第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、企業活動において全構成員が共有すべき基本的・普遍的な価値観を表すものとして、基本理念と行動基準を定めております。

<基本理念>

・   「社会」、「生命」、「環境」に貢献する。

・   株主、顧客・取引先、地域社会、従業員を大切にする。

・   遵法精神を重んじ、透明な経営を行う。

<行動基準>

・  社会から信頼される事業活動を行うため、社会規範、法令、会社の諸規定を遵守し、高い倫理観と良識を持って行動する。

・  ものづくりに際しては、地球環境との調和を図り、常に安全確保に万全を期し、無事故・無災害に努める。

・  相互協力、相互理解により人権を尊重し、風通しの良い働きやすい職場をつくる。

・  企業活動の透明性を保つため、企業市民としてコミュニケーションを重視し、企業情報を適時、的確に開示する。

当社グループは、全構成員が、この基本理念と行動基準を常に意識し行動することで、時代や環境の変化に対応できる強靭な開発型企業として成長し、社会の発展に貢献できる企業を目指しております。

 

(2) 目標とする経営指標、経営環境及び対処すべき課題

当社グループは、Challenge For 2020 をスローガンとして創立100周年の2020年に“強くて、信頼されるケミカル・カンパニーとしてのブランド力のある会社”を目指しております。このたび、2020年度に向けて2018年度からの3ヵ年を対象とする「第7次中期経営計画(2018~2020年度)」(以下、本中計といいます。)を策定いたしました。

 

① 創立100周年(2020年)に向け目指す企業グループ像(あるべき姿)

“強くて、信頼されるケミカル・カンパニーとしてのブランド力のある会社”

「強いケミカル・カンパニー」

・ 自社技術によりグロ-バル競争力ある事業を展開

・ 技術革新に支えられた持続的成長と安定的収益を実現する、高付加価値・高収益事業を展開

「信頼されるケミカル・カンパニー」

・ 良き企業市民として環境活動や社会貢献活動を行い、地域住民との対話、ステークホルダーへの価値増大を重視する、従業員が誇りを持てる会社

 

② 本中計での取り組み方針

本中計では、既存事業と成長基盤の強化に向けて取り組んだ前中期経営計画の事業課題を基本的に引き継ぎ、既存事業の守りをしっかり固めつつ、成長に向けた攻めの取り組みを強化し、すべてのステークホルダーにとって魅力あるケミカル・カンパニーの実現を目指します。

最終2020年度には、連結売上高1,310億円、連結営業利益121億円の達成を目標に、期間利益を着実に積み上げながら株主資本の充実を進めるとともに、外部環境の変化にも耐え得る強固な収益基盤と財務基盤を築き上げ、本中計期間中の出来る限り早い時期に復配を果たせるように努めてまいります。

無機化学事業は、これまで国内の塗料・インキの各業界に酸化チタンを安定供給してきた実績を土台に市場や需要家が求める価値あるオンリーワンの素材を開発し、それをグローバルに展開することを目標に、現状の収益力の維持に向けた“守り”と成長に向けた“攻め”を骨子とした課題に取り組みます。具体的には、酸化チタンは、国内トップのシェアと技術力を徹底維持し守りを固めつつ、国内で順調に販売を伸ばす超耐候性顔料銘柄に加え、新たに開発したつや消し塗料用や意匠性の顔料など、当社独自の粒子合成技術や表面処理技術を駆使した高機能・高付加価値な製品の拡販に向けた攻めの取り組みを強化します。機能材料は、高度な微粒子化技術と豊富な製品のラインアップを強みに、今後も成長が見込める電子部品材料と導電材料を核に売上成長の加速に取り組みます。そして、開発面では、無機・有機の事業領域をこだわることなく、時代を先読みした斬新なアイディアで新しい素材や技術の開発を推し進めます。

有機化学事業は、これまで高い安全性と効果の高い農薬を生み出してきた有機合成技術と世界各国で農薬登録を取得し、現地市場に投入してきた開発・登録力に磨きをかけ、世界の農薬マーケットで存在感のある研究開発型メーカーとしての地歩を着実に強化して行きます。具体的には、世界的に農薬規制が強化されて行く中、世界各国で確実に自社剤の農薬登録の取得と維持を進めながら、販売面では当社剤の普及販売方針を徹底できる国内外の自主推進販売拠点の拡充、強化に取り組む他、生産面では製造コストの一段の引き下げに取り組み、競争力を強化します。研究開発では環境と人にやさしい革新的な新規農薬開発のステージアップに取り組みます。これら取り組みを進めることで、現有のビジネス基盤をしっかり守りつつ、主要市場での新規剤の普及拡販や新興諸国での成長需要の取り込みに向けた攻めの取り組みを推進します。

将来の成長基盤作りとして取り組む動物薬やバイオ医薬など新規事業の開発については、早期収益獲得を念頭に、財務に与える影響を軽減しながら効率的な事業開発を推進します。具体的には、動物薬は2018年中に立ち上げる国内販売から確実な成果を得て、欧米での開発を加速させます。また、大阪大学と共同で開発するバイオ医薬HVJ-Eは、臨床治験を着実に進めながら、当社グループにない機能を補完する外部との提携を早期に実現し、当社グループ初の抗がん剤を大きく育てて行きます。

 

③ 経営数値目標(連結ベース)

(金額:億円)

2018年度

計画

2019年度

計画

2020年度

計画

売上高

1,090

1,200

1,310

営業利益(営業利益率)

44  (4%)

80  (7%)

121  (9%)

経常利益

33

69

108

親会社株主に帰属する当期純利益

18

49

81

ROE(自己資本利益率)

3%

7%

10%

為替レート(期中平均)

110円/US$、130円/Eur

 

 

 

2 【事業等のリスク】

 

当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクとして以下のとおり認識しており、これらリスクの発生の回避及び発生した場合の対応には最大限努力する所存であります。

文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において入手可能な情報から判断したものであり、また事業等のリスクには様々なリスクが存在しており、ここに記載されたリスクがすべてのリスクではありません。

項目

リスク

生産、販売、原料調達にかかわるリスク

①無機化学事業は販売する国又は地域の経済状況の影響を受ける。特に販売比率が高い日本を含めアジアでの需要や市況の変動により業績に影響を受ける可能性がある。

②農薬事業は販売する国又は地域での農業情勢、作物の市場動向、天候や病虫害発生の状況、及びジェネリック品の販売や遺伝子組み換え作物の伸長の動向により業績に影響を受ける可能性がある。

③特定業界・特定顧客向けの販売が大きな比重を占める製品で、顧客企業の業績や購買方針の変動により業績に影響を受ける可能性がある。

④厳しい製品価格競争の下、コスト低減等の価格競争を克服できないことにより業績に影響を受ける可能性がある。

⑤主原料鉱石や石炭等の原燃料の市況や特定の購入先に依存する原料・資材等の調達環境等の変動により業績に影響を受ける可能性がある。

⑥農薬の取扱いに関する国内外の法令等の変更により業績に影響を受ける可能性がある。

⑦自然災害、感染症の流行、重大な産業事故等の発生により生産活動が停止し、機会損失の発生や顧客への供給責任が果たせなくなる可能性がある。

研究開発にかかわるリスク

①予期せざる市場、技術、法令規制等の変化により研究開発が長期化又は中断する可能性がある。

②将来の市場や顧客のニーズ等を正しく予想できず新製品や既存製品をタイムリーに開発・提供できない可能性がある。

品質、環境、知的財産にかかわるリスク

①環境や化学物質の安全性等の規制強化により新たな対策コストが発生する、又は事業活動が制限される可能性がある。

②知的財産、製造物責任、環境問題等にかかわる紛争が将来生じ、不利な判断がなされることにより業績に悪影響を与える可能性がある。

③環境改善のために追加的な対策コストが発生する可能性がある。

財務状況等にかかわるリスク

①米ドル、ユーロ等外国為替相場の変動や海外子会社が所在する現地通貨高により円換算ベースでの業績に影響を受ける可能性がある。

②金利上昇により将来の支払利息が増加する可能性及び資金調達環境の悪化等により必要な事業資金が確保できなくなる可能性がある。

③業績悪化により財務制限条項に抵触し、期限の利益を喪失する可能性がある。

④将来の予測可能収益の減少、又は税率変更を含む税制の改正等により繰延税金資産の取崩しが発生する可能性がある。

⑤収益性低下等による事業用資産の減損損失が発生する可能性がある。

その他

①取引先の予期せぬ信用不安等により貸倒れ等の損失が発生する可能性がある。

②海外でのテロ、紛争等の発生により海外事業活動が制限される可能性がある。

③社内やグループ間の情報システムに対して不正アクセス、突発的な事故等が発生した場合、事業活動に支障を生じる可能性がある。

④専門的な技量や経験を有する人材が確保できなかった場合、事業活動に支障を生じる可能性がある。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

 

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度の世界経済は、米国では個人消費や設備投資の伸びを背景に安定的な経済成長が続き、欧州では景気回復に向けた堅調な動きが見られました。アジアでは、中国でインフラ投資や輸出環境の改善などを受けて景気が底堅く推移し、全体として緩やかな経済成長が続きました。日本経済は、好調な企業業績と設備投資の増加に加え、個人消費も堅調に推移して穏やかな拡大基調が続きました。

当社グループの主力事業を取り巻く市場環境は、酸化チタンでは、世界的な需給バランスのタイト化を背景に海外市況の上昇が続くなど販売環境の改善が進んだ一方で、チタン鉱石価格が騰勢を強めた他、各種の原料価格上昇が鮮明となり、今後コスト面への影響は避けられない状況となっています。農薬では、農作物の播種面積の増加や天候の影響などを受けて北米やアジアの需要は堅調に推移したものの、南米では、ブラジルの依然高い水準にある流通在庫が需要を抑制しているなど地域間で差異を生じつつ、全体としては低調に推移しました。

このような状況の下、当社グループは第6次中期経営計画の最終年度を迎え、無機化学事業は付加価値の高い分野での技術開発と販路開拓に取り組むとともに、有機化学事業は新規農薬の確実な上市と海外販売拠点の強化に向けた取り組みを進めてまいりました。

この結果、当連結会計年度の売上高は1,080億円(前期比63億円増)、営業利益は100億円(前期比16億円増)、経常利益は84億円(前期比24億円増)と、前連結会計年度に比べ増収増益となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は34億円(前期比3億円減)と、平成20年にコンプライアンス総点検を受けて公表した四日市工場における土壌・地下水汚染並びに埋設物等の今後の対応や撤去に向けた費用を合理的に見積もることが可能となり、環境安全整備引当金繰入額として特別損失に計上したことなどで減益となりました。

なお、当期末の個別決算においては、13期振りに繰越損失を解消することができました。

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

 

(無機化学事業)

酸化チタンは、世界的な需給バランスのタイト化を背景に国内外ともに販売量は前連結会計年度を上回り、売上高は433億円(前期比62億円増)となりました。

機能材料は、旺盛な需要により電子部品向け販売が増加した他、導電材料も好調であったことなどから売上高は111億円(前期比6億円増)となりました。

損益面では、酸化チタン、機能材料ともに堅調な需要に支えられ販売数量が順調に拡大したことに加え、継続的に取り組んできた酸化チタンの販売価格改定やコスト削減効果が寄与して増益となりました。

この結果、無機化学事業の売上高は544億円(前期比69億円増)、営業利益は79億円(前期比29億円増)となりました。

 

(有機化学事業)

農薬は、国内外での新規剤上市と上市後の速やかな普及拡販に向けた販売活動に努め、国内売上は前連結会計年度並みとなりましたが、海外売上は前連結会計年度を下回りました。近年販売強化に向けて取り組む北米、アジアでは殺虫剤や除草剤の需要が増加し堅調な販売となりましたが、欧州では昨年好調であった殺虫剤や天候の影響を受けた殺菌剤の販売が減少しました。

受託製造する医薬原末の売上は、ほぼ前連結会計年度並みとなりました。

損益面では、農薬の海外売上の減少に加え、研究開発費の増加などにより減益となりました。

この結果、有機化学事業の売上高は504億円(前期比6億円減)、営業利益は35億円(前期比13億円減)となりました。

 

(その他の事業)

その他の事業の売上高は30億円(前期並)、営業利益は6億円(前期比1億円増)となりました。

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比28億円増加の1,597億円となりました。これは、現金及び預金が19億円、受取手形及び売掛金が44億円、有形固定資産が16億円それぞれ増加しましたが、たな卸資産が56億円減少したことなどによるものです。

負債は、前連結会計年度末比12億円減の926億円となりました。これは、支払手形及び買掛金が17億円、社債が18億円、未払法人税等が8億円、未払費用が6億円、環境安全整備引当金が23億円それぞれ増加しましたが、長短借入金が101億円減少したことなどによるものです。

純資産は、利益剰余金が34億円、為替換算調整勘定が5億円それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末比41億円増の671億円となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ21億円増加し、302億円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、166億円の収入(前期比19億円収入増)となりました。これは、税金等調整前当期純利益と売上債権、たな卸資産、仕入債務の増減による運転資金の減少に加えて、減価償却費及びその他の償却費や環境安全整備引当金の非資金項目が増加したことなどによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、60億円の支出(前期並)となりました。これは、固定資産の取得による支出などによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、85億円の支出(前期比11億円の支出減)となりました。これは、社債の発行による収入があったのに対し、長短借入金の純減とリース債務の返済があったことなどによるものです。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

 

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

無機化学事業

53,831

12.0

有機化学事業

32,545

8.0

合計

86,376

10.5

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっております。

3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 受注状況

当社グループは、主として見込み生産を行っております。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

無機化学事業

54,441

14.6

有機化学事業

50,460

△1.2

その他の事業

3,098

2.1

合計

108,001

6.3

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

  なお、前連結会計年度において、外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める

  相手先がないため、記載はありません。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

三井物産株式会社

11,717

10.8

 

3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。

なお、連結決算日における資産及び負債の連結貸借対照表上の金額及び連結会計年度における収益及び費用の連結損益計算書の金額の算定には、将来に関する判断、見積りを行う必要があり、当社グループは過去の実績や状況等を勘案し、合理的に判断しておりますが、今後の環境、条件等の変動により、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(経営成績等の状況の概要) (1) 経営成績の状況」をご参照ください。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フロー

「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(経営成績等の状況の概要) (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

② 財務政策

当社グループは有利子負債圧縮に努め、第6次中期経営計画の目標値を達成することができました。今後についても財務の健全性・安定性を維持すべく注力してまいりたいと思います。

当連結会計年度は、主力工場における維持更新投資は前年の略横這いとなりましたが、有機化学事業における研究開発費は、欧州での農薬の再登録費用、並びにバイオ医薬・動物薬などの新規分野を中心に増加しました。

一方、依然旺盛な製品需要による棚卸資産の減少により生じた営業キャッシュ・フローを原資として、来期以降に想定される旺盛な資金需要に備えつつ借入金の圧縮に努めた結果、当社グループの有利子負債残高は513億円(前期比74億円減)となりました。

 

4 【経営上の重要な契約等】

 

経営上の重要な契約等は、次のとおりであります。

営業上の重要な契約

 

契約締結先

契約発効日

摘要

(スイス)
SYNGENTA AG(シンジェンタ アクチエンゲゼルシャフト)

平成9年12月17日

 (契約内容)当社が所有する一定の除草剤、殺菌剤及び殺虫剤(4剤)のアジア・パシフィック地域を除く世界市場における販売に関する権利の供与

 (有効期間)当該製品の登録が継続する期間

 (対価)一時金(クロージング時及び登録取得時)

 

 

5 【研究開発活動】

 

当社グループは「社会、生命、環境に貢献する」という基本理念に基づき、無機化学、有機化学の各分野における新製品の開発や生産技術の向上に取り組むとともに、世界的な関心が高まる環境、エネルギー、バイオ、IT、食料等の各領域において、無機、有機の垣根にこだわることなく、新規事業の探索にも取り組んでおります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、8,706百万円となりました。

 

セグメントごとの研究開発は、次のとおりであります。

 

(無機化学事業)

酸化チタン顔料については、塩素法と硫酸法の2つの製造プロセスを自社で有する特徴を活かし、塗料、インキ、プラスチックの各分野で市場ニーズに対応した高付加価値銘柄や顧客の厳しい要求に応えるカスタマイズ銘柄などの開発に注力して取り組んでおります。

機能材料については、次世代のコア事業としての盤石な地位を確立すべく、酸化チタン応用製品の一層のスペシャリティー化と新規分野の開拓に注力して取り組んでおります。電子材料分野では、電子機器の小型化、省電力化、高機能化に伴い、使用される材料の一層の微粒化が求められる中、これに対応した高純度酸化チタンの商品開発を強力に推進しています。また、環境・省エネルギー問題に対応する素材として、建材向け塗料や人工木材などに耐候性の優れた黒色系遮熱材料の開発を進めている他、意匠性材料、導電性材料及び光触媒材料など、独自技術によるユニークな製品開発と市場開発を推進しております。

新しい無機事業の創出を目的としている新規事業企画開発部では、有機分野と無機分野の融合を図り、新しい価値を創生した商品の研究開発にも取り組んでおります。当社有機化学部門とのコラボレーションの他、大学との共同研究や社外技術の導入などオープンイノベーションへの取り組みも積極的に進めており、あらゆる場面で成長に繋がる研究開発活動を行っております。

当事業における研究開発費は、1,378百万円となりました。

 

 

(有機化学事業)

農薬については、自社開発原体を中心に新規製剤や新規混合剤の開発の他、農薬登録国や適用作物の拡大などに向けた研究開発に注力して取り組んでおります。

近年開発した新規剤では、うどんこ病に卓効を持つ殺菌剤ピリオフェノンが各国で農薬登録を取得後、上市が進んでいる他、菌核・灰色かび病など広いスペクトラムを持つ殺菌剤イソフェタミドは、2015年のカナダ、米国での上市を皮切りに、2018年以降日本、欧州でも販売を開始する予定です。また、チョウ・蛾類を初め広いスペクトラムを持つ殺虫剤シクラニリプロールは、2017年から韓国で販売を開始し、2018年には米国、日本でも上市する予定です。安全性に優れるトウモロコシ用除草剤トルピラレートは、国内では2017年より販売を開始しており、さらに米国、カナダでは2018年の販売開始に向け準備を進めております。水稲用除草剤ランコトリオンは、2016年に国内の登録申請を行い、現在混合剤の開発などを進めており、さらに近隣・東南アジアへの展開も検討中です。

さらに、国内の食の安全・安心指向の高まりや、抵抗性発達のために有効な既存化学農薬が不足しているなどの市場ニーズに対応するため、微生物殺菌剤、接触型忌避剤及び天敵昆虫等の製品群の開発にも注力しております。特に2種の天敵昆虫類については、農家の利便性に配慮した簡易型組立資材(バンカーシート)を付帯した製品を開発、農林水産省農食事業26070Cで実用化技術を確立し、2016年12月からバンカーシートと組み合わせた3製品をJA全農の全国組織を通じて販売しています。近未来の植物防疫の姿を見据えると、これらと安全性の高い当社の化学農薬群を組み合わせて、当社独自のIPMプログラムを確立するとともに、従来の化学農薬コンセプト・分野とは異なる場面でも、当社全製品の普及拡大を目指していきます。

当社の農薬事業は、自社での創生・開発をベースとしていますが、環境変化の激しい昨今、他社開発剤の導入や他社との共同開発にも積極的に取り組んでおり、2010年以降海外企業から導入した水稲除草剤を国内で開発・上市したほか、2015年には海外企業が発明した新規の非選択性除草剤を全世界で共同開発する契約を締結し、米国、カナダ、ブラジル、オーストラリア等主要国での登録申請を実施しました。

農薬以外では、ライフサイエンス事業(医薬品・医療機器開発)についても、特色ある商品開発を進めています。酸化チタンの機能性を利用した国産初の人工関節固定用骨セメント「オセジョイン」については、2016年9月に製造販売承認を取得しました。2018年中に保険適用を目指し、その後の上市を予定しております。また、当社の有機化学コア技術であるCF3ピリジン化合物(医薬用中間体)の受託生産事業としての販路拡大を進めております。

バイオ研究者向けの研究用試薬「ゲノムワン」(遺伝子機能解析用HVJ-Eベクターキット並びに関連製品)については、国内外で販売を行っており、利用者の要請にも対応して、より高い機能開発に取り組んでいます。HVJ-Eについては、新規バイオ抗がん剤としての開発も目指しており、大阪大学医学部附属病院と連携して、医師主導治験により臨床開発を進めております。悪性黒色腫(メラノーマ)、悪性胸膜中皮腫(中皮腫)及び前立腺がん対象の第Ⅰ相試験においてヒトでの安全性が確認されました。2018年度よりメラノーマ及び中皮腫対象の第Ⅱ相試験を開始する予定で、前立腺がんについても、引き続き科学技術振興機構(JST)の産学共同実用化開発事業として臨床開発を推進していきます。

長年にわたる農薬、医薬創製の研究・開発で培った技術とシーズ化合物を活かし、動物薬の研究開発にも取り組んでいます。その商品化計画の第一弾として、新規作用機序を有する動物用抗炎症薬が、現在国内で承認申請中であり、2018年度の第2四半期から第3四半期にかけての上市を予定しております。また、本薬剤は米国でも臨床開発を行なっており、2020年度内の商業化を目指しております。さらに、皮膚系疾患や駆虫系の薬剤において、後続するパイプラインの整備を推進中です。

当事業における研究開発費は、7,253百万円となりました。

 

なお、当連結会計年度におけるセグメントに帰属しない全社共通の研究開発費の金額は74百万円となりました。