文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現時点で入手している情報や合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当社は、別子銅山の煙害という環境問題の克服と、農産物の増産をともに図ることから誕生した起源を持ち、創業以来100年以上にわたり、絶えざる技術革新と事業の変革を遂げながら、事業を通じて人々の豊かな生活を支えてまいりました。
住友には「自利利他公私一如」(住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない)という言葉がありますが、当社はその事業精神を体現し、経済価値と社会価値を一体的に創出してまいりました。
2020年に入り、新型コロナウイルス感染症により全世界が大きな影響を受ける中、社会の様々な要請に応えられる化学産業の間口の広さ、社会インフラを支える役割がより明確になりました。また、サステナビリティ意識が高まり、世界的にカーボンニュートラルを目指す動きも加速する中で、その達成に必要とされる革新的な技術の担い手として、化学産業への期待が大きくなっています。
そのような環境下で、当社グループは環境負荷の低減や、食糧問題、ヘルスケア、ICTの技術革新等の社会課題に対し、事業を通じて貢献することで、当社グループの持続的な成長とサステナブルな社会の実現を目指します。

(2) 2019年度~2021年度中期経営計画
当社グループは、2019年度を初年度とする中期経営計画に取り組んでおります。本計画は、2013年度から取り組んでいる「Change & Innovation」の第3段階であり、「Change & Innovation 3.0 ~For a Sustainable Future~」をスローガンに掲げ、デジタル革新により生産性を飛躍的に向上させるとともに、イノベーションの加速に取り組みます。
この中期経営計画は、以下を基本方針としております。
① 次世代事業の創出加速
「環境負荷低減」「食糧」「ヘルスケア」「ICT」の4つを重点分野とし、サステナブルな社会の実現に向けた次世代技術の開発、新規事業の創出に取り組みます。その中でも、社会の気候変動問題に対する関心の広がりや、コロナ禍による人々の健康意識の高まりを受け、「環境負荷低減」と「ヘルスケア」の2分野には、特に注力してまいります。
② デジタル革新による生産性の向上
デジタル技術(AI・IoT)の活用により、研究開発・製造・サプライチェーン・営業・間接部門における飛躍的な生産性の向上に取り組みます。また、コロナ禍による世界でのデジタル革新の加速を受け、当社での取り組みについても計画を前倒して進めております。
③ 事業ポートフォリオの高度化
持続的な市場の成長が予想され、かつ技術を競争力の源泉として展開可能な事業に対し、集中的に経営資源を投入することで、事業ポートフォリオのさらなる高度化を進めます。
④ 強靭な財務体質の実現
規律ある運営によるコストと資産の統制により、強靭な財務体質を実現します。
これらの4点とともに、 ⑤持続的成長を支える人材の確保と育成・活用 ⑥コンプライアンスの徹底と安全・安定操業の継続に取り組みます。

各事業部門の戦略と取り組み
各事業部門における、本中期経営計画での主な取り組みは、以下のとおりであります。
(石油化学部門)
石油化学部門は、日本・シンガポール・サウジアラビアに製造拠点を有し、それぞれの拠点の強みを活かしたポリエチレン・ポリプロピレン・メタアクリルなどを製造し、自動車・家電・食品など幅広い産業に供給しております。
日本およびシンガポールの拠点では、顧客の要望を先取りした高付加価値製品を開発するとともに、高品質な製品を安定供給しております。このようにして、アジア市場の優良顧客と長年かけて培ってきた信頼関係は当社グループの大きな強みとなっております。また、サウジアラビアの拠点は安価な原燃料を活用し、コスト競争力のある製品を製造しております。
現在は、日本およびシンガポールでの高付加価値製品によるソリューション提供力の強化、サウジアラビアのプラントの安定稼働の継続を目指しております。
本中期経営計画においては、国内事業はグローバル展開の基盤として強化に取り組むほか、シンガポール事業はさらなる収益力強化を行います。また、ラービグ第1期計画の安定稼働の継続と、第2期計画の早期の収益貢献を図ります。
当連結会計年度における主な進捗として、ラービグ第2期計画において2020年9月に完工保証が終了し、現在第1期、第2期ともに安定稼働を継続しております。また、「脱炭素社会」「循環経済」の実現に貢献すべく、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルに関する技術開発を進めるとともに、その成果の社会実装に向けた取り組みを推進しております。
(エネルギー・機能材料部門)
エネルギー・機能材料部門は、複数の事業部門にまたがっていた関連事業を集約し、環境・エネルギー分野における事業の育成と強化を図るべく、2015年に発足しました。電池部材やスーパーエンジニアリングプラスチックスなどの高機能材料の販売により、エコカーなどの環境調和製品の性能向上に貢献するソリューションを提供しております。
高純度アルミナやレゾルシンのように世界トップシェアを維持する製品や世界最高水準の高耐熱性を持つリチウムイオン二次電池用セパレータに見られるように、グローバルな事業展開力とともにこれらの製品群を生み出す研究・開発力や評価・製造・プロセス技術が当社の強みであると考えております。
当部門では中期的な戦略として、当社が技術などの面で優位性を持ち成長が期待できる事業の選別と育成に取り組んでおります。同時に、不採算な一部の事業については、その再構築に取り組んでおります。
本中期経営計画においては、セパレータなどの電池部材やスーパーエンジニアリングプラスチックスなどの販売拡大、その他製品についても高付加価値製品へのシフトによる収益力強化に取り組みます。
当連結会計年度における主な進捗として、2020年4月から、次世代二次電池として注目されている固体型電池の分野において、京都大学と産学共同研究講座を開設しました。その中で、サンプル合成や性能評価を通じた固体型電池の材料および要素技術の共同開発を行っております。
(情報電子化学部門)
情報電子化学部門では、高性能なディスプレイ関連材料や高品質な半導体材料を提供することで、ディスプレイや半導体の性能および生産性の向上に貢献しております。
当社グループはこれまで、マーケットインのグローバルサプライチェーン構築に努め、製品の開発・供給に活かしてまいりました。こうした開発供給体制と、総合化学メーカーとしての素材開発力とディスプレイ関連材料事業で培った製品開発力・加工技術が強みとなっております。
現在は、ディスプレイ技術の液晶から有機ELへの世代交代に対応すべく、有機ELディスプレイ関連材料事業の拡大と液晶ディスプレイ関連材料事業の競争力強化に取り組んでおります。また、高度化する半導体製造技術に対応した新しい半導体材料の開発と生産能力の拡大にも注力しております。
本中期経営計画においては、前中期経営計画で実施した先行投資からのリターン確保、既存事業の継続的な競争力強化、将来のコア事業・高収益製品となる製品群の育成を中心に取り組みます。
当連結会計年度における主な進捗として、半導体材料事業では、フォトレジストの新工場が稼働開始するとともに、さらなる生産能力増強も決定しました。また、最先端プロセス向けフォトレジストの開発・評価体制強化のため、新棟を建設することとしました。光学機能性フィルム事業では、有機ELディスプレイの高画質化に寄与する、塗布型位相差付偏光フィルムの販売が本格化しました。
(健康・農業関連事業部門)
健康・農業関連事業部門では、特長ある農薬・農業資材やメチオニン(飼料添加物)などをグローバルに提供することで、食糧の生産性向上に寄与しております。
当社グループは、自社開発の優れた化学農薬に加え、バイオラショナルやポストハーベストなど高いシェアを持つユニークな農薬や農業資材を品揃えし、グローバルに販売しております。当社グループの農薬事業の強みは、特長ある農薬の品揃えとそれを生み出す研究開発力、グローバルな販売網です。また、メチオニン事業では、高い生産技術を活かし、製品を原料から一貫生産し安定供給しております。
現在は、農薬・農業資材の製品力のさらなる強化、グローバルフットプリント(自社の販売網)の拡大、新規農薬の着実な開発・上市に取り組んでおります。加えて、メチオニンの競争力強化により、同事業のアジアでのリーダーとしての地位を確固たるものにすべく取り組んでおります。
本中期経営計画では、微生物農薬などのバイオラショナル事業の強化や新規農薬の上市に向けた開発を着実に進め、農薬事業を拡大してまいります。また生産能力を増強したメチオニンや、生活環境製品のグローバルな販売拡大に取り組みます。
当連結会計年度における主な進捗として、買収した南米農薬事業は順調に統合プロセスが進んだほか、新規殺菌剤インディフリンの日本と北米での上市も行いました。また、天然物由来の成分を活用した微生物農薬、植物生長調整剤などのバイオラショナル事業に特化した販売組織「サステナブル・ソリューション・ビジネスユニット」をグローバル展開することで、同事業の強化を図ることとしました。これにより安全・安心な食糧供給に一層貢献してまいります。
(医薬品部門)
医薬品部門では、医療用医薬品や診断用医薬品等の開発・販売を行うことで、人々の健康で豊かな暮らしを支えております。現在、医療用医薬品は大日本住友製薬株式会社(以下「大日本住友製薬」という。)、診断用医薬品は日本メジフィジックス株式会社(いずれも当社の連結子会社)で事業を展開しております。
大日本住友製薬では、「ポスト・ラツーダ」(米国での「ラツーダ(非定型抗精神病薬)」の独占販売期間終了後)を見据えつつ、変革の時に対応するため、「成長エンジンの確立」と「柔軟で効率的な組織基盤づくり」により、事業基盤の再構築に取り組んでおります。重点3領域とする精神神経領域、がん領域、再生・細胞医薬分野は、アンメット・メディカル・ニーズが高く大日本住友製薬の経験と知識を生かせる領域であり、引き続き注力してまいります。また価値にフォーカスしたベストインクラス(既存薬はあるが、その既存薬に対して明確な優位性を持つ新薬)や感染症領域にも取り組み、グローバルヘルスに貢献してまいります。日本メジフィジックス株式会社は、核医学という極めて専門性の高い医療分野における日本のリーディングカンパニーとして、新たな診断薬の開発に取り組んでおります。
当部門の中期的な戦略としては、積極的な研究開発およびパイプラインの拡充により、主力製品の独占販売期間終了後の業績の早期回復を図るとともに、再生・細胞医薬品、フロンティア領域、感染症領域、セラノティクスなどの次世代事業を推進してまいります。
本中期経営計画では、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を研究重点領域として、自社研究に加え、技術導入、アカデミアやスタートアップ企業との共同研究など、あらゆる方法で最先端の技術を取り入れ、研究開発活動に取り組みます。
当連結会計年度における主な進捗として、大日本住友製薬によるロイバント サイエンシズ リミテッド(以下「ロイバント社」という。)との戦略的提携に伴い獲得したレルゴリクス、ビベグロンについて上市を行いました。レルゴリクスについては、ファイザー社との開発および販売提携により、同剤の順調な立上げを図ります。今後の飛躍的な市場拡大が見込まれる再生・細胞医薬分野でのCDMO事業(製法開発、製造などの受託事業)において、当社と大日本住友製薬との合弁会社であるS-RACMO株式会社を設立しました。
事業環境及び今後の業績の見通しについて
(2020年度実績)
2020年度の当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴う経済活動の落ち込みにより、自動車関連用途などを中心とした需要の減少などの影響を受けました。
一方で、南米農薬事業の買収などにより農薬販売が増加したことや、巣ごもり需要等による情報電子化学関連の需要拡大などにより、2020年度のコア営業利益は前年度を上回る1,476億円となりました。
(2021年度見通し)
新型コロナウイルス感染症の影響による出荷減少からの回復や、農薬の出荷増加などにより、コア営業利益は2,000億円と2020年度比で増益を見込んでおります。
今後は、大型買収や事業ポートフォリオ高度化の成果を早期に発現することにより、業績水準および財務体質を改善し、現在検討中の次期中期経営計画最終年度である2024年度には、コア営業利益2,800億円程度の達成を目指す考えであります。
そして、中長期的には、ROE10%以上、ROI7%以上、D/Eレシオ(有利子負債/純資産)0.7倍程度などの財務指標を安定的に達成することを目指します。当社の財務KPIであるROE10%は、事業を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するという考えのもと、社会課題の解決に重要な貢献ができると判断した事業を一定の収益性が見込める限り実施していくという方針に基づき設定したものであります。またROIについては、WACC(加重平均資本コスト)を上回るレベルを求め、7%をハードルとしております。D/Eレシオについては、フレキシブルな資金調達が可能な現在の当社格付を維持することを考慮し、0.7倍程度を目安としております。

事業等のリスクのうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると当社グループが認識している主要なリスクを以下に記載しております。ただし投資家の判断に影響を及ぼす可能性のあるリスクは、これらに限定されるものではありません。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループではこのようなリスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすためのリスク管理体制の整備・充実に努めております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 (ハ)リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。
当社グループは、総合化学メーカーとして様々な事業を行っており、事業に関わるリスクは多種多様であります。事業に係る市場リスクについては、主に以下のようなものがあります。
(価格競争)
当社グループの事業は価格競争に晒されております。海外企業の国内市場参入、関税引き下げなどによる輸入品の流入、ジェネリック品の台頭など、様々な理由により当社グループの製品群は今後も厳しい価格競争に晒されるものと予想されます。当社グループはコストの低減に努めておりますが、価格競争を克服できない場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、当社グループの保有する有形固定資産等について減損損失が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
経営環境の著しい悪化等による将来の課税所得に関する予測・仮定の変更や税制改正による税率変更等により繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(海外マーケット)
当社グループの海外売上収益は売上収益の6割以上を占め、石油化学部門などの製品は特にアジア市場での販売が多い状況であります。また、情報電子化学部門は、中国や韓国、台湾の特定顧客向けの販売が大きな比重を占め、アジア市場での経済情勢の悪化、あるいは顧客企業の業績状況の変化などによる値下げ要求が発生した場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(石油化学)
石油化学部門の主要原料であるナフサは、中東地域の治安や世界の経済情勢に多大な影響を受け、時に急激な価格変動を起こすことがあります。ナフサの価格が急激に上昇した場合、製品価格への転嫁が遅れることなどにより、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
ナフサやその他の原料品の一部については、特定の地域や購入先に依存しております。購入先を複数にするなど、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めておりますが、時に主要原料の不足が生じないという保証はありません。必要な主要原料が確保できない場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(エネルギー・機能材料)
エネルギー・機能材料部門では、電気自動車(EV)用途を中心に、リチウムイオン二次電池部材を供給しておりますが、各国におけるEV優遇政策の転換により市場が減退した場合、また技術革新により次世代の電池が主流となり、かつ当社グループがこれに対応できなかった場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(情報電子化学)
情報電子化学部門の製品は、技術革新のスピードが速く、タイムリーに新製品を開発・提供していく必要があります。当社グループが顧客ニーズを満足させる新規製品を有効に開発できない場合、また他社において画期的な技術革新がなされた場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(健康・農業関連事業)
健康・農業関連事業部門の農薬や家庭用殺虫剤の出荷は、世界各地域における異常気象等の理由による作物の生育状況や病害虫の発生状況に左右されます。また、飼料添加物は急激な価格変動を起こすことがあります。作物の生育状況が悪くなった場合、病害虫の発生が少なくなった場合、あるいは急激な価格変動が起こった場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(医薬品)
医薬品部門では、新薬開発の難度が高まる中、開発が今後計画どおりに進み承認・発売に至るとは限らず、また、有効性や安全性の観点から開発が遅延し、または開発を中止しなければならない事態も起こり得ます。そのような事態が発生した場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
国内においては、急速に進展する少子高齢化等により医療保険財政が悪化する中、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進などの医療費抑制策が図られ、さらなる医療制度改革の議論が続けられております。また、米国においても薬価抑制を企図した制度改革が決定・導入される可能性があり、中国においても医薬品費用抑制を企図する医療制度変更が推進される可能性があります。これら医療制度改革は、その方向性によっては、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(為替レート変動)
当社グループは、国内で製造した製品を海外に輸出するとともに海外から原料品を輸入しておりますが、製品輸出高は原料品輸入高を上回っております。外国通貨に対して円高が進行した場合、海外で生産された製品に対する価格競争力が低下することに加え、輸出手取額の減少が輸入支払額の減少を上回ることになります。さらに、近年では南米やインドなど海外での事業活動の拡大とともに、それぞれの地域の通貨で米ドルやその他通貨に対する為替レートの変動影響も大きくなっています。このようなリスクに対し、為替予約などの通貨ヘッジ取引や、円建輸出取引を行うことなどにより、為替レートの短期的な変動によるリスクを最小限にするように努めておりますが、中長期的な為替レートの変動によるリスク等を完全にヘッジすることは出来ないため、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外の関係会社の経営成績は、連結財務諸表作成のために円換算されております。換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度において為替レート変動がコア営業利益に与える影響は、米ドルに対して円が1円の円高となった場合、年間25億円程度の減益と試算しております。
(金利変動)
当社グループは、資金需要に対してその内容や財政状態および金融環境を考慮し、調達の金額・期間・方法等を判断しております。今後の金利の変動に備え、固定金利・変動金利を適宜組み合わせて調達を行っておりますが、金利が上昇した場合には支払利息が増加し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(株式相場変動)
当社グループが保有する有価証券の多くは、市場性のある有価証券であるため、株式相場が大幅に下落した場合、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、世界各国に生産・販売の拠点を持ち、海外売上比率は6割を超えております。そのため、貿易摩擦による関税の引き上げ、地域紛争によるサプライチェーン分断等、地政学的問題が発生した場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外における事業活動には法律や規制の変更、労務環境の違いによる争議等の発生、人材の採用と確保の難しさ、テロ・戦争・その他の要因による社会的混乱などのリスクが内在しており、これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社とサウジアラビアン オイル カンパニーが共同で設立したラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニー(以下「ペトロ・ラービグ社」という。)は、サウジアラビアのラービグにおいて、石油精製・石油化学の統合コンプレックス事業(「ラービグ第1期計画」および「ラービグ第2期計画」)を運営しております。当社は、プロジェクト総投資額に対し、不測の事態による損害に備え、独立行政法人日本貿易保険の規約・限度額に従い、海外投資保険等に加入しております。また、当社はラービグ第2期計画に関するプロジェクト・ファイナンス契約に完工保証を行っておりましたが、当該完工保証は2020年9月30日付で終了しました。なお、ペトロ・ラービグ社の行っている銀行借入の一部に対して、当社は債務保証を行っております。当該保証の履行により、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業拡大や競争力強化等を目的として、国内外において企業買収・資本提携等を実施しておりますが、当社グループおよび出資先企業を取り巻く事業環境の変化等により、当初期待していたシナジー等の買収効果を得られない可能性があります。事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られないと判断された場合、あるいは適用される割引率が高くなった場合にはのれん等の減損損失が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、需要家のニーズに合わせた新技術・新製品をスピーディーに上市するため、積極的に研究開発を行っております。当社グループの研究開発は、次世代事業の創生のための探索研究を含んでいるため研究開発期間が長期間にわたる場合があり、また、研究開発テーマが実用化されず、新製品の開発が著しく遅延または断念される場合には、競争力が低下し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、研究開発現場へのAI/MIの実装とその徹底活用、アカデミアやスタートアップとの連携(オープンイノベーション)強化により研究開発を推進していきます。
当社グループは、気候変動問題を社会が直面する重要課題の一つと捉えており、その解決に向け、総合化学企業として培ってきた技術力を生かし、製品の製造工程の合理化や温室効果ガス削減に貢献する製品の開発などに積極的に取り組んでおります。この問題に適切な対応ができない場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、地球規模で私たちの生活に大きな影響を及ぼしている気候変動問題の解決に向け、「リスクへの対応」と「機会の獲得」の両面から取り組んでまいります。
プラスチックは、自動車や航空機から電子機器、生活用品、各種包装材に至るまで、さまざまな用途に用いられる素材として人々の生活を支えていますが、使用後の適切な処理・再利用が十分に行われていないために環境汚染を引き起こしているという問題があります。この問題に適切な対応ができない場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、技術開発などを通じて、プラスチック資源循環の実現に取り組むことで、循環社会実現後のプラスチック市場において有利な地位に立つ可能性があります。
当社グループは、製造設備の停止や製造設備に起因する事故などによる潜在的なマイナス要因を最小化するため、すべての製造設備において定期的な点検を実施しております。しかしながら、製造設備で発生する事故、台風や地震などの自然災害等による影響を完全に防止・軽減できる保証はありません。
事故等により、工場周辺に物的・人的被害を及ぼした場合、事業活動に支障をきたすほか多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、世界的に認められている厳格な品質管理基準に従って、各種製品を製造しておりますが、すべての製品について欠陥が無く、将来にわたってリコールが発生しないという保証はありません。大規模な製品事故は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、農薬や医薬品等は各国の厳しい審査を受けて承認されておりますが、科学技術の進歩や市販成績が蓄積された結果から、新たに品質問題や副作用が見つかることもあります。このように上市後予期せぬ品質問題や副作用が発見された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
ITを活用することで業務の生産性向上、事業の競争力確保、新たなビジネスモデル創出を追求するデジタル革新が加速している一方、情報システムに関するさまざまな影響を及ぼすサイバー攻撃の脅威が高まっており、事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、情報を正しく管理し、漏洩や紛失を未然防止する対策、およびセキュリティインシデント発生時に影響を最小限に抑える対策を講じておりますが、情報セキュリティを経営問題と捉え、ますます高まる情報セキュリティの脅威に対応してまいります。
当社グループでは、プラント、研究開発、オフィス、サプライチェーンマネジメントのそれぞれの領域において、IoT、AI、MIやRPAなどのデジタル技術を積極的に活用し、業務プロセスの飛躍的な生産性向上、既存事業の競争力確保、新たなビジネスモデルの実現に取り組んでおります。しかしながら、デジタル技術の適用が著しく遅延した場合や、他社がデジタル技術を活用して生産性や競争力を向上させる、あるいは新たなビジネスモデルを創造するなど事業環境の急変により、当社グループの競争力が相対的に低下することで経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、コンプライアンスを企業経営の根幹と位置づけ、当社コンプライアンス委員会の指導・監督の下、グループ全体でのコンプライアンス推進体制を構築・運用しております。また、当社コンプライアンス委員会傘下の地域法務・コンプライアンス統括(RLCO)からのグループ会社に対する指導・支援を強化するなど、グループ全体でのコンプライアンスの徹底に注力しております。しかしながら、このような施策を講じても、コンプライアンス上のリスクを完全には排除することはできない可能性があり、国内外の法令等に抵触するなどのコンプライアンス違反が発生した場合には、当社グループの社会的な信用が低下し、また損害賠償責任や罰金が課されるなど、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業展開する各国の規制に従い、業務を遂行しております。将来における法律、規則、政策、実務慣行、解釈およびその他の政策変更ならびにそれらによって発生する事態が、当社グループの業務遂行や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、将来的に環境および化学品安全等に対する法的規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性があります。
当社グループは、人権尊重を事業継続のための基盤の一つと位置付けており、「住友化学グループ 人権の尊重に関する基本方針」を制定するとともに、推進体制として「人権尊重推進委員会」を設置し、人権デュー・ディリジェンスなどの人権尊重の取り組みをグループ一体となって行っております。しかしながら、このような施策を講じても、人権問題に関するリスクを完全には排除することができない可能性があり、当社グループのバリューチェーン上で人権問題が発生した場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、他社と差別化できる技術とノウハウを蓄積し事業の競争力を強化してきましたが、当社グループ独自の技術・製品とノウハウの一部は、厳正な管理を行っているものの、予期せぬ事態により外部に流出する可能性に加え、特定の地域ではこれらの知的財産の完全な保護が不可能なため、第三者が当社グループの知的財産を使用して類似製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また、将来的に知的財産に係る紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされる可能性があります。
世界的な感染症の流行が発生した場合、当社グループの事業運営や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループはこのようなグループ全体に影響を及ぼすリスクに対し、リスク・クライシスマネジメント委員会を設置し、対処方針を審議しております。また、グループ全体で事業継続計画を策定しており、感染状況の段階に応じた事業運営を行うこととしております。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、上期を中心に自動車関連などの事業分野で一定の影響を受けたものの、その影響は当連結会計年度末にかけて緩やかに減少しました。翌連結会計年度以降の当社グループの業績への影響は限定的と考えておりますが、今後の感染拡大の状況によっては当社グループの経営成績ならびに財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、従業員の安全確保を図った上で、引き続き供給責任を果たすべく最大限の努力を尽くしてまいります。
当社グループは、国内および海外事業に関連して、訴訟、係争、その他の法律的手続きの対象となるリスクがあり、将来重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に重要な悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り、判断および仮定を行っておりますが、実際の結果は、見積りおよび仮定に関する不確実性があるために、翌連結会計年度に係る連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの財政状態または経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積り、判断および仮定は、以下のとおりであります。
・非金融資産の減損
有形固定資産、のれん及び無形資産の減損テストにおいて、資金生成単位を判別したうえで、当該資金生成単位における使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか高い方を回収可能価額として測定しております。当該処分コスト控除後の公正価値算定上の仮定、あるいは使用価値算定の基礎となる資金生成単位の使用期間中および使用後の処分により見込まれる将来キャッシュ・フロー、割引率等の仮定は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、有形固定資産、のれん及び無形資産に係る減損損失額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産については、将来減算一時差異等を利用できる将来課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しております。当該回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて決定した将来の各事業年度の課税所得の見積りを前提としております。当該将来の課税所得の見積りは、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、繰延税金資産の計上額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・引当金の測定
引当金は、将来において債務の決済に要すると見込まれるキャッシュ・フローの期末日における最善の見積りに基づいて測定しております。将来において債務の決済に要すると見込まれるキャッシュ・フローは、将来の起こりうる結果を総合的に勘案して算定しております。これら引当金の測定において使用される仮定は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、引当金の測定額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・金融商品の公正価値
特定の金融商品の公正価値を評価する際に、市場で観察可能ではないインプットを利用する評価技法を用いております。当該観察不能インプットは、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の拡大により、上期を中心に自動車関連などの事業分野で一定の影響を受けたものの、その影響は当連結会計年度末にかけて緩やかに減少しました。新型コロナウイルス感染症の収束時期は見通せないものの、翌連結会計年度以降の当社グループの業績等への影響は限定的との仮定を置いて、会計上の見積りを行っております。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により深刻な打撃を受け、実質GDP成長率はマイナス3%程度に落ち込みました。
国内経済についても、2020年4~6月期の実質GDPが戦後最悪のマイナス成長を記録する中、昨年後半には一部の分野で持ち直しの兆しが見られたものの、昨年末からの急速な感染拡大が追い打ちとなるなど、総じて厳しい事業環境となりました。
このような中、当社グループは、「次世代事業の創出加速」、「デジタル革新による生産性の向上」、「事業ポートフォリオの高度化」、「強靭な財務体質の実現」等を基本方針とする中期経営計画(2019年度~2021年度)に基づき、生産性の飛躍的向上とイノベーションの加速により、サステナブルな社会の実現と当社グループの持続的な成長を目指すべく、全社を挙げて取り組んでまいりました。
この結果、当社グループの当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度の2兆2,258億円に比べ612億円増加し、2兆2,870億円となりました。
コア営業利益は1,476億円となり前連結会計年度を上回りましたが、営業利益は1,371億円となり前連結会計年度と同水準になりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は460億円となり、前連結会計年度を上回りました。
売上収益は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴う経済活動の落ち込みにより、石油化学およびエネルギー・機能材料において自動車関連用途を中心に出荷が減少したことに加え、石油化学における原料価格の下落に伴う市況下落の影響等がありましたが、健康・農業関連事業、情報電子化学および医薬品において出荷が増加したため、前連結会計年度の2兆2,258億円に比べ612億円増加し、2兆2,870億円となりました。

コア営業利益は、石油化学およびエネルギー・機能材料において自動車関連用途を中心に出荷が減少したことに加え、持分法適用会社であるペトロ・ラービグ社の定期修繕や医薬品における販売費及び一般管理費や研究開発費の増加の影響がありました。一方、医薬品、情報電子化学および健康・農業関連事業の出荷が増加した結果、コア営業利益は、前連結会計年度の1,327億円に比べ150億円増加し1,476億円となりました。

金融収益及び金融費用は、前連結会計年度の70億円の損失に比べ77億円改善し、7億円の利益となりました。当連結会計年度末にかけて円安で推移し、為替差益を計上した結果、税引前利益は、前連結会計年度の1,305億円に比べ73億円増加し、1,378億円となりました。
(法人所得税費用/親会社の所有者に帰属する当期利益及び非支配持分に帰属する当期利益)
法人所得税費用は697億円となり、税引前利益に対する税効果適用後の法人所得税費用の負担率は、50.6%となりました。
以上の結果、当期利益は、681億円となりました。
非支配持分に帰属する当期利益は、主として大日本住友製薬などの連結子会社の非支配持分に帰属する利益からなり、前連結会計年度の235億円に比べ14億円減少し、220億円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度の309億円に比べ151億円増加し、460億円となりました。
当連結会計年度のセグメント別の業績の概況は、次のとおりであります。
なお、セグメント利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いて算出したコア営業利益で表示しております。
(石油化学)
(エネルギー・機能材料)
(情報電子化学)
(健康・農業関連事業)
(医薬品)
(その他)
上記5部門以外に、電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務、物性分析・環境分析業務等を行っております。これらの売上収益は前連結会計年度に比べ、17億円増加し511億円となり、コア営業利益は前連結会計年度に比べ40億円増加し128億円となりました。
生産、受注および販売の実績は、次のとおりであります。
当社グループ(当社および連結子会社)の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産製品の規模は小さいため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産の状況については、セグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記販売実績は、外部顧客への売上収益を示しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(3) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ3,362億円増加し、3兆9,903億円となりました。当社によるペトロ・ラービグ社への貸付の実施等により、その他の金融資産が増加しました。また、現金及び現金同等物が増加しました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,466億円増加し、2兆5,081億円となりました。大日本住友製薬における開発および販売提携契約の締結に係る前受収益の増加等により、その他の非流動負債が増加しました。また、有利子負債は、前連結会計年度末に比べ464億円増加し、1兆3,511億円となりました。
資本合計(非支配持分を含む)は、利益剰余金やその他の資本の構成要素が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ895億円増加し、1兆4,821億円となりました。
親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べて0.2ポイント増加し、25.5%となりました。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、大日本住友製薬における開発および販売提携契約の締結による契約一時金の受領や運転資金の改善等により、前連結会計年度に比べ2,685億円増加し、3,745億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、当社によるペトロ・ラービグ社への貸付による支出があり、1,774億円の支出となりました。前連結会計年度には、大日本住友製薬によるロイバント社との戦略的提携に伴う投資の取得による支出や子会社の取得による支出があったため、前連結会計年度に比べ3,223億円支出が減少しました。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度の3,937億円の支出に対して、当連結会計年度は1,971億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、400億円の支出となりました。前連結会計年度には、大日本住友製薬によるロイバント社との戦略的提携の対価の支払いに係るブリッジローンの調達や当社による公募ハイブリッド社債(公募劣後特約付社債)の発行を実施したため、前連結会計年度に比べ4,135億円収入が減少しました。
また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ1,803億円増加し、3,609億円となりました。
当社グループの資金需要には、通常の営業活動に必要となる運転資金や既存設備の定期修理のための資金に加え、中期経営計画(2019~2021年度)の基本方針の一つである「事業ポートフォリオの高度化」を推進するための成長投資に必要となる資金があります。同期間中の設備投資・投融資(意思決定ベース)の金額は、前連結会計年度に実施したロイバント社との戦略的提携やニューファーム社の南米子会社の買収対価の支出により、当初想定を上回る水準となることが見込まれます。成長への目配りもしながら案件を徹底的に厳選するとともに、資産売却やCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)短縮などにより財務体質の改善に努めてまいります。
また、当社グループは株主還元についても、経営上の最重要課題の一つと考えています。各期の業績、配当性向ならびに将来の事業展開に必要な内部留保の水準などを総合的に勘案の上、安定的な配当を継続することを基本とし、中長期的に配当性向30%程度を安定して達成することを目指しています。
当社グループの財務活動の方針は、低利かつ中長期にわたり安定的な資金調達を行うこと、および十分な流動性を確保することです。D/Eレシオ(有利子負債/純資産)については、フレキシブルな資金調達が可能な現在の当社格付を維持することを考慮し、中長期的に0.7倍程度を目安としています。当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入、資本市場における社債およびコマーシャル・ペーパー(当社発行枠1,800億円)の発行等により、必要資金を調達しております。
当社グループは、グループファイナンス等により手元資金の最大活用を図っており、現金及び現金同等物の保有額は事業遂行上必要な水準に維持することを目指しています。当連結会計年度において、当社は新型コロナウイルス感染症による流動性リスクに備えるため通常に比べ高めの水準で手元資金の維持を図りました。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は3,609億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は145.3%であります。
また、大手邦銀のシンジケート団による800億円のコミットメント・ラインおよび大手外銀のシンジケート団による210億円のマルチカレンシー(円・米ドル・ユーロ建)によるコミットメント・ラインを有しており、金融市場の不安定な状況や、新型コロナウイルス感染症の影響を含む事業等のリスクの顕在化などによる突発的な資金需要に備え、手元流動性を確保しております。
(5) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)2019年度~2021年度中期経営計画」に記載のとおりであります。
(注) 1 「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」はIFRSの開示要請に基づくものが含まれます。また、IFRSにより要求されている、関連するその他開示項目は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 40.コミットメント」に記載のとおりです。
2 当連結会計年度において、EPI-743に関する権利を返還しました。
当該契約には、がん領域におけるアメリカ、カナダと一部のアジアを除く地域でのレルゴリクスの販売に関する独占的なオプション権の許諾が含まれております。
(3) ニューファーム社の南米グループ会社の株式取得に関する契約
当社は、ニューファーム社との間で、同社グループが所有するブラジルの子会社1社およびアルゼンチン、チリ、コロンビアの子会社3社の全株式を、それぞれ当社の連結子会社であるスミトモ ケミカル ド ブラジル Representações Ltdaおよびスミトモ ケミカル チリ S.A.を通じて買収すること(以下「本買収」という。)について2019年9月に合意し、2020年4月1日付で本買収が完了いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.企業結合」に記載しております。
当社の連結子会社である大日本住友製薬は、2019年10月にロイバント社と戦略的提携に関する契約を締結し、2019年12月に2,700億円の資金の借入を行ったうえで、本戦略的提携の対価として総額約30億米ドル(約3,300億円)を支払いました。
今般、本戦略的提携のために調達した借入金の返済資金の一部に充当することを目的として、2020年9月10日に総額1,200億円の公募形式によるハイブリッド社債(劣後特約付社債)を発行しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 19.社債及び借入金」に記載しております。
当社グループ(当社および連結子会社)は、事業拡大と収益向上に寄与すべく、独自の優位性ある技術の確立を基本方針とし、各社が独自に研究開発活動を行っているほか、当社グループ全体としての効率性を念頭に置きながら、互いの研究開発部門が密接に連携して共同研究や研究開発業務の受委託等を積極的に推進しております。
当連結会計年度においては、2019年度から2021年度までの中期経営計画に従い、ヘルスケア、食糧、環境負荷低減、ICTの4分野に研究資源を重点投入するとともに、異分野技術融合による新規事業の芽の発掘とその育成に取り組んできました。
これに基づき、当連結会計年度に計上された研究開発費は、前連結会計年度に比べ43億円増加し、
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
石油化学分野では、事業のグローバル競争力強化のために、モノマー製品の触媒・プロセスの改良、合成樹脂の製造プロセスの改良、既存素材の高性能化や新規高付加価値製品の開発に取り組む一方で、環境負荷低減に資する資源循環技術の確立にも注力しております。
当連結会計年度において、プロピレンオキサイド単産法、塩酸酸化、気相法カプロラクタム等の環境負荷低減プロセスに用いる触媒の高性能・長寿命化を目指した改良研究を継続実施しました。ポリエチレン、ポリプロピレンでは、電気自動車(EV)用部材、食品用レトルトパウチ等の各種用途に最適な材料の開発を進めております。資源循環技術では、リサイクルが容易な包装用ポリオレフィン材料として、素材メーカーとして強みを生かした材料設計を駆使し、剛性と耐熱性を単一の樹脂で両立するモノマテリアル包材の開発を推進しております。新製品開発では、蓄熱性能を有する樹脂材料が大手寝具メーカーに採用され、商品化展開で大きな進展が見られましたが、更にその他の繊維用途や住宅建材への適用検討も進めております。また、新型コロナウイルス感染防止対策に貢献する技術として、飛沫防止パーテーションに用いられるアクリル板に抗菌・抗ウイルス機能を付与する開発も進め、早期の製品化を目指しております。
なお、石油化学部門における当連結会計年度の研究開発費は
エネルギー・機能材料分野では、環境・エネルギー関連事業を拡大させるため、リチウムイオン二次電池用部材、スーパーエンジニアリングプラスチックス、無機材料、合成ゴム材料、機能性樹脂材料などの幅広い製品領域で、既存製品の競争力強化や新規製品創出に向けた研究開発に取り組んでおります。
当連結会計年度において、リチウムイオン二次電池用各種部材は、自動車向けを中心に、性能向上の要請や需要拡大に応えるため、開発を鋭意進めました。耐熱セパレータでは、性能向上とコスト削減を両立させる技術開発が進捗し、正極材は独自技術を用いた高容量タイプの開発品の顧客評価が進んでおります。負極塗工やセパレータ塗工に用いられるアルミナについては、当連結会計年度に生産効率を高めた設備が完成し稼働を開始しました。また、2020年4月に開設した京都大学産学共同研究講座「固体型電池システムデザイン」では、固体型電池の実用化に向けた材料および要素技術の開発が進捗しております。
機能樹脂分野では、電気・電子部品分野向けや自動車部材向けにスーパーエンジニアリングプラスチックスの需要が増大しております。ポリエーテルサルホン(PES)では、自動車部材や高機能膜向けの開発・拡販を積極的に進めております。液晶ポリマー(LCP)では、高温耐久性や高剛性を活用した自動車用途向け射出成形材料に加えて、高周波特性に優れたグレードやフィルム用途グレードの開発を進めており、次世代移動通信(5G)用途で顧客採用が進んでおります。
また、無機材料分野では、半導体製造装置等向けの超微粒アルミナの開発を推進し、パイロット設備を用いた工業化検討や試作品の顧客評価を行い、いずれも良好な結果を得ました。強度や耐薬品性に優れるのが特長であり、実プラントへの適応を急ぐ予定です。
なお、エネルギー・機能材料部門における当連結会計年度の研究開発費は
情報電子化学分野では、日本国内に留まらずグローバルな技術・研究開発能力を結集し、IT関連の先端技術進化を支える新規材料・部材・デバイスに関する新製品の開発に、引き続き積極的に取り組んでおります。
まず、ディスプレイ材料分野においては、次世代ディスプレイの主流になりつつあるOLEDパネルに対し、当社独自のキーコンポーネントである「液晶塗布型位相差フィルム」を用いたOLED用偏光フィルムの適用範囲を大型テレビ用途から、中小型モバイル用途まで拡大いたしました。また、次世代端末として注目されているフォルダブルスマートフォンに対し、カバーガラス代替高機能フィルム出荷開始に次いで、折り曲げ特性に優れた「液晶塗布型偏光板」の開発・市場投入を進めております。
半導体材料分野においては、半導体集積度向上という命題に対し、微細加工分野において現在主流の液浸ArFレジストのラインナップ拡充に加え、次世代製品であるEUVレジストや多層配線用厚膜レジストの開発・市場投入を進めております。化合物半導体材料分野においては、高速・大容量通信、省エネ、自動運転等の技術を支え、より高度な社会の実現に貢献すべく、高周波デバイス用各種エピウェハの設計開発を行っております。
IoTの主要構成ツールとして拡大が見込まれるセンシングデバイス分野においても、既に事業確立しているディスプレイ用タッチセンサーのさらなる高機能化や複合化を進めるとともに、薄膜形成を中心とした要素技術を活用し、新規センサーの開発に取り組んでおります。また、モバイル端末等に使用されるイメージセンサー用途に対して、ディスプレイ(光学)・半導体双方の領域で蓄積した技術とノウハウを活用し、高解像度/高感度化に貢献する多様なプロセス材料の開発を行っております。
なお、情報電子化学部門における当連結会計年度の研究開発費は
健康・農業関連事業分野では、世界の食糧増産、健康・衛生や環境の改善といった課題解決を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するため、技術イノベーションが急速に進むIoTやバイオテクノロジー技術を活用し、新製品やアプリケーション、競争力のある製造プロセスの開発に取り組むことで、コア事業の強化と周辺事業への展開および川下化を推進しております。
当連結会計年度において、国内農業関連事業については、新規殺虫剤であるオキサゾスルフィルが農薬登録を取得しました。本剤を含有する水稲用製品の上市に向けて準備を進めております。また、コメ事業においては消費者や生産地のニーズにそって収量性や食味、熟期などで特徴のある新品種の開発を進めるなど、農薬や肥料製品、ならびにコメ品種のポートフォリオの更なる拡充を進めております。さらに、当社が開発した画像診断技術を活用した病害虫画像診断アプリを公開するなど、農業生産者への総合的ソリューションの提供に向けた研究開発を進めております。海外農業関連事業においては、新規殺菌剤であるインディフリンを米国およびカナダで上市しました。引き続き本剤を活用した新用途および新製品の開発を進めております。本剤は、南米における重要病害であるダイズさび病の防除にも有効であり、同地域でも上市に向けて準備を進めております。ニューファーム社南米子会社の買収完了に伴い刷新しました同地域での研究開発体制のもと、本剤を中心とした各種製品開発を加速していきます。また、欧州市場を中心とした展開が期待される当社新規殺菌剤メチルテトラプロールの開発、バイエル社との雑草防除体系の創出プロジェクト(当社が新規除草剤、バイエル社が耐性作物の開発を担当)およびコルテバ・アグリサイエンス社との種子処理技術の開発、商業化プロジェクトにも引き続き取り組んでおります。さらに、当社バイオラショナル事業の拡大を目的とした組織改編を行いました。新体制下で上市に向けて準備を進めております新規農業用植物生長調整剤を含む各種バイオラショナル製品開発を進めることでサステナブルな農業への貢献を一層加速します。
生活環境事業については、重点強化領域の市場セグメントにおける新製品の開発と製品群の拡充を推進しております。引き続き強い市場ニーズのある天然物由来製品に対応すべく、グループ会社と共同で、新規ボタニカル殺虫剤の登録申請に向けたデータ取得を順調に進めております。業務用殺虫剤分野では、アメリカ市場で主要対象害虫の一つであるアリ用の新製品を、インド市場では難防除害虫であるトコジラミ用の新製品を上市し、さらなる製品の開発に取り組んでおります。熱帯感染症対策資材分野では、抵抗性を持つ蚊へ卓効を示す室内残留散布剤の登録国を増やすと同時に、蚊の発生源対策として幼虫防除用新製品の開発・登録を引き続き進めていくことで、長期残効性蚊帳と併せて熱帯感染症を媒介する蚊に対して総合的な防除を可能とする製品拡充に取り組んでおります。また、新たな取り組みとして感染症拡大防止へ向けた天然抽出物由来の抗ウイルス剤の開発も進めております。
アニマルニュートリション事業については、競争力強化のためメチオニンの合理化製法の開発やプロセス改善に加え、機能性飼料添加物分野における製品ラインナップ拡充のため、飼料効率の改善と安心・安全な畜産生産に貢献できる新規製品の開発を一層加速する計画です。また、近年問題となっている家畜排泄物由来の温室効果ガスの低減を目的として、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構や国内大学などとの共同研究プロジェクトに参画し、引き続きメチオニンを含むアミノ酸バランス改善飼料の技術普及を推進しております。
医薬化学品事業については、当社の有機合成プロセスの技術力を駆使したジェネリック原薬の製法開発、および新薬の受託製造品目の拡充に取り組んでおり、有望な複数の開発品・新製品に対して商業生産へ向けた準備を進めております。また、将来の成長が見込まれる核酸医薬原薬の製造において、長鎖RNAを中心にオリゴ核酸のGMP(Good Manufacturing Practice)管理下での生産実績を積むとともに有望な開発品の製造を受託し、競争力のある要素技術の獲得、独自技術の拡張を目的とした研究開発を推進しております。
なお、健康・農業関連事業部門における当連結会計年度の研究開発費は
医薬品分野では、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を研究重点領域とし、また、感染症領域にも取り組み、グローバルヘルスへの貢献を目指し、大日本住友製薬および日本メジフィジックス株式会社が有する自社技術を活かした研究開発に加え、技術ライセンス、ベンチャー企業やアカデミアとの共同研究などによる最先端の外部技術の導入にも取り組み、優れた医薬品の継続的な創製を目指しております。さらに、医薬品以外のヘルスケア領域において、社会課題の解決のための新たなソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業の立ち上げを目指しています。
当連結会計年度においては、精神神経領域で次の進展がありました。①「キンモビ」(一般名:アポモルヒネ塩酸塩水和物) について、2020年5月、米国において成人のパーキンソン病に伴うオフ症状の改善を適応症とした承認を取得し、同年9月に発売しました。②「ロナセン」(一般名:ブロナンセリン)について、2021年3月、日本において統合失調症における小児の用法・用量を追加する一部変更承認を取得しました。本剤は日本で初めての統合失調症の小児適応を持つ非定型抗精神病薬となりました。③SEP-363856について、日本および中国において統合失調症を対象とした国際共同フェーズ2/3試験を開始しました。
がん領域では、①「オルゴビクス」(一般名:レルゴリクス)について、2020年12月に、米国において成人の進行性前立腺がんを適応症とした承認を取得しました。また、2021年3月に、欧州において進行性前立腺がんを対象とした承認申請を行いました。②ナパブカシン(開発コード:BBI608)について、米国、日本等において、結腸直腸がんを対象とした国際共同フェーズ3試験を実施していましたが、同試験の解析結果において主要評価項目を達成しませんでした。この結果を受けて、実施中の臨床試験を順次中止しました。③alvocidib(開発コード:DSP-2033)について、米国において急性骨髄性白血病(AML)を対象としたフェーズ2試験等を実施していましたが、競合状況およびこれまでに得られた知見を踏まえ、これらの試験を中止することにしました。
再生・細胞医薬分野では、引き続き、産学の連携先と、加齢黄斑変性、パーキンソン病、網膜色素変性、脊髄損傷などを対象に、他家iPS細胞を用いた再生・細胞医薬事業を推進します。当連結会計年度の進捗は以下のとおりです。
①デューク大学と連携して開発中のRVT-802について、米国において、小児先天性無胸腺症を対象とした再申請の準備を行いました。(注:2021年4月に、米国において小児先天性無胸腺症を対象とした再申請を行いました。)②他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞について、京都大学において実施されているパーキンソン病を対象とした医師主導治験の4例目から、大日本住友製薬で製造したドパミン神経前駆細胞を提供し、移植されています。③他家iPS細胞由来網膜シートについて、神戸市立神戸アイセンター病院において網膜色素変性に対する臨床研究が開始され、予定されていた全2例に対して、大日本住友製薬が製造した網膜シートが移植されました。
感染症領域では、アカデミアなどとの共同研究により、薬剤耐性菌感染症治療薬ならびに大日本住友製薬のワクチンアジュバントを基盤としたマラリアワクチンおよびユニバーサルインフルエンザワクチン(ほとんどの型のインフルエンザウイルスに対し幅広い効力を持つインフルエンザワクチン)の創薬研究を展開しています。当連結会計年度の進捗は以下のとおりです。①薬剤耐性菌感染症治療薬については、北里研究所との共同研究を推進しました。なお、本共同研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)に係る研究開発課題として採択されており、AMEDからの委託研究開発費を活用しています。②マラリアワクチンについては、愛媛大学とのマラリア発病阻止ワクチンの共同研究ならびに愛媛大学および米国PATHとのマラリア伝搬阻止ワクチンおよびマラリア感染阻止ワクチンの共同研究を推進しました。なお、これら3つのプロジェクトについては、2019年度から3年連続で公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の助成案件に選定されました。③ユニバーサルインフルエンザワクチンについては、医薬基盤・健康・栄養研究所との共同研究を推進しました。
その他の領域では、①「ジェムテサ」(一般名:ビベグロン)について、2020年12月に、米国において成人の切迫性尿失禁、尿意切迫感および頻尿の症状を伴う過活動膀胱(OAB)を適応症とした承認を取得しました。②レルゴリクス配合剤について、2020年5月に、米国において子宮筋腫を対象とした承認申請を行いました。また、子宮内膜症を対象とした2本のフェーズ3試験において良好な解析結果を得ました。③イメグリミン塩酸塩(開発コード:PXL008)について、2020年7月に、日本において2型糖尿病を対象とした承認申請を行いました。
フロンティア事業においては、①2020年6月に、サノビオン ファーマシューティカルズ インコーポレーテッドとBehaVR LLCとの間で、社交不安障害を緩和するVR機器のコンテンツに関する共同研究開発契約を締結しました。②2020年7月に、日本において損害保険ジャパン株式会社および株式会社Aikomiとの間で、認知症・介護関連のデジタル機器の研究開発および事業化に向けた連携を開始しました。③2020年8月に、日本において株式会社Save Medicalとの間で、2型糖尿病管理指導用モバイルアプリケーション(開発コード:SMC-01)の共同開発契約を締結し、フェーズ3試験を開始しました。④2020年10月に、日本においてドローブリッジ・ヘルス・インコーポレーテッドとの間で、生活習慣病を対象とした自動採血・保存機器に関する共同研究開発契約を締結しました。
放射性医薬品については、AMEDによるCiCLE事業の研究開発課題として採択されたセラノスティクス(治療と診断の融合)薬剤開発プロジェクト「CRADLE(Consortium for Radiolabeled Drug Leadership)」を日本メジフィジックス株式会社が中心となって推進しています。初期段階の研究については、高性能コンピュータを駆使したインシリコ創薬技術、iPS細胞などの最先端のサイエンスを取り入れた創薬に取り組んでいます。また、国内外の大学を含む研究機関等との研究提携も積極的に推進しております。
なお、医薬品部門における当連結会計年度の研究開発費は
全社共通およびその他の研究分野においては、上記5事業分野の事業領域を外縁部へ積極拡大するための研究およびマテリアルズ・インフォマティクス等の計算機科学をはじめとする共通基盤技術開発の強化により、ヘルスケア、食糧、環境負荷低減、ICTの重点4分野における次世代事業の創出加速を進め、社会的課題の解決の実現を推進しております。当連結会計年度においては、次の進展がありました。
ヘルスケアおよび食糧分野では、当社の保有技術を活かすことが可能と思われる核酸医薬、機能性食品、体調可視化などの先進医療・予防・診断、食糧の品質・収量向上に関する技術の開発に引き続き取り組んでおります。体調可視化による次世代ヘルスケアプラットフォームの基盤技術を共同開発しておりますイスラエルのナノセント社に、新型コロナウイルス感染症の迅速診断センサー開発のために資金提供いたしました。また、株式会社理研鼎業と共創契約を締結し、同社のライフサイエンス分野およびデータサイエンス分野の知見と当社の技術を融合させることにより、新しい事業の創出を目指しております。
環境負荷低減分野では、炭素循環や温室効果ガス排出削減に関する環境負荷低減の技術開発を加速するために、2020年4月に、複数の研究所に分散していた研究テーマを石油化学品研究所に集約し、約30名体制の「研究グループ(環境負荷低減技術開発)」を新設しました。国立大学法人室蘭工業大学とは、ゼオライト触媒を用いて廃プラスチックを化学的に分解してモノマーに戻すケミカルリサイクル技術の共同開発に取り組んでおります。また、積水化学工業株式会社が開発した“ごみ”を原料としてエタノールを生産する技術と、当社が有するポリオレフィンの製造技術・ノウハウを組み合わせたサーキュラーエコノミーの取り組みも行っております。さらに、二酸化炭素を原料としたメタノールを高効率に合成する実用化に向けて国立大学法人島根大学との共同研究に取り組んでおります。
ICT分野では、当社の高分子有機EL材料が、中型パネル用途において国内外の主要セットメーカーによる認定・採用の動きが活発となり、大型サイズにおいて主要大型パネルメーカーとの間で第8世代以上の大型基板を用いた印刷法パネル量産の共同開発が大きく進捗して実証段階にあります。フランスのイゾルグ社とは、有機光ダイオードを用いた近赤外用高性能カメラに応用可能な有機CMOSイメージセンサーの材料開発をより強化し推進しております。
また、研究開発活動の効率化や大規模データの分析・解析技術の高度化を推進するため、高度なデータ解析技術を持つデータサイエンティストと研究開発や生産プロセスの現場における高度なドメイン知識を持ちながらデータ解析も行えるデータエンジニアの双方の育成にも引き続き取り組んでおります。
さらに、当社の連結子会社であるベーラント バイオサイエンス LLCのバイオラショナルリサーチセンター内に設置された新組織「シンバイオハブ」は、オープンイノベーションはもとより、米欧のイノベーション探索拠点であるコーポレート・ベンチャーリング&イノベーションオフィス(CVI)や、当社のバイオサイエンス研究所、工業化技術研究所などの国内拠点とも連携し、住友化学グループ全体で合成生物学を利用した基盤技術の早期構築を進めております。
なお、全社共通部門における当連結会計年度の研究開発費は
このように、事業拡大および競争力強化を図るべく、新製品・新技術の研究開発および既存製品の高機能化・既存技術の一層の向上に取り組み、各事業分野におきまして着実に成果を挙げつつあります。