第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(経営方針、経営環境及び対処すべき課題)

当社は、2018年度よりスタートいたしました5ヵ年の経営計画「Denka Value-Up」において、「卓越した競争力をもち交易条件に左右されないスペシャリティの融合体」を目指してまいりました。この結果、この5年間で最高益を3回更新し、重点分野である「環境・エネルギー」と「ヘルスケア」分野の営業利益合計は、「Denka Value-Up」開始前の2017年度に比べ、昨年度はほぼ倍増いたしました。「Denka Value-Up」における直近の具体的な取組みについて、その一例をご紹介いたします。

まず、「環境・エネルギー」分野では、2023年3月に稼働を開始した大牟田工場の窒化ケイ素設備について、さらに1.5倍増の追加増産投資をおこなうことを決定いたしました。当社の窒化ケイ素は、独自の高温焼成技術や窒化技術により、高熱伝導性、高強度、高耐熱かつ軽量という特徴があり、要求性能が厳しい車載用途で高い評価を得ております。自動車の電動化の進展に伴い、従来の電子基板用需要が急増していることに加え、モーター用ベアリング用途でも従来素材からの転換が進んでおり、安定供給体制の確保が急務となっております。当社は窒化ケイ素のトップメーカーとして、今後さらなる供給体制の強化を図ります。

次に、「ヘルスケア」分野では、がん治療用ウイルスG47Δ(デルタ)製剤の事業基盤の強化と将来を見据えた供給力の増強を目的として、五泉事業所・新潟工場に約120億円の戦略投資を決定いたしました。本製品は生きたウイルスそのものを製剤化するもので、製造には大規模なウイルス培養技術や特殊な試験技術が必要であり、長年にわたりウイルス感染症に対するワクチンと検査試薬の開発・製造をおこなってきた当社の技術・ノウハウが活かされております。今後は、本投資を活用して、ウイルス製剤を中心とした医薬品の製造開発委託企業としてのプレゼンス確立にも取り組んでまいります。

さらに、当社は、セメント販売事業を、2023年3月末をもって新設した100%子会社へ承継させた上で、太平洋セメント株式会社に当該子会社の全株式を譲渡いたしました。これにより、2023年4月1日以降、当社青海工場で生産されたセメントは、新会社が「太平洋セメント」のブランド名で販売いたしております。また、当社は2025年上期を目途にセメント生産を終了し、石灰石の自社採掘およびセメント製造事業からの完全撤退を決議しました。当社は、1954年よりセメント事業に参入し、工場内他製品の副産物や社外の廃棄物を受け入れ、セメントの原燃料として有効活用することで独自のカーバイドチェーンを構築し、製品の競争力向上や工場のゼロエミッション化を追求してまいりました。近年、当社のセメント事業は、国内セメント需要が低調に推移し、老朽化した設備の更新やカーボンニュートラルに向けた大型投資も不可避という厳しい局面にあり、事業再構築が必要なコモディティー事業と位置付け、構造改革を検討してまいりました。結果、当社単独運営による今後の事業の維持・成長は困難との結論に至り、ポートフォリオ改革を断行いたしました。

 

このように当社は、経営計画「Denka Value-Up」における取り組みを着実に推進し、一定の成果を上げてまいりましたが、昨年度は一部の基盤事業の収支が低迷した結果、全体としては残念ながら減益となり、事業のスペシャリティ化は未だ道半ばの状況にあります。

このような状況の中、本年度から、いよいよ新たなビジョンと新経営計画「Mission 2030」がスタートいたしました。「挑戦」「誠実」「共感」の3つのコアバリューのもと、「化学の力で世界をよりよくするスペシャリストになる」ことを当社の道しるべであるパーパスと位置づけました。そして、「スペシャリティ」「メガトレンド」「サステナビリティ」の3要素を併せ持つ事業を「3つ星事業」と定義し、2030年までに当社のポートフォリオを「3つ星事業」に集中させることといたしました。また、「事業価値創造」「人財価値創造」「経営価値創造」の3つの分野において、2030年の具体的な財務・非財務目標値を設定いたしました。これらの目標値を着実に達成し、新経営計画「Mission 2030」を完遂することを目指してまいります。

 

ビジョンと経営計画の刷新に併せ、これらを社内外にわかりやすく伝えるコーポレートメッセージを「世界に誇れる、化学を。」といたしました。当社は、世界に誇れる唯一無二の存在、スペシャリストとして、化学の力で世界をよりよくすることを目指してまいります。

 

 

◇新たなビジョンと新経営計画「Mission 2030」 ~OUR "NEW" VISION & Mission 2030~

 

2023年4月、デンカグループは新たな挑戦をはじめました。これまで指針としてきた「The Denka Value」(企業理念)、Denkaの使命、Denkaの行動指針は、従業員の声をふまえ、より未来のデンカを見据えた新たな「ビジョン」へと進化。同時に、2023~2030年度の8ヵ年を対象とする新経営計画「Mission 2030」が始動しました。

 

デンカの新たなビジョン

新たなビジョンは、デンカのDNAであるコアバリューを土台とし、デンカを導く北極星となるパーパス、2030年に成し遂げたい務めとしてのミッションを重ねた構成とすることで、文字の域を超え、全従業員が自分ごと化できる新しいデンカの未来像を表しました。


 

コアバリュー

「コアバリュー」とは、デンカのDNA。さまざまな判断をする上での拠り所にもなります。「挑戦」「誠実」「共感」は、デンカが脈々と受け継いできた姿勢を改めて言語化したものです。これからも一層大切にしていくべき信条です。

 

パーパス

「パーパス」とは、デンカを導く北極星。デンカが存在する根本的理由です。デンカは世界でどのような存在でありたいのか、デンカだからこそできることは何かを突き詰めて考え、「化学の力」「世界をよりよくする」「スペシャリスト」といった言葉一つひとつを選び出しました。

 

ミッション

「ミッション」は、デンカの務め。大胆で説得力のある野心的目標です。「コアバリュー」や「パーパス」が普遍性を持つものであるのに対して「ミッション」は明確なゴールと期限があり、例えるならば“登るべき山”です。2030年に、その頂上にたどり着くことを目指し、具体的な戦略を経営計画「Mission 2030」に落とし込んでいます。

 

コーポレートメッセージ

このデンカのビジョンを社内外に分かりやすく伝達する言葉としてコーポレートメッセージ「世界に誇れる、化学を。」を創りました。世界に誇れる唯一無二の存在(=スペシャリスト)として、化学の力で世界をよりよくすることを目指すという想いを込めました。

 

 

 

 

新経営計画「Mission 2030」

新たなビジョンの実現に向けて、2030年をゴールに取り組む経営計画が「Mission 2030」です。

事業価値創造、人財価値創造、経営価値創造の3つを成長戦略として、企業価値向上に取り組みます。事業価値創造では、デンカの全ての事業を、スペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素をそなえた「3つ星事業」とすることを目指します。


 

2030年の主なKPI目標

事業価値創造

 

人財価値創造

 

経営価値創造

売上高

6,000億円以上

 

平均研修金額(21年度比)

2倍

 

プロセス革新投資

23-30年度 500億円

3つ星事業

100%

 

 

営業利益

1,000億円以上

 

 

人権リスク特定と
対応プロセス確立 

営業利益率

15%以上

 

 

ROE

15%以上

 

女性/外国籍/経験者採用者の
管理職比率

50%

 

労働災害度数率(21年度 1.1)

0.2以下

ROIC

10%以上

 

 

投資決裁額

23-30年度 5,400億円

 

 

高リスクサプライヤー数

0件

総還元性向

50%水準

 

 

CO2排出量
 (13年度比)

60%削減

 

従業員エンゲージメント
可視化と継続的な改善

 

重大品質事故発生件数

0件

再生可能エネルギー
 発電最大出力
  (21年度 133MW)

150MW

 

 

重大コンプライアンス違反件数

0件

 

 

 

 

3つの成長戦略

 

<事業価値創造>

事業価値創造では、想定される未来世界とメガトレンドから導き出された「3つの注力分野」である、ICT & Energy(アイシーティー・アンド・エナジー)、Healthcare(ヘルスケア)、Sustainable Living(サステナブル・リビング)に重点を置きます。そして、2030年までにスペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素をそなえた「3つ星事業」を100%にしていきます。また、「3つ星事業」への転換が困難な事業については、売却・撤退を含め、ポートフォリオ変革を進めていきます。そのために、8年間合計で戦略投資3,600億円、研究開発費1,800億円をかけて、2030年に営業利益1,000億円以上を目指します。

並行して、地球への貢献と、企業のさらなる社会的価値向上を目指し、8年間合計で850億円の環境投資を行い、サステナビリティを追求します。

 

3つの注力分野

ICT & Energy

 

2030年
営業利益目標

 

450億円

 

メガ

トレンド

再生可能エネルギー

モビリティー大変革

半導体やデバイス需要拡大

製品

次世代高速通信

xEV・再生可能
エネルギー

 

球状シリカ、球状アルミナ、キャリアテープ用シート・トップカバーテープ、放熱材料、エミッター、低誘電有機絶縁材料

アセチレンブラック、窒化ケイ素、セラミックス基板、球状シリカ、球状アルミナ

 

方針

最先端素材を供給し、
よりよい社会を実現

 

 

Healthcare

 

2030年
営業利益目標

 

400億円

 

メガ

トレンド

医療ニーズ高度化

革新的な医療技術

製品

予防

診断

治療

 

インフルエンザワクチン

ノロウイルスワクチン(開発中)

自動分析装置用試薬

抗原検査キット

がん治療用ウイルスG47Δ製剤

 

方針

予防・診断・治療の領域で
世界の人々のクオリティ・
オブ・ライフ向上

 

 

Sustainable Living

 

2030年
営業利益目標

 

150億円

 

メガ

トレンド

食料・水資源枯渇

インフラ需要増大

製品

食糧

インフラ

生活用品

 

バイオスティミュラント

特殊混和材
LEAF 

高機能スチレン系樹脂

サステナブルプラスチック「PLATIECO®」

 

方針

安全・安心・快適な
日々の暮らしの実現

 

 

サステナビリティの追求

方針

カーボンニュートラルの実現

施策

・低炭素アセチレンチェーンの確立を含むポートフォリオ変革実施

・CO2分離・回収・利用技術の開発と実装化

・水力発電増強、太陽光発電所新設によるグリーンエネルギー拡大

サステナブルな都市と暮らしの充実

・スチレン系包装材料のサーキュラーエコノミー推進

・CO2コンクリート固定化技術の確立

環境の保全・環境負荷の最小化

・廃棄物ゼロエミッション継続

・自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に基づく生物多様性・水資源保全等の自然関連リスクへの対応

 

 


 

<人財価値創造>

社員一人ひとりが自己実現と成長を実感できる企業を目指し、人財投資と制度改革を実現します。

方針

戦略

人財育成体制の強化

将来の経営層育成と、全社一貫の教育体系の構築および自ら学ぶ文化の醸成

ダイバーシティ、
エクイティ&
インクルージョンの推進

多様な考え方を持った人間が活躍できる職場環境・制度・文化の醸成

健康経営と働き方改革

「明日も来たくなる職場」のための制度改革の推進

 

 

<経営価値創造>

ESG経営の観点から、企業存続の前提となる経営基盤の強化に取り組みます。

方針

戦略

プロセス革新

ビジネスモデル・組織の変革と生産性向上、社内デジタル人財の育成

人権の尊重

国連ビジネスと人権に関する指導原則および国連グローバルコンパクトに基づく、人権方針制定と人権尊重の徹底

安全最優先

グループ全体で本質安全化、ルールの整備と安全な職場環境づくりの推進

サプライチェーン・
 マネジメント

サプライチェーン一体となった持続的な付加価値向上

製品安全

信頼される製品とサービスを提供し、社会と環境の持続的成長に貢献

コーポレートガバナンス
高度化 

高い倫理観に基づく透明性・公平性を確保した、より高度で実効性のあるコーポレートガバナンス体制の構築

 

 

 

 

財務戦略

 

ROEとROICの改善

下記施策を通じて、ROE(株主資本利益率)とROIC(投下資本利益率)を改善させ、企業価値向上を図ります。

 

18-22年度平均

30年度目標

施策

ROE

8.4%

15%以上

・3つの価値創造による収益性と効率性向上

・ROIC評価による事業の選択と集中

・最適資本構成の追求(財務レバレッジ活用)

ROIC

7.0%

10%以上

 

 

 

 

キャッシュアロケーション~総還元性向50%水準を維持~

営業キャッシュフローと負債を有効に活用して、8年間合計で7,400億円のキャッシュを生み出し、それを投資に5,700億円、株主還元に1,700億円(総還元性向50%水準)配分します。

 

 

(億円)

 

 

 

 

(億円)

キャッシュイン累計(年平均)

 

キャッシュアウト累計(年平均)

 

Denka Value-Up
5ヵ年

Mission 2030
8ヵ年 

 

 

Denka Value-Up
5ヵ年

Mission 2030
8ヵ年

営業CF

1,717
(343)

6,500
(813)

 

投資CF

戦略

 700
 (140)

3,600
 (450)

資産売却

121

100

 

一般

1,093
 (219)

2,100
 (263)

借入

554

800

 

小計

1,793
 (359)

5,700
 (713)

合計

2,392
(478)

7,400
 (925)

 

株主還元
 (総還元性向50%水準)

599
 (120)

1,700
 (213)

 

 

 

 

合計

2,392
 (478)

7,400
 (925)

 

 

※文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社は、すべての事業活動におけるESG(環境・社会・ガバナンス)課題に対する基本的な方針となる「デンカグループESG基本方針」を、取締役会の決議に基づき、2021年11月に制定しました。サステナビリティ(中長期的な持続性)を巡る課題への対応が、企業存続を左右する重要な経営課題であると認識し、本基本方針の遵守に努め、高い倫理観に基づく実効性のあるコーポレートガバナンスを構築することで、企業価値の向上を目指しております。

当社は、2023年度より開始した経営計画「Mission 2030」において、サステナビリティ(中長期的な持続性)に向けた取り組みを推進し、活動内容に対する審議と提言を行う「サステナビリティ委員会(委員長:社長)」を設置しました。

「サステナビリティ委員会」は、執行部門内の組織として、経営計画「Mission 2030」のサステナビリティに係る活動と非財務目標・KPIの進捗及びリスク・収益機会への対応について、担当部門より定期的に報告を受け、審議・提言を行い、その結果を取締役会へ報告するとともに、経営計画の進捗状況として、ステークホルダーの皆様へご報告いたします。

 

(2) 戦略

企業としての社会的責任を果たし、長期にわたり事業を継続するためには、サステナビリティ関連のリスクと機会を適切に対処する取り組みが大前提であるという考えから、経営計画「Mission 2030」における「3つの成長戦略」において、サステナビリティを巡る重要経営課題(マテリアリティ)を考慮した基本的な方針を定め、施策を推進しています。

「事業価値創造」としては、デンカグループの「2050年までのカーボンニュートラルの実現」「サステナブルな都市と暮らしの充実」「環境の保全・環境負荷の最小化」を方針として、CO2を代表とする温室効果ガスの削減となる、低炭素アセチレンチェーンの確立を含むポートフォリオ変革の実施、再生可能エネルギーの拡大、SDGsに貢献する製品開発、循環型社会の実現となるスチレン系包装材料のサーキュラーエコノミー推進等の施策を進めます。

また、「人財価値創造」としては、社員一人ひとりが自己実現と成長を実感できる企業を目指し、「人財育成体制の強化」「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進」「健康経営と働き方改革」を方針として、将来の経営層育成と全社一貫の教育体系の構築および自ら学ぶ文化の醸成、多様な考え方を持った人間が活躍できる職場環境・制度・文化の醸成、「明日も来たくなる職場」のための制度改革を推進します。

そして「経営価値創造」では、ESG経営の観点から、企業存続の前提となる経営基盤の強化を図るため、プロセス革新、人権の尊重、安全最優先、サプライチェーンマネジメント、製品安全、コーポレートガバナンスの高度化を基本方針として掲げています。

 

(3) リスク管理

サステナビリティ委員会は、経営計画「Mission 2030」のサステナビリティに係る活動指標と目標を、担当する担当部門から報告を受けて審議と提言を行い、取締役会への報告を行います。

重要なテーマである気候変動問題と人権尊重の取り組みに関わるリスク管理については、以下の通り実施いたします。

(a) 気候変動(TCFD)

中長期の気候変動問題への対応については、環境対策推進統括役員の下、サステナビリティー推進部が統括しています。デンカグループは、2050年までに地球温暖化を1.5℃未満に抑えることを目指す「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の提言に、2020年9月に賛同を表明しました。事業を通じた「リスク・機会」をシナリオ分析により特定すると共に、基本方針や重要施策、管理指標の設定及び評価などの重要事項を、サステナビリティ委員会で議論した後、取締役会の監督の下、代表取締役が意思決定を行います。

(b) 人権尊重の取り組み

 デンカグループESG基本方針では、人権の尊重の条項として、「デンカグループは、強制労働の撤廃、児童労働の実効的廃止、雇用と職場に関する差別の排除、労働者の結社の自由と団体交渉権の承認を含め、グループの事業に関わるすべての人々の人権を尊重するとともに、人権意識の啓発と向上に努め、企業責任を果たすために行動します。」を掲げています。これに加えて2023年度は、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」並びに「グローバルコンパクト」に則した人権方針の策定準備を進めており、方針制定後は、人権尊重徹底のためのリスク特定と対応プロセスの確立に向けた取り組みを行ってまいります。

 

(4) 指標及び目標

サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する連結会社の実績を長期的に評価し、管理し、及び監視するために用いる情報として、当社は、経営計画「Mission 2030」の事業価値創造、人財価値創造、経営価値創造という3つの成長戦略の中で、非財務KPIによる指標を設けるとともに、経営計画最終年度である2030年度目標を設定しています。「Mission 2030」における主要なKPI目標は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

また、「人財価値創造」に関する指標の内容、目標及び実績は次の通りであります。

非財務KPI

2030年度目標

2022年度実績

平均研修金額(1人当たり・単体)

2021年度比2倍
(2021年度実績 53千円/人・年)

66千円/人・年

管理職における女性/外国籍/経験者採用の合計人数の比率

50%

19%

従業員エンゲージメントの向上

エンゲージメントの可視化と継続的な改善

第3回社員意識調査の実施

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、ここに記載した事項は、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ないまたは重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)外部事業環境等

当社グループの経営成績は、自動車や電子部品などの需要動向により影響を受けるほか、原油や基礎石油化学製品などの原燃料市況ならびに為替相場の変動の影響を受ける可能性があります。当社グループは、経営計画「Denka Value-Up」の成長戦略に基づき、事業のスペシャリティー化を推進し、外部環境に左右されにくい企業体質への転換を進めてまいりました。2023年4月からの新経営計画「Mission 2030」においても、全ての事業をスペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素をそなえた「3つ星事業」とすることを目指し、企業体質の更なる強化を進めてまいります。

 

(2)品質、製造物責任

当社グループは、社会および顧客の信頼を第一に考え、安心して使用できる製品の提供のため、各事業セグメントに品質保証部門をそれぞれ設置し、当社および主要子会社における全事業所の対象製品において継続的な品質改善に努め、ISO品質マネジメントシステム規格の認証を取得するなど、万全の対策を講じております。しかしながら、製品やサービスの提供は高度かつ複雑な技術の集積であり、また原材料の外部調達もあることなどから品質保証の管理は複雑化しております。当社グループの製品やサービスに予期せぬ品質問題が発生した場合は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(第三者認証等における不適切行為について)

当社および持分法適用関連会社である東洋スチレン㈱が製造・販売する樹脂製品の一部において、米国の第三者安全科学機関である Underwriters Laboratories Limited Liability Company認証に関する不適切な行為が判明するとともに、東洋スチレン㈱において日本国内の電気用品安全法に関連して設けられている部品・材料登録制度(CMJ 登録制度)に関する不適切な行為(以下総称して「本件不適切行為」)が判明しました。

 当社は、この事態を重く受け止め、2023年5月29日開催の取締役会において社外有識者による外部調査委員会の設置を決定し、本件不適切行為に関する徹底的な調査、原因究明および再発防止策の策定を行うことを決議いたしました。

当社は「デンカグループ ESG 基本方針」に則り、コンプライアンスは経営の最重要基盤と考え、周知徹底を行ってまいりましたが、このような事態を招いてしまったことは誠に遺憾であり、お客様をはじめ関係者の皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけしますことを、深くお詫び申し上げます。今後より一層のコンプライアンス強化に努め、再発防止とともに信頼回復に全力で取り組んでまいります。

 

(3)事故・自然災害

当社グループは、安全最優先をすべての事業活動の基盤と位置付けており、リスクアセスメントの統一基準整備と現場への展開、安全対策に関わる設備投資の推進、安全教育施設の充実と教育者の育成など、すべての現場で災害を起こさないための総合的な対策を進めております。しかしながら、重大な産業事故や、地震、気候変動による急性の豪雨および大型台風などの自然災害が発生した場合、従業員や第三者への人的、物的な損害、生産設備の損壊や生産停止等が生じるリスクがあり、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)環境

当社グループは、環境に関する各種法律、規制を遵守するとともに、パリ協定および日本政府が掲げる目標を念頭に、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた温室効果ガスの排出量削減に関する中長期目標を定め、自家水力発電所建設などを通じたクリーンエネルギーの利用拡大、温室効果ガスを回収・固定化・有効利用する革新技術の開発、製品のライフサイクルを通じた地球温暖化ガスの排出削減、グループ各工場の環境負荷物質排出削減など、環境負荷の低減に取り組んでおります。しかしながら、環境に関する規制の強化やカーボンプライシング(炭素税・排出権取引)が発動された場合、事業活動の制限や対応費用の負担等が発生し、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)海外事業展開

当社グループは、アジア、米国、欧州等の国および地域に進出し、現地生産や販売をおこなうなど、海外展開を推進しております。海外での事業活動には予期できない法律や制度の変更、労使や人材確保の問題、テロや戦争などによる社会的混乱等のリスクが内在しており、これらのリスクが発生した場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)財務

当社グループは、将来の安定的な成長を持続するため、良好な財務バランスを維持することが重要と考えており、資金需要に見合った資金調達をおこなうことを基本的な方針としております。資金の流動性については、適正な水準の現預金を保持した上で、不測の事態に対応するため、取引金融機関と貸出コミットメント契約を締結することで流動性を確保しております。また、長期借入金の金利を固定化する等、金利変動リスクの低減を図っております。しかしながら、金融環境が急激に悪化した場合、資金調達リスクや金利の上昇等が発生し、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。当社グループが保有する固定資産について、事業環境の著しい悪化による収益性の低下等があった場合には、減損損失が発生し、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)訴訟等

当社グループは、倫理規定をはじめ各種社内規定に基づき、国内外の法令遵守はもちろんのこと、当社グループの社会における信頼を維持・確保することに努めておりますが、広範な事業活動を行う中で訴訟やその他の法律的手続きの対象となり、重要な訴訟等の提起を受けた場合には、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、訴訟等については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (2) その他 ② 訴訟」をご参照下さい。

 

(9)新型コロナウイルス等の感染症

当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、顧客、従業員、関係先等の安全・安心を第一に考え、国内外の事業所において各国の状況にあわせた感染防止対策をおこなっております。

今後、新型コロナウイルスやその他の感染症の流行が発生した場合には、ロックダウンなどによる活動の制限、サプライチェーンの停滞、世界経済の悪化などにより、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)ロシア・ウクライナ情勢

当社グループはESG基本方針に則り、人権の尊重やサステナビリティの観点から、ロシア・ウクライナ情勢に対する国際社会の動きや日本政府の方針を尊重するとともに、日本政府を含むステークホルダーと建設的な対話に努め、適切に対応してまいります。

今後、現下の情勢が長期化した場合には、一部原料の調達難に伴う操業への影響、およびナフサ・天然ガス・石炭など原燃料価格の継続的な高騰などにより、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

その他、国内外の経済・政治情勢、技術革新、株式相場の変動、繰延税金資産の取崩し等が、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当期のわが国経済は、個人消費や設備投資が上向くなど景気は持ち直しの動きがみられましたが、資源価格が一段と高騰したほか円安が急激に進行し、先行きに対する不透明感が高まりました。世界経済は、各国で物価の上昇が進んだほか、ウクライナ危機の長期化や、中国ではゼロコロナ政策により経済活動が抑制されるなど、減速感が強まりました。

このような経済環境のもと、当社グループは、企業理念“The Denka Value”を実現すべく、3つの成長ビジョン「スペシャリティーの融合体」「持続的成長」「健全な成長」を掲げ、2018年度より5か年の経営計画「Denka Value-Up」における2つの成長戦略「事業ポートフォリオの変革」と「革新的プロセスの導入」を推進し、業容の拡大と収益性向上に注力いたしました。また、2021年度からの2年間では、次期経営計画のありたい姿へ飛躍するための大切な準備期間と位置づけ、「社会にとってかけがえのない存在」になるための第一歩として、「事業」「環境」「人財」に関する3つの「Value-Up」に取り組みました。

この結果、当期の業績は、世界経済減速の影響を受け、主力製品の一部で需要が減少しましたが、原燃料価格の上昇に応じた販売価格の見直しを行ったほか円安による手取り増があり、売上高は4,075億59百万円と前年同期に比べ227億9百万円(5.9%)の増収となりました。

収益面では、原燃料価格の上昇に応じた販売価格の改定を行いましたが、主力製品の一部で販売数量が減少したほか、スペシャリティー化進展のためのコスト増があり、営業利益は323億24百万円(前年同期比77億99百万円減、19.4%減益)となり、売上高営業利益率は7.9%(2.5ポイント減)となりました。また、経常利益は280億25百万円(前年同期比84億49百万円減、23.2%減益)、親会社株主に帰属する当期純利益は、ポートフォリオ変革としてセメント事業からの撤退を決定したことに伴い製造設備の減損損失等を特別損失として計上し、127億68百万円(前年同期比132億44百万円減、50.9%減益)となりました。

 

<電子・先端プロダクツ部門>

高純度導電性カーボンブラックは需要が前年並みに推移したほか販売価格の改定により増収となり、窒化ケイ素もxEV向けの需要が堅調に推移し増収となりました。一方、電子部品・半導体関連分野向け高機能フィルムや球状溶融シリカフィラーは、パソコン、スマートフォンなどの民生向け需要の減少により販売数量が減少しました。また、球状アルミナは、xEVや5G関連向けの需要が堅調に推移しましたが、民生向けの需要が減少し全体では販売数量が前年を下回りました。このほか、自動車産業用向けの金属アルミ基板“ヒットプレート”やLED用サイアロン蛍光体“アロンブライト”の販売も前年を下回りました。

この結果、当部門の売上高は935億41百万円(前年同期比33億88百万円(3.8%)増収)となり、営業利益は179億75百万円と前年同期に比べ6億80百万円(3.6%)の減益となりました。

 

<ライフイノベーション部門>

インフルエンザワクチンの出荷は生産能力を増強したことから前年を上回りました。一方、新型コロナウイルスの抗原迅速診断キットおよびインフルエンザウイルスとの同時診断キットは、感染の拡大により病院での検査需要が拡大し出荷量が増加しましたが、保険点数引き下げにより価格が大幅に下落し減収となりました。また、その他の検査試薬は中国でゼロコロナ政策による行動制限があり検査需要が減少したため減収となりました。

この結果、当部門の売上高は475億25百万円(前年同期比14億27百万円(3.1%)増収)となりましたが、営業利益は143億78百万円と前年同期に比べ11億17百万円(7.2%)の減益となりました。

 

 

<エラストマー・インフラソリューション部門>

当部門はウクライナ危機に端を発した原燃料価格上昇の影響を大きく受けました。クロロプレンゴムは販売数量が前年を下回りましたが、原燃料価格の上昇に応じた販売価格の改定を行い増収となりました。このほか、肥料の販売は前年を上回り、特殊混和材の販売は概ね前年並みとなりました。一方、セメントは急激な原燃料価格の上昇に対して価格転嫁が遅れたため減収となりました。

この結果、当部門の売上高は1,238億27百万円(前年同期比169億48百万円(15.9%)増収)となり、11億円の営業損失(前年同期は営業損失34億73百万円)となりました。

 

<ポリマーソリューション部門>

当部門は各製品で原燃料価格の上昇に応じた販売価格の改定を進めました。数量面では、ABS樹脂や透明樹脂は自動車減産や中国経済減速に伴う民生需要低迷の影響を受け減少し、デンカシンガポール社のMS樹脂はテレビやモニター向けの需要が減少しました。また、食品包材用シートおよびその加工品、合繊かつら用原糸“トヨカロン”の販売数量も前年を下回りました。このほか、スチレンモノマーは4年に1度の定期修繕を実施したことによるコストの増加がありました。

この結果、当部門の売上高は1,275億69百万円(前年同期比9億91百万円(0.8%)増収)となり、12億28百万円の営業損失(前年同期は営業利益79億5百万円)となりました。

 

<その他部門>

YKアクロス株式会社等の商社は取扱高が概ね前年並みとなりました。

この結果、当部門の売上高は150億94百万円(前年同期比46百万円(0.3%)減収)となり、営業利益は25億12百万円と前年同期に比べ6億7百万円(31.9%)の増益となりました。

 

 

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ345億12百万円増加の5,921億58百万円となりました。

流動資産は、棚卸資産の増加などにより前連結会計年度末に比べ336億28百万円増加の2,517億93百万円となりました。固定資産は、前連結会計年度末に比べ8億83百万円増加の3,403億65百万円となりました。

負債は、有利子負債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ262億54百万円増加の2,918億7百万円となりました。

非支配株主持分を含めた純資産は前連結会計年度末に比べ82億57百万円増加の3,003億51百万円となりました。

以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の51.7%から50.1%となり、1株当たり純資産は3,345円34銭から3,438円28銭となりました。

 

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、201億99百万円となり、前連結会計年度末と比べ10百万円の減少となりました。なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の減少などにより、89億46百万円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資の支払などにより、282億68百万円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の増加などにより、183億61百万円の収入となりました。

 

なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりです。

 

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

自己資本比率(%)

51.0

50.0

50.8

51.7

50.1

時価ベースの自己資本比率(%)

57.3

39.2

72.5

52.6

39.8

債務償還年数(年)

3.4

3.2

3.4

3.2

19.0

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

42.6

49.3

49.8

45.4

8.1

 

自己資本比率………………………………自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率………………株式時価総額/総資産

債務償還年数………………………………有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ……営業キャッシュ・フロー/利息支払額

(注) 1.いずれの指標も連結ベースの財務数値により算出しております。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品がほとんどであるため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことは行っておりません。

このため「生産、受注及び販売の実績」については、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントの経営成績に関連付けて記載しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当期のわが国経済は、個人消費や設備投資が上向くなど景気は持ち直しの動きがみられましたが、資源価格が一段と高騰したほか円安が急激に進行し、先行きに対する不透明感が高まりました。世界経済は、各国で物価の上昇が進んだほか、ウクライナ危機の長期化や、中国ではゼロコロナ政策により経済活動が抑制されるなど、減速感が強まりました。

このような経済環境のもと、当社グループは、企業理念“The Denka Value”を実現すべく、3つの成長ビジョン「スペシャリティーの融合体」「持続的成長」「健全な成長」を掲げ、2018年度より5か年の経営計画「Denka Value-Up」における2つの成長戦略「事業ポートフォリオの変革」と「革新的プロセスの導入」を推進し、業容の拡大と収益性向上に注力いたしました。また、2021年度からの2年間では、次期経営計画のありたい姿へ飛躍するための大切な準備期間と位置づけ、「社会にとってかけがえのない存在」になるための第一歩として、「事業」「環境」「人財」に関する3つの「Value-Up」に取り組みました。

この結果、当期の業績は、世界経済減速の影響を受け、主力製品の一部で需要が減少しましたが、原燃料価格の上昇に応じた販売価格の見直しを行ったほか円安による手取り増があり、売上高は増収となりました。収益面では、原燃料価格の上昇に応じた販売価格の改定を行いましたが、主力製品の一部での販売数量の減少や、スペシャリティー化進展のためのコスト増のほか、ポートフォリオ変革としてセメント事業からの撤退を決定したことに伴う特別損失の計上などにより、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、それぞれ減益となりました。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は、以下のとおりであります。

電子・先端プロダクツ部門は、高純度導電性カーボンブラックの販売価格改定による増収や、窒化ケイ素のxEV向け需要の堅調な推移があった一方、電子部品・半導体関連分野向け高機能フィルムや球状溶融シリカフィラー、球状アルミナでは民生向けの需要の減少があり、前年並みの利益となりました。

ライフイノベーション部門は、インフルエンザワクチンの出荷が生産能力を増強したことから前年を上回った一方、新型コロナウイルスの抗原迅速診断キットおよびインフルエンザウイルスとの同時診断キットでは、感染の拡大により病院での検査需要が拡大し出荷量が増加しましたが、保険点数引き下げによる価格の大幅な下落などがあり、減益となりました。

エラストマー・インフラソリューション部門は、ウクライナ危機に端を発した原燃料価格上昇の影響を大きく受けました。クロロプレンゴムは原燃料価格の上昇に応じた販売価格の改定を行いましたが、セメントで急激な原燃料価格の上昇に対して価格転嫁が遅れたことなどにより、前年に引き続き営業損失となりました。

ポリマーソリューション部門は、各製品で原燃料価格の上昇に応じた販売価格の改定を進めましたが、ABS樹脂や透明樹脂は自動車減産や中国経済減速に伴う民生需要低迷、デンカシンガポール社のMS樹脂はテレビやモニター向けの需要減少の影響を受けたほか、スチレンモノマーの4年に1度の定期修繕によるコストの増加などにより、営業損失となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローは89億46百万円の収入となりましたが、経営計画「Denka Value-Up」における2つの成長戦略である「事業ポートフォリオの変革」と「革新的プロセスの導入」にもとづく積極的な投資による支出をおこない、また株主還元方針にもとづく配当を実施した結果、当連結会計年度末のネット有利子負債残高は前連結会計年度末に比べ327億8百万円増加し1,495億30百万円となりました。なお、自己資本比率は50.1%、ネットD/Eレシオは0.50倍と引き続き良好な財政状態を維持しているものと判断しております。

資本の財源及び資金の流動性については、当社グループでは将来の安定的な成長を持続するため、良好な財務バランスを維持することが重要と考えており、資金需要に見合った資金調達を行うことを基本的な方針としております。

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、設備投資資金等であり、必要資金の調達については、自己資金を主とし、運転資金の一部を短期借入金やコマーシャル・ペーパーによって、設備資金等の長期資金の一部を長期借入金や社債によって外部調達しております。

資金の流動性については、適正な水準の現預金を保持した上で、不測の事態に対応するため、取引金融機関と貸出コミットメント契約を締結することで流動性を確保しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、重要な会計方針と合理的と考えられる見積りに基づき、収益、費用、資産、負債の計上について判断しております。

当社グループの連結財務諸表の作成においては、例えば一般債権に対する貸倒引当金の引当については主として過去の貸倒実績率を、繰延税金資産の計上については将来の税務計画を、退職給付債務については、昇給率、割引率などを使用して見積っておりますが、見積りにつきましては不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、主なものは以下のとおりであります。

 

(a)固定資産(のれんを含む)

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローを見積り、その総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として計上しております。また、年次の減損テストが必要な場合、のれんを含む資産グループの公正価値を算定し、その帳簿価額が公正価値を超過する場合には、公正価値まで減額を行います。将来キャッシュ・フローの見積りにあたっては、事業計画をもとに最新の事業環境に関する情報等を反映しているほか、必要に応じて外部専門家による評価を活用しております。

減損損失の認識及び測定に当たっては、慎重に検討をおこなっておりますが、将来の予測不能な事業環境の著しい悪化等により見直しが必要となった場合、減損損失が発生する可能性があります。

 

(b)繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性は、収益力もしくはタックス・プランニングに基づく将来の課税所得の十分性により判断しており、課税所得の算定にあたっては、各納税主体の事業計画をもとに最新の事業環境に関する情報等を反映し見積っております。

当該見積り及び当該仮定について、将来の予測不能な経営環境の著しい悪化等により見直しが必要となった場合、評価性引当額が変動し損益に影響を及ぼす可能性があります。

 

(c)退職給付債務の算定

当社グループでは、簡便法を採用している連結子会社を除き、確定給付制度の退職給付債務および関連する勤務費用について、数理計算上の仮定を用いて算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、昇給率、期待運用収益率等の計算基礎があり、これらの計算基礎については、例えば期待運用収益率であれば前提となる企業年金の運用方針などを、定期的かつ合理的な見直しをおこなっております。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、退職給付債務および関連する勤務費用が変動する可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

技術援助契約の概要

契約会社名

契約締結先

内容

対価

契約期間

契約年

デンカ㈱

(当社)

独立行政法人物質・材料研究機構

(日本)

サイアロン蛍光体基本技術

実施料

2004年9月1日~

特許消滅日まで

2004年

デンカ㈱

(当社)

独立行政法人物質・材料研究機構

(日本)

赤色蛍光体およびそれを用いる発光デバイスに関わる特許の実施許諾

頭金

他に実施料

2010年10月7日~

特許消滅日まで

2012年

デンカ㈱

(当社)

日亜化学工業㈱

(日本)

赤色蛍光体およびそれを用いる発光デバイスに関わる特許の実施許諾

頭金

他に実施料

2012年4月10日~

特許消滅日まで

2012年

デンカ㈱

(当社)

メディミューン

(アメリカ)

ワクチン製造に用いるウイルス株の調整方法であるリバースジェネティスク法技術

頭金

他に実施料

2009年9月20日開始

2009年

デナールシラン㈱

(連結子会社)

エア・リキード

(フランス)

モノシランガス取り扱いに関するノウハウ

実施料

1988年4月1日~

2008年12月31日

以後1年ごとの自動更新

1988年

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「一番上手にできる技術」の幅を広げ、持続可能な社会に貢献できるデンカならではの製品開発を推進し、新たな価値を生み出す魅力的な新規事業・製品の創出を加速していきます。そのために、複数の異種技術を融合し、組織の境界、領域を超えたデンカグループ全体のシナジー効果を発揮すべく、グループの総合力を活かす研究開発を推進しております。

デンカイノベーションセンターを中核拠点として、多くの国内外産学官とのオープンイノベーションを推進しております。物質材料研究機構(NIMS)とのNIMS-Denka次世代材料研究センター、山形大学および新潟大学との包括共同研究を展開する等、引き続き積極的な外部連携強化を推進致します。

これらの研究開発、製品化をさらに加速するため、新事業開発部門を新設、コーポレート研究部門・デンカイノベーションセンター・既存事業部門の研究開発体制を再編して、新事業創出の強化と既存事業の更なる発展、研究の責任・運営体制を明確化して、市場の動向を直視し、次世代の市場ニーズに確実かつ迅速に対応することで、早期の実需化につなげたいと考えております。

また、ESG(環境・社会・統治)の視点を常に意識し、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)を羅針盤として研究開発に注力致します。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は14,931百万円、研究要員は853名であり、当連結会計年度に国内で出願公開された特許は185件、国際出願で公開された特許は292件、国内で登録された特許(実用新案を含む)は229件となりました。当連結会計年度における各事業部門別の研究の目的、主要課題、研究成果および研究開発費は次のとおりであります。

 

(1)電子・先端プロダクツ

電子部材分野では、市場が拡大するパワーモジュール、車両電動化向けなど電子回路基板や放熱材料の多様なニーズに対応したソリューションを提案すべく、当社固有のセラミックスの開発技術や有機・無機材料の複合化技術の進化による高機能材料や新規部材の研究開発を、産学官との連携も行いながら推進しております。

高機能粘接着分野では、ハードロックSGA(高機能構造用接着剤)の新グレード、新規用途開発を推進するとともに、ハードロックOP/UVでは紫外線硬化技術を応用した特殊高機能接着剤の新製品開発の他、有機EL製造プロセス、半導体製造プロセスへの適用などの新規市場開拓にも取り組んでおります。

高機能フィルム分野では、当社保有の樹脂素材技術、有機・無機複合材料設計技術に加え、シートやフィルムの先端加工技術を活かし、電子部品半導体搬送テープ、半導体ウェハやパッケージの保護・仮固定用粘着テープや5Gの伝送損失低減フィルムなど、最先端ニーズを先取りした新規製品を供給すべく開発を進めております。

先端機能材料分野では、半導体封止材向け球状シリカ、放熱材料向け球状アルミナ等、フィラーの高性能化を進めるとともに、5Gに対応する低誘電正接材料(シリカ等)など、先進的な各種機能材料の開発を積極的に推進しております。加えて、液晶ディスプレイ・照明に用いるLED向けサイアロン蛍光体や放熱材料の特性向上にも取り組んでおります。

特殊導電材料分野では、車両電動化に必要不可欠なリチウムイオン二次電池市場での事業を更に拡大すべく超高純度かつ高機能なカーボンブラックの新製品開発と事業化に取り組んでおります。更なる開発促進のため、複数の研究機関とのオープンイノベーションにも取り組んでおります。

当セグメントに係わる研究開発費は4,678百万円でした。

 

(2)ライフイノベーション

ヘルスケア分野では、デンカイノベーションセンター(東京都町田市)、五泉事業所(新潟県五泉市)、Denka Life Innovation Research (シンガポール)、Icon Genetics(ドイツ)の4拠点体制で、(ポテンシャル)ニーズ優先の研究開発に取り組んでおります。グローバルな視点で最先端の技術を積極的に導入しつつ、スペシャリティー事業の成長加速化を進めるため、予防・早期診断の取り組みに加え、がん領域・遺伝子領域など新規事業展開のための研究開発を推進しております。

当社最重点事業であるがん治療用ウイルスG47Δ事業については、現行製法・試験法の改良に継続的に取り組むとともに、昨年、東大医科研内に設置された寄付研究部門との連携により、先端的大規模製造法の研究開発にも着手しました。G47Δを用いたがんウイルス療法は、従来のがん治療法とは全く異なる新規治療法であり、がん治療の体系を根本から変革する可能性のあるものです。当社は、G47Δ製剤の製造を通じ、この治療法の普及に取り組んで行きます。遺伝子領域においては、戦略的パートナーであるPlexBio社(台湾)の保有する迅速かつ簡便に同時多項目の細菌同定を可能とする測定技術IntelliPlex™を活用し、感染症領域での遺伝子検査システムの開発を推進しており、敗血症の検査薬は早期上市を目標に取り組んでおります。

また、Icon Genetics社が保有する、遺伝子組み換え技術を駆使した植物によるタンパク産生技術magnICON ®を、ノロウイルスワクチン等の新規ワクチンや体外診断用医薬品原料など抗体・ワクチン抗原等の高分子タンパク質産生に活用しております。ノロウイルスワクチンにつきましては、欧州ベルギーにて実施していた治験第Ⅰ相はすでに終了しており、次の治験に向けて検討を進めております。

新たな取り組みとしては、国立大学法人東北大学との共同研究成果をもとに内視鏡的止血術のシミュレータモデルの開発を実行しました。国内外の医療技術発展への貢献を目指す「Medical Rising STAR」プロジェクトの第1弾として試験販売を致します。

既存技術周辺においても、当社グループの開発リソースを集結させ、高品質ワクチンの開発、および感染症検査試薬や健康管理に欠かせない臨床生化学検査試薬や免疫検査試薬の新技術・新製品開発を推進しております。感染症分野では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、ならびにCOVID-19・インフルエンザ同時診断用の抗原定性キットを開発・上市しており、ユーザー利便性を考え同キットの自動読み取りリーダーの開発を進めました。

当セグメントに係わる研究開発費は3,825百万円でした。

 

(3) エラストマー・インフラソリューション

クロロプレンゴム、ERゴムなどのエラストマー分野においては、海外市場を含めた事業拡大のために、スペシャリティー製品の開発および生産技術の強化を進めております。クロロプレンゴムは世界トップシェア維持を確実なものとすべく、独自の技術で差別化した新規グレードを開発してラテックス事業の拡大を推進するとともに、米国デンカパフォーマンスエラストマー(DPE)社との、研究開発、生産技術を含む総合的なシナジー効果による一体運営の強化を図っています。また、エラストマー加工技術を保有するデンカエラストリューション社との連携も強化しております。

特殊混和材分野では、従来からの鉄道や道路などのトンネル建設向けコンクリート混和材に加え、コンクリート製品の製造時に二酸化炭素を吸収・固定化できる環境対応技術、3Dプリンティングやコンクリート二次製品の生産性向上といった省力化に繋がる技術、老朽箇所を修繕し、構造物の長寿命化に貢献する技術といった、次世代型技術・製品の開発と事業化に注力しております。また社会資本の維持補修に関する調査・診断ソリューションの研究開発として、3Dデジタル計測技術を活用した文化財等を含む建築構造物の設計・維持管理への応用展開に取り組んでおります。

無機製品分野では、無機材料設計の基盤技術を応用し、結晶質アルミナ短繊維と多孔質セラミック材料を複合した耐火炉用高断熱ボードを開発し、事業化を進めております。また、JSP社のビーズ法発泡ポリスチレン技術と当社の無機材料設計技術を融合した、不燃性・遮熱性・断熱性を併せ持つ軽量・不燃ボードを共同開発し、木造多層建築物等への適用を目指しております。

アグリプロダクツ分野では国内のみならず海外市場に向けた次世代農業資材として、従来の肥料開発で蓄積した製品技術と遺伝子発現解析技術を基盤とした高機能性バイオスティミュラント製品の開発を推進しております。

当セグメントに係わる研究開発費は3,370百万円でした。

 

(4)ポリマーソリューション

透明樹脂、耐熱樹脂、シュリンクラベル用樹脂など、特長あるスチレン系機能性樹脂の分野では、市場トレンドにマッチした新規用途展開並びに新規な高機能性樹脂の開発、そして更なる品質向上や生産技術の深耕をシンガポール子会社と一体となり推進しております。

さらに、新しい重合技術やポリマーアロイ技術を駆使した新規高分子材料の開発にチャレンジし、新規機能性樹脂の開発に取り組んでおります。

機能樹脂分野においては、ABS樹脂の耐熱性付与剤であるデンカIP®に関して、当社が長年にわたって高分子樹脂設計で培ってきたスチレン系の精密・重合技術をより深化させ、塗装性等の特性に優れるグレード デンカIPXシリーズを上市し市場開発を進めております。光学用途では、液晶テレビの高輝度化・高精細化に対応した導光板用透明樹脂を開発し市場展開を推進中で、更に今後の市場トレンドにマッチした開発も推進しております。併せて、環境対応にフォーカスした各種研究テーマも進めております。

化成品分野においては、PVA樹脂の水溶性、生分解性などの特長を活かした開発を推進しております。

樹脂加工製品分野においては、市場のトレンドにマッチした頭髪用合成繊維、食品包装用の耐熱耐油性透明シート、電子レンジ対応容器等に用いる耐熱性透明シート、産業用高機能フィルムなどの製品群の開発を引き続き推進しております。

食品包装材料分野においては、バイオマス材料の活用等による各種環境対応新規製品、フードロス低減に対応した製品の開発を進めております。産業用高機能フィルム分野に関しても環境負荷低減ニーズに対応した製品の開発を進めています。頭髪用合成繊維分野に関しては、市場における最先端のトレンドにマッチした製品の開発を進めております。

当セグメントに係わる研究開発費は2,548百万円でした。

 

(5) その他事業

産業設備の設計・施工等を行なっているデンカエンジニアリング㈱では効率的な粉体の空気輸送設備の技術開発や廃水設備等の研究開発をおこなっている他、各事業所に設置している生産技術部を中心に、デジタル技術を活用した生産性向上について検討する等、研究段階から事業化を見据えたプロセス設計、開発の充実を図っております。

その他事業に係わる研究開発費は507百万円でした。