第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)  経営の基本方針

当社グループは、「素材と機能の可能性を追求し、化学の力で新しい幸せをあなたへ届けます。」に企業理念を改定し、顧客や社会の未来を見据え、化学事業を通じて新しい価値の創造と提供に挑戦し続ける価値創造型企業グループを目指すことを基本方針といたしました。

 

(2)  経営環境

当社グループを取りまく経営環境につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に起因する社会経済活動の停滞により、幅広い産業分野で需要は大幅に減少しましたが、抗菌・抗ウイルス製品への関心の高まりやテレワークの拡大などに伴う半導体向けの需要は、増加しております。

今後の見通しとしては、新型コロナウイルス感染症拡大防止の有力な対策として一部の国でワクチン接種がはじまりましたが、本ワクチンが世界各国に行き渡り、その効果が発現するまでには今しばらく時間を要すると見込まれます。また、米中覇権争いの激化などが世界経済へ及ぼす影響も懸念されます。わが国においては、政府が打ち出した新型コロナウイルス感染症の拡大防止策が奏功することで、社会経済活動が活性化すると期待されますが、現時点においては、その時期は不透明と言わざるを得ません。また、化学業界においては、脱炭素社会の実現に向けたスピード感と実効性のある対応もより強く求められており、「新常態」への移行に伴う需要構造の変化に機敏に対応してまいります。

 

(3)  中期的な経営戦略および会社の対処すべき課題

当社グループは、2020年から2022年までの3年間を対象とする中期経営計画「Stage up for the Futureを策定し、新事業創出と研究開発の機能をより一層強化することにより高付加価値製品事業のさらなる拡大を目指しております。

①中期経営計画の基本方針

(イ)高付加価値製品事業の拡大

高付加価値製品事業の拡大に向けて、成長牽引事業の販売強化と新製品開発に着実に取り組み、2022年に売上高1,630億円を達成する。

(ロ)将来を支える「第4の柱」事業を含む新ビジネスユニットの創出

当社グループのコア技術を起点として、従来の事業領域を超えた新規キーマテリアルやサービスを新たなビジネスユニットとして複数創出する。

(ハ)基盤事業の強靭化

収益基盤を強化するため、基盤事業の計画的投資と継続的合理化を進め、成長が見込めない事業を整理、縮小する。

②重要施策

(イ)新事業創出機能と研究開発機能の強化

新設した新事業企画部による新事業創出機能を加速し、オープンイノベーションや知財戦略強化、マテリアルズインフォマティクス(MI)導入により研究開発の効率化と高度化を推進する。

(ロ)瞬間接着剤等の海外展開推進

北米における事業を再構築するとともに、アジア等の新興国市場へ本格参入する。

(ハ)デジタルトランスフォーメーション(DX)による競争優位性拡大と機能強化

全社情報処理網の一元化と情報の高度利用により、顧客ニーズに応える製品開発と生産革新を推進する。

(ニ)成長戦略の担い手となる人材の確保と育成

人材採用・育成方法を見直し強化し、海外人材の登用、多様化する社会に対応した社内環境の整備などを推進する。

 

(ホ)サスティナブル経営の推進、ステークホルダーとの共存共栄

新設したサスティナビリティ推進部を中心に、地球環境保全に資する新ビジネス・新製品開発の推進およびステークホルダーとの対話を強化する。

 

③中期経営計画「Stage up for the Future」数値目標

 

2022年目標

売上高

1,630億円

営業利益

170億円

(参考)売上高営業利益率

10.4%

利払い前、税引き前、減価償却前利益

270億円

(EBITDA)

高付加価値製品比率(売上高比)

47%

設備投資額

440億円

(2020年から2022年の3年間累計)

海外売上高

325億円

(参考)海外売上高比率

20%

1株当たり純利益(EPS)

106円

総資産経常利益率(ROA)

7.0%

 

 

(イ)設備投資計画

前中期経営計画に引き続き、高付加価値製品の投資に注力するとともに、基幹化学品事業の設備更新と工場自動化、情報関連の投資を強化し、2020年から2022年までの3年累計で440億円を目標とする。

(ロ)海外展開計画

ポリマー・オリゴマー事業、接着材料事業、高機能無機材料事業を中心に、高付加価値製品事業の積極的な海外展開を推進し、2022年の海外売上高比率20%超を目指す。

(ハ)資本政策

資本効率性の向上、株主還元の強化に向け、次の資本政策を推進する。

・1株当たり純利益(EPS)と総資産経常利益率(ROA)を数値指標とし、収益力と資本効率性の強化・向上を図る。

・配当性向30%以上を目途とした安定配当を継続するとともに、自己株式の取得(2020年から2022年までの3年累計で100億円程度)により、連結総還元性向および1株当たり純利益(EPS)の向上を図る。

 

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。ただし、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは、これらに限定されるものではありません。

当社グループは、リスク管理委員会を設置し、リスクの洗い出しや評価、対策の策定、対策状況のチェックなどを定期的に行うとともに、以下に記載する各リスクへの対応策を実施していますが、リスクが顕在化する確率および顕在化した場合の影響を完全に抑制できるわけではありません。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 自然災害の発生

当社グループは、国内外に生産・営業拠点を有し、当該拠点が地震、台風、豪雨、竜巻、突風、洪水、津波、高潮などの自然災害に被災した場合、建屋・設備の損壊、操業・事業活動の停止といった被害が発生する可能性があります。

特に、東海地震、東南海地震または南海地震が発生した場合、主要な生産拠点である当社の名古屋工場をはじめ、東海地方、近畿地方および四国地方の周辺に存在する当社グループの生産・営業拠点で大きな損害が発生する可能性があります。また、首都直下地震が発生した場合、当社の本店をはじめ、関東地方の周辺に存在する当社グループの生産・営業拠点で大きな損害が発生する可能性があります。

各拠点では、耐震工事の実施、地震・火災を想定した定期防災訓練、火災・風水害に備えた保険加入といった対策を講じています。

 

(2) 事故の発生

当社グループの主な事業は化学製品の製造であり、国内外の工場では設備トラブルやヒューマンエラーなどによって、火災、爆発、化学物質の漏えいといった事故が発生し、建屋・設備の損壊、操業・事業活動の停止、被災者・地域への賠償などが発生する可能性があります。

各工場では、緊急時の自動停止装置、設備の新設・変更時に保安防災等を審議する防災会議、定期的な防災訓練および事故に備えた保険加入といった対策を講じています。

 

(3) 市場ニーズの変化、競争激化

当社グループの事業は5つのセグメントで構成され、産業の基礎素材となる汎用化学製品から一般消費者向けの最終製品まで幅広い製品群を有し、景気の変動に影響され難いバランスのよい事業構造を築いています。一方、広範な産業および地域に製品を供給しているため、世界的または地域的な需給環境の変動、代替素材の登場、供給先の購買方針の変更、競合他社の販売価格等によって、当社グループの製品の販売数量および販売価格が大幅に変動する可能性があります。

特に、基幹化学品事業に多く含まれる汎用化学製品は、性質・性能面において他社製品との差別化が困難なものが多く、激化する価格競争の環境下においては、同等の製品をより低価格で販売可能な競合他社に対して、当社グループが優位性を維持できなくなる可能性があります。

一方、ポリマー・オリゴマー事業、接着材料事業、高機能無機材料事業に多く含まれる高付加価値製品は、当社グループが注力するモビリティやエレクトロニクスといった分野・顧客の需要動向によって、販売数量および販売価格が大幅に変動する可能性があります。

なお、当社グループは、中期経営計画「Stage up for the Future」で「高付加価値製品事業の拡大」を基本方針の一つに掲げ、高付加価値製品比率(売上高比)を、2019年実績の42%から2022年には47%へ上昇させることを目標にしています。

 

(4) 法令違反および税制・法制度改革、規制緩和・強化、貿易制限等

当社グループは日本国内だけでなく、アメリカ、中国、台湾、香港、シンガポール、タイ、韓国に生産・営業拠点を有するとともに、グローバルな販売・調達活動を行っています。したがって、日本の独占禁止法、不正競争防止法、下請法、金融商品取引法、外為法、輸出取引規制、労働法、税法、化学物質関連規制等および関連する諸外国・地域の各種法令等の違反、解釈変更、当局との見解相違などが生じることにより、操業・事業活動の停止、刑事罰・課徴金、訴訟等が発生する可能性があります。

また、こうした法令等は、制度改革、規制緩和・強化、貿易制限によって変更され、対応費用の発生や違反リスクの増加を招く可能性があります。

当社グループは、化学物資関連規制に対しては特に重視し、本店および製造拠点の環境保安・品質保証部門等が連携して違反を防止する体制を整えています。また、他の法令等についても、「第4 [提出会社の情報] 4 [コーポレート・ガバナンスの状況等] (1) [コーポレート・ガバナンスの概要]」に記載のコンプライアンス委員会によって、当社グループ全体のコンプライアンスの実践状況を監督・調査しています。

 

(5) 固定資産の減損

当社グループは、主に化学製品の製造のため、土地や機械装置をはじめ多額の固定資産を保有しています。また、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のため、積極的な設備投資を行うとともに、第三者との間で合弁事業、戦略的提携、事業買収等を行うことがあります。中期経営計画「Stage up for the Future」では、2020年から2022年の3年間累計で440億円の設備投資を行うことを目標にしています。

こうした設備投資等は、採算を十分に精査したうえで意思決定しますが、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下、市場価格の下落、シナジー効果の減少等によって、減損損失が発生する可能性があります。

 

(6) 製造物責任、リコール、品質不良等

当社グループが製造・販売する製品の欠陥・品質不良に起因して、顧客および第三者に対して損害を与えた場合、損害賠償やリコールに要する費用などが発生するとともに、当該製品の販売が減少する可能性があります。

当社グループは、顧客要求事項および適用される法令・規制要求事項を満たした製品を供給すべく、各製造拠点で品質検査を実施し、顧客からの声に迅速に対応できる体制を整備しております。また、生産物賠償責任保険への加入によって、損害が発生した場合の影響を抑える対策を講じています。

 

(7) 情報漏えい

当社グループは、経営上、営業上および技術上の重要な情報ならびに従業員等の個人情報を保有しています。取引先関係者や従業員等が故意または過失によって当該情報を漏えいさせた場合、または、悪意を持った第三者が当社グループの情報管理サーバー等に侵入して情報を不正に取得した場合、経営上、営業上および技術上の優位性の低下、情報の漏えいによる制裁・賠償金および当該情報の奪還に要する費用発生といった損害が発生する可能性があります。

当社グループは、重要な情報を共有する取引先関係者とは秘密保持契約を締結し、従業員には教育によって管理意識や取り扱いルールの浸透を図ることで、情報漏えいの発生を防止しています。また、コンピュータウイルスへの対策など、情報セキュリティ対策の継続的な改善を行っています。

 

(8) 原燃料・資材等の高騰、原油・ナフサ価格の変動

原燃料・資材等の高騰は、当社グループの製造コストの上昇につながります。特に、原油・ナフサ価格の高騰は、基幹化学品事業のアクリルモノマー製品をはじめとした製造コストの上昇の要因となり、当該変動を反映した販売価格の是正および合理化が十分に実施できなかった場合、当社グループの利益を圧迫する可能性があります。

一方、原油・ナフサ価格の下落は、当社グループの販売価格が低下する要因になるとともに、棚卸資産にかかる評価損失を発生させる可能性があります。

原油・ナフサ価格に連動した適正な製造コストおよび販売価格となるように、国内の取引先を中心に価格フォーミュラを取り決めていますが、価格が乱高下する場面や海外の競争市場では、こうした対策が機能しない可能性もあります。

 

(9) 感染症・伝染病

隔離・行動制限が必要な感染症・伝染病が広範囲に流行した場合、経済活動の全般的な停滞に加え、当社グループの販売先や調達先の事業活動および物流が中断されることで、当社グループの操業・事業活動も制限される可能性があります。また、当社グループの従業員に感染が拡大した場合、操業が一時的に停止する可能性があります。

2019年12月以降、中国を中心に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、その後世界的に感染拡大しております。当社グループは、消毒液やマスク等の感染予防備品の設置・配布によって感染を防止するとともに、テレワークが可能な環境を整えることで安全かつ継続的な操業・事業活動ができる体制構築を進めています。

 

(10)原燃料供給の停止、サプライチェーンの切断

当社グループは、コストダウンと調達の安定性のバランスを念頭において事業を行っていますが、調達先の事故、生産停止、倒産などの事情によって、製造に不可欠な原燃料が調達できない場合、当社グループの操業が停止する可能性があります。

複数購買の実施および調達先との継続的なコミュニケーション等を図り、安定的な供給体制の構築に努めております。

 

(11)環境汚染、サスティナビリティの要請

当社グループは、環境保全にかかる法令を遵守するとともに、二酸化炭素排出量の削減目標公表や環境負荷物質の自主管理値設定による管理徹底など、環境に配慮した事業活動を行っていますが、化学工場である以上、土壌・大気・水質等に関する汚染が発見され、生産活動の中断や補償費用が発生する可能性があります。また、SDGsやESG投資に代表されるように、持続的な社会発展のため、エネルギー多消費型産業である化学事業においても、二酸化炭素のさらなる排出量削減をはじめとした社会的な要求に応えることが強く求められています。

温室効果ガス排出量、エネルギー使用量、廃棄物および環境負荷物資の削減にいっそう取り組んでいくことはもちろん、今後は2020年1月1日に設置したサスティナビリティ推進部を中心として、当社グループの製品・技術と地球規模の問題解決を結びつけ、その取り組みを発信していきます。

 

(12)為替の変動

当社グループは、海外からも原材料を輸入するとともに、日本国内で製造した製品を海外に輸出していますが、原材料の輸入高は製品の輸出高を上回っています。したがって、外国通貨に対して円安が進行した場合、全体として費用が増加することになります。ただし、円安が進行する場合、一般的に日本国内の輸出機械産業は国際競争力が高まり、当社グループが販売する製品の需要も喚起されやすくなります。

また、中期経営計画「Stage up for the Future」では、積極的な海外展開を推進することにより、海外売上高比率を2019年の15.6%から2022年に20%超にすることを目指しており、目標達成の進捗によっては、リスクの内容は変化する可能性があります。

リスクへの対応策として、輸出や海外関係会社からの配当によって獲得した外国通貨を輸入による支払いにあてるよう資金計画を組むといった対策を講じています。

 

(13)株式相場の変動

当社は、取引関係の維持強化、業務提携の構築等の観点から当社の中長期的な企業価値の向上に資すると判断した場合、当該取引先の株式を取得・保有します。このうち市場性のある上場株式については、株式相場の変動によって大幅な損失が生じる可能性があります。

当社は、毎年定期的に、当該株式について、当該取引先との総合的な関係の維持強化および保有による便益やリスクが資本コストに見合っているかを総合的に勘案し、その保有効果等について検証したうえで、取締役会で報告を行っています。中長期的な企業価値の向上に資すると認められない株式は売却を進めています。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)  経営成績等の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態および経営成績の状況

当連結会計年度(2020年1月1日から2020年12月31日まで)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の勢いは止まることなく、景気は一部の国において回復の兆しは見られましたものの、全般的に低調に推移しました。また、米国大統領選挙後の社会的混乱や米中覇権争いの激化などから先行きに対する不透明感が増しました。わが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大が第3波を迎え、感染抑止と社会経済活動の両立に困難をきたしました。

当社グループを取り巻く事業環境につきましては、自動車やエレクトロニクス関連製品の需要は、年後半に向けてコロナ禍前の水準に回復してきましたが、一方、製紙向けなどの回復は遅れ、需要構造に大きな変化が生じました。このような状況の下、当社グループは、半導体関連や抗菌・抗ウイルス向け製品の出荷に注力するとともに、安全・安定操業の維持継続とコスト削減に努め、減益幅の圧縮に努めました。

この結果、当連結会計年度の売上高は1,333億9千2百万円(前年度比8.0%減収)、営業利益は123億3千6百万円(前年度比10.5%減益)、経常利益は130億5千4百万円(前年度比14.3%減益)、親会社株主に帰属する当期純利益は81億4千2百万円(前年度比21.6%減益)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

基幹化学品事業

電解製品は、紙パルプ、金属・鉄鋼や自動車関連など広範な産業分野において需要が低調に推移し販売数量が低迷したことから減収となりました。アクリルモノマー製品は、年後半に向けて販売数量は回復しましたが年前半の販売不振および原料価格安に連動した製品価格低下の影響などから減収となりました。工業用ガスは、需要回復が遅れたことなどから減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は584億9千5百万円(前年度比10.9%減収)となりました。

営業利益は、原燃料価格の低下による変動費の改善や固定費の削減はありましたが販売数量や販売価格の低迷が影響し、45億5千万円(前年度比16.4%減益)となりました。

 

ポリマー・オリゴマー事業

アクリルポリマーは、紙パルプ向けや年前半における自動車関連向け製品の需要不振の影響などから販売数量が減少し減収となりました。アクリルオリゴマーは、年後半にかけて販売数量は回復しましたが年前半の販売低迷を補えず減収となりました。高分子凝集剤は、輸出の減少や販売価格の低下などから減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は269億4千4百万円(前年度比7.4%減収)となりました。

営業利益は、原料価格低下に伴う変動費の改善はありましたが、アクリルポリマーや高分子凝集剤の販売数量減少などが影響し、31億4千1百万円(前年度比10.9%減益)となりました。

 

接着材料事業

瞬間接着剤は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から国内外の市場において販売数量が低迷したことなどから減収となりました。機能性接着剤は、新規用途向け製品の販売開始はありましたが、年前半の自動車関連やエレクトロニクス関連向け製品の需要が低調に推移したことおよび一部不採算製品の販売を縮小したことなどから減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は100億5千4百万円(前年度比10.0%減収)となりました。

営業利益は、固定費削減による利益改善はありましたが、瞬間接着剤、機能性接着剤の販売数量減少や一部機能性接着剤の販売単価下落などが利益を圧迫し、7億8千1百万円(前年度比42.4%減益)となりました。

 

高機能無機材料事業

高純度無機化学品は、テレワークの拡大などに伴う半導体向け需要が年間を通し堅調に増加したことなどから増収となりました。無機機能材料は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から抗菌・抗ウイルスへの関心が高まり需要が増加したことに加え、電子部品向けイオン捕捉材の販売も好調に推移し増収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は89億8千万円(前年度比10.2%増収)となりました。

営業利益は、旺盛な需要に対し積極的な設備投資を継続して実施したことなどから固定費は増加しましたが、高純度無機化学品、無機機能材料とも販売数量が増加したことなどが寄与し、26億9千万円(前年度比27.1%増益)となりました。

 

樹脂加工製品事業

管工機材製品および建材・土木製品は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などから需要は低調に推移し減収となりました。ライフサポート製品は、年後半に向けて在宅介護向け製品などの販売数量が回復しましたが年前半の不振を補えず減収となりました。エラストマーコンパウンドは、一部製品の需要低迷や東南アジアにおける新規開発案件の遅延などから減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は252億8千5百万円(前年度比6.6%減収)となりました。

営業利益は、管工機材製品やライフサポート製品の主要原料価格の低下による変動費の改善はありましたが、タイ子会社の固定費負担増加の影響などから、11億8千8百万円(前年度比3.7%減益)となりました。

 

その他の事業

新規製品の研究開発事業、輸送事業、商社事業などにより構成される当セグメントは、売上高は36億3千3百万円(前年度比3.7%減収)、営業損失は4千5百万円となりました。

 

財政状態につきましては、当社グループの当連結会計年度末の資産合計は、「有価証券」および「投資有価証券」が減少しましたため、前連結会計年度末に比べ53億7千8百万円、2.2%減少し、2,418億3千2百万円となりました。

負債合計は、「支払手形及び買掛金」が減少しましたため、前連結会計年度末に比べ44億4千2百万円、9.1%減少し、441億9千万円となりました。

純資産合計は、「資本剰余金」および「その他有価証券評価差額金」が減少しましたため、前連結会計年度末に比べ9億3千6百万円、0.5%減少し、1,976億4千2百万円となり、自己資本比率は79.8%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ6億8千6百万円増加し、当連結会計年度末には438億円となりました。

 

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益は減少しましたものの、たな卸資産および法人税等の支払額が減少しましたため、前連結会計年度に比べ収入が20億5千6百万円増加し、206億7千1百万円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、資金運用の一部を譲渡性預金から定期預金に変更し、さらに運用期間を短縮しましたため、前連結会計年度に比べ支出が44億9千3百万円減少し、113億6千2百万円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出が増加しましたため、前連結会計年度に比べ支出が39億8百万円増加し、84億9千1百万円の支出となりました。

なお、キャッシュ・フローに関する指標は以下のとおりです。

 

(参考)当社グループのキャッシュ・フロー指標の推移

 

2018年12月

2019年12月

2020年12月

自己資本比率(%)

77.3

78.4

79.8

時価ベースの自己資本比率(%)

66.2

67.6

64.1

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.6

0.6

0.6

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

207.1

196.4

225.5

 

(注) 1  各指標は、いずれも連結ベースの財務数値を用いて、以下の計算式により算出しております。

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

2  株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数により算出しております。

3  有利子負債は、連結貸借対照表上に計上されている負債のうち、利息を支払っている負債(リース債務を除く)を対象としております。

4  営業キャッシュ・フローおよび利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」および「利息の支払額」を用いております。

5 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)を2019年12月  期の期首から適用しており、2018年12月期の自己資本比率および時価ベースの自己資本比率は、当該会計基準を遡って適用した後の数値で算定しております。

 

③生産、受注および販売の実績

(イ) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年度比(%)

基幹化学品事業

48,389

△11.2

ポリマー・オリゴマー事業

25,475

△8.3

接着材料事業

9,747

△11.7

高機能無機材料事業

8,074

6.6

樹脂加工製品事業

23,350

△7.0

合計

115,037

△8.7

 

(注) 1  その他の事業につきましては、主としてサービス業ですので記載しておりません。

2  金額は、販売価格により算出しております。

3  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(ロ) 受注状況

当社および各社は受注生産はほとんど行わず、主として見込み生産であります。

 

(ハ) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

構成比(%)

前年度比(%)

基幹化学品事業

58,495

43.9

△10.9

ポリマー・オリゴマー事業

26,944

20.2

△7.4

接着材料事業

10,054

7.5

△10.0

高機能無機材料事業

8,980

6.7

10.2

樹脂加工製品事業

25,285

19.0

△6.6

その他の事業

3,633

2.7

△3.7

合計

133,392

100.0

△8.0

 

(注) 1  総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。

2  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

(2)  経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

連結財務諸表の作成においては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき見積りおよび判断を行っておりますが、見積りにつきましては不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

 

②当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、一部の産業や製品分野を除き全般的に需要は低調に推移し、1,333億9千2百万円(前年度比8.0%減少)となりました。営業利益は、需要減少に対し経常固定費の削減等を行うことで減益幅の圧縮に努めましたが、販売数量減少に伴う利益減を補うまでにはいたらず、123億3千6百万円(前年度比10.5%減少)となりました。なお、セグメントごとの売上高と営業利益につきましては、(1)経営成績等の概要 財政状態および経営成績の状況をご参照ください。

経常利益は、受取利息・受取配当金が減少したことに加え、タイ子会社に対するタイバーツ建て貸付金の為替評価について、前連結会計年度は為替差益を計上した一方、当連結会計年度は為替差損を計上したことなどから営業外損益は減少し、130億5千4百万円(前年度比14.3%減少)となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券の評価損や固定資産の処分損を計上したことなどから特別損益は減少し、81億4千2百万円(前年度比21.6%減少)となりました。

 

当社グループの資本の財源および資金の流動性については、必要資金は自己資金のほか、金融機関からの借入などで確保しています。2021年は、徳島工場での水素ステーション設置などの設備投資および自己株式の取得を予定しており、主に自己資金を充当する予定です。また、必要に応じて、当社グループの財政状態および市場環境等を考慮しながら、金融機関からの借入や資本市場からの資金調達などを総合的に勘案し、最適な方法で資金調達を実施する予定です。当社グループの資金の流動性については、グループ内資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的にキャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、グループ全体の資金効率化を図っています。また、緊急時の資金調達手段の確保を目的として、一部の取引銀行と当座貸越契約および債権流動化契約を締結しており、代替調達手段を備えております。

 

③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2020年から2022年を対象期間とする中期経営計画「Stage up for the Future」の数値目標に対する進捗は以下のとおりです。

 

 

 

 

(単位:億円)

 

2020年

計画

2020年

実績

増減

2021年

予想

2022年

計画

 

売上高

1,410

1,333

△77

1,430

1,630

 

営業利益

130

123

△7

140

170

 

EBITDA

229

221

△8

247

270

 

高付加価値製品比率(売上高)

43.4%

43.3%

△0.1%

45.0%

47.0%

 

設備投資額(累計440億円)※

140

118

△22

155

163

 

海外売上高

249

221

△28

249

325

 

1株当たり純利益(円)

74.18

62.43

△11.75

81.99

106.00

 

総資産経常利益率

5.7%

5.3%

△0.4%

6.1%

7.0%

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※設備投資額は認可ベースの数値

 

当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から計画に比べ、各指標とも未達となりました。新型コロナウイルス感染症の収束時期は不確実であり予測が困難ですが、感染症拡大により減少した需要は、2021年以降に徐々に回復することを見込み、2021年12月期の業績予想は、2018年以降3期にわたり続いた減益に終止符を打ち、成長軌道への転換を目指しています。

このような経営成績の状況に関する認識および分析、検討内容を踏まえ、当社グループは、中期経営計画「Stage up for the Future」で掲げる基本方針である「高付加価値製品事業の拡大」、「将来を支える『第4の柱』事業を含む新ビジネスユニットの創出」および「基盤事業の強靭化」の達成に向け、引き続き成長につながる投資は積極的に実施するとともに、これまで行った投資の成果を早期に実績化することに努めます。また、間接部門の効率化を進める一方、サスティナビリティへの貢献につながる新事業、新製品創出に向けた取組みを強化してまいります。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

(1) 技術導入契約

契約会社名

契約の相手方

契約の内容

許可年月日

契約期間

対価の支払

東亞合成㈱
(当社)

アメリカ

S.C.ジョンソンポリマー社 ※

 

SGO技術導入および共同技術開発

1998年5月20日

調印日から10年および自動継続

(1) 契約時一定額の一時金

(2) 純販売金額によるロイヤリティ

 

※  なお、現在の契約の相手方は、BASF社(ドイツ)となっております。

 

(2) 大分ケミカル株式会社との吸収合併契約

当社は、グループ内における経営資源のさらなる一体化を図り、事業運営管理を効率化するため、2020年9月28日開催の取締役会において、当社の完全子会社である大分ケミカル株式会社を吸収合併することを決議し、同日付で吸収合併契約を締結しました。

 

①合併方式

当社を吸収合併存続会社とする吸収合併方式で、大分ケミカル株式会社は解散いたしました。なお、本合併は、会社法第796条第2項に基づく簡易合併および同法第784条第1項に基づく略式合併であるため、当社および大分ケミカル株式会社のいずれも株主総会の承認決議を経ずに行いました。

②合併の期日

2021年1月1日

③合併に際して行う株式の発行および割当

当社は、大分ケミカル株式会社の発行済株式のすべてを保有しているため、本合併による新株式の発行および合併の対価として割り当てられる金銭その他の財産はありません。

④引継資産・負債の状況

当社は、吸収合併の効力発生日をもって、吸収合併消滅会社である大分ケミカル株式会社からその資産、負債その他の権利義務を承継いたしました。

⑤吸収合併存続会社となる会社の概要

商号   東亞合成株式会社

事業内容 各種化学工業製品の製造販売

資本金  20,886百万円

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、高付加価値事業の拡大とともに、将来を支える「第4の柱」事業を含む新事業の創出を中期経営計画に掲げています。新事業の創出については、当社グループのコア技術を起点として、従来の事業領域を超えた新規キーマテリアルやサービスを新たなビジネスユニットとして複数創出することを目指しています。また、研究開発機能強化の一環としてオープンイノベーションを推進し、企業間連携の共同開発や、産学連携による共同研究に積極的に取り組んでいます。

当連結会計年度の当社グループ全体の研究開発費は4,037百万円です。

以下、セグメント別に説明いたします。

 

(1) 基幹化学品事業

当社グループの基幹事業である電解事業につきましては、革新的プロセス技術開発による大幅な電力消費削減方法として、ゼロギャップ電解槽技術の検討および実証を進めています。また、次亜塩素酸水溶液を開発しヒトコロナウイルスおよびインフルエンザウイルスに対して効果的に働くことを確認しました。

当セグメントに係る研究開発費は81百万円です。

 

(2) ポリマー・オリゴマー事業

光硬化型樹脂関連では、光硬化型樹脂「アロニックス」の改良や新規オリゴマーの開発など高付加価値製品の研究開発に取り組んでおります。また、種々の機能性アクリル系高分子を電子・電機、自動車、建材分野などへ応用展開するとともに、機能性複合材料の研究開発を行っています。さらに、建材関係では、コンクリートの劣化を防ぎ建物を強靭化、長寿命化できる外壁保護剤や工法の開発・改良に注力しており、環境問題や建物の資産価値向上に貢献しています。

当セグメントに係る研究開発費は1,098百万円です。

 

(3) 接着材料事業

接着剤関連商品としては瞬間接着剤「アロンアルフア」をはじめ、自動車・精密機器などの工業用や医療用に至るまでの幅広い分野で、各種機能性接着剤の研究開発を推進しております。

当セグメントに係る研究開発費は1,222百万円です。

 

(4) 高機能無機材料事業

重点事業の一つである高純度無機化学品の研究開発に取り組んでおり、高純度液化塩化水素、高純度アルカリ、高品位過塩化鉄液などを取り扱っております。また、抗菌剤や消臭剤などの無機機能材料の開発を行っております。

当セグメントに係る研究開発費は346百万円です。

 

(5) 樹脂加工製品事業

当社連結子会社のアロン化成株式会社では、ものづくりセンターを起点に、提案型メーカーとしてものづくり力の強化を推進しております。樹脂加工技術を応用した管工機材の開発や介護・福祉など生活用品関連製品の開発に加え、当社「R&D総合センター」との連携の中で、エラストマーコンパウンドなどの新規合成樹脂の成形加工技術の開発にも取り組んでおります。

当セグメントに係る研究開発費は681百万円です。

 

(6) その他の事業

研究開発全般のレベルアップを目指し、基盤技術研究所では、分析・評価技術の向上、新規材料の設計、物性・構造解析およびマテリアルズインフォマティクス(MI)に取り組んでおります。また、先端科学研究所では、京都大学iPS細胞研究所、東京大学大学院農学生命科学研究科をはじめ多くの研究機関との共同研究など、機能性ペプチドを用いたバイオインフォマティクス関連分野の研究開発に取り組んでおります。

当セグメントに係る研究開発費は605百万円です。