文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現時点で入手している情報や合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当社は、別子銅山の煙害という環境問題の克服と農産物の増産を、ともに図ることから誕生した起源を持ちます。創業以来100年以上にわたり、絶えざる技術革新と事業の変革を遂げながら、事業を通じて人々の豊かな生活を支えてまいりました。
住友には「自利利他公私一如」(住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない)という言葉がありますが、当社はその事業精神を体現し、経済価値と社会価値を一体的に創出してまいりました。
近年、気候変動のみならず、生態系保全、健康促進といったサステナビリティの意識が世界中で高まっています。当社はこれを広い意味でのグリーントランスフォーメーション(GX)と定義し、自らの変革と社会への貢献の機会と捉えております。今後、GXの視点で事業ポートフォリオを長期的に変革することで、事業を通じて社会課題の解決に貢献することを目指します。
(2) 2022-24年度中期経営計画
このような考えのもと、当社グループは、2022年度を初年度とする中期経営計画「Change & Innovation with the Power of Chemistry」に取り組んでおり下記の7つの基本方針を掲げております。
ROI志向経営の徹底と全社横断プロジェクトの遂行により、個々の事業の強化や、GXを背景としたポートフォリオの変革、事業の新陳代謝の促進を行い、競争優位性の確立を目指します。

グリーントランスフォーメーション(GX)とデジタルトランスフォーメーション(DX)
当社グループは、最大の強みである事業・技術・地域・人材の多様性と、GXやDXといった環境変化がもたらす成長機会とをかけあわせることで、総合化学の「Power」を最大限に発揮したいと考えております。
GXの大きな流れの一つが、カーボンニュートラルに向けた動きの加速であります。当社は、当社グループのGHG排出量をゼロに近づける「責務」と、炭素資源循環技術・製品を通じて世界の温室効果ガス(GHG)を削減する「貢献」の両面から取り組みを推進しております。まずは2030年までに、LNGへの燃料転換や製造プロセスの徹底的な省エネ・合理化等により当社グループの温室効果ガス(GHG)排出量を2013年度比で50%削減するとともに、新しい技術の開発を進めます。そして2030年以降、その新技術を次々に社会実装していくことで、2050年のカーボンニュートラルを実現したいと考えております。
また、DXの流れは、IoT、5G、AIなど新たな技術により年々その勢いを増しています。当社は、DX戦略1.0で実施してきた研究開発、プラント、サプライチェーンマネジメント、オフィスの4領域における生産性向上の取り組みと並行して、事業特性に応じたDX課題に取り組み、各事業での競争力強化につながるDX戦略2.0、そして新たなビジネスモデルの創出を目指すDX戦略3.0に注力します。

各事業部門の戦略と取り組み
各事業部門における、事業内容と本中期経営計画での主な取り組みは、以下のとおりであります。
(エッセンシャルケミカルズ部門)
エッセンシャルケミカルズ部門は、日本・シンガポール・サウジアラビアに製造拠点を有し、それぞれの拠点の強みを活かして、ポリエチレン・ポリプロピレン・メタアクリル等を製造し、自動車・家電・食品など幅広い産業に供給しております。
日本およびシンガポールの拠点では、顧客の要望を先取りした高付加価値製品を開発するとともに、高品質な製品を安定供給しております。また、これまでアジア市場の優良顧客と長年かけて培ってきた信頼関係も当社グループの大きな強みとなっております。サウジアラビアの拠点では、安価な原燃料を活用し、コスト競争力のある製品を製造しております。
本中期経営計画においては、GXを意識した事業ポートフォリオの変革を図り、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルをはじめとした、カーボンニュートラルの技術の開発を行い、社会実装を加速させます。また、既存事業を高付加価値品へシフトするとともに、日本・シンガポールの生産最適化を行い、カーボンニュートラルを見据えた社外連携にも取り組みます。サウジアラビアでの事業については、いわゆるキャッシュ・カウとして、引き続き安定稼働に努めてまいります。
当連結会計年度の取り組み実績として、使用済み自動車から得られる廃プラスチックを用いたマテリアルリサイクルの事業化に向け、パイロット設備の導入を決定したほか、愛媛工場においてアクリル樹脂のケミカルリサイクル実証設備を稼働させ、循環型社会の実現に向けた取り組みを推進しました。また、MMA事業部を新たに発足させ、日本・シンガポールを一元管理することで、機動的な製造販売体制を確立しました。一方、カプロラクタム事業から撤退する等、事業構造の改善にも取り組んでおります。
(エネルギー・機能材料部門)
エネルギー・機能材料部門は、電池部材やスーパーエンジニアリングプラスチックス等の高機能材料の販売により、エコカー等の環境調和製品の性能向上に貢献するソリューションを提供しております。
世界最高水準の高耐熱性を持つリチウムイオン二次電池用セパレータや、電子部品をはじめ様々な用途に使用されるスーパーエンジニアリングプラスチックス、また高純度アルミナやレゾルシンのように世界トップシェアを維持する製品等、多様化する顧客ニーズを捉えた製品ラインナップと、これらの製品群を生み出す研究開発力や評価・製造・プロセス技術が当社の強みであると考えております。
本中期経営計画においては、電池部材およびスーパーエンジニアリングプラスチックスを成長事業と位置づけ、集中的に資源を投下します。リチウムイオン二次電池用セパレータでは、高安全性、長寿命化等の強みを活かし、多様化する顧客ニーズに対応してまいります。正極材では、生産性が高い焼成プロセスの事業化を目指します。一方、低採算事業については、縮小・撤退も視野に方向性を見極めてまいります。また、次世代事業として、固体型電池や分離膜等の新規技術の開発促進に取り組みます。
当連結会計年度の取り組み実績として、愛媛工場において、高純度アルミナの新規高性能グレード品の新設備の建設に着手しました。また、5GやEVの普及等を背景に需要が拡大しているLCPについて、愛媛工場での生産能力増強を進めております。いずれも2023年度中に稼働を開始する予定であります。また、京都大学との産学共同講座において「柔固体」型電池の共同開発に成功し、安全性の高い固体型電池の早期実用化に向けて大きく前進しました。
一方、今後の安定的な収益確保が難しいことから、大阪工場にある染料の製造設備を停止し、当事業から撤退しました。さらに、シンガポールのS-SBR事業からの撤退を決定したほか、千葉工場のEPDM事業も生産を終了し、2023年度に撤退予定であります。競争力のある分野に経営資源を振り向け、事業のポートフォリオ高度化を図ります。
(情報電子化学部門)
情報電子化学部門では、高機能なディスプレイ関連材料や高品質な半導体材料を提供することで、ディスプレイや半導体の性能および生産性の向上に貢献しております。
当社グループはこれまで、マーケットインのグローバルサプライチェーン構築に努め、製品の開発・供給に活かしてまいりました。こうした開発供給体制に加え、総合化学メーカーならではの複数の素材や技術の組み合わせによる、高付加価値製品を提供することが可能です。また、ディスプレイ・半導体双方の領域における技術や品質対応により蓄積してきたノウハウを駆使し、境界領域の製品を開発できることも当社の強みとなっています。
本中期経営計画においては、ディスプレイ関連材料事業では、当社核心技術を活かした有機ELディスプレイ向け材料等の高付加価値品比率をさらに高めつつ、次世代ディスプレイ向け材料の開発・上市に取り組みます。
半導体関連材料事業では、シリコン半導体向けに、拡大する需要を確実に取り込みつつ、顧客プロセスの革新に応える先端材料の開発・拡販を進めます。また、化合物半導体向けに、省エネ等社会課題解決に貢献する次世代パワーデバイス材料の事業化を目指します。
また、新規事業開拓のため、社外とも積極的に連携しながら、次世代高速通信や高感度イメージセンサーに対応した材料等の開発に注力します。
当連結会計年度の取り組み実績として、米国に半導体用プロセスケミカルの新工場を建設することを決定しました。同事業の米国市場における戦略的な拠点として、旺盛な需要を確実に取り込み、事業拡大を目指します。新工場の稼働開始は、2024年度を予定しております。半導体用プロセスケミカルの生産体制をグローバルに拡充し、高品質な製品を安定供給することにより、スマート社会やスマートモビリティの実現に貢献してまいります。
(健康・農業関連事業部門)
健康・農業関連事業部門では、特長ある農薬・農業資材やメチオニン(飼料添加物)、医薬品原薬等をグローバルに提供することで、食糧の生産性向上や人々の健康促進等に寄与しております。
当社グループは、自社開発の優れた化学農薬に加え、バイオラショナルやポストハーベストなど高いシェアを持つユニークな農薬や農業資材を品揃えし、グローバルに販売しております。当社グループの農薬事業の強みは、特長ある農薬の品揃えとそれを生み出す研究開発力、グローバルな販売網であります。また、メチオニン事業では、高い生産技術を活かし、製品を原料から一貫生産し安定供給しております。
本中期経営計画においては、当社グループが強みを持つバイオラショナル・ボタニカル事業においては、引き続き、各地域での更なる事業拡大およびグローバルな製販研の機能強化に取り組みます。化学農薬の製品群については、インディフリン等の大型新規剤の販売最大化に注力するとともに、より環境負荷低減効果を重視した製品の開発・上市に取り組んでまいります。また、南米での事業買収等により拡大したサプライチェーンを強化するとともに、投資成果を着実に回収し資本効率の向上を目指します。研究開発では、強みのある事業領域に重点的に資源を投入し、オープンイノベーション等も積極的に活用してまいります。
当連結会計年度の取り組み実績として、世界最大の大豆生産国であるブラジルにおいて、新規有効成分インディフリンを含む大豆用殺菌剤エクスカリア マックスの農薬登録を取得し、本格的に販売を開始しました。世界最大の農薬市場である南米地域にて、今後さらに本剤の販売を拡大してまいります。また、バイオラショナル事業においては、研究所の拡張や米国工場の増強に加えて、米国に新組織を設立して一部の顧客に対して直接販売を行うなど、製販研の各機能を強化しました。さらに、天然物由来の農業資材であるバイオスティミュラントを手掛ける米国のFBサイエンス ホールディングス インコーポレーテッド(以下「FBサイエンス社」という。)の買収をきっかけに、この分野にも本格的に参入しており、今後も事業拡大を進めてまいります。
(医薬品部門)
医薬品部門では、医療用医薬品や診断用医薬品等の開発・販売を行うことで、人々の健康で豊かな暮らしを支えております。現在、医療用医薬品は住友ファーマ株式会社(以下「住友ファーマ」という。)、診断用医薬品は日本メジフィジックス株式会社(いずれも当社の連結子会社)で事業を展開しております。
住友ファーマでは、ラツーダの米国での独占販売期間終了後の再成長および「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー」の地位確立に向けた足場を築く期間として、持続的な成長を支える収益基盤の確立ならびに自社起源のイノベーションを事業として結実させるための研究開発に取り組み、事業構造の転換を図っております。同時に、米国グループ会社の再編を契機にグループ経営体制を再編し、しなやかで効率的な経営基盤への変革に取り組んでまいります。日本メジフィジックス株式会社は、核医学という極めて専門性の高い医療分野における日本のリーディングカンパニーとして、新たな診断薬の開発に取り組んでおります。
本中期経営計画においては、ラツーダの北米における独占販売期間終了後の収益基盤確立が最優先課題であります。オルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)を基幹3製品と位置づけラツーダを上回る販売を目指すとともに、他社との提携や適応症の拡大など剤のポテンシャルの最大化を図ります。また、中長期的な成長を見据え、精神神経領域の新製品の創出や再生・細胞医薬品等にも注力し、成長が見込まれるCDMO事業(製法開発・製造等の受託事業)も一層強化してまいります。
当連結会計年度の取り組み実績として、住友ファーマの連結子会社であるマイオバント サイエンシズ リミテッド(以下「マイオバント社」という。)がファイザー社と提携して取り組む子宮筋腫治療剤マイフェンブリーについて、子宮内膜症への適応追加承認を米国で取得しました。また、そのマイオバント社を完全子会社化することで、収益基盤の強化と経営スピードの加速を図りました。同社が扱うオルゴビクス、マイフェンブリーを今後の成長エンジンの一つとして、米国でのさらなる販売拡大に取り組んでまいります。
事業環境及び今後の業績の見通しについて
(2022年度実績)
中期経営計画の初年度である2022年度は、新型コロナウイルス感染症やロシアによるウクライナ侵攻を背景とする経済の低迷、それらに端を発した世界的な需要減退、原燃料価格の上昇等、当社の事業環境に想定を超える多くの逆風が吹いた結果、コア営業利益は928億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は70億円という厳しい水準に留まりました。
(2023年度以降の見通し)
2023年度の業績は、エッセンシャルケミカルズ部門での石油化学品市況が最悪期を脱することや、健康・農業関連事業部門での農薬の販売拡大等の効果による増益要因はあるものの、医薬品部門におけるラツーダの独占販売期間終了の影響が大きく、コア営業利益は400億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は100億円と、引き続き低水準に留まる見込みです。しかしながら、2024年度に向けては、医薬品の基幹3製品(オルゴビクス、マイフェンブリー、ジェムテサ)を含む複数の成長ドライバーの販売伸長や、低収益事業の再編・撤退等により事業ポートフォリオ高度化を進めることで、コア営業利益2,000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1,000億円を目指します。
中長期的には、ROE10%以上、ROI7%以上、D/Eレシオ(有利子負債/純資産)0.7倍程度等の財務指標を安定的に達成することを目指します。当社の財務KPIであるROE10%は、事業を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するという考えのもと、社会課題の解決に重要な貢献ができると判断した事業を一定の収益性が見込める限り実施していくという方針に基づき設定したものであります。またROIについては、WACC(加重平均資本コスト)を上回るレベルを求め、7%をハードルとしております。D/Eレシオについては、フレキシブルな資金調達が可能な現在の当社格付を維持することを考慮し、0.7倍程度を目安としております。

■2022-24年度業績予想及び計画

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①ガバナンス
当社は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載の企業統治の体制を採用しております。この体制において、当社グループの経営に関わる重要事項について、広範囲かつ多様な見地から審議する会議・委員会を設置することで、業務執行や監督機能等の充実を図っており、サステナビリティに関しては、「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。
当社グループは、住友の事業精神、経営理念に基づき、サステナビリティの推進、すなわち「事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献するとともに、自らの持続的な成長を実現する」ために、サステナビリティ推進基本原則を定め、これに沿って取り組みを進めております。
サステナビリティ推進委員会は、グループの取り組みを総合的に把握し、サステナビリティへの貢献を俯瞰的に検証し、社会課題解決への統合的な取り組みを加速させることを目的として、とりまく状況を踏まえ、課題や取り組みの方向性について審議するとともに、取り組みの具体化に向けて各執行機関に必要な指示・提言を行っております。年2回の会議を開催している同委員会では、委員長である社長の下、各事業部門統括役員・コーポレート部門統轄役員・海外地域統括会社社長を委員として任命しつつ、さらに、社外取締役・社外監査役も毎回参加して活発な議論を展開しております。
サステナビリティ推進委員会 体制図 2023年3月31日現在

2023年4月1日付で、事務局に経理部が加わっております。
(関連する他の主要会議・委員会)
・経営会議
サステナビリティに関連した事項を含む、経営戦略や設備投資など重要事項の審議
・レスポンシブル・ケア委員会
気候変動など環境関連課題への対応を含む、レスポンシブル・ケア活動に関する年度方針や中期計画、具体的施策の策定、実績に関する分析および評価
・カーボンニュートラル戦略審議会
2050年カーボンニュートラル実現に向けたグランドデザインの立案・審議および推進
・リスク・クライシスマネジメント委員会
地震災害や異常気象による風水害、パンデミック、治安悪化等、個別のリスク・クライシスの対処方針等を審議
・人権尊重推進委員会
グループ全体に向けた人権尊重に関する啓発の実施、バリューチェーン全体における人権尊重のための施策の立案と実行
②リスク管理
当社では、当社グループの各組織がその本来業務の一部として、自らの業務遂行上のリスクを適切に管理するためにさまざまな対策を講じております。それに加えて、各種の会議体が連携して、当社グループのリスクマネジメントを推進しております。
詳細は、「
リスクマネジメント推進体制図

③戦略
当社は、当社グループのサステナビリティの推進を「事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献するとともに、自らの持続的な成長を実現すること」と定義し、その達成を通じて企業価値の向上に取り組むこととしております。経済価値と社会価値をともに創出していく、すなわち「自利利他 公私一如」の実現を目指すことで、企業価値の向上を図ります。
そうした持続的な価値創出のため、経営として取り組む重要課題を特定するとともに、これらの重要課題を中期経営計画へと落とし込み、さまざまな施策を遂行しております。
(重要課題の特定プロセス)

(経営として取り組む重要課題)
当社グループでは、経営として取り組む重要課題を、大分類として「社会価値創出に関する重要課題」、「将来の価値創造に向けた重要課題」、「事業継続のための基盤」の3つに整理しております。
その上で、環境・食糧・ヘルスケア・ICT関連の4分野への貢献を、「社会価値創出に関する重要課題」として特定するとともに、イノベーションの推進、DXによる競争力強化、および人材(DE&I、育成・成長、健康)を、「将来の価値創造に向けた重要課題」に位置づけました。また、当社がかねてよりグループを挙げて進めてきた、労働安全衛生・保安防災、製品安全・品質保証、人権尊重、サイバーセキュリティ、コンプライアンス、および腐敗防止を、「事業継続のための基盤」として引き続き取り組むこととしております。

④指標及び目標
当社は「経営として取り組む重要課題」のそれぞれについて、主要取り組み指標「KPI」を設定しております。これらのKPIを活用して取り組みの進捗状況の管理と開示を進めるとともに、社内外のステークホルダーとの対話を推進し、取り組みの充実と加速につなげてまいります。各KPIの詳細については、
経営として取り組む重要課題とKPI
気候変動対応に関連し、当社は、2017年6月にTCFD提言が公表されると同時にその支持を表明しました。同提言の4つの開示項目「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標及び目標」に沿った当社グループの気候変動問題への取り組みは以下のとおりであります。
①ガバナンス
「(1) サステナビリティ全般 ①ガバナンス」に記載の枠組みにおきまして、気候変動については特に以下の体制で対応を行っております。

②リスク管理
当社では、持続的な成長を実現するため、事業目的の達成を阻害する恐れのあるさまざまなリスクを早期発見し、適切に対応していくとともに、リスクが顕在化した際に迅速かつ適切に対処すべく、リスクマネジメントに関わる体制の整備・充実に努めております。気候変動問題は、その発生の可能性と影響度の観点からの評価等を通じて、当社グループの中長期的な主要リスクの一つとして位置付けられており、グループ全体のリスク管理プロセスに統合されております。
③戦略
当社は、「経営として取り組む重要課題」の一つとして掲げている環境分野への貢献の中に「気候変動の緩和と適応」を明記しており、2021年12月、2050年のカーボンニュートラル実現に向けたグランドデザインを策定しました。「責務」(当社グループの温室効果ガス(GHG)排出量をゼロに近づける)と「貢献」(当社グループの製品・技術を通じて世界のGHGを削減する)の両面から気候変動への取り組みを推進しております。
(カーボンニュートラル実現に向けた投資)
2019年度から、社会全体のカーボンニュートラルの実現に貢献すべく、個別の投資案件についてGHG排出量の増減が見込まれる場合、インターナルカーボンプライス(1トン当たり 10,000円)を反映した経済性指標を算出し、投資判断を実施しております。
(投資規模)
2013年度から2021年度までに、約800億円のカーボンニュートラル関連投資を実施または意思決定しました。今後、2030年度にかけて約1,200億円の投資を検討予定であり、合計で約2,000億円規模の投資を想定しております。
(「責務」に関する具体的な取り組み)
・千葉工場、愛媛工場の再構築 (エチレンプラント停止、液相法カプロラクタムプラント停止等)
・製造プロセスの徹底的な省エネ・合理化(Best Available Technology(BAT)活用)
・燃料転換(LNG導入等:愛媛工場・千葉工場)
・再エネ電力の導入推進
・CO2以外のGHG排出量の削減
(「貢献」に関する具体的な取り組み)
・製品のカーボンフットプリント計算ツールの普及(無償提供)
・炭素資源循環システムの構築
・カーボンネガティブへの挑戦
・その他の炭素資源循環に関する技術・製品の開発
シナリオ分析や、その他の気候関連情報については、
④指標及び目標
(気候関連のリスクに対する指標)
気候関連のリスクに対する指標として、総合化学企業として世界で初めてScience Based Target(SBT)に認定されたGHG排出削減目標を活用しております。当社グループ※1の2030年のGHG排出量(Scope1+2)の削減目標は50%※2で、2021年12月にSBTのWell Below2.0℃基準の認定を取得しております。2030年までは、既存プラントの製造プロセスにおける徹底した省エネや燃料転換と、現時点で利用可能な最善の技術(BAT)の活用による目標達成を目指します。一方、2050年のネットゼロに向けては、既存技術のみでの対応は難しく、カーボンネガティブやCCUS※3など、革新的な技術が必要になります。この開発と早期の実装を目指し、検討を進めてまいります。
※1:住友化学+国内外の連結子会社
※2:2013年度比
※3:工場等から排出されたCO2の回収・有効利用・貯留
(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)

2023年3月期のGHG排出量(Scope1+2)は、
(参考)2021年度エネルギー消費量およびGHG排出量
GHG排出量をGHGプロトコルに基づいて算定し、連結売上高99.8%以内の主要な連結子会社を対象範囲として算出しております。
GHG排出量
(千トン-CO2e)
(気候関連の機会に対する指標)
気候関連の機会に対する指標として、Sumika Sustainable Solutions(SSS)を活用しております。SSSとは、気候変動対応、環境負荷低減、資源有効利用の分野で貢献するグループの製品・技術を自社で認定し、その開発や普及を促進する取り組みであります。2021年度までに認定製品の売上収益を5,600億円とすることを目標としてまいりましたが、これを達成しました。そして新たに、2030年度の目標を2021年度比2倍以上となる1兆2,000億円に設定しました。なお、2022年度の売上収益は6,828億円であります。

①戦略
100年余の歴史を有する当社は、これまで一貫して「人こそ最重要の経営資源」という考えを堅持し、「人材確保」「公平な処遇」「育成・成長」の3要素を変わらぬ人事理念として継続しております。この人事理念のもと、当社グループでは、「経営として取り組む重要課題」の一つに「人材:DE&I、育成・成長、健康」を掲げ、将来の価値創造に向け人材戦略を展開しております。
(人事制度体系)
当社の人事制度では、各人の役割や責任の大きさおよび達成した実績と、その過程で発揮した能力や行動とを合わせて成績評価することとしております。本制度によって、意欲と能力がある社員は早期に上位の役割にチャレンジすることが可能となり、社員の「成長したい」という自発的な意欲の醸成を図っております。
また、海外グループ会社のマネージャー以上の層を対象に住友化学本体管理社員と共通の人事制度を導入し、企業理念に基づいた価値観の共有をはじめ、育成・成長ならびに活躍機会の提供を推進しております。
人事制度の理念・狙い

(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I))
当社グループは、「DE&I推進に関するグループ基本原則」に基づき、女性、外国人、経験者採用者(中途採用者)をはじめとした多様な従業員の個性や属性の違いを尊重し、それを活かすことができる組織風土を醸成するために国内外グループ各社と連携してDE&Iを推進しております。
また、当社は、ノーマライゼーションの社会の実現に向けて、障がい者雇用に取り組んでおります。2017年には、障がい者の社会参画を支援し、勤労意欲のある障がい者の雇用機会を提供するために、株式会社住化パートナーズを設立しました。今後も引き続き、障がいのある人が活躍できる環境を、当社・住化パートナーズ一体となって提供してまいります。
(人材の育成・成長)
当社は、「育成と成長」を基本理念とする人事制度に則り、多様な能力・資質を有する人材の育成に向けた教育体系を構築しております。2022年度より、年齢や職種等に関わらず、従業員が必要な時に必要なタイミングで知識・スキルのアップデートを行えるよう「SUMIKA ラーニング・スクエア」と称して、学びのプラットフォームを整備し、自律的・自発的な「学び」を支援しております。また、ポジションや役割に応じ、階層別のマネジメント強化プログラムや、グローバルビジネス展開に対応した語学力向上等、ステップワイズな研修体系を整えております。
(健康)
社員が心身ともに健康な生活を送り豊かな人生を実現できるよう、社員の健康課題の解決・改善に向けた様々な支援施策を推進しております。
また、各種健康支援施策を推進するにあたっては、取締役会や経営会議において、その取り組みの方向性について機会を捉えて議論するとともに、毎年開催する産業医連絡会において、全社統括産業医や各事業所の産業医が議論し、全社施策や目標の設定への意見をいただくなど各施策の有効性を高める体制・仕組みとしております。
このような体制の下、当社では、「すみか『こうします』宣言」のなかの一つであり、会社・健康保険組合共同で策定した「すみか健康社員宣言」において、歩行習慣の定着を目的としたウォーキングイベントの開催や、運動習慣の定着を目的とした提携スポーツジムの拡充、睡眠改善のためのプログラム、禁煙を目指す社員へのサポート等、「食事」「運動」「睡眠」「禁煙」「こころ」の5分野で、具体的なアクションアイテムに取り組んでおります。
②指標及び目標
「経営として取り組む重要課題」として「人材:DE&I、育成・成長、健康」を掲げ、各国・各社でそれぞれの環境に応じたKPIを設定し、グループ全体で取り組みを進めております。
(当社の「人材:DE&I、育成・成長、健康」のKPI)
(i) ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)
当社は、2022年度までのKPIとして「課長相当職以上の女性社員の割合」「男性社員の育児休業取得率」を掲げ、実績を大きく向上させてまいりました。
実績(2016~2022年度):
・「課長相当職以上の女性社員の割合」 4.5%(2016年度)⇒ 9.5%(2022年度)
・「男性社員の育児休業取得率(※)」 25.3%(2016年度)⇒ 77.4%(2022年度)
※当年度子が生まれた社員のうち、当年度中に取得をした者
2023年度以降の新KPIについては、採用、育成、昇進、環境整備等、一連の女性活躍推進施策の進捗をトータルに反映しうるものとして「管理社員への登用率」に焦点をあてる等、以下2項目を設定、DE&I推進の取り組みをさらに加速させてまいります。
(参考)
・ 住友化学本体の部長職と海外グループ会社幹部人材の合計に占める、外国人幹部人材の割合は、2023年4月時点で20.9%となっております。
・ 経験者採用者(中途採用者)の管理職比率は、2023年4月時点で27.1%となっております。
・ 障がい者雇用率は、2022年6月時点で2.54%となっております。
(ⅱ) 育成・成長
自らが学び、成長していくことを促進するため、「いつでも、どこでも、何度でも」をコンセプトに、自ら選択し、受講できる研修プログラムを提供しております。
実績(2022年度): 24.6%
(ⅲ) 健康
実績(2023年3月): 2017年度から6年連続で認定継続

事業等のリスクのうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると当社グループが認識している主要なリスクを以下に記載しております。ただし投資家の判断に影響を及ぼす可能性のあるリスクは、これらに限定されるものではありません。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループではこのようなリスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすためのリスク管理体制の整備・充実に努めております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 (ハ)リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。
当社グループは、総合化学メーカーとして様々な事業を行っており、事業に関わるリスクは多種多様であります。事業に係る市場リスクについては、主に以下のようなものがあります。
(価格競争)
当社グループの事業は価格競争に晒されております。海外企業の国内市場参入、関税引き下げ等による輸入品の流入、ジェネリック品の台頭等、様々な理由により当社グループの製品群は今後も厳しい価格競争に晒されるものと予想されます。当社グループはコストの低減に努めておりますが、価格競争を克服できない場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、当社グループの保有する有形固定資産等について減損損失が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
経営環境の著しい悪化等による将来の課税所得に関する予測・仮定の変更や税制改正による税率変更等により繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(海外マーケット)
当社グループの海外売上収益は売上収益の6割以上を占め、特にアジア市場での販売が多く、近年では南米等でも事業を拡大しております。そのため、特定の地域での経済情勢の悪化、あるいは顧客企業の業績状況の変化等による値下げ要求が発生した場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(エッセンシャルケミカルズ)
エッセンシャルケミカルズ部門の主要原料であるナフサは、中東地域の治安や世界の経済情勢に多大な影響を受け、時に急激な価格変動を起こすことがあります。ナフサの価格が急激に上昇した場合、製品価格への転嫁が遅れること等により、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
ナフサやその他の原料品の一部については、特定の地域や購入先に依存しております。購入先を複数にする等、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めておりますが、時に主要原料の不足が生じないという保証はありません。必要な主要原料が確保できない場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(エネルギー・機能材料)
エネルギー・機能材料部門では、電気自動車(EV)用途を中心に、リチウムイオン二次電池部材を供給しておりますが、各国におけるEV優遇政策の転換により市場が減退した場合、また技術革新により次世代の電池が主流となり、かつ当社グループがこれに対応できなかった場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(情報電子化学)
情報電子化学部門の製品は、技術革新のスピードが速く、タイムリーに新製品を開発・提供していく必要があります。当社グループが顧客ニーズを満足させる新規製品を有効に開発できない場合、また他社において画期的な技術革新がなされた場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(健康・農業関連事業)
健康・農業関連事業部門の農薬や家庭用殺虫剤の出荷は、世界各地域における異常気象等の理由による作物の生育状況や病害虫の発生状況に左右されます。また、飼料添加物は急激な価格変動を起こすことがあります。作物の生育状況が悪くなった場合、病害虫の発生が少なくなった場合、あるいは急激な価格変動が起こった場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(医薬品)
医薬品部門では、新薬開発の難度が高まる中、開発が今後計画どおりに進み承認・発売に至るとは限らず、また、有効性や安全性の観点から開発が遅延し、または開発を中止しなければならない事態も起こり得ます。そのような事態が発生した場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
国内においては、急速に進展する少子高齢化等により国家財政が悪化する中、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進等の医療費抑制策が図られ、さらなる医療制度改革の議論が続けられております。また、米国においても薬価抑制を企図した制度改革が決定・導入される可能性があり、中国においても国民医療費抑制を企図する医療制度変更が推進される可能性があります。これら医療制度改革は、その方向性によっては、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(為替レート変動)
当社グループは、国内で製造した製品を海外に輸出するとともに海外から原料品を輸入しておりますが、製品輸出高は原料品輸入高を上回っております。外国通貨に対して円高が進行した場合、海外で生産された製品に対する価格競争力が低下することに加え、輸出手取額の減少が輸入支払額の減少を上回ることになります。さらに、近年では南米やインドなど海外での事業活動の拡大とともに、それぞれの地域の通貨で米ドルやその他通貨に対する為替レートの変動影響も大きくなっています。このようなリスクに対し、為替予約等の通貨ヘッジ取引や、円建輸出取引を行うこと等により、為替レートの短期的な変動によるリスクを最小限にするように努めておりますが、中長期的な為替レートの変動によるリスク等を完全にヘッジすることは出来ないため、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外の関係会社の経営成績は、連結財務諸表作成のために円換算されております。換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
為替レート変動がコア営業利益に与える影響は、米ドルに対して円が1円の円高となった場合、年間15億円程度の減益と試算しております。
(金利変動)
当社グループは、資金需要に対してその内容や財政状態および金融環境を考慮し、調達の金額・期間・方法等を判断しております。今後の金利の変動に備え、固定金利・変動金利を適宜組み合わせて調達を行っておりますが、金利が上昇した場合には支払利息が増加し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(株式相場変動)
当社グループが保有する有価証券の多くは、市場性のある有価証券であるため、株式相場が大幅に下落した場合、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、世界各国に生産・販売の拠点を持ち、海外売上比率は6割を超えております。そのため、貿易摩擦による関税の引き上げ、地域紛争によるサプライチェーン分断等、地政学的問題が発生した場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外における事業活動には法律や規制の変更、労務環境の違いによる争議等の発生、人材の採用と確保の難しさ、テロ・戦争・その他の要因による社会的混乱等のリスクが内在しており、これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社とサウジアラビアン オイル カンパニーが共同で設立したラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニー(以下「ペトロ・ラービグ社」という。)は、サウジアラビアのラービグにおいて、石油精製・石油化学の統合コンプレックス事業(「ラービグ第1期計画」および「ラービグ第2期計画」)を運営しております。当社は、プロジェクト総投資額に対し、不測の事態による損害に備え、独立行政法人日本貿易保険の規約・限度額に従い、海外投資保険等に加入しております。また、ペトロ・ラービグ社の行っている銀行借入の一部に対して、当社は債務保証を行っております。当該保証の履行により、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業拡大や競争力強化等を目的として、国内外において企業買収・資本提携等を実施しておりますが、当社グループおよび出資先企業を取り巻く事業環境の変化等により、当初期待していたシナジー等の買収効果を得られない可能性があります。事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られないと判断された場合、あるいは適用される割引率が高くなった場合にはのれん等の減損損失が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、需要家のニーズに合わせた新技術・新製品をスピーディーに上市するため、積極的に研究開発を行っております。当社グループの研究開発は、次世代事業の創生のための探索研究を含んでいるため研究開発期間が長期間にわたる場合があり、また、研究開発テーマが実用化されず、新製品の開発が著しく遅延または断念される場合には、競争力が低下し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、研究開発現場へのAI/MIの実装とその徹底活用、アカデミアやスタートアップとの連携(オープンイノベーション)強化により研究開発を推進してまいります。
当社グループは、気候変動問題を社会が直面する重要課題の一つと捉えており、その解決に向け、総合化学企業として培ってきた技術力を活かし、気候変動問題に対して、製品の製造工程の合理化等によるさらなる環境負荷低減という責務と温室効果ガス(GHG)削減に資する製品の開発による貢献等に積極的に取り組んでおります。この問題に適切な対応ができない場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、地球規模で私たちの生活に大きな影響を及ぼしている気候変動問題の解決に向け、「責務」と「貢献」の両面から取り組んでまいります。
プラスチックは、自動車や航空機から電子機器、生活用品、各種包装材に至るまで、さまざまな用途に用いられる素材として人々の生活を支えていますが、使用後の適切な処理・再利用が十分に行われていないために環境汚染を引き起こしているという問題があります。この問題に適切な対応ができない場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、技術開発等を通じて、プラスチック資源循環の実現に取り組むことで、循環社会実現後のプラスチック市場において有利な地位に立つ可能性があります。
当社グループは、製造設備の停止や製造設備に起因する事故等による潜在的なリスクを最小化するため、関係法令への対応は勿論のこと、リスクに基づいて、設備の定期的な点検や安全諸施策を、実施しております。しかしながら、リスクは常に一定ではなく、製造設備で発生する事故、台風や地震等の自然災害等による影響を完全に防止・軽減できる保証はありません。
事故等により、工場周辺に物的・人的被害を及ぼした場合、事業活動に支障をきたすほか多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事故・災害に至る可能性のあるリスクについて、適宜、情報共有を図り、対応事項の改善見直しを実施しております。
当社グループは、世界的に認められている厳格な品質管理基準に従って、各種製品を製造しておりますが、すべての製品について欠陥が無く、将来にわたってリコールが発生しないという保証はありません。大規模な製品事故は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、農薬や医薬品等は各国の厳しい審査を受けて承認されておりますが、科学技術の進歩や市販成績が蓄積された結果から、新たに品質問題や副作用が見つかることもあります。このように上市後予期せぬ品質問題や副作用が発見された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
ITの活用を通して、業務の生産性向上や事業の競争力確保、新たなビジネスモデル創出を追求するデジタル革新が加速している一方で情報システムに関するさまざまな影響を及ぼすサイバー攻撃の脅威が高まっており、事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、情報、情報システムおよび情報通信ネットワークを正しく管理し、漏えいや紛失を未然防止する対策、およびセキュリティインシデント発生時の影響を最小限に抑える対策を講じ、サイバーセキュリティを経営課題と捉え、適切に対応してまいります。
当社グループでは、プラント、研究開発、オフィス、サプライチェーンマネジメントのそれぞれの領域において、IoT、AI、MIやRPA等のデジタル技術を積極的に活用し、業務プロセスの飛躍的な生産性向上、既存事業の競争力確保、新たなビジネスモデルの実現に取り組んでおります。しかしながら、デジタル技術の適用が著しく遅延した場合や、他社がデジタル技術を活用して生産性や競争力を向上させる、あるいは新たなビジネスモデルを創造するなど事業環境の急変により、当社グループの競争力が相対的に低下することで経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、コンプライアンスを企業経営の根幹と位置づけ、当社コンプライアンス委員会の指導・監督の下、グループ全体でのコンプライアンス推進体制を構築・運用しております。また、当社コンプライアンス委員会傘下の地域法務・コンプライアンス統括(RLCO)からのグループ会社に対する指導・支援を強化する等、グループ全体でのコンプライアンスの徹底に注力しております。しかしながら、このような施策を講じても、コンプライアンス上のリスクを完全には排除することはできない可能性があり、国内外の法令等に抵触する等のコンプライアンス違反が発生した場合には、当社グループの社会的な信用が低下し、また損害賠償責任や罰金が課される等、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業展開する各国の規制に従い、業務を遂行しております。将来における法律、規則、政策、実務慣行、解釈およびその他の政策変更ならびにそれらによって発生する事態が、当社グループの業務遂行や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、将来的に環境および化学品安全等に対する法的規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性があります。
当社グループは、人権尊重を事業継続のための基盤の一つと位置付けており、「住友化学グループ 人権の尊重に関する基本方針」を制定するとともに、推進体制として「人権尊重推進委員会」を設置し、人権デュー・デリジェンス等の人権尊重の取り組みをグループ一体となって行っております。しかしながら、このような施策を講じても、人権問題に関するリスクを完全には排除することができない可能性があり、当社グループのバリューチェーン上で人権問題が発生した場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、他社と差別化できる技術とノウハウを蓄積し事業の競争力を強化してきましたが、当社グループ独自の技術・製品とノウハウの一部は、厳正な管理を行っているものの、予期せぬ事態により外部に流出する可能性に加え、特定の地域ではこれらの知的財産の完全な保護が不可能なため、第三者が当社グループの知的財産を使用して類似製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また、将来的に知的財産に係る紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされる可能性があります。
世界的な感染症の流行が発生した場合、当社グループの事業運営や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループはこのようなグループ全体に影響を及ぼすリスクに対し、リスク・クライシスマネジメント委員会を設置し、対処方針を審議しております。また、グループ全体で事業継続計画を策定しており、感染状況の段階に応じた事業運営を行うこととしております。
当社グループは、国内および海外事業に関連して、訴訟、係争、その他の法律的手続きの対象となるリスクがあり、将来重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に重要な悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り、判断および仮定を行っておりますが、実際の結果は、見積りおよび仮定に関する不確実性があるために、翌連結会計年度に係る連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの財政状態または経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積り、判断および仮定は、以下のとおりであります。
・非金融資産の減損
有形固定資産、のれん及び無形資産の減損テストにおいて、資金生成単位を判別したうえで、当該資金生成単位における使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか高い方を回収可能価額として測定しております。当該処分コスト控除後の公正価値算定上の仮定、あるいは使用価値算定の基礎となる資金生成単位の使用期間中および使用後の処分により見込まれる将来キャッシュ・フロー、割引率等の仮定は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、有形固定資産、のれん及び無形資産に係る減損損失額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産については、将来減算一時差異等を利用できる将来課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しております。当該回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて決定した将来の各事業年度の課税所得の見積りを前提としております。当該将来の課税所得の見積りは、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、繰延税金資産の計上額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・引当金の測定
引当金は、将来において債務の決済に要すると見込まれるキャッシュ・フローの期末日における最善の見積りに基づいて測定しております。将来において債務の決済に要すると見込まれるキャッシュ・フローは、将来の起こりうる結果を総合的に勘案して算定しております。これら引当金の測定において使用される仮定は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、引当金の測定額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・金融商品の公正価値
特定の金融商品の公正価値を評価する際に、市場で観察可能ではないインプットを利用する評価技法を用いております。当該観察不能インプットは、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響は緩和されたものの、インフレ抑制に向けた世界的な金融引き締めや中国経済の回復の遅れ等が景気の下押し要因となり、成長率は前年を大きく下回りました。また、国内経済についても、個人消費の回復等により景気は持ち直しの動きが見られたものの、世界経済の減速や原材料価格の上昇等により、総じて厳しい事業環境となりました。
この結果、当社グループの当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度に比べ1,300億円増加し、2兆8,953億円となりました。損益面では、コア営業利益は928億円、営業損益は当期に多額の減損損失を計上したことにより310億円の損失となった一方、親会社の所有者に帰属する当期損益は為替相場が円安方向に推移したことによる為替差益の影響もあり70億円の利益となりました。各段階損益ではそれぞれ前連結会計年度を下回る結果となっております。
売上収益は、主にエッセンシャルケミカルズやエネルギー・機能材料において市況が上昇しました。また、健康・農業関連事業において南米での農薬の販売が増加し、各セグメントにおいては円安による在外子会社の邦貨換算差の影響がありました。一方で、エッセンシャルケミカルズやエネルギー・機能材料における需要減少、情報電子における巣ごもり需要の一巡や医薬品におけるラツーダ(非定型抗精神病薬)の米国での独占販売期間終了の影響により出荷が減少しました。
この結果、売上収益は、前連結会計年度の2兆7,653億円に比べ1,300億円増加し、2兆8,953億円となりました。

コア営業利益は、農薬の販売が好調であった健康・農業関連事業を除くすべてのセグメントで損益が悪化しました。中でもエッセンシャルケミカルズにおいてはペトロ・ラービグ社の業績の悪化に加え、原料価格上昇に伴う交易条件の悪化の影響がありました。また、医薬品においてはラツーダの販売減少や前期の提携一時金の収益計上に加え、邦貨換算差等による販売費及び一般管理費の増加や国内での薬価改定の影響がありました。この結果、コア営業利益は、前連結会計年度の2,348億円に比べ1,420億円減少し、928億円となりました。

金融収益及び金融費用は、為替相場が円安で推移し為替差益を計上したことにより、312億円の利益となりました。前連結会計年度の361億円の利益に比べ49億円悪化しました。この結果、税引前利益は、前連結会計年度の2,511億円に比べ2,509億円減少し、2億円となりました。
(法人所得税費用/親会社の所有者に帰属する当期利益及び非支配持分に帰属する当期利益)
法人所得税費用は471億円となり、税引前利益から法人所得税費用を控除した当期利益は、469億円の損失となりました。
非支配持分に帰属する当期損益は、主として住友ファーマ等の連結子会社の非支配持分に帰属する損益からなり、前連結会計年度の243億円の利益に比べ782億円減少し、539億円の損失となりました。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度の1,621億円に比べ1,551億円減少し、70億円となりました。
当連結会計年度のセグメント別の業績の概況は、次のとおりであります。
なお、セグメント利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いて算出したコア営業利益で表示しております。
(その他)
上記5部門以外に、電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務、物性分析・環境分析業務等を行っております。これらの売上収益は前連結会計年度に比べ、182億円増加し854億円となり、コア営業利益は前連結会計年度に比べ54億円減少し104億円となりました。
生産、受注および販売の実績は、次のとおりであります。
当社グループ(当社および連結子会社)の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産製品の規模は小さいため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産の状況については、セグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記販売実績は、外部顧客への売上収益を示しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(3) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ1,426億円減少し、4兆1,655億円となりました。減損によるのれん及び無形資産の減少や、貸付金の回収がありました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ701億円増加し、2兆6,763億円となりました。有利子負債は、前連結会計年度末に比べ1,109億円増加し、1兆4,614億円となりました。
資本合計(非支配持分を含む)は、住友ファーマがマイオバント社を完全子会社化したことに伴い資本剰余金および非支配持分が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ2,128億円減少し、1兆4,892億円となりました。
親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べて0.2ポイント減少し、28.1%となりました。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が減少しましたが、減損損失等の非資金損益項目の増加や、運転資金の減少等により、前連結会計年度に比べ601億円減少し、1,116億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、貸付金の回収による収入や、投資の売却及び償還による収入等により、前連結会計年度1,154億円の支出に比べ960億円支出が減少し、194億円の支出となりました。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度の563億円の収入に対して、当連結会計年度は922億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,785億円の支出となりました。
また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、売却目的で保有する資産への振替額も加味すると前連結会計年度末に比べ596億円減少し、3,058億円となりました。
当社グループの資金需要および資本の財源ならびに資金の流動性は、次のとおりであります。
当社グループの資金需要には、通常の営業活動に必要となる運転資金や既存設備の定期修理のための資金に加え、中期経営計画(2022-2024年度)の基本方針の一つである「事業ポートフォリオの高度化(事業の強化と変革)」を推進するための投資に必要となる資金があります。成長への目配りもしながら案件を徹底的に厳選するとともに、資産売却やCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)短縮等により財務体質の改善に努めてまいります。
また、当社グループは株主還元についても、経営上の最重要課題の一つと考えております。各期の業績、配当性向ならびに将来の事業展開に必要な内部留保の水準等を総合的に勘案の上、安定的な配当を継続することを基本とし、中長期的に配当性向30%程度を安定して達成することを目指しております。
当社グループの財務活動の方針は、低利かつ中長期にわたり安定的な資金調達を行うこと、および十分な流動性を確保することです。D/Eレシオ(有利子負債/純資産)については、フレキシブルな資金調達が可能な現在の当社格付を維持することを考慮し、中長期的に0.7倍程度を目安としております。当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入、資本市場における社債およびコマーシャル・ペーパー(当連結会計年度末の当社発行枠1,800億円)の発行等により、必要資金を調達しております。
当社グループは、グループファイナンス等により手元資金の最大活用を図っており、現金及び現金同等物の保有額は事業遂行上必要な水準に維持することを目指しております。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は3,058億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は137.9%であります。
また、大手邦銀のシンジケート団による800億円のコミットメント・ラインおよび大手外銀のシンジケート団による230億円のマルチカレンシー(円・米ドル・ユーロ建)によるコミットメント・ラインを有しており、事業等のリスクの顕在化等による突発的な資金需要に備え、手元流動性を確保しております。
(5) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 2022-24年度中期経営計画」に記載のとおりであります。
(注) 「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」はIFRSの開示要請に基づくものが含まれます。また、IFRSにより要求されている、関連するその他開示項目は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 39.コミットメント」に記載のとおりであります。
(2) マイオバント サイエンシズ リミテッドの完全子会社化に関する契約
当社の連結子会社である住友ファーマ、スミトバント バイオファーマ リミテッド(以下「スミトバント社」という。)、およびマイオバント社の3社は、スミトバント社によるマイオバント社の完全子会社化に関する契約を締結し2023年3月10日に完全子会社化を完了しました。
(3) 住友ファーマフード&ケミカル株式会社の株式譲渡に関する契約
住友ファーマは、2022年11月30日付で、同社の完全子会社である住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を、株式会社メディパルホールディングスに譲渡する契約を締結し、2023年3月31日に株式譲渡を完了しました。
(4) 住友ファーマアニマルヘルス株式会社の株式譲渡に関する契約
住友ファーマは、2022年12月26日付で、同社の完全子会社である住友ファーマアニマルヘルス株式会社の全株式を、三井物産株式会社に譲渡する契約を締結しました。
(5) ブロバナおよびゾペネックスHFAの販売権譲渡に関する契約
住友ファーマの連結子会社であるサノビオン ファーマシューティカルズ インコーポレーテッドは慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療剤ブロバナおよび喘息治療剤ゾペネックスHFAの米国における販売権をルピン社(本社:インド)に譲渡する契約を締結しました。
(6) 借入契約
住友ファーマは、上記マイオバント社完全子会社化の対価の一部についてブリッジローン契約を締結しました。
(7)当連結会計年度において終了した経営上の重要な契約等
当連結会計年度において契約終了の合意もしくは契約期間満了に伴い終了した、経営上の重要な契約等は以下のとおりであります。
技術導入関係
販売契約等
当社グループ(当社および連結子会社)は、事業拡大と収益向上に寄与すべく、独自の優位性ある技術の確立を基本方針とし、各社が独自に研究開発活動を行っているほか、当社グループ全体としての効率性を念頭に置きながら、互いの研究開発部門が密接に連携して共同研究や研究開発業務の受委託等を積極的に推進しております。
当連結会計年度においては、2022年度から2024年度までの中期経営計画に従い、引き続き、環境、ヘルスケア、食糧、ICTの4分野に研究資源を重点投入するとともに、異分野技術融合による新規事業の芽の発掘とその育成に取り組んでまいりました。
これに基づき、当連結会計年度に計上された研究開発費は、前連結会計年度に比べ207億円増加し、
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
エッセンシャルケミカルズ分野では、事業のグローバル競争力強化のために、モノマー製品の触媒・プロセスの改良、合成樹脂の製造プロセスの改良、既存素材の高性能化や新規高付加価値製品の開発に取り組む一方で、環境負荷低減に資する資源循環技術の確立に注力しております。
当連結会計年度において、プロピレンオキサイド単産法、塩酸酸化、MMAモノマー、ポリオレフィン等のライセンス関連プロセスに用いる触媒の高性能・長寿命化と安全性・安定生産性の向上を目指した改良研究を継続実施しました。資源循環技術では、リサイクルが容易な包装用ポリオレフィン材料として、素材メーカーとして強みを生かした材料設計技術を駆使し、剛性と耐熱性を単一の樹脂で両立するポリエチレンおよびポリプロピレンのモノマテリアル包材の開発を推進しております。その開発から生まれた、高剛性ポリエチレン「スミクル」は、特殊配合技術により高い剛性を実現し、従来、ナイロンやPETが使われていたプラスチック容器包装の基材層に適用し、ポリエチレンのシーラント層と組み合わせることで、ポリエチレンのモノマテリアル容器包装を作ることができ、国内外のお客様から高い関心を得ております。また、総合リサイクル企業であるリバー株式会社と、使用済み自動車から得られる廃プラスチックのマテリアルリサイクルに向けた業務提携契約を締結し、共同で技術開発を行っております。現在、実証プロセスを建設中であり、2024年度から実証実験、サンプル提供を開始します。アクリル樹脂では、ケミカルリサイクル技術の開発を株式会社日本製鋼所と共同で進め、二軸混練押出機を利用してアクリル樹脂を熱分解し、原料となるMMAモノマーとして再生する独自の基本技術を確立しました。愛媛工場内に、2022年秋に実証プロセスが完成し、2023年上期のサンプル提供開始を目指し、実証実験を進めております。本プロセスで得たケミカルリサイクルMMAモノマーは、当社が展開するリサイクル技術を活用して得られるプラスチック製品等を対象にした「Meguri(メグリ)」ブランドの第一号となります。
なお、エッセンシャルケミカルズ部門における当連結会計年度の研究開発費は
エネルギー・機能材料分野では、環境・エネルギー関連事業を拡大させるため、リチウムイオン二次電池用部材、スーパーエンジニアリングプラスチックス、無機材料、機能性樹脂材料等の幅広い製品領域で、既存製品の競争力強化や新規製品創出に向けた研究開発に取り組んでおります。
当連結会計年度において、リチウムイオン二次電池用各種部材は、自動車向けを中心に、性能向上の要請や需要拡大に応えるため、開発を鋭意進めました。耐熱セパレータでは、性能向上とコスト削減を両立させる技術開発が進捗しており、新規顧客獲得に向けて検討を進めております。正極材は独自技術・プロセスを組み込んだ量産実証設備を愛媛工場に建設中であり、2023年度稼働を予定しております。また、京都大学産学共同研究講座「固体型電池システムデザイン」では、柔軟性を有する固体電解質により、圧力を加えなくても電極との界面接合が可能になる柔固体型電池の実用化に向けた材料および要素技術の開発が進捗しております。
機能樹脂分野では、電気・電子部品分野向けや自動車部材向けにスーパーエンジニアリングプラスチックスの需要が増大しております。ポリエーテルサルホン(PES)では、電動車部材や半導体工程部材、高機能膜向けの開発・拡販を積極的に進めており、液晶ポリマー(LCP)では、高流動性や高剛性を活用した電動車用エレクトロニクス材料に加え、高周波特性に優れたグレードによる高速通信コネクタやフィルム用途グレードの開発を進めており、次世代移動通信(5G)用途で顧客採用が進んでおります。また、LCPの旺盛な需要に応えるべく、愛媛工場において生産能力増強工事を実施中で、今年度の稼働に向け取り組んでおります。
無機材料分野では、半導体製造装置用セラミックス等向けの超微粒高純度アルミナの開発が進捗しました。従来よりも強度や耐薬品性、審美性に優れるセラミックスが得られることが特長です。現在、量産の準備を整えているところであります。
なお、エネルギー・機能材料部門における当連結会計年度の研究開発費は
情報電子化学分野では、日本国内に留まらずグローバルな技術・研究開発能力を結集し、IT関連の先端技術進化を支える新規材料・部材・デバイスに関する新製品の開発に、引き続き積極的に取り組んでおります。
当連結会計年度において、まず、ディスプレイ材料分野においては、ハイエンドディスプレイの主流になりつつあるOLEDパネルに対し、当社独自のキーコンポーネントである液晶塗布型位相差フィルムを中小型モバイルまで用途拡大するとともに、薄型化に寄与し耐久性や折り曲げ特性に優れた液晶塗布型偏光板についても開発を完了し拡販を積極的に進めております。今後は、より高機能化するディスプレイに対応する新規機能性フィルムなど各種機能性材料の開発を加速してまいります。また、当社の高分子有機EL材料を用いた中型パネルは、技術確立が完了し、国内外の主要セットメーカーによって各種モニター・ディスプレイとして採用されました。この中型パネルの技術をベースとして、主要パネルメーカーが引き続き、より生産性の高い大型基板を用いた印刷法パネル量産に向けた検討を進めており、当社はパネルメーカーとの共同開発の中で、材料の改良、量産実証を進めております。
半導体材料分野においては、半導体集積度向上という命題に対し、微細加工分野において、最先端技術である超短波長EUV(極端紫外線)光源向けフォトレジストの性能向上および拡販していくとともに、従来の液浸ArFレジストや多層配線用厚膜レジストについてもラインナップを拡充・強化してまいります。
化合物半導体材料分野においては、2022年10月1日付で100%子会社の株式会社サイオクスを吸収合併し、情報電子化学部門内に「サイオクス事業部」および「茨城工場」を新設しました。成長が期待される次世代パワー半導体用の大口径GaN(窒化ガリウム)基板など化合物半導体材料の事業基盤強化を図るとともに、高速・大容量通信、省エネ、自動運転等の技術を支え、より高度な社会の実現に貢献すべく、高周波デバイス用各種エピウェハの設計開発も行っております。
IoT次世代技術として拡大が見込まれる高速通信用デバイス分野においても、窓ガラス等に貼り付け可能なフレキシブル透明アンテナやそれを用いた中継器の開発を加速し公共エリア等での実証実験を進めております。加えて、自動運転技術等に欠かせないセンシングデバイス分野においては、薄膜形成を中心とした要素技術を活用し、鉛フリーで環境に優しい新規圧電薄膜材料やフォトニクス構造を用いたセンサー技術の開発に取り組んでおります。
また、モバイル端末等に使用されるイメージセンサー用途に対しては、ディスプレイ・半導体双方の領域で蓄積した技術とノウハウを活用し、高解像度/高感度化に貢献する多様な機能材料の開発を行っております。
なお、情報電子化学部門における当連結会計年度の研究開発費は
健康・農業関連事業分野では、世界の食糧増産、健康・衛生や環境の改善といった課題解決を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するため、環境負荷低減効果を重視した技術による新製品やアプリケーション、競争力のある製造プロセスの開発を加速化し、コア事業のさらなる強化と周辺事業の拡大に取り組んでおります。
当連結会計年度において、国内農業関連事業については、園芸用新規殺菌剤「パベクト」(一般名:メチルテトラプロール)含有製品を上市しました。続いて、ブドウの着色促進用途として開発を続けてまいりました天然物由来の植物生長調整剤であるアブシシン酸含有製品の上市準備を進めております。また、近年上市しました殺虫剤オキサゾスルフィル、殺菌剤「インディフリン」についても、新用途および新製品の開発を進めております。コメ事業においては消費者や生産地のニーズに合う特徴のある新品種の開発を継続しております。さらに、画像診断技術を活用した病害虫画像診断アプリの機能拡張を図る等、省力化・環境負荷低減技術の開発を通じて農業生産者への総合的ソリューションの提供を拡大すべく、農薬、肥料、コメ事業の製品ポートフォリオ拡充および付随するサービスに関する研究開発を進めております。海外農業関連事業においては、有効成分「インディフリン」を含有する殺菌剤「エクスカリア マックス」をブラジルで上市しました。本剤は、南米における最重要病害であるダイズさび病に極めて高い効果を示します。また、当社新規殺菌剤「パベクト」は欧州市場を中心とした展開が期待されており、鋭意開発を進めております。バイエル社との雑草防除体系の創出プロジェクト(当社が新規除草剤、バイエル社が耐性作物の開発を担当)では、新規PPO除草剤である「ラピディシル」の登録申請を米国、カナダ、ブラジルおよびアルゼンチンで完了し、大きく開発を進展させたことに加え、本剤は多様な雑草に効果を示すことから、二酸化炭素の放出抑制に資する不耕起栽培に適しており、カーボンニュートラルへの貢献が期待できます。コルテバ・アグリサイエンス社との種子処理技術の開発、商業化プロジェクトにも引き続き取り組んでおります。さらに、当社が戦略的分野と位置付けているバイオラショナル事業では、米国のFBサイエンス社の買収を通じ、成長著しいバイオスティミュラント分野への本格参入を果たしました。バイオスティミュラントは天然物由来の農業資材で、非生物的ストレスに対する防御機能を誘導し作物の健全な成長を促すとともに、栄養素の吸収を促進することによって作物の品質改善や増収効果をもたらします。FBサイエンス社が持つ製品ポートフォリオおよび技術ノウハウを組み合わせることによって、バイオラショナル事業の一層の拡大を図るとともに、化学農薬との新たなシナジーも追求してまいります。
生活環境事業については、重点強化領域の市場セグメントにおける新製品の開発と製品群の拡充を推進しております。引き続き強い市場ニーズのある天然物由来製品に対応すべく、グループ会社と共同で、新規ボタニカル殺虫剤の登録申請、これに続くボタニカル成分の開発および登録申請に向けたデータ取得を順調に進めております。業務用殺虫剤分野では、アメリカ市場で主要対象害虫の一つであるアリの防除用で上市した新製品の拡販および用途拡大、さらなる新製品の開発に取り組んでおります。熱帯感染症対策資材分野では、抵抗性を持つ蚊へ卓効を示す室内残留散布剤の普及に取り組むと同時に、蚊の発生源対策として幼虫防除用新製品の開発・登録を引き続き進めていくことで、長期残効性蚊帳と併せて熱帯感染症を媒介する蚊に対して総合的な防除を可能とする製品拡充に取り組んでおります。また、グループ会社と共同で感染症拡大防止へ向けた抗ウイルス製品の開発も継続しております。
アニマルニュートリション事業については、競争力強化のためメチオニンの合理化製法の開発やプロセス改善に加え、機能性飼料添加物分野における製品ラインナップ拡充のため、飼料効率の改善と安心・安全な畜産物生産に貢献できる新規製品の開発に取り組んでおります。また、近年問題となっている家畜排泄物由来の温室効果ガス(GHG)の低減を目的として、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構や国内大学等との共同研究プロジェクトに参画し、引き続きメチオニンを含むアミノ酸バランス改善飼料の技術普及を推進しております。
医薬化学品事業(2023年4月1日付で「ファーマソリューション事業」へ名称変更)については、当社の有機合成プロセスの技術力を駆使した新薬の受託製造品目の拡充、およびジェネリック原薬の製法開発に取り組んでおり、有望な複数の開発品・新製品に対して商業生産へ向けた準備を進めております。核酸医薬原薬につきましては、長鎖RNA需要の成長に対応するため、大分工場内に建設中の新工場が2023年度から稼働を開始する予定であります。新工場の稼働開始に合わせて研究機能の一部を大分に移管することにより、迅速なスケールアップを可能にするとともに競争力のある要素技術の獲得、独自技術の拡張を目的とした研究開発を推進しております。
なお、健康・農業関連事業部門における当連結会計年度の研究開発費は
医薬品分野では、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を重点領域として、住友ファーマおよび日本メジフィジックス株式会社における自社研究に加え、技術導入、スタートアップ企業やアカデミアとの共同研究等、様々な方法で最先端の技術を取り入れた研究開発活動を推進し、優れた医薬品の継続的な創製を目指しております。さらに、感染症領域にも取り組み、グローバルヘルスへの貢献を目指すとともに、医薬品以外のヘルスケア領域における、社会課題の解決への新たなソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業の立ち上げを進めております。
当連結会計年度においては、精神神経領域では、①ulotaront(開発コード:SEP-363856)について、統合失調症を対象とした米国でのフェーズ3試験ならびに日本および中国でのフェーズ2/3試験を推進しました。また、大うつ病補助療法を対象とした米国でのフェーズ2/3試験ならびに全般不安症を対象とした米国および日本でのフェーズ2/3試験を開始しました。②SEP-4199について、米国および日本において、双極Ⅰ型障害うつを対象としたフェーズ3試験を推進しました。③また、新たに2品目のフェーズ1試験を開始しました。
がん領域では、①「オルゴビクス」(一般名:レルゴリクス)について、欧州において、成人におけるホルモン感受性の進行性前立腺がんを適応症とした承認を2022年5月に取得しました。②DSP-7888(一般名:アデグラモチド酢酸塩/ネラチモチドトリフルオロ酢酸塩)については米国において、固形がんを対象としたフェーズ1/2試験を実施していましたが、中間解析で期待した有効性が認められなかったことにより、試験を中止しました。さらに過去の治験結果も含めて本剤の開発方針を検討した結果、DSP-7888自体の開発を中止しました。③TP-0903(一般名:dubermatinib)について、米国において、外部研究機関が急性骨髄性白血病(AML)を対象としたフェーズ1/2試験を実施していましたが、期待した有効性が認められなかったことにより試験を中止しました。さらに本剤の開発方針を検討した結果、TP-0903の開発自体を中止しました。
再生・細胞医薬分野では、米国において、他家培養胸腺組織「リサイミック」および他家iPS細胞由来の細胞製品の生産体制の構築に向けて、細胞製品製造施設の建設を2022年8月に開始しました。
感染症領域では、北里研究所との共同研究を通じてカルバペネム耐性菌感染症治療薬を目指し創製されたKSP-1007について、米国でのフェーズ1試験を完了しました。また、米国食品医薬品局(FDA)より適格感染症治療製品(QIDP:Qualified Infectious Disease Product)およびFast Track(FDAとのより綿密な連携や承認申請における逐次審査が可能となる制度)の指定を2022年8月に受けました。なお、本共同研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)に係る研究開発課題として採択されており、AMEDからの委託研究開発費を活用しております。
その他の領域では、①レルゴリクス配合剤については、米国において、「マイフェンブリー」の子宮内膜症に伴う中等度から重度の痛みを適応症とした適応追加承認を2022年8月に取得しました。また、欧州において、「ライエクオ」の子宮内膜症に対する適応追加申請を2022年10月に行いました。②ビベグロンについては、中国において、過活動膀胱を対象としたフェーズ3試験を開始しました。
フロンティア事業では、①日本において、株式会社メルティンMMIと共同開発し、同社が2022年5月に医療機器認証を取得した「MELTz 手指運動リハビリテーションシステム」について、2022年9月に同社との間で販売提携契約を締結し、当社が販売を開始しました。②米国において、ビヘイビア社と共同開発したメンタルヘルスVRコンテンツ「First Resort」(非医療機器)について、同社が2022年11月に試験販売を開始しました。③日本において、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社と共同開発した難聴者用マルチ会話表示デバイス「VUEVO」(非医療機器)について、同社が2023年3月に販売を開始しました。④日本において、慶應義塾大学およびi2medical合同会社と共同開発中のうつ病検出・重症度評価支援プログラムについて、プログラム医療機器の優先審査指定制度の初めての対象品目として2023年3月に指定されました。
放射性医薬品については、AMEDによるCiCLE事業の研究開発課題として採択されたセラノスティクス(治療と診断の融合)薬剤開発プロジェクト「CRADLE(Consortium for Radiolabeled Drug Leadership)」を日本メジフィジックス株式会社が中心となって推進しております。
なお、医薬品部門における当連結会計年度の研究開発費は
全社共通およびその他の研究分野においては、上記5事業分野の事業領域を外縁部へ積極拡大するための研究およびマテリアルズ・インフォマティクス等のデータ科学・計算科学をはじめとする共通基盤技術開発の強化により、環境、ヘルスケア、食糧、ICTの重点4分野における次世代事業の創出加速を進め、社会的課題の解決の実現を推進しております。また、カーボンニュートラル実現の視点からの研究開発の重要性が増していることから、当社は、2021年12月に公表した住友化学グループのカーボンニュートラル・グランドデザインに基づき、「責務」として自らが発生するGHG排出量を2030年度までに2013年度比50%削減、さらに2050年度までにネットゼロ達成に向けた取り組みを進めるとともに、「貢献」についてはGHG削減に貢献する製品・技術の開発、社会実装およびライセンスを通じたグローバル展開に取り組んでおります。当連結会計年度においては、次の進展がありました。
環境分野では、創エネ・蓄エネにつながる次世代電池、地球温暖化対策となるGHG排出削減や資源リサイクルによる環境負荷低減に関する技術開発を加速しております。具体的には、炭素資源循環技術の確立を目指し、グリーンイノベーション基金でのプロジェクトが本格的に開始しました。また、環境に配慮したエタノールを原料とするエチレンの試験製造設備を千葉工場(千葉県市原市)に新設いたしました。千葉工場に新設した試験製造設備では、サーキュラーエコノミーの取り組みで協力している積水化学工業株式会社が生産する“ごみ”資源由来のエタノールや、バイオエタノールを原料にエチレンを生産する検討を進めております。
ヘルスケア分野では、再生・細胞医薬や体調モニタリング等の先端医療・予防・診断に関する技術の開発に引き続き取り組んでおります。2022年4月、再生・細胞医薬品の普及に向けて、京都大学発のスタートアップ企業であり、細胞培養技術に強みを持つ株式会社マイオリッジと資本業務提携契約を締結いたしました。
食糧分野では、当社の保有技術を活かすことが可能と思われる機能性飼料やバイオラショナル資材等の食糧の品質・収量向上に資する技術の開発に取り組んでおります。
ICT分野では、有機ELディスプレイ材料、5G/6G等の通信対応材料、次世代半導体関連材料およびイメージセンサー材料等の技術開発に引き続き取り組んでおります。
以上の研究開発の早期の事業化に向け、下記のような取り組みも強化しております。
まず、社外連携の強化のため、日本橋の新本社内に開設した「SYNERGYCA(シナジカ)共創ラウンジ」の取り組みが2022年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞いたしました。SYNERGYCAは、企業やアカデミア等の皆さまとのコミュニケーションを通じて、新たな価値創造につながるアイデアを生み出すための交流の場で、最新のデジタル技術等を活用して活発な意見交換を促す取り組みが高く評価されました。
また、社内イノベーション促進のために、研究所間の連携強化を進めるとともに、事業部経験者による新規事業インキュベーション体制も構築し、事業化を加速しております。
さらには、デジタル技術の活用により、研究開発活動の生産性向上の取り組みを継続、深化させ、顧客接点強化や顧客満足度向上など事業の競争力強化(DX戦略2.0)を計るとともに、新規ビジネスモデルの構築による事業創出(DX戦略3.0)にも取り組んでおります。
一方、次世代事業の創出加速に向け、大阪地区にインキュベーションとオープンイノベーションの拠点として新たに研究棟の建設を計画しております。また、千葉地区には環境負荷低減技術や新素材の開発拠点として2024年春に新たな研究棟を稼働開始させる予定であります。これにより、現在の筑波地区研究所は大阪地区と千葉地区へ統合、それぞれ地区の特長を活かして、各研究活動のシナジーを促進して研究体制の強化を図ってまいります。
なお、全社共通部門における当連結会計年度の研究開発費は
このように、事業拡大および競争力強化を図るべく、新製品・新技術の研究開発および既存製品の高機能化・既存技術の一層の向上に取り組み、各事業分野におきまして着実に成果を挙げつつあります。