第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(経営の基本方針)

当社及び当社の関係会社(以下、総称して「当社グループ」といいます。)は、“ものづくりで築く より良い未来”「セントラル硝子グループは、ものづくりを通じて、真に豊かな社会の実現に貢献します。」を基本理念としており、また、「独創的な素材・技術により、サステナブルな社会の実現に寄与する」をパーパスとして定義しております。

当社グループが創業当時から企業活動の中心に据えております「ものづくり」は、誠実を基本姿勢とした、研究開発、製造、販売等の企業活動全般を意味しており、今後の更なる飛躍に向けても、すべての基礎になるものと考えております。

各事業活動においては、伸ばすべき事業に経営資源を投入し、その事業基盤の強化を図るとともに、当社の強みである「技術優位性、独創性、サステナビリティ」を持つスペシャリティ製品の拡充を図ります。また、環境対応・省エネルギー化の推進や、グローバルな事業展開による収益力の向上に注力し、安定した財務体質のもと企業価値を増大させることを常に目指し続けてまいります。

これらの方針のもと、経営全般にわたり効率性を高め企業体質の変革を図るとともに、研究開発力の強化と成長事業への経営資源の重点的な投入を行い、グループ企業力の強化に努めてまいります。

 

 

当社グループは、2024年5月に長期ビジョン「VISION 2030」を公表し、2030年のありたい姿や、その実現のための事業戦略等を示し、2025年5月14日には、「VISION 2030」の実現に向け、新たな中期経営計画を策定し発表しました。

それぞれの概要は以下の通りです。

①長期ビジョン「VISION 2030」

 

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②中期経営計画(2025~2030年)

(イ)長期ビジョン「VISION 2030」の実現に向けた取組み

 2025年から2030年までの6年間を2つのフェーズに分け、それぞれのフェーズごとの経営課題に取り組ん

でまいります。

『Phase 1』 2025~2027年度:成長への基盤強化

『Phase 2』 2028~2030年度:本格的な成長軌道へ

(ロ)基本方針

 (a)事業戦略

 ・スペシャリティ製品の拡大

 ・エッセンシャル製品の強化

 (b)成長戦略(事業ポートフォリオ最適化)

 (ⅰ)投資戦略

  ・「成長性×ROIC」分析によるメリハリをつけた経営資源の最適配分

  ・近視眼的にならない中長期的な目線での成長投資

 (ⅱ)ROICマネジメント

  ・事業ロードマップに基づく あるべき姿の追求

  ・事業ROICのモニタリングにより資本効率を改善

 (c)ESG経営による事業基盤強化

 ・人的資本経営の推進

 ・環境課題の対応

 ・デジタル活用の推進

 

③中期経営計画の財務目標

 

2027年度

(Phase1最終年度)

2030年度

(Phase2最終年度)

営業利益

130億円

200億円

ROE

8.7%

10%以上

ROIC

6.1%

7.0%

年間配当額

(1株あたり)

170円

(下限配当)

改めて検討

 

(経営の基本方針)

今後の見通しにつきましては、AI半導体の需要は引続き堅調に推移するものと考えておりますが、米国の関税政策が各国の景気、当社製品の販売に与える影響は不確かで、今後も不透明な状況が続くものと思われます。 当社グループといたしましては、昨年公表した、長期ビジョン「VISION 2030」、ありたい姿「サステナブルな社会の実現に寄与する『スペシャリティ・マテリアルズ・カンパニー』になる」の実現に向けて、2025年度を初年度とする中期経営計画に基づき、事業戦略、成長戦略を着実に推進し、当社グループの企業力強化に努めてまいります。

また、2024年5月に発表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」に基づきPBR改善につながる取組みを着実に実行することで、1倍を超えるPBRの早期実現と中長期的な企業価値向上に努めてまいります。

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティの基本的な考え方と取組みについて

<基本理念>

“ものづくりで築く より良い未来”

セントラル硝子グループは、ものづくりを通じて、真に豊かな社会の実現に貢献します。

<パーパス(存在意義)>

独創的な素材・技術により、サステナブルな社会の実現に寄与する

 

当社グループは、“ものづくりで築く より良い未来”を基本理念に、ものづくりを通じて、環境・社会課題の解決を図り、真に豊かな社会の実現に貢献することを目指して、様々な事業を展開しておりますが、この基本理念が、当社グループのサステナビリティの基本的な考え方でもあります

2024年5月には、2030年をターゲットとした長期ビジョン「VISION 2030」を策定しました。この「VISION 2030」においては、当社グループのありたい姿として、「サステナブルな社会の実現に寄与する『スペシャリティ・マテリアルズ・カンパニー』になる」ことを掲げております。

今後も当社グループの存在意義である「サステナブルな社会の実現」に向け、価値ある素材を創造・提供し続ける企業グループを目指し、全社一丸となって取組んでまいります。

 

① サステナビリティ取組みの体制について

当社グループにおけるサステナビリティの取組みにおいて、その施策や活動を組織横断的に分析・評価し、必要に応じ取締役会に報告・提言を行い、更に取組みを強化させることを目的に、「サステナビリティ委員会」を設置しております。委員会は必要のある場合に適宜開催され、サステナビリティに関連する取組みの集約、計画・実施状況の分析・評価、またサステナビリティに関する課題の協議、分析・評価等を行っております。

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② サステナビリティ経営の推進について

当社グループを取り巻く事業環境を踏まえ、サステナビリティの基本的な考え方に則り、企業理念・中期経営計画・ステークホルダーからの期待等を反映したマテリアリティを特定し事業活動を通じこれらの解決に取組むことで、経済的・社会的価値を創出いたします。

マテリアリティの取組みについては、中長期の取組みや目標を設定し、その進捗を取締役会の監督の元、PDCAサイクルを回しながら推進してまいります。世界情勢や社会の要請、また経営の観点から特に「社会課題解決製品の提供・開発」を、最重要課題と捉え、取組みを強化・推進してまいります。

 

<取組み・目標>

分野

マテリアリティ(ESG)

取組み/重要管理指標(KPI)

2024年実績

事業を通じた社会課題の解決

『環境』

A. 社会課題解決製品の提供・開発

環境貢献する製品の提供・拡大『化成品事業部門』

(低GWP、省エネ製品の売上合計)

目標:1,000億円(2024年度)

594億円

環境貢献する製品の提供・拡大『ガラス事業部門』

(エコガラス、遮熱自動車ガラスの対2021年度の売上数量比)目標:156%(2024年度)

140%

食料問題に貢献する「被覆肥料」の提供・開発『肥料事業部門』

(収量拡大、省力化に寄与)

目標:「環境配慮型被覆肥料」の早期上市と、環境負荷の低い未利用資源(植物残渣・家畜排せつ物等) を利用した新たな肥料の開発を推進。

実施中

研究開発力の強化

(注力分野:省エネ、低GWP化、SiC、CO2回収・活用、PFAS対応)

目標:・ 電子材料分野: 環境配慮型半導体材料及び次世代材料

     (SiC)等

   ・ 電池材料分野: 電解液(EVや定置用)、ポストLi

     イオン電池の開発

   ★ 「ライフサイエンス」を次期成長分野と定め、医療材

     料開発や創薬研究を推進

実施中

環境保全対応

B.気候変動問題への対応

GHG排出量を削減(Scope1,2)

目標:35.0万t-CO2(2024年度)

31.7万t-CO2

(暫定値)

環境貢献製品提供によるGHG 削減貢献量

目標:680 万t-CO2(2024年度) ※1

450万t-CO2

C.資源利用・効率化

GHG排出量原単位改善(GHG排出量/ 売上高)

目標:1.8t-CO2/百万円(2024年度)

2.2t-CO2/百万円

水使用量の削減(取水量の売上高原単位改善:総取水量/ 売上高)目標:55.6㎥/百万円(2024年度)

65.7㎥/百万円

産業廃棄物最終処分量の削減 目標:8.8千t(2024年度)

11.0千t

事業基盤強化

『社会』

D.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン ※2

総合職に占める女性社員比率の向上

目標:18.3%(2024年度)

16.2%

男性社員の育児休業利用率向上 目標:75%(2024年度)

83.6%

障がい者雇用率改善 目標:2.6%(2024年度)

2.5%

「ダイバーシティ&インクルージョンマネジメント教育」

の推進(管理職の受講推進)目標:60%(2024年度)

59%

年休取得推進 目標:80%以上(2024年度)

79.1%

E.人材育成の強化

社員教育機会の充実(1人当たり研修時間)

目標:20時間 ※2

25時間

当社グループ社員含めた更なる教育の充実・強化

目標:グループ会社社員(国内・海外)の教育を強化・サポートすることで、更なるスキルアップを実現し、グループの「人的資本」の価値の増大を図る。

実施中

F.品質マネジメント強化

クレーム件数の削減(対前年削減率)

目標:25%減(2024年度)

9%減

外注委託先監査による品質の維持・向上(年間監査実施率)

目標:90%以上(2024年度)

106%

品質教育の充実

目標:グループ全体の品質教育および、生産現場における「ものづくり教育」の更なる内容充実・機会増により習熟を図る。

実施中

G.労働安全衛生、保安防災の推進

労働安全衛生の推進(休業災害発生件数)

目標:0件(2024年度)

7件

保安防災の推進(重大事故発生件数) 目標:0件(2024年度)

0件

H.サプライチェーンマネジメントの強化

CSR調達の推進

目標:取引先へのCSRに関する調査、評価を実施。必要に応じ監査等でフォローする。新規取引先は100%実施し、調査カバー率を向上させていく。

取引先90%

以上調査実施

I.人権の尊重

人権尊重の取組強化

目標:人権方針の更なる明確化と、その発信を実施すると共に、社内での啓発活動を、より充実させていく。

実施中

『ガバナンス』

J.コンプライアンスの強化

コンプライアンス教育の充実・強化

目標:社内教育の継続と更なる充実( 頻度、分野範囲)を図る。

実施中

K.コーポレートガバナンスの強化

取締役会実効性評価の向上

目標:自己評価方式のアンケート(5点満点)を通じて、更なる実効性の向上を目指す。

4.2点

(2023年実績4.1点より改善)

※1 当社環境貢献製品を利用する最終製品の使用段階において削減されるCO2排出量をベースに、当社の販売数量に基づき1年間の使用により削減されるGHG排出量を、当社独自の試算により推定

※2 単体および出向社員対象

 

(2)気候変動に対する取組み(TCFD提言に沿った情報開示)

当社グループは気候変動への対応を、マテリアリティの一つとしており、気候変動が当社事業に与える影響について、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の枠組みに沿って以下のように対応しております。

 

① ガバナンス

当社グループでは気候変動問題を含む環境問題、社会課題に対応する取組みについて業務執行の意思決定機関である「経営会議」で審議・決裁しております。また、各課題への取組状況等を組織横断的に分析、評価すると共に、必要に応じて対応方針等について個別に協議し、その結果について適宜取締役会に報告、提言することを目的に、サステナビリティ委員会を設置しております。取締役会は、「経営会議」および「サステナビリティ委員会」で協議・提言された内容を受け、当社グループの環境課題等への対応、進捗等についての審議・監督しております。

② 戦略

当社グループでは、気候関連のリスクおよび機会がもたらす事業への影響を把握するため、下記事項を実施しております。

・気候関連のリスクおよび機会の特定

・各リスク・機会について影響度、発現の時間軸および可能性の評価(簡易的なシナリオ分析)

 

「移行リスク」は、社会・経済の脱炭素化の過程で生じるリスクのことであり、規制・技術・市場・評判の観点から分類されます。これら分類にしたがって、当社事業に関連すると考えられる要因を整理して示しております。

「物理的リスク」は、急性リスク(台風、洪水、干ばつ、熱波といった気象関連の事象が高頻度化・激甚化することで生じるもの)や慢性リスク(地表の平均気温の上昇といった気候パターンの長期的な変化から生じるもの)の観点から分類されます。これらについて、同様に整理を行っております。

「気候関連の機会」は、当社グループの事業が社会・経済の脱炭素化の進展または気候変動に起因した気象や気候パターンの変化において獲得しうるものという観点から整理しております。

以上の観点を踏まえ、気候関連のリスクおよび機会とそれらの影響度などを整理した結果は以下の表の通りとなります。

 

 

<気候関連のリスクおよび機会とそれらの影響度>

 

領域

要因

事業影響

時間軸

発現

可能性

財務影響

影響度

 

 

 

 

 

 

 

 

移行リスク

規制

炭素価格等のGHG排出規制強化

(自社排出分)

炭素価格上昇による操業コスト増加

中期

製造コストの増加

(サプライチェーン上流排出分)

炭素価格上昇による原燃材料価格の上昇

中期

製造コストの増加

省エネ法規制の強化

Scope2削減要求による再生可能エネルギー(風力、太陽光、等)の調達量の増加

中期

製造コストの増加

設備更新・投資などの増加

中~長期

製造コストの増加

技術

顧客の要求水準の変化

環境性能のより高い他社製品への需要のシフト

中~長期

売上の減少

低炭素経済の進展

環境性能のより高い製品の開発のための研究開発費や設備投資の増加

中~長期

研究開発費や設備投資の増加

評判

投資家からの評価の変化

ESGへの取り組みに対する評価の低下による資金調達コストの増加

中期

資金調達コストの増加

 

 

 

 

物理的リスク

急性

風水災等の気象災害の増加・激甚化

事業所の被災、操業停止

物流網被災による操業停止、代替品調達、販売先企業の被災による販売機会の逸失

短~中期

復旧コストの発生、売上の減少

慢性

熱波および慢性的な気温上昇

ヒートストレス、感染症リスクの高まりによる操業度の低下、販売機会の逸失

短~中期

売上の減少

空調の電気使用量の増加、設備故障等によるメンテナンスの増加

短~中期

製造コストの増加

少雨による干ばつの増加

水ストレス(水量不足・水質悪化)の高まりによる操業度の低下、販売機会の逸失

短~中期

売上の減少

 

 

 

気候関連の機会

製品およびサ❘ビス

冷媒規制の強化

GWP値の低い冷媒用途製品(HFO)の需要の増加

中~長期

売上の増加

省エネ性能の高い製品の需要の高まり

断熱フォーム用途製品(HFO)の需要の増加

中~長期

売上の増加

断熱・遮熱性の高いガラスの需要の増加

中~長期

売上の増加

IOTを通じたエネルギー効率化需要の高まり

半導体製品の需要の高まりによる、プロセスガスや半導体装置用クリーニングガス等の需要の増加

中期

売上の増加

EV市場の拡大

リチウムイオンバッテリーの需要の高まりによる、電解液の需要の増加

中~長期

売上の増加

 

時間軸

短期:3年程度、 中期:2035年まで、 長期:2036年以降

発現可能性

高:発現が見込まれるもの、中:高と低の中間、低:発現が見込み難いもの

影響度

(売上高)

大:150億円以上、中:15億円以上150億円未満、小:15億円未満

影響度

(費用・利益)

大:40億円以上、中:4億円以上40億円未満、小:4億円未満、リスクの影響がプラスにもなりうるものも含む

参照した主なシナリオ

2℃未満上昇:国際エネルギー機関(IEA)「世界エネルギー見通し2023年版」(WEO 2023)、APS

       (発表誓約シナリオ)、

       気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS)第4版、「Below 2℃」シナリオ

4℃上昇:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)

 

<インターナルカーボンプライシング制度の導入>

当社グループは、GHG排出量(Scope1,Scope2)の削減目標達成に向けた取組みの一環として、2023年6月より、インターナルカーボンプライシング(ICP)制度を導入しています。本制度は、社内炭素価格を用いて炭素コストを可視化し、設備投資の意思決定に活用するものです。当社グループとしては、今後さらに高まる温室効果ガス排出量削減要求への対応として、排出量削減投資を促進していきます。

参考:社内炭素価格(導入時):10,000円/t-CO2

 

③ リスク管理

事業運営に関わるリスクについては、各事業部門がリスクの特定とその影響度を評価し、適宜経営層に報告しております。また、サステナビリティ委員会では、気候変動等による事業リスク・機会や対策を組織横断的に共有し、分析・評価し必要に応じて適宜取締役会に報告・提言を行っております。

特にGHG排出量(Scope1,Scope2)については、2030年目標と、2050年正味GHG排出量ゼロ目標の実現に向けて、2023年度より中長期の「GHG排出量削減目標管理スキーム」の運用を開始しております。本スキームは、将来排出量の推計、目標達成可能性の評価、排出量削減のアクションプランの策定と、必要に応じた当該プランの修正を主な取組みとしており、当社グループのGHG排出量削減活動の重要プロセスと位置付けております。

 

④ 指標及び目標

・2030年度に海外を含めたグループ全体でのGHG排出量(Scope1,Scope2)を2013年度比60%削減を目指す。

 ※2022年度排出実績において従前の2030年度目標(2013年度比40%削減)を達成したことから、2024年度中に

  目標を上方修正いたしました

・2050年に正味GHG排出ゼロを目指す。

 

<排出量実績>

2023年度実績において、Scope1,2排出量合計で35.7万tonとなり、板ガラス窯の定修工事が終了し、通常の稼働に生産が戻ったことから対前年度で排出量は増加いたしました。2024年度中に上方修正を行った2030年度目標の達成に向けて、引き続き排出削減に向けた取組みを推進してまいります。

 

・温室効果ガス排出量に関する目標及び実績(Scope1,2)

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※構造調整後基準年排出量(譲渡した欧米自動車ガラス事業等の基準年におけるGHG排出を控除した排出量)

 

 

(3)人的資本、多様性に関する取組み

当社グループは、基本理念を「“ものづくりで築く より良い未来” セントラル硝子グループは、ものづくりを通じて、真に豊かな社会の実現に貢献します」とし、研究開発から製造、販売、そして業務の品質確保から社会貢献に至るまでのすべての企業活動を「ものづくり」と定義しております。この基本理念の実現、そしてなにより、ものづくりを支えるのは「ひと」であるとの認識のもと、採用・育成・配置・定着に取組んでおります。

「ひと=社員」を大事にする企業文化のためには、相互に認め合い、安心して自身の考えを発言できる、笑顔と活気あふれる会社とすることが必要であり、当社における人的資本、多様性に関する取組みのキーワードを「スマイル」としております。

また、「パーパス」に基づき、「VISION 2030」を実現していくには、ステークホルダーの求める技術・ソリューション、品質や地球環境に対する価値観やゴールを共有すること、また、それらのニーズを満たすためのアイデアの創出や対応には社員一人ひとりの感性と多様性が尊重されることが重要です。そこで、人材育成及び社内環境整備方針をもとに具体的なKPIに落とし込み、実行しております。

 

① 人材育成方針

セントラル硝子グループの企業理念、「私たちの価値観と責務」に共感し、経営戦略の遂行とグループの持続的な成長を支えるプロフェッショナル人材を育成するとともに、個人の自律的キャリア形成を支援する教育の機会を提供しております(プロフェッショナル人材とは各職場のプロとして活躍する人材と定義)。

方針に基づき、人材戦略の一環として体系的かつ効果的に社員教育を実施しております。

 

② 社内環境整備方針

社員の心理的安全性の向上をはかる取組みを進めることとして「人材戦略の推進」、社員のこころと体の健康を最大の財産と捉える取組みを強化していくこととして「健康経営の推進」に取組み、十分な機会と環境を提供しております。

(ⅰ)人材戦略の推進

・人材戦略

「スマイル」あふれる組織の実現のため「4つの確保」を掲げております。

a.受容性の確保:個を認めあうこと

b.居場所の確保:自らの存在意義を実感できること

c.公平性の確保:互いが遠慮なく発言でき、チャレンジできること

d.公正性の確保:高いモチベーションをもち続けられること

 

・主な取組み状況

人材戦略における重要な施策として、従業員エンゲージメントの向上に取組んでおります。サーベイを実施し、上司のオープンでフランクな姿勢や部下の意見に傾聴する行動、社員同士が助け合う社風を当社の大きな強みとして認識しました。一方で、いくつかの課題も見出され、その対応として、各職場においてそれぞれ改善策を検討、実施するとともに、社長自ら社員と直接対話をする機会として、タウンホールミーティングを行いました。さらに、社員が働きやすい環境づくりのため、在宅勤務制度やフレックスタイム制度の見直し、育児休業や有給休暇の取得推進、時間外労働の削減、定年後再雇用制度見直し、中抜け制度導入などさまざまな施策を実施しました。

 

(ii)健康経営の推進

・健康経営宣言と基本方針

セントラル硝子グループは、2024年7月に「健康経営宣言及び基本方針」を制定しました。これに基づき、生産性の向上と中長期的な企業価値の増大を図るために、健康経営に取組んでおります。

<健康経営宣言>

セントラル硝子グループは、企業理念として掲げる“ものづくりで築く より良い未来”の実現に向けすべての社員が心身ともに生き生きと“スマイル”で働けるよう社員の安全と健康維持・増進に取組みます。

<基本方針>

・社員の心と体の健康を最大の財産と捉え、社員の健康維持・増進に積極的に取組みます。

・社員のWell-being向上により生産性の向上と中長期的な企業価値の増大を図ります。

・社員が安全で健康的に働ける職場環境作りに取組みます。

 

・主な取組み状況

「健康経営戦略マップ」を作成し、取組みに対する具体的指標(KPI)を策定しております。取組みの例として、喫煙率の低減、睡眠満足度の向上、高ストレス判定者の減少、施策の例としては、健康に関連する各種セミナーの開催や動画配信などの社員教育があり、達成のための施策と効果確認を実施しております。また、2025年3月には2025健康経営優良法人(大規模法人部門)認定を取得しました。

 

③ 指標及び目標

上記方針を達成するため、当社では以下の通りKPIを設定し、目標達成に向けて取り組んでまいります。なお、各連結子会社の規模・制度が異なり、統一的な指標及び目標を設定することが困難であるため、提出会社社員及び在籍出向社員を対象とした記載としております。

重要管理指標(KPI)

2022年度実績

2023年度実績

2024年度実績

総合職に占める女性社員比率の向上

13.0%

17.0%

16.2%

男性社員の育児休業取得率向上

32.0%

70.8%

83.6%

障がい者雇用率改善

2.2%

2.4%

2.5%

有給休暇取得推進

67.5%

68.1%

79.1%

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンマネジメント教育の推進
(管理職の受講推進)

15.0%

45.0%

59.0%

社員教育機会の充実
(1人当たり研修時間)

17時間

27時間

25時間

喫煙率の低減

22.5%

23.0%

睡眠満足度の向上(十分な睡眠と回答した率)

71.8%

68.7%

ストレスチェック:高ストレス者と判定された比率の減少

8.4%

8.2%

※ 本社間接部門が主催した社員向け教育を対象

 

3【事業等のリスク】

(1)リスクマネジメント体制

<リスク管理体制>

① 当社は、事業活動におけるリスクへの対応のため、経営への影響度に応じ、以下のリスク管理を行っています。当社及び子会社においてリスク事案が生じた、又は生じ得る場合、当該リスク発生部門の部門長は、管理すべき子会社を含むリスク情報を担当執行役員と速やかに共有し、リスクの影響度等の評価を踏まえ、必要に応じて、担当執行役員が社長執行役員及び監査等委員会へ報告する。社長執行役員は、リスクの重大性に鑑み、必要に応じて、当該事案を担当する執行役員を責任者とする組織横断的な危機対策本部を設置するなど適切に対応し、速やかに復旧、事後処理を実施しております。

② 取締役会は、随時、執行役員等から報告を受け、又は報告を求めることにより、リスクの把握に努め、必要に応じて助言を行っております。

③ 当社は、環境・安全推進委員会、独占禁止法遵守推進委員会、グループ品質コンプライアンス委員会、安全保障貿易管理委員会、財務報告リスク評価委員会、コンプライアンス推進委員会、サステナビリティ委員会を組織横断的に設置しており、各専門テーマに関する審議・調査・指導・啓発活動を行うとともに、これらの委員会を通じたコンプライアンスに関する研修等により、当社グループにコンプライアンスを尊重する意識の浸透、定着を図っております。

④ 取締役会は、専門テーマを扱う各種委員会からの報告を受け、リスク情報を共有し、全社的にリスク管理体制を整備しております。

⑤ 当社は、ステークホルダーに対して、経営への影響度等に応じて、適時・適切な情報開示を行っております。

 

(2)事業などのリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、当該事業等のリスクについては、当連結会計年度末日現在の判断によるものであり、また、当社グループの事業上のリスクすべてを網羅しているものではありません。

 

① 経済動向及び販売市況の動向

国内外での経済動向の著しい変化や当社グループの製品を展開する関連業界の動向に伴う販売市況の変動に対しては、随時モニタリングを行い、事業への影響を迅速に把握できる体制を整えておりますが、予期できない程度の変化・変動があった場合、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合他社との競争

当社グループは、多岐にわたる製品の開発・生産・販売を行っており、様々な企業と競合しております。当社グループは今後とも競争力の維持・強化に向けて研究開発及び技術開発の強化など様々な取り組みを進めてまいりますが、競争優位性が確保できない場合、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 特定分野への依存

当社グループは、既存顧客との更なる関係強化を図ると共に、新規顧客の開拓により、販売先の多様化を推進しておりますが、一部製品の販売では、特定の顧客に依存しているため、当該顧客の投資・販売計画及び資材調達の方針等が当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 海外情勢の変化

海外において、予期しない法令又は規制の変更、政治及び社会情勢の変化、テロ、戦争、感染症、その他の要因による社会的混乱などにより予期し得ない事態が発生した場合、当該地域での事業活動のみならず、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 原材料の市況及び調達

当社グループの製品は重油等、市況変動の影響を受ける原材料や調達先が限られる特殊な原材料を使用しております。原材料の購入価格の低減、並びに原油デリバティブや主要原材料の備蓄を行うなど安定調達に向けた施策を推進しておりますが、市場価格の高騰並びに入手難による調達遅れが発生した場合、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 公的規制

当社グループが事業活動を行っている国及び地域では、投資に関する許認可や輸出入規制のほか、商取引、労働、特許、租税、為替等の各種関係法令の適用を受けております。これらの法令の予期しない変更や新たな適用により、当社グループの経営成績と財政状態が影響を受ける可能性があります。

 

⑦ 環境規制

当社グループは、様々な環境関連法令の適用を受けております。当社グループはこれら法令に細心の注意を払い事業活動を行っておりますが、過去・現在及び将来の事業活動において、環境に関する費用負担の増加や賠償責任が発生する可能性があり、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

尚、当社グループでは、様々なフッ素関連製品を製造・販売しております。炭素とフッ素の原子を持つ化学物質は広い括りでPFASと総称され、PFASの中でも、環境や人体への影響懸念から、PFOSやPFOAといったごく一部が製造・輸入規制対象となっておりますが、当社グループではこれら規制対象製品の製造・販売は行っておりません。昨今、欧州などで全てのPFASを一括して規制しようとする動きがあり、当社は、当社グループのフッ素関連製品が生活産業上の重要な役割を担っていることを踏まえ、欧州当局へのパブリックコメントを提出するとともに、PFAS製品の代替製品としてPFASフリー製品の開発を進めております。一方、日本を含む各国の行政機関、国内外企業及び関係団体等も社会経済的影響への懸念等について、欧州当局へパブリックコメントを提出していますが、今後の規制の内容次第では、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 製造物責任

当社グループでは、製造物について、欠陥をなくし、安全性を高め、欠陥によって生じる製造物責任を予防することを目的に品質に係る関連規程を設け、品質の確保に取り組んでおりますが、予期せぬ事情により品質問題が発生した場合、賠償金など発生する損失の全てを生産物賠償責任保険によって補填できない可能性があり、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 知的財産権に関する問題

当社グループでは、知的財産権の重要性を認識し、その保護に努めておりますが、予期しない事情により当社グループと第三者との間で知的財産権に関する紛争が発生し、当社グループに不利な判断がなされた場合には、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 訴訟

当社グループでは法令遵守に努めておりますが、事業活動に関連して取引先や第三者から重要な訴訟を提起され当社の評判や信頼性が損なわれた場合等、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 災害・事故

地震、台風等の自然災害や火災等の事故災害が発生した場合、当社グループの拠点の設備等の損壊や電力、ガス、水の供給困難により、一部または全部の操業が中断し、生産及び出荷に影響が及ぶ可能性、並びに損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生する可能性があります。この結果、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこれらの影響を最小限にするため、自然災害や事故に対する対応策の検討や訓練を継続的に実施しております。

 

⑫ 為替の変動

当社グループは、世界の各地域にて事業活動を行っております。一般に現地通貨に対して円高は当社グループに悪影響を及ぼし、一方、円安は好影響をもたらします。当社グループにおいては、為替相場の変動リスクを縮小あるいはヘッジするための対策を講じておりますが、為替相場の大幅な変動は、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑬ 固定資産の価値下落

当社グループでは、既存事業に係る設備について、今後の事業の収益性や市況等の動向によっては、固定資産の減損会計の適用に伴う損失処理が発生し、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑭ 感染症の拡大に係る従業員の感染リスクと事業継続リスク

感染症パンデミックが長期化した場合、個人消費の低迷、国内外のサプライチェーンの停滞などが発生し、当社グループの事業活動が減退する可能性があります。また、当社グループ社員の罹患が拡大した場合についても、工場の操業停止や営業活動の自粛など事業活動が減退し、それぞれ感染症の拡大が、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

感染症が拡大した場合は、当社グループの従業員及びその家族の健康に配慮し、国内外の出張を制限するとともに、在宅勤務や時差出勤の推奨、オンライン会議の活用等の感染防止策に取り組み、事業への影響を最小限に抑えるよう努めます。

 

⑮ サイバーセキュリティ

当社グループは、生産、販売、研究開発などの事業活動において、ネットワーク、システムを利用しております。近年、サイバー攻撃はこれまで以上に技術が高度化し、攻撃手法も多様化・巧妙化しており、このような状況を踏まえ、当社グループはサイバーセキュリティに関しリスクとして認識し、情報システム部門を中心に、ネットワーク及びシステムの監視をはじめとする各種サイバー攻撃対策を講じております。しかしながら、これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃やそれに伴う深刻なシステム障害等により実質的に事業活動が中断した場合、または個人を特定できる情報を含む重要データが逸失、破損、社外流出し、当社の評判や信頼性が損なわれた場合、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑯ 人的資本

当社グループは、競争の激しい市場において、製品やサービスの提供を継続し企業価値の向上のため、多様な技術・知識・視点を融合させてイノベーションを生み出せる高い専門性を持つ人材を獲得する必要があり、また経験豊富な人材並びに業務やプラント運転操作等のノウハウを持った人材確保も重要となります。こうした優秀な人材の確保が困難となる場合や、重要な人材の流出が生じた場合には、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対して、当社は「エンゲージメントの向上」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進」「健康経営の推進」の3つの観点で人的資本経営を推進しております。

 

⑰ 気候変動

当社グループが事業展開する各国において、GHG排出量規制、炭素税及び賦課金制度等が導入された場合や、当社グループの拠点がある地域にて気候変動による洪水等自然災害が増加した場合、当社グループの経営成績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対して、当社は気候変動が当社事業に与える影響について、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の枠組みに沿って対応しております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に含めて記載しております。

 

② 生産、受注及び販売の状況

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 経営成績」におけるセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、物価上昇による消費マインドの弱含みはあるものの、雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直し、堅調な企業収益を背景にした設備投資の持ち直し等により、緩やかな回復基調で推移しました。

一方、世界経済は、消費の伸びが減速しているものの、米国では、依然景気の拡大が継続、欧州では、一部で持ち直しが見られるものの、景気は足踏みの状態が継続、また、各種政策の効果がみられるものの、中国でも、景気は足踏みの状態が継続しております。加えて、ウクライナ及び中東の紛争は完全な停戦時期が見通せておらず、今後は米国の関税政策の影響等、先行きは非常に不透明な状況が続いております。

このような経済環境の下、当社グループは積極的な販売活動を展開いたしましたが、当期の売上高は144,233百万円と、前期比10.0%の減少となりました。

損益面につきましては、経営全般にわたる業務の効率化・合理化施策を推進してまいりました結果、経常利益は前期比4,104百万円減少の12,164百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比6,799百万円減少の5,678百万円となりました。

 

(化成品事業)

 

百万円

売上高

営業利益

当 期

85,765

8,166

前 期

100,926

10,588

増減額

△15,160

△2,422

増減率

△15.0%

△22.9%

 

素材化学品につきましては、発泡剤原料及び農薬関連製品の販売が堅調に推移したことから、売上高は前期を上回りました。

医療化学品につきましては、海外向けの麻酔原薬の販売が低調に推移したため、売上高は前期を下回りました。

電子材料につきましては、AI半導体等の需要増加により、半導体向け特殊ガスの販売が増加したため、売上高は前期を上回りました。

エネルギー材料につきましては、欧州を中心としたEVの需要低迷により、リチウムイオン電池用電解液の販売が減少したため、売上高は前期を大幅に下回りました。

肥料につきましては、主力の被覆肥料の販売が堅調に推移したため、売上高は前期を上回りました。

 

以上、化成品事業の売上高は85,765百万円(前期比15.0%減)となり、損益につきましては8,166百万円の営業利益(前期比2,422百万円の減少)となりました。

 

(ガラス事業)

 

百万円

売上高

営業利益

当 期

58,467

2,462

前 期

59,413

3,938

増減額

△945

△1,475

増減率

△1.6%

△37.5%

 

建築用ガラスにつきましては、建築需要が低調に推移したため、売上高は前期を下回りました。

自動車用ガラスにつきましては、顧客の一部稼働停止により販売は減少したものの、原燃材料他のコスト上昇を継続して製品価格に転嫁したことから、売上高は前期並みとなりました。

ガラス繊維につきましては、自動車向け製品の販売の回復により、売上高は前期を上回りました。

以上、ガラス事業の売上高は58,467百万円(前期比1.6%減)となり、損益につきましては2,462百万円の営業利益(前期比1,475百万円の減少)となりました。

 

② 財政状態

当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ、現金及び預金が4,482百万円増加する一方、受取手形、売掛金及び契約資産が3,435百万円、固定資産の減損処理などにより有形固定資産が3,354百万円、関係会社株式の売却などにより投資有価証券が4,509百万円それぞれ減少したことなどにより、9,570百万円減少し204,834百万円となりました。

負債は借入金の返済などにより有利子負債が10,762百万円減少したことなどにより、10,583百万円減少し83,770百万円となりました。

純資産は配当金の支払により4,710百万円減少した一方、親会社株主に帰属する当期純利益により5,678百万円増加したことなどにより、1,012百万円増加し121,063百万円となりました。また、自己資本比率は3.4%増加し57.0%になりました。

 

③ キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ、2,182百万円増加し、22,040百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金収支は、税金等調整前当期純利益9,547百万円、減価償却費8,888百万円、運転資金の増減(売上債権及び契約資産、棚卸資産、仕入債務の増減合計額)による収入5,009百万円などにより、23,587百万円の収入(前年同期は22,236百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金収支は、定期預金の払戻による収入5,397百万円、投資有価証券の売却による収入4,270百万円などの一方で、定期預金の預入による支出7,496百万円、有形固定資産の取得による支出5,593百万円などにより、4,244百万円の支出(前年同期は3,338百万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金収支は、長短借入金の減少による支出10,684百万円、配当の支払による支出4,710百万円、非支配株主に対する清算配当金の支払いによる支出1,149百万円などにより、17,567百万円の支出(前年同期は15,971百万円の支出)となりました。

 

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

(イ)資本政策の基本的な方針について

当社は、中長期的な持続的成長と企業価値の向上を目指し、2025年5月14日には中期経営計画(2025~2030年度)を策定いたしました。その基盤にあります利益の配分及び資本効率等を総合的に勘案した資本政策の基本的な方針は以下のとおりとなります。

(a)資本政策

企業価値の最大化を目的として、投資と資金調達の最適化を重視した資本構成を目標とする。

<基本方針>

・調達     資金コストと継続性(リスク)のバランスを考慮し、適切な方法を組み合わせて、計画的に安定して調達を行う。

・運用(投資) 調達資金コストを上回る利益、投下資本以上のキャッシュ・フローを産みだす源泉に選別して資本を投入する。

・分配     産み出したキャッシュは、株主還元、投資、財務規律のバランスを考えた配分を基本にして適切に利益分配を行う。

(b)資本政策に関連する方針

(ⅰ)収益性・効率性について

指 標

2027年度

(Phase1最終年度)

2030年度

(Phase2最終年度)

ROE(自己資本利益率)

8.7%

10%以上

ROIC(投下資本利益率)

6.1%

7.0%

 

資本効率性を意識し、資本コストを上回る収益性を達成すべくROE(自己資本利益率)およびROIC(投下資本利益率)を経営指標とし、中期経営計画(2025~2030年度)目標を上記としております。

 

(ⅱ)財務の健全性について

指 標

目 標

自己資本比率

現状維持

資金調達は、資本・負債コストを考え、現状の金融環境(低金利)を活用して計画的に実施し、有利子負債による調達については、借入や社債発行による複数の選択肢をバランスよく組み合わせて実施してまいります。

そのためには、中長期的に事業や金融環境の変動などのリスクに耐えうる健全な財務規律により信用力を確保し、格付けを維持していくことが必要と考え、上記目標としております。

 

(ⅲ)利益還元について

指 標

Phase1

Phase2

年間配当額(1株あたり)

170円

(下限配当)

改めて検討

中期経営計画(2025~2030年度)における2025~2027年度の期間においては、「VISION 2030」実現に向けて、スペシャリティ製品の研究開発の更なる強化、積極的な設備投資を進める一方で、安定配当継続の基本方針に則り、1株当たり170円を下限配当とさせていただきたいと考えます。

なお、Phase2(2028~2030年度)については、改めて検討いたします

 

(ロ)資金調達

当社グループの資金調達は、(イ)(b)(ⅱ)の方針に基づき、自己資金のほか、金融機関からの借入等による間接調達、資本市場からの直接調達により行っております。

間接調達については、金融機関からの借入について相対での借入枠を十分確保しており、かつ10,000百万円を借入限度額とするコミットメントラインを設定し、長期・短期のバランスを考慮して安定的に調達しております。また、直接調達については、社債の発行等により調達しております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は42,548百万円、現金及び現金同等物の残高は22,040百万円、よってネット有利子負債は20,508百万円となりました。

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

⑥ 経営戦略の現状と見通し

 経営戦略の現状と見通しについては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、基本理念である“ものづくりで築く より良い未来”に沿い、研究開発から生まれる新技術・新製品を原動力に成長し続ける会社を目指し、研究開発型企業へのシフトを加速させております。快適な生活、地球環境にやさしい、健康・安全への配慮を、これまで以上に強く意識した研究開発を展開しております。

2022年7月からは、基盤技術の創出、機能性材料の効率的開発およびコーポレート研究の役割をそれぞれ明確にして、基盤化学研究所、機能化学研究所、New-STEP研究所の3研究所体制で新たに研究開発を推進しております(ガラス事業の研究開発は化学の一分野と捉えて、基盤化学研究所(松阪)でこれまで通り行うと同時に、ガラスと化学のコア技術を益々融合させてまいります)。

当連結会計年度の研究開発費は7,390百万円であり、主な研究開発の概要と成果は次のとおりであります。

 

化成品事業における事業部研究では、新規製品の開発を目的に、基幹コモディティおよびファインケミカル関連の各分野で製造技術、精製技術、分析技術、応用技術等の基盤技術を展開し、研究開発を進めております。基幹コモディティ分野のうち素材化学品関連製品では、2016年4月に上市したCELEFIN® 1233Zが、ODPゼロかつGWP<1を両立させた「環境に優しい」フッ素系溶剤として期待されており、金属部品洗浄のほか航空宇宙分野や医療機器分野などへの需要拡大に向けて生産の増強を進めております。当社は引き続き、社会ニーズに沿ったノンフロン化の実現に向けて、一層の技術開発と事業化計画を推進してまいります。

ファインケミカル関連では、成長分野に焦点を合わせた商品開発を当社独自のフッ素化学を基盤として推進しております。その中でも特に電子材料とエネルギー材料の両分野に注力しており、これら機能性材料ビジネスの強化に向けて、国内外の大手顧客との共同研究の推進、海外の研究サイトとの連携強化および分析・評価機器等の設備投資の増強を積極的に進めております。さらに研究開発力の強化を目的として、機能化学研究所内に機能材料研究棟を新設しました。電子材料分野のうち、半導体プロセス材料では微細で複雑な次世代加工技術の開発と、次世代パワー半導体の基板材料であるSiCの製造研究を重要ターゲットとしております。2020年に世界有数の半導体生産拠点である台湾に「電子材料リサーチセンター台湾」を設立し、新材料開発および情報収集活動を行っております。またSiC基板材料の開発では、高品位・長尺化が可能な溶液法による6インチ単結晶の製造技術に目途を付け、8インチについてはNEDO公募プロジェクト「グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築」において、当社の「高品位8インチSiC単結晶・ウエハの製造技術開発」が採択され、2022年度から取り組みを開始しております。2023年度末のステージゲート審査を通過し、2024年4月よりNEDO委託事業からNEDO助成事業へとステージアップしました。エネルギー材料分野のうち、LIB(Lithium Ion Battery)の電解液では、オリジナルな高性能添加剤の開発やグローバルな生産体制の構築の他に、リサイクル原料の利活用検討も進めております。さらに電解液以外の他部材への展開、および次世代二次電池の開発にも研究リソースを配分しております。

肥料分野では、環境適応型被覆肥料の研究開発を進めております。被覆材として使用されるプラスチックは自然界で分解し難いため、環境負荷の少ない被覆材の開発に取り組んでおります。開発品は、プラスチックではない被覆材料で構成された被覆窒素肥料であり、また溶出後の被覆殻は、僅かな力で壊れる「脆さ」も有していることから、環境課題の解決に大きく貢献できると考えております。現在、量産化の技術開発に取り組んでおり、2025年からの圃場溶出試験、2026年の栽培試験を経て、2027年の上市を計画しております。

当事業に係る研究開発費は6,525百万円であります。

 

ガラス事業においては、社会のニーズや変化にマッチした商品の開発を目指しており、暮らしの中の快適さや安全性の向上に役立つ新しい機能をもつ商品開発に取り組んでおります。自動車分野では、自動運転で期待される次世代ヘッドアップディスプレイ用ウィンドシールドの事業化を積極的に進めております。また機能鏡分野では、高度な表面加工技術を駆使して、曇らず且つ汚れ難い洗面化粧台用防汚防曇鏡の上市を目指しております。

当事業に係る研究開発費は865百万円であります。

 

このほか、ライフサイエンス分野の新しい取組みとして、山口大学と「他家“凍結保管”線維芽細胞シート」を用いた画期的な再生医療製品の開発に着手しています。当該細胞シートは、凍結解凍後に高い細胞生存率を有する特徴を持ち、患者様に細胞シートを移植することで患部の組織再生が促進され、外科分野の難治性潰瘍治療、縫合部組織再生治療等への高い有効性が期待されています。

本研究開発につきましては、2024年6月、「令和6年度やまぐち再生医療等実用化・産業化推進補助金事業」および「宇部市再生医療等先端的研究開発実用化推進補助金事業」に採択されています。世界の人々の健康な暮らしに貢献し続けるために、当該細胞シートの早期の実用化を目指し、「産・学・公」の強い連携を活かし、研究開発を推進してまいります。