキャッシュ・フロー)は、前連結会計年度の2,042億円の収入に対して、当連結会計年度は2,075億円の収入となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは、1,780億円の支出となった。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度に比べ136億円増加し、2,156億円となった。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績及び受注状況

当社グループ(当社および連結子会社)の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産製品の規模は小さいため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。

このため生産の状況については、「1 業績等の概要」におけるセグメント別の業績の概況に関連付けて示している。

 

(2) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

石油化学

657,093

△29.5

エネルギー・機能材料

184,473

△9.1

情報電子化学

409,066

1.0

健康・農業関連事業

359,013

3.9

医薬品

435,478

7.9

その他

56,641

△35.3

合計

2,101,764

△11.6

 

(注) 1 上記販売実績は、外部顧客に対する売上高を示している。

2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略している。

   3 当連結会計年度より、セグメントの変更を行っており、「前連結会計年度比(%)」は、前連結会計年度の販
      売実績を変更後のセグメント区分に組替えて算出している。

 

 

 

3 【対処すべき課題】

今後の世界経済の動向は、中国経済の減速や、米国の金融政策正常化の動き、為替レートの大幅な変動・資源価格低迷による新興国および資源国経済の一段の下振れ懸念など、リスク要因が多く存在し、楽観はできないものと思われる。一方、雇用・所得環境の改善が続くなかで、緩やかな回復基調を辿ってきた国内経済についても、円高の進行や海外での不確実性の高まりにより、景気回復の持続力に陰りが見え始めている。

当社グループを取り巻く事業環境についても、原材料価格の変動や製品市況の動向など、先行き不透明な要因があり、引き続き、市場環境を注視するとともに、環境変化に前広に対応していくことが重要であると考えている。

このような状況の下で、当社グループは、先般、平成28年度を初年度とする新しい「中期経営計画」を策定した。
本計画では、「Change and Innovation ~ Create New Value ~」をスローガンに掲げ、前中期経営計画で実現した強固な財務基盤をベースに、攻めの経営に取り組むことによって、持続的な成長を続けるレジリエント(回復力に富む)な住友化学グループへの変革をより一層加速していく。

 

平成28年度~平成30年度 中期経営計画の概要

1.住友化学グループの目指す姿


 

2.基本方針

(1) 事業ポートフォリオの高度化

環境・エネルギー、ICT(情報・通信技術)、ライフサイエンスを中心とした、技術優位性のある事業分野に積極的に経営資源を投入し、社会が抱える諸課題に対し、技術を基盤とした新しい価値を提供していく。また、投資計画の中に、戦略的M&A枠(3,000億円)を設定し、スペシャリティケミカル分野での大型投資の機会を模索するなど、事業ポートフォリオの更なる高度化を目指していく。

(2) キャッシュフロー創出力の強化

事業の競争力強化やコスト削減、規律ある積極投資、バランスシートのスリム化の取り組みを通じ、筋肉質な財務基盤を維持するとともに、キャッシュフローを安定して生み続ける体質を定着させ、大型投資を機動的に実施できる体制を構築していく。

(3) 次世代事業の早期戦列化

重点3分野である環境・エネルギー、ICT、ライフサイエンスへの投資を継続し、研究テーマの着実な事業化を図るとともに、重点3分野の「境界領域」でのソリューション提供に取り組んでいく。

 

上記3点に加え、引き続き「グローバル経営の深化」、「コンプライアンスの徹底、安全・安定操業の確立と継続」に取り組んでいく。

 

なお、当社が主要株主として出資しているペトロ・ラービグ社では、既存の石油精製・石油化学統合コンプレックスの拡張工事が進んでおり、新たに確保する30百万立方フィート/日のエタンと、約3百万トン/年のナフサを主原料にエタンクラッカーの増設や芳香族プラントの新設を通して、付加価値の高いさまざまな石油化学製品を生産する計画であり、本年前半から順次建設を終え、稼働させていく予定である。

 

3.経営目標 

本中期経営計画の経営目標(連結)を下表のとおり設定している。

 

 

 

平成30年度計画

(参考)

平成27年度実績

 

売上高

25,400億円

21,018億円

 

営業利益

2,000億円

1,644億円

(平成28年度~平成30年度前提)

  ナフサ:45,000円/k1

  為替 :120円/米ドル

経常利益

2,100億円

1,712億円

親会社株主に帰属する
当期純利益

1,100億円

815億円

 

 

 

 

4 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価および財政状況等に影響を及ぼす主要なリスクには以下のようなものがある。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

1.市場や供給に係るリスク

当社グループは、総合化学メーカーとして様々な事業を行っており、事業に関わるリスクは多種多様である。事業に係る市場リスクや供給リスクについては、主に以下のようなものがある。

 

・当社グループの事業は価格競争に晒されている。海外企業の国内市場参入、関税引き下げなどによる輸入品の流入、ジェネリック品の台頭など、様々な理由により当社グループの製品群は今後も厳しい価格競争に晒されるものと予想される。当社グループはコストの低減に努めているが、価格競争を克服できない場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・当社グループの海外売上高は売上高の6割以上を占め、石油化学部門などの製品は特にアジア市場での販売が多い。また、情報電子化学部門は、中国や韓国、台湾の特定顧客向けの販売が大きな比重を占め、健康・農業関連事業部門の一部製品は特定顧客へカスタムメードで製品を供給している。アジア市場での経済情勢の悪化、あるいは顧客企業の業績状況の変化などによる値下げ要求が発生した場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・石油化学部門の主要原料であるナフサは、中東地域の治安や世界の経済情勢に多大な影響を受け、時に急激な価格変動を起こすことがある。ナフサの価格が急激に上昇した場合、製品価格への転嫁が遅れることなどにより、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・ナフサやその他の原料品の一部については、特定の地域や購入先に依存している。購入先を複数にするなど、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めているが、時に主要原料の不足が生じないという保証はない。必要な主要原料が確保できない場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・情報電子化学部門の製品は、技術革新のスピードが速く、タイムリーに新製品を開発・提供していく必要がある。当社グループが顧客ニーズを満足させる新規製品を有効に開発できない場合、また他社において画期的な技術革新がなされた場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・健康・農業関連事業部門の農薬や家庭用殺虫剤の出荷は、世界各地域における異常気象等の理由による作物の育成状況や病害虫の発生状況に左右される。また、飼料添加物は急激な価格変動を起こすことがある。作物の育成状況が悪くなった場合、病害虫の発生が少なくなった場合、或いは急激な価格変動が起こった場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・医薬品部門では、国内において、急速に進展する少子高齢化等により医療保険財政が悪化する中、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進などの医療費抑制策が図られ、さらなる医療制度改革の議論が続けられている。医療制度改革はその方向性によっては当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。また、海外においても医薬品は各種の規制を受けており、米国の医療保険制度改革等の行政施策の動向によっては、重要な影響を受ける可能性がある。

 

 

2.為替レート変動に係るリスク

当社グループは、国内で製造した製品を海外に輸出するとともに海外から原料品を輸入しているが、製品輸出高は原料品輸入高を上回っている。外国通貨に対して円高が進行した場合、海外で生産された製品に対する価格競争力が低下することに加え、輸出手取額の減少が輸入支払額の減少を上回ることになる。このようなリスクに対しては、為替予約や円建輸出取引を行うことによりリスクを最小限にするように努めているが、中長期的な為替レートの変動によるリスク等を完全にヘッジすることは出来ないため、円高の進行は当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

また、海外の連結子会社や持分法適用会社の経営成績は、連結財務諸表作成のために円換算されている。換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

3.金利変動に係るリスク

当社グループは、資金需要に対してその内容や財政状況および金融環境を考慮し、調達の金額・期間・方法等を判断している。今後の金利の変動に備え、固定金利・変動金利を適宜組み合わせて調達を行っているが、金利が上昇した場合には支払利息が増加し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

4.株式相場変動に係るリスク

当社グループが保有する有価証券の多くは、時価のある有価証券であるため、株式相場が大幅に下落した場合、減損が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

5.固定資産の減損に係るリスク

当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用している。将来、当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、減損損失が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

6.繰延税金資産の取崩しに係るリスク

当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っているが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

7.退職給付債務に係るリスク

当社グループの従業員退職給付費用および債務は、年金資産の運用収益率や割引率などの数理計算上の前提に基づいて算出されている。年金資産運用環境の悪化により前提と実績に乖離が生じた場合などは、将来の退職給付費用が増加し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

 

8.その他経営全般に係るリスク

(海外事業展開)

当社グループは、中東やアジアなど海外での事業活動を今後一層拡大していくこととしている。海外における事業活動には法律や規制の変更、労務環境の違いによる争議等の発生、人材の採用と確保の難しさ、テロ・戦争・その他の要因による社会的混乱などのリスクが内在しており、これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

当社とサウジアラビアン オイル カンパニー(サウジ・アラムコ社)が共同で設立した「ペトロ・ラービグ社」は、サウジアラビアのラービグにおいて、石油精製・石油化学の統合コンプレックス事業(「ラービグ第1期計画」)を運営している。当社は、プロジェクト総投資額に対し、不測の事態による損害に備え、独立行政法人日本貿易保険の規約・限度額に従い、海外投資保険等に加入している。

「ペトロ・ラービグ社」は、既存の「ラービグ第1期計画」の拡張計画(「ラービグ第2期計画」)に関し、銀行団との間で、融資契約上のプロジェクト・コスト約81億米ドルの6割強にあたる約52億米ドルのプロジェクト・ファイナンス契約を締結し銀行借入を行っており、当社はその50%について完工保証を差入れている。また、「ペトロ・ラービグ社」の行っているその他の一部の借入に対して、当社は債務保証を行っている。当該保証の履行により、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。当社は、「ラービグ第1期計画」と同様に「ラービグ第2期計画」についても、独立行政法人日本貿易保険の規約・限度額に従い、海外投資保険等に加入している。

 

(企業買収・資本提携)

当社グループは、事業拡大や競争力強化等を目的として、国内外において企業買収・資本提携等を実施しているが、当社グループおよび出資先企業を取り巻く事業環境の変化等により、当初期待していたシナジー効果を得られない可能性がある。また、出資先企業の経営成績、財政状態の悪化による企業価値の低下等により、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

(研究開発)

当社グループは、需要家のニーズに合わせた新技術・新製品をスピーディーに上市するため、積極的に研究開発を行っている。当社グループの研究開発は、次世代事業の創生のための探索研究を含んでいるため研究開発期間が長期間に亘る場合があり、また、研究開発テーマが実用化されず、新製品の開発が著しく遅延または断念される場合には、競争力が低下し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

(知的財産権)

当社グループは、他社と差別化できる技術とノウハウを蓄積し事業の競争力を強化してきたが、当社グループ独自の技術・製品とノウハウの一部は、厳正な管理を行っているものの、予期せぬ事態により外部に流出する可能性があり、また、特定の地域ではこれらの知的財産の完全な保護が不可能なため、第三者が当社グループの知的財産を使用して類似製品を製造することを効果的に防止できない可能性がある。また将来、知的財産に係る紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされる可能性がある。

 

 

(製品の品質)

当社グループは、世界的に認められている厳格な品質管理基準に従って、各種製品を製造しているが、すべての製品について欠陥が無く、将来に亘ってリコールが発生しないという保証はない。大規模な製品事故は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

また、農薬や医薬品等は各国の厳しい審査を受けて承認されているが、科学技術の進歩や市販成績が蓄積された結果から、新たに品質問題や副作用が見つかることもある。このように上市後予期せぬ品質問題や副作用が発見された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

(事故・災害)

当社グループは、製造設備の停止や製造設備に起因する事故などによる潜在的なマイナス要因を最小化するため、すべての製造設備において定期的な点検を実施している。しかしながら、製造設備で発生する事故、自然災害等による影響を完全に防止・軽減できる保証はない。また、当社グループの事業活動におけるシステム・ネットワークへの依存度は年々拡大しており、セキュリティの高度化などによりシステムやデータの保護に努めているが、停電、自然災害やコンピューターウィルス、ハッカー等のシステム犯罪などにより、システム・ネットワーク障害が生じる可能性がある。

事故等により、工場周辺に物的・人的被害を及ぼした場合、あるいは、システム・ネットワーク障害が発生した場合、事業活動に支障をきたすほか多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

(規制変更)

当社グループは、事業展開する各国の規制に従い、業務を遂行している。将来における法律、規則、政策、実務慣行、解釈およびその他の政策変更ならびにそれらによって発生する事態が、当社グループの業務遂行や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性がある。また、将来的に環境および化学品安全等に対する法的規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性がある。

 

(訴訟)

当社グループは、国内および海外事業に関連して、訴訟、係争、その他の法律的手続きの対象となるリスクがあり、将来重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状況に重要な悪影響を及ぼす可能性がある。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

技術導入関係

契約会社名

契約相手先

国名

内容

対価

有効期間

大日本住友製薬

株式会社

アルミラル社

スペイン

エバスチン

に関する技術

ランニング・

ロイヤリティ

昭和63年1月~平成24年12月

以後5年間ずつ自動更新

大日本住友製薬

株式会社

ブリストル・
マイヤーズ株式会社

日本

イルベサルタン

に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成18年7月~
発売から15年間または
特許満了日の長い方

大日本住友製薬

株式会社

ニューロクライン社

アメリカ

インディプロン

に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成19年10月~
発売から15年間または
特許満了日の長い方

大日本住友製薬

株式会社

インターセプト
ファーマシューティカルズ社

アメリカ

ファルネソイドX
受容体作動薬に
関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成23年3月~

国毎に、最初または第2適応症の上市から10年間、または独占期間のどちらか長い方

大日本住友製薬

株式会社

エジソン社

アメリカ

EPI-743および
EPI-589
に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成25年3月~

発売から10年間または
独占期間のどちらか長い方

協議により延長可能

大日本住友製薬株式会社

サンバイオ社

アメリカ

SB623に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成26年9月~
最終の対象国での発売から
20年間

サノビオン社

ビアル・ポルテラ・アンド・シーエー社

ポルトガル

エスリカルバゼピンに関する技術

一時金

平成19年12月~
国毎に、発売から10年間、
特許満了日、データ独占期間のうちいずれか長い方

サノビオン社

タケダ社

ドイツ

シクレソニド
に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成20年1月~
発売から15年間

 

 

技術供与関係

契約会社名

契約相手先

国名

内容

対価

有効期間

住友化学
株式会社

S-OIL社

韓国

ポリプロピレンおよびプロピレンオキサイドに関する製造技術

一時金

(注)

 

(注)契約相手先との守秘義務により記載していない。

 

販売契約

契約会社名

契約相手先

国名

内容

契約期間

大日本住友製薬

株式会社

日本イーライリリ
ー株式会社

日本

トルリシティに関する販売提携

平成27年7月~
相手方と合意した期間
の満了まで

イーライリリー社

アメリカ

 

 

 

 以下の契約については、当連結会計年度において終了した。

 技術導入関係

契約会社名

契約相手先

国名

内容

対価

有効期間

大日本住友製薬

株式会社

ファイザー社

イギリス、

パナマ

アムロジピン
に関する技術

ランニング・

ロイヤリティ

平成20年10月~平成26年8月
以後は無償で販売できる。

 

 

 技術供与関係

契約会社名

契約相手先

国名

内容

対価

有効期間

大日本住友製薬

株式会社

武田薬品工業
株式会社

日本

ルラシドン
に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成23年3月~
販売終了まで

 

 

6 【研究開発活動】

 当社グループ(当社および連結子会社)は、事業拡大と収益向上に寄与すべく、独自の優位性ある技術の確立を基本方針とし、各社が独自に研究開発活動を行っているほか、当社グループ全体としての効率性を念頭に置きながら、互いの研究開発部門が密接に連携して共同研究や研究開発業務の受委託等を積極的に推進している。

 なお、平成27年4月1日の組織改正により、基礎化学品研究所および石油化学品研究所を再編し、エネルギー・機能材料研究所を新設した。また、当社のコア技術である有機合成技術をより機動的に事業に活かし、事業化への更なるスピードアップ、川下製品への展開、有機・無機ハイブリッド技術の進展等の要請に応えるために、有機合成研究所を発展的に解消して、個別の事業と密接に関連する研究開発機能については事業部門研究所に移管・統合し、将来の事業になり得る分野の有機合成技術については筑波地区研究所(筑波開発研究所および先端材料探索研究所)と統合した。

 当連結会計年度においては、平成25年度から平成27年度までの中期経営計画に従い、環境・エネルギー、ライフサイエンス、ICT(情報・通信技術)の3分野に研究資源を重点投入するとともに、異分野技術融合による新規事業の芽の発掘とその育成に取り組んできた。
 これに基づき、当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度に比べ79億円増加し、1,558億円となった。

 

 セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりである。

 

 石油化学分野では、事業のグローバル競争力強化のために、プロピレンオキサイド、カプロラクタム、メタアクリルモノマーを中心とする既存バルク製品の触媒・プロセス改良、合成樹脂の製造プロセスの改良、既存素材の高性能化や新規高付加価値製品の開発に積極的に取り組んでいる。当連結会計年度において、ポリエチレンでは、太陽電池用封止向け材料の性能改良に進展があった。具体的には、太陽電池の大規模発電で出力低下に繋がるPID(Potential Induced Degradation)現象を抑えることが可能な封止材の評価が進展し、顧客への採用が進んだ。ポリプロピレンでは、軽量化等の環境ニーズに対応した自動車材や機能性フィルム材に求められる高性能ポリプロピレンの材料、および、その製造プロセスの開発に進展が見られた。メタアクリルモノマーに関しては、性能が大幅に向上した触媒の製造を開始し、平成28年度から使用予定である。新製品開発では、難燃性と柔軟性を兼ね備えた熱可塑性エラストマーの採用に向けた顧客評価、および蓄熱性能を有する樹脂材料の顧客での実用評価に向けた技術開発が進展した。

 なお、石油化学部門の研究開発費は62億円であった。

 

 エネルギー・機能材料分野では、自動車用排ガスのすす除去フィルター、低燃費タイヤ用の高性能ゴムや新規添加剤、LED照明用基板原料や高機能樹脂製品など、環境・エネルギー関連事業拡大のため、無機材料、高分子材料、有機合成などの幅広い分野で、新規製品創出や既存製品の競争力強化に向けた研究開発に取り組んでいる。当連結会計年度において、無機材料関連では、独自に開発したチタン酸アルミニウム製のディーゼルエンジンすす除去フィルターについて、ポーランド工場で商業生産を開始した。リチウムイオン電池用のアルミナについては品質改良を実施して他社品との差別化を図り、併せてその生産性向上についても目途を得た。アルミニウム分野では、高純度アルミニウムの耐食性を活かした上で強度、成形性を向上させた新規材料の開発が進捗した。合成ゴム関連では、様々な要求性能を満たす新規グレードの開発に目途を得、顧客評価が進んでいる。化成品関連では、機能性ゴム薬品について、タイヤ用途向け新規製品の本格製造を開始した。

 なお、エネルギー・機能材料部門の研究開発費は61億円であった。

 

 

 情報電子化学分野では、日本国内に留まらず情報電子化学部門内のグローバルな技術・研究開発能力を結集し、IT関連企業の先端技術に対応する新規材料・部材・デバイスに関する新製品の開発に、引き続き積極的に取り組んでいる。当連結会計年度は、機能性光学フィルム分野において、当社が培ってきた差別化技術に基づく最先端製品の開発・製造をさらに推進した。具体的には、スマートフォンをはじめとするモバイル機器向け液晶用光学フィルムにおいて、薄型化・高性能化を支える要素技術の自社開発を進め、それらを活用して上市した製品は大手顧客の好評を得た。また、これから大きく市場拡大することが期待されているフレキシブルディスプレイに代表される次世代ディスプレイに用いられる様々な新製品・新技術の開発に目途をつけつつあり、今後は量産化技術を確立し、新製品の市場投入を進めていく。

 電子材料分野では、高性能液晶パネル向け高輝度・高色再現性カラーレジストや半導体向け液浸ArFレジストにおいて、独自性の高い材料技術に立脚した製品が国内外の大手需要家から高い評価を得ている一方、需要拡大の続く半導体向け厚膜i線レジストの新規顧客を獲得した。また、スーパーエンジニアリングプラスチックスの分野では、従来から好評を得ていた航空機向け分野において、新規グレードの開発工業化を完了し市場投入を始めている。さらにMOエピタキシャルウエハ分野では、今後成長が見込まれるパワーデバイス分野においてさらなる開発の効率化と競争優位を獲得すべく、買収したサイオクス社との連携を深めつつ、国家プロジェクトへの参画を通じて最先端分野での技術開発を推し進めている。

 電池部材分野では、リチウムイオン二次電池用耐熱セパレータの事業拡大を支える要素技術の開発に力を入れる一方、自動車用途以外への適用を視野に入れた新セパレータの開発を推進している。また、正極材料においては、当社の強みを活かして開発し、市場評価中のハイニッケル系材料を含めたいくつかの品目について、部材メーカー選定に向けて特性の最適化を進めた。

 表示デバイス分野では、タブレットPCやスマートフォンに使用されるタッチセンサーパネルに関する設計・開発・製造を韓国の子会社東友ファインケム社にて精力的に実施している。顧客企業の旺盛な需要に応えるべく革新的生産技術の開発を進めている一方、フレキシブルディスプレイ用にも展開が期待されるフィルムベースタッチセンサーの量産化にも成功した。

 なお、情報電子化学部門の研究開発費は185億円であった。

 

 健康・農業関連事業分野では、新製品、新技術の開発や製造プロセスの改善・向上に積極的に取り組み、コア事業の強化と周辺事業への展開および川下化を推進し、健康・農業関連事業を取り巻く環境の変化に柔軟に対応している。当連結会計年度において、農業関連事業については、国内では新規農薬・肥料製品の上市により製品ラインナップの拡充を図るとともにその他の取り組みとして、従来より実施している農業法人の運営強化に加え、平成26年度から開始したコメ事業の早期確立を進めている。また、グループ会社を通じて、種子、種苗、培土、灌水資材、農業フィルムの販売、農産物販売などを積極展開している。非農耕地分野においても、グループ会社を通じて、家庭用園芸、ゴルフ場、森林防除等の非農耕地分野に農薬・肥料製品を展開している。海外では、米国において、大豆向け種子処理用殺虫殺菌剤と果樹・野菜・トウモロコシなどに適用できる殺ダニ新規製剤を上市し、さらに土壌センチュウ防除用の微生物農薬の開発を推進している。エジプト、韓国では果樹・野菜用殺菌剤の新規登録を取得した。また、ブラジルでは農薬などの農業関連製品の効力評価、開発、分析を行う研究開発拠点を平成28年度に開設することを決定し、用地取得・設計に着手した。シンガポールではシンガポール農食品獣医庁と共同で、都市型農業の研究開発プロジェクトを開始した。また、米国子会社ベーラント・バイオサイエンス社と当社との間で、バイオラショナル(天然物由来などの微生物農薬、生物成長調整剤、微生物農業資材など)と化学農薬の海外全般を対象とした開発、マーケティング、事業企画、研究、農薬登録の各機能を統合した事業運営体制を開始した。さらに、現在資本提携している豪州農薬会社ニューファーム社とは混合剤新製品の商業化に向けた開発に取り組んでいる。生活環境事業については、家庭用殺虫剤・業務用殺虫剤・動物用殺虫剤・ヒューマンヘルスケア・エアプロテクション・熱帯感染症剤の各重点分野における新製品開発を推進している。エアプロテクション分野については静電噴霧技術を用いた業務用芳香消臭剤の新製品を上市し、新規市場の開発を加速している。熱帯感染症分野については、アフリカ諸国で上市したピレスロイド抵抗性媒介蚊に有効なマラリア対策用防虫蚊帳の普及と販売推進を行っている。また、熱帯感染症に対する総合防除に係る製品強化のため、新しいコンセプトのピレスロイド抵抗性対策蚊帳、さらに室内残留散布剤や幼虫防除剤などの蚊帳以外の防除手段の開発も推進している。アニマルニュートリション事業においては、引き続きマレーシアのアニマルニュートリションテクノロジーセンターにて新規商材開発を推進している。また、メチオニンについて中米地域の主要国に新規登録を実施し、販売を開始した。医薬化学品事業では、ジェネリック原薬の製法開発と商用生産に注力するとともに、原薬・中間体の受託製造案件の獲得に積極的に取り組んでいる。また、新規分野である核酸医薬原薬の製造については、平成28年度中のGMP(Good Manufacturing Practice)生産開始を目指し、製造のスケールアップおよび品質管理体制の整備を進めている。

 なお、健康・農業関連事業部門の研究開発費は268億円であった。

 

 医薬品分野では、自社研究、技術導入、ベンチャーやアカデミアとの共同研究等あらゆる方法で、最先端の技術を 取り入れて、研究開発活動に取り組んでおり、精神神経領域とがん領域を重点領域とし、革新的な医薬品の創製を目指している。さらに、治療薬のない疾患分野や再生医療・細胞医薬といった新規分野において、世界に先駆けて事業展開を図っていく。当連結会計年度においては、大日本住友製薬株式会社、日本メジフィジックス株式会社保有の先端技術を活かした創薬研究等を進めるとともに、国内外の大学を含む研究機関等とのアライアンスも積極的に進めている。

 研究初期段階では、ゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクス等に関する自社保有の先端技術等の活用により研究効率の向上に取り組むとともに、iPS細胞等の最先端サイエンスを創薬や再生医療・細胞医薬に応用する取組を進めている。また、京都大学iPS細胞研究所と難治性希少疾患の治療薬の創製を目指した共同研究を推進中であり、産官学連携プロジェクトである「再生医療実現拠点ネットワークプログラム」にも積極的に参加している。

 研究後期および開発段階では、研究重点領域および新規分野を中心に他の領域も含めて、グローバルな視点からグループ全体でのポートフォリオの最適化を行っている。加えて、製品価値の最大化を目指した剤形展開等の製品ライフサイクルマネジメントにも積極的に取り組んでいる。

 精神神経領域では、次の進展があった。①「アプティオム」について、米国において平成27年8月に、部分てんかん発作の単剤療法を適応とした追加承認を取得した。②ルラシドン塩酸塩について、日本において統合失調症を対象とした新規第Ⅲ相臨床試験を開始し、中国において平成27年12月に、統合失調症を対象とした承認申請を行った。③dasotraline(開発コード:SEP-225289)について、米国において、注意欠如・多動症(ADHD)を対象とした第Ⅲ相臨床試験を進めており、これに加えて、過食性障害(BED)を対象とした第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験を開始した。

 がん領域では、次の進展があった。①napabucasin(開発コード:BBI608)について、米国等において、胃または食道胃接合部腺がんを対象とした併用での国際共同第Ⅲ相臨床試験を進めており、これに加えて、米国において、結腸直腸がんを対象とした併用での国際共同第Ⅲ相臨床試験を開始した。また、日本において、悪性胸膜中皮腫を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の第Ⅱ相段階を開始した。②Amcasertib(開発コード:BBI503)について、米国において、卵巣がんを対象とした第Ⅱ相臨床試験を開始した。③DSP-7888について、日本において、骨髄異形成症候群(MDS)を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の第Ⅱ相段階を開始した。

 再生医療・細胞医薬の領域では、大日本住友製薬株式会社と株式会社ヘリオスとの合弁会社である株式会社サイレジェンが、商用を視野に入れた網膜色素上皮細胞の製法検討を開始し、大日本住友製薬株式会社において、新規細胞生産設備の設置に向けた準備を進めている。細胞医薬について、米国において、サンバイオ・インクと共同でSB623について慢性期脳梗塞を対象とした後期第Ⅱ相臨床試験を開始した。

 当社グループは、開発品の導入および研究提携にも積極的に取り組んでおり、国内の研究機関および研究者を対象に、当社グループの創薬研究ニーズと合致するアイデアを募集する公募型オープンイノベーション活動「PRISM」を開始した。

 放射性医薬品では、平成15年度にライセンス導入した新規がん診断用PET製剤で開発が進捗し、平成25年度にライセンス導入したアルツハイマー診断剤も、医薬品としての製造販売承認申請に向けて準備を進めている。また、RI治療事業の増強のため、小線源治療用医療機器の品目拡充を図り、海外から新製品2品目を導入し、平成27年度に承認を取得した。

 なお、医薬品部門の研究開発費は837億円であった。

 

 全社共通およびその他の研究分野では、上記5事業分野の事業領域を外縁部へ積極拡大するための研究およびマテリアルズ・インフォマティクス等の計算機科学をはじめとする共通基盤技術開発とともに、既存事業の枠に属さない新規事業分野への展開を図るべく、環境・エネルギー、ICT、ライフサイエンスの各分野で研究開発に取り組んでいる。当連結会計年度においては、次の進展があった。ICT分野では、ディスプレイ用途において、引き続き高分子有機EL材料の性能向上に取り組むとともに、想定パネル生産プロセスにおける性能具現化の検討を行った。さらに、プリンテッド・エレクトロニクス技術を使った有機半導体の開発や、有機成分と無機成分をナノレベル・分子レベルで機能設計することにより、これまでにない機能を有する材料を生み出す技術の開発を進めている。環境・エネルギー分野では、高分子有機EL照明において、フレキシブルな基板を用いた一般照明パネルの開発を進めた。今後は当該パネルの事業化に向け、パネル性能の確保、生産プロセスの確立に取り組む。また、膜分離法によるCO2分離技術では、実際のプラント稼働下での実証試験で良好な結果が得られた。ライフサイエンス分野では、培養細胞を用いた、生体を使わない化学品安全性評価システムの構築に取り組んでいる。

 なお、全社共通部門の研究開発費は145億円であった。

 

 このように、事業拡大および競争力強化を図るべく、新製品・新技術の研究開発および既存製品の高機能化・既存技術の一層の向上に取り組み、各事業分野において着実に成果を挙げつつある。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものである。

(1) 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成している。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。特に次の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えている。

 

① 貸倒引当金

当社グループは、貸倒れが懸念される特定の債権については、個別に回収可能性を勘案し回収不能見込額に基づき貸倒引当金を計上している。また、その他の一般債権についても、貸倒実績率を勘案して貸倒引当金を計上している。なお、将来、相手先の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性がある。また、貸倒損失の発生により貸倒実績率が上昇し、一般債権に係る貸倒引当金の追加計上が発生する可能性がある。

 

② たな卸資産

当社グループは、たな卸資産について収益性の低下により投資額の回収可能性が認められなくなった場合には、回収可能な額まで帳簿価額を切り下げている。将来、当社グループの販売するたな卸資産の市場価格が低下した場合には、売上原価が増加する可能性がある。

 

③ 固定資産

当社グループは、事業資産については管理会計上の区分に基づき(一部の無形固定資産については、個々の資産を1つの単位として資産のグルーピングを行っている)、遊休資産等については個々の資産を1つの単位として資産のグルーピングを行っている。将来、当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等があった場合には、減損損失が発生する可能性がある。

 

④ 市場性のある有価証券

当社グループは、保有する市場性のある有価証券を合理的な基準に基づいて減損処理を行っている。時価が50%程度以上下落している場合は減損処理をしており、30%~50%下落している場合は、個別銘柄ごとに最近の時価水準と帳簿価額との乖離状況や発行体の業績、財政状態等を考慮した総合的な判断に拠って減損処理している。将来、株式相場が悪化した場合には、有価証券評価損を計上する可能性がある。

 

⑤ 繰延税金資産

当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っているが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、費用が増加する可能性がある。

 

⑥ 退職給付に係る資産および負債

従業員退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出している。これらの前提条件には、割引率、将来の昇給率、退職率、死亡率および年金資産の収益率などが含まれる。退職給付債務等の計算の基礎に関する事項のうち、割引率は優良社債の利回りをもとに設定している。また、実際の結果が前提条件と異なる場合または前提条件が変更された場合、その影響は数理計算上の差異として累積され、主として3年間で規則的に費用処理されている。

 

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

当社グループの当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ2,749億円減少し2兆1,018億円となり、営業利益は前連結会計年度比371億円増益の1,644億円となった。営業外損益は前連結会計年度比233億円悪化し68億円の利益となり、経常利益は前連結会計年度比138億円増益の1,712億円となった。特別損益は前連結会計年度比271億円改善し136億円の損失となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比293億円増益の815億円となった。

 

① 売上高と営業利益

売上高は、円安による在外子会社の邦貨換算差の影響はあったものの、石油化学の売価下落や出荷減少の影響が大きく、前連結会計年度に比べ2,749億円減収の2兆1,018億円となった。

石油化学の売上高は、原料価格の下落により製品市況が下落したことや、千葉工場における事業構造改善の実施およびペトロ・ラービグ社の定期修繕等の影響による出荷減少により、前連結会計年度に比べて2,752億円減少し6,571億円となった。

エネルギー・機能材料の売上高は、アルミニウムの市況下落や出荷減少、レゾルシンの出荷減少により、前連結会計年度に比べて184億円減少し1,845億円となった。

一方、医薬品の売上高は、北米でのラツーダの拡販が進んだことや、在外子会社の邦貨換算差の影響により、前連結会計年度に比べて319億円増加し4,355億円となった。

なお、海外売上高は1兆2,892億円となり、海外売上高比率は61.3%となった。

売上総利益は、交易条件の改善等により、前連結会計年度に比べ481億円増益の6,970億円となり、売上総利益率も、前連結会計年度に比べ5.9ポイント上昇し33.2%となった。販売費及び一般管理費は、研究開発費が増加したことや邦貨換算差の影響等により、前連結会計年度に比べ110億円増加し5,325億円となり、売上高に対する比率は、前連結会計年度に比べ3.4ポイント上昇し25.3%となった。なお、研究開発費は前連結会計年度に比べ79億円増加し1,558億円となり、売上高に対する比率は7.4%となった。

この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ371億円増益の1,644億円に、営業利益率は前連結会計年度より2.5ポイント上昇し7.8%となった。

 

② 営業外収益・費用と経常利益

営業外損益は、前連結会計年度の301億円の利益から233億円悪化し、68億円の利益となった。期末の急激な円高の進行による為替差損の計上のほか、定期修繕の実施等に伴うペトロ・ラービグ社の業績悪化による持分法利益の減少が主な要因である。

この結果、経常利益は前連結会計年度の1,574億円に対し138億円増加し、1,712億円となった。

 

③ 特別損益と税金等調整前当期純利益

特別利益は、投資有価証券売却益158億円を計上し、前連結会計年度の247億円に比べ89億円減少した。

特別損失は、減損損失および事業構造改善費用で合計295億円計上し、前連結会計年度の655億円に比べ360億円減少した。減損損失は、シンガポールの子会社におけるS-SBR製造設備やポーランドの子会社におけるディーゼル・パティキュレート・フィルター製造設備などについて247億円を計上した。事業構造改善費用は、当社および子会社における有形固定資産除却損等で48億円を計上した。

この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の1,167億円に対し409億円増加し、1,576億円となった。

 

④ 親会社株主に帰属する当期純利益

法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の総額は452億円となり、税金等調整前当期純利益に対する税効果会計適用後の法人税等の負担率は、28.7%となった。

この結果、当期純利益は、1,124億円となった。

非支配株主に帰属する当期純利益は、主として大日本住友製薬株式会社やザ ポリオレフィン カンパニー(シンガポール)プライベート リミテッドなどの連結子会社の非支配株主に帰属する利益からなり、前連結会計年度の189億円に比べ120億円増加し、当連結会計年度は309億円となった。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の522億円に対し293億円増加し、815億円となった。

 

(3) 資本の財源および資金の流動性

① 財政政策

当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入、資本市場における社債およびコマーシャル・ペーパーの発行等により、必要資金を調達している。当社グループの財務活動の方針は、低利かつ中長期に亘り安定的な資金調達を行うこと、および十分な流動性を確保することである。

当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は2,156億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は150.5%である。また、短期的な資金需要に対応するため、コマーシャル・ペーパーの発行枠を1,800億円(当連結会計年度末の発行残高240億円)と大手邦銀のシンジケート団による800億円のコミットメント・ラインおよび、大手外銀のシンジケート団による210億円のマルチカレンシー(円・米ドル・ユーロ建)によるコミットメント・ラインを有している。

 

② 財政状態

当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ2,182億円減少し2兆6,622億円となった。前連結会計年度末に比べ円高となったことにより、在外資産等の邦貨換算額が減少したことや、投資有価証券が減少したことが主な要因である。

負債は、前連結会計年度末に比べ1,908億円減少し1兆5,714億円となった。有利子負債(短期借入金、1年内償還予定の社債、コマーシャル・ペーパー、社債および長期借入金の合計でリース債務を除く)が前連結会計年度末に比べ1,487億円減少し、8,315億円となったことが主な要因である。

純資産(非支配株主持分を含む)は、利益剰余金が増加したものの、為替換算調整勘定等のその他の包括利益累計額が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ274億円減少し1兆908億円となった。自己資本比率は、前連結会計年度末に比べて1.3ポイント上昇し、28.8%となった。

 

③ キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益は増加したものの、前連結会計年度はラービグ第2期計画に係る立替金の回収があったこと等により、前連結会計年度とほぼ横ばいの、2,612億円の収入となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の売却による収入が減少した一方、投資有価証券の売却や投資の厳選による支出の抑制等により30億円支出が減少し、537億円の支出となった。

この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度の2,042億円の収入に対して、当連結会計年度は2,075億円の収入となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは、1,780億円の支出となった。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ136億円増加し、2,156億円となった。