第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、企業活動において全構成員が共有すべき基本的・普遍的な価値観を表すものとして、基本理念と行動基準を定めております。

<基本理念>

・   「社会」、「生命」、「環境」に貢献する。

・   株主、顧客・取引先、地域社会、従業員を大切にする。

・   遵法精神を重んじ、透明な経営を行う。

<行動基準>

・  社会から信頼される事業活動を行うため、社会規範、法令、会社の諸規定を遵守し、高い倫理観と良識を持って行動する。

・  ものづくりに際しては、地球環境との調和を図り、常に安全確保に万全を期し、無事故・無災害に努める。

・  相互協力、相互理解により人権を尊重し、風通しの良い働きやすい職場をつくる。

・  企業活動の透明性を保つため、企業市民としてコミュニケーションを重視し、企業情報を適時、的確に開示する。

当社グループは、全構成員が、この基本理念と行動基準を常に意識し行動することで、時代や環境の変化に対応できる強靭な開発型企業として成長し、社会の発展に貢献できる企業を目指しております。

 

(2) 目標とする経営指標及び中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、Challenge For 2020 をスローガンとして創立100周年の2020年に“強くて、信頼されるケミカル・カンパニーとしてのブランド力のある会社”を目指しており、2020年度に向けて2018年度からの3ヵ年を対象とする「第7次中期経営計画(2018~2020年度)」(以下、本中計といいます。)を策定しております。

 

① 創立100周年(2020年)に向け目指す企業グループ像(あるべき姿)

“強くて、信頼されるケミカル・カンパニーとしてのブランド力のある会社”

「強いケミカル・カンパニー」

・ 自社技術によりグロ-バル競争力ある事業を展開

・ 技術革新に支えられた持続的成長と安定的収益を実現する、高付加価値・高収益事業を展開

「信頼されるケミカル・カンパニー」

・ 良き企業市民として環境活動や社会貢献活動を行い、地域住民との対話、ステークホルダーへの価値増大を重視する、従業員が誇りを持てる会社

 

② 本中計での取り組み方針

本中計では、既存事業と成長基盤の強化に向けて取り組んだ前中期経営計画の事業課題を基本的に引き継ぎ、既存事業の守りをしっかり固めつつ、成長に向けた攻めの取り組みを強化し、すべてのステークホルダーにとって魅力あるケミカル・カンパニーの実現を目指します。

最終2020年度には、連結売上高1,310億円、連結営業利益121億円の達成を目標に、期間利益を着実に積み上げながら株主資本の充実を進めるとともに、外部環境の変化にも耐え得る強固な収益基盤と財務基盤を築き上げ、本中計期間中の出来る限り早い時期に復配を果たせるように努めてまいります。

無機化学事業は、これまで国内の塗料・インキの各業界に酸化チタンを安定供給してきた実績を土台に市場や需要家が求める価値あるオンリーワンの素材を開発し、それをグローバルに展開することを目標に、現状の収益力の維持に向けた“守り”と成長に向けた“攻め”を骨子とした課題に取り組みます。具体的には、酸化チタンは、国内トップのシェアと技術力を徹底維持し守りを固めつつ、国内で順調に販売を伸ばす超耐候性顔料銘柄に加え、新たに開発したつや消し塗料用や意匠性の顔料など、当社独自の粒子合成技術や表面処理技術を駆使した高機能・高付加価値な製品の拡販に向けた攻めの取り組みを強化します。機能材料は、高度な微粒子化技術と豊富な製品のラインアップを強みに、今後も成長が見込める電子部品材料と導電材料を核に売上成長の加速に取り組みます。そして、開発面では、無機・有機の事業領域をこだわることなく、時代を先読みした斬新なアイディアで新しい素材や技術の開発を推し進めます。

有機化学事業は、これまで高い安全性と効果の高い農薬を生み出してきた有機合成技術と世界各国で農薬登録を取得し、現地市場に投入してきた開発・登録力に磨きをかけ、世界の農薬マーケットで存在感のある研究開発型メーカーとしての地歩を着実に強化して行きます。具体的には、世界的に農薬規制が強化されて行く中、世界各国で確実に自社剤の農薬登録の取得と維持を進めながら、販売面では当社剤の普及販売方針を徹底できる国内外の自主推進販売拠点の拡充、強化に取り組む他、生産面では製造コストの一段の引き下げに取り組み、競争力を強化します。研究開発では環境と人にやさしい革新的な新規農薬開発のステージアップに取り組みます。これら取り組みを進めることで、現有のビジネス基盤をしっかり守りつつ、主要市場での新規剤の普及拡販や新興諸国での成長需要の取り込みに向けた攻めの取り組みを推進します。

将来の成長基盤作りとして取り組む動物薬やバイオ医薬など新規事業の開発については、早期収益獲得を念頭に、財務に与える影響を軽減しながら効率的な事業開発を推進します。具体的には、動物薬は2018年中に立ち上げる国内販売から確実な成果を得て、欧米での開発を加速させます。また、大阪大学と共同で開発するバイオ医薬HVJ-Eは、臨床治験を着実に進めながら、当社グループにない機能を補完する外部との提携を早期に実現し、当社グループ初の抗がん剤を大きく育てて行きます。

 

③ 経営数値目標(連結ベース)

(金額:億円)

2018年度

計画

2019年度

計画

2020年度

計画

売上高

1,090

1,200

1,310

営業利益(営業利益率)

44  (4%)

80  (7%)

121  (9%)

経常利益

33

69

108

親会社株主に帰属する当期純利益

18

49

81

ROE(自己資本利益率)

3%

7%

10%

為替レート(期中平均)

110円/US$、130円/Eur

 

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

 当社グループは、創立100周年の2020年に目指すべき企業グループ像を“強くて、信頼されるケミカル・カンパニーとしてブランド力のある会社”と2009年に定め、以来3次にわたる中期経営計画でその実現に向け取り組んでまいりました。2018年度より取り組む第7次中期経営計画では、その最終段階として既存事業の守りをしっかりと固めつつ、成長に向けた攻めの取り組みを強化し、本中計期間中の出来る限り早い時期での復配を果たし、すべてのステークホルダーにとって魅力あるケミカル・カンパニーへと成長を遂げるべくスタートしました。

 初年度となった2018年度は、酸化チタンをはじめとする無機化学事業の堅調な需要を背景に、業績は中計目標を大きく上回り、3期連続の営業増益を達成できるとともに、昨年6月には復配を果たすことができましたが、2年目となる2019年度は、想定を超える事業環境の悪化に直面し、業績は一転して中計目標を下回りました。無機化学事業では、アジアを中心とした酸化チタン需要の減退と市況の低下に加え、主原料であるチタン鉱石価格が高止まりするなどで業績は販売、原価の両面から悪化しました。有機化学事業では、主力農薬の販売は、海外で殺虫剤が大きく伸びるなどプラス面があったものの、世界各地で発生した異常気象の影響を受けるなどで業績は伸び悩みました。

 最終年度となる2020年度は、新型コロナウイルス感染症のさらなる感染拡大と長期化による業績への影響が懸念されます。2020年度においては上期中の世界経済の低迷は避けられないものの、下期からは回復軌道に乗るものと想定しておりますが、今後さらに新型コロナウイルス感染症の流行が長期化する場合には、少なからず当社グループの業績に影響を与える可能性があります。このような状況の中、当社グループは、事業の守りをしっかりと固めつつ、次の攻めに転じるための施策に着実に取り組んでまいります。

 無機化学事業では、逆風の事業環境においても安定した収益を確保できる事業構造への転換を進めるべく、汎用品から高機能・高付加価値な製品の開発・販売に軸足を置いた取り組みを一層加速させます。具体的には、酸化チタンでは、国内で順調に販売を伸ばす超耐候性銘柄の海外での販売拡大と需要家側で評価が進む艶消し銘柄の本格的な販売に向けた取り組みを強化します。機能材料では、自動車の電装化の進展と5G(第5世代通信システム)導入により需要拡大が見込まれる電子部品向け高純度酸化チタンやチタン酸バリウム、そして帯電防止機能を持った導電性材料を核に伸び行く需要を確実に取り込むべく、開発、生産、販売のそれぞれの体制整備を着実に進めて行きます。

 有機化学事業では、減収傾向にある主力農薬の業績を反転させ、早期に成長路線に回帰させるべく、自社剤の価値最大化に向けて取り組みます。販売面では、成長する海外需要を取り込むべく、地域毎のニーズを見極め、それぞれの市場特性に応じた販売戦略を策定するなどで販売量の最大化を目指します。また、売上に占める自社開発剤の比率が高い当社の特徴を活かした混合剤や新しい製剤品などで製品ラインアップを拡充する他、販売する地域や適用対象作物の拡大など開発力強化に取り組みます。生産面では、原体、中間体の最適な生産・調達体制の確立に向けて不断の見直しを進める他、製造コスト低減と品質向上に取り組み、自社剤のコスト競争力を強化してまいります。これら自社剤の価値を最大化させる取り組みを通じて、収益力の強化と持続的な成長の確保に努めてまいります。

 農薬以外では、国内で上市した世界初の犬用抗膵炎薬は市場への浸透を進めながら販売拡大につなげるとともに、欧米での展開に向けた開発を加速して行きます。また、既に第2相臨床試験にまで進む大阪大学と共同で開発するバイオ医薬HVJ-Eについては、当社グループにない機能を補完すべく、外部との早期提携実現に向けて取り組みます。

 

2 【事業等のリスク】

 

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項は、以下の通りであります。但し、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在し、将来的に投資家の判断に影響を及ぼす可能性もあります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績などに与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。当社グループは、リスク管理の基本方針とその管理体制を「リスク管理規程」において定め、代表取締役社長を委員長とする企業リスク管理委員会を組織し、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理とリスクの未然防止を図っております。

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2020年6月26日)現在において判断したものであります。

 

(1)販売活動に関するリスク

① 無機化学事業の業績は、主たる製品用途である建築・自動車・家電・通信などの需要動向に大きく左右されることから、世界経済が低迷し、特に主要市場である日本やアジア地域での需要が縮小した場合、販売数量が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 海外競合メーカーが再編による事業拡大を目指し、また、中国メーカーが生産能力を増強している中、販売環境は厳しさを増してきております。このような状況の中、競合他社がシェア確保に向けた価格戦略をとった場合、市況が悪化する可能性があります。当社グループでは、高付加価値銘柄の販売に注力する他、需要家へのきめ細かな技術サービスなどにより、汎用品の販売競争とは一線を画すポートフォリオの転換を進めておりますが、想定を超えて競争環境が激化した場合、販売数量の減少や販売価格の低下などにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 有機化学事業の主力農薬は、グローバルに事業を展開しておりますが、各地域での天候や病害虫の発生状況などにより、その販売数量が変動します。異常気象による農産物の収穫量の減少や病害虫の発生減などにより農薬の需要が減少した場合、販売数量が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 農薬業界では、世界的な大型再編を通じて大手競合メーカーによる市場の寡占化が進む他、世界的にジェネリック農薬の普及が進み、価格競争が激しくなるなど、農薬市場の競争環境は厳しさを増してきております。当社グループでは、新規剤や混合剤の開発、対象作物の適用拡大を進めるほか、海外での現地法人設立や現地農薬会社への出資など、自主推進販売拠点の構築を進めておりますが、想定を超えて競争環境が激化した場合、販売数量の減少や販売価格の低下などにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 

 

(2)生産・原料調達に関するリスク

① 無機化学事業の主要原料であるチタン鉱石は、すべて海外からの調達に依存しております。また、サプライヤー側では、大手メーカーによる市場の寡占化が進んでいる中、操業事故や政情不安などが発生した場合、チタン鉱石の供給量が減少する可能性があります。当社グループでは、既存サプライヤーとの取引関係の維持強化や新規供給候補先の探索など調達ソースの複数化に努めておりますが、万一、サプライヤー側で事故などが発生して供給が滞った場合、製品の安定的な製造、販売に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 無機化学事業は装置産業であり、多額の設備投資や設備修繕費を必要としております。大型の設備投資の実施に当たっては、将来の需要予測や採算性を慎重に検討し決定しておりますが、市場動向などが変化した場合、新規設備の稼働率が十分上がらないことなどにより、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 有機化学事業の主力農薬の原料調達や製造委託については、安価で品質の高い取引先を求めて取り組んできた結果、特定国に集中する傾向にあります。当社グループでは、原料調達先や製造委託先の複数化を進めておりますが、相手先国での法規制の強化や取引先での操業事故などにより調達に制約を受けた場合、調達コストの上昇、生産の遅延や休止などを引き起こし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 原材料価格の上昇は、当社グループの製造コストの上昇につながります。これらのコストを自助努力で吸収できず、また、製品の販売価格にも十分転嫁できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 

(3)研究開発活動に関するリスク

① 農薬の新製品の開発には、多額の開発費用と長い期間を必要としております。当社グループでは、開発の意思決定後も、計画の進捗状況を定期的に検証し、必要に応じて計画を見直すなどしながら開発を進めておりますが、開発期間中の市場変化や技術革新などにより予定していた時期に新製品の上市ができず延期、または上市を断念せざるを得なくなった場合、当社グループの将来の成長と収益に影響を及ぼす可能性があります。

② 当社グループでは、有機化学事業の新たな成長基盤作りとして動物薬やバイオ医薬などの新規事業の開発に取り組んでおります。これら新規事業では、グループ内外の企業、研究機関などと連携しながら効率的な開発を進めておりますが、新薬の承認取得までに実施する臨床試験などにおいて良好な結果が得られなかった場合、開発を中止せざるを得ず、当社グループの将来の成長と収益に影響を及ぼす可能性があります。
 

(4)災害、事故、感染症等に関するリスク

① 当社グループは、災害などに備えて事業継続計画を策定し、各拠点で防災対策を実施しておりますが、主要な製造拠点である四日市工場が南海トラフ地震の被災想定地域に存在しているため、大規模な地震が発生し、津波・液状化などによる重大な被害を受けた場合、操業が中断し、生産や出荷が困難となるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 当社グループは、計画的な設備の更新と修繕などにより設備の予防保全に努めておりますが、大規模な設備トラブル、事故、火災などが発生した場合、操業が中断し、生産や出荷が困難となるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループは、新型インフルエンザなどの感染症に備えて、予防対策の徹底、感染症蔓延時の行動計画などを策定しておりますが、世界的に感染症の流行が拡大した場合、事業活動が制限され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

    特に、今般世界的に感染の拡大が続く新型コロナウイルスに関しては、流行が長期化した場合、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。具体的には、無機化学事業の主力市場である日本やアジアの景気が著しく悪化し、酸化チタンや電子部品材料などの需要が減少、また有機化学事業では、農産物価格の下落などで農家の購買意欲低下から農薬需要が減少するなどで、当社グループが取り扱う製品の販売が減少する可能性があります。生産面では、当社グループや国内外の生産委託先での従業員の感染や所在する国、自治体が発令する外出禁止令の他、サプライチェーン寸断による原料の調達難などから生産活動の縮小や中断を余儀なくされるなどで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 

(5)為替に関するリスク

① 当社グループの海外売上高比率は約50%で、米ドルやユーロなど円以外の取引通貨も多くあります。これら通貨に対する円高の進行は、売上高や営業利益の減少などにより業績に影響を与えます。当社グループでは、為替予約により為替相場の変動からの影響を最小限に抑える努力を行っておりますが、急激に円高が進行した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 

(6)情報の流出に関するリスク

① 当社グループは、保有する技術・営業などの事業に関する機密情報や個人情報などの外部流出を防止するため、社内規程の整備とその運用の徹底を通じて万全を期しております。しかしながら、不正アクセスやサイバー攻撃などの不測の事態によりこれらの情報が漏洩した場合、社会的信用の失墜などにより、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
 

(7)財務に関するリスク

① 当社グループは、将来の課税所得の予測を前提に繰延税金資産を計上しております。事業環境の急激な変化などにより将来の課税所得の予測が変更され、繰延税金資産の一部または全部が回収できないと判断した場合、繰延税金資産を減額せざるを得ず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 当社グループは、金融機関からの借入などによる資金調達を行っておりますが、世界経済の動向や各国の金融政策などにより金融情勢が変化した場合、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが金融機関との間で締結している借入契約には、財務制限条項が付されているものがあります。万一、業績悪化などにより同条項に抵触した場合、当社グループの資金調達や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループは、事業用の資産や他社への出資による株式など様々な資産を保有しております。これら資産については、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって残存する資産価額を回収できるかを定期的に検証しておりますが、将来の事業環境の変化により残存価額の回収が見込めなくなった場合、その回収可能性を踏まえ減損損失を計上しなければならず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

(8)品質に関するリスク

① 当社グループでは、製造・販売する製品の品質管理体制を整備しながら、顧客の要望に応えるべく品質水準の確保に努めております。また、品質トラブルが発生した場合に備えて、生産物賠償責任保険を付保するなどリスクの軽減に努めております。しかしながら、予期せぬ事象により大きな品質問題が発生し、損害賠償額が保険金額を上回った場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 

(9)環境に関するリスク

① 当社グループでは、生産活動を行う上で発生する排ガス、排水、産業廃棄物などの処理に関して、関係法令を遵守し、適切に処理を行っておりますが、不測の事態などにより生産活動の制限や追加的な対策コストが発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 

(10)法的規制に関するリスク

① 国内外で化学物質に関連する法的規制が強化されて行く中、当社グループでは、これら規制を遵守すべく対応を進めておりますが、当社グループの予想を大きく上回る規制強化が行われた場合、生産・販売活動の制限や追加的な対策コストが発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 世界的に農薬に関する法規制が強化されて行く中、当社グループでは、これに適切に対応すべく取り組んでおりますが、登録要件などの見直しにより当社グループの製品がその要件などを満たさなくなった場合、再登録が認められず失効、または開発中の新製品が予定していた時期に上市ができずに延期、もしくは上市を断念せざるを得なくなり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループは、将来の事業展開に有益である特許権や商標権(ブランド)などの知的財産権の取得・維持に努めております。併せて、他社の知的財産権の調査を行いつつ、これらに抵触して問題が発生することの無いように努めておりますが、当社の意図にかかわらず侵害などが発生した場合、販売差し止めや多額の損害賠償請求などを受ける可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 

 

(11)その他経営全般に関するリスク

① 当社グループは、製品の販路開拓や新規分野への事業展開などを目的に国内外の企業、研究機関などとの間で様々な提携関係を構築しております。しかしながら、予期せぬ市場環境の変化、当事者間の利害の不一致、事業目標の相違などにより、現状の提携関係を維持できない、または期待していた成果を十分に得られなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 当社グループでは、取引を行うに際して、相手先の業績、財務状態などを考慮して与信限度額を設定し、適切に債権管理を行っておりますが、取引先の予期せぬ信用不安などにより貸倒れなどが発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループは、グローバルに事業活動を展開しているため、日頃から各地域の社会情勢や政治情勢などの情報収集に努めておりますが、予期せぬテロや紛争などにより、当該地域の情勢が不安定化した場合、事業活動が制限され、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

④ 当社グループは、事業活動を進める上で必要な専門的な技量や経験を有する人材の確保に努めておりますが、少子・高齢化や労働市場の需給バランスの変化、人材流動化の進展などにより、必要とする人材の確保が計画通り進まなかった場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

 

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度の世界経済は、米中貿易摩擦の長期化と中国経済の減速に加え、英国のEU離脱交渉の難航など不安定な国際情勢を背景に全体として減速基調となりました。日本経済は、輸出や生産に弱さが見られながらも、雇用や所得環境の改善を背景に堅調な個人消費が景気を下支えしましたが、消費税増税後には陰りが見られるなどで景気の停滞感が高まりました。また、期末にかけては、新型コロナウイルスの感染拡大により世界各国の経済活動に混乱が生じ、内外の景況感が急速に悪化しましたが、当連結会計年度では当社グループの業績への大きな影響は見られておりません。2020年度においては、上期中には感染拡大による世界経済の低迷は避けられないものの、下期からは回復軌道に乗ると想定しております。
 このような状況の下、当社グループは第7次中期経営計画の2年目を迎え、事業の守りをしっかり固めつつ、成長に向けた攻めの取り組みを推し進めてまいりましたが、無機化学事業を中心に厳しい事業環境に直面しました。主力事業を取り巻く市場環境は、酸化チタンでは、期前半に堅調であった国内需要が消費税増税後には落ち込みが見られ、海外では、中国の景気停滞の影響を受けアジアを中心に需要は減少し、市況は下落基調で推移しました。世界の農薬出荷額は、農業大国ブラジルでの好調な穀物生産を背景に回復基調を維持しましたが、当社グループの主力市場である日本、欧州などでは異常気象による出荷への影響が見られました。
 この結果、当連結会計年度の売上高は1,010億円(前期比53億円減)、営業利益は61億円(前期比51億円減)となりました。営業外では、前連結会計年度の為替差益が差損に転じるなどで経常利益は53億円(前期比57億円減)、親会社株主に帰属する当期純利益は23億円(前期比63億円減)となりました。

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

 

(無機化学事業)

酸化チタンの販売は、国内では、期末にかけて数量が落ち込んだものの、期前半の堅調な出荷に支えられ前連結会計年度並みとなりましたが、期を通じて輸出は低調で出荷量が大きく減少し、売上高は397億円(前期比28億円減)となりました。
 機能材料の販売は、導電性材料が前連結会計年度を上回りましたが、電子部品向けが関連業界の需要不振の影響を受け下回るなどで売上高は117億円(前期比5億円減)となりました。
 損益面では、酸化チタンの販売数量の減少とこれに伴う操業調整による固定費負担増に加え、チタン鉱石価格の続騰などにより販売、原価の両面から収益は押し下げられました。
 この結果、無機化学事業の売上高は515億円(前期比33億円減)、営業利益は37億円(前期比35億円減)となりました。

 

(有機化学事業)

農薬の国内販売は、大雨や台風により農業生産が大きな被害を受けるなど厳しい販売環境の中にあって、売上は前連結会計年度を下回りました。
 海外販売は、欧州で作物の適用拡大を受けるなどで殺虫剤が大きく伸長した他、主力市場での新規剤の本格販売開始などによる増収があったものの、他社剤の取り扱いを取り止めた影響などを受け、売上は前連結会計年度を下回りました。
 農薬以外では、動物薬や受託製造する医薬品の原薬販売は前連結会計年度を下回りました。
 損益面では、減収と研究開発費の増加などにより減益となりました。
 この結果、有機化学事業の売上高は461億円(前期比14億円減)、営業利益は44億円(前期比14億円減)となりました。

 

(その他の事業)

その他の事業の売上高は33億円(前期比5億円減)、営業利益は5億円(前期比7千万円減)となりました。

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比37億円増加の1,724億円となりました。これは、たな卸資産が69億円、有形固定資産が31億円それぞれ増加しましたが、現金及び預金が30億円、受取手形及び売掛金が18億円、投資有価証券が10億円、繰延税金資産が11億円それぞれ減少したことなどによるものです。

負債は、前連結会計年度末比24億円増加の957億円となりました。これは、支払手形及び買掛金が20億円、長短借入金・社債が18億円それぞれ増加しましたが、未払法人税等が3億円、環境安全整備引当金が8億円それぞれ減少したことなどによるものです。

純資産は、利益剰余金が18億円増加しましたが、その他有価証券評価差額金が9億円減少したことなどにより、前連結会計年度末比13億円増加の766億円となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ30億円減少し、209億円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは33億円の収入(前期比15億円の収入減)となりました。これは、税金等調整前当期純利益40億円、減価償却費及びその他の償却費48億円などの資金増加要因がありましたが、売上債権・たな卸資産・仕入債務の増減による運転資金の増加31億円、環境安全整備引当金の減少8億円、法人税等の支払9億円などの資金減少要因があったことなどによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、69億円の支出(前期比16億円の支出減)となりました。これは、固定資産の取得などによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、5億円の収入(前期比30億円の収入増)となりました。これは、長短借入金・社債は18億円純増しましたが、リース債務及び割賦債務の返済7億円や配当金の支払4億円などによるものです。

 

当社グループは、事業の収益力を高めることで経営環境の変化に耐え得る強固な財務基盤の構築を目指しております。具体的には、安定した期間利益を計上し、着実に自己資本比率を高めるとともに、高いキャッシュ・フローの創出力を通じた有利子負債の削減を進めております。

当社グループの資金需要の主なものは、原料費、労務費、委託費など製品の製造にかかわる製造費用の他、販売費や農薬を中心とした研究開発費を含む一般管理費など事業活動に必要な運転資金に加えて、装置産業である酸化チタンを製造するための設備の新設や維持更新を中心とした設備資金であります。

近年のキャッシュ・フローの状況については、無機化学事業の主力酸化チタンの主原料であるチタン鉱石価格の高騰と海外の酸化チタン需要の低下による影響などを受けてたな卸資産が増加するなどで、営業活動によるキャッシュ・フローは低下傾向にあります。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、成長分野である機能材料の増産に向けた新規の設備投資を推進するなどで営業活動によるキャッシュ・フローを上回る状態が続いています。

この結果、近年の有利子負債残高は、2019年3月末を底に漸増傾向にあるものの、着実な期間利益の計上を通じて自己資本比率は44%台を維持しています。

今後の資金需要の動向については、引き続きチタン鉱石価格が高止まりする他、研究開発費の増加などで高い資金需要が想定され、これらに対応するため、金融機関との間で総額80億円のコミットメントライン契約を締結しております。

 

当社の企業集団のキャッシュ・フロー指標を示すと、次のとおりであります。

 

 

2016年3月期

2017年3月期

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

自己資本比率(%)

36.1

40.1

42.0

44.7

44.5

時価ベースの自己資本比率(%)

18.9

28.4

32.6

26.7

12.8

債務償還年数(年)

6.6

4.0

3.1

10.1

15.8

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

7.1

12.8

19.0

6.6

5.5

 

(注)1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値より算出しております。

2 有利子負債にはリース債務等を含んでおります。

3 各指標は以下の算式により計算しております。

※自己資本比率:自己資本/総資産

※時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

 (株式時価総額は期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。)

※債務償還年数:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー

※インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。

なお、連結決算日における資産及び負債の連結貸借対照表上の金額及び連結会計年度における収益及び費用の連結損益計算書の金額の算定には、将来に関する判断、見積りを行う必要があり、当社グループは過去の実績や状況等を勘案し、合理的に判断しておりますが、今後の環境、条件等の変動により、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 追加情報」に記載しております。

当社グループとしては、以下に記載する会計上の見積りは当社グループにとって重要であると判断しております。

①投資の減損

当社グループは、取引関係維持のために販売先や金融機関の株式を保有しております。これらの株式には、価格変動性の高い公開会社の株式と株価の決定が困難な非公開会社の株式が含まれております。公開会社の株式への投資の場合、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回収可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。また、非公開会社の株式への投資の場合、それらの会社の純資産額が取得原価に比べ50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回収可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。

 

②繰延税金資産

当社グループは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しております。評価性引当額の算定においては、将来の課税所得と実現性の高いタックスプランニングに基づいて検討を行っております。

なお、当連結会計年度における将来の課税所得については、新型コロナウイルスによる影響が2020年夏頃まで続くものの秋以降は回復軌道に乗るという前提のもと見積りを行っております。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

 

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

無機化学事業

56,165

△2.9

有機化学事業

32,735

△8.4

合計

88,900

△5.0

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっております。

3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 受注状況

当社グループは、主として見込み生産を行っております。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

無機化学事業

51,527

△6.1

有機化学事業

46,174

△3.1

その他の事業

3,364

△13.4

合計

101,066

△5.0

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

長瀬産業株式会社

10,423

9.8

10,127

10.0

 

3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

 

経営上の重要な契約等は、次のとおりであります。

営業上の重要な契約

 

契約締結先

契約発効日

摘要

(スイス)
SYNGENTA AG(シンジェンタ アクチエンゲゼルシャフト)

1997年12月17日

 (契約内容)当社が所有する一定の除草剤、殺菌剤及び殺虫剤(4剤)のアジア・パシフィック地域を除く世界市場における販売に関する権利の供与

 (有効期間)当該製品の登録が継続する期間

 (対価)一時金(クロージング時及び登録取得時)

 

 

5 【研究開発活動】

 

当社グループは「『社会』、『生命』、『環境』に貢献する。」という基本理念に基づき、無機化学、有機化学の各分野における新製品の開発や生産技術の向上に取り組むとともに、世界的な関心が高まる環境、エネルギー、バイオ、IT、食料等の各領域において、無機、有機の垣根にこだわることなく、新規事業の探索にも取り組んでおります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、9,150百万円となりました。

 

セグメントごとの研究開発は、次のとおりであります。

 

(無機化学事業)

 酸化チタン顔料については、塩素法と硫酸法の2つの製造プロセスを自社で有する特徴を活かし、塗料、インキ、プラスチックなどの各分野で市場ニーズに対応した高付加価値銘柄や顧客の厳しい要求に応えるカスタマイズ銘柄などの開発に注力して取り組んでおります。特に塗料分野においては、平滑な表面で底艶を抑制することができる新たな艶消し用酸化チタンを製品化するとともに、黒色などの濃色系でも高い艶消し効果を発揮できる透明タイプの開発も進め、建材内外装や工業分野を始めとする多方面での艶消しニーズに対応しております。
 機能材料については、次世代のコア事業としての盤石な地位を確立すべく、酸化チタン応用製品の一層のスペシャリティー化と新規分野の開拓に注力して取り組んでおります。電子材料分野では、電気自動車や第5世代通信(5G)用に需要が期待される次世代積層セラミックコンデンサー(MLCC)用の高純度酸化チタンの開発を継続しており、MLCC用チタン酸バリウムの原料として、優れた分散性がユーザーから評価されております。また、環境・省エネルギー問題に対応する素材として、耐候性の優れた黒色系遮熱材料が多方面で評価され、建築用途からスポーツ分野など、黒色でかつ赤外線反射が求められる分野での需要増を見越した量産体制が整いつつあります。この他、意匠性材料、導電性材料及び光触媒材料など、独自技術によるユニークな製品開発と市場開発を推進しております。
 新しい無機事業の創出を目的として有機分野と無機分野の融合を図り、新しい価値を創生した商品の研究開発にも取り組んでおります。当社有機化学部門とのコラボレーションの他、大学との共同研究や社外技術の導入などオープンイノベーションへの取り組みも積極的に進めており、あらゆる場面で成長に繋がる研究開発活動を行っております。

当事業における研究開発費は、1,468百万円となりました。

 

(有機化学事業)

農薬については、自社開発原体を中心に新規製剤や新規混合剤の開発の他、農薬登録国や適用作物の拡大などに向けた研究開発に注力して取り組んでおります。
 近年開発した新規剤では、うどんこ病に卓効を持つ殺菌剤ピリオフェノンが各国で農薬登録を取得後、上市が進んでいる他、菌核・灰色かび病など広いスペクトラムを持つ殺菌剤イソフェタミドは、2015年のカナダ、米国での上市を皮切りに、2018年には日本、欧州でも販売を開始、さらに中南米、大洋州での商業化を進めております。また、チョウ・蛾類を初め広いスペクトラムを持つ殺虫剤シクラニリプロールは、2017年に韓国、2018年には日本、米国、カナダでも販売を開始し、現在はアジア及び中南米を中心に開発を進めております。安全性に優れるトウモロコシ用除草剤トルピラレートは、国内では2017年より、米国、アルゼンチンでは2018年から販売を開始しており、さらにカナダ、韓国、フィリピンでも販売開始に向け準備を進めております。水稲用除草剤ランコトリオンは、2019年2月に国内で登録認可され、更に混合剤の登録も順調に取得しており、2021年より本格的に販売を開始する予定であります。
 さらに、国内の食の安全・安心指向の高まりや、抵抗性発達のために有効な既存化学農薬が不足しているなどの市場ニーズに対応するため、微生物殺菌剤、接触型忌避剤、及び天敵昆虫等の製品群の開発にも注力しております。特に2種の天敵昆虫類については、農家の利便性に配慮した簡易型組立資材(バンカーシート)を付帯した製品を開発、農食事業26070Cで実用化技術を確立し、2016年からバンカーシートと組み合わせた3製品をJA全農の全国組織を通じて販売しております。また、2019年より食品添加物を有効成分とするコナジラミ忌避剤ベミデタッチを販売開始しました。近未来の植物防疫の姿を見据えると、これらと安全性の高い当社の化学農薬群を組み合わせて、当社独自のIPMプログラムを確立するとともに、従来の化学農薬コンセプト・分野とは異なる場面でも、当社全製品の普及拡大を目指してまいります。
 当社の農薬事業は、自社での創生・開発をベースとしておりますが、環境変化の激しい昨今、他社開発剤の導入や他社との共同開発にも積極的に取り組んでおり、2010年以降海外企業から導入した水稲除草剤を国内で開発・上市したほか、2015年には海外企業が発明した新規の非選択性除草剤を全世界で共同開発する契約を締結し、第一優先国である米国、カナダ、ブラジル、オーストラリア、アルゼンチンで登録申請を済ませており、更に東南アジア、中南米等でも開発、登録作業を開始しております。なお、審査期間の短いスリランカでは登録を取得、2019年より販売を開始しております。
 農薬以外では、ライフサイエンス事業(医薬・医療機器関連)についても、特色ある商品開発を進めております。当社の有機化学コア技術に基づくCF3ピリジン化合物(医薬用中間体)を、医薬原薬「セビメリン塩酸塩」に続く製造受託事業の柱と位置づけ、新たな受託生産につなげるべく、普及活動に取り組んでおります。
 バイオ研究者向けの研究用試薬「ゲノムワン」(遺伝子機能解析用HVJ-Eベクターキット並びに関連製品)については、国内外で販売を行っており、利用者の要請にも対応して、より高い機能開発に取り組んでおります。HVJ-Eについては、新規バイオ抗がん剤としての開発にも取り組んでおり、大阪大学医学部附属病院と連携して、医師主導治験により臨床開発を進めております。悪性黒色腫(メラノーマ)、悪性胸膜中皮腫(中皮腫)及び前立腺がん対象の第Ⅰ相試験においてヒトでの安全性が確認されました。2018年12月よりメラノーマ対象(免疫チェックポイント阻害剤との併用)及び中皮腫対象(標準療法;シスプラチン+アリムタとの併用)の第Ⅱ相試験が始まり、併用での安全性が確認されました。現在、有効性主体の評価を進めております。前立腺がんについても、引き続き科学技術振興機構(JST)の産学共同実用化開発事業として非臨床試験や臨床開発を推進してまいります。
 また、長年にわたる農薬、医薬創製の研究・開発で培った技術とシーズ化合物を活かし、動物薬の研究開発に取り組んでおり、第一弾としてIKV-741(フザプラジブナトリウム)がイヌ膵炎急性期用抗炎症剤『ブレンダZ』として共同開発先の日本全薬工業(株)から発売されております。また、本薬剤は米国でも開発を進めており、2020年度に臨床試験実施、2021年度に商業化を目指しております。さらに、皮膚系疾患や駆虫系の薬剤において、後続するパイプラインの整備を推進中であります。

当事業における研究開発費は、7,562百万円となりました。

 

なお、当連結会計年度におけるセグメントに帰属しない全社共通の研究開発費の金額は119百万円となりました。