文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループの経営理念は、次のとおりであります。
「創業者精神を持って、空気、水、そして地球にかかわる事業の創造と発展に、英知を結集する」
当社グループの事業の原点は、社名に冠した「空気」と「水」であり、このかけがえのない地球の資源を活かして事業を創出し、社会や人々の暮らしに貢献していくことが当社グループの使命であります。当社グループは、この経営理念の下、目まぐるしく変化を続ける経営環境の中でグループの総合力を発揮し、社会の発展に役立つ多種多様な製品・サービスを提供する企業であり続けることを目指しております。
(2) 中長期的な経営戦略
2030年に向けた目指すべき経営の方向性として、「地球の恵みを、社会の望みに。」をパーパスと定義した上で、新たに「地球環境」と「ウェルネス」の2つの軸を設定しました。今後当社グループは、グループの強みである事業・技術・人材の多様性を活かし、シナジーを創出することで、経済価値と社会価値の両面から企業価値を高め、持続可能な成長を目指していきます。

(3) 経営環境、目標とする経営指標及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナの感染拡大状況が依然として社会経済活動に影響を及ぼすとともに、ロシアのウクライナ侵攻により国際情勢の不安定感が広がり、エネルギー価格や原材料、物流コストの高止まりに加え、円安基調の継続やサプライチェーンの混乱など、不透明な経済環境が当面の間継続すると見込まれます。
このような事業環境のもと、将来にわたって持続的な企業成長を実現するため、当社グループが展開する多様な事業領域と、気候変動影響や超高齢化社会の進展などの世界的な社会課題を踏まえ、2030年に向けた事業構想として、「地球環境」と「ウェルネス(健やかな暮らし)」という2つの成長軸を定めました。
この2つを基軸として、「国内は収益力強化、海外は成長を牽引」という成長戦略を着実に実行し、これまで以上にダイナミックな企業成長を目指します。
成長戦略
(国内戦略)
国内事業においては3つの地域事業会社が要となり、顧客に密着した全国各地の強固な事業基盤と、当社グループが展開する多種多様な商品・サービスの総合力を駆使し、グループシナジーを最大限に発揮します。その結果、既存事業の深耕による収益力の強化と、地域の課題解決に貢献する新規事業を創出します。
地元の自治体や企業、地域住民のニーズをくみ取り、新たなソリューションを提供することで、地域を支え、地域とともに生きる会社を目指します。
(海外戦略)
海外事業ではインドと北米を重点エリアに設定し、三井物産株式会社とのアライアンスも活かしながら、技術やビジネスモデルで強みを発揮できる産業ガスおよび関連機器・エンジニアリング分野で基盤を強化します。
インドにおいては、経済発展に伴う旺盛な鉄鋼需要を背景に、製鉄所向け大型オンサイトガス供給事業を中核とする成長戦略を推進するとともに、ガス製造プラント・充填所などの拠点を拡充し、産業ガスおよび医療用酸素の供給事業も強化します。
北米においては、産業ガスの貯蔵・輸送に係る低温機器の製造・販売やエンジニアリング事業のほか、現地ガスディーラーと連携した産業ガス供給事業への展開を視野に入れた取り組みを進めます。また、脱炭素社会に向けて水素需要が拡大しており、水素関連事業の拡大にも注力します。
グループ一体経営の推進と全体最適の実現
当社グループは、本年4月1日付をもって全社的な組織改革を実施し、「地球環境」と「ウェルネス」の2つの成長軸に沿って、当社グループの多様な事業領域を、4つのグループと12のユニットに再編するとともに、当社とグループ会社群がより一体となった経営体制に移行しました。
(新たな成長に向けた事業組織の構築)
4つのグループは、特に技術によるイノベーションを基軸とした事業間シナジーを追求し、12のユニットは、傘下の事業会社群に関わる成長戦略の策定と経営資源の最適配分を行い、当社と事業会社群が一体となった「事業ユニット経営」を推進し、収益力の強化と新規事業の創出を推し進めます。

(グループ戦略機能を高めた強いコーポレート組織の構築)
コーポレート部門においては、グループ全体の経営戦略策定と経営資源の最適配分機能を強化し、新規事業の育成、データ経営の推進、事業のDX推進、物流改革、人材活用・育成などの観点から事業部門を主導し、事業の変革と成長を推進します。
(技術統括部門によるグループ技術力の向上)
この度の組織改革に先行して設置したグループテクノロジーセンターとエンジニアリングセンターは、グループの研究開発とエンジニアリングの技術資源に横串を入れ一元化することで技術力の向上を図り、新規事業の創出と海外展開の拡大に向けた専門人材の育成を推進します。
サステナブル経営の推進とESGの取り組みの加速
当社グループの事業活動は、空気や水などの地球に存在する資源を源泉としており、地球環境に対して持続可能なものでなくてはなりません。加えて、社会環境が大きく変化する中、事業活動を通じて提供する社会価値をより重視したサステナブル経営が不可欠であり、当社はその推進により、当社のサステナブルビジョンである「地球、社会との共生による循環型社会の実現」を目指します。
ESGの取り組みとして、環境面では、脱炭素社会の実現に不可欠なCO2排出量削減に向けた取り組みを加速します。
当社グループは、2030年度には2020年度対比でCO2排出量を30%削減する目標を設定するとともに、2050年にはCO2排出量を実質ネットゼロとするカーボンニュートラルの実現を目指します。そのために、設備の更新や生産性の改善などによる省エネ対策を講じながら、再生可能電力への切り替えを検討するほか、CO2回収やバイオガスエネルギーなどの技術開発や事業実証も進めます。また2021年8月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しており、その枠組みに沿った形で情報開示を進めます。
社会面では、特にHR(企業における人的資源の活用)の取り組みを強化し、これまで以上に自主自立の従業員が育つ風土を醸成します。事業戦略と人事戦略は事業の両輪であり、新しい事業や組織を支えるため、グループ人材の流動化や社員の自立的なキャリア形成を促進する人事制度改革にも取り組みます。また、引き続き、若手管理職の早期登用、女性管理職やグローバル人材の増加といったダイバーシティにより、組織力の向上に努めます。
ガバナンス面においては、独立社外役員が構成員の過半数を占める指名・報酬委員会の設置を予定するなど取締役会の実効性を一層向上させる取り組みを進めます。また、当社グループの海外展開にあわせて、海外子会社におけるグループガバナンスの強化を図ります。
なお、各セグメントの対処すべき課題は、次のとおりであります。
国内産業ガス関連事業においては、国内における各種コストの上昇や大規模自然災害の発生が増加する中での安定供給体制の構築が課題となっております。そのような事業環境の中、事業の拡大と収益確保を図るため、当社グループでは、その課題に対して、継続して推進してきた高効率小型液化酸素・窒素製造装置「VSU」と貯蔵・物流拠点の全国分散配置による安定供給インフラネットワークの最大活用を進めるとともに、ガス充填所の新設や更新など製造・供給インフラの拡充により販売の拡大を図っております。なお、足元では、産業ガスの製造に必要となる電力のコスト上昇が収益を圧迫する要因となるため、価格改定を行っていきます。また、さらなる拡大が期待される半導体市場を中心としたエレクトロニクス関連事業と、インドを中心とした海外での産業ガス関連事業を今後の成長領域として位置付け、事業ポートフォリオの変革を進めております。国内の半導体メーカーの増産・増設に対応したガス供給及び関連機器・工事の販売拡大、インドにおいては、ガス製造プラントのエンジニアリング技術を基軸に、鉄鋼向けオンサイト事業を拡大するとともに、産業・医療用ガスの外販事業も拡充し、事業基盤の強化を図っております。
ケミカル関連事業においては、電子材料を中心とした機能化学品事業への構造転換を進めております。その中核的な取り組みとして、2021年10月に当社の電材開発事業部と当社グループの川崎化成工業㈱ならびに大東化学㈱を統合し、新会社「エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル」を発足させました。同社を中心として、基礎化学品、食品化学、医農薬中間体を含む化学品事業全般において、超スマート社会・循環型社会に向けた需要の変化を先取りすべく、開発体制の強化と生産・物流体制の統合を図り、さらなる成長を目指しております。
医療関連事業においては、医療ガスや医療機器を中心とした「高度医療」分野から、デンタルや衛生材料といった「くらしの医療」分野に至るまで、多様な事業領域による総合力を活かした新しい医療の形を追求しております。急性期病院の減少や医療費削減の圧力等により、医療用ガスや医療機器事業が大きく拡大することは見込みにくい状況でありますが、在宅医療や急性期治療後の回復期分野など市場成長が見込まれる事業領域において、地域事業のネットワークと多様な商材・技術を活用し、さらなる事業拡大を図っていきます。また、コロナ禍を経て、医療機関における感染防止対策のニーズが高まるとともに、社会全体でマスクの着用や手指消毒などの習慣が定着化しました。衛生材料や口腔ケア製品などの商材の充実化を図り、拡大した需要に対応していきます。さらに、新規事業として、歯髄幹細胞を活用した歯髄再生事業についても、事業化に向けて引き続き取り組んでまいります。
エネルギー関連事業においては、国内のLPガス事業は中長期的にLPG単位消費量の低下と配送業務にかかわる人材不足への対応を課題としており、IoTを活用した自動検針システム等を導入することで、配送や検針業務の効率化とともに、より顧客が安心できるサービスを提供していきます。また、脱炭素・低炭素化に向けた社会ニーズが高まる中、LNG関連機器の販売や液化バイオメタンなどの新たなエネルギー供給モデルの確立に注力していきます。
さらに、人口増加・経済成長の著しいASEANでは今後も市場の拡大が見込まれており、ベトナムにおいては、日本式の安全性に優れた供給技術を現地に適した方法で普及させることで、LPガス事故の減少と安全な生活の実現に貢献していきます。
農業・食品関連事業においては、新型コロナの影響で外食や観光産業の停滞が続いているため、業務用冷凍・加工食品の本格的な需要回復が未だ道半ばの状況である一方、宅配、オンライン販売のように外食から中食への需要の転換が急速に進みました。こうした需要の変化とそれに伴う顧客の多様なニーズに応えるため、事業領域の多様性と商品開発力を活かして、事業の拡大を進めてまいります。農産加工分野では、相次ぐ天候不順や農業の担い手不足を背景に、原料野菜の安定調達力を高めることが重要な課題となっており、産地の分散化や契約栽培農家との関係強化を進めております。また、足元の事業環境としては、原材料のコストが上昇しているため、生産・物流面のさらなる効率化とともに、製品価格の改定に取り組んでいきます。
物流関連事業においては、引き続き、業界全般におけるドライバー不足と人件費上昇という課題がある中、今後も市場成長が見込める低温物流領域を中心に、自社物流拠点ネットワークの拡充、倉庫内でのICTやAI導入による作業の省力化と合理化を図り、荷物の小ロット化などの多種多様なニーズに応えられる体制づくりを推進しております。また、足元の事業環境としては、軽油価格の上昇が収益を圧迫する要因となっているため、そのコスト上昇に対応した料金適正化に取り組んでいきます。
海水関連事業においては、人口減少や減塩志向を背景に国内の塩需要が減少する中、技術開発力の強化と海水事業のさらなる深耕、環境分野での社会貢献等を喫緊の課題として取り組んでおり、老朽化した上下水道管の更新などを通じて、人の生活に不可欠な水の安全・衛生を守るための事業を引き続き展開していきます。また、製塩工程において必要となる熱源の一部に石炭を利用しておりますが、昨年後半から石炭価格が上昇し収益を圧迫する要因となっているため、塩製品の価格改定に取り組んでいます。
当社グループの事業展開上、事業の状況、経理の状況等に変動を与え、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 当社のリスクマネジメント体制
当社グループの事業活動において特に重要なリスクであると認識しているコンプライアンス、保安防災及び環境保全に係るリスクについては、代表取締役の直轄組織である「CSR推進室コンプライアンスグループ」がその統括部門として、当社及び子会社を横断的に管理する体制としております。
情報セキュリティ、品質管理、知的財産及び契約等に係る個別リスクについては、それぞれの担当部門において、社内規程の制定、マニュアルの作成並びに教育研修の実施などを行うとともに、事前審査や決裁制度を通じて当該リスクを管理する体制としております。
なお、事業活動への影響が大きいと想定されるリスクが発生した場合には、「危機管理規程」に基づき、直ちに危機管理委員会を社内に設置し、発生したリスクに対し迅速かつ適切に対処する体制を整えております。

(2) 事業等のリスク
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の我が国経済は、新型コロナウイルス(以下、「新型コロナ」という。)の感染拡大防止対策と社会経済活動の併存が常態化したことに加え、本年2月にはロシアのウクライナ侵攻により国際情勢の不安定感が広がり、予断を許さない状況が継続いたしました。国内製造業は、輸出関連産業を中心に総じて回復基調で推移しましたが、年度後半には、世界規模でのサプライチェーンの停滞や資源価格の高騰が起こり、企業業績を押し下げる要因となりました。また、個人消費は、一部で持ち直しの動きが見られたものの、依然として新型コロナが消費者の行動心理に影響を及ぼし、年度を通じて低調に推移いたしました。
このように外部環境が大きく変化する中においても、当社グループは、多様な事業領域から成る安定した収益基盤をベースに、さらなる成長に向けた構造改革や成長戦略を着実に実行してまいりました。
産業ガス関連事業においては、高い成長が見込まれるエレクトロニクス分野とインドにおける海外事業の拡大を図り、事業ポートフォリオの変革を進めたほか、ケミカル、医療、農業・食品関連事業においては、グループ会社の統合再編をはじめとした事業構造改革に取り組み、生産や販売体制等の全体最適化と今後の事業成長に向けた基盤整備を推進しました。また、新型コロナを契機に需要が拡大した感染症対策分野やエレクトロニクス分野はもとより、エネルギー、食品、物流などの各事業においても「ウィズコロナ」による市場の変化を捉えた取り組みが、持続的な事業成長の原動力となりました。さらに、カーボンニュートラルに向けた各種の実証事業やコロナ禍における医療提供体制の充実化など、社会課題に応えるソリューションの拡充に積極的に取り組みました。
また、当連結会計年度は、2019年度から2021年度までの3年間を実行期間とする中期経営計画「NEXT-2020 Final」の最終年度であり、その達成に向けた取り組みとともに、次世代の成長を見据えたグループ経営基盤の強化に注力しました。ガス製造・エンジニアリング・技術開発部門の組織改革や管理部門の体制強化を進めたほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により全社的な業務効率化を図り、収益基盤の強靭化が進展いたしました。さらに、中長期的な企業成長の牽引を海外に求めるグローバル戦略のもと、三井物産株式会社との戦略的提携による協業を開始するとともに、インド・北米における産業ガス・エンジニアリング分野を中心に事業推進体制の強化に取り組みました。これらの諸施策に加え、国内事業を牽引する中核会社として2020年10月に発足した地域事業会社3社は、コロナ禍から回復した需要の取り込みと統合再編による収益力の向上に取り組むとともに、農業・食品分野や環境物流分野のM&Aを実施し、地域のニーズに対応した新事業の拡大を進めました。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの売上収益は8,886億6千8百万円(前期比110.2%)、営業利益は651億7千4百万円(同127.2%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は432億1千4百万円(同157.9%)となり、全てのセグメントで売上収益、営業利益ともに前連結会計年度を上回り、過去最高を更新いたしました。また、売上高営業利益率も7.3%となり、全社的な業務効率化や事業の構造改革を背景に収益体質の向上が進みました。
また、中期経営計画「NEXT-2020 Final」の最終年度における業績目標との比較では、売上収益1兆円は未達となったものの、営業利益600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益370億円の目標値を大幅に上回る結果となりました。
セグメントの業績及び概況につきましては、次のとおりであります。
<産業ガス関連事業>
当セグメントの売上収益は1,945億6千8百万円(前期比104.8%)、営業利益は215億5千8百万円(同103.3%)となりました。
事業全体の業績としては、エレクトロニクス向けのガス供給や特殊ケミカル・機器販売が好調に推移したことに加え、インドでの産業ガス事業が高水準に推移したことで事業全体の収益力が底上げされ、業績向上に寄与しました。さらに、鉄鋼向けオンサイトガス供給に加え、国内製造業の生産活動が総じて回復基調で推移したことから各種産業ガスの需要も総じて回復し、順調に推移しました。
ガス事業では、エレクトロニクス向けガス供給が、主要顧客である国内半導体メーカーの設備投資と高稼働を背景に、好調に推移しました。鉄鋼向けオンサイトガス供給は、国内製造業の生産回復と鋼材輸出に伴う粗鋼生産の増加により、ガス販売数量も増加しました。ローリー・シリンダーガス供給は、電子部品、化学、機械向けなどが堅調に推移し、前年度を上回る販売数量となりましたが、年度後半より電力料金の高騰により産業ガスの製造コストが増加した影響を受けました。炭酸ガスは、宅配向けドライアイス需要の増加を受け、順調に推移しました。
海外事業は、主要エリアであるインドにおいて、粗鋼増産に伴い鉄鋼向けオンサイトガス供給が高稼働を継続し、順調に推移しました。同時に、同国内の製造業が年度を通じて堅調に推移するとともに、年度前半に新型コロナの感染拡大による医療用酸素の逼迫化に対応したことで、ローリー・シリンダーによる産業・医療用ガスの外販事業も順調に推移しました。
機器・工事事業は、半導体メーカーの増産・増設投資に伴う周辺需要の獲得に注力し、関連工事や特殊ケミカル供給機器、ガス精製装置に加え、半導体製造装置向け熱制御機器などの販売が大幅に拡大しました。
<ケミカル関連事業>
当セグメントの売上収益は391億2千9百万円(前期比117.3%)、営業利益は35億2千9百万円(同177.2%)となりました。
当セグメントにおいては、2021年10月に事業統合により発足したエア・ウォーター・パフォーマンスケミカル㈱を主体に、電子材料を中核とした機能化学品事業への構造転換を進め、生産体制の効率化と開発・販売面の強化に取り組みました。事業全体の業績としては、新型コロナを契機として需要が急拡大した電子材料や精密研磨パッドの販売が増加したことに加え、基礎化学品分野の市況が前年度に比べ大幅に上昇したため、好調に推移しました。
エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル㈱の電子材料事業は、旺盛なエレクトロニクス関連需要が継続したことで、半導体封止材用の熱硬化性樹脂や機能性モノマーの販売が好調に推移しました。また、電子材料用途を中心に受託合成事業が拡大するとともに、過年度より進めてきた事業全体にわたる生産体制の最適化により収益改善が進展しました。基礎化学品事業は、原油価格の上昇に伴い、有機酸などの製品市況が高水準に推移し、好調に推移しました。機能材料事業は、農薬向けにキノン系製品の販売が順調に推移しました。
その他事業では、㈱プリンテックの高機能回路製品の販売が産業用ロボット向けに堅調だったことに加え、㈱FILWELの主力製品である精密研磨パッドの販売がデータセンター市場の伸展によるハードディスク需要の高まりを背景に、好調に推移しました。
<医療関連事業>
当セグメントの売上収益は1,951億7千万円(前期比104.7%)、営業利益は118億5千7百万円(同112.9%)となりました。
事業全体の業績としては、新型コロナの影響を大きく受けた前年度に対して、主力である病院向けビジネスの事業環境が年度を通じて回復基調で推移したことに加え、新型コロナをめぐる治療や感染防止対策、ワクチン接種といった医療ニーズの変化に対応し、医療現場の課題解決に資する各種提案にグループ総合力を発揮して取り組んだ結果、順調に推移しました。
設備事業は、新型コロナの影響で一時控えられていた手術室など病院設備の改修工事・保守点検が復調し、堅調に推移しました。医療サービス事業は、受託滅菌分野における新規顧客の獲得やSPD(病院物品物流管理)分野における資材調達の効率化により収益改善が進展しました。医療ガス事業は、手術件数の回復や新型コロナの治療に関わる医療用酸素の需要が増加するとともに、在宅医療事業も自治体向けに酸素濃縮装置のリース台数が増加しました。医療機器事業は、一酸化窒素吸入療法の症例数が増加しました。
衛生材料事業は、前年度のような特需はなくなったものの、マスクや手指消毒剤など定着化した感染対策製品の需要を取り込み、底堅く推移しました。その他の事業では、注射針事業は、ワクチン接種用注射針の販売が増加し、堅調に推移しました。また、デンタル分野も持分法適用会社である㈱歯愛メディカルにおいて感染対策製品の需要が継続するなどし、堅調に推移しました。
<エネルギー関連事業>
当セグメントの売上収益は615億9千4百万円(前期比116.0%)、営業利益は47億7千3百万円(同104.7%)となりました。
事業全体の業績としては、LPガスの販売単価が輸入価格の指標となるCP価格に連動して上昇を続け、灯油も同様に原油高を受け需要期の冬場に販売単価が上昇した結果、売上収益が拡大しました。また、利益面でも、輸入価格の上昇を適切に販売価格へ転嫁するとともに、IoTを活用した配送効率化など業務プロセスの高度化が寄与し、順調に推移しました。
LPガス事業は、巣ごもり需要が減少したことで家庭用の販売数量は微減となりましたが、工業用需要の回復と新規拡販により、LPガス全体の販売数量は増加しました。灯油は、価格上昇により消費者の節約志向が高まった影響がありましたが、適切な販売価格の対応と仕入調達の合理化を進めた結果、堅調に推移しました。機器・工事は、半導体不足に起因するガス給湯機器の品薄による影響を受けましたが、北海道の気候に対応したガレージ製品の販売が堅調に推移しました。ベトナムでのLPガス卸売事業は、年度後半からロックダウンによる影響で充填所の操業が制限されたことから、販売数量が減少しました。
天然ガス関連事業は、政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」を受け、顧客の脱炭素意識の高まりから燃料転換や供給機器の需要が増加し、北海道におけるLNG供給事業のほか、小規模LNG供給機器「Vサテライト」やLNGタンクローリーの販売が順調に推移しました。
<農業・食品関連事業>
当セグメントの売上収益は1,394億6千7百万円(前期比105.2%)、営業利益は57億1千7百万円(同141.9%)となりました。
事業全体の業績としては、飲料、スイーツ分野を中心に販売が回復するとともに、コロナ禍によって変化した「食」のニーズに対応し、市販用の商品開発と拡販に注力したことで、売上収益が拡大しました。また、製造・開発・販売面でのシナジー創出を目的として、グループ会社の統合再編により2021年10月に発足したエア・ウォーターアグリ&フーズ㈱が中心となり、生産・管理の効率化による収益改善に取り組みました。
農産・加工品事業では、ハム・デリカ分野は、市販用調理加工品の新製品が大手量販店に採用されるなど、ライフスタイルの変化に対応した商品開発に注力し、堅調に推移しました。スイーツ分野は、かねてより取り組んできた生産・物流面の収益改善が進展するとともに、巣ごもり需要や消費期限の長期化に対応した商品開発を通じて、量販店やコンビニエンスストア向けの販売が好調に推移しました。農産・加工分野は、天候不順により北海道産の農産物の収穫量が減少した影響を受けました。また、2021年11月より関西地区を主要エリアとして農産物直売所「産直市場よってって」を運営する㈱プラスを新規連結するとともに、子会社における土地売却益を計上しております。
飲料事業は、健康志向を背景に拡大した野菜系飲料や植物性ミルク飲料の生産受託が好調だったことに加え、2020年に導入した北海道・恵庭工場のPETボトル充填ラインが高稼働を継続したことも寄与し、前年度を上回りました。
その他の事業では、青果小売分野は、百貨店を中心とした店舗への来客数が回復せず、前年度並みとなりました。一方、農業機械分野は、更新やメンテナンスなどの底堅い需要を背景に堅調に推移しました。
<物流関連事業>
当セグメントの売上収益は584億4千1百万円(前期比109.7%)、営業利益は31億2千1百万円(同110.2%)となりました。
事業全体の業績としては、年度後半を中心に軽油価格の上昇や車体製造事業における車両の調達遅れによる影響を受けましたが、新型コロナを契機として需要が拡大した低温物流分野が堅調に推移するとともに、関東と北海道地区において自社物流ネットワークの構築を進めてきた結果、EC(電子商取引)に関わる幹線輸送分野の増加など、一般貨物の荷扱量が拡大しました。また、北海道地区における環境物流分野のM&Aによる新規連結効果も寄与し、順調に推移しました。
運送事業は、北関東と北海道に建設した物流センターの機能を活かした受注活動によって、ネット通販の大型受託案件を獲得するとともに、製材や建材を中心にフェリー航路におけるシャーシ輸送が順調に推移し、幹線輸送の荷扱量が増加しました。また、食品を中心とした低温物流分野の需要拡大を背景に自社倉庫の稼働率が向上したほか、2021年8月にM&Aを実施した北海道を事業エリアとする㈱リプロワークにおいて医療系廃棄物の取扱量が増加したことも収益拡大に寄与しました。
食品物流を中心とする3PL事業は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア向けの荷扱量が堅調に推移するなか、コスト上昇を背景とした受託料金の適正化を継続しました。
トラック・ボディの設計・架装を行う車体事業は、トラック車両本体の生産遅れの影響を受け、前年度を下回りました。
<海水関連事業>
当セグメントの売上収益は461億7千5百万円(前期比112.7%)、営業利益は38億2千8百万円(同124.2%)となりました。
当セグメントにおいては、業務用塩や電磁鋼板用マグネシアなどのトップシェア製品を起点に環境、電力、食品、都市インフラ(水処理・下水管更生)など、海水から派生した多様な事業を展開し、着実に収益力を高めてきました。事業全体の業績としては、環境事業、マグネシア事業における需要回復に加え、新たに赤穂第2木質バイオマス発電所が稼働したことで順調に推移しました。
塩事業は、業務用塩や道路融雪用塩の販売が増加し、堅調に推移しました。なお、第4四半期よりエネルギーコストの上昇に対応するため、塩製品の価格改定を実施しました。また、食品事業は、環境に配慮したおにぎり用の海苔製品の販売がコンビニエンスストア向けに拡大しました。環境事業は、製鉄所向けを中心に水酸化マグネシウムの販売が回復、電力事業は、2021年1月より営業運転を開始した赤穂第2バイオマス発電所が安定稼働を継続し順調に推移しました。一方、都市インフラ事業は、水処理設備工事の着工遅れが生じた影響から前年度を下回りました。
マグネシア事業は、中国産原料の価格高騰や海上輸送費の上昇による影響を受けたものの、家電向けを中心としたヒーター用電融マグネシアや半導体需要の増加に伴うセラミック製品の販売数量が増加し、総じて順調に推移しました。
<その他の事業>
当セグメントの売上収益は1,541億1千9百万円(前期比127.0%)、営業利益は101億1千万円(同208.3%)となりました。
エアゾール事業は、巣ごもり需要を取り込んだ殺虫剤や模型用塗料の生産受託が高水準を継続しましたが、前年度に特需のあったアルコール除菌剤の減少と原油高を背景とした原材料価格の上昇を受けて、前年度並みの水準となりました。
情報電子材料事業は、世界的な半導体・電子部品の需要拡大を受けて、顧客における在庫積み増しの動きが継続し、国内外ともに好調に推移しました。
海外エンジニアリング事業における産業ガス関連機器分野は、液化水素タンクなど脱炭素化を背景とした設備機器の需要拡大に加え、炭酸ガス関連機器や水処理関連機器などの受注も増加し、順調に推移しました。高出力UPS分野は、メンテナンスをはじめとするサービス領域は堅調に推移したものの、主にアジアにおいて周辺国への移動や経済活動の制限が年度を通じて継続したため、進行中の工事遅延や新規プロジェクトの着工遅れが相次いだ影響を受けました。
電力事業は、2021年4月より営業運転を開始した福島県いわき市の木質バイオマス専焼発電所が安定稼働を継続したことから、売上・利益面ともに前年度を大幅に上回りました。
その他の事業は、半導体製造装置向けの製品販売が大幅に増加したOリング事業が、好調に推移しました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
製品のほとんどが見込生産であります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(2) 財政状態
(資産の部)
総資産は、有形固定資産の増加などにより前連結会計年度末に比べて952億1千万円増加し、1兆220億3千1百万円となりました。
負債は、社債及び借入金の増加などにより前連結会計年度末に比べて477億4千3百万円増加し、6,021億7千4百万円となりました。
資本は、その他の資本の構成要素の増加及び親会社の所有者に帰属する当期利益の積み上げなどにより前連結会計年度末に比べて474億6千7百万円増加し、4,198億5千7百万円となりました。
以上の結果、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度の1,584.86円から1,744.42円に増加しております。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度の38.6%から38.7%となりました。また、親会社所有者帰属持分当期利益率は前連結会計年度の7.9%から11.5%となっております。
(3)キャッシュ・フロー
① 資本政策の基本的な考え方
当連結会計年度は設備投資の厳選、投資有価証券の売却に取り組み、フリーキャッシュ・フローの創出を意識した経営を行ってまいりました。今後については、2010年度から取り組んでいる長期成長ビジョン「NEXT-2020 1兆円企業ビジョン」を早期に達成するために、投資効率や財務バランスを考慮しつつM&Aや設備投資等の成長投資を積極的に継続する考えでおります。必要資金については、自己資金と有利子負債を中心に賄ってまいります。また、これまで以上に運転資本の効率化を推進することで営業活動によるキャッシュ・フローの創出にも取り組んでまいります。
中長期的には積極投資の回収が進むことに加え、事業規模の拡大からより収益性・効率性を重視した成長戦略を想定しております。従って、配当性向は親会社所有者に帰属する当期利益の30%を目標とした上で、親会社所有者帰属持分比率の向上とネットD/Eレシオの改善を目指し、安定的にフリーキャッシュ・フローを稼げる収益構造を構築していきます。
② キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益及び減価償却費などから法人所得税等の支払などを差し引いた結果、前連結会計年度に比べ50億2千8百万円収入が減少し、715億7千2百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出の減少や投資有価証券の売却による収入が増加したものの、投資有価証券の取得による支出が増加したことにより、前連結会計年度に比べ4億5千5百万円支出額が増加し、531億5千4百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金による収入が減少したものの、社債の発行による収入の増加や借入の返済による支出が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べて142億6千6百万円支出額が減少し、66億2千2百万円の支出となりました。
(現金及び現金同等物)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ135億7千万円増加し、595億5千4百万円となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
「NEXT-2020 1兆円企業ビジョン」及び、その後のさらなる成長を実現するために必要な成長投資の資金については、事業で創出されるキャッシュ・フローを充当し、不足する分は銀行借入或いは社債発行による負債調達を基本としております。
手元資金については、資金効率を重視し事業継続に必要な適正水準を維持する方針としております。
なお、資金の機動的かつ安定的な調達に向け、取引銀行3行との間に総額200億円のシンジケーション方式によるコミットメントライン契約を締結しております。
成長投資については、経済活動の停滞が長期化した局面に備えて十分な財務の安全性を維持するため、今後のM&A投資及び設備投資は、事業環境の変化を慎重に見極めながら厳選していきます。
株主還元については、配当性向の目標を親会社所有者に帰属する当期利益の30%を目安としており、中長期的な成長のための戦略的投資等に必要な内部留保の充実に留意しつつ、将来にわたって業績に見合った安定的な配当を行うことを基本方針としております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、会計上の見積りに対する新型コロナの影響に関して、当社が現時点までに把握している情報をもとに、合理的であると判断した一定の前提に基づいております。翌連結会計年度の事業環境については、新型コロナウイルスの感染拡大状況は悪化と改善を繰り返し、依然として社会経済活動への影響は避けられない見込みであります。また、ウクライナ情勢による地政学的リスクの顕在化が世界経済全体に悪影響を及ぼしており、エネルギー価格や原材料、物流コストの高止まりに加え円安基調の継続やサプライチェーンの混乱など不透明な経済環境が当面の間継続することを仮定しております。その前提に基づき、当連結会計年度において会計上の見積りを行った結果、当連結会計年度における連結財務諸表に及ぼす影響は軽微なものと判断しております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要な会計方針」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
① 非金融資産の減損
当社グループは決算日において、棚卸資産及び繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、又は減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額としており、資産又は資金生成単位の回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、 当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。
これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
② 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。
当社グループは、将来の課税所得及び慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用及び計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(5) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、「革新=イノベーションの実行」を基本コンセプトに据えた3カ年中期経営計画「NEXT-2020 Final」において、下記の指標等を主要な目標として取り組んでおりました。
今後の見通しにつきましては、新型コロナの感染拡大状況は悪化と改善を繰り返し、依然として社会経済活動への影響は避けられない見込みであります。また、ウクライナ情勢による地政学的リスクの顕在化が世界経済全体に悪影響を及ぼしており、エネルギー価格や原材料、物流コストの高止まりに加え、円安基調の継続やサプライチェーンの混乱など、不透明な経済環境が当面の間継続することが見込まれます。
当社グループでは、こうした変化が激しく、先行き不透明な経済環境に対応しながら、将来にわたって持続的な企業成長を実現するため、当社グループが展開する多様な事業領域と、気候変動影響や超高齢化社会の進展などの世界的な社会課題を踏まえ、「地球環境」と「ウェルネス(健やかな暮らし)」という2つの成長軸を定めました。また、本年4月1日付をもって、この2つの成長軸に沿って、従来の社内カンパニーと事業部門を4つの事業グループと12の事業ユニットに再編するとともに、コーポレート部門のグループ経営戦略機能を強化するための組織改革を実施いたしました。過年度までに体制を整備した地域事業会社とエンジニアリング・技術開発部門も併せて、当社とグループ会社群がより一体となった経営体制に移行することによって、M&Aを通じて拡大したグループ経営資源の最適化を図るとともに、事業間の枠組みを越えたシナジーの創出に取り組み、さらなる収益力の強化と次世代の成長を牽引する新事業の創出を進めてまいります。また、事業戦略と人材戦略は両輪であることから、グループ人材の流動化や社員の自立的なキャリア形成を促進する人事制度改革にも取り組んでいきます。さらに、当社グループのサステナブルビジョンである「地球、社会との共生による循環型社会の実現」を目指し、さらなるCO2排出量の削減や地産地消による再生可能エネルギー供給モデルの確立などに取り組んでまいります。
今後の事業戦略としましては、「国内は収益力強化、海外は成長を牽引」を基本方針とし、引き続き積極的なM&Aや設備投資を実施してまいります。海外事業は、インド・北米における産業ガス供給事業を重点領域として、長年築き上げてきたガス供給に関わるエンジニアリング力や三井物産株式会社とのアライアンスを活かし、積極的な事業拡大を進めてまいります。国内事業は、新組織である4つの事業グループが技術によるイノベーションを基軸とした事業間シナジーを追求し、時代の潮流を捉えた新たな成長を目指すとともに、地域事業は、当社グループの多様な事業領域と地域に密着した事業基盤を活かし、地域の課題解決に貢献する新事業の創出とさらなる収益力の強化に取り組んでまいります。
また、事業全般において徹底した原価低減に取り組みつつ、電力料金の高騰により製造コストが増加した産業ガスをはじめ、ケミカル、物流、加工食品、塩、工業用マグネシアなどの事業領域においても、世界的な原材料や燃料価格の上昇に対応した価格改定の取り組みを遅滞なく実行してまいります。
今後の事業環境とこうした状況を踏まえ、次期の業績見通しにつきましては、売上収益1兆円、営業利益700億円、税引前利益680億円、親会社の所有者に帰属する当期利益440億円を見込んでおります。
※1 親会社所有者帰属持分当期利益率
(親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分(期首期末平均))
※2 資産合計税引前利益率 (税引前利益÷資産合計(期首期末平均))
※3 新しい中期経営計画につきましては、本年7月に当社ホームページ等において公表を予定しております。
該当事項はありません。
当連結会計年度の研究開発活動につきましては、2021年10月にグループテクノロジーセンターを設置し、グループに点在する幅広い領域に跨る技術を横串で管理し、擦合せ統合による新たな価値の創出に取り組んでまいりました。事業成長に向けた投資効率の最大化を目指し、「地域と密着し、脱炭素社会の実現に貢献する環境システム事業領域」、「行政と連携し、社会課題を解決するウェルネス事業領域」を2つの柱として研究開発戦略を策定しております。これまでに培ったコア技術を日々進化させると共に、様々な分野へ応用展開すること、オープンイノベーションによる積極的な技術導入を行うことで、事業の継続的な成長と社会に貢献できる成果の結実に取り組んでまいります。
セグメントごとの研究開発活動について、以下に示します。
(産業ガス関連事業)
基幹事業である産業ガス事業においては、ガス製造プロセスの高度化とコスト削減、ガスを利用するアプリケーション開発について、成果を積み上げております。
・世界最高水準の効率で、都市ガスから水素ガスを発生させる次世代型水素ガス発生装置「VHR」を開発、現在までに5機の運用を開始しております。今後も鉄鋼・半導体などの底堅い水素需要に対して拡販を推進し、省エネによる環境貢献を進めてまいります。
・2050年までにCO2排出量実質ゼロ、2030年までに2013年と比べて46%削減するという政府方針に沿って設定した当社グループ目標に沿い、CO2回収・利活用技術の開発に取り組んでおります。当社がこれまで培ってきたガス分離技術ならびにガスアプリケーションを起点に、産・官・学と連携してCO2回収・利用技術の社会実装に向けた研究開発活動を行っております。
(ケミカル関連事業)
デジタル化の急速な進展に伴い、データ量の爆発的増大が引き起こされております。これに対応するため、電子材料では、配線の微細化・多層化と高周波化への対応が求められており、ケミカル関連事業においては、半導体製造の前工程から後工程までの幅広い領域で、技術シナジー発現/差別化商品創出に注力、開発を推進しております。
・HDD、シリコンウエハなどの精密研磨に使用させるパッド材において、樹脂技術・プロセス技術の高度化・開発期間短縮のためAIも導入し、お客様の研磨精度向上に対する恒常的なご要請にお応えしております。
・回路基板用のレジスト材料は、微細配線化・多層化に対応した高機能化が要望されており、当社の合成技術と光重合評価技術により、お客様の光硬化条件を前提とした最適なキノン系光増感剤を積極的に提案しております。
・パッケージ基板分野では低誘電特性に優れ、かつ、高耐熱・低熱膨張の特性を有するビスマレイミド系樹脂の開発を進めており、ポリイミドに対しても低誘電性改質ポリイミド用の原料開発を強化しております。いずれも製品ラインアップの拡充とともにお客様へのサンプル提供を開始しております。
・さらに、カーボンニュートラル社会でますます重要となる蓄電デバイスについては、リチウムイオン電池高性能化のために電解液添加剤、負極用真球状ハードカーボンの材料開発を推進しております。
(医療関連事業)
医療事業においては、高度化する先端医療に向けた機器製品の開発や、高齢化社会に対応したサービスの開発を推進しております。
・遠隔・在宅医療のスタートアップ企業である㈱リモハブを新たにグループ会社化いたしました。病院から遠隔制御による管理・機器調整を行うことで、在宅で患者が安全に適切な心臓リハビリテーションができるオンライン管理型心臓リハビリシステムを開発しております。
・当社グループ会社のアエラスバイオ㈱では、歯髄幹細胞を不要歯から採取し、培養、保管する歯髄幹細胞バンクを事業化いたしました。保管された歯髄幹細胞は、将来、歯髄再生治療に使用することができます。バンク事業に賛同いただける歯科医院及び歯髄再生治療を行う歯科医院との提携を拡大し、より多くの方にご活用いただける体制を築いてまいります。並行して、乳歯や2親等以内の親族から採取した幹細胞による治療や象牙質再生の実施に向け、研究開発を進めております。
・誤作動等による水損被害を抑制し、配管設備の長寿命化を図る新型の乾式真空スプリンクラーシステムの開発において、日本消防検定協会の型式承認を取得しました。事業譲受した湿式真空システムと併せ、安全性に優れた商品の提供を進めております。
(エネルギー関連事業)
2030年までに2013年と比べてCO2を46%削減するという政府方針の実現に向けて、CO2排出量の少ないエネルギー関連技術について、産・官・学との連携を通じて、技術の蓄積、洗練、高度化を推進しております。
・沖縄エリアの水素社会構築及び脱炭素、産業振興を一体的に実現する「吉の浦マルチガスタービン発電所を核とした地域水素利活用トータルシステム」の確立を目指し、沖縄電力㈱、㈱日本総合研究所と共同調査を実施しております。本調査を通じて持続可能なエネルギーシステムを構築し、安定供給と地球温暖化対策の両立に取り組み、社会へ貢献してまいります。
・小型LNG供給設備である「Vサテライト」をさらに小型化した「マイクロサテライト」を開発いたしました。また、LNGを燃料とする大型トラック向けに省スペースに設置可能な小型LNG充填設備を、三菱商事㈱と共同開発いたしました。お客様のニーズに合わせたLNG供給体制を整え、LNGへの燃料転換を通じてCO2排出量の削減に貢献してまいります。
・家畜糞尿などに由来するバイオガスを活用した新たなバイオエネルギーサプライチェーンの構築に取り組んでおります。環境省が推進する「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」の優先テーマとして、バイオガスを用いて液化バイオメタン(LBM)に加工することでLNGの代替燃料として活用する実証に向けた取り組みを開始しております。自治体と連携し、環境負荷の少ない地産地消エネルギー社会の実現に貢献してまいります。
(農業・食品関連事業)
農作物の保存技術や食品・飲料の品質向上、機能性向上に向けた開発を推進しております。
・農業・食品のイノベーションを創出する技術開発を目的として、2018年6月より室蘭工業大学と「包括的連携研究協力等に関する協定」を締結し、農作物の栽培技術に関する研究、栽培支援システムの開発に取り組んでおります。
・ロボットやドローンを活用したスマート農業による農業生産性の向上及び品質向上を目的として、2020年12月に東京大学と社会連携研究部門を設置いたしました。国内外の農業生産性を高め、高品質な農産物及び食品の安定的、持続的な供給に貢献してまいります。
・当社独自の糖化技術を活用し、オーツ麦のほか様々な原料による植物性ミルクの開発に取組んでおります。ビタミンやミネラル、植物繊維を豊富に含んでいることに加え、動物性ミルクと比較し環境負荷が低いことから、様々な飲食料品の原料としての活用を進めております。
(海水関連事業)
「海が由来」をキーワードに海水から製塩を行う塩事業を柱として、多角化により様々な技術開発・事業展開を行っております。
・環境事業
水処理用吸着剤「READシリーズ」の拡販、及び海外への展開を図るため、従来の高性能品に加え中性能品を開発し、上市手続きを進めております。また、「ブルーカーボンリサイクル技術の開発」についてNEDOの研究開発委託事業に採択され、産学官協働で発電所や工場などから排出されるCO2の固定化、資源化に向けた新技術開発と実用化を加速しております。
・都市インフラ事業
下水道管更生において、従来品より高強度・薄肉化を実現することで施工時間を短縮し、CO2排出量削減を図ったオールライナーHM工法を開発、(公財)日本下水道新技術機構の建設技術審査証明を取得しました。また、マンホール鉄蓋交換工事において施工面積の最小限化、施工時間短縮を可能としたクイックカッター工法が国土交通省運営のNETIS(新技術情報提供システム)に登録されました。
・マグネシア事業
半導体封止材に用いられる難燃剤ECOMAG Z-10は好調に推移しておりますが、汎用封止材への展開による拡販を目論み、Z-10よりも安価なPZ-4を開発し、サンプルワークを始めております。
また、今後も半導体製造装置用のセラミックなど、半導体業界に貢献する商品の開発に積極的に取り組んでまいります。
(その他の事業)
・SiC事業
電源用パワートランジスタに用いるGaN基板に続き、通信用高周波トランジスタに用いるGaN基板(GaN on SIC on Si基盤)の開発にも成功し、実用レベルの高周波特性(6GHzやミリ波:30GHz)が確認できました。現在、パワーデバイス用に加えて、高周波用途でのサンプル生産、種々の客先への評価用サンプル出荷を開始しております。今後、電源用パワーデバイス、5Gなどの通信用高周波デバイスの両方で、事業拡大を目指します。
・エアゾール事業
人体用品から家庭用品、塗料、工業・自動車用品まで多種多様なお客様のニーズに対応した研究開発を推進しております。また、化粧品受託業界にも本格参入し、高品質・高付加価値な化粧品の開発にも取り組んでおります。
なお、当連結会計年度の研究開発費用の総額は