第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現時点で入手している情報や合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。

(1) 住友化学の目指す姿

当社は、別子銅山の煙害という環境問題の克服と、農産物の増産をともに図ることから誕生した起源を持ち、創業以来一世紀以上にわたり、絶えざる技術革新と事業の変革を遂げながら、事業を通じて人々の豊かな生活を支えてまいりました。またその中で、幅広い技術基盤を活かして革新的なソリューションを創りだす力、グローバル市場へのアクセス、ロイヤリティの高い従業員という当社のコア・コンピタンスを築き上げてまいりました。
 今後も、これらの強みを最大限に発揮して事業を行うことで、環境、食糧、資源・エネルギー問題などの社会が直面している課題の解決に挑戦するとともに、健康増進、心地良い暮らしの実現などの人々のQuality of Lifeの向上に貢献してまいります。
 そして、ROE10%以上、配当性向30%程度などの経営目標を安定して達成し、当社の持続的な成長とサステナブルな社会を実現することを目指します。

 


 

(2) 2016年度~2018年度中期経営計画 総括

2018年度を最終年度とする中期経営計画では、持続的な成長を続けるレジリエント(回復力に富む)な住友化学グループへの変革に向けて、事業ポートフォリオの高度化をはじめとする5つの基本方針に沿って取り組みました。

中期経営計画での3年間で累計6,500億円の設備投資・投融資を決定しましたが、そのうち3/4を、ライフサイエンスを中心とするスペシャリティケミカル分野へ振り向けることで、事業ポートフォリオの高度化を図りました。

最終年度である2018年度の業績は、為替レート110.92円/ドル、ナフサ価格49,500円/klなどの事業環境のなか、売上収益2兆3,186億円、コア営業利益2,043億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1,180億円となりました。

 


 

 

(3) 2019年度~2021年度中期経営計画

今後の世界経済は、年率3%程度の成長を継続すると思われますが、一方で米中貿易摩擦などさまざまなリスク要因があり、ボラティリティと不確実性が増大していくことが懸念されます。

このような状況の下で、当社グループは、先般、2019年度を初年度とする新しい「中期経営計画」を策定いたしました。本計画では、「Change & Innovation 3.0 ~For a Sustainable Future~」をスローガンに掲げ、デジタル革新により生産性を飛躍的に向上させるとともに、イノベーションを加速させ、当社グループの持続的な成長とサステナブルな社会を実現してまいります。

この中期経営計画は、以下を基本方針としております。

 

① 次世代事業の創出加速

「ヘルスケア」「環境負荷低減」「食糧」「ICT」の4つを重点分野とし、アカデミアやスタートアップ企業とも連携しながら、サステナブルな社会の実現に向けた次世代技術の開発、新規事業の創出に取り組みます。

 

② デジタル革新による生産性の向上

デジタル技術(AI・IoT)の活用により、研究開発・製造・サプライチェーン・営業・間接部門における飛躍的な生産性の向上に取り組みます。

 

③ 事業ポートフォリオの高度化

持続的な市場の成長が予想され、かつ技術を競争力の源泉として展開可能な事業に対し、集中的に経営資源を投入することで、事業ポートフォリオのさらなる高度化を進めます。

 

④ 強靭な財務体質の実現

規律ある運営によるコストと資産の統制により、強靭な財務体質を実現いたします。

 

 これら4点とともに、 ⑤持続的成長を支える人材の確保と育成・活用 ⑥コンプライアンスの徹底と安全・安定操業の継続に取り組みます。

 


 

各事業部門の戦略と取り組み

各事業部門における、前中期経営計画と本中期経営計画での主な取り組みは、以下のとおりであります。


(石油化学部門)

前中期経営計画では、ラービグ第2期計画の建設を完了し出荷を開始したほか、シンガポールなどで製品の高付加価値化が進展いたしました。

本中期経営計画においては、国内事業はグローバル展開の基盤として強化に取り組むほか、シンガポール事業はさらなる収益力強化を行います。また、ラービグ第1期計画の安定稼働の継続と、第2期計画の早期の収益貢献を図ります。

 

(エネルギー・機能材料部門)

前中期経営計画では、電気自動車用途で需要拡大が続くリチウムイオン二次電池用セパレータなどの生産能力を増強した一方、ディーゼルエンジン用すす除去フィルター(DPF)事業から撤退するなど、メリハリのある事業運営を行いました。

本中期経営計画においても、セパレータなどの電池部材やスーパーエンジニアリングプラスチックスなどの販売拡大、その他製品についても高付加価値製品へのシフトによる収益力強化に取り組みます。

 

(情報電子化学部門)

前中期経営計画では、自製部材を活用した偏光板の高付加価値化、半導体材料事業での生産体制整備などに取り組んでまいりました。

本中期経営計画においては、前中期経営計画で実施した先行投資からのリターン確保、既存事業の継続的な競争力強化、将来のコア事業・高収益製品となる製品群の育成を中心に取り組みます。

 

(健康・農業関連事業部門)

前中期経営計画では、インドの農薬会社を買収するなど海外販売拠点の強化が進展いたしました。また、創薬、イノベーション拠点として宝塚にケミストリーリサーチセンターを設立するなど研究・開発拠点の拡充も進み、次世代大型農薬の登録申請を開始いたしました。

本中期経営計画では、微生物農薬などのバイオラショナル事業の強化や新規農薬の上市に向けた開発を着実に進め、農薬事業を拡大してまいります。また生産能力を増強した飼料添加物メチオニンや、生活環境製品のグローバルな販売拡大に取り組みます。

 

(医薬品部門)

前中期経営計画では、引き続きラツーダ(非定型抗精神病薬)の販売拡大に努め、大幅な売上収益の伸長がありました。また、カナダのシナプサス社および米国のトレロ社を買収するなど、開発パイプラインの拡充にも取り組みました。

本中期経営計画では、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を研究重点領域として、自社研究に加え、技術導入、アカデミアやスタートアップ企業との共同研究など、あらゆる方法で最先端の技術を取り入れ、研究開発活動に取り組みます。

 

2021年度経営目標

本中期経営計画では、最終年度である2021年度には、為替レート110 円/ドル、ナフサ価格51,000円/klを前提に、売上収益2兆9,500億円、コア営業利益2,800億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1,500億円の達成を目指し、同年度のROEは13%、ROIは7%、D/Eレシオは0.7倍程度となる計画であります。本中期経営計画の取り組みを着実に進めることで、これらの経営目標を達成してまいります。

 


 

2 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価および財政状態等に影響を及ぼす主要なリスクには以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、全ての事業等のリスクを網羅したものではなく、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

1.市場や供給に係るリスク

当社グループは、総合化学メーカーとして様々な事業を行っており、事業に関わるリスクは多種多様であります。事業に係る市場リスクや供給リスクについては、主に以下のようなものがあります。

 

・当社グループの事業は価格競争に晒されております。海外企業の国内市場参入、関税引き下げなどによる輸入品の流入、ジェネリック品の台頭など、様々な理由により当社グループの製品群は今後も厳しい価格競争に晒されるものと予想されます。当社グループはコストの低減に努めておりますが、価格競争を克服できない場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

・当社グループの海外売上収益は売上収益の6割以上を占め、石油化学部門などの製品は特にアジア市場での販売が多い状況です。また、情報電子化学部門は、中国や韓国、台湾の特定顧客向けの販売が大きな比重を占め、アジア市場での経済情勢の悪化、あるいは顧客企業の業績状況の変化などによる値下げ要求が発生した場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

・石油化学部門の主要原料であるナフサは、中東地域の治安や世界の経済情勢に多大な影響を受け、時に急激な価格変動を起こすことがあります。ナフサの価格が急激に上昇した場合、製品価格への転嫁が遅れることなどにより、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

・ナフサやその他の原料品の一部については、特定の地域や購入先に依存しております。購入先を複数にするなど、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めておりますが、時に主要原料の不足が生じないという保証はありません。必要な主要原料が確保できない場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

・情報電子化学部門の製品は、技術革新のスピードが速く、タイムリーに新製品を開発・提供していく必要があります。当社グループが顧客ニーズを満足させる新規製品を有効に開発できない場合、また他社において画期的な技術革新がなされた場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

・健康・農業関連事業部門の農薬や家庭用殺虫剤の出荷は、世界各地域における異常気象等の理由による作物の育成状況や病害虫の発生状況に左右されます。また、飼料添加物は急激な価格変動を起こすことがあります。作物の育成状況が悪くなった場合、病害虫の発生が少なくなった場合、あるいは急激な価格変動が起こった場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

・医薬品部門では、国内において、急速に進展する少子高齢化等により医療保険財政が悪化する中、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進などの医療費抑制策が図られ、さらなる医療制度改革の議論が続けられております。医療制度改革はその方向性によっては当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、海外においても医薬品は各種の規制を受けており、米国の医療保険制度改革等の行政施策の動向によっては、重要な影響を受ける可能性があります。

 

2.為替レート変動に係るリスク

当社グループは、国内で製造した製品を海外に輸出するとともに海外から原料品を輸入しておりますが、製品輸出高は原料品輸入高を上回っております。外国通貨に対して円高が進行した場合、海外で生産された製品に対する価格競争力が低下することに加え、輸出手取額の減少が輸入支払額の減少を上回ることになります。このようなリスクに対しては、為替予約や円建輸出取引を行うことによりリスクを最小限にするように努めておりますが、中長期的な為替レートの変動によるリスク等を完全にヘッジすることは出来ないため、円高の進行は当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、海外の関係会社の経営成績は、連結財務諸表作成のために円換算されております。換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

3.金利変動に係るリスク

当社グループは、資金需要に対してその内容や財政状態および金融環境を考慮し、調達の金額・期間・方法等を判断しております。今後の金利の変動に備え、固定金利・変動金利を適宜組み合わせて調達を行っておりますが、金利が上昇した場合には支払利息が増加し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4.株式相場変動に係るリスク

当社グループが保有する有価証券の多くは、市場性のある有価証券であるため、株式相場が大幅に下落した場合、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

5.固定資産の減損に係るリスク

当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、減損損失が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

6.繰延税金資産の取崩しに係るリスク

当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っておりますが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

7.退職給付関係に係るリスク

当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率などの数理計算上の前提に基づいて算出されております。制度資産運用環境の悪化により前提と実績に乖離が生じた場合や退職金・年金制度が変更された場合などは、退職給付費用および債務が増加し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

8.その他経営全般に係るリスク

(海外事業展開)

当社グループは、中東やアジアなど海外での事業活動を今後一層拡大していくこととしております。海外における事業活動には法律や規制の変更、労務環境の違いによる争議等の発生、人材の採用と確保の難しさ、テロ・戦争・その他の要因による社会的混乱などのリスクが内在しており、これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社とサウジアラビアン オイル カンパニー(サウジ・アラムコ社)が共同で設立したラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニー(ペトロ・ラービグ社)は、サウジアラビアのラービグにおいて、石油精製・石油化学の統合コンプレックス事業(「ラービグ第1期計画」)を運営しております。当社は、プロジェクト総投資額に対し、不測の事態による損害に備え、独立行政法人日本貿易保険の規約・限度額に従い、海外投資保険等に加入しております。

ペトロ・ラービグ社は、既存の「ラービグ第1期計画」の拡張計画(「ラービグ第2期計画」)に関し、銀行団との間で、融資契約上のプロジェクト・コスト約81億米ドルの6割強にあたる約52億米ドルのプロジェクト・ファイナンス契約を締結し銀行借入を行っており、当社はその50%について完工保証を差入れております。また、ペトロ・ラービグ社の行っているその他の一部の借入に対して、当社は債務保証を行っております。当該保証の履行により、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社は、「ラービグ第1期計画」と同様に「ラービグ第2期計画」についても、独立行政法人日本貿易保険の規約・限度額に従い、海外投資保険等に加入しております。

 

(企業買収・資本提携)

当社グループは、事業拡大や競争力強化等を目的として、国内外において企業買収・資本提携等を実施しておりますが、当社グループおよび出資先企業を取り巻く事業環境の変化等により、当初期待していたシナジー効果を得られない可能性があります。また、出資先企業の経営成績、財政状態の悪化による企業価値の低下等により、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(研究開発)

当社グループは、需要家のニーズに合わせた新技術・新製品をスピーディーに上市するため、積極的に研究開発を行っております。当社グループの研究開発は、次世代事業の創生のための探索研究を含んでいるため研究開発期間が長期間にわたる場合があり、また、研究開発テーマが実用化されず、新製品の開発が著しく遅延または断念される場合には、競争力が低下し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(知的財産権)

当社グループは、他社と差別化できる技術とノウハウを蓄積し事業の競争力を強化してきましたが、当社グループ独自の技術・製品とノウハウの一部は、厳正な管理を行っているものの、予期せぬ事態により外部に流出する可能性があり、また、特定の地域ではこれらの知的財産の完全な保護が不可能なため、第三者が当社グループの知的財産を使用して類似製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また将来、知的財産に係る紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされる可能性があります。

 

 

(製品の品質)

当社グループは、世界的に認められている厳格な品質管理基準に従って、各種製品を製造しておりますが、すべての製品について欠陥が無く、将来にわたってリコールが発生しないという保証はありません。大規模な製品事故は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、農薬や医薬品等は各国の厳しい審査を受けて承認されておりますが、科学技術の進歩や市販成績が蓄積された結果から、新たに品質問題や副作用が見つかることもあります。このように上市後予期せぬ品質問題や副作用が発見された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(事故・災害)

当社グループは、製造設備の停止や製造設備に起因する事故などによる潜在的なマイナス要因を最小化するため、すべての製造設備において定期的な点検を実施しております。しかしながら、製造設備で発生する事故、自然災害等による影響を完全に防止・軽減できる保証はありません。また、当社グループの事業活動におけるシステム・ネットワークへの依存度は年々拡大しており、セキュリティの高度化などによりシステムやデータの保護に努めておりますが、停電、自然災害やコンピューターウィルス、ハッカー等のシステム犯罪などにより、システム・ネットワーク障害が生じる可能性があります。

事故等により、工場周辺に物的・人的被害を及ぼした場合、あるいは、システム・ネットワーク障害が発生した場合、事業活動に支障をきたすほか多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(規制変更)

当社グループは、事業展開する各国の規制に従い、業務を遂行しております。将来における法律、規則、政策、実務慣行、解釈およびその他の政策変更ならびにそれらによって発生する事態が、当社グループの業務遂行や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、将来的に環境および化学品安全等に対する法的規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性があります。

 

(訴訟)

当社グループは、国内および海外事業に関連して、訴訟、係争、その他の法律的手続きの対象となるリスクがあり、将来重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に重要な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
 連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
 連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。

 

(2) 経営成績

当期における世界経済の情勢は、米国の良好な雇用環境や個人消費の拡大などにより堅調に推移しました。一方、中国経済は、米中貿易摩擦や政府による債務圧縮(デレバレッジ)等の影響を受けて、その成長に陰りが見られるとともに、欧州においても、中国経済の減速をはじめとする各種要因により、昨年秋頃から急速に景気が減速しました。
 国内経済は、雇用・所得環境の改善が継続しており、概ね順調に推移しましたが、中国、欧州などで景気が減速傾向にあることや、石油化学製品のアジア市況軟化に伴う国内市況の悪化、スマートフォン向けを中心としたIT関連需要の急激な落ち込み、などにより悪影響を受けました。
 このような状況の下、当社グループは、全社を挙げて業績改善に努めるとともに、「事業ポートフォリオの高度化」、「キャッシュフロー創出力の強化」、「次世代事業の早期戦列化」等を基本方針とする中期経営計画(2016年度~2018年度)に基づき、持続的な成長を続けるレジリエント(回復力に富む)な住友化学グループへの変革をより一層加速すべく取り組んでまいりました。
 この結果、当社グループの当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度に比べ1,281億円増加し、2兆3,186億円となりました。損益面では、コア営業利益は2,043億円、営業利益は1,830億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,180億円となり、それぞれ前連結会計年度を下回りました。

 

(売上収益)

売上収益は、事業拡大に伴う数量増の影響が最も大きく、また原料価格上昇に伴う売価上昇による影響もあり、前連結会計年度の2兆1,905億円に比べ1,281億円増加し2兆3,186億円となりました。

 

(コア営業利益/営業利益)

コア営業利益は、石油化学のペトロケミカル コーポレーション オブ シンガポール(プライベート)リミテッドやラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニーの持分法投資損益の悪化、千葉工場やシンガポールでの定期修繕による影響に加えて、健康・農業関連事業の北米での天候不順による出荷減少やメチオニンの交易条件の悪化、医薬品の国内における薬価改定や前連結会計年度の一時的な事業譲渡益の計上による影響などにより、前連結会計年度の2,627億円に比べ584億円減少し2,043億円となりました。

 

コア営業利益の算出にあたり営業利益から控除した、非経常的な要因により発生した損益は、当連結会計年度において減損損失などを計上したことから、前連結会計年度の118億円の損失に比べ95億円悪化し213億円の損失となりました。以上の結果、営業利益は、前連結会計年度の2,509億円に比べ680億円減少し1,830億円となりました。

 

(金融収益及び金融費用/税引前利益)

 金融収益及び金融費用は、当連結会計年度末にかけて円安が進行し、多額の為替差益を計上したことから、前連結会計年度の101億円の損失に比べ155億円改善し、54億円の利益となりました。以上の結果、税引前利益は、前連結会計年度の2,408億円に比べ524億円減少し、1,884億円となりました。

 

(法人所得税費用/親会社の所有者に帰属する当期利益及び非支配持分に帰属する当期利益)

法人所得税費用は359億円となり、税引前利益に対する税効果会計適用後の法人所得税費用の負担率は、19.1%となりました。
 以上の結果、当期利益は、1,525億円となりました。
 非支配持分に帰属する当期利益は、主として大日本住友製薬株式会社や日本シンガポール石油化学株式会社などの連結子会社の非支配持分に帰属する利益からなり、前連結会計年度の444億円に比べ99億円減少し、345億円となりました。
 以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度の1,338億円に比べ158億円減少し、1,180億円となりました。

 

当連結会計年度のセグメント別の業績の概況は、次のとおりであります。
 なお、セグメント利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いて算出したコア営業利益で表示しております。

 

(石油化学)

石油化学品は原料価格の上昇により、市況が上昇しました。合繊原料やメタアクリルも市況が上昇しました。また当連結会計年度にはラービグ第2期計画の製品の出荷が増加しました。この結果、売上収益は前連結会計年度に比べ、834億円増加し7,575億円となりました。コア営業利益は、千葉工場やシンガポールでの定期修繕の影響や石油化学品の交易条件の悪化などにより前連結会計年度に比べ330億円減少し616億円となりました。

また、生産規模は、約5,150億円となりました。(販売価格ベース)

 

(エネルギー・機能材料)

リチウムイオン二次電池用セパレータは需要の増加により、出荷が増加しました。高純度アルミナも電池部材用途を中心に出荷が増加しました。この結果、売上収益は前連結会計年度に比べ、319億円増加し2,829億円となり、コア営業利益は前連結会計年度に比べ38億円増加し230億円となりました。

また、生産規模は、約1,960億円となりました。(販売価格ベース)

 

(情報電子化学)

偏光フィルムは販売価格が下落しましたが、テレビ用途、モバイル用途ともに需要の増加により出荷が増加しました。またタッチセンサーパネルも需要の増加により出荷が増加しました。この結果、売上収益は前連結会計年度に比べ、281億円増加し3,968億円となり、コア営業利益は前連結会計年度に比べ139億円増加し262億円となりました。

また、生産規模は、約3,560億円となりました。(販売価格ベース)

 

 

(健康・農業関連事業)

農薬は、北米において期末に発生した度重なる天候不順の影響などにより出荷が減少し、メチオニン(飼料添加物)は市況の下落により、減収となりました。また、国内農業関連の小売事業の新規連結により販売が増加した一方で、新興国通貨安による在外子会社の邦貨換算差の影響がありました。この結果、売上収益は前連結会計年度に比べ、16億円減少し3,381億円となりました。コア営業利益は、上述の農薬の出荷減少やメチオニンの交易条件の悪化などにより、前連結会計年度に比べ242億円減少し197億円となりました。

また、生産規模は、約1,700億円となりました。(販売価格ベース)

 

(医薬品)

北米では、ラツーダ(非定型抗精神病薬)やアプティオム(抗てんかん剤)などの販売が増加しました。一方、国内においては、薬価改定の影響がありました。この結果、売上収益は前連結会計年度に比べ、81億円減少し4,921億円となりました。コア営業利益は薬価改定の影響に加え、前連結会計年度において一時的な事業譲渡益を計上したことなどにより、前連結会計年度に比べ140億円減少し808億円となりました。

また、生産規模は、約3,600億円となりました。(販売価格ベース)

 

(その他)

上記5部門以外に、電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務、物性分析・環境分析業務等を行っております。これらの売上収益は前連結会計年度に比べ、56億円減少し511億円となり、コア営業利益は前連結会計年度に比べ16億円減少し94億円となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績及び受注状況

当社グループ(当社および連結子会社)の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産製品の規模は小さいため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産の状況については、セグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。

② 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

石油化学

757,529

12.4

エネルギー・機能材料

282,850

12.7

情報電子化学

396,839

7.6

健康・農業関連事業

338,094

△0.5

医薬品

492,130

△1.6

その他

51,130

△9.9

合計

2,318,572

5.8

 

(注) 1 上記販売実績は、外部顧客への売上収益を示しております。

2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。

 

 

(3) 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ1,029億円増加し3兆1,716億円となりました。有形固定資産や棚卸資産が増加しました。
 負債合計は、前連結会計年度末に比べ33億円増加し、1兆8,197億円となりました。有利子負債は前連結会計年度末に比べ26億円減少し、8,395億円となりました。
 資本合計(非支配持分を含む)は、利益剰余金が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ997億円増加し、1兆3,519億円となりました。親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べて1.3ポイント増加し、31.5%となりました。

 

(4) キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の増加や税引前利益の減少等により、前連結会計年度に比べ851億円減少し、2,081億円の収入となりました。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出の増加等により、前連結会計年度に比べ263億円支出が増加し、1,808億円の支出となりました。
 この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度の1,387億円の収入に対して、当連結会計年度は273億円の収入となりました。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、609億円の支出となりました。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ303億円減少し、2,017億円となりました。

 

当社グループの資本の財源および資金の流動性は、次のとおりであります。

当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入、資本市場における社債およびコマーシャル・ペーパーの発行等により、必要資金を調達しております。当社グループの財務活動の方針は、低利かつ中長期にわたり安定的な資金調達を行うこと、および十分な流動性を確保することであります。
 当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は2,017億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は128.5%であります。また、短期的な資金需要に対応するため、コマーシャル・ペーパーの発行枠を1,800億円と、大手邦銀のシンジケート団による800億円のコミットメント・ラインおよび、大手外銀のシンジケート団による210億円のマルチカレンシー(円・米ドル・ユーロ建)によるコミットメント・ラインを有しております。

 

(5) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)2019年度~2021年度中期経営計画」に記載のとおりであります。

 

(6) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

IFRSにより作成した連結財務諸表と日本基準により作成した連結財務諸表の経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異は、以下のとおりであります。 

当連結会計年度(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
(のれんの償却)
 日本基準ではのれんは計上後20年以内でその効果の発現する期間にわたって均等償却しておりましたが、IFRSでは償却を行わず、毎期減損テストを実施しております。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「販売費及び一般管理費」が9,170百万円減少しております。

(条件付対価の負債計上)
 日本基準では企業結合契約における条件付対価は企業結合後にその交付または引渡しが確実となる時点まで負債を認識しておりませんでしたが、IFRSでは企業結合時点における公正価値を金融負債に認識し、その後の公正価値の変動を反映しております。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて「販売費及び一般管理費」が4,171百万円減少しております。

(退職給付に係る費用)

 日本基準では数理計算上の差異を発生時にその他の包括利益として認識した後に、従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により按分した額を純損益として認識しておりましたが、IFRSでは発生時にその他の包括利益として一括で認識し、定額法による純損益への振替は行っておりません。また、日本基準では過去勤務費用を発生時にその他の包括利益として認識した後に、従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により按分した額を純損益として認識しておりましたが、IFRSでは発生時に純損益として認識しております。これらの影響により、IFRSでは日本基準に比べて「売上原価」および「販売費及び一般管理費」が2,796百万円増加しております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

  技術導入関係

契約会社名

契約相手先

国名

内容

対価

有効期間

大日本住友製薬

株式会社

アルミラル社

スペイン

エバスチン

に関する技術

ランニング・

ロイヤリティ

1988年1月~2012年12月

以後5年間ずつ自動更新

大日本住友製薬

株式会社

ブリストル・
マイヤーズ スクイブ株式会社

日本

イルベサルタン

に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

2006年7月~
発売から15年間または特許満了日の長い方

大日本住友製薬

株式会社

ニューロクライン社

アメリカ

インディプロン

に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

2007年10月~
発売から15年間または
特許満了日の長い方

大日本住友製薬

株式会社

インターセプト
ファーマシューティカルズ社

アメリカ

ファルネソイドX
受容体作動薬に
関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

2011年3月~

国毎に、最初または第2適応症の上市から10年間、または独占期間のどちらか長い方

大日本住友製薬

株式会社

バイオエレクトロン テクノロジー社

アメリカ

EPI-743および
EPI-589
に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

2013年3月~

発売から10年間または
独占期間のどちらか長い方

協議により延長可能

大日本住友製薬株式会社

サンバイオ社

アメリカ

SB623に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

2014年9月~
最終の対象国での発売から
20年間

大日本住友製薬株式会社

ポクセル社

フランス

イメグリミンに関する技術

一時金

ランニング・ロイヤリティ

2017年10月~

国毎に、発売から10年間または特許満了日の長い方

サノビオン社

ビアル・ポルテラ・アンド・シーエー社

ポルトガル

エスリカルバゼピンに関する技術

一時金

2007年12月~
国毎に、発売から10年間、
特許満了日、データ独占期間のうちいずれか長い方

サノビオンCNSカナダ社

アクエスティブ社

アメリカ

APL-130277
に関する製剤技術

一時金
ランニング・
ロイヤリティ

2016年4月~2024年12月
以後契約会社が終結を通知す
るまで

トレロ社

サノフィ社

フランス

アルボシジブ
に関する技術

一時金
ランニング・
ロイヤリティ

2013年4月~
ロイヤリティ支払期間満了ま

 

(注) 「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」はIFRSの開示要請に基づくものが含まれます。また、IFRSにより要求されている、関連するその他開示項目は「第5 経理の状況 連結注記 37. コミットメント」に記載のとおりです。

 

 

5 【研究開発活動】

 当社グループ(当社および連結子会社)は、事業拡大と収益向上に寄与すべく、独自の優位性ある技術の確立を基本方針とし、各社が独自に研究開発活動を行っているほか、当社グループ全体としての効率性を念頭に置きながら、互いの研究開発部門が密接に連携して共同研究や研究開発業務の受委託等を積極的に推進しております。

 当連結会計年度においては、2016年度から2018年度までの中期経営計画に従い、引き続き、環境・エネルギー、ICT(情報・通信技術)、ライフサイエンスの3分野に研究資源を重点投入するとともに、異分野技術融合による新規事業の芽の発掘とその育成に取り組んできました。

 これに基づき、当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度に比べ19億円減少し、1,635億円となりました。

 

 セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

 石油化学分野では、事業のグローバル競争力強化のために、プロピレンオキサイド、カプロラクタム、メタアクリルモノマーを中心とする既存バルク製品の触媒・プロセス改良、合成樹脂の製造プロセスの改良、既存素材の高性能化や新規高付加価値製品の開発に積極的に取り組んでおります。当連結会計年度において、プロピレンオキサイドでは、引き続き旺盛なライセンスオファーもあり、よりコスト競争力の高い製造技術を目指した改良研究を継続実施しました。ポリエチレン、ポリプロピレンでは各種用途に応じた最適なポリマー材料構造の設計と製造技術の検討、温室効果ガスの削減の取り組みに呼応した自動車の軽量化に寄与する樹脂加工技術および材料の開発、環境負荷低減包装への要求に応じた高性能なパウチ包装用ポリオレフィン材料の開発等を進め、一定の進展が見られました。新製品開発では蓄熱性能を有する樹脂材料の商業化検討に大きな進展が見られました。

 なお、石油化学部門における当連結会計年度の研究開発費は71億円であります。

 

 エネルギー・機能材料分野では、リチウムイオン二次電池用部材、スーパーエンジニアリングプラスチックス、高性能ゴムなどの環境・エネルギー関連事業拡大のため、無機材料、合成ゴム材料、機能性樹脂材料などの幅広い分野で、新規製品創出や既存製品の競争力強化に向けた研究開発に取り組んでおります。
 当連結会計年度において、リチウムイオン二次電池用部材に関しては、自動車向けを中心に性能向上や需要拡大の要請に応えるため、開発を鋭意進めました。耐熱セパレータについては、コスト削減を目指した技術開発と、より性能を高める耐熱層の検討が進捗し、正極材については独自技術を用いた高容量タイプの開発品の顧客評価が進んでおります。負極塗工やセパレータ塗工に用いるアルミナについては、当連結会計年度に設備増強が完成し生産量が増加しております。また、更なる需要増加に応えるべく次期設備増強も決定しました。
 機能樹脂分野においては、電気・電子部品分野向け、また自動車部材向けにスーパーエンジニアリングプラスチックスの需要が増大しており、性能向上を図り顧客要望に対応すべく開発を進めております。ポリエーテルサルホン(PES)に関しては、千葉工場に第2プラントが完成し当連結会計年度に稼働しました。航空機用途のみならず、自動車部材や高機能膜向けの開発・拡販を積極的に進めております。液晶ポリマー(LCP)では、パソコンやスマートフォン、機械部品などに使う射出成形材料に加えて、高周波特性に優れたグレードやフィルム用途グレードの開発を進めており、次世代移動通信(5G)用途や振動板用途で顧客採用が進んでおります。

 機能性材料である合成ゴムの分野では、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)の耐寒性、耐熱性、耐油性など、顧客が求める特性を向上させた開発グレードの評価がそれぞれ進展し、採用が進んでいます。更に、微細発泡グレード、金属接着グレードを開発し、新たな機能を提案しています。ゴム用薬品の分野では、タイヤ用ゴムの耐摩耗性を大きく改善させる新規添加剤を開発し、顧客評価を進めています。耐摩耗性は電気自動車用タイヤなど高負荷用途に特に求められる性能であり、将来性が期待されます。

 なお、エネルギー・機能材料部門における当連結会計年度の研究開発費は85億円であります。

 

 情報電子化学分野では、日本国内に留まらずグローバルな技術・研究開発能力を結集し、IT関連の先端技術進化を支える新規材料・部材・デバイスに関する新製品の開発に、引き続き積極的に取り組んでおります。

 まず、ディスプレイ材料分野においては、次世代ディスプレイとして本格化しつつあるOLEDパネルに対し、当社独自のキーコンポーネントである「液晶塗布型位相差フィルム」を用いたOLED用偏光フィルムが、採用済みの大型テレビ用途から、中小型モバイル用途へ適用範囲が拡大いたしました。また、次世代端末として注目されているフォルダブルスマートフォンに対し、カバーガラスの代わりとなる高機能フィルムの開発・市場投入を進めております。

 半導体材料分野においては、半導体集積度向上という命題に対し、微細加工分野において現在主流の液浸ArFレジストのラインナップ拡充に加え、次世代製品であるEUVレジストや多層配線用厚膜レジストの開発・市場投入を進めています。化合物半導体材料分野においては、大容量・超高速データ受け渡しを可能とする5G通信に対し、高周波デバイス用各種エピウェハの設計開発を行っております。

 IoTの主要構成ツールとして拡大が見込まれるセンシングデバイス分野においても、既に事業確立しているディスプレイ用タッチセンサーのさらなる高機能化や複合化を進めるとともに、薄膜形成を中心とした要素技術を活用し、新規センサーの開発に取り組んでおります。

 なお、情報電子化学部門における当連結会計年度の研究開発費は173億円であります。

 

 健康・農業関連事業分野では、世界の食糧増産、健康・衛生や環境の改善といった課題解決に貢献するため、技術イノベーションが急速に進むIoTやバイオテクノロジー技術を活用し、新製品やアプリケーション、競争力のある製造プロセスの開発に取り組むことで、コア事業の強化と周辺事業への展開および川下化を推進しております。当連結会計年度において、2018年6月、化学農薬の発明や開発を加速するため、健康・農業関連事業研究所内に合成研究棟「ケミストリーリサーチセンター」を新設し、稼働を開始しました。また、バイオラショナル製品の開発に強みを持つベーラント バイオサイエンス LLC(当社100%子会社)は、2018年7月、米国イリノイ州の同本社近接地に建設した新施設「バイオラショナルリサーチセンター」の稼働を開始しました。国内農業関連事業については、2年後の上市を目指して新規殺菌剤メチルテトラプロールを含む農薬の登録申請を昨秋実施したほか、今後農業場面での普及が見込まれるドローン散布に対応した剤型(FG剤)の水稲用除草剤の登録申請を昨夏実施するなど、農薬・肥料製品ラインナップの更なる拡充を推進しております。また、コメ事業についても事業の本格化に向けた良食味や多収等の特徴を有する新品種の開発を加速しております。さらに、種子・種苗、潅水資材等を取り扱う住化農業資材株式会社や青果流通事業を行う住化アグロソリューションズ株式会社などのグループ会社と連携しながら、農業生産者への総合的なソリューションの研究開発を進めております。海外農業関連事業においても、新規殺菌剤であるインピルフルキサムやメチルテトラプロールの早期事業化に向けてグローバル開発を進めており、本年度は両殺菌剤の欧州での農薬登録申請を実施しました。事業拡大を目指した他社との協業については、ニューファーム社との間でドイツ、イギリスおよびポーランドでの新規殺菌剤メチルテトラプロールに関する業務提携(販売・開発・製造)に合意しました。さらに、バイエル社(旧モンサント社)と2016年に合意した雑草防除体系の創出プロジェクト(当社が新規除草剤、バイエル社が耐性作物の開発を担当)、コルテバ・アグリサイエンス社(旧ダウ・デュポン社)と2017年に合意した種子処理技術の開発、登録、商業化プロジェクトにも引き続き取り組んでおります。生活環境事業については、重点強化領域の市場セグメントにおける新製品開発と川下化を推進しております。天然物由来製品への強い市場ニーズに応えるため、グループ会社であるMGK社やボタニカル・リソーシズ・オーストラリア社と共同で、天然由来の有効成分からなるボタニカル殺虫剤の開発も推進しました。業務用殺虫剤分野では、作用性の異なる複数の有効成分を配合することで即効性や抵抗性害虫への効果、残効性等の優れた機能を持たせた新製品を上市しました。熱帯感染症分野では、ピレスロイド抵抗性媒介蚊に有効なマラリア対策用室内残留散布剤を上市するとともに幼虫防除用新製品の開発・登録を進め、総合防除のための製品ラインナップ拡充を進めております。アニマルニュートリション事業については、競争力強化のためメチオニンの新しい製法の開発やプロセス改善に加え、製品ラインナップ拡充のため、飼料添加物分野における新規商材の開発に取り組んでおります。また、近年問題となっている家畜排泄物由来の温室効果ガスの低減を目的として、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構や国内大学などとの共同研究プロジェクトに参画し、引き続きメチオニンを含むアミノ酸バランス改善飼料の技術普及を推進しております。医薬化学品事業については、当社の有機合成プロセスの技術力を駆使したジェネリック原薬の製法開発、および新薬の受託製造品目の拡充に取り組んでおります。また、将来の成長が見込まれる核酸医薬原薬の製造において、GMP(Good Manufacturing Practice)体制のより一層の整備を進めるとともに、長鎖オリゴ核酸の製造を中心に、競争力のある要素技術の獲得、独自技術の拡張を目的とした研究開発を推進しております。

 なお、健康・農業関連事業部門における当連結会計年度の研究開発費は293億円であります。

 

 医薬品分野では、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を研究重点領域とし、また、感染症領域にも取り組み、グローバルヘルスへの貢献を目指し、大日本住友製薬株式会社および日本メジフィジックス株式会社が有する自社技術を活かした研究開発に加え、技術ライセンス、ベンチャー企業やアカデミアとの共同研究などによる最先端の外部技術の導入にも取り組み、優れた医薬品の継続的な創製を目指しております。

 当連結会計年度においては、精神神経領域で次の進展がありました。①ルラシドン塩酸塩(開発コード:SM-13496)について、2019年1月、中国において統合失調症を対象とした承認を取得しました。②「トレリーフ」(一般名:ゾニサミド)について、2018年7月、日本においてレビー小体型認知症(DLB)に伴うパーキンソニズムの効能・効果を追加する一部変更承認を取得しました。③「ロナセン」(一般名:ブロナンセリン)について、日東電工株式会社と共同開発中のテープ製剤の承認申請を、2018年7月、日本において統合失調症を対象に行いました。④dasotraline(開発コード:SEP-225289)について、米国において成人および小児の注意欠如・多動症(ADHD)を対象とした承認申請をしておりましたが、2018年8月に米国食品医薬品局(FDA)から受領した審査結果通知において、FDAは、現時点では本剤をADHDの適応症として承認できないと判断し、本剤の有効性および忍容性をさらに評価するために追加の臨床データが必要であることを示しました。現在、開発方針を検討中です。また、米国において、過食性障害(BED)を対象としたフェーズ3試験に関して、主要評価項目を達成するとともに、良好な忍容性を示す結果を得ました。⑤アポモルヒネ塩酸塩水和物(開発コード:APL-130277)について、米国において、パーキンソン病に伴うオフ症状を対象とした承認申請をしておりましたが、2019年1月にFDAから受領した審査結果通知において、FDAは、現時点では本剤を承認できないと判断し、本剤の追加の情報および解析を要求しましたが、新たな臨床試験は求められておりません。2019年度に再申請を行う予定です。⑥SEP-363856について、米国において、統合失調症を対象としたフェーズ2試験に関して、主要評価項目を達成するとともに、良好な忍容性を示す結果を得ました。

 がん領域では、ナパブカシンについて結腸直腸がんおよび膵がんを対象とした併用での国際共同フェーズ3試験を引き続き推進しました。また、造血幹細胞移植前治療薬「リサイオ」(一般名:チオテパ)について、2019年3月、日本において小児悪性固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療(単剤)を対象とした承認を取得し、さらに同月、日本において悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療(単剤)を対象とした承認申請を行いました。

 再生・細胞医薬分野では、引き続き、産学の連携先と、加齢黄斑変性、パーキンソン病、網膜色素変性、脊髄損傷などを対象に、他家iPS細胞を用いた再生・細胞医薬事業を推進します。当連結会計年度の進捗は以下の通りです。①SB623について、米国における慢性期脳梗塞を対象として実施したフェーズ2b試験において、主要評価項目を達成できませんでした。現在、本試験の詳細解析を実施しており、その結果を踏まえてサンバイオ社とともに今後の開発方針を決定する予定です。②他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞について、日本において京都大学医学部附属病院および京都大学iPS細胞研究所(CiRA)がiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病を対象とした医師主導治験を開始しました。大日本住友製薬株式会社では、本試験結果を用いて承認申請を行う予定です。

 感染症領域では、アカデミアなどとの共同研究により、薬剤耐性菌感染症治療薬ならびに大日本住友製薬株式会社のワクチンアジュバントを基盤としたマラリアワクチンおよび万能インフルエンザワクチンの創薬研究を展開しています。

 放射性医薬品については、前連結会計年度において、日本医療研究開発機構(AMED)による「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」の研究開発課題として採択されたセラノスティクス(治療と診断の融合)薬剤開発プロジェクト「CRADLE(Consortium for Radiolabeled Drug Leadership)」を日本メジフィジックス株式会社が中心となって推進しています。2018年10月には、本プロジェクトの開発拠点となる設備の建設を開始しました。初期段階の研究については、高性能コンピュータを駆使したインシリコ創薬技術、iPS細胞などの最先端のサイエンスを取り入れた創薬に取り組んでいます。また、国内外の大学を含む研究機関等との研究提携も積極的に推進しております。さらに、医薬品以外のヘルスケア領域において、社会課題解決のための新たなソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業の立ち上げを目指し、その一環として2018年10月に株式会社メルティンとの間で共同研究開発契約を、2019年2月には株式会社Aikomiとの間で共同研究契約を締結しました。

 なお、医薬品部門における当連結会計年度の研究開発費は851億円であります。

 

 全社共通およびその他の研究分野においては、上記5事業分野の事業領域を外縁部へ積極拡大するための研究およびマテリアルズ・インフォマティクス等の計算機科学をはじめとする共通基盤技術開発とともに、既存事業の枠に属さない新規事業分野への展開を図るべく、環境・エネルギー、ICT、ライフサイエンスの各分野において研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度においては、次の進展がありました。ICT分野では、高分子有機EL材料の性能向上のための開発を継続した結果、パネルで発現される性能が実用的なレベルに達し、印刷法による中型パネル製造への材料提供を開始しました。また、有機フォトダイオード(OPD)材料を用いた指紋認証デバイスの共同開発が大きく進展しました。環境・エネルギー分野では、高分子有機EL照明において、フレキシブル基板ベースの一般照明パネルの開発、および生産プロセスの検討を継続して実施しました。ライフサイエンス分野においては、培養細胞を用いた、生体を使わない化学品安全性評価システムの構築に取り組んでおります。さらに上記3分野のうち、複数の分野の技術を融合させた研究開発も進めております。例えば、3分野にまたがった研究開発としては、プリンテッド・エレクトロニクス技術の応用展開に注力し、開発を加速しております。

 なお、全社共通部門における当連結会計年度の研究開発費は162億円であります。

 

 このように、事業拡大および競争力強化を図るべく、新製品・新技術の研究開発および既存製品の高機能化・既存技術の一層の向上に取り組み、各事業分野におきまして着実に成果を挙げつつあります。