文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループの経営理念は、次のとおりであります。
「創業者精神を持って、空気、水、そして地球にかかわる事業の創造と発展に、英知を結集する」
当社グループの事業の原点は、社名に冠した「空気」と「水」であり、このかけがえのない地球の資源を活かして事業を創出し、社会や人々の暮らしに貢献していくことが当社グループの使命であります。当社グループは、この経営理念の下、目まぐるしく変化を続ける経営環境の中でグループの総合力を発揮し、社会の発展に役立つ多種多様な製品・サービスを提供する企業であり続けることを目指しております。
(2) 中期経営計画
2019年度を初年度とする3カ年中期経営計画「NEXT-2020 Final」では、これまでの3次にわたる中期経営計画における取組と成果を踏まえながら、「革新=イノベーションの実行」を基本コンセプトとして、6つの革新とそれに連動する経営施策に取り組んでおります。

(3) 経営環境、目標とする経営指標及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナ感染拡大の影響で不透明な状況が継続しておりますが、ワクチンの普及や感染対策の進展等により、今年度後半には国内外ともに成長基調に転じることが見込まれます。他方、コロナ禍で起きた様々な変化は、従来の価値観やビジネスの仕組みに大きな変化をもたらし、勤務形態のみならず営業活動やライフスタイルに至るまで常識が激変し、「新常態(ニューノーマル)」として定着しようとしています。
このような事業環境のもと、当社グループは中期経営計画「NEXT-2020 Final」の最終年度をスタートさせました。計画に定める諸種の施策を着実に実行するとともに、これからの10年を見据え、事業・技術・人材の多様性からなるコングロマリット経営を武器に社会課題と向き合い、「技術」「海外」「デジタル」をキーワードとして、新たな変革とさらなる企業成長を目指してまいります。
国内事業における収益力の強化
国内収益力の基盤となるのは地域事業であります。昨年の10月1日に従来の地域事業会社8社を3社に統合し、経営資源を集約するとともに組織体制を強化し、新たに地域と共生・共創する独立事業会社として発足させました。新生3社は、当社グループが展開する事業の多様性が持つ力を活かしながら、既存事業の深耕と事業間シナジーの最大化に注力することに加え、SDGsの取り組みを具現化し、地域社会の課題を解決に導く新事業の創出に取り組み、地域から必要とされ、選ばれる会社を目指します。
また、これまでに行った多くのM&Aの効果を確実に発揮させるとともに、当社グループの100を超える事業を、技術やマーケットの視点から整理・統合し、最適な事業ポートフォリオを構築してまいります。また、エレクトロニクス関連事業の伸長や、ガスプロダクツセンターによる産業ガス製造部門における生産・物流の合理化の推進等により、全社の収益性を高めてまいります。
さらに、グループ全体のシナジーを創出しやすい環境に整えるため、全国にあるオフィスの集約や物流倉庫の効率的な活用、また新たに整備したコミュニケーションインフラの活用とペーパーレス化を推進してまいります。
また、グループ横断でデジタル・イノベーション(DI)を強力に推進し、これまでと全く違った視点・発想でビジネスを考え直します。昨年6月には業務革新本部を発足させており、引き続き、「データ経営の実現」「働き方の革新」「営業革新」の3つのテーマを強力に推し進めてまいります。これら業務革新の狙いは、生産性向上による収益力の強化、つまり従業員一人ひとりが常に現状を変えていくことにチャレンジする風土への意識改革を図ることにあります。そして業務革新によって発生する時間や経営資源を「未来への投資、未来のAWグループの仕事」にシフトしてまいります。
海外事業の拡大
次に、当社グループでは、海外事業を、引き続きグループの成長を牽引する力とします。
インドにおける産業ガス事業は、同国の粗鋼生産の拡大に伴う産業ガス需要の増大に対応し、インド産業ガス市場において確固たるポジションを確立します。また、北米におけるエンジニアリング事業を引き続き強化するとともに、これを足掛かりとして、産業ガス供給事業の展開を見据え、仲間づくりを推進します。高出力UPS事業は、前連結会計年度までにグローバルに展開できる事業体制を構築しました。引き続きデータセンターや半導体工場など成長分野をターゲットに世界展開を加速させてまいります。
技術による新事業の創造
技術による新しい事業の創造こそが企業発展の原動力であり、製品・サービスの高付加価値化や顧客ニーズに対応するためのソリューションを創出するには技術開発力の強化が欠かせません。
当社グループでは、技術戦略センターをグループ全体における技術戦略のプラットフォームとして機能させ、グループにおける研究開発資源を最大限に有効活用してまいります。グループ各社に分散していた研究開発部門に横串を刺して横断的な管理と連携を図るとともに、大学や他の研究機関とのアライアンスを推進して技術開発を加速させます。また、開発テーマのアセスメントを行ったうえで、今後積極的な研究開発投資を行ってまいります。
そして、社会的価値の観点から、地域に密着し、循環型社会の実現を目指す「環境システム」事業、行政と連携し、高齢化社会における健康維持などの社会課題の解決を目指す「ウェルネス事業」の二つを新たな事業領域と定め、部門や会社の枠組みを超えた連携による各種プロジェクトを立ち上げて事業を支える要素技術を培い、新事業の創出につなげてまいります。
人を活かした経営
M&Aで事業成長を果たしてきた当社グループには、多様な人材と様々な企業文化が融合した企業風土が形成されており、この「多様性」が最大の経営リソースであります。これを十分に活かし切るため、「グループ人材バンク」の制度を設けており、次世代経営者育成のプラットフォームとして、客観的なデータに基づくグループ全体での人材活用や人材育成に役立ててまいります。また、若手管理職の早期登用や、ダイバーシティによる組織力の向上、女性管理職やグローバル人材の一層の増加に向けて取り組みを進めてまいります。
また、この4月には、技術戦略センターと同じ狙いを持って、エンジニアリングセンターを設置いたしました。グループ内に分散している技術・ノウハウ・人材を経営資源として一元管理を行い、プラットフォームとしての機能を果たし、エンジニアリング人材の育成を図り、総合エンジニアリング会社への脱皮とグローバルでも戦えるコスト競争力の実現を目指してまいります。
サステナブル社会の実現
最後に、新型コロナ感染拡大を契機とした急速な社会変化や地球温暖化対策に向けた脱炭素ニーズが高まっている状況を踏まえ、全社を挙げてSDGsの達成に向けて取り組んでまいります。多様な事業領域を有するコングロマリットの強みを活かし、幅広く事業活動を通じた社会課題解決への貢献を目指すとともに、とりわけ、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、企業活動における環境負荷低減に取り組むとともに、産業ガス事業で培った水素やCO2回収の技術やインフラを活用し、様々な産業の脱炭素化を中心に貢献してまいります。
なお、各セグメントの対処すべき課題は、次のとおりであります。
産業ガス関連事業においては、国内における物流コストの上昇や大型台風をはじめとした大規模自然災害の発生が増加する中での安定供給体制の構築が課題となっております。当社グループでは、これらの課題に対して分散型の製造ネットワーク構築と輸送距離の短縮化を実現するため、高効率小型液化酸素・窒素製造装置「VSU」の全国配備を進めるとともに、ガス充填所の新設や更新など製造・供給インフラの拡充を図っております。また、足元の事業環境としては、次世代通信規格(5G)やIoT、デジタルトランスフォーメーション(DX)等の「デジタル・シフト」、ならびに政府によるサプライチェーン強靭化に向けた製造業の国内回帰促進策等が追い風となり、国内の半導体や電子材料などエレクトロニクス関連事業向けの産業ガス及び関連機器の需要が増加し、市況は徐々に好転しております。また海外事業について、インドでは2020年度前半はコロナウイルスによる影響を受けたものの、ガス需要・粗鋼生産量ともに市場は順調に回復しております。
ケミカル関連事業においては、2021年10月に機能化学品を柱とする当社の電材開発事業部と当社グループの川崎化成工業㈱ならびに大東化学㈱の統合を予定しており、また、基礎化学品、食品化学、医農薬中間体を含む化学品事業全般において、超スマート社会に向けた需要の変化を先取りすべく、開発体制の強化と生産・物流体制の統合を図り、さらなる成長を目指しております。
医療関連事業においては、急性期病院の減少や医療費削減の圧力等により、当社の主力事業である医療用ガスや医療機器事業においては厳しい環境が続いております。特に当連結会計年度は、新型コロナウイルスが国の医療体制に多大な影響を及ぼし、各医療機関における役割分担が上手く機能していないなど、地域医療の様々な課題が浮き彫りとなりました。今後も国の医療機関に対する感染対策支援が継続することから、感染防止対策商材のニーズは引き続き増加すると見ております。また、衛生材料や口腔ケア製品においては、超高齢化社会の進展に伴って更なる市場拡大が見込まれることから、これら商材の充実を図り、「くらしの医療分野」を成長させてまいります。さらに、新規事業として、歯髄幹細胞を活用した歯髄再生事業についても、事業化に向けて引き続き取り組んでまいります。
エネルギー関連事業においては、国内のLPガス事業はLPG単位消費量の低下と配送の人材不足への対応を課題としており、IoTを活用した自動検針システム等を導入することで、より顧客が安心できるサービスを提供していきます。また、人口増加・経済成長の著しいASEANでは今後も市場の拡大が見込まれており、ベトナムにおいては、日本式の安全性に優れた供給技術を現地に適した方法で普及させることで、LPガス事故の減少と安全な生活の実現に貢献していきます。
農業・食品関連事業においては、新型コロナの影響で外食や観光産業の停滞が長期化することによって、業務用冷凍・加工食品の需要が伸び悩むことが予想される一方、宅配、オンライン販売のように外食から中食への需要の転換が急速に進んでおります。こうした需要の変化とそれに伴う顧客の多様なニーズに応えるため、事業領域の多様性と中小規模の事業ユニットが持つ即応力を活かして、事業の拡大を進めてまいります。また、相次ぐ天候不順や農業の担い手不足を背景に、原料野菜の安定調達力を高めることが重要な課題となっており、産地の分散化や契約栽培農家との関係強化を進めております。
物流関連事業においては、引き続き、業界全般におけるドライバー不足と人件費上昇という課題がある中、今後も市場成長が見込める低温物流領域を中心に、自社物流拠点ネットワークの拡充、倉庫内でのICTやAI導入による作業の省力化と合理化を図り、荷物の小ロット化などの多種多様なニーズに応えられる体制づくりを推進しております。
海水関連事業においては、人口減少や減塩志向を背景に国内の塩需要が減少する中、技術開発力の強化と海水事業のさらなる深耕、環境分野での社会貢献等を喫緊の課題として取り組んでおり、海水淡水化技術の開発や老朽化した上下水道管の更新などを通じて、人の生活に不可欠な水の安全・衛生を守るための事業を引き続き展開していきます。
当社グループの事業展開上、事業の状況、経理の状況等に変動を与え、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 当社のリスクマネジメント体制
当社グループの事業活動において特に重要なリスクであると認識しているコンプライアンス、保安防災及び環境保全に係るリスクについては、代表取締役の直轄組織である「CSRセンターコンプライアンスグループ」がその統括部門として、当社及び子会社を横断的に管理する体制としております。
情報セキュリティ、品質管理、知的財産及び契約等に係る個別リスクについては、それぞれの担当部門において、社内規程の制定、マニュアルの作成並びに教育研修の実施などを行うとともに、事前審査や決裁制度を通じて当該リスクを管理する体制としております。
なお、事業活動への影響が大きいと想定されるリスクが発生した場合には、「危機管理規程」に基づき、直ちに危機管理委員会を社内に設置し、発生したリスクに対し迅速かつ適切に対処する体制を整えております。

(2) 事業等のリスク
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス(以下、「新型コロナ」という。)の感染拡大により、年度前半は個人消費や企業活動が低迷しました。年度後半は輸出の拡大や経済対策により、一部で持ち直しの動きがありましたが、冬場以降、感染が再拡大するなど先行き不透明な経営環境が続きました。
このような状況において、当社グループは、徹底した感染拡大防止策や安全配慮策を講じたうえで、産業や暮らしのライフラインとして、産業ガスや医療用ガスをはじめとした諸製品の安定供給責任を果たしてまいりました。また、コロナ禍を契機に、テレワークや高速通信規格「5G」が進展したことでエレクトロニクス分野の需要が拡大するとともに、衛生材料をはじめとした感染対策製品のほか、家庭における内食・中食需要の高まりやエネルギー消費の拡大など新型コロナによるニーズの変化が定着してまいりました。このような「新常態(ニューノーマル)」における変化に対応すべく、当社グループは多種多様な事業・製品を活かし、積極的に市場開拓を進めたことに加え、全社を挙げてデジタル化を基軸とした働き方改革を推進し、業務運営の効率化に取り組みました。
また、次の10年を見据えた成長への布石として、グループ全体の技術戦略プラットフォーム「技術戦略センター」を新たに設置し、研究開発体制の改革を進めるとともに、国内における収益力の向上と持続的な成長を牽引する強力な事業基盤を構築するため、地域事業会社8社を統合し、新生3社とする組織改革を実施しました。
当社グループは、人と環境にやさしいものづくりを通して社会に貢献し、地球環境の保全を図り、空気や水などの資源を無駄なく使用、循環させる地球資源循環カンパニーを掲げ、次の世代に住みよい地球と社会の実現を目指してきました。「地球の恵みを、社会の望みに。」をコミュニケーションコンセプトとして、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた取り組みを進めました。SDGs推進室を設置し、さらに代表取締役会長・CEOを委員長とするSDGs推進委員会が発足、グループ横断的にSDGsの活動を進める体制を整え、2050年の目指す姿として「サステナブルビジョン」を策定するとともに、2030年をマイルストーンとして、全社を挙げてSDGsの達成に向けて取り組みました。
当社グループといたしましては、年度前半は国内における産業ガス関連、医療関連及びその他の事業における海外エンジニアリング分野を中心に新型コロナによる需要減少の影響を受けましたが、年度後半は国内を中心にすべてのセグメントで事業環境の回復傾向が続きました。また、こうした中、年度を通じて、産業ガス関連におけるインド産業ガス事業が業績に貢献したほか、感染対策製品を中心とした新たなビジネス機会の開拓やケミカル関連、農業・食品関連を中心とした生産体制の再構築などにより収益改善が進展しました。さらに、デジタル化や働き方改革の進展による費用低減効果も寄与し、営業利益はその他の事業を除くすべてのセグメントで前連結会計年度を上回り、過去最高益を更新しました。産業ガスをはじめ、医療・衛生、エネルギー、農業・食品、物流といった、人々の命や暮らしを支える様々な事業領域を有するコングロマリット経営と、地域に密着した事業基盤の強みが、コロナ禍という未曾有の状況下でも遺憾無く発揮されました。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの売上収益は、8,066億3千万円(前期比99.7%)、営業利益は512億3千1百万円(同101.2%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は273億6千7百万円(同89.9%)となりました。
なお、インドでの税制改正により、同国では税法上、のれんの償却が認められなくなったことに伴い、当社子会社であるAWインディア社でのれんへの繰延税金負債を計上いたしました。
その結果、当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期利益に47億1千5百万円の影響が生じております。
セグメントの業績及び概況につきましては、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、新規事業領域の研究開発費につきましては、従来、各報告セグメントに計上しておりましたが、各セグメントの業績をより適切に評価するために経営管理手法を見直し、セグメント利益の調整額に本社部門に係る費用の一部として計上する方法に変更しており、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の測定方法により作成したものを記載しております。
<産業ガス関連事業>
当セグメントの売上収益は1,855億7千9百万円(前期比98.2%)、営業利益は208億6千4百万円(同108.4%)となりました。
当セグメントにおいては、これまで国内で鉄鋼需要が減少していく中、鉄鋼オンサイト事業における最適生産体制を再構築し、また、地域事業における統合効果の最大化と拡充、あわせて、インフラネットワークの強化により収益基盤の再構築を進めてきました。一方で、急拡大する半導体分野への大規模窒素ガス供給、特殊ケミカル供給ならびに機器工事などエレクトロニクス事業の規模を拡大し、また、大きな成長が見込まれるインドにおいて、大型酸素ガス供給プラント技術を基軸に鉄鋼オンサイト事業と産業ガス外販事業の拡大を図り、事業ポートフォリオの変革を進めております。
事業全体の業績としては、国内において鉄鋼をはじめとした製造業向けの需要減少による影響があったものの、インドでの産業ガス事業、エレクトロニクス向けのガス供給や機器販売、エンジニアリング分野の大型案件などが業績拡大を牽引し、利益面では順調に推移しました。
ガス事業では、エレクトロニクス向けガス供給は、データセンターや5G関連の需要拡大による国内半導体メーカーの増設・増産を背景に、堅調に推移しました。国内の鉄鋼向けオンサイトガス供給は、主要顧客における高炉の休止や停止などの影響を受け、販売量が減少し、厳しい状況が続きました。ローリー・シリンダーによるガス供給は、春先の国内製造業における生産調整により需要が急減しましたが、第2四半期以降は自動車産業の回復に連動する形でガス需要も持ち直しの動きが見られ、年度後半には、ほぼ前年並みの水準まで回復しました。
機器・工事事業は、ガス発生装置及び供給設備等の大型案件に加え、大手半導体メーカーへのガス精製装置や特殊材料供給装置などの販売が拡大し、堅調に推移しました。
海外事業は、主力のインド事業において、鉄鋼向けオンサイトガス供給が旺盛な粗鋼生産に連動し高稼働を継続するとともに、ローリー・シリンダーによるガス供給も第2四半期以降に建設や自動車向けへの販売が増加し、順調に推移しました。
<ケミカル関連事業>
当セグメントの売上収益は333億5千7百万円(前期比121.4%)、営業利益は19億9千2百万円(同148.8%)となりました。
当セグメントにおいては、2018年に市況変動の影響が大きいコールケミカル事業を譲渡した後、電子材料を中核とする機能化学品事業への構造転換を進めております。そのステップとして、2019年に新たに加わったグループ会社と既存事業の統合再編を行い、事業全体でシナジーを追求するとともに、電子材料分野以外でも、基礎化学品分野、食品化学分野、医農薬中間体分野を含む化学品事業全般において、来るべき超スマート社会に向けた需要構造の変化と拡大を先取りしていきます。
事業全体の業績としては、事業構造改革の一環として前年度に実施したM&Aによる新規連結効果に加え、電子材料の販売が増加するとともに、生産体制の再構築による収益改善が進展しました。
機能化学品事業は、ポリイミド樹脂原料をはじめとする電子材料の拡販が進展しました。また、データセンターにおけるハードディスクドライブの需要拡大を背景に精密研磨パッドの販売が堅調だった㈱FILWEL、及び酢酸ナトリウムの国内トップメーカーで、電子材料向け有機合成事業が拡大した大東化学㈱の新規連結効果が寄与しました。加えて、中国工場の閉鎖をはじめとして生産体制の再構築を進めたことで、収益性の改善が進展しました。
川崎化成工業㈱は、無水フタル酸の市況下落と販売減少により売上面において影響を受けましたが、ナフトキノンの販売回復により、堅調に推移しました。
<医療関連事業>
当セグメントの売上収益は1,864億2千5百万円(前期比99.2%)、営業利益は105億4百万円(同100.4%)となりました。
当セグメントにおいては、医療ガスや医療機器を中心とした高度医療分野から、デンタルや衛生材料といったくらしの医療分野に至るまで、多様な事業領域を有する総合力が強みであります。この総合力を活用し、ウィズコロナ社会において喫緊の課題である感染対策分野や病院業務の効率化をはじめとした顧客ニーズの変化に対応しております。また、歯髄再生治療などの事業化やIoTを活用した遠隔診療システムをはじめとするスマート社会に向けた新しいヘルスケア事業の構築を進めております。
事業全体の業績としては、新型コロナによる受診控えや医療機関でのメンテナンス需要の減少などによる影響があったものの、衛生材料をはじめとした感染対策製品の需要拡大を取り込み、前年並みの業績を堅持しました。
設備事業は、簡易陰圧装置の拡販が続いた一方、手術室など病院設備の工事・保守点検が延期や中止になるなど、厳しい状況となりました。
医療ガス事業は、年度後半の販売量は前年並みに回復したものの、年度前半における受診控えや手術件数減少の影響が残り、通年では販売量が減少。医療サービス事業も、同様の理由によりSPD(病院物品物流管理)の取扱量が減少しました。
在宅医療事業は、院内感染回避のため在宅医療に移行する動きが続き、堅調に推移しました。
医療機器事業は、紫外線照射装置など感染対策製品を中心に販売が増加し、好調に推移しました。
衛生材料事業は、感染対策製品の需要の高まりを受けて、生産体制の増強により安定供給に努めたことで、医療機関で使用する感染防護服をはじめ、大手量販店、通信販売事業者など幅広い顧客向けにマスクや手指消毒剤などの販売が拡大しました。
その他の事業では、持分法適用会社である㈱歯愛メディカルにおいて歯科医院向け通信販売を中心に、感染対策製品の販売が増加しました。一方、注射針事業及びシンガポールの病院設備工事は、海外において新型コロナの影響を受け、厳しい状況が続きました。
<エネルギー関連事業>
当セグメントの売上収益は530億8千5百万円(前期比102.1%)、営業利益は45億5千8百万円(同107.2%)となりました。
当セグメントにおいては、徹底した増客増量施策と商権買収の実施によってLPガスの直販強化と販売拡大を図り、着実な収益拡大を実現しております。また、LPガス事業を基盤に、カーボンニュートラルに貢献するLNG関連機器や新たなバイオガスエネルギーの開発に取り組むとともに、新たに進出したベトナムにおいてLPガス事業の基盤構築を進めております。
事業全体の業績としては、業務用・工業用LPガスの需要が低迷したものの、巣ごもり需要による一般家庭向けLPガスの拡大と商権買収の進展により、順調に推移しました。
LPガス事業は、飲食店やホテルなどの業務用や工業用の需要が低迷した一方、在宅率の上昇を背景に家庭での消費量が増加しました。LPガスの輸入価格は期初に急落しましたが、年度後半にかけて上昇に転じ、その影響は軽微なものとなりました。また、販売店の商権買収による直売比率の向上やIoTを活用した配送効率化などの施策も奏功し、順調に推移しました。灯油は、冬場の平均気温が低かったことから販売量が増加しました。機器・工事は、展示即売会などのイベントが中止になったことで、機器販売が減少しました。さらに、前連結会計年度においてM&Aによって取得したベトナムでの卸売事業の新規連結効果がありました。
天然ガス関連事業は、LNGの販売量が増加したことに加え、環境意識の高まりを背景に、LNG供給機器「Vサテライト」の販売が堅調に推移しました。
<農業・食品関連事業>
当セグメントの売上収益は1,325億6千9百万円(前期比96.6%)、営業利益は40億2千9百万円(同122.8%)となりました。
当セグメントにおいては、生産や物流の合理化に徹底して取り組んだことで収益力の大幅な改善が進んでおります。また、コロナ禍によってライフスタイルや食に関わるニーズが大きく変化する中、ホテルや外食向けなどの業務用が中心だった生産・販売体制を見直し、市販用冷凍食品や惣菜、宅配向けなどの商品開発と新たな販路の開拓に注力しております。
事業全体の業績としては、業務用食品需要の減少による影響を受けたものの、青果小売分野、スイーツ分野を中心に収益改善が進展し、利益面では前年度を上回りました。
農産・加工品事業は、巣ごもり需要に対応したテイクアウトや宅配向けの商品開発に加え、家庭用の調理品や冷凍野菜の拡販に注力しました。ハム・デリカ分野及び農産・加工分野は、年度後半より回復傾向にあるものの、年度前半を中心に業務用が低迷した影響を受け、年度全体では厳しい状況で推移しました。スイーツ分野は、巣ごもり需要を取り込んだことに加え、生産・物流面の収益改善が進展し、順調に推移しました。
飲料事業は、外出自粛の影響により茶系飲料などの受託生産量が減少しましたが、北海道の生産工場で最新鋭のPETボトル充填ラインが稼働を開始したことに加え、健康志向を背景に拡大した野菜系飲料の需要を安定的に取り込み、収益改善が進展しました。
その他の事業は、農業機械分野は着実に需要を取り込み、堅調に推移しました。青果小売分野は店舗の時短営業や休業の影響を受けましたが、店舗運営の収益改善を進めた結果、利益面では前年度を上回りました。
<物流関連事業>
当セグメントの売上収益は532億9千1百万円(前期比105.7%)、営業利益は28億3千1百万円(同118.2%)となりました。
当セグメントにおいては、物流センターなどのインフラ整備を進めてきた結果、当社グループの技術力を基盤にした付加価値の高い低温物流事業が着実に拡大しております。引き続き、需要拡大が見込まれる低温物流事業に注力するとともに、自社物流ネットワークの構築を進め、収益力の向上を図っております。同時に、組織再編を実施し、グループ全体の物流一元化によるコストの適正化や倉庫利活用による効率化など、事業間シナジーの創出にも取り組んでおります。
事業全体の業績としては、食品物流における荷扱量の増加や新規連結効果に加え、低温物流センターの稼働率が向上し、順調に推移しました。
運送事業は、年度前半の経済活動の停滞により、建材関連など企業間における荷扱量は前年度を下回りましたが、集中配車センターの新設による配送効率化をはじめとしたコスト改善や軽油価格の低下が寄与し、その影響を補いました。また、M&Aによって取得した西日本地区を中心に運送・倉庫業を展開する㈱桂通商の新規連結効果がありました。
食品物流を中心とする3PL事業は、スーパーマーケット向けの荷扱量が増加したことに加え、低温物流センターの稼働率が向上し、順調に推移しました。
トラック・ボディの設計・架装を行う車体事業は、製作台数は減少したものの、収益性の高い案件を受注したことにより、堅調に推移しました。
<海水関連事業>
当セグメントの売上収益は409億7千1百万円(前期比102.5%)、営業利益は30億8千2百万円(同105.0%)となりました。
当セグメントにおいては、業務用塩や電磁鋼板用マグネシアなどトップシェアを有する事業を起点に、環境、食品、電力、都市インフラ(水処理・下水管更生)など、海水から派生した多様な事業を展開することで、着実に収益を生み出す基盤を構築しております。さらなる成長に向け、環境規制を背景に東南アジアでの需要が拡大している環境事業や木質バイオマス発電事業の拡大に取り組んでおります。
事業全体の業績としては、新たな発電所が稼働を開始したことに加え、都市インフラ事業の拡大やヒーター用電融マグネシアの収益改善が進展しました。
塩事業は、外食需要の低迷により業務用塩の需要が大幅に減少したほか、讃岐工場において大型の設備修繕を実施した影響を受けました。環境・都市インフラ事業は、顧客工場の操業度低下の影響を受け排煙脱硫に利用される水酸化マグネシウムの販売が減少しましたが、地方自治体向け水処理設備の受注が増加したことで、堅調に推移しました。電力事業は、持分法適用会社であるサミット小名浜エスパワー㈱の発電所において隔年実施の定期修繕を実施した影響を受けましたが、赤穂第2バイオマス発電所が2021年1月より営業運転を開始し、好調に推移しました。
マグネシア事業は、国内の粗鋼生産の減少と中国産低価格品の影響を受け、窯業用マグネシアの販売量が減少し、売上収益は前年度を下回る結果となりました。一方、原料価格の低下により、ヒーター用電融マグネシアの収益改善が進展し、利益面では堅調に推移しました。
<その他の事業>
当セグメントの売上収益は1,213億4千9百万円(前期比97.0%)、営業利益は48億5千3百万円(同66.1%)となりました。
事業全体の業績としては、感染対策需要を取り込んだエアゾール事業や半導体関連需要を捉えたOリング事業が堅調に推移したものの、高出力UPS(無停電電源装置)事業が海外における新型コロナの影響を受けたこと、また、電力事業において稼働後初となる大規模な定期点検を実施した影響により、前年度を下回る結果となりました。
エアゾール事業は、感染対策としてアルコール除菌剤の受託が年間を通じて継続しました。インバウンド需要の消失と外出自粛により化粧品の受託が減少する一方で、在宅率の上昇を背景に、殺虫剤や模型用塗料の販売が増加し、順調に推移しました。
情報電子材料事業は、年度前半は事業全般で新型コロナによる需要減少の影響を受けましたが、年度後半には、自動車向け電子材料の販売が回復したことにより、利益面では前年度を上回りました。
海外エンジニアリング事業における産業ガス関連機器分野では、主要市場である北米において、ステーション用途の液化水素タンクなど脱炭素化を見据えた設備需要に対応し、堅調に推移しました。一方、高出力UPS分野は、主要拠点である欧州とシンガポールなどにおけるロックダウンや移動制限の影響により、メンテナンスや設備投資計画の延期などが発生し、前年度を大きく下回りました。
その他の事業では、電力事業において木質バイオマス・石炭混焼発電所(山口県防府市)において、稼働後初となる大規模な定期点検に伴う停止期間等があったため、利益面では前年度を下回りました。Oリング事業は半導体製造装置向けの製品販売が順調に継続しました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
製品のほとんどが見込生産であります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態
(資産の部)
総資産は、有形固定資産の増加などにより前連結会計年度末に比べて271億2千1百万円増加し、9,268億2千1百万円となりました。
負債は、社債及び借入金の増加などにより前連結会計年度末に比べて65億4千6百万円増加し、5,544億3千1百万円となりました。
資本は、その他の資本の構成要素の増加及び親会社の所有者に帰属する当期利益の積み上げなどにより前連結会計年度末に比べて205億7千4百万円増加し、3,723億8千9百万円となりました。
以上の結果、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度の1,460.00円から1,584.86円に増加しております。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度の36.9%から38.6%となりました。また、親会社所有者帰属持分当期利益率は前連結会計年度の10.0%から7.9%となっております。
(3)キャッシュ・フロー
① 財務戦略の基本的な考え方
当連結会計年度は新型コロナによる経営環境の不透明感からM&A投資等を抑制し、キャッシュの創出に取り組みました。一方で、今後については2010年度から取り組んでいる長期成長ビジョン「NEXT-2020 1兆円企業ビジョン」の実現に向け、投資効率や財務バランスを考慮しつつM&Aや設備投資等の成長投資を積極的に継続する考えでおります。必要資金については自己資金と有利子負債を中心に賄ってまいります。
中長期的には積極投資の回収が進むことに加え、事業規模の拡大からより収益性・効率性を重視した成長戦略を想定しております。従って、配当性向の目安である親会社所有者に帰属する当期利益の30%を維持した上で、親会社所有者帰属持分比率40%、ネットD/Eレシオ0.75倍を目指し、安定的にフリーキャッシュフローを稼げる収益構造を構築していきます。
② キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益及び減価償却費などから法人所得税等の支払などを差し引いた結果、前連結会計年度に比べ328億1千7百万円収入が増加し、766億1百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に計上した事業譲渡による収入の反動で収入が減少したものの、有形固定資産の取得による支出や連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出、事業譲受による支出が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ628億9千8百万円支出額が減少し、526億9千9百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いや自己株式の取得による支出などにより、前連結会計年度の809億8千1百万円の収入に対して、208億8千9百万円の支出となりました。
(現金及び現金同等物)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ41億2千2百万円増加し、459億8千3百万円となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
長期成長ビジョン「NEXT-2020 1兆円企業ビジョン」を達成するために必要な成長投資の資金については、事業で創出されるキャッシュ・フローを充当し、不足する分は銀行借入或いは社債発行による負債調達を基本としております。
手元資金については、資金効率を重視し事業継続に必要な適正水準を維持する方針としております。
なお、資金の機動的かつ安定的な調達に向け、取引銀行3行との間に総額200億円のシンジケーション方式によるコミットメントライン契約を締結しております。
成長投資については、経済活動の停滞が長期化した局面に備えて十分な財務の安全性を維持するため、今後のM&A投資及び設備投資は、事業環境の変化を慎重に見極めながら厳選していきます。
株主還元については、配当性向の目標を親会社所有者に帰属する当期利益の30%としており、中長期的な成長のための戦略的投資等に必要な内部留保の充実に留意しつつ、将来にわたって業績に見合った安定的な配当を行うことを基本方針としております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、会計上の見積りに対する新型コロナの影響に関して、当社が現時点までに把握している情報をもとに、合理的であると判断した一定の前提に基づいております。翌連結会計年度の事業環境については、足元は新型コロナの感染再拡大の影響により不透明な状況が継続しておりますが、各国におけるワクチン接種の進展や経済対策により、年度後半には国内外ともに成長基調に転じる、との仮定を置いております。その前提に基づき、当連結会計年度において会計上の見積りを行った結果、当連結会計年度における連結財務諸表に及ぼす影響は軽微なものと判断しております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要な会計方針」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
① 非金融資産の減損
当社グループは決算日において、棚卸資産及び繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、又は減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額としており、資産又は資金生成単位の回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、 当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。
これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
② 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。
当社グループは、将来の課税所得及び慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用及び計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(5) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、「革新=イノベーションの実行」を基本コンセプトに据えた3カ年中期経営計画「NEXT-2020 Final」において、下記の指標等を主要な目標として取り組んでおりました。
今後の事業環境の見通しにつきましては、足元は新型コロナの感染再拡大の影響により不透明な状況が継続しておりますが、各国におけるワクチン接種の進展や経済対策により、年度後半には国内外ともに成長基調に転じることが見込まれます。
こうした中、当社グループを取り巻く事業環境につきましても、鉄鋼や自動車関連の生産回復による産業ガス需要の拡大や、半導体を中心としたエレクトロニクス関連産業の好調が継続することが見込まれます。また、感染対策製品などの需要が底堅く継続するとともに、注射針などワクチン接種に関連した新たな需要も想定されます。さらに、新たに2021年から稼働を開始した2つの木質バイオマス発電所(赤穂第2、小名浜)のほか、前年度までに進展してきたケミカル関連、医療関連におけるくらしの医療分野、農業・食品関連の収益改善が業績拡大に寄与することが見込まれます。あわせて事業環境の回復に連動した需要拡大を着実に取り込むとともに、すべての事業領域においてデジタル化を基軸とした生産性向上を図ってまいります。
また、当社グループは、「国内は収益力を強化、海外は成長を牽引」を基本方針として、主に国内では地域事業やエレクトロニクス関連事業、海外では産業ガス・エンジニアリング分野を重点領域として、M&Aや設備投資をはじめとした積極的な取り組みを進めてまいります。
さらに、新型コロナを契機とした急速な社会変化とともに、地球温暖化対策に向けた脱炭素ニーズの高まりを受けて、当社グループは2050年の目指す姿として「サステナブルビジョン」を策定するとともに、2030年をマイルストーンとして、全社を挙げてSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて取り組んでおります。多様な事業領域を有するコングロマリットの強みを活かし、幅広く事業活動を通じた社会課題解決への貢献を果たすとともに、特に、カーボンニュートラル社会の実現に向けて環境負荷低減に取り組み、産業ガス事業で培った水素やCO2回収の技術・インフラを活用し、様々な産業の脱炭素化に貢献してまいります。
こうした状況を踏まえ、次期の業績見通しにつきましては、売上収益8,800億円、営業利益580億円、税引前利益565億円、親会社の所有者に帰属する当期利益360億円を見込んでおります。
※1 親会社所有者帰属持分当期利益率
(親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分(期首期末平均))
※2 資産合計税引前利益率 (税引前利益÷資産合計(期首期末平均))
(株式交換による㈱日本海水の完全子会社化)
当社は、2021年2月10日開催の取締役会において、当社を株式交換完全親会社とし、当社の連結子会社である㈱日本海水(以下、「日本海水」という。)を株式交換完全子会社とする株式交換(以下、「本株式交換」という。)を行うことを決議し、同日付で両社の間で株式交換契約を締結しました。
(1) 本株式交換の目的
当社グループは、空気や水といった様々な地球資源を活用した事業を展開し、人々の暮らしや産業の発展に貢献しております。日本海水は、国内トップシェアを有する「塩」のリーディングカンパニーとして、業務用塩・家庭用塩の製造・販売を行うほか、環境、食品、電力、都市インフラ(水処理・下水管更生)などの海水から派生した多様な事業を展開しており、工業用マグネシウムの製造・販売を行うタテホ化学工業㈱と合わせて、当社グループの海水事業を構成しております。
当社は、既に日本海水を連結子会社としておりますが、今後、海水由来の新製品開発や新事業創出の取り組みを加速するとともに、当社グループが展開する様々な事業との一体運営によるグループ経営の機動性を更に高めるため、本株式交換により日本海水を当社の完全子会社とすることといたしました。
(2) 本株式交換の要旨
① 本株式交換の方法
本株式交換は、当社を株式交換完全親会社、日本海水を株式交換完全子会社とする株式交換であります。なお、本株式交換は、当社においては会社法第796条第2項に基づく簡易株式交換の手続により当社の株主総会の決議による承認を受けることなく行い、また、日本海水においては、2021年3月17日に、会社法第319条に基づく書面決議の方法により株主総会の承認を受けた上で、2021年3月26日を効力発生日として行っております。
② 本株式交換に係る割当ての内容
(注) 1 日本海水の普通株式1株に対して、当社普通株式0.63株を割当交付します。ただし、当社が保有する日本海水の普通株式 14,916,018株については、本株式交換による株式の割当ては行いません。また、割当交付する当社普通株式には、当社が保有する自己株式(従業員持株会信託が保有する当社普通株式を除く)と別途当社普通株式の取得において取得した自己株式 1,620,400株を充当しており、新株式の発行は行っておりません。
2 本株式交換により交付する株式に1株に満たない端数がある場合、当社は会社法第234条その他の関連法令の規定に基づき処理を行っております。
③ 本株式交換に伴う新株予約権及び新株予約権付社債に関する取扱い
日本海水が発行している新株予約権及び新株予約権付社債はありません。
④ 本株式交換に係る割当ての内容の算定根拠
当社及び日本海水は、本株式交換に用いられる上記②「本株式交換に係る割当ての内容」に記載の本株式交換比率の算定に当たって、公正性・妥当性を確保するため、両社から独立した第三者算定機関であるF&Link㈱(以下、「F&Link」という。)に株式交換比率の算定を依頼いたしました。
F&Linkは、当社及び日本海水の財務情報及び本株式交換の諸条件を分析した上で、当社については株式が株式会社東京証券取引所及び金融商品会員制法人札幌証券取引所に上場しており、市場株価が存在することから市場株価法を、非上場会社である日本海水については将来の事業活動の状況を評価に反映するためディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法による算定を行い、さらに、類似会社比較による株式価値の類推が可能であることから類似会社比較法を採用して、株式交換比率の算定を行いました。
(3) 株式交換完全親会社となる会社の概要
資本金 55,855百万円(2021年3月31日現在)
事業の内容 産業ガス、ケミカル、医療、エネルギー、農業・食品関連等の製品の製造及び販売
当連結会計年度の研究開発活動につきましては、2020年3月に技術戦略センターを設置し、グループに点在する幅広い領域に跨る技術を横串で管理し、擦合せ統合による新たな価値の創出に取り組んでまいりました。事業成長に向けた投資効率の最大化を目指し、「地域と密着し、脱炭素社会の実現に貢献する環境システム事業領域」、「行政と連携し、社会課題を解決するウェルネス事業領域」を2つの柱として研究開発戦略を策定しております。これまでに培ったコア技術を日々進化させると共に、様々な分野へ応用展開すること、オープンイノベーションによる積極的な技術導入を行うことで、事業の継続的な成長と社会に貢献できる成果の結実に取り組んでまいります。
セグメントごとの研究開発活動について、以下に示します。
(産業ガス関連事業)
基幹事業である産業ガス事業においては、ガス製造プロセスの高度化とコスト削減、ガスを利用するアプリケーション開発について、成果を積み上げております。
・世界最高水準の効率で、都市ガスから水素ガスを発生させる次世代型水素ガス発生装置「VHR」を開発、現在までに4機の運用を開始しております。今後も鉄鋼・半導体などの底堅い水素需要に対して拡販を推進し、省エネによる環境貢献を進めてまいります。
・2050年までにCO2排出量実質ゼロ、2030年までに2013年と比べて46%削減するという政府方針に沿い、CO2回収・利活用技術の開発に取り組んでおります。当社がこれまで培ってきたガス分離技術ならびにガスアプリケーションを起点に、産・官・学と連携してCO2回収・利用技術の社会実装に向けた研究開発活動を行っております。
(ケミカル関連事業)
5Gの伸張に伴い、大量データの通信・処理・蓄積に関するニーズが高まり、電子材料にも、より高度な機能が要求されております。研究開発活動もこの動きに連動させ、電子材料領域における技術シナジー発現/差別化商品創出に注力、半導体前工程から後工程までの幅広い領域で、お客様の高機能化ニーズに対応しております。
・HDD、シリコンウエハなどの精密研磨に使用されるパッド材に関しては、樹脂技術・プロセス技術を高めることにより、お客様の研磨精度向上に対する恒常的なご要請にお応えしております。
・高速通信達成に向けた低誘電ポリイミドのニーズも高いことから、改質ポリイミド用の原料開発を強化し、ユーザーにサンプル供給を開始しました。また、お客様からの新たな化合物のご要望も多く、製品ラインアップの拡充を推進しております。
・ビスマレイミド系樹脂は、高耐熱・低線膨張係数の特性を有し、パッケージ基板分野を中心に市場展開を進めております。この基本性能に加え、低誘電特性に優れた材料の開発も進め、顧客へのサンプル提供を開始いたしました。
・回路基板用のレジスト材料は、微細配線化・多層化に対応した高機能化が要望されており、それに応え得るキノン系光増感剤の需要が拡大しております。新製造設備も完工し、万全の供給体制を整えました。
・また、当社独自材料であるナフトキノン類の持つ光機能、レドックス機能等をさらに引き出すべく、大学等との共同研究も継続的に進めており、その一環として、蓄電デバイス向けの材料開発も継続的に推進しております。
(医療関連事業)
医療事業においては、高度化する先端医療に向けた機器製品の開発や、高齢化社会に対応したサービスの開発を推進しております。
・2020年5月に発売した遠隔医療支援システム「NOALON」が、日刊工業新聞社主催の十大新製品賞において日本力賞を受賞しました。新型コロナウイルス感染症が猛威を奮う中において、専門医が患者の容体をリアルタイムに確認できるため、医療従事者の感染リスク低減に寄与しております。高解像度化やAIを用いた自動診断技術等を活用することで、更なる利便性の向上を進めてまいります。
・当社グループ会社のアエラスバイオ㈱では、歯髄幹細胞を不要歯から採取し、培養、保管する歯髄幹細胞バンクを事業化いたしました。保管された歯髄幹細胞は、将来、歯髄再生治療に使用することができます。お客様の利便性向上のため、乳歯や2親等以内の親族から採取した幹細胞による治療の実現に向け、研究開発を進めております。
・国内消防機関に納入する空気呼吸器の面体(マスク)広視野化による機能性向上に取り組んでおります。また、水損被害を防止し、安全で早期放水が可能な新型の真空スプリンクラーシステムを開発しております。
(エネルギー関連事業)
2030年までに2013年と比べてCO2を46%削減するという政府方針の実現に向けて、CO2排出量の少ないLNG関連技術について、産・官・学との連携を通じて、技術の蓄積、洗練、高度化を推進しております。
・小型LNG供給設備である「Vサテライト」をさらに小型化した「マイクロサテライト」を開発しております。「Vサテライト」と合わせて、お客様のニーズに合わせたLNG供給体制を整え、LNGへの燃料転換を通じてCO2排出量の削減に貢献してまいります。
・家畜糞尿などに由来するバイオガスを活用した新たなバイオエネルギーサプライチェーンの構築に取り組んでおります。自治体と連携し、環境負荷の少ない地産地消エネルギー社会の実現に貢献してまいります。
(農業・食品関連事業)
農作物の保存技術や食品・飲料の品質向上、機能性向上に向けた開発を推進しております。
・農業・食品のイノベーションを創出する技術開発を目的として、2018年6月より室蘭工業大学と「包括的連携研究協力等に関する協定」を締結し、食品の機能性や農作物の栽培技術に関する研究に継続して取り組んでおります。
・ロボットやドローンを活用したスマート農業による農業生産性の向上及び品質向上を目的として、2020年12月に東京大学と社会連携研究部門を設置いたしました。国内外の農業生産性を高め、高品質な農産物及び食品の安定的、持続的な供給に貢献してまいります。
(海水関連事業)
「海が由来」をキーワードに海水から製塩を行う塩事業を柱として、多角化により様々な技術開発・事業展開を行っております。
・環境事業
海水中のホウ素除去技術から生まれた希土類吸着剤「READシリーズ」では凝集剤(READ-CX)まで展開してまいりました。READ-CXは従来法と比較して薬剤使用量・汚泥発生量が少ないコストメリットが大きい商品であります。国内だけではなく、環境規制強化が進んでいる東南アジア地域へ拡販するため、現行品に改良を加え、海外展開を進めております。
・都市インフラ事業
下水道処理場に設置される水処理プラント設備の開発・設計から施工・監理まで行っており、メンテナンスフリーで省エネ・省コストを実現した新型の集砂装置を開発しました。また、下水管更生において耐久性向上に加え施工時間の短縮を図った管更生材料を開発するなど、顧客の要求に応え、性能向上及び環境に配慮した製品開発を行っております。
・マグネシア事業
低温の工場排熱の蓄熱・利用を可能とする水酸化マグネシウム系化学蓄熱材(CHARGEMAG®)を開発しました。また、今後さらなる高集積化や小型化が進む電子機器の放熱に対応する熱伝導性フィラー(COOLMAG®)を開発するなど、地球環境に貢献する商品や最新技術・製品に利用可能な材料の開発に取り組んでおります。今後、実用化に向けてさらなる開発に取り組んでまいります。
(その他の事業)
・SiC事業
電源用パワートランジスタや5Gの普及に向けて需要が高まる高周波トランジスタ向けの素材事業の開拓に取り組みつつあります。当社では、低コスト且つ高性能なGaNトランジスタを製造できるGaN積層構造の量産化に世界で初めて成功しました。これをもとに、半導体の下地基板から本構造の成長までを一貫して行う「GaN on SiC on Si基板」のパイロット生産を準備しております。
・エアゾール事業
人体用品から家庭用品、塗料、工業・自動車用品まで多種多様なお客様のニーズに対応した研究開発を推進しております。また、化粧品受託業界にも本格参入し、高品質・高付加価値な化粧品の開発にも取り組んでおります。
なお、当連結会計年度の研究開発費用の総額は