第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、1939年に有機・無機の工業薬品の製造を目的に創業した柳澤有機化学工業所を前身とし、1946年に設立した日本化学産業株式会社との統合を経て、以来、新規の製品開発・用途開発を進めた結果、現在はOA機器・エレクトロニクス等幅広い分野に用いられる表面処理用薬品、触媒用薬品、電池・電子部品用薬品、セラミックス・ガラス用薬品等、多品種、多用途にわたる無機・有機金属薬品を製造販売しており、1999年にはタイにおけるめっき加工業を、2000年には同じくタイにおけるめっき液製造業を加える等、海外にも進出しております。更に2013年以降、タイの子会社の生産品目に車載関連製品を加える等、海外での生産・販売の強化を図っております。また国内の薬品事業でも本格稼働した二次電池用正極材の受託加工の月産600トン体制を確立しております。一方、1963年に進出した建材事業は、アルミよろい戸をはじめ独自製品を開発し、現在は防火、通気、防水関連の機能を有した住宅建材製品を製造販売しております。

当社の経営の基本方針は、上記のとおり当社が長年にわたり開発、蓄積したノウハウとそれに基づく開発力と薬品製造における生産技術力、建材製造における金属加工技術力を更に追求、前進させ、成長力の確保と、堅実経営に基づく財務体質の強化を図ることといたしております。

更に「企業は公器」との理念に基づき、コーポレート・ガバナンスの充実と透明性、信頼性の高いコンプライアンスの遵守及び内部統制制度の強化を重要な経営方針としております。

 

(2) 中長期的な経営戦略と会社の対処すべき課題

当社グループの対処すべき課題としては以下のように考えております。

当社グループは「企業は公器」との理念に基づき、法と社会倫理を遵守するとともに、透明性、信頼性の高い企業運営を推進し、「利益ある成長」の達成によって企業価値を高め、以て社会に貢献することを経営の基本方針とし、その実現のために、下記の中期経営計画等に取り組んでおります。

①基本方針

金属の独自技術を磨き、新たな価値の創造を続けることで、多様なパートナーとともに、サステナブルな社会の実現に挑戦する。

②基本戦略

事業基盤の強化

・高付加価値事業・製品の創出

・提案力を高めるマーケティング

・生産体制の進化

成長領域の拡大

・イノベーションの創出

・戦略的パートナーシップ

・海外市場の展開

社会課題の解決

・循環型社会の実現

・脱炭素社会の構築

 

以上の取組みを推進するとともに、引き続き、事業環境の変化に対応しながら成長領域に果敢に挑戦し、変革を担う人財の育成を図ってまいります。また、ガバナンス体制を強化するために、コンプライアンスの徹底、リスク・危機管理の徹底も踏まえた内部統制の更なる強化等、企業の持続的成長のための基盤強化も引き続き進めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

当社は、サステナビリティ基本方針として「新たな価値を創出、提供する事業活動を通じて、環境、社会、経済における中長期課題の解決と持続可能性の実現に貢献し、全てのステークホルダーとともに成長を確実なものにする」を掲げております。

創業以来金属の可能性を追求し、事業活動を行ってきた当社にとりまして、非鉄金属等資源の枯渇問題は事業活動に密接に関わる問題であると同時に、当社が持続可能な社会の実現に向けて貢献可能な課題であると認識しております。現在、非鉄金属を取り巻く環境はリサイクル等を通じた資源循環が目指される一方で、脱炭素社会への移行に伴う需要の高まりに直面しており、資源需給環境の不確実性が高まっております。また、このような環境下におきまして企業として持続的成長を実現していくためには、人的資本経営が重要となってくると考えております。

このことから、基本戦略の一つである社会課題の解決に向けた重要なサステナビリティ課題として、「資源循環の推進」「気候変動対応」「人的資本経営の推進」が挙げられます。

 

地球温暖化に起因する気候変動問題に対処すべく、脱炭素社会の実現が目指されております。脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーやEVの普及が加速しており、それらの設備、機器には銅をはじめ金属が多く使用されております。当社は金属を主原料とした製品の開発・製造事業を展開しており、脱炭素社会への移行に伴う社会や経済の変化は、原材料である金属の資源枯渇や調達コスト増加といった事業上のリスクをもたらす一方で、需要を満たす製品開発等適切に対策を講じることで、事業成長の機会にもつながると認識しております。

そのため、気候変動財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づいた分析及び体制整備を実施することで、当社のレジリエンス性の向上並びに持続的成長を目指すとともに、情報開示を通じたステークホルダーとの対話を目指し、適切な情報開示を行ってまいります。

 

(1) ガバナンス

当社はサステナビリティに関する諸課題を、サステナビリティ基本方針に沿って毎月開催されるサステナビリティ推進委員会で取り扱っております。本委員会の委員長はサステナビリティ推進担当執行役員が務めており、社長やその他執行役員も全員参加しております。

気候変動関連課題におきましては、中長期戦略への組み込みの検討や取組みの進捗状況のレビュー、リスク・機会の洗い出し及び評価、再エネ電力の購入等について議論を行っております。  

また、非鉄金属等資源枯渇問題並びに人的資本に関わる課題に対しても、サステナビリティ推進委員会で中長期戦略の策定、予算編成への反映の検討等を行っております。

これらサステナビリティに関わる議論内容は都度取締役会に報告され、取締役会の監督が適切に図られる体制をとっております。取締役会で審議・決定された事項は委員会を通じて各部門に共有され、対策を実施しております。

 

取締役会

 

 

議長:代表取締役社長

開催頻度:月一回

役割:上申されたサステナビリティに関する検討、決議、

決議事項の報告

 

 

報告↑↓監督

 

 

サステナビリティ推進委員会

 

 

委員長:取締役 常務執行役員

開催頻度:月一回

取締役会への報告頻度:重要事項について都度報告

役割:気候変動等サステナビリティ課題に関する審議、

中長期戦略の策定、進捗状況のレビュー、

取組み内容報告

 

 

    報告↑↓進捗レビュ

 

 

各部門

 

 

 

 

 

 

 

(2) 戦略

(ⅰ)気候変動

当社の事業活動における主原料となる金属は、脱炭素社会実現に向けた再生可能エネルギーやEVの導入によって需要が増加傾向にある一方で、生産にかかる環境負荷の大きさから代替素材が模索される等、将来の不確実性が高まっております。いかなる社会に推移したとしても持続的成長を実現するためには事業上の対応の幅を広げることが重要であると認識しており、気温上昇の観点で極端なシナリオを想定し、当社への影響を分析いたしました。

なお、シナリオ分析実施にあたり、想定したシナリオは以下のとおりです。

 

1.5℃シナリオ

世界観

世界の平均気温の上昇を産業革命期以前と比べて1.5℃に抑えるため、気候変動に対する政策・規制が積極的に導入される世界。

・炭素税の導入

・再生可能エネルギー需要の拡大

・EV等環境配慮製品の需要の高まり

参照シナリオ

・IEA NZEシナリオ, APSシナリオ, SDSシナリオ

・IPCC RCP2.6シナリオ

4℃シナリオ

世界観

気候変動に対する政策・規制は進展せず、産業革命期以前と比べて21世紀末までに世界の平均気温が最大4℃上昇する世界。

・気温上昇に伴う物理的被害の拡大

・化石燃料への依存の継続

参照シナリオ

・IEA STEPSシナリオ

・IPCC RCP8.5シナリオ

 

上記シナリオに基づき、当社グループへの財務的影響という観点で定量、定性の両側面から評価した主要リスク・機会は以下のとおりです。

 

<主要リスク一覧>

リスク項目

事業への財務的影響

影響度

発現

時期

内容

2030年

2050年

1.5℃

4℃

1.5℃

4℃

炭素価格

(炭素税)

中長期

事業活動で生じるGHG排出量に応じてコストが発生し、操業コストが増加する。

リサイクル

規制

中長期

調達コストが高いリサイクル材の使用で、操業コストが増加する。

再エネ・

省エネ政策

短中長期

発電コストの高い再生可能エネルギーへの転換が進み、購入を増やすことで操業コストが増加する。

エネルギー効率の高い設備への投資コスト等が増加する。

低炭素技術の進展

中長期

EV市場の競争激化に伴う技術開発対応のため追加的な開発コストが発生し、対応が遅れた場合には収益が減少する。

原材料コストの変化

中長期

非鉄金属資源の需要が急激に増加することで原材料調達コストも急激に増加する一方で、販売価格への転嫁が間に合わず利益が減少する。

脱炭素化を目指し原材料である鉄の製造工程が変更され、製造単価が上昇、原材料調達コストが増加する。

異常気象の激甚化(台風、豪雨、土砂、高潮等)

中長期

保有資産が被災し、設備の修繕コストが発生する。

自社拠点の被災により操業が停止し、収益が減少する。

サプライヤー拠点の被災により原材料調達が難化し、収益が減少する。

 

 

 

<主要機会一覧>

機会項目

事業への財務的影響

影響度

発現

時期

内容

2030年

2050年

1.5℃

4℃

1.5℃

4℃

リサイクル

規制

短中長期

リサイクル製品の需要増加により収益が増加する。

低炭素技術の進展

中長期

EVや蓄電技術進展に伴い、二次電池関連の需要が増加し、収益が増加する。

-

-

原材料コストの変化

中長期

非鉄金属資源の需要増加に伴い調達価格が増加する一方で、適切に製品の販売価格への反映を行うことで収益が増加する。

 

・発現時期

 短期:~2025年、中期:2026年~2030年、長期:2030年~2050年

・影響度閾値

 大:2億円以上、中:2億円未満2000万円以上、小:2000万円未満

 

上記主要リスク・機会の中でも特に当社への影響が高いことが予測されるリスクに対し、現在以下のような対応策を実施することでリスクの低減、並びに機会の最大化を目指しております。

 

当社にとりまして最も大きな影響が予測されるリスクとして、EVをはじめとする低炭素技術や太陽光発電パネル等の再生可能エネルギー発電設備の需要増加に起因した金属需要の増加による、原材料コストの高騰が挙げられます。本リスクに対しては、リサイクル原料の活用推進や、新技術・新製品の創出を行い対応しております。

 

また、その他にも脱炭素社会への移行に伴うリスクにつきましては、気温上昇の一因であるGHG(温室効果ガス)排出量を抑制するため、炭素税の導入が大きな財務インパクトとなる可能性があります。本リスクに対しては、拠点の照明のLED化、埼玉工場でのコージェネレーションシステム運用やボイラー効率改善機器の導入、福島第一工場での太陽光発電パネルの設置等を行っております。これら取組みにより、電力や都市ガス等のエネルギー使用量の削減、並びに電力の再エネ化を推進しております。再エネ化につきましては更に、再生可能エネルギーの段階的な導入を開始しており、毎年増加させる計画です。

 

一方で、脱炭素社会への移行に伴ってはEV向け蓄電池の需要が拡大することが予測されており、これにより当社の二次電池関連製品、並びにEVの使用済み二次電池の金属リサイクル需要が増加することが見込まれ、大きな事業機会となり得ます。この機会に対しては、現在EVの使用済み二次電池の金属リサイクルのための技術実証から事業化に向けた取組みの一環として、福島県いわき市にパイロットプラントの建設を2025年1月より開始しております。完成は2026年3月予定であり、完成次第、稼働を開始する予定です。

 

気候変動課題としては、気温上昇に伴う自然災害等の物理リスクも大きなリスクとなる可能性を認識しております。洪水の発生によりビルや工場が被災することで、資産への直接的な影響や営業停止による営業利益の減少が考えられます。これらリスクに対し、東日本大震災及びタイ洪水における教訓を踏まえたBCPの定着や実行を行っております。具体的には拠点ごとの対応マニュアルを定期的に見直すことや、被災した拠点を早期復旧させた経験を踏まえ部材のストックを行うこと等で対応しております。

 

(ⅱ)人的資本

① 人材育成の基本方針

「企業における人材育成は、人的資本経営及びサステナビリティの実現にあたり最も重要な取組みであるとの考えに基づき、一人ひとりが能力を高め多様性を活かして役割期待に能動的に応えつつ成長し、企業の持続的成長とサステナビリティ実現に向け主体的に活躍する人材を育成する」ことを基本方針としております。

また、人材育成基本方針を達成するために、当社は以下のとおり、社内環境整備方針を策定しております。

1)経営戦略並びに事業戦略と有機的に連動する人材育成課題を全社並びに各組織で明確化し、OJTとOFF-JTを組み合わせて効果的な人材育成を進める。OJTにおいては、上司と部下はともに育成課題にチャレンジし,取組み過程における対話と適切なジョブローテーションを通じて成果を共有化する。

2)OFF-JTについては経営戦略並びに事業戦略展開に資するOFF-JTプログラム・機会を階層別、役職別に設け、全階層へ積極的に展開、運用する。

3)自己啓発については、職能、キャリア、年齢、ジェンダー等に応じ多面的に支援し自発的な取組みを推奨していく。

この人材育成方針及び社内環境整備方針に基づき人材育成並びに人的資本の充実を進めてまいります。

 

② 人材育成の強化

社内環境整備方針に基づき研修制度を改革し、人材育成の更なる強化に取り組んでおります。

1)研修体系の再構築

研修制度の全体構造を整理し、継続的に実施可能な研修体系に見直しいたしました。新入社員から新任管理職までの計画的な階層別研修に加えて、次世代経営層の候補者育成を目的とした部長層の選抜型変革研修を実施しており、従業員一人ひとりのスキルアップとモチベーションを維持するための研修を行っております。

2)コンプライアンス・ハラスメント防止研修

人的資本経営のためには、コンプライアンス遵守、ハラスメント防止が不可欠です。定期的に従業員全員がコンプライアンス研修を受講するよう、eラーニングでの配信を行っております。

 

③ 多様な人材の活躍

DEI推進の取組みとして、外国人及び女性の活用を進めております。

外国人活用については、これから当社が海外展開を強化するうえで、その重要度は増しております。当社では従前より外国籍人材の受入れを定期的に行っております。

ここ5年の新卒採用においては、52名中13名が女性で、女性の採用数は一定数を確保しております。

現在、社外取締役及び社外監査役のうち女性は3名でありますが、女性の管理職については4名と管理職全体に占める女性の割合は3.9%に過ぎないことから、上位職をめざす土壌を形成し、管理職への登用を図っていきます。

更に、キャリア採用も積極的に進めており、この5年間で採用したキャリア採用者も54名(内、女性7名)となる等、さまざまな視点から多様な人材が活躍できる土壌の形成に取り組んでおります。

なお、障害者雇用については、事業所近隣の特別支援学校からの職場実習生受け入れを通じて継続的な採用を行っており、法定雇用率で定められた障害者雇用数12人を維持しております。

 

④ 多様な働き方を実現する取組み

多様な人材が働きやすい環境整備の一環として、テレワーク勤務制度による在宅勤務を推進しております。また、仕事と育児を両立するための支援策として、男女を対象とした育児休業制度による取得を推進しております。その結果、女性の育児休業取得率は100%で推移しておりますが、取得実績のない男性の取得については、引き続き、取得率を増加させるよう努めてまいります。

 

(3) リスク管理

当社では、非鉄金属等資源枯渇問題に係るリスク、及び気候変動に係るリスクについてはサステナビリティ推進委員会で、また、人的資本に係るリスクについてはリスク管理委員会で、リスクの洗い出しと重要リスクの絞り込みをしたうえで、モニタリング及び再評価を行い、適切に管理しております。

特に、気候変動に関するリスクに対しては、特定・評価プロセスとしてシナリオ分析を実施しております。シナリオ分析ではまずサステナビリティ推進委員会にて、予測される気候変動課題に起因したリスクを、IEAやIPCCが公表する文献等も参考に洗い出し及び整理を行います。次に、特定されたリスクごとに事業インパクト評価を実施し、営業利益への影響度という観点でリスクの大きさを評価しております。

サステナビリティ推進委員会では、リスクの評価と併せて重要リスクに対してはリスク低減に向けた施策も検討し、評価結果と併せて取締役会に報告されます。取締役会によって承認された施策については、サステナビリティ推進委員会主導のもと各事業部門で実行に移され、対応の進捗状況は定期的にサステナビリティ推進委員会に集約されます。そしてリスクの再評価まで行うことで、適切な管理プロセスを構築しております。

 

(4) 指標と目標

(ⅰ)気候変動

当社はシナリオ分析を通じ、カーボンプライシング制度導入によるコスト増加リスクを、重要リスクの一つとして評価しております。そこで、本リスク低減のための施策の進捗を図る指標として、GHGプロトコルに基づきScope1,2排出量の算定を実施しております。

また、2050年カーボンニュートラル達成に向け、2030年度のScope1,2排出量を2019年度比60%以上削減するという目標を策定いたしました。この目標達成のために、省エネルギー技術の導入や再生可能エネルギーの活用等の削減の取組みを推進してまいります。

Scope1,2算定結果は以下のとおりです。

GHG排出量

項目

2019年度

2024年度

 

Scope1

7,385

6,294

t-CO2

Scope2(マーケット基準)

7,860

7,103

Scope2(ロケーション基準)

8,522

5,858

Scope1+2合計

15,245

13,397

マーケット基準

・タイ拠点は1月~12月のデータで集計しております。

・社有車と以下拠点の専有部分による排出量は全体に比べ軽微なため、除外しております。

(ハノイ駐在員事務所、越谷社宅(賃貸部除く専用部分)、保養所、松原独身寮、新田寮)

 

 

(ⅱ)人的資本

人的資本に関する戦略において記載しております、方針及び施策に係る指標につきましては、連結対象が海外子会社であり、連結グループ全体での記載が困難であることから、当社単体での記載となっております。

指標

実績

実績

目標

2024年3月

2025年3月

2026年3月

女性管理職比率

3.1

     3.9

4.0

女性育児休業取得率

100.0%

     100.0

100.0

 

 

 

3 【事業等のリスク】

 当社グループは工業薬品と住宅向けを中心とする建材製品の二つの事業分野に展開しており、特定分野への過度の集中は極力排しております。更に、当社グループの主力事業である工業薬品の分野においては、エレクトロニクス、自動車・船舶、石油化学、塗料・インキ、セラミック・ガラス、ゴム・プラスチック、エネルギー等、多方面に、多品種少量で供給しており、それぞれの分野の景気変動リスクは分散される構造となっております。このようななかで、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性のある事業リスクは以下のようなものがあります。

① 薬品事業の非鉄金属・石油関連の原料等、建材事業の鉄・ステンレス・アルミ等の材料は、世界的需給関係や投機資金の動き等により急騰、急落することがあり、それによるコストの上昇が売価に転嫁できないリスク、相場下落の影響を売価が先行して受けるリスクがあります。

 また、非鉄金属原料は、生産国が偏っており、政治的、経済的又は自然災害トラブルにより供給面で障害が生ずるリスクがあります。

② 当社グループが製造・販売する工業薬品は、メーカーに納入する中間材が主体ですが、納入メーカーの事業戦略変更等が発生した場合、先方の都合により当該製品の納入中止等のリスクがあります。

③ 当社グループが展開する事業分野で、当社グループ製品が引き続いて優位性を発揮する為には、絶えず新製品・新技術の開発が必要でありますが、投資に対する効果面で、必ずしも目標とした成果が得られないリスクがあります。

④ 当社グループの海外における生産・販売の拠点構築は、需要動向を勘案し、計画的、段階的に拡充しておりますが、進出先の自然災害発生、法規制変更、テロ、戦争の勃発等、予期し得ない出来事により、現地での生産・販売が阻害され、業績、財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

⑤ 当社グループが製造、販売する工業薬品及び使用する原料の一部に、法令で定める劇毒物・危険物薬品があります。その管理については、法令を遵守するとともに内部統制の観点からも、万全を期しておりますが、使用、保管、輸送途上等での不測の事態によって発火、盗難、散逸等が発生した場合、火災の発生、環境汚染を招いたり、人体に危害が加わる可能性があります。ひいては損害賠償を求められるリスクがあります。

⑥ 当社はISO9001はじめ製品の品質規格については、関連法規の遵守、ユーザーとの契約基準遵守等、管理、開発、生産、販売には万全を期しておりますが、不測の品質トラブルが発生し、当社製品や当社グループ製品全体の評価を低下させ、ひいては当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

⑦ 当社グループが供給する製品は様々な知的財産権を取得しており、適切な対応に努めておりますが、第三者に侵害されるリスクがあります。一方で新たに開発する製品については、第三者の知的財産権を侵害しないよう常に留意しておりますが、当社の調査が十分かつ網羅的である保証はありません。万一、当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には損害賠償請求等を起こされるリスクがあります。

⑧ 当社グループは、東日本大震災と福島原発事故、タイの大規模洪水等により被災したことを受けて、事業継続計画(BCP)を策定し、計画を実行しておりますが、事業継続計画での想定を越える災害が発生した場合、当社グループの業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

⑨ 当社グループの従業員に新型コロナウイルス等の感染が拡大した場合、一時的に操業停止となり、当社グループの業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

⑩ 国内労働人口の減少や少子高齢化の進行による人手不足や人件費の高騰が大きな問題となっております。当社グループが事業の拡大を続けていくためには優秀な人材の確保・育成が不可欠となりますが、それらの人材が確保・育成できない場合、また、人件費が高騰し続ける場合には、当社グループの業績、財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)当期の経営成績の概況

当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)における日本経済は、世界的な政治情勢の不安定化や中国経済の低迷、インフレ傾向の定着等、依然として不透明な要素があるものの、消費に持ち直しの動きがみられ、設備投資も緩やかな増加が続く等、堅調に推移いたしました。

このような状況のもと、当社グループは2023年10月よりスタートした中期経営計画に基づき、2030年のありたい姿を視野に入れ、持続的な成長を目指しております。この中期経営計画を実現するために、新たな事業分野の強化を目指したリチウムイオン電池リサイクルのパイロットプラント建設に着手いたしました。既存分野では、製品の販売・生産数量の確保・拡大に加え、新製品・新規用途開発品の早期の実績化及び新規ユーザーの開拓にも継続して取り組んでまいりました。

この結果、当連結会計年度の当社グループ全体の売上高は前期比2,997百万円 13.4%増25,441百万円、営業利益は前期比683百万円 31.4%増2,860百万円、経常利益は前期比651百万円 25.5%増3,212百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比614百万円 35.3%増2,357百万円となりました。

 セグメント別の業績は、次のとおりとなります。

[薬品事業]

主力の薬品事業では、主要な分野である電子工業の出荷額は緩やかな回復基調にあり、国内市場における需要の回復による販売数量の拡大や、非鉄金属相場の上昇等が売上高の増加に貢献いたしました。また、製品の付加価値向上等による販売単価アップ、生産コスト削減、非鉄金属相場の年度前半における上昇メリットに加え、タイの子会社であるサイアム・エヌケーエス社の業績伸長等により収益が拡大いたしました。二次電池用正極材の受託加工は、世界のEV販売台数の成長に陰りがみられる不透明な状況におきましても、堅調に推移いたしました。

この結果、当連結会計年度の売上高は前期比3,179百万円 17.2%増21,715百万円となり、セグメント利益は前期比925百万円 41.2%増3,170百万円となりました。

[建材事業]

建材事業では、住宅着工戸数が依然として前連結会計年度の実績を下回って推移する等、厳しい事業環境のもとにあります。売上高に関しては、足元で持ち直しの兆しがありますが、年度前半の落込みをカバーするまでには至らず、販売数量は減少いたしました。利益面では鋼材価格の高止まりに加えて、労働需給のひっ迫によるコスト上昇等の固定費負担の増加によりセグメント利益は減少いたしました。

この結果、当連結会計年度の売上高は前期比182百万円 4.7%減3,725百万円、セグメント利益は前期比157百万円 20.8%減599百万円となりました。

 

 

 生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。

① 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

薬品事業

15,476,482

22.2

建材事業

2,339,724

△5.7

合計

17,816,207

17.7

 

(注) 金額は製造原価で表示しており、セグメント間の内部取引はありません。

 

② 商品仕入実績

 当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

仕入高(千円)

前年同期比(%)

薬品事業

1,535,363

0.5

建材事業

182,231

△8.9

合計

1,717,595

△0.6

 

(注) 金額は仕入価格で表示しており、セグメント間の内部取引はありません。

 

③ 受注実績

   当社グループは、需要予測に基づく見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

④ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

薬品事業

21,715,969

17.2

建材事業

3,725,453

△4.7

合計

25,441,423

13.4

 

(注) 1  セグメント間の内部取引はありません。

2  総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。

 

 

(2)当期の財政状態の概況

当連結会計年度末における流動資産は、棚卸資産、売上債権が増加した一方で、現金及び預金が減少したことにより、前連結会計年度末比3,753百万円減28,502百万円となりました。一方、固定資産は、有形固定資産が建設仮勘定の増加により、前連結会計年度末比1,213百万円増8,424百万円となり、投資その他の資産も保有株式の株価下落があったものの、長期預金が増加し、前連結会計年度末比3,927百万円増17,265百万円となったことにより、前連結会計年度末比5,129百万円増25,801百万円となりました。この結果、総資産は前連結会計年度末比1,375百万円増54,303百万円となりました。

また、流動負債は、仕入債務が増加したこと等により、前連結会計年度末比750百万円増5,663百万円となり、一方、固定負債がその他有価証券評価差額金減少に伴う繰延税金負債の減少により前連結会計年度末比192百万円減2,161百万円となったことから、負債合計では前連結会計年度末比557百万円増7,825百万円となりました。また、純資産は前連結会計年度末比818百万円増46,478百万円となり、その結果、自己資本比率は前連結会計年度末の86.3%から85.6%となりました。

 

セグメントごとの資産は次のとおりであります。

① 薬品事業

薬品事業は、建設仮勘定、棚卸資産の増加により、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ2,274百万円増19,491百万円となりました。

② 建材事業

建材事業は、売上債権、棚卸資産の減少により、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ78百万円減2,397百万円となりました。

③ その他

長期預金の増加により投資その他の資産が増えたものの、現預金が減少したことにより、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ820百万円減32,415百万円となりました。

 

(3)当期のキャッシュ・フローの概況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動によるキャッシュ・フローで3,304百万円増加、投資活動によるキャッシュ・フローで11,450百万円減少、財務活動によるキャッシュ・フローで1,270百万円減少し、この結果、換算差額による影響等も含めると、当連結会計年度末は、前連結会計年度末に比べ9,268百万円減少し、10,218百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金は、3,304百万円の増加(前連結会計年度は3,097百万円の資金の増加)となりました。この主な要因は、法人税等の支払額772百万円、棚卸資産の増加額259百万円、未払消費税の減少額119百万円等があったものの、税金等調整前当期純利益が3,292百万円、減価償却費1,075百万円、仕入債務の増加額345百万円等により資金が減少したことであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金は、11,450百万円の減少(前連結会計年度は1,317百万円の資金の減少)となりました。この主な要因は、定期預金の払戻による収入400百万円等があったものの、有形固定資産の取得による支出1,602百万円、定期預金の預入による支出10,400百万円等があったことであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金は、1,270百万円の減少(前連結会計年度は999百万円の資金の減少)となりました。この主な要因は、配当金の支払額1,167百万円等があったことであります。

当社グループの資金需要は、主に製品製造に使用する主要材料及び補助材料の購入、製造費や販売費及び一般管理費に計上される財・サービスの調達等の運転資金であります。設備投資資金は、生産設備の取得等生産体制の構築等に支出されております。また、株主還元については、財務の健全性等に留意しつつ、配当政策に基づき実施してまいります。これらの必要資金は、利益、減価償却費等により生み出される自己資金により賄うことを基本方針としております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動は、顧客に信頼され、満足していただける製品開発に加え、薬品事業は、近年強く求められております地球環境に配慮した製品及び需要の伸びが期待できる二次電池をはじめとするIT関連の製品の開発に、建材事業は、住宅関連を中心に安全で利便性の良い製品の開発に鋭意取り組んでまいりました。なお、セグメント別の研究開発活動は次のとおりです。

(薬品事業)
 継続的な円安やAI普及を見据えた半導体需要に支えられ、日本を取り囲む経済状況は概ね底堅い成長を維持しております。一方で、下期からはトランプ政権台頭に伴う保護主義の拡大やSDGsの後退に対する懸念、経済安全保障問題のさらなる表面化、Deep Seekショック等、数々の不確定要因が浮上し複雑な様相を呈し始めております。このような複雑な状況下でも将来にわたって持続的成長を確保できる様、R&Dセンターではコア技術の高度化、新規技術の獲得を精力的に進めております。

 化成品事業分野では、金属石鹸、無機金属塩を中心として、これまで顧客との対話を通してニーズにきめ細かく対応した製品開発を行い、市場において高評価を得ております。第100期ではこれを更に推し進め、人員と体制の刷新、営業との連携強化を通して、顧客に寄り添った製品開発をより迅速・効率的に行うことを目指しております。一方で、当社の将来に向けた事業開発にも力を入れ、機能性ナノ粉体、ナノ連珠セラミックス等の開発検討を進めながら、展示会等を活用して、これら開発品の出口開発、用途開発を積極的に押し進めております。特にナノ連珠セラミックスはこれまでターゲットとしていた燃料電池分野、水電解分野以外の市場からの引き合いも増えつつあり、商業化に向けた取組みが本格化しつつあります。

 リチウムイオン二次電池事業は、EVトレンドが踊り場に差し掛かっているとの指摘がある一方で、長期的には確実に需要の増加が期待できると捉え、足元として受託加工の安定生産や増産、新品種への対応を進めるとともに、将来を支える技術の獲得のため、新規電池材料の開発を顧客と共同で進めております。また、これまで注力してきたリサイクル事業は補助金が採択され、四倉工場用地に実証用パイロットプラントを建設しております。第101期より次の段階として、完成した実証用パイロットプラントで得た知見を活用し、当社が開発したリサイクル技術の実証を開始する予定となっております。得られた知見は、二次電池リサイクルの商業化を見据えた取組みに活用してまいります。

 表面処理事業分野では引き続き競争力のあるスルファミン酸ニッケルや酸化銅DCの拡販と技術支援を進めるとともに、独自性の高い選択エッチング、機能性めっきの用途開発を進めております。酸化銅DCはリサイクルという訴求点から、海外においても十分に競争力を発揮できるものと考えており、タイ子会社であるサイアム・エヌケーエスでの生産拡大を見据え、各種技術課題の解消を進めていまいります。また、新たに開発したPFASフリー複合めっきは、世界的にPFAS規制が依然不透明であることから動きが鈍い状況が続いておりますが、中長期的にはPFAS排除の流れは確定的なものであり、コスト低減効果等他の訴求点も含めて根気強くPR、拡販活動を進めてまいります。

 
  (建材事業)

主力製品である「防火通気見切り縁BMシリーズ」は、拡販に向け建築物における設置条件の対応度を高めた新たな準耐火認定取得をいたしました。またコンパクトな意匠、高防水性を特徴とし、準耐火60分に対応できる軒裏換気孔「TM5N」を上市いたしました。その他にも、お客様の用途に合わせた提案を行い、当社が得意とする曲げ、プレスによる成形技術を利用して製品化に向け取り組んでおります。これら研究開発活動では、送風試験機、試験炉、耐食促進試験装置、3DCAD、シミュレーションソフトを活用し、試作・性能検証等の効率化及び設計技術・提案力の強化を推進しております。

 なお、当連結会計年度の研究開発費は、511百万円(薬品事業435百万円、建材事業76百万円)であります。