第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「会社の永遠の発展を追求し、適正な利益を確保することにより、株主、ユーザー、従業員とともに繁栄する企業を目指して豊かな社会づくりに貢献する。」を経営の理念としております。これを実現するために、当社独自の技術と心のこもったサービスでユーザーの期待に応え、誠意・創造性・迅速な対応・自然との調和をモットーに、信頼される企業を築き上げるべく全社をあげて事業の発展に取り組んでまいります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

当社グループは、2019年度より、新中期経営計画をスタートさせております。本計画においては、精密化学品事業の拡大推進と競争力を育成するとともに、新事業創出による成長基盤の強化を目標としております。2024年度の連結売上高1,000億円達成を目指し、「精密化学品事業の拡大推進」、「生産技術力の底上げ」、「新規事業の早期創出」、「グループ総合力強化」、「ESGシフトと企業価値向上」を図ってまいります。

 また、「安全第一主義」、「稼ぐ関東電化の実現」、「全員開発」を企業活動の基本課題とし、10年後のありたい姿を見据え、安定した経営基盤のもと、安全で働きがいを実感できる環境を提供し、独自性・優位性のある製品で世界最先端の技術を支え、社会に貢献する「創造的開発型企業」を目指してまいります。

 なお、新型コロナウイルス感染症の終息の時期は未だ不透明であり、経済活動への影響を現時点では予測できない状況となっております。新型コロナウイルス感染症の感染拡大による受注の減少等の影響は、翌期以降の当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を与える可能性があります。影響額については、提出日現在において合理的に算定することが困難でありますが、グループ全体の生産性向上に向けた体制を着実に構築することにより、利益確保に努めてまいります。

① 重点戦略
ア 精密化学品事業の拡大推進

グローバル最適生産・販売体制を確立し、地産地消による利益最大化を実現する。また、海外生産拠点の安定稼働を実現させ、顧客密着と顧客提案力強化により新製品開発のスピードを加速させる。

イ 生産技術力の底上げ

既存技術の深化、革新的製造技術の確立、品質評価能力の向上により競合他社に負けない高品質とコストダウンを実現させる。また、急速なデジタル化の進展に対応するため、IoT・AIを活用した生産の革新、業務の効率化を推進する。

ウ 新規事業の早期創出

研究開発部門の活性化を図り多様な人材を育成するとともに、当社の基盤技術と優位性を活かした新規製品の開発を強化する。また、当社収益の柱となる製品の早期市場投入と、新事業創出を推進する。

エ グループ総合力強化

「安全第一主義」を徹底し、グループ企業と一体となって長期的な成長を促す組織づくりを実現させる。また、グローバルな人材を確保し、育成を強化することで、海外事業戦略の拡大と充実を図る。

オ ESGシフトと企業価値向上

企業価値向上と社会的貢献を果たすためESG*、SDGs*を意識した経営を推進し、持続可能な社会の実現に貢献する。また、ダイバーシティ・マネジメントを推進し、多様な人材を育成するとともに、活気と働きがいのある職場を構築する。

*ESG :Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字。企業経営や成長において、各々の観点を持った上で配慮が必要だという考え方。

*SDGs:「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標。

 

② 前記の重点戦略を達成するための個別戦略
ア 精密化学品事業

半導体・液晶向け特殊ガスにおいては、今後も半導体市場の拡大が見込まれており、新たな成長ステージに入ることが想定される。当社は本事業を成長基盤事業と位置付け、海外生産拠点の早期設立と地産地消による利益最大化を実現し、より高収益な事業へと成長させることを目指す。

さらに、基盤技術の深化、新技術の確立、IoT・AIを活用した省力化を推進することで、生産性向上によるコストダウンと品質評価能力の向上を実現させる。

電池材料においては、電気自動車、ハイブリッドカーの普及拡大により、今後もリチウムイオン二次電池の需要増加が見込まれている。需要に応じたタイムリーな販売を行うための新規技術を確立し、いち早く安定的な生産体制を構築するとともに、原材料調達の見直しと、容器の大型化を推進し、徹底したコストダウンを図る。また、新規添加剤を早期に市場投入し、電池材料を当社の基盤事業へ成長させる。

イ 基礎化学品事業

基礎化学品事業においては、市況に左右されず安定した収益を生み出すために、コストミニマム運転を継続し、利益の最大化を図る。また、生産性向上によるコストダウンと合理化を実施し、筋肉質な事業に転換させる。

ウ 鉄系事業

鉄系事業においては、コーティング技術を活用した新用途の開拓を進めるため、新たな製造技術の確立を目指す。また、海外展開を強化し、シェアの拡大を図るとともに、原材料メーカーとのパートナーシップ体制を構築し、事業の再編と構造改革を推進する。

エ 研究開発

将来の関東電化を担う製品を生み出すために組織の活性化と再編を図り、人材育成の強化と創造的開発者集団の育成に努める。また、当社の優位性、ノウハウ、特許等を活用し、将来のビジョンとコンセプトを明確に打ち出し実行できる体制を構築する。

オ 資材戦略

新規調達先の開拓、原材料の多様化、長期的パートナーシップの構築等により、原材料の安定・安価な調達を目指す。

カ 環境活動

当社のRC活動計画に則り、地球温暖化原因物質の排出量削減、環境汚染物質の排出抑制、省資源・リサイクル活動を計画的に推進する。

キ 人事・総務戦略

従来の発想に固執せず、新たな事業領域を担う人材を継続的・計画的に育成する。さらに、社員のグローバル化を促し、当社の世界戦略を担うグローバル人材の育成に努める。また、継続的な企業価値の向上を図るため、コーポレート・ガバナンスの強化に努める。

ク 情報システム戦略

既存システムの見直しを図り、経営情報を迅速に把握できるシステムを構築する。また、国内外ベンダーとの連携を強化し、海外拠点運営のサポートを行う。

ケ 財務戦略

自己資本比率50%を目線に財務の健全性を確保しつつ、成長分野への投資は積極的に実施する。

また、安定的な配当を継続し、ROE、TSR、資本コストを意識した経営に努める。

*TSR:「Total Shareholder Return(トータル・シェアホルダー・リターン)」の略で、日本語で「株主
総利回り」と呼ばれ、キャピタルゲインと配当を合わせた、株主にとっての総合投資利回り。

 

 

2 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績および財務状況等に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、ここに記載した事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループがリスクとして判断したものですが、当社グループに係る全てのリスクを網羅したものではありません。

 

(1) 事業環境の変化

当社グループの主力製品は半導体・液晶用フッ素系製品であります。半導体・液晶業界は循環的な市況変動が大きい業界であり、需給環境に大きな変化があった場合、業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループ製品の川下における技術革新により、関係する製品に対する需要そのものがなくなる可能性があります。

(2) 競争の激化

当社グループは、韓国・中国・台湾等のメーカーとの激しい競争を繰り広げております。競争力の維持・強化に向けた様々な取り組みを進めておりますが、当社製品の技術・品質面での優位性がなくなり、競合メーカーとの価格競争となった場合には、販売シェアのダウンまたは販売価格低下により、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 海外事業活動

当社グループは、東アジアを中心に海外事業活動を強化しておりますが、予期しない法令または規制の変更、政治および社会情勢の変化、テロ、感染症等のリスクがあり、これらのリスクが発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 原燃料価格の変動および調達状況

当社グループは、電力が最大の原材料であります。また、当社グループは、原材料として、リチウム化合物、無水フッ酸、タングステン、工業塩、エチレン等を購入しております。製造にあたっては、効率的な資材購入と製品価格への転嫁を図っておりますが、電力をはじめ原燃料の価格変動や調達状況が、業績に影響を与える可能性があります。

(5) 新規製品の開発の遅れ

当社グループは、収益の柱となるような新規製品の開発に経営資源を投入しておりますが、開発が計画どおりに進捗しない場合や、開発した製品が市場投入時に市場ニーズにマッチしない場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(6) 事故災害

当社グループは、安全には万全を期しておりますが、万一、当社工場にて大規模事故災害が発生した場合には、社会的信用の失墜、補償などの費用の発生、生産活動停止に伴う機会損失等により、業績に影響を与える可能性があります。

(7) 製造・品質トラブル

当社グループは、安定運転、品質の維持に努めておりますが、製造トラブルや品質トラブルが発生し、その回復に時間がかかる場合には、業績に影響を与える可能性があります。また、生産物賠償責任保険には加入しておりますが、この保険が最終的に負担する全ての費用を十分にカバーできない可能性があります。

(8) 自然災害

当社グループは、地震等の自然災害や感染症の流行に対しては各種訓練や防災対策、事業継続対策は行っておりますが、災害等により製造拠点等が影響を受けた場合には、業績に影響を与える可能性があります。

なお、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に対して、当社グループは従業員の感染を防止するため、感染防止策を徹底するとともに、在宅勤務や時差出勤、出張や面談の取り止めなどの対策を実施しておりますが、従業員の感染等による生産活動の停止、顧客の事業活動の停止や生産計画の見直しによる売上の減少等により、業績に影響を与える可能性があります。

 

(9) 環境規制

当社グループは、化学物質を取り扱う企業として環境対策に万全を期しておりますが、万一、有害物質が社外に流出した場合には、社会的信用の失墜、補償などの費用の発生、生産活動停止に伴う機会損失等により、業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは、土壌・地下水汚染、大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理等各種の環境規制に服しています。これらの規制の動向等により、過去、現在および将来の当社グループの事業活動に関し、法的または社会的責任の観点から対応を行う場合は、業績に影響を与える可能性があります。

(10) 資金調達

当社グループは、金融機関から資金を調達しております。種々の借入条件を組み合わせることで、急激な金利変動に備えておりますが、金利が大幅に上昇した場合は金利負担が増加し、業績に影響を与える可能性があります。

(11) 法令・規制

当社グループは、事業活動を行うにあたって、各種の法令・規制に服しております。グループをあげてコンプライアンスの遵守に注力しておりますが、重大な法令違反があった場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(12) 知的財産の保護

当社グループは、事業の優位性確保のため、新規開発技術の特許保護を重視する戦略をとっておりますが、開発した技術やノウハウの外部への流失や、知的財産権についての係争により、業績に影響を与える可能性があります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 業績

当連結会計年度におけるわが国経済は、各種政策の効果もあり、緩やかな回復基調が続いておりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、足下の景気は大幅に下押しされており、厳しい状況にありました。海外においても、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により、経済活動が抑制されており、足下の景気は急速に減速しました。

化学工業におきましても、新型コロナウイルス感染拡大の影響による物流の停滞、中国経済の減速等もあり、引き続き厳しい事業環境にありました。

このような情勢下におきまして、当社グループは、基礎化学品事業、精密化学品事業および鉄系事業の収益力を強化するとともに、当社の強みであるフッ素関連技術を活かした新規製品の開発に取り組んでまいりました。

当期の売上高は、主に精密化学品事業部門が減収となったため、536億79百万円と前期に比べ15億21百万円、2.8%の減少となりました。損益につきましては、経常利益は、78億40百万円と前期に比べ17億49百万円、18.2%の減少となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、50億21百万円と前期に比べ15億31百万円、23.4%の減少となりました。

なお、当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の業績への大きな影響はございませんが、2021年3月期以降の連結会計年度については、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、世界経済への影響は避けられず、当社グループの業績にも大きな影響を及ぼす可能性がございます。

 

なお、セグメント別の概況は、次のとおりであります。

 

ア.基礎化学品事業部門

(無機製品)

か性ソーダは、前期並の売上高となりました。塩酸は、販売数量の減少により、前期に比べ減収となりました。

(有機製品)

塩素系有機製品につきましては、トリクロールエチレンは、前期並の売上高となりました。パークロールエチレンは、販売数量の減少により、前期に比べ減収となりました。

以上の結果、基礎化学品事業部門の売上高は、66億55百万円となり、前期に比べ1億63百万円、2.4%の減少となりました。営業損益につきましては、営業利益1億29百万円となり、前期に比べ1億42百万円、52.4%の減少となりました。

 

イ.精密化学品事業部門

(特殊ガス製品)

半導体・液晶用特殊ガス類につきましては、三フッ化窒素は、販売数量の減少により、前期に比べ減収となりました。六フッ化タングステンは、販売数量の減少と販売価格の低下により、前期に比べ減収となりました。ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンは、販売数量の増加により、前期に比べ増収となりました。

(電池材料製品)

電池材料の六フッ化リン酸リチウムは、販売数量の減少により、前期に比べ減収となりました。

以上の結果、精密化学品事業部門の売上高は、399億53百万円となり、前期に比べ14億47百万円、3.5%の減少となりました。営業損益につきましては、原材料価格は低下したものの、製造固定費の増加等により、営業利益68億50百万円となり、前期に比べ15億01百万円、18.0%の減少となりました。

 

ウ.鉄系事業部門

複写機・プリンターの現像剤用であるキャリヤーは、前期に比べ若干の減収となりました。鉄酸化物は、着色剤の販売減少により、前期に比べ減収となりました。

以上の結果、鉄系事業部門の売上高は、23億93百万円となり、前期に比べ90百万円、3.6%の減少となりました。営業損益につきましては、営業利益3億97百万円となり、前期に比べ66百万円、14.3%の減少となりました。

 

 

エ.商事事業部門

商事事業につきましては、化学工業薬品の販売増加により、前期に比べ増収となりました。

以上の結果、商事事業部門の売上高は、24億21百万円となり、前期に比べ79百万円、3.4%の増加となりました。営業損益につきましては、営業利益1億37百万円となり、前期に比べ10百万円、8.4%の増加となりました。

 

オ.設備事業部門

化学設備プラントおよび一般産業用プラント建設は、請負工事の増加により、前期に比べ増収となりました。

以上の結果、設備事業部門の売上高は、22億55百万円となり、前期に比べ99百万円、4.6%の増加となりました。営業損益につきましては、営業利益5億51百万円となり、前期に比べ2 億08百万円、61.0%の増加となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末(以下「前期末」という)に比べ17億68百万円減少し、163億21百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により獲得した資金は、91億02百万円となりました(前年同期は106億64百万円の資金の獲得)。これは主に、税金等調整前当期純利益が74億44百万円、減価償却費が54億68百万円となったことにより増加した一方で、仕入債務の減少額が11億53百万円、法人税等の支払額が31億91百万円となったことにより減少したものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は、106億12百万円となりました(前年同期は93億15百万円の資金を使用)。これは主に、精密化学品事業部門のうち、半導体・液晶用特殊ガス類製造設備の成長投資やその他の維持投資に伴う有形固定資産の取得によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により使用した資金は、90百万円となりました(前年同期は36億16百万円の資金の獲得)。これは主に、長期借入れによる収入が21億50百万円となった一方で、長期借入金の返済による支出が13億43百万円、配当金の支払額が8億05百万円となったことによるものであります。なお、長期借入れによる収入につきましては、主に精密化学品事業部門のうち、半導体・液晶用特殊ガス類製造設備の成長投資やその他の維持投資によるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

ア.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

基礎化学品事業

6,920

△0.8

精密化学品事業

35,846

△5.4

鉄系事業

2,299

△8.7

設備事業

4,499

6.8

合計

49,565

△4.0

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、基本的に販売価格によっておりますが、設備事業の金額は、当連結会計年度の製造費用によっております。

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

イ.受注状況

当連結会計年度の設備事業の受注状況を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

設備事業

1,455

△39.9

549

△59.3

合計

1,455

△39.9

549

△59.3

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

ウ.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

基礎化学品事業

6,655

△2.4

精密化学品事業

39,953

△3.5

鉄系事業

2,393

△3.6

商事事業

2,421

3.4

設備事業

2,255

4.6

合計

53,679

△2.8

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Samsung Electronics Co., Ltd.

11,076

20.1

9,335

17.4

キオクシア株式会社

5,517

9.9

5,739

10.7

 

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中における将来に関する記述は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。

 なお、新型コロナウィルス感染症の世界的な感染拡大による影響は不確実性が大きく、当社グループの業績に与える影響額を合理的に算定することが困難ではありますが、提出日現在で入手可能な情報を基に検証等を行っております。

(退職給付費用)

退職給付費用および債務の計算は、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件には、割引率、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率、死亡率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、当社グループの退職給付費用および債務に影響を与える可能性があります。

(繰延税金資産)

当社グループは、繰延税金資産について、回収可能性の判断にあたり、現時点で入手可能な情報に基づいた将来の課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ課税所得が減少した場合、繰延税金資産が取り崩されて税金費用が増加する可能性があります。

 

② 財政状態の分析

当連結会計年度末の総資産は840億61百万円となり、前期末に比べ24億59百万円増加しました。

(流動資産)

流動資産は452億18百万円で、前期末に比べ17億46百万円減少しました。その主な要因は、たな卸資産が7億80百万円増加した一方で、現金及び預金が17億55百万円、受取手形及び売掛金が7億50百万円減少したためであります。

(固定資産)

固定資産は388億42百万円で、前期末に比べ42億05百万円増加しました。その主な要因は、投資有価証券が12億30百万円減少した一方で、有形固定資産が42億37百万円増加したためであります。なお、有形固定資産の増加につきましては、主に精密化学品事業部門のうち、半導体・液晶用特殊ガス類製造設備の成長投資やその他の維持投資によるものであります。

(流動負債)

流動負債は208億59百万円で、前期末に比べ6億04百万円増加しました。その主な要因は、支払手形及び買掛金が9億78百万円、未払法人税等が8億52百万円減少した一方で、1年内返済予定の長期借入金が22億43百万円、流動負債のその他が4億21百万円増加したためであります。

(固定負債)

固定負債は159億87百万円で、前期末に比べ12億59百万円減少しました。その主な要因は、長期借入金が14億80百万円減少したためであります。これは主に、精密化学品事業部門のうち、半導体・液晶用特殊ガス類製造設備の成長投資によるものであります。受取手形割引高及び社債を含む有利子負債の残高は216億32百万円となり、前期末に比べ7億95百万円の増加となりました。

(純資産)

純資産合計は472億14百万円となり、前期末に比べ31億14百万円増加しました。その主な要因は、その他有価証券評価差額金が8億45百万円減少した一方、利益剰余金が当期純利益により42億15百万円増加したためであります。

 

③ 経営成績の分析

当連結会計年度の売上高は536億79百万円となり、前期に比べ15億21百万円、2.8%の減少となりました。これは、設備事業部門が増収となった一方で、当社が成長基盤事業と位置付けている精密化学品事業部門のうち半導体・液晶用特殊ガス類が販売数量の減少と販売価格の低下により減収となったためであります。なお、事業別の売上の概要につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①業績」に記載のとおりであります。

売上原価は、国内の成長投資や海外生産拠点の設立等により減価償却費等の固定費が増加となった一方で、原材料価格の減少により4億13百万円減少しております。また、販売費及び一般管理費は研究開発費等が増加しました。以上の結果、営業利益は77億29百万円となり、前期に比べ17億18百万円、18.2%の減少となりました。

営業外収益は前期に為替差益を計上した一方で、試作品売却益を計上したこと等により37百万円増加しております。また、営業外費用は、為替差損を計上したこと、支払利息が増加したことにより68百万円増加しております。以上の結果、経常利益は78億40百万円となり、前期に比べ17億49百万円、18.2%の減少となりました。

特別利益は前期に投資有価証券売却益を計上したことにより66百万円減少しております。特別損失は固定資産除却損が増加したこと等により213百万円増加しております。以上の結果、税金等調整前当期純利益は74億44百万円となりました。法人税等および非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は50億21百万円となり、前期に比べ15億31百万円、23.4%の減少となりました。

 

④ 資本の財源および資金の流動性

ア.キャッシュ・フローの分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

イ.資金需要

当社グループの主な資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等の長期資金ならびに原材料の購入、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金であります。

資金調達の方法及び状況並びに資金の主要な使途を含む資金需要の動向につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題 ② 前記の重点戦略を達成するための個別戦略 ケ 財務戦略」に記載のとおりであります。

ウ.財務政策

長期資金については自己資金のほかに金融機関からの長期借入、短期資金については自己資金のほかに金融機関からの短期借入による調達を基本としております。また、運転資金の効率的な調達・安定性に配慮し、取引銀行との間でコミットメントライン契約を締結しております。

なお、当社グループは、事業活動に必要な資金を安定的に確保することを基本方針としており、財務状況や金融・経済情勢に応じて最適と判断した手段により資金を調達しております。

 

⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2019年度を初年度とする第11次中期経営計画(3ヵ年)において、最終年度の連結経営指標について以下の数値目標を設定しております。

数値目標(最終年度の連結経営指標)

 

第11次中期経営計画

売上高

700億円

営業利益

120億円

自己資本比率

50%以上

ROE

15%以上

 

第11次中期経営計画の1年目にあたる当連結会計年度の売上高は536億79百万円、営業利益は77億29百万円となりました。なお、第11次中期経営計画の目標達成に向けた経営戦略と課題につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題」に記載のとおりであります。

 

4 【経営上の重要な契約等】

特記すべき事項はありません。

 

5 【研究開発活動】

2016年4月から2019年3月までの第10次中期経営計画におきましては、「新規製品の早期創出」を重点目標に掲げて研究開発に取り組んだ結果、2品目の新規製品を上市いたしました。

2019年4月から始まりました第11次中期経営計画におきましては、複数製品の上市を目標に掲げるとともに、当社の既存技術と、新たに導入する技術を融合させ、当社だからこそ活かせる独自技術の構築を推進する予定です。

具体的な活動内容として、半導体・液晶製造用特殊ガスおよび電池材料については、精密化学品開発部を事業本部へ編入し、顧客密着型の開発を強化することにより、新製品の上市を目指してまいります。その他の事業分野および新規開発品につきましては、市場開発部が中心となり、自社技術を深耕した新製品の市場投入に向けた活動を行っております。新規事業分野の探索および研究開発計画の立案から評価までの統括管理は、開発企画部が遂行しております。研究・知的財産部は、事業戦略に沿った特許権利網の構築に取り組んでおります。これら4部門と総合開発センター、総合開発センター渋川開発室、および総合開発センター水島開発室が相互連携することで研究開発活動に取り組んでおります。

この第11次中期経営計画実行期間にあたる当連結会計年度の研究開発投資額は、1,345百万円でありました。

 

次に、研究開発テーマの概要および今後の方向性を説明します。

「既存事業の強化」を目的に半導体・液晶製造用特殊ガス、電池材料、有機機能性材料、基礎化学品および鉄系材料分野における新製品開発を推進するとともに、「新規事業の創出」を目的としたフッ素系樹脂「エフクリア」、有機‐無機ハイブリッド材料および無機ナノ材料等の新規事業分野の開拓にも積極的に取り組んでいきます。

その他、当社の基盤技術から派生する新しいフッ素化技術や有機電解技術の開発についても積極的に取り組む予定です。

 

(1) 半導体・液晶製造用の特殊ガス

現在、半導体・液晶市場ではNF3(三フッ化窒素)、CF4(四フッ化炭素)、およびWF6(六フッ化タングステン)等の各種フッ素系特殊ガスが、シリコン基板表面に回路パターンを刻むエッチング用途、および製造装置内面のクリーニング用途に使用されています。当社は独自の技術によりこれらの特殊ガス製品を開発してまいりました。ムーアの法則に従って年々微細化が進む半導体分野においては、微細エッチング用のガスとして、C4F6(ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン)、COS(硫化カルボニル)やCH3F(モノフルオロメタン)等を開発し、市場に提供してまいりました。さらに、近年の3D化や地球温暖化防止に対応する新規ガスや、配線用途およびパワー半導体用途の新規材料開発にも注力しております。また、世界有数の製造能力と品質とを合わせもつ半導体・液晶用特殊ガスメーカーである当社では、顧客に密着したタイムリーな開発を促進するため、2017年に韓国に生産・開発拠点の設置を決定いたしました。

 

(2) 電池材料

リチウムイオン二次電池(LiB)業界では、今後の飛躍的な成長が期待される車載用等の大型電池分野をターゲットに更なる高容量化、長寿命化、難燃化等の研究が盛んに行われており、当社でもLiB用電解質LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)の開発に成功し、この分野に参入いたしました。また、LiPF6に続く新製品として、LiBF4(ホウフッ化リチウム)を2017年4月より市場に投入いたしました。現在、高性能電解液用の各種添加剤を開発中であり、ラインナップ強化を図っていく計画です。さらに、次世代電池材料の探索も行なっており、電池材料事業の拡大を目指してまいります。

 

(3) 有機機能性材料

当社が得意とするフッ素化技術をはじめ様々な有機合成技術を活用した事業展開を目的として、2013年に複数の受託テーマをひと括りとした「有機機能性材料事業」を立ち上げました。今後は、市況や顧客ニーズの変化に合わせ、将来の収益性を確保できるような新製品を自社原材料や自社技術を用い、当社独自の付加価値を加えることにより展開してまいります。

 

(4) 基礎化学品

基礎化学品事業の収益力強化を目的に、新規製品の開発に着手しております。環境規制対象となっている既存製品の代替を目指し、鋭意検討を進めております。

 

(5) 鉄系材料

当社では、導電性の鉄、フェライト、マグネタイト等のコア材表面に各種絶縁性樹脂をコーティングした現像剤用キャリヤーを複写機、プリンター等画像形成装置市場に提供しております。さらに、このコーティング技術を活かした新規材料の開発、およびその用途開拓を推進することで鉄系事業の拡大を目指します。

 

(6) 新規材料究

当社の独自性を活かし、競合他社に対して優位性を発揮できる新規材料の創出と、当社の基盤技術から派生する新しい技術開発を推進しております。

「新規事業の創出」に関しては、耐候性や防汚性に優れた撥水撥油性のフッ素系樹脂「エフクリア」(2004年商標登録)を開発し、機能に応じて市場開発を進めております。ニッチ分野に加え、自動車向けトップコート等を中心に国内外への展開を図ることにより、採用件数は年々増えております。さらに、市場ニーズを先取りした高機能を備えた高付加価値品の開発や新規用途の開拓にも取り組んでおります。

また、鉄系事業で培ってきた微細化技術をベースに開発した無機ナノ材料、および無機ナノ材料と高分子化合物を複合化した有機‐無機ハイブリッド材料の開発も進めており、多方面への用途展開を目指しております。

さらに、5~10年先の新規コア事業の創出を目的に、電子・情報通信分野、環境・エネルギー分野、およびライフサイエンス・ヘルスケア分野における当社の独自技術を活かした製品開発に長期的視点で取り組んでおります。

「新しい技術開発」につきましては、自社開発と共に国内大学と連携した技術開発にも着手し、既存製品の製法変換や、新規製品の製法開発に適用する予定です。

 

(7) 研究開発の効率化

研究開発の効率化に関する施策は、以下の通りです。

業務時間のうちの20%を自由な時間に充当できる「20%ルール」を研究開発部門に導入し、開発担当者が自由な発想で独創的な開発テーマに着手できる環境を整えました。

また、開発期間の短縮を目的にAIによる材料設計プラットフォームを構築し、開発テーマへの展開を行っております。

その他、社内外の開発リソースの効率的な運用による開発促進を目的に、大学などの外部研究機関との共同研究も積極的に推進してまいります。