当期の世界経済の情勢は、英国のEU離脱問題や米国での新政権誕生などにより、不透明感は強まりはしたが、良好な雇用環境や財政拡張への期待感等を背景に米国経済が堅調に推移するなど、総じて底堅いものとなった。国内経済は、個人消費などに依然弱さが見られるものの、雇用・所得環境の改善や、堅調な企業収益などを背景に、緩やかな回復基調が続いた。
当社グループを取り巻く状況については、当期前半の円高の進行や新興国の景気減速などにより、一時的に厳しい状況もあったが、米国大統領選後の円安傾向や、アジアにおける高水準の石油化学製品市況などにより、期中から、事業環境に改善の兆しがみられた。
このような状況の下、当社グループは、全社を挙げて業績改善に努めるとともに、「事業ポートフォリオの高度化」、「キャッシュフロー創出力の強化」、「次世代事業の早期戦列化」等を基本方針とする中期経営計画(平成28年度~平成30年度)に基づき、持続的な成長を続けるレジリエント(回復力に富む)な住友化学グループへの変革をより一層加速すべく取り組んできた。
この結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ1,475億円減少し、1兆9,543億円となった。損益面では、営業利益は1,343億円、経常利益は1,666億円となり、それぞれ前連結会計年度を下回った。一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は855億円となり、前連結会計年度を上回った。
当連結会計年度のセグメント別の業績の概況は、次のとおりである。
(石油化学)
石油化学品や合成樹脂は原料価格の下落により、市況が下落した。また、千葉工場の石油化学事業再構築の影響により、石油化学品の出荷も減少した。更に円高による在外子会社の邦貨換算差の影響もあった。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ、851億円(12.9%)減少し5,720億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ22億円減少し266億円となった。
また、生産規模は、約4,380億円となった。(販売価格ベース)
(エネルギー・機能材料)
アルミニウムは円高等の影響により販売価格が下落した。一方、レゾルシン(接着剤用原料)やエンジニアリングプラスチックスは需要の増加により、出荷が増加した。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ、31億円(1.5%)減少し2,059億円となったが、営業利益は前連結会計年度に比べ44億円増加し72億円となった。
また、生産規模は、約1,410億円となった。(販売価格ベース)
(情報電子化学)
偏光フィルムは販売価格が下落した。タッチセンサーパネルも、販売価格は下落したが、需要の増加により出荷は増加した。また、円高による在外子会社の邦貨換算差の影響もあった。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ、261億円(6.8%)減少し3,584億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ95億円減少し103億円となった。
また、生産規模は、約3,120億円となった。(販売価格ベース)
(健康・農業関連事業)
メチオニン(飼料添加物)は市況の下落により、減収となった。更に円高による影響もあり、この結果、売上高は前連結会計年度に比べ、397億円(11.1%)減少し3,193億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ314億円減少し462億円となった。
また、生産規模は、約1,570億円となった。(販売価格ベース)
(医薬品)
国内では、アイミクス(高血圧症治療剤)やトレリーフ(パーキンソン病治療剤)等の販売が拡大したが、薬価改定や長期収載品の出荷減少の影響が大きく、減収となった。北米では、ラツーダ(非定型抗精神病薬)を中心に堅調に販売が拡大した。一方、円高による在外子会社の邦貨換算差の影響があった。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ、87億円(2.0%)増加し4,442億円となった。北米での販売拡大により営業利益は前連結会計年度に比べ124億円増加し551億円となった。
また、生産規模は、約3,980億円となった。(販売価格ベース)
(その他)
上記5部門以外に、電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務、物性分析・環境分析等を行っている。これらの売上高は前連結会計年度に比べ、22億円(3.9%)減少し544億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ21億円減少し57億円となった。
※当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいている。
なお、持分法投資利益は前連結会計年度に比べ、210億円増加し、412億円となった。
ペトロケミカル コーポレーション オブ シンガポール(プライベート) リミテッドは好調な業績が続いた。またラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニーは、前連結会計年度は定期修繕の影響により業績が悪化したが、当連結会計年度は定期修繕明けの出荷数量の増加等により、業績が改善した。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、営業利益の減少や法人税等の支払の増加等により、前連結会計年度に比べ737億円減少し、1,874億円の収入となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社の大日本住友製薬株式会社によるシナプサス セラピューティクス インコーポレーテッド(以下、「シナプサス社」、現:サノビオン CNS ディベロップメント カナダ ULC(以下、「サノビオンCNSカナダ社」))およびトレロ ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド(以下、「トレロ社」)の買収があったこと等により、前連結会計年度に比べ1,461億円支出が増加し、1,997億円の支出となった。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度の2,075億円の収入に対して、当連結会計年度は123億円の支出となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、81億円の支出となった。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ223億円減少し、1,933億円となった。
当社グループ(当社および連結子会社)の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産製品の規模は小さいため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。
このため生産の状況については、「1 業績等の概要」におけるセグメント別の業績の概況に関連付けて示している。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
石油化学 |
572,017 |
△12.9 |
|
エネルギー・機能材料 |
205,934 |
△1.5 |
|
情報電子化学 |
358,426 |
△6.8 |
|
健康・農業関連事業 |
319,271 |
△11.1 |
|
医薬品 |
444,189 |
2.0 |
|
その他 |
54,446 |
△3.9 |
|
合計 |
1,954,283 |
△7.0 |
(注) 1 上記販売実績は、外部顧客に対する売上高を示している。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略している。
3 当連結会計年度より、セグメントの変更を行っており、「前連結会計年度比(%)」は、前連結会計年度の販売実績を変更後のセグメント区分に組替えて算出している。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
幅広い技術基盤を活かして革新的なソリューションを創りだす力、グローバル市場へのアクセス、そしてロイヤリティの高い従業員は、一世紀にわたる事業活動を通じて築き上げてきた、当社のコア・コンピタンスである。
今後も、これらの強みを最大限に発揮し、社会が直面している環境、食糧、資源・エネルギーに係る課題の解決に挑戦していくとともに、健康増進、心地よい暮らしの実現、人々のQuality of Lifeの向上に貢献していく。
当社は、革新的な技術による価値創造を通じ、持続的な成長を実現し、中長期的にROE(株主資本利益率)10%以上、配当性向30%程度などを安定して達成することを目指している。

(2) 世界経済の動向
今後の世界経済の動向については、好調な米国経済に支えられ、回復傾向が持続することと思われるが、EU主要国での選挙や米国の保護主義的な政策にともなうグローバル経済への影響など、不確実性も存在し、楽観はできないものと思われる。一方、国内経済についても、雇用・所得環境の改善の継続や輸出の持ち直しなどにより、力強さに欠けるところはあるものの回復していくことと思われる。
(3) 当社を取り巻く環境
当社グループを取り巻く事業環境についても、原材料価格の変動や製品市況の動向など、先行き不透明な要因があり、引き続き、市場環境を注視するとともに、環境変化に前広に対応していくことが重要であると考えている。
(4) 平成28年度~平成30年度中期経営計画
このような状況の下で、当社グループは、平成28年度を初年度とする「中期経営計画」に取り組んでいる。本計画では、「Change and Innovation~Create New Value~」をスローガンに掲げ、前中期経営計画で実現した強固な財務基盤をベースに、攻めの経営に取り組むことによって、持続的な成長を続けるレジリエント(回復力に富む)な住友化学グループへの変革をより一層加速していく。この中期経営計画は、以下を基本方針としている。
① 事業ポートフォリオの高度化
「環境・エネルギー」「ICT」「ライフサイエンス」を中心とした、「技術」で勝負できる事業分野に経営資源を投入し、社会が抱える諸課題に対し、「技術」を基盤とした新しい価値を提供する。
② キャッシュ・フロー創出力の強化
筋肉質な財務基盤の維持、キャッシュ・フローを安定して生み続ける体質を定着させ、大型投資を機動的に実施できる体制を構築する。
③ 次世代事業の早期戦列化
重点3分野である「環境・エネルギー」「ICT」「ライフサイエンス」への投資を継続し、研究テーマの着実な事業化を図るほか、重点3分野の「境界領域」でのソリューション提供に取り組む。
上記3点とともに、④グローバル経営の深化 ⑤コンプライアンスの徹底、安全・安定操業の確立と継続に取り組んでいく。

平成30年度経営目標
計画の最終年度である平成30年度には、為替レート120円/米ドル、ナフサ価格45,000円/klを前提に、売上高2兆5,400億円、営業利益2,000億円、経常利益2,100億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,100億円の達成を目指しており、同年度のROEは12%、ROIは7%、D/Eレシオは0.7倍程度となる計画である。中期経営計画の初年度となる当連結会計年度は円高等の影響により厳しいスタートとなったが、平成29年度の業績は大幅な改善を予想している。

新たな価値創造に向けて
当社は、「環境・エネルギー」「ICT」「ライフサイエンス」を中心に、技術で勝負できる分野を見極め、積極的かつ集中的に投資を行うことで、新たな価値を創造し、事業ポートフォリオを高度化することを目指している。
このため、中期経営計画の3年間で4,000億円の設備投資・投融資を決定することに加え、スペシャリティケミカル分野の早期拡充に向け、最大3,000億円の戦略的M&Aも実施したいと考えている。最大7,000億円の設備投資・投融資のうち約7~8割はライフサイエンスを中心としたスペシャリティケミカル分野に投資する計画である。
当連結会計年度の進捗実績
中期経営計画の初年度となる当連結会計年度は、スピード感を持って事業に取り組み、この計画期間中に実施すべき施策を前倒しで実施した。
各部門の主な取り組み実績は以下の通りである。
(石油化学部門)
ラービグ第2期計画の建設を進めるとともに、事業再構築や製品の高付加価値化に向けた取り組みが進展した。
(エネルギー・機能材料部門)
電気自動車用途で需要拡大が続くリチウムイオン二次電池用セパレータ等の生産能力を拡大したほか、省燃費タイヤ用合成ゴムS-SBRの合弁会社を設立するなど事業再構築に向けた取り組みが進捗した。
(情報電子化学部門)
有機ELディスプレイ向けタッチセンサーの生産能力を増強した。
(健康・農業関連事業部門)
メチオニンの生産能力増強を決定するとともに、インドの農薬会社エクセルクロップケア社を買収しグローバルフットプリントを拡大した。
(医薬品部門)
カナダのシナプサス社および米国のトレロ社の買収、ノバルティス社とのライセンス契約の締結により、医薬品の開発パイプラインを大幅に拡充した。

新たな価値創造に向けた取り組みを加速
現在、当社では、中期経営計画の3年間で約6,000億円の設備投資・投融資を決定する予定であり、当連結会計年度に過半の約3,200億円の設備投資・投融資を決定した。決定した投資プロジェクトを迅速かつ着実に実施し、早期に当社の収益に貢献する事業に育てることで新たな価値創造を加速していく。

当社グループの経営成績、株価および財政状況等に影響を及ぼす主要なリスクには以下のようなものがある。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
当社グループは、総合化学メーカーとして様々な事業を行っており、事業に関わるリスクは多種多様である。事業に係る市場リスクや供給リスクについては、主に以下のようなものがある。
・当社グループの事業は価格競争に晒されている。海外企業の国内市場参入、関税引き下げなどによる輸入品の流入、ジェネリック品の台頭など、様々な理由により当社グループの製品群は今後も厳しい価格競争に晒されるものと予想される。当社グループはコストの低減に努めているが、価格競争を克服できない場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
・当社グループの海外売上高は売上高の6割以上を占め、石油化学部門などの製品は特にアジア市場での販売が多い。また、情報電子化学部門は、中国や韓国、台湾の特定顧客向けの販売が大きな比重を占め、アジア市場での経済情勢の悪化、あるいは顧客企業の業績状況の変化などによる値下げ要求が発生した場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
・石油化学部門の主要原料であるナフサは、中東地域の治安や世界の経済情勢に多大な影響を受け、時に急激な価格変動を起こすことがある。ナフサの価格が急激に上昇した場合、製品価格への転嫁が遅れることなどにより、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。
・ナフサやその他の原料品の一部については、特定の地域や購入先に依存している。購入先を複数にするなど、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めているが、時に主要原料の不足が生じないという保証はない。必要な主要原料が確保できない場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。
・情報電子化学部門の製品は、技術革新のスピードが速く、タイムリーに新製品を開発・提供していく必要がある。当社グループが顧客ニーズを満足させる新規製品を有効に開発できない場合、また他社において画期的な技術革新がなされた場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
・健康・農業関連事業部門の農薬や家庭用殺虫剤の出荷は、世界各地域における異常気象等の理由による作物の育成状況や病害虫の発生状況に左右される。また、飼料添加物は急激な価格変動を起こすことがある。作物の育成状況が悪くなった場合、病害虫の発生が少なくなった場合、あるいは急激な価格変動が起こった場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
・医薬品部門では、国内において、急速に進展する少子高齢化等により医療保険財政が悪化する中、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進などの医療費抑制策が図られ、さらなる医療制度改革の議論が続けられている。医療制度改革はその方向性によっては当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。また、海外においても医薬品は各種の規制を受けており、米国の医療保険制度改革等の行政施策の動向によっては、重要な影響を受ける可能性がある。
当社グループは、国内で製造した製品を海外に輸出するとともに海外から原料品を輸入しているが、製品輸出高は原料品輸入高を上回っている。外国通貨に対して円高が進行した場合、海外で生産された製品に対する価格競争力が低下することに加え、輸出手取額の減少が輸入支払額の減少を上回ることになる。このようなリスクに対しては、為替予約や円建輸出取引を行うことによりリスクを最小限にするように努めているが、中長期的な為替レートの変動によるリスク等を完全にヘッジすることは出来ないため、円高の進行は当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、海外の連結子会社や持分法適用会社の経営成績は、連結財務諸表作成のために円換算されている。換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
当社グループは、資金需要に対してその内容や財政状況および金融環境を考慮し、調達の金額・期間・方法等を判断している。今後の金利の変動に備え、固定金利・変動金利を適宜組み合わせて調達を行っているが、金利が上昇した場合には支払利息が増加し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
当社グループが保有する有価証券の多くは、時価のある有価証券であるため、株式相場が大幅に下落した場合、減損が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用している。将来、当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、減損損失が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っているが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
当社グループの従業員退職給付費用および債務は、年金資産の運用収益率や割引率などの数理計算上の前提に基づいて算出されている。年金資産運用環境の悪化により前提と実績に乖離が生じた場合などは、将来の退職給付費用が増加し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
(海外事業展開)
当社グループは、中東やアジアなど海外での事業活動を今後一層拡大していくこととしている。海外における事業活動には法律や規制の変更、労務環境の違いによる争議等の発生、人材の採用と確保の難しさ、テロ・戦争・その他の要因による社会的混乱などのリスクが内在しており、これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
当社とサウジアラビアン オイル カンパニー(サウジ・アラムコ社)が共同で設立した「ペトロ・ラービグ社」は、サウジアラビアのラービグにおいて、石油精製・石油化学の統合コンプレックス事業(「ラービグ第1期計画」)を運営している。当社は、プロジェクト総投資額に対し、不測の事態による損害に備え、独立行政法人日本貿易保険の規約・限度額に従い、海外投資保険等に加入している。
「ペトロ・ラービグ社」は、既存の「ラービグ第1期計画」の拡張計画(「ラービグ第2期計画」)に関し、銀行団との間で、融資契約上のプロジェクト・コスト約81億米ドルの6割強にあたる約52億米ドルのプロジェクト・ファイナンス契約を締結し銀行借入を行っており、当社はその50%について完工保証を差入れている。また、「ペトロ・ラービグ社」の行っているその他の一部の借入に対して、当社は債務保証を行っている。当該保証の履行により、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。当社は、「ラービグ第1期計画」と同様に「ラービグ第2期計画」についても、独立行政法人日本貿易保険の規約・限度額に従い、海外投資保険等に加入している。
(企業買収・資本提携)
当社グループは、事業拡大や競争力強化等を目的として、国内外において企業買収・資本提携等を実施しているが、当社グループおよび出資先企業を取り巻く事業環境の変化等により、当初期待していたシナジー効果を得られない可能性がある。また、出資先企業の経営成績、財政状態の悪化による企業価値の低下等により、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
(研究開発)
当社グループは、需要家のニーズに合わせた新技術・新製品をスピーディーに上市するため、積極的に研究開発を行っている。当社グループの研究開発は、次世代事業の創生のための探索研究を含んでいるため研究開発期間が長期間にわたる場合があり、また、研究開発テーマが実用化されず、新製品の開発が著しく遅延または断念される場合には、競争力が低下し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
(知的財産権)
当社グループは、他社と差別化できる技術とノウハウを蓄積し事業の競争力を強化してきたが、当社グループ独自の技術・製品とノウハウの一部は、厳正な管理を行っているものの、予期せぬ事態により外部に流出する可能性があり、また、特定の地域ではこれらの知的財産の完全な保護が不可能なため、第三者が当社グループの知的財産を使用して類似製品を製造することを効果的に防止できない可能性がある。また将来、知的財産に係る紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされる可能性がある。
(製品の品質)
当社グループは、世界的に認められている厳格な品質管理基準に従って、各種製品を製造しているが、すべての製品について欠陥が無く、将来にわたってリコールが発生しないという保証はない。大規模な製品事故は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、農薬や医薬品等は各国の厳しい審査を受けて承認されているが、科学技術の進歩や市販成績が蓄積された結果から、新たに品質問題や副作用が見つかることもある。このように上市後予期せぬ品質問題や副作用が発見された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
(事故・災害)
当社グループは、製造設備の停止や製造設備に起因する事故などによる潜在的なマイナス要因を最小化するため、すべての製造設備において定期的な点検を実施している。しかしながら、製造設備で発生する事故、自然災害等による影響を完全に防止・軽減できる保証はない。また、当社グループの事業活動におけるシステム・ネットワークへの依存度は年々拡大しており、セキュリティの高度化などによりシステムやデータの保護に努めているが、停電、自然災害やコンピューターウィルス、ハッカー等のシステム犯罪などにより、システム・ネットワーク障害が生じる可能性がある。
事故等により、工場周辺に物的・人的被害を及ぼした場合、あるいは、システム・ネットワーク障害が発生した場合、事業活動に支障をきたすほか多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
(規制変更)
当社グループは、事業展開する各国の規制に従い、業務を遂行している。将来における法律、規則、政策、実務慣行、解釈およびその他の政策変更ならびにそれらによって発生する事態が、当社グループの業務遂行や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性がある。また、将来的に環境および化学品安全等に対する法的規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性がある。
(訴訟)
当社グループは、国内および海外事業に関連して、訴訟、係争、その他の法律的手続きの対象となるリスクがあり、将来重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状況に重要な悪影響を及ぼす可能性がある。
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契約会社名 |
契約相手先 |
国名 |
内容 |
対価 |
有効期間 |
|
大日本住友製薬 株式会社 |
アルミラル社 |
スペイン |
エバスチン に関する技術 |
ランニング・ ロイヤリティ |
昭和63年1月~平成24年12月 以後5年間ずつ自動更新 |
|
大日本住友製薬 株式会社 |
ブリストル・ |
日本 |
イルベサルタン に関する技術 |
一時金 ランニング・ ロイヤリティ |
平成18年7月~ |
|
大日本住友製薬 株式会社 |
ニューロクライン社 |
アメリカ |
インディプロン に関する技術 |
一時金 ランニング・ ロイヤリティ |
平成19年10月~ |
|
大日本住友製薬 株式会社 |
インターセプト |
アメリカ |
ファルネソイドX |
一時金 ランニング・ ロイヤリティ |
平成23年3月~ 国毎に、最初または第2適応症の上市から10年間、または独占期間のどちらか長い方 |
|
大日本住友製薬 株式会社 |
バイオエレクトロン テクノロジー社 |
アメリカ |
EPI-743および |
一時金 ランニング・ ロイヤリティ |
平成25年3月~ 発売から10年間または 協議により延長可能 |
|
大日本住友製薬株式会社 |
サンバイオ社 |
アメリカ |
SB623に関する技術 |
一時金 ランニング・ ロイヤリティ |
平成26年9月~ |
|
サノビオン社 |
ビアル・ポルテラ・アンド・シーエー社 |
ポルトガル |
エスリカルバゼピンに関する技術 |
一時金 |
平成19年12月~ |
|
サノビオン社 |
アストラゼネカ社 |
イギリス |
シクレソニド |
一時金 ランニング・ ロイヤリティ |
平成20年1月~ |
|
サノビオンCNSカナダ社 |
モノソル社 |
アメリカ |
APL-130277 |
一時金 |
平成28年4月~平成36年12月 |
|
トレロ社 |
サノフィ社 |
フランス |
アルボシジブ |
一時金 |
平成25年4月~ |
(注)1 当連結会計年度において、商号が変更されている。
2 当連結会計年度において、契約相手先をタケダ社からアストラゼネカ社に変更している。
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契約会社名 |
契約相手先 |
国名 |
内容 |
契約期間 |
|
サノビオン社 |
ノバルティス社 |
スイス |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療剤3製品に関する米国における独占的な販売 |
平成28年12月~ |
当社の連結子会社である大日本住友製薬株式会社の連結子会社であるサノビオン社は、平成28年8月31日(米国東部時間)付で、同社の重点領域の1つである精神神経領域の開発パイプラインを一層強化することを目的として、パーキンソン病治療剤を開発するカナダのシナプサス社を、カナダ法上のプラン・オブ・アレンジメントによる手法を通じて、買収することについて合意し、平成28年10月21日(米国東部時間)付で、シナプサス社の株式およびワラントのすべてを取得し、同社の買収が完了した。
なお、シナプサス社は、買収日における同社を含むAmalgamation(カナダ連邦のブリティッシュ・コロンビア州
法上の組織再編)により組織統合され、サノビオンCNSカナダ社(現:連結子会社)が新たに設立されている。
株式取得の概要は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載している。
当社の連結子会社である大日本住友製薬株式会社は、平成28年12月21日(日本時間)に開催された取締役会において、がん領域のパイプラインを一層強化すること等を目的として、がんおよび血液疾患領域における医薬品の研究開発に特化した米国のバイオベンチャー企業であるトレロ社を、大日本住友製薬株式会社全額出資の米国持株会社であるダイニッポン スミトモ ファーマ アメリカ ホールディングス インコーポレーテッド(以下、「DSPA-H社」)を通じて、買収することについて決議し、平成29年1月25日(米国太平洋時間)にDSPA-H社を通じたトレロ社の買収が完了した。
株式取得の概要は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載している。
当社グループ(当社および連結子会社)は、事業拡大と収益向上に寄与すべく、独自の優位性ある技術の確立を基本方針とし、各社が独自に研究開発活動を行っているほか、当社グループ全体としての効率性を念頭に置きながら、互いの研究開発部門が密接に連携して共同研究や研究開発業務の受委託等を積極的に推進している。
当連結会計年度においては、平成28年度から平成30年度までの中期経営計画に従い、引き続き環境・エネルギー、ICT(情報・通信技術)、ライフサイエンスの3分野に研究資源を重点投入するとともに、異分野技術融合による新規事業の芽の発掘とその育成に取り組んできた。
これに基づき、当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度に比べ18億円増加し、1,576億円となった。
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりである。
石油化学分野では、事業のグローバル競争力強化のために、プロピレンオキサイド、カプロラクタム、メタアクリルモノマーを中心とする既存バルク製品の触媒・プロセス改良、合成樹脂の製造プロセスの改良、既存素材の高性能化や新規高付加価値製品の開発に積極的に取り組んでいる。当連結会計年度において、プロピレンオキサイドでは、ここ数年注力しているライセンス活動に対応して、プロセスの最適化検討を並行して行い、よりコスト競争力の高い製造技術を目指した改良研究を実施している。ポリエチレン、ポリプロピレンでは温室効果ガスの削減の取り組みに呼応し、自動車の軽量化や低環境負荷包装などに求められる高性能材料およびその製造プロセスの開発に進展が見られた。メタアクリルモノマーに関しては、性能が大幅に向上した触媒の製造を平成27年度から開始し、当期から使用を開始した。新製品開発では、ハロゲン原子を含まない、柔軟性を合わせ持った難燃樹脂や、樹脂本来の特性である耐水性、耐薬品性などの機能を維持しつつ、手づくりのような自然な風合いを持たせた意匠性樹脂フィルムを上市した。また、蓄熱性能を有する樹脂材料の実用化に向けた技術開発が進展した。
なお、石油化学部門の研究開発費は60億円であった。
エネルギー・機能材料分野では、リチウムイオン二次電池用部材、スーパーエンジニアリングプラスチックス、低燃費タイヤ用の高性能ゴムなどの環境・エネルギー関連事業拡大のため、無機材料、合成ゴム材料、機能性樹脂材料などの幅広い分野で、新規製品創出や既存製品の競争力強化に向けた研究開発に取り組んでいる。当連結会計年度において、無機材料関連では、リチウムイオン電池用のアルミナについて品質改良品を開発し、併せてその生産性向上についても検討を進めた。アルミニウム関連では、高純度アルミニウムを使用した耐食性合金の用途開発が進捗した。合成ゴム関連では、様々な要求性能を満たす新規グレードの開発に目途を得、顧客評価が進んでおり、機能性ゴム薬品についてもタイヤ用途向け接着樹脂の試製造を実施し、顧客評価を受けている。機能樹脂関連では、従来の電気・電子分野に加えて自動車基材分野においても開発が進展し、顧客採用が順調に進んでいる。電池部材関連では、平成28年10月31日における株式会社田中化学研究所の子会社化に伴い、エネルギー・機能材料研究所に二次電池用正極材の開発グループを新設し、当該製品の開発力強化・事業化推進を図っており、耐熱セパレータでは製造設備増強に伴う生産性向上・コスト削減技術開発を加速している。
なお、エネルギー・機能材料部門の研究開発費は91億円であった。
情報電子化学分野では、日本国内に留まらず情報電子化学部門内のグローバルな技術・研究開発能力を結集し、IT関連の先端技術に対応する新規材料・部材・デバイスに関する新製品の開発に、引き続き積極的に取り組んでいる。当連結会計年度は、機能性光学フィルム分野において、当社が培ってきた差別化技術に基づく最先端製品の開発・工業化をさらに推進した。具体的には、大型化の進む液晶TV向け光学フィルム分野において顧客製品の信頼性向上に寄与する低透湿の製品を投入した。また、独自の材料技術を駆使した新しいタイプの偏光板を開発し、OLED用光学フィルムに参入するとともに、フレキシブルディスプレイ用部材開発を手掛け、実用可能な技術水準を達成することができた。これらの開発を通じて確立した要素技術にさらに磨きをかけ、成長が続くモバイル機器・車載機器向けの光学フィルム分野への展開を進めている。
電子材料分野においては、高性能液晶パネル向け高輝度・高色再現性カラーレジストや半導体前工程向け液浸ArFレジスト、半導体後工程向け厚膜i線レジスト等、独自性の高い分子設計技術・有機合成技術を活かした製品を市場投入し、国内外の大手需要家から高い評価を得ている。また、化合物半導体分野では、今後成長が見込まれるパワーデバイス分野においてさらなる開発の効率化と競争優位を獲得すべく、国内プロジェクトへの参画等を通じて、GaNエピ基板の量産技術開発を進めるとともに、国内子会社であるサイオクス社との連携により最先端分野での技術開発を推し進めている。
表示デバイス分野においては、タッチセンサーパネルに関する設計・開発・製造を韓国の子会社東友ファインケム社にて精力的に実施している。顧客企業の旺盛な需要に応えるべく生産能力拡大の新規投資を実施する一方、フレキシブルディスプレイ用途への展開が期待されるフィルムベースタッチセンサーの量産技術を確立するとともに革新的生産技術の開発を進めている。また、フレキシブルディスプレイに用いられる様々な新規部材の開発をグループ横断的に推し進めており、ウィンドウフィルム、塗布型偏光板等の開発には目途をつけつつあり、今後は量産化技術を確立し市場投入を進めていく。
なお、情報電子化学部門の研究開発費は160億円であった。
健康・農業関連事業分野では、新製品、新技術の開発や製造プロセスの改善・向上に積極的に取り組み、コア事業の強化と周辺事業への展開および川下化を推進し、健康・農業関連事業を取り巻く環境の変化に柔軟に対応している。当連結会計年度において、農業関連事業については、国内では新規農薬・肥料製品の上市により製品ラインナップの拡充を図るとともに、平成26年度から開始したコメ事業の本格展開に向けた研究活動を推進している。また、グループ会社において、種子、種苗、培土、灌水資材、農業フィルムや非農耕地分野である家庭用園芸、ゴルフ場、森林防除等向けの農薬・肥料製品の拡充を図っている。海外では新規有効成分の殺菌剤を米国においてシバ向けに、韓国では果樹向けに上市した。また、海外での新規製品開発を加速させるために研究開発拠点の拡充を積極的に進めており、米国では中西部農業研究センターの新設、およびバイオラショナル製品(天然物由来などの微生物農薬、植物生長調整剤、微生物農業資材など)の開発促進を目的としたバイオラショナルリサーチセンターの建設に着手し、ブラジルではラテン・アメリカ・リサーチ・センターを開所した。その他の取り組みとしては、バナナやオイルパームなどのプランテーション向け農業関連資材の拡充と世界的な普及を本格化し、シンガポールではシンガポール農食品獣医庁と共同で進めている都市型農業の研究プロジェクトを第2段階に移行した。他社との協業においては、米国の種子・バイオ大手であるモンサント社との間で、雑草防除に関して新たなグローバル協力関係を構築することに合意し、当社は新規剤を含むPPO阻害型除草剤の開発を担うこととなった。また、現在資本提携している豪州農薬会社ニューファーム社とは混合剤新製品の商業化に向けた開発に取り組んでいる。さらに、米国子会社のベーラント・バイオサイエンス社では、バイオラショナル製品拡充のため、米国リドケム社と新規生物防除技術のライセンス契約を締結するとともに、アルゼンチンのリゾバクター社と根圏におけるバイオラショナル分野での長期的な協力関係を構築した。生活環境事業については、家庭用殺虫剤・業務用殺虫剤・動物用殺虫剤・ヒューマンヘルスケア・エアプロテクション・熱帯感染症剤の各重点分野における新製品開発を推進している。エアプロテクション分野では、静電噴霧技術を用いた業務用芳香消臭剤の新製品の開発を加速している。熱帯感染症分野では、アフリカ諸国で上市したピレスロイド抵抗性媒介蚊に有効なマラリア対策用防虫蚊帳の普及を推進するとともに、熱帯感染症に対する総合防除に係る製品強化のため、新しいコンセプトのピレスロイド抵抗性対策蚊帳、さらに室内残留散布剤や幼虫防除剤などの蚊帳以外の防除手段の開発も引き続き推進している。アニマルニュートリション事業については、平成30年半ばに予定しているメチオニン生産能力の増強に向けて、製造プロセスの更なる合理化研究を推進している。また、マレーシアのアニマルニュートリションテクノロジーセンターでは、飼料分析サービスの対応地域を拡充すべく、関連研究拠点(ブラジル、中国)への技術移転に着手した。医薬化学品事業については、ジェネリック原薬の製法開発に引き続き注力するとともに、原薬・中間体の受託製造案件の拡充にも積極的に取り組んでいる。新規分野である核酸医薬原薬の製造においては、スケールアップ検討および品質管理体制の整備を進め、GMP(Good Manufacturing Practice)対応の生産に成功した。
なお、健康・農業関連事業部門の研究開発費は278億円であった。
医薬品分野では、自社研究、技術導入、ベンチャーやアカデミアとの共同研究等あらゆる方法で、最先端の技術を 取り入れて、研究開発活動に取り組んでおり、精神神経領域とがん領域を重点領域とし、革新的な医薬品の創製を目指している。さらに、治療薬のない疾患分野や再生医療・細胞医薬といった新規分野において、世界に先駆けて事業展開を図っていく。当連結会計年度においては、大日本住友製薬株式会社、日本メジフィジックス株式会社保有の先端技術を活かした創薬研究等を進めるとともに、国内外の大学を含む研究機関等とのアライアンスも積極的に進めている。
研究初期段階では、スーパーコンピューターを活用したインシリコ創薬技術、iPS細胞等の最先端サイエンスを創薬や再生医療・細胞医薬に応用する取り組みを進めている。また、当期においては、独創的な抗がん剤の創出を目指して大日本住友製薬株式会社と京都大学との協働研究(DSKプロジェクト)の第2期を開始した。さらに、国内の研究機関および研究者を対象に、当社グループの創薬研究ニーズと合致するアイデアを募集する公募型オープンイノベーション活動「PRISM」を平成27年度から実施しており、当期においては、複数のアイデアについて共同研究契約を締結した。
研究後期および開発段階では、研究重点領域および新規分野を中心に、グローバルな視点からグループ全体でのポートフォリオの最適化を行っている。加えて、製品価値の最大化を目指した剤形展開等の製品ライフサイクルマネジメントやドラッグ・リポジショニングにも積極的に取り組んでいる。
精神神経領域では、次の進展があった。①ブロナンセリンについて、中国において、統合失調症を適応とした承認を平成29年2月に取得した。②dasotraline(開発コード:SEP-225289)について、米国において、小児の注意欠如・多動症(ADHD)を対象としたフェーズ2/3試験の主要評価項目を達成し、並行して実施していたフェーズ3試験も完了した。また、過食性障害(BED)を対象としたフェーズ2/3試験の主要評価項目を達成し、新たに別のフェーズ3試験を開始した。③SEP-363856について、米国において、統合失調症のフェーズ2試験およびパーキンソン病に伴う精神病症状のフェーズ2試験を開始した。
がん領域では、次の進展があった。①ナパブカシンについて、米国等において、胃または食道胃接合部腺がんおよび結腸直腸がんを対象とした併用での国際共同フェーズ3試験を進め、これに加えて、米国において、膵がんを対象とした併用での国際共同フェーズ3試験を開始した。また、カナダにおいて膠芽腫を対象としたフェーズ1/2試験のフェーズ2段階を開始した。②DSP-7888について、日本において、小児悪性神経膠腫のフェーズ1/2試験のフェーズ2段階を開始した。
再生医療・細胞医薬の領域では、大日本住友製薬株式会社が京都大学iPS細胞研究所と共同して実用化に向けて取り組んでいる「非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」について、平成29年2月、厚生労働省より再生医療等製品の先駆け審査指定制度の指定品目に選定された。
その他の領域では、グリコピロニウム臭化物(開発コード:SUN-101)について、米国において、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の長期維持療法を対象とした承認申請を平成28年7月に行った。
当社グループは、開発パイプラインの拡充を目指して買収および開発品の導入にも積極的に取り組んでいる。当期においては、大日本住友製薬株式会社が買収したシナプサス社のアポモルヒネ塩酸塩水和物(開発コード:APL-130277)およびトレロ社のalvocidibの開発をそれぞれ次のとおり実施している。① アポモルヒネ塩酸塩水和物について、米国において、パーキンソン病に伴うオフ症状を対象としたフェーズ3試験を実施している。② alvocidibについて、米国において、急性骨髄性白血病(AML)を対象とした併用でのフェーズ2試験を実施している。
上記以外にも、日本におけるルラシドン塩酸塩や米国、カナダおよび日本におけるamcasertib(開発コード:BBI503)の開発等を進めている。
放射性医薬品では、平成15年度にライセンス導入した新規がん診断用PET製剤の開発を継続中であり、平成25年度にライセンス導入したアルツハイマー診断剤については、医薬品としての製造販売承認申請を行った。また、RI治療事業の増強のため、小線源治療用医療機器の品目拡充を図り、平成27年度に承認を取得した新製品2品目の販売を開始した。
なお、医薬品部門の研究開発費は831億円であった。
全社共通およびその他の研究分野では、上記5事業分野の事業領域を外縁部へ積極拡大するための研究およびマテリアルズ・インフォマティクス等の計算機科学をはじめとする共通基盤技術開発とともに、既存事業の枠に属さない新規事業分野への展開を図るべく、環境・エネルギー、ICT、ライフサイエンスの各分野で研究開発に取り組んでいる。当連結会計年度においては、次の進展があった。ICT分野では、ディスプレイ用途において、引き続き高分子有機EL材料の性能向上、および想定パネル生産プロセスにおける性能発現について開発を継続した。環境・エネルギー分野では、高分子有機EL照明において、フレキシブル基板ベースの一般照明パネルの開発、生産プロセスの検討を継続して実施した。また、膜分離法によるCO2分離技術では、国内化学メーカーへの商業設備導入が決定し、設置工事および試運転に向けての作業を進めている。ライフサイエンス分野では、培養細胞を用いた、生体を使わない化学品安全性評価システムの構築に取り組んでいる。さらに上記3分野のうち、複数の分野の技術を融合させた研究開発も進めている。例えば、ICT分野とライフサイエンス分野にまたがる領域の研究開発として、バイオセンサーの開発を進めている。3分野にまたがった研究開発としては、プリンテッド・エレクトロニクス技術の開発に引き続き注力中である。
また、次世代事業の早期戦列化に向け、より効率的な運営を図るため、平成28年4月1日の組織改正により、筑波開発研究所と先端材料探索研究所を統合して先端材料開発研究所とした。
なお、全社共通部門の研究開発費は155億円であった。
このように、事業拡大および競争力強化を図るべく、新製品・新技術の研究開発および既存製品の高機能化・既存技術の一層の向上に取り組み、各事業分野において着実に成果を挙げつつある。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものである。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成している。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。特に次の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えている。
当社グループは、貸倒れが懸念される特定の債権については、個別に回収可能性を勘案し回収不能見込額に基づき貸倒引当金を計上している。また、その他の一般債権についても、貸倒実績率を勘案して貸倒引当金を計上している。なお、将来、相手先の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性がある。また、貸倒損失の発生により貸倒実績率が上昇し、一般債権に係る貸倒引当金の追加計上が発生する可能性がある。
当社グループは、たな卸資産について収益性の低下により投資額の回収可能性が認められなくなった場合には、回収可能な額まで帳簿価額を切り下げている。将来、当社グループの販売するたな卸資産の市場価格が低下した場合には、売上原価が増加する可能性がある。
当社グループは、事業資産については管理会計上の区分に基づき(一部の無形固定資産については、個々の資産を1つの単位として資産のグルーピングを行っている)、遊休資産等については個々の資産を1つの単位として資産のグルーピングを行っている。将来、当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等があった場合には、減損損失が発生する可能性がある。
当社グループは、保有する市場性のある有価証券を合理的な基準に基づいて減損処理を行っている。時価が50%程度以上下落している場合は減損処理をしており、30%~50%下落している場合は、個別銘柄ごとに最近の時価水準と帳簿価額との乖離状況や発行体の業績、財政状態等を考慮した総合的な判断に拠って減損処理している。将来、株式相場が悪化した場合には、有価証券評価損を計上する可能性がある。
当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っているが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、費用が増加する可能性がある。
従業員退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出している。これらの前提条件には、割引率、将来の昇給率、退職率、死亡率および年金資産の収益率などが含まれる。退職給付債務等の計算の基礎に関する事項のうち、割引率は優良社債の利回りをもとに設定している。また、実際の結果が前提条件と異なる場合または前提条件が変更された場合、その影響は数理計算上の差異として累積され、主として3年間で規則的に費用処理されている。
当社グループの当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ1,475億円減少し1兆9,543億円となり、営業利益は前連結会計年度比301億円減益の1,343億円となった。営業外損益は前連結会計年度比255億円改善し323億円の利益となり、経常利益は前連結会計年度比46億円減益の1,666億円となった。特別損益は前連結会計年度比78億円悪化し214億円の損失となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比40億円増益の855億円となった。
売上高は、情報電子化学や医薬品での出荷の増加はあったものの、円高による在外子会社の邦貨換算差の影響や販売価格の下落により、前連結会計年度に比べ1,475億円減収の1兆9,543億円となった。
石油化学の売上高は、原料価格の下落により製品市況が下落したことや、千葉工場における事業構造改善の実施および在外子会社の邦貨換算差の影響により、前連結会計年度に比べて851億円減少し5,720億円となった。
健康・農業関連事業の売上高は、メチオニンの市況の下落および在外子会社の邦貨換算差の影響により、前連結会計年度に比べて397億円減少し3,193億円となった。
情報電子化学の売上高は、需要の増加による出荷の増加はあったものの、販売価格の下落および在外子会社の邦貨換算差の影響により、前連結会計年度に比べて261億円減少し3,584億円となった。
なお、海外売上高は1兆1,867億円となり、海外売上高比率は60.7%となった。
売上総利益は、交易条件の悪化等により、前連結会計年度に比べ284億円減益の6,685億円となったものの、売上総利益率は、販売製品の構成差により、前連結会計年度に比べ1.0ポイント上昇し34.2%となった。販売費及び一般管理費は、円高による邦貨換算差の影響の一方で研究開発費が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ17億円増加し5,342億円となり、売上高に対する比率は、前連結会計年度に比べ2.0ポイント上昇し27.3%となった。なお、研究開発費は前連結会計年度に比べ18億円増加し1,576億円となり、売上高に対する比率は8.1%となった。
この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ301億円減益の1,343億円に、営業利益率は前連結会計年度より1.0ポイント下落し6.9%となった。
営業外損益は、前連結会計年度の68億円の利益から255億円改善し、323億円の利益となった。ペトロケミカル コーポレーション オブ シンガポール(プライベート)リミテッドの業績が改善したことや、ペトロ・ラービグ社において定期修繕の影響があった前連結会計年度に比べて業績が改善したこと等による持分法投資利益の増加に加えて、為替差損の減少が主な要因である。
この結果、経常利益は前連結会計年度の1,712億円に対し46億円減少し、1,666億円となった。
特別利益は、投資有価証券売却益、段階取得に係る差益、固定資産売却益で合計317億円を計上し、前連結会計年度の158億円に比べ159億円増加した。
特別損失は、減損損失および事業構造改善費用で合計531億円計上し、前連結会計年度の295億円に比べ237億円増加した。減損損失は、当社における光学製品製造設備や高純度アルミナ・高純度アルミニウム製造設備、シンガポールの子会社におけるS-SBR製造設備等について合計343億円を計上した。事業構造改善費用は、大日本住友製薬株式会社の早期退職制度の実施に伴う損失や、当社および子会社における有形固定資産除却損等で189億円を計上した。
この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の1,576億円に対し124億円減少し、1,452億円となった。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の総額は281億円となり、税金等調整前当期純利益に対する税効果会計適用後の法人税等の負担率は、19.4%となった。
この結果、当期純利益は、1,171億円となった。
非支配株主に帰属する当期純利益は、主として大日本住友製薬株式会社や日本シンガポール石油化学株式会社などの連結子会社の非支配株主に帰属する利益からなり、前連結会計年度の309億円に比べ6億円増加し、当連結会計年度は316億円となった。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の815億円に対し40億円増加し、855億円となった。
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入、資本市場における社債およびコマーシャル・ペーパーの発行等により、必要資金を調達している。当社グループの財務活動の方針は、低利かつ中長期にわたり安定的な資金調達を行うこと、および十分な流動性を確保することである。
当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,933億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は135.8%である。また、短期的な資金需要に対応するため、コマーシャル・ペーパーの発行枠を1,800億円と大手邦銀のシンジケート団による800億円のコミットメント・ラインおよび、大手外銀のシンジケート団による210億円のマルチカレンシー(円・米ドル・ユーロ建)によるコミットメント・ラインを有している。
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ1,999億円増加し2兆8,621億円となった。子会社の大日本住友製薬株式会社によるトレロ社およびシナプサス社(現:サノビオンCNSカナダ社)の買収により、無形固定資産が増加したことが主な要因である。
負債は、前連結会計年度末に比べ1,282億円増加し1兆6,995億円となった。有利子負債(短期借入金、1年内償還予定の社債、コマーシャル・ペーパー、社債および長期借入金の合計でリース債務を除く)が437億円増加し、8,753億円となったことや、支払手形及び買掛金が384億円増加し、2,435億円となったことが主な要因である。
純資産(非支配株主持分を含む)は、利益剰余金が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ718億円増加し1兆1,625億円となった。自己資本比率は、前連結会計年度末に比べて0.1ポイント減少し、28.7%となった。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、営業利益の減少や法人税等の支払の増加等により、前連結会計年度に比べ737億円減少し、1,874億円の収入となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社の大日本住友製薬株式会社によるシナプサス社(現:サノビオンCNSカナダ社)およびトレロ社の買収があったこと等により、前連結会計年度に比べ1,461億円支出が増加し、1,997億円の支出となった。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度の2,075億円の収入に対して、当連結会計年度は123億円の支出となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、81億円の支出となった。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ223億円減少し、1,933億円となった。