文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、社会に存在する意義である「パーパス」を「化学技術でより良い生活環境の実現に貢献し続ける」こととし、この決意のもと企業活動において全構成員が共有すべき基本的・普遍的な価値観を表すものとして、基本理念と行動基準を定めております。
<基本理念>
・「社会」、「生命」、「環境」に貢献する。
・株主、顧客・取引先、地域社会、従業員を大切にする。
・遵法精神を重んじ、透明な経営を行う。
<行動基準>
・社会から信頼される事業活動を行うため、社会規範、法令、会社の諸規定を遵守し、高い倫理観と良識をもって行動する。
・ものづくりに際しては、地球環境との調和を図り、常に安全確保に万全を期し、無事故・無災害に努める。
・相互協力、相互理解により人権を尊重し、風通しのよい働きやすい職場をつくる。
・企業活動の透明性を保つため、企業市民としてコミュニケーションを重視し、企業情報を適時、的確に開示する。
(2) 目標とする経営指標、中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
当社グループは、長期ビジョン「Vision 2030」とそれに基づく中期経営計画(2024~2026年度)「Vision 2030 Stage Ⅱ」に取り組んでおります。
1.長期ビジョン「Vision 2030」
当社グループは、創立100周年を機に、10年先の2030年にありたい姿を描き、2030年に向けた長期ビジョン「Vision 2030」として「独創・加速・グローバル。化学の力で暮らしを変える。」を制定し、以下の経営目標や取組方針などの実現を目指します。
(1) 経営目標(2030年)
・連結営業利益 240億円以上(想定連結売上 1,800億円以上) ROE 10%以上の安定確保
・株主還元 安定的な株主還元の継続
(2) 基本的な取組方針
・コアコンピタンスである「化学技術」を中心として「独自の技術開発力」「品質・環境対応力」「グローバルな協業力」 の“3つの強み”とそれらを支える「経営推進力」により「Vision 2030」の達成に取り組んでいきます。
・サステナブルな社会の実現に向けて貢献するとともに、その事業活動を通じて企業価値の向上を両立します。
(3) 事業方針と重点施策
1) 有機化学事業
事業方針:「顧客の価値向上に直結する独自製品を世界中に供給し、人々の食、健康、生命を支えてサステナブルな社会の実現に貢献する。」
重点施策:・バリューチェーンを意識した開発・商業化の推進
・自社技術の錬磨・進化による価値創造加速と成長路線復活
・主力製品の世界一低コスト製造と顧客への安定供給
2) 無機化学事業
事業方針:「酸化チタンで培った技術をベースとした新たなる価値を創造し、環境並びに情報化社会を支えてサステナブルな社会の実現に貢献する。」
重点施策:・酸化チタンの光学的特性を多様化させて、新たな価値創造を実現
・ICT普及や自動車EV化などの社会課題解決に機能性材料で貢献
・生産構造改革により環境負荷低減と生産効率化とを両立
2. 中期経営計画(2024~2026年度) 「Vision 2030 Stage Ⅱ」
(1) 基本方針
長期ビジョン「Vision 2030」からバックキャストした2段階目の中期経営計画「Vision 2030 Stage Ⅱ」は、「Vision 2030 Stage Ⅰ」から継続し、サステナブルな企業価値創造を目指すことを基本方針とします。そして、独創のための研究・技術開発力の強化と効率化、当社の技術力を海外市場で発揮するためのグローバル化の加速、ROIC経営の推進、並びに、安定した株主還元の継続、等の重点施策の実施により、事業基盤の強化と事業構造の改革を推進します。
(2) 経営目標
・連結営業利益 190億円以上(想定売上高1,600億円以上)、ROE 10%以上
・株主還元方針:安定的な株主還元の継続
-2026年度に向けて連結配当性向40%を目標とします。
-機動的な自社株買いを実施します。
(3) 重点施策
全社及び各事業レベルの取り組むべき重点施策は次の通りで、毎年事業計画を見直し、最終年度の業績目標の達成に向け取り組みます。
全社
□ 独創のための研究・技術開発力の強化と効率化
□ グローバル化の加速
□ ROIC経営の推進
□ 安定した株主還元の継続
□ 環境・社会への貢献
□ DX推進
□ 人的資本経営の推進
□ コーポレートガバナンスの継続・高度化
有機化学事業
□ 新規化学農薬及び動物用医薬品等の開発・商品化の促進
□ 農薬の安定供給・製造コスト低減により当社世界市場占有率の拡大
□ 世界各国での農薬登録の取得・維持
□ 動物用医薬品PANOQUELL®の米国での拡販、世界主要国への展開
□ 農薬の販社複数起用など戦略的・革新的な営業施策の実行
□ 他社M&Aや提携推進、他社剤導入による事業規模拡大
□ バイオロジカル分野の開発・商品化
無機化学事業
□ 無機化学事業の構造改革
-組織改編による無機化学事業本部の設置
-汎用酸化チタンから機能性材料ドメインへの製品ポートフォリオの本格転換
-製造拠点と製品ラインナップの集約と合理化
□ 電子部品材料の拡販と生産能力増強
□ 新規開発品の市場投入・新規ビジネスの創出によるビジネス拡大
□ 海外での技術営業力の向上
□ 他社との協業による事業拡大
□ 主要原燃料の有利調達の実現
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
2024年度から中期経営計画「Vision 2030 Stage Ⅱ」をスタートしました。その中でパーパスのもと、2050年にありたい姿を「健康で心豊かな暮らしを実現し、人と社会から愛されるグローバルな会社」と定め、事業活動を通じて社会課題を解決することで、持続可能な地球環境・社会の実現に貢献し、新たな企業価値を創造し続けます。
「Vision 2030 Stage Ⅱ」を推進するにあたり、取締役会のもとサステナビリティ推進委員会を設置し、統制を強化しました。また、サステナビリティ推進室を新たに設け、サステナビリティ経営の施策の企画立案・推進を加速します。それぞれ具体的な取り組みは、サステナビリティ推進室の傘下にある各チームにて遂行しております。
・ 気候変動対策チーム・・・カーボンニュートラルに向けたCO2排出量の把握・削減やICP(インターナル
カーボンプライシング)の導入、環境配慮型製品の認定制度の設計、生物多様性の
保全を推進
・ 人権デューデリジェンス推進チーム・・・当社グループのみならず、サプライチェーンを含めた人権リスクに
ついて、PDCAを推進
・ 人的資本経営推進チーム・・・当社グループ全体の価値創造の源泉である人的資本の拡充や健康経営を推進
・ 統合報告書制作チーム・・・財務、非財務に係る当社グループの取り組み状況の的確な開示を推進
・ マテリアリティ見直し検討チーム・・・変化する社会環境と経営戦略を踏まえたマテリアリティ(重要課題)
の再特定と持続的成長の推進
各チームのメンバーは、取締役や執行役員をリーダー・サブリーダー等におき、当社関係部門、並びに関係会社も含めたメンバーで構成されております。
各チームの取り組みや施策については、1年に2回以上開催されるサステナビリティ推進委員会にて審議・報告され、承認事項は、取締役会に諮って決議されます。また、全チームを含めたサステナビリティ推進室の活動進捗状況は、3カ月ごとに取締役会に報告され、取締役会において監督を行っております。
○気候変動
当社グループにおける主な気候変動リスク・機会を外部情報に基づいて整理し、それぞれのリスク・機会に関する将来予想データを収集しました。
これに基づいて、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会と気候変動に起因する物理的リスク・機会について1.5~2℃/4℃シナリオのそれぞれで検討し、当社事業に2050年までに影響を与え得る重要なリスクと機会を分析しました。その結果、1.5~2℃シナリオにおいて、CO2排出への炭素税賦課により操業コストが大きく上昇するリスクなどを特定しました。
この対応として、当社グループ全体でCO2排出量削減に取り組むことの重要性を認識しましたので、2050年のカーボンニュートラルに向け、各対応策を計画に沿って推進していきます。なお、計画は各事業を取り巻く環境や社会の変化に応じて適宜見直します。
表)リスク重要度評価及びシナリオ分析から特定した事業リスク・機会
(時間軸) 短:0-5年、中:5-10年、長:10年以上
(財務影響) 大:±10億円以上、小:±10億円未満
*1.5℃シナリオ:2030年の炭素価格130ドル/tCO2、2050年の炭素価格250ドル/tCO2と想定(IEA Net Zero By 2050 参照)
〇人的資本、多様性
2030年までに国内外の社会で起こるとみられる、気候変動や食糧問題をはじめとする数々の変化を前提に、当社グループのパーパスのもと、サステナブルな社会の実現に向けて貢献するとともに、その事業活動を通じて企業価値の向上を両立させるためには、当社グループの価値創造のコアがドライビングフォースとして機能し続けることが必要です。それら価値創造のコアとその拡充に必要と考えられる人事施策である人的資本項目を図のように特定・関連付けております。

「人財が競争力の源泉」であるとの考えのもと、人的資本を拡充し経営戦略の達成につなげるためには、これまでの延長線上にない将来動向を踏まえ、新たな挑戦による改革・変革を評価する文化と仕組みが必要であることから、図のように当社グループの人財マネジメント方針を策定しました。これを常に人財に対する考え方の軸とすることで、会社のパーパスと個人のキャリアビジョンが重なりあい、会社とともに個人も成長できるようにすることを目指しております。

特に人財育成においては、目指す人財像を「ものごとの基本を理解し、実践した上で“変える”ために、“変わる”ことのできる人」と定めており、その具体化として以下の5つを掲げ、その実現のための研修教育体系を整えております。
1.プロフェッショナルとしての責任感を持ち、高い成果を生み出す人財
2.変化に対し、敏感・柔軟で、難局を乗り越える力のある人財
3.会社の進むべき道、取り組むべき課題を捉え、推進する人財
4.常に一段上、一歩前を目指し、進化し続ける人財
5.ステークホルダーと協働し、仕事を通じてともに成長できる人財
今後も「Vision 2030」の達成に向け、当該人財を育成するための施策、また当該人財が定着するための環境整備を推進するとともに、事業及びその事業環境の変化に応じ、必要なタイミングで戦略・施策の見直しや追加を実施します。
当社グループは、16のマテリアリティ(重要課題)の中から、8つの最重要課題「気候変動・環境負荷低減」「技術開発力」「サプライチェーンマネジメント」「労働安全衛生・保安防災」「ダイバーシティ&インクルージョン」「BCP、リスクマネジメント」「コーポレート・ガバナンス」「DXの推進、業務効率化による働き方改革」を特定しております。
当社グループとして特に「気候変動対策の推進」、「人権リスクへの対応」や「人的資本経営の推進」は喫緊の重要課題であることを認識し、サステナビリティ推進室のもとに気候変動対策チーム、人権デューデリジェンス推進チーム並びに人的資本経営推進チームを設置しております。
各チームでは、気候変動、人権、並びに人的資本経営に係るリスクの検討を行い、その結果をサステナビリティ推進委員会で評価・管理し、必要に応じて企業リスク管理委員会への報告を行っております。
○気候変動
当社グループはCO2排出量(Scope1+Scope2)の削減目標を下記の通りに設定しております。今後も引き続きカーボンニュートラルに向けた排出量削減に取り組むことにより、気候変動影響の緩和と適応を推進してまいります。目標と2023年度までの進捗は、以下の通りです。

表)当社グループの温室効果ガス(GHG)排出量[千t-CO2]
GHG排出量はGHGプロトコルに基づき算定
なお、過年度を含めて、Scope1は温対法を考慮し、他社へのエネルギー供給に係る排出量を差し引いています。
表)Scope3のGHG排出量[千t-CO2]
当社グループのGHG排出量(Scope1+Scope2)は、前年と同水準で推移しています。また、サプライチェーン排出量であるScope3は、原料調達費、外部委託費や設備投資額などの増加に伴い増加しました。
CO2排出量の最も多い四日市工場では、省エネルギー活動の推進だけでなく、バイオマス由来の再生可能エネルギー電力の活用、エネルギー負荷の少ない設備の導入や熱効率向上技術の検証、蓄熱材料の量産開発などさまざまな面から取り組んでいます。
〇人的資本、多様性
価値創造のコアに関連するものとして特定した項目について、その指標と目標を以下のように設定しております。
(注) 特に記載がない限り、単体の集計値を記載
※1 出向者の取扱いについては、社外への出向者を含め、社外からの出向者を除くものとしております。
※2 単体生産拠点のみで算出しております。
(1)リスクマネジメント体制
当社グループは、リスク管理の基本方針とその管理体制を「リスク管理規程」において定め、企業リスク管理委員会を組織し、事業を取り巻くさまざまなリスクに対して適切な管理とリスクの未然防止を図っております。企業リスク管理委員会は、代表取締役社長を委員長とし、当社の各事業本部長から構成されております。
当社グループの企業リスク管理委員会は、年2回及び必要に応じて臨時に開催され、リスクアセスメントの取り纏めと対策を優先するリスク(対策優先リスク)等の選定、リスク対策計画の審議、リスク対策の実施状況の確認などを行い、その審議内容は取締役会へ報告されております。
なお、「重要課題(マテリアリティ)」「気候変動リスク」「人権に関わるリスク」等についてはサステナビリティ推進委員会が管轄し、企業リスク管理委員会と連携を取りながら対策の推進を図っております。

(2)リスクマネジメントのプロセス
①リスクアセスメント
当社グループでは、定期的に、各部門の事業構造の変化やグローバルな社会情勢等の当社を取り巻く外部環境の変化を考慮して、リスクの洗い出しと各リスクの影響度と発生可能性の評価を実施しております。これらリスクアセスメントの結果は、企業リスク管理委員会での審議を経て、リスクマップに一覧化しております。
②リスク対策計画の立案、推進及びモニタリング
リスクアセスメントの結果に基づき、各リスクに対する責任者や対策部門が選定されます。選定された責任者や部門は、リスクの回避・低減・移転及びその他必要な措置を検討し、対策計画を立案します。この計画の進捗は、別に設定されたモニタリング責任者又は部署によりモニタリングされ、その結果に応じて対策計画の見直しや対策の改善が図られます。

(3)当社グループのリスク
当社グループでは、各リスクの対策優先度に基づき、対策優先リスクや重要リスクなどにリスクを区分しております。当社にとって、最も優先度が高いリスクについては、「対策優先リスク」として企業リスク管理委員会の審議を経てリスク対策計画が作成され、その進捗についても企業リスク管理委員会による管理を行っております。
① リスクマップ

(注) 1 当社グループの事業活動に影響を与える可能性のあるリスクを記載しておりますが、これらのリスクは必ずしもすべてのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられるリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
2 当社では、リスクを「当社に物理的、経済的もしくは信用上の損失又は不利益を生じさせるすべての可能性」と定義しております。
3 当社では、リスクの大きさ(影響度と発生可能性)については、リスクに対する評価者の認識を揃えるため、リスクシナリオを設定した上で損害額を評価しております。ここでのリスクシナリオは、ワーストシナリオ(発生する可能性がある最大の脅威)を採用しております。
4 リスクの評価は当連結会計年度の期中を通じて行ったものです。
② リスクと対策
・対策優先リスク
・重要リスク(抜粋)
当期(2024年4月1日から2025年3月31日)は、国内景気が緩やかな回復を示す一方、個人消費や設備投資の伸びは限定的で、回復力に地域や業種によってばらつきが見られました。国際的には、トランプ氏の米大統領再選に伴う通商政策の先行き不透明感に加え、地政学リスクや継続するインフレ圧力、為替市場の変動などが重なり、世界経済は不安定な推移を続けました。
当社グループの主力事業を取り巻く環境においては、有機化学事業では、主力製品である農薬が欧州での販売が好調により堅調に推移しました。無機化学事業では、機能性材料は国内販売が低調だったものの、海外販売が好調に推移しました。一方、酸化チタンは国内需要の落ち込みが影響しました。
このような状況下、当社グループは、長期ビジョンとして「Vision 2030 独創・加速・グローバル。化学の力で暮らしを変える。」を掲げ、2024年度から2026年度の3か年の中期経営計画「Vision 2030 StageⅡ」に取り組み、サステナビリティを基盤に据えた事業活動の推進を強化し、企業価値向上を目指しております。
この結果、当期の連結業績は、売上高1,451億円(前期比67億円増)、営業利益104億円(前期比10億円減)、経常利益113億円(前期比34億円減)、親会社株主に帰属する当期純利益84億円(前期比4億円増)となりました。
事業の種類別セグメントの状況は次のとおりであります。
(有機化学事業)
農薬では、海外販売について、欧州では湿潤な気候の影響により殺菌剤の販売が好調に推移しました。また、殺虫剤等安定した供給を維持できたこともあり堅調に推移しました。米州では、殺菌剤において流通在庫の問題は解消しつつあるものの、中国製ジェネリック品との価格競争が激化しており、回復は緩やかにとどまりました。一方、除草剤は流通在庫の過多により販売が低迷しました。
農薬以外では、動物用医薬品や医薬品原末などのヘルスケア事業の売上高が前期を下回りました。
この結果、有機化学事業の売上高は、677億円(前期比6億円増)、営業利益は124億円(前期比11億円増)となりました。
(無機化学事業)
機能性材料では、電子部品用材料の国内販売が低迷した一方、海外販売は好調に推移しました。導電性材料も海外向けを中心に堅調な販売が継続し、売上高は151億円(前期比3億円増)となりました。酸化チタンでは、建築用途向けを中心に国内需要が低迷し、国内販売は低調に推移しましたが、在庫の適正化を目的にアジア向けの拡販に注力した結果、販売は増加し売上高は581億円(前期比48億円増)となりました。
損益面では、EU等でのアンチダンピング規制により安価な中国製酸化チタンがアジア市場に流入し、市況が悪化したことで収益性が低下したことや、在庫適正化のため生産調整を行ったことにより固定費負担が増加したことなどから、減益となりました。
この結果、無機化学事業の売上高は732億円(前期比52億円増)、営業利益は15億円(前期比16億円減)となりました。
(その他の事業)
売上高は41億円(前期比9億円増)、営業利益は7億円(前期比4億円増)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比7億円増加の2,250億円となりました。これは、現金及び預金が49億円、有形固定資産が50億円、投資有価証券が18億円それぞれ増加しましたが、売掛金が22億円、棚卸資産が85億円減少したことなどによるものです。
負債は、前連結会計年度末比75億円減少の1,106億円となりました。これは、長短借入金・社債が14億円、未払費用が8億円それぞれ増加しましたが、支払手形及び買掛金が61億円、電子記録債務が6億円、未払法人税等が5億円減少したことなどによるものです。
純資産は、利益剰余金が57億円、為替換算調整勘定が15億円それぞれ増加し、前連結会計年度末比83億円増加の1,144億円となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ49億円増加し、249億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、183億円の収入(前期は28億円の支出)となりました。これは、税金等調整前当期純利益108億円、減価償却費及びその他の償却費57億円、売上債権の減少21億円、棚卸資産の減少99億円などの資金増加要因がありましたが、仕入債務の減少72億円などの資金減少要因があったことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、114億円の支出(前期は70億円の支出)となりました。これは、固定資産の取得などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、23億円の支出(前期は115億円の収入)となりました。これは、長短借入金・社債の純増14億円、リース債務及び割賦債務の返済10億円、配当金の支払26億円などがあったことによるものです。
当社グループは、事業の収益力を高めることで経営環境の変化に耐え得る強固な財務基盤の構築を目指しております。具体的には、安定した期間利益を計上し、着実に自己資本比率を高めるとともに、高いキャッシュ・フローの創出力を通じた有利子負債の削減を進めております。
当社グループの資金需要の主なものは、原料費、労務費、委託費など製品の製造にかかわる製造費用の他、販売費や農薬を中心とした研究開発費を含む一般管理費など事業活動に必要な運転資金に加えて、四日市工場操業設備の新設や維持更新及び有機研究開発施設の新設などの設備資金であります。
原料鉱石価格の高止まりや設備投資、研究開発による高い資金需要が引き続き想定されることから、今後の資金調達については、手元資金や営業活動によるキャッシュ・フローから創出するとともに、金融機関からより安定的で低コストの借入を実施していきます。さらに突発的な資金需要に備え、主要金融機関との間で180億円のコミットメントライン契約を締結し、手元流動性を確保しております。
当社の企業集団のキャッシュ・フロー指標を示すと、次のとおりであります。
(注)1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値より算出しております。
2 有利子負債にはリース債務等を含んでおります。
3 各指標は以下の算式により計算しております。
※自己資本比率:自己資本/総資産
※時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
(株式時価総額は期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。)
※債務償還年数:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
※インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い
4 2023年3月期及び2024年3月期は、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、債務償還年数及びインタレスト・カバレッジ・レシオの記載を省略しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
なお、連結決算日における資産及び負債の連結貸借対照表上の金額及び連結会計年度における収益及び費用の連結損益計算書の金額の算定には、将来に関する判断、見積りを行う必要があり、当社グループは過去の実績や状況等を勘案し、合理的に判断しておりますが、今後の環境、条件等の変動により、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしては、以下に記載する会計上の見積りは当社グループにとって重要であると判断しております。
① 投資の減損
当社グループは、取引関係維持のために販売先や金融機関の株式を保有しております。これらの株式には、価格変動性の高い公開会社の株式と株価の決定が困難な非公開会社の株式が含まれております。公開会社の株式への投資の場合、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回復可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。また、非公開会社の株式への投資の場合、それらの会社の純資産額が取得原価に比べ50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回復可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。
② 繰延税金資産
当社グループは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しております。評価性引当額の算定においては、将来の課税所得と実現性の高いタックスプランニングに基づいて検討を行っております。
③ 固定資産の評価
当社グループは、資産又は資産グループに減損の兆候を示す事象がある場合には、当該資産又は資産グループについて、減損損失を認識するか否かの判定を行っております。減損の兆候を示す事象とは、資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、又は、継続してマイナスとなる見込みである場合や、経営環境の著しい悪化を把握した場合等であります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
当社グループは、主として見込み生産を行っております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
なお、前連結会計年度において、三井物産株式会社及び長瀬産業株式会社に対する販売割合は、10%未満であるため、記載を省略しております。
重要な契約等は、次のとおりであります。
財務上の特約が付された契約
当社は、金融機関との間でシンジケートローン契約を締結しており、その内容は次のとおりであります。
上記契約についての財務上の特約の主な内容は、以下のとおりであります。
① 各年度の決算期末及び中間期末の連結貸借対照表における純資産の部の金額から非支配株主持分、新株予約権及び繰延ヘッジ損益の合計額を控除した金額が、直前の決算期末及び中間期末、または借入実行の直前の決算期末のいずれか大きい方の75%以上を維持すること。
② 各年度の決算期における連結損益計算書における営業利益及び経常利益を2期連続で営業損失及び経常損失としないこと。
当社は、金融機関との間で金銭消費貸借契約を締結しており、その内容は次のとおりであります。
上記契約についての財務上の特約の主な内容は、以下のとおりであります。
① 各年度の決算期末及び中間期末の連結貸借対照表における純資産の部の合計金額が、直前の決算期末及び借入実行の直前の決算期末の75%以上を維持すること。
当社グループは「「社会」、「生命」、「環境」に貢献する。」という基本理念に基づき、有機化学、無機化学の各分野における新製品の開発や生産技術の向上に取り組むとともに、世界的な関心が高まる環境、エネルギー、バイオ、IT、食料等の各領域において、有機、無機の垣根にこだわることなく、新規事業の探索にも取り組んでおります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
セグメントごとの研究開発は、次のとおりであります。
農薬については、自社開発原体を中心に新規製剤や新規混合剤の開発の他、農薬登録国や適用作物の拡大などに向けた研究開発に注力して取り組んでおります。
成長戦略剤のひとつである殺虫剤シクラニリプロール(チョウ目・カメムシ目を始め広いスペクトラムを持つ)は、米国、カナダ、ブラジル、メキシコ等の米州諸国、インド、オーストラリア、韓国や日本で販売しております。2025年にはフィリピン、ベトナム、マレーシア、イスラエルなどでの販売開始を目指しております。人畜・作物安全性に優れるトウモロコシ用除草剤トルピラレートは、2017年に米国で単剤の販売を開始して以降、販売地域をアルゼンチン、メキシコ、チリ、フィリピン、カナダ、韓国、米国、ブラジル及び日本に拡大しました。ウクライナでは2024年から混合剤の販売を開始しました。引き続き、中南米、アジア、大洋州で開発を進めており、順次販売を開始します。当初はトウモロコシ専用除草剤として開発してきましたが、2019年より麦類での商業化を進め、麦類を対象とした製品向けのトルピラレート原体販売をカナダでは2023年に、米国では2024年から開始しました。
当社の農薬事業は、自社創生・開発の新農薬をベースとしておりますが、環境変化の激しい昨今、他社開発剤の導入や他社との共同開発にも積極的に取り組んでおります。なかでも、非選択性除草剤チアフェナシルは韓国FarmHannong社と世界的に共同開発を行っております。当社は成長戦略剤のひとつに位置づけ開発、販売に注力しております。
国内の食の安全・安心志向の高まりや抵抗性発達あるいは耐性菌発生を防ぐために有効な既存化学農薬が不足しているなどの市場ニーズに対応するため、微生物殺菌剤、接触型忌避剤、天敵昆虫及びバイオスティミュラントなどのバイオロジカル製品群も開発、販売しております。2023年よりイネの高温ストレス耐性を促すバイオスティミュラント製品「ライスフル」の販売も開始しました。当社は、近未来の植物防疫の姿を見据え、これら一連の安全性が高く環境負荷に配慮した当社創製化学農薬群とバイオロジカル製品とを組み合わせて、独自のIPMやICMプログラムを確立していきます。
また、従来の化学農薬のコンセプトである農薬用途以外に、生活環境での防疫や環境保全においても当社製品を含む有機化学技術の普及拡大を目指しております。
農薬以外では、ヘルスケア事業(動物用医薬品、人体用医薬品・医療機器関連)についても、特色ある商品開発を進めております。動物用医薬品では、フザプラジブナトリウム(一水和物)がイヌ膵炎急性期用抗炎症剤として、日本国内では『パノクエル』及び『ブレンダ』、米国では『PANOQUELL』のブランド名で販売されております。適応疾患の拡大や他の炎症性疾患向け、さらにフザプラジブナトリウム(一水和物)以外の治療薬など、後続するパイプラインの整備を推進中であります。
人体用医薬品・医療機器分野では、口腔乾燥症状改善薬であるセビメリン塩酸塩の原薬を1999年より製造し、国内外の製薬会社へ販売しております。その他に、当社の要素技術や独自開発した物質を応用することで生まれた、効能・効果の高い人体用医薬品や医療機器の商品開発を進めております。
当事業における研究開発費は、
(無機化学事業)
長年に亘る酸化チタン事業で蓄積されてきた技術をベースに、既存製品の収益拡大、新規製品・新規事業の開発に力を入れて取り組んでおります。
機能性色材事業に関し、収益拡大の取り組みとして、化粧品用酸化チタンは水中油滴型日焼け止めに使用し易い微粒子酸化チタンの設計が完了し、省エネに寄与する遮熱顔料は市場要望に応じた品質改良に取り組み、どちらも量産化の準備段階に進みました。新規製品の取り組みとして、LUSHDE BLACKブランドで展開している硫化ビスマス黒色顔料は特異な反射特性(可視光吸収、赤外線反射)と漆黒度が高いことから引き合いが多く、顧客との遣り取りを行いながら、工業化も含めて商品化検討を進めております。また、SILKIAブランドとして展開している“シルクのような質感”と“光輝感”を両立した色彩顔料は、技術難度が高く世界唯一の色彩顔料であり、引き続き、安定製造方法の確立と表面改質に取り組んでおります。
電子材料事業に関し、収益拡大の取り組みとしては、電気自動車、第5世代通信(5G)、及びデータセンターなどで需要拡大が期待される次世代の積層セラミックコンデンサー(MLCC)用の高純度酸化チタンの開発に注力しております。微粒子で分散性に優れた開発品を含め種々の粒子径サイズ品をラインナップすることで、顧客の汎用から最先端用途までの要求に応えるべく改良を進めており、工業化検討の段階に進んでいます。新規製品の開発に関しては、有機/無機の材料合成技術を活用し“酸化チタンの特徴である高屈折率”と“微粒子化による透明性”を両立した酸化チタンの溶剤分散体を開発し、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)用デバイスセンサーなどの次世代光学材料用途向けに顧客が要望する改良に取り組んでおります。また、既存品より低温で成膜することを特徴とする銅ナノ粒子は需要家への紹介を進めるとともに市場投入に向けて工業化などの検討を進めております。
ファインケミカル事業に関し、収益拡大の取り組みとしては、既存の主力製品である「高耐候性酸化チタン」について、さらなる成長に向けた改良に取り組んでおります。また、新規事業の創出を目的として、蓄熱材料(ハスクレイ)の市場投入に向け、用途開拓とともに生産体制の確立を進めております。
当事業における研究開発費は、
なお、当連結会計年度におけるセグメントに帰属しない全社共通の研究開発費の金額は