文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、『世に価値あるものを供給し続けるには、価値ある人生を送るものの手によらねばならぬ。価値ある人生を送るためには、その大半を過ごす職場を価値あるものに創り上げていかねばなるまい。』という経営理念のもと、『稀な元素とともに、「100年企業」へ』をビジョンに掲げ、永続的に成長を続ける企業グループを目指します。
「価値あるもの」とは、社会課題の解決に貢献する独創的で付加価値の高い製品のことです。次に「価値ある人生」とは、自身の夢や理想の実現に向かって成長する公私ともに充実した生き方のことです。そして「価値ある職場」とは、ジルコニウムのトップメーカーの一員であることに誇りを持ち、「キゲンソらしさ」を体現する仲間がいる職場のことです。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、「世に価値あるものを供給し続ける」という経営理念のもと、ジルコニウム化合物の開発・供給を通じて社会課題の解決に取り組んでまいりました。近年、自動車業界では電動化及び脱炭素化の潮流が加速しており、当社の主力製品である内燃機関車向け材料の市場は構造的な縮小局面を迎えております。こうした事業環境の変化を踏まえ、当社グループは、持続的な成長の実現に向けて、事業ポートフォリオの転換を進めております。
その一環として、2023年3月期から2032年3月期までの10年間を対象とした中期経営計画「DK-One Next」を策定し、「新たな事業を創出し続け、今後10年に起こる大きな環境変化を乗り越える」ことを中期経営方針として掲げ、経営資源の重点配分を進めております。また、2025年5月には、同計画の前期(2023年3月期~2026年3月期)の進捗状況を踏まえ、当初計画との差異を分析のうえ、中期(2027年3月期~2029年3月期)及び後期(2030年3月期~2032年3月期)の定量目標を見直し、経営戦略の実効性と柔軟性を高める方針を中期経営計画「DK-One Next」の進捗として公開いたしました。
本中期経営計画では、半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケアを戦略分野として位置付け、当社従来の自動車排ガス浄化触媒分野及び基盤分野で得られた利益を成長投資に振り向けることで、戦略分野及び新規事業の売上構成比を2029年3月期に30%、2032年3月期には50%以上とすることを目指しております。「新規事業の創出」「収益構造の改革」「革新的なものづくりの実現」「成果を出し続ける組織づくりの実践」「キゲンソらしさの更なる醸成」「サステナビリティへの取り組み」の6つの柱を掲げ、それぞれの活動に対しKPIを設定し、ガバナンス体制のもとで継続的なモニタリングを行っております。これらの取り組みを通じて、変化に対応できる強固な経営基盤を構築し、中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
(3)目標とする経営指標
中期経営計画「DK-One Next」では、2029年3月期(第73期)及び2032年3月期(第76期)に向けた定量的な経営目標を以下のとおり設定しております。2025年5月に策定した新たな目標値では、従来の売上・利益指標に加え、資本効率や株主還元の視点を重視し、ROE及びDOEを新たに明示しています。
経営目標(連結)
当該計画においては、ROICスプレッド(ROIC-WACC)の最大化を重視し、収益性の向上と資本効率の最適化を両立する方針としております。これに加え、2025年5月の目標見直しに際しては、株主還元との整合を意識し、経営指標としてROEを新たに設定するとともに、配当方針においてDOEを下限として明示することで、成長と株主還元の両立を図る体制を明確化いたしました。また、キャッシュアロケーションに関しては、2026年3月期から2032年3月期までの期間において、累計355億円程度の営業キャッシュ・フローを見込んでおり、これを財源として、戦略分野増産投資75億円、研究開発投資80億円、基盤投資70億円、M&Aを含む成長投資65億円、株主還元65億円等に配分する計画です。これにより、成長投資と財務健全性の両立、並びに持続的な株主還元の実現を目指しております。
なお、投資判断にあたっては、適切なハードルレートを設定し、個別案件ごとに採算性や戦略的意義を評価のうえ、意思決定を行う方針です。基盤分野についても、収益性及び資本効率の観点から精査を行い、慎重かつ柔軟な投資運営に努めてまいります。
これらの目標及び方針は、現時点において入手可能な情報に基づくものであり、今後の経済環境、業界動向、原材料価格、為替変動その他の不確実な要素により、実際の業績とは乖離する可能性があることをご理解願います。
当社グループは、内燃機関搭載車向け需要への依存リスクを低減すべく、新規事業や戦略分野を軸足とする事業ポートフォリオの再構築を進めております。また、主原料であるジルコニウム化合物に関しては、2025年7月に本格稼働を予定しているベトナム新工場を、中国以外の供給拠点として位置づけており、早期安定稼働とコスト競争力の強化に注力しております。これらの重点事項を含め、次の課題に取り組んでまいります。
①新規事業の創出・戦略分野の開発活動の強化
当社グループでは、半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケアといった戦略分野への展開を重点施策として位置づけ、製品・技術開発並びに市場開拓に取り組んでおります。
2025年3月期には、半導体・ヘルスケア用途では堅調な成長を示しました。一方、エネルギー分野においては目標未達が見込まれる状況を踏まえ、市場ニーズとのギャップ分析を実施し、製品開発及び営業戦略の再構築に着手しております。今後は、用途別の価値提案力を高め、顧客との協業や共創を通じた提案型ビジネスを強化することで、販売拡大を目指します。
また、中期経営計画のローリングを通じて、戦略分野におけるKPIの進捗確認及び前提条件の妥当性を継続的に検証し、市場環境の変化に即応できる柔軟な戦略運営を行ってまいります。当社グループは、これらの分野を将来の成長ドライバーと位置づけ、資源配分の最適化を図りながら、グローバル市場での競争優位性を確立してまいります。
②主原料調達のサプライチェーンの強化
ベトナム新工場においては、オキシ塩化ジルコニウム(以下、「ZOC」という。)のフル生産体制の早期確立を最重要課題と位置づけ、現在、設備整備及び人材配置を順調に進めております。生産初期段階における安定稼働を目的に、現地運営体制の強化、保全計画の構築、現場従業員に対する教育訓練を重点的に実施してまいります。また、安定稼働と並行して、製造コストの最適化も重要な課題と捉え、エネルギー使用量や原材料コストの削減に向けた製造条件の見直し、資材調達の見直しといった取り組みにより、コスト構造の再構築を推進しています。今後も、本工場を当社グループにおける原料調達の重要拠点として位置づけ、その競争力と供給安定性の強化に努めてまいります。
また、レアアースに関しましては、今後も複数国のサプライヤーとの関係強化に努め、安定的な調達を進めてまいります。なお、酸化イットリウムのような特定国以外からの調達が厳しく、国家政策によって輸出が規制されるレアアースにつきましては、戦略的に在庫を積み増すとともに官民一体の取り組みで対応してまいります。
③キャッシュ創出力の強化と収益性の改善
当社グループは、中長期的に安定した経営基盤を確立・維持するため、収益性の向上と資産効率の改善に注力しております。棚卸資産の削減に向けては、製品品種やロットサイズの見直しに加え、ITシステムの活用によるリードタイム短縮を進めております。あわせて、原価低減を目的とした生産プロセスの革新及び業務プロセスの効率化に取り組み、継続的な改善を図っております。今後もキャッシュ創出力の強化と収益性の改善の取り組みを継続してまいります。
④温室効果ガスの排出削減への対応
当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献すべく、温室効果ガス(以下、「GHG」という。)の排出削減を中長期的な経営課題と位置づけ、段階的な取り組みを推進しています。高効率設備の導入や運転条件の最適化、廃熱回収の活用などによる省エネルギー活動を継続し、エネルギー使用量の削減に取り組んでいます。また、再生可能エネルギーの導入についても検討を進めており、脱炭素に向けた中長期の排出削減ロードマップを策定・具体化しております。更に、GHG排出量の把握・管理体制を整備し、Scope1・2に加え、サプライチェーン全体(Scope3)の見える化にも取り組んでいます。今後は、TCFD等の国際基準への対応や排出量の対外開示を強化し、ステークホルダーとの信頼関係を一層深化させてまいります。
当社グループは、環境対応を成長の機会と捉え、事業活動を通じて脱炭素社会の実現に寄与してまいります。
⑤多様な人材が活躍できる基盤づくり
当社グループが新しい価値を創出しながら成長を続けるためには、多様(国籍、年齢、性別、社歴など)な人材の活躍が必要であることから、海外人材の採用と育成、若手人材の積極登用、女性管理職候補者の育成及びシニア人材が貢献できる制度の整備を進めております。更に、多様な人材が活躍できる基盤づくりとして、キャリアプラン面談や心と体の健康相談を通し、多様な価値観を実現する場として、価値ある職場を創り上げる活動を実践してまいります。
⑥成長を続けるための組織力強化と人材育成
当社グループが「100年企業」として持続的に成長し続けるためには、組織力の強化とともに、人材の多様性と挑戦を尊重する企業風土(キゲンソらしさ)の醸成が不可欠であると認識しております。特に、チャレンジした人が正当に評価される仕組みの構築や、組織の中核を担う経営管理職層の底上げ、それぞれの職場におけるプロフェッショナル人材の拡充の実現に向けて以下の取り組みを推進しております。
人事制度並びに給与制度の改定を2025年3月期より進めており、今後は社員の挑戦意欲と貢献意識を高めるための運用を実践してまいります。組織力強化のためのマネジメントの仕組みの変革や能力向上に重きを置いたプロフェッショナル人材の育成を通じて、成果を出し続ける組織全体の強靭化と次世代リーダー育成のための活動を定着させます。
これらの取り組みを通じて、社員一人ひとりが成長を実感できる環境を整備し、企業としての持続的競争力の向上と、次なる成長ステージへの飛躍を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは経営理念に基づき、以下の5つの実践を通じて、持続可能な社会を実現し企業価値を向上します。
・イノベーションにより、社会課題の解決に貢献する製品を創出します。
・環境に配慮した製品設計や資源の有効活用により、消費エネルギーを削減します。
・サプライチェーンも含めた人権尊重を推進します。
・多様な人材が活躍できる職場環境や働き方の制度を整えます。
・社会から信頼される企業であり続けるために、コーポレート・ガバナンスをさらに強化します。
(1) サステナビリティへの対応
a. ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ推進部が管掌役員のもと、計画を立案し、経営会議で協議後、取締役会で決定しています。また、取締役会は、サステナビリティ推進部から定期的に進捗状況の報告を受け、達成状況を確認しています。サステナビリティ推進部は各部門の進捗状況を把握し、課題や問題等について関係者と協議の上、活動を進めています。

b. 戦略
当社グループは、サステナビリティに関する全社的に重要な項目(課題)を経営における重要な課題の一つと位置づけています。その中でも、特に重点的に取り組む領域を中期経営計画「DK-One Next」の6つの柱の「成果を出し続ける組織づくりの実践」「キゲンソらしさの更なる醸成」「サステナビリティへの取り組み」に設定しています。
c. リスク管理
サステナビリティ推進部は、グループ全体のリスク項目を網羅的に抽出、評価し重要リスク項目を選定しています。重要リスク項目については対応状況を確認し、新たな対応が必要な場合は担当部門に対策の実行を指示しています。サステナビリティ推進部における検討結果については経営会議に報告しています。また社長執行役員の直轄組織としてリスク管理担当執行役員を責任者とするリスク管理委員会を設置し、事業年度ごとにグループ全体のリスク項目の再抽出及び評価を定期的に実施し、設定された重要なリスク項目の審査、事業上のリスクや対処すべき課題について取締役会に報告しています。
d. 指標と目標
当社グループは、サステナビリティに関する課題の解決に向け、中期経営計画「DK-One Next」にて取り組みを進めています。
(2) 気候変動への対応
当社グループは、気候変動への対応は企業の社会的な重要課題と認識し、温室効果ガス、特にCO2の排出量削減等に積極的に取り組んでいます。
気候変動は、CO2等の排出規制に伴い炭素税の賦課等の導入、原材料の購入や製品の供給に係るコストの上昇、生産活動の中断といったリスクをもたらします。その一方、社会に新しいニーズを生み、当社グループとして新たな価値を創出する機会でもあると認識しています。そのため、当社グループは生産活動におけるエネルギー効率向上、環境負荷が少ない生産方式の検討、サプライチェーンを通じた排出量削減等に取り組むことでリスク軽減に努めながら、革新的な技術やソリューションを生み出し、新しい領域に事業を拡大する機会であると考えています。
以下において、気候変動関連の財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)が推奨するフレームワークを活用し、気候変動がもたらすリスクと機会及びそれぞれに対する取り組みについて説明します。
a. ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般に関するガバナンスに組み込まれています。詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティへの対応 a ガバナンス」を参照ください。
b. 戦略
シナリオ分析にあたっては、複数の気候変動に係る化学的シナリオ(国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のSSP2-4.5 (AR6)やRCP4.5やRCP6.0/RCP8.5 (AR5)、国際エネルギー機関(IEA)のNZE(Net Zero Emission by 2050 Scenario)やSTEPS(Stated Policies Scenario)、日本の環境省/気象庁の21世紀末における日本の気候のRCP2.6)等から当社グループの事業を取り巻く将来像を想定し、リスクと機会の両面からインパクト分析を行い、対策を立案しました。
脱炭素化による社会変化が当社グループの事業に影響を及ぼしていく1.5℃シナリオにおいて、脱炭素経済への移行に伴い需要が高まる業界にてジルコニウムが必要とされ、ビジネスの機会が拡大すると考えています。しかしながら、脱炭素の過程で内燃機関搭載車の生産台数減少に伴う自動車排ガス浄化触媒や酸素センサーの需要減少、各国政府・自治体等によるカーボンプライシングの導入・強化、原材料の需要増加に伴う輸出規制が強化される等、環境コンプライアンスが強化される可能性があります。これらリスクに対し、対応策の検討を進めます。
また、気候変動による自然災害が激甚化し当社グループに影響を及ぼしていく4℃シナリオにおいても、独立した電気エネルギー需給体制が見直され、燃料電池や次世代二次電池の材料需要増加によって、ビジネスの機会が拡大すると考えています。しかしながら、豪雨・高潮・強風による製造設備の冠水や破壊、水害によるサプライチェーン寸断等の発生による生産停止等の可能性があります。これらリスクの対応策は、生産拠点毎のBCPの中で検討を進めます。
・1.5℃シナリオ
・4℃シナリオ
c. リスク管理
気候変動に関するリスク管理は、サステナビリティ全般に関するリスク管理に組み込まれています。詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティへの対応 c リスク管理」を参照ください。
d. 指標と目標
2050年までにCO2排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にする「脱炭素社会」を実現するため、2030年までにCO2排出量(Scope1+2)を2018年3月期比 で20%以上削減します。
削減策としては、継続的な現場の改善活動に加え、ものづくり革新によるエネルギー効率化、太陽光発電による創エネなど、当社グループの事業活動に伴う排出量の削減を推進します。また必要に応じて、再生可能エネルギーやカーボンクレジットなどの調達も活用します。
(3) 人的資本の取り組み
当社グループは、経営理念の実現のために中期経営計画「DK-One Next」において、新たな事業を創出し続け、当社グループを取り巻く大きな事業環境の変化を乗り越えるための6つの柱を定めました。その中で「成果を出し続ける組織づくりの実践」、「キゲンソらしさの更なる醸成」、「サステナビリティへの取り組み」を掲げ、人的資本に関する指針を定めています。これらの指針を受け、次の方針に基づき人的資本の価値を高める取り組みを進めます。
基本方針
・後継人材を計画的に育成する。とくに経営層の後任育成を体系的に進める。
・従業員の意欲を高め、成果につなげるため、役割・成果に応じた報酬制度を運用する。
・個人と組織の意識改革・行動変容をはかる(風土を改革する)。
・チャレンジ精神をグループ全体に浸透させる。
・多様な人材の活躍を推進する。
・多様な働き方や価値観を尊重した職場づくりを実践する。
・心身ともに健康で安全な職場づくりを実践する。
a. ガバナンス
人的資本に関するガバナンスは、サステナビリティ全般に関するガバナンスに組み込まれています。詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティへの対応 a ガバナンス」を参照ください。
b. 戦略
当社グループは100年企業への飛躍を遂げるために、果敢に挑戦して事業を拡大させる人材及び次世代を担う人材が最も重要と考え、これら人材の育成に積極的に投資します。
当社グループの社風として、フラットでフランクに話ができる関係が良い面としてあげられます。その中で、従業員が主体的に行動し、チャレンジを促進する風土を作っていく必要があると考えます。人事評価では、役割、成果が報酬・処遇に反映される制度、運用ルールの制定に取り組んでいます。
また人材の多様性については、女性活躍の推進、育児・介護などとの両立支援制度を充実させます。加えて、今後60歳以上の従業員の比率が増加していく中で、どのように活躍してもらうかが会社、個人の両者にとって重要になってくるため、現行制度を改定し、多様な働き方が選択できる制度づくりに取り組みます。
さらに、心身ともに健康で安全な職場環境をつくることは、従業員にとっても大切なことであり、生産性の向上にもつながるものと考えます。当社グループはすべての役職員の安全意識を高めて、労働災害予防に取り組みます。またメンタルヘルス不調による休職は、本人や職場への負担が大きいため、当社グループはすべての役職員のメンタルヘルスに関する意識を高め、メンタルヘルス不調の予防に注力します。
これらの課題と向き合い、「100年企業」への飛躍を目指すため、当社グループは今後も重要なサステナビリティ戦略の一つとして人的資本に基づく経営に取り組みます。
c. リスク管理
人的資本に関するリスク管理は、サステナビリティ全般に関するリスク管理に組み込まれています。詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティへの対応 c リスク管理」を参照ください。
d. 指標と目標
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、ジルコニウム化合物の安定的かつ持続可能な調達体制を確立し、中国依存リスクを軽減することを目的として、ベトナム現地法人であるVIETNAM RARE ELEMENTS CHEMICAL JOINT STOCK COMPANY(以下、「VREC」という。)において、オキシ塩化ジルコニウム(以下、「ZOC」という。)の内製化を進めております。2025年7月からの本格稼働を予定し、各種設備の導入や現地体制の強化を進めております。
現在、製造コストの最適化に向けた取り組みも継続しており、生産初期段階においては、安定稼働の実現や製造条件の見直しが必要とされる場面が想定されます。また、エネルギーコストや資材価格の変動といった外部要因により、想定を上回るコストが発生した場合には、当社グループの収益性に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対し、当社グループは、VRECにおける製造工程の安定化とコスト構造の最適化を目的とした専任プロジェクト体制を敷き、課題の早期把握と対応を図っています。進捗状況は週次で管理しており、安定稼働に向けた各種施策を着実に実行しています。また、資材調達の見直しや、現地従業員への教育訓練の強化など、多角的な対応を進めております。万が一、稼働の遅延やコスト改善の進捗が想定を下回る場合には、短期的な収益圧迫や追加的な対応コストが発生する可能性もあるため、事業採算性のモニタリングと柔軟な対応を継続してまいります。
当社グループは、自動車排ガス浄化触媒向け製品への依存リスクを低減し、バランスの取れた収益構造への転換を図るべく、半導体、エネルギー、ヘルスケアの3分野を戦略分野として重点的に取り組んでおります。
2025年3月期においては、半導体及びヘルスケア分野において堅調な需要を背景に販売を伸ばし、計画を概ね達成しました。一方で、エネルギー分野においては、主要顧客の在庫調整や電動車市場の減速の影響を受け、販売が伸び悩み、業績計画を下回る結果となりました。
当社グループでは、戦略分野の売上構成比を更に高め、持続的な成長を実現するため、顧客の用途ごとのニーズを的確に捉え、それに対応した提案型の価値提供力を強化していきます。あわせて、開発・製造・営業に加え、新事業創出チームを含む関係部門が一体となり、製品の企画段階から市場導入・拡販に至るまでのプロセスを有機的に連携させ、変化の激しい市場環境にも柔軟かつ迅速に対応できる体制を構築していく方針です。
これらの取り組みが計画通りに進展しない場合、中長期的な収益構造の改善が遅れ、当社グループの財務状況及び企業価値に影響を及ぼすおそれがあります。こうしたリスクに備え、今後も戦略の進捗を継続的に点検・見直し、機動的な対応を徹底してまいります。
(為替変動について)
当社グループは、外貨建での収益・債権・債務を多数保有しており、特にベトナム現地法人との親子ローン取引は、為替差損益に大きな影響を与える構造となっております。為替相場の急激な変動が発生した場合、経常利益が大きく変動する可能性があります。こうしたリスクに対し、当社では為替予約やデリバティブ取引の活用などを通じて、為替変動による損益の振れ幅を抑える対応を進めています。為替ヘッジの実施状況や市場動向によっては、なお一定の収益変動が発生する可能性は残ります。
今後も為替市場の動向を継続的に注視し、ヘッジ方針や運用体制の見直しを適宜行いながら、為替変動による経営成績への影響を抑制していきます。
(投資設備の減損について)
ZOCの内製化をはじめ、当社グループは国内外において積極的な設備投資を行っておりますが、想定通りの需要が得られなかった場合には減損損失が発生し、業績に影響を与えるおそれがあります。特に、戦略分野での拡販が進展しない場合や製造コストの回収が遅れた場合には、回収可能価額の見直しが必要となり、損益への影響が避けられません。
今後も、需要動向を注視しつつ、柔軟かつ適時な投資判断を行ってまいります。
(情報セキュリティについて)
当社グループでは、システム導入や社員教育を通じた情報セキュリティ対策を講じておりますが、サイバー攻撃や内部不正による情報漏洩等が発生した場合、社会的信頼の毀損や損害賠償リスクが生じる可能性があります。近年は、攻撃手法の高度化や退職者による情報の持ち出しなど、脅威が多様化・複雑化しており、リスクの特定と対応の難易度も高まっています。
こうした状況を踏まえ、当社ではマニュアルの整備や定期的な訓練、技術的対策の強化を継続的に実施し、情報資産の保護とセキュリティレベルの維持・向上に努めてまいります。
(気候変動及び環境規制について)
気候変動への対応として、温室効果ガス削減、省エネ設備導入、排出権取引の活用などに取り組んでおりますが、各国での環境規制の強化によりコスト増加や追加投資が必要となる可能性があります。将来的には、脱炭素技術への対応や環境報告義務の厳格化が企業経営に与える影響が大きくなることが想定されるため、当社としてもこうした動向を注視しながら、必要に応じて対応に向けた行動を進めてまいります。
(原料の仕入れについて)
当社グループが取り扱う主要原料であるジルコニウム、希土類、セシウムは、すべて海外からの輸入に依存しており、特定国への過度な依存が構造的なリスクとなっております。現在、ZOCについては、中国及びベトナム現地法人VRECの2拠点から調達する体制を整え、供給リスクの分散を図っています。一方で、イットリウムや中重希土類、セシウムといった一部原料については、依然として供給元が限定されており、地政学的リスクや輸出規制等の影響を受けやすい状況にあります。調達の遅延や価格高騰が生じた場合には、当社の安定供給体制や採算性に影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対し、当社グループでは、原料在庫の積み増しによる備蓄強化に加え、官民一体となった安定調達体制の構築にも取り組んでおります。引き続き、複数調達先の確保やリスクの早期把握・対応を通じて、持続可能な供給網の整備を推進してまいります。
アジアや北米などでの事業展開において、政情不安や貿易摩擦、規制変更などの影響を受ける可能性があります。とくに米中対立の長期化は、調達・販売に影響を及ぼすリスクが高まっており、継続的な情報収集と社内共有を通じて対応を図っています。
今後は、カントリーリスクの変動に応じて、サプライチェーンの見直しや再構築を進めるとともに、グローバルな規制への対応力を高め、外部環境の変化に柔軟かつ確実に対処できる体制を整えていきます。
当社グループは、海外を含め、生産及び物流の拠点を分散配置することで、リスクの低減を図っております。しかしながら、地震・台風等の自然災害によって生産拠点が被災した場合や物流網の遮断等が発生した場合においては、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
これに対して、当社グループでは、可能かつ妥当な範囲で保険を付すとともに、事業継続計画(以下、「BCP」という。)の策定・整備を進めております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)に関する概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況

※2024年11月1日公表の連結業績予想
当連結会計年度の売上高は33,641百万円(前期比4.5%減、業績予想34,000百万円に対して達成率98.9%)、販売数量は前期比で3.4%減となりました。営業利益は、販売子会社の原料市況等による高額在庫の解消があり、原価低減活動や経費の抑制に取り組んだものの、ベトナム子会社のフル生産体制の構築に伴う費用増加により、2,282百万円(前期比5.8%減、業績予想2,200百万円に対して達成率103.8%)となりました。経常利益は、営業利益の減少に加え、当期末に円高基調で推移したこと及びベトナム子会社の決算が3カ月の差異があり、その間の為替変動による影響を受けたことで為替差損を計上し、632百万円(前期比78.5%減、業績予想1,400百万円に対して達成率45.2%)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、当第3四半期及び第4四半期連結会計期間に計上した補助金収入(特別利益)1,247百万円等により、792百万円(前期比30.5%減、業績予想1,100百万円に対して達成率72.0%)となりました。
分野別の販売状況は次のとおりです。

※2024年11月1日公表の連結業績予想
戦略分野(半導体・エレクトロニクス)

エレクトロニクス用途では、海外向け消耗材料用途の販売が減少しましたが、コンデンサ需要の回復を受け販売が増加したことで前年同期並みとなりました。半導体用途では、電動車需要の鈍化影響を大きく受けましたが、上半期の好況がそれを上回り前年同期比で増収となりました。
これらの結果、半導体・エレクトロニクス分野における当連結会計年度の売上高は、1,761百万円(前年同期比3.9%増、業績予想1,700百万円に対する達成率103.6%)となりました。
戦略分野(エネルギー)

二次電池用途では、電動車の販売鈍化及び中国自動車メーカーのシェア拡大の影響が当社の想定を大きく上回り、前年同期比で減収となりました。SOFC(固体酸化物燃料電池)及びSOEC(固体酸化物電解装置)用途は、AIデータセンターが好況であったものの、主要顧客の在庫調整により需要を取り込めず前年同期比で減収となりました。
これらの結果、エネルギー分野の当連結会計年度の売上高は、1,396百万円(前年同期比36.3%減、業績予想1,800百万円に対する達成率77.6%)となりました。
戦略分野(ヘルスケア)

生体材料用途では、下半期の販売に減速感が見られたものの、マーケットの拡大や欧州、東アジア地域での需要増を受け、前年同期比で増収となりました。医療機器用途では、廉価品の参入や製品リサイクルの流れが減収方向に影響したものの、原料価格の高騰による販売価格の上昇により、前年同期比で増収となりました。
これらの結果、ヘルスケア分野における当連結会計年度の売上高は、1,983百万円(前年同期比12.6%増、業績予想2,100百万円に対する達成率94.4%)となりました。
自動車排ガス浄化触媒分野

当連結会計年度における内燃機関搭載車の販売台数は、前年同期並みだったものの、日系自動車メーカーの生産調整や中国自動車メーカーのシェア拡大の影響を受け、当社製品の販売が減少し前年同期比で減収となりました。
これらの結果、自動車排ガス浄化触媒分野における当連結会計年度の売上高は、20,816百万円(前年同期比7.8%減、業績予想20,600百万円に対する達成率101.0%)となりました。
基盤分野

工業用触媒用途では、北米向けの販売において、消耗部材の交換時期が重なり前年同期比で増収となりました。構造部材用途では、日本及び北米向けの販売において、機械部品関連の需要が堅調に推移し前年同期比で増収となりました。
これらの結果、基盤分野における当連結会計年度の売上高は、7,682百万円(前年同期比9.8%増、業績予想7,800百万円に対する達成率98.5%)となりました。
当連結会計年度の財政状態の概要及びその分析等は次のとおりであります。

当連結会計年度末における総資産は64,754百万円で、前連結会計年度末に比べ850百万円減少しました。これは主に、現金及び預金の増加(631百万円)、受取手形及び売掛金の減少(581百万円)、仕掛品の減少(829百万円)によるものです。
当連結会計年度末における負債は26,271百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,017百万円減少しました。これは主に、短期借入金の減少(500百万円)、未払法人税等の減少(356百万円)、長期借入金の減少(2,219百万円)によるものです。
当連結会計年度末における純資産は38,483百万円で、前連結会計年度末に比べ2,166百万円増加しました。これは主に、為替換算調整勘定の増加(2,333百万円)、利益剰余金の増加(160百万円)、その他有価証券評価差額金の減少(142百万円)によるものです。
この結果、当連結会計年度末における自己資本比率は前連結会計年度末54.5%から58.6%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果、得られた資金は3,498百万円(前期比1,811百万円減)となりました。これは主に、減価償却費3,572百万円、税金等調整前当期純利益1,709百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果、使用した資金は551百万円(前期比2,896百万円減)となりました。これは主に、補助金の受取額1,247百万円、有形固定資産の取得による支出1,218百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果、使用した資金は3,525百万円(前期比1,080百万円増)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出5,233百万円、長期借入れによる収入3,000百万円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の状況
生産実績を単一セグメント内の区分に示すと、次のとおりであります。
(注) 1.生産金額は実際原価に基づいて算出しております。
2.同一品目であっても複数の用途に用いられることがありますので、生産実績については用途別に示すことが困難なため、表示しておりません。
当社グループは主に見込生産を行っているため、記載を省略しています。
販売実績を単一セグメント内の区分に示すと、次のとおりであります。
当社グループは単一セグメントであるため、用途別に表示しております。
(注) 1.戦略分野にはその他の金額0百万円がありますが、金額が少額であることから、上記表では表示しておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売割合で10%以上の相手先はありません。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)における世界経済は、地政学リスクへの警戒感は依然として高く中国経済の先行き不安も継続しております。また、米国大統領選挙後の新政権による通商政策の行方に注目が集まり、国際的なサプライチェーンや金融市場に対する先行きの不透明感が一段と増しております。日本経済では、日本銀行による政策金利の引き上げや為替相場における急激な変動が企業の収益環境や輸出競争力に影響を与えました。一方で、労働市場の堅調さや賃上げの広がりが家計所得の改善につながり、個人消費を下支えする要因となり全体としては緩やかな回復基調を維持しております。
当社グループにおきましては、戦略分野は、半導体用途での研磨材需要の増加やヘルスケア用途での市場拡大による増収はあったものの、エネルギー用途における電動車需要鈍化による影響を吸収しきれず、戦略分野全体では減収となりました。自動車排ガス浄化触媒分野においては、中国メーカーのPHEVシェア拡大、日系メーカーの生産調整、原料価格の下落による販売価格の下押し等により減収となりました。
当社グループは、中長期的な企業価値の向上を目指し、2023年3月期から2032年3月期までを対象とする中期経営計画「DK-One Next」を推進しております。2025年5月には、前期の進捗状況及び外部環境の変化を踏まえ、2029年3月期(第73期)及び2032年3月期(第76期)に向けた目標を見直し、より実効性の高い経営戦略へと進化させました。
本計画では、従来の売上・利益指標に加え、ROEを新たな経営指標として導入し、資本効率の向上を重視した体制へ移行するとともに、株主還元方針にはDOEを下限として追加し、成長と還元の両立を一層明確化しております。
キャッシュアロケーションにおいては、2026年3月期から2032年3月期までの期間において、累計355億円程度の営業キャッシュ・フローを見込んでおり、これを原資として、戦略分野増産投資75億円、研究開発投資80億円、基盤投資70億円、M&Aを含む成長投資65億円、株主還元65億円へ配分する方針です。適切なハードルレートを設定し、個別案件ごとに採算性や戦略的意義を精査のうえ投資判断を行うことで、資本効率と財務健全性の両立を図ってまいります。
また、当社は「新規事業の創出」「収益構造の改革」「革新的なものづくりの実現」「成果を出し続ける組織づくりの実践」「キゲンソらしさの更なる醸成」「サステナビリティへの取り組み」の6つの柱を掲げ、それぞれの活動に対してKPIを設定し、ガバナンス体制のもとで継続的なモニタリングを行っております。これらの取り組みを通じて、変化に対応できる強固な経営基盤を構築し、中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
経営成績及び財政状態の状況並びに用途別の販売概要に関する認識及び分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入によるものであります。一方、主な資金需要は、販売製品の原材料費にかかわる運転資金、及び工場設備、研究開発拠点の整備並びにIT関連投資に係る投資資金であります。
短期運転資金は、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及び長期運転資金は、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本として、それぞれ資金を調達しております。
当連結会計年度末においては、補助金収入の計上及び在庫圧縮に伴う原材料仕入高の減少等により、現金及び預金の残高が増加しました。また、販売減少に伴い、売掛債権、棚卸資産の残高も減少しました。
当社グループは、製販及び資金の一元管理を通じて資産効率の向上を図っております。更に、収益力の向上を目的として、戦略分野や研究開発への投資等を総合的に勘案しながら推進するとともに、安定配当、成長に応じた株主還元の実現を目指して、DOE(株主資本配当率)1.8%以上、配当性向30%を目安として持続的な利益還元を行ってまいります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
連結財務諸表の作成に際し、当連結会計年度末日における資産・負債の報告数値及び当連結会計年度における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、過去の実績や当社グループを取り巻く環境等に応じて合理的と考えられる方法により計上しておりますが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社はこれまでジルコニウム化合物の精製、酸化ジルコニウムの凝集制御をコア技術とし、これらに他元素との複合化技術を併用することで、ジルコニウム化合物の新機能開発と用途拡大に取り組んできました。
今後は、半導体・エレクトロニクス分野、エネルギー分野、ヘルスケア分野を戦略分野と位置付け、多様化・高度化する顧客ニーズに応える製品を開発することによりジルコニウムの更なる用途拡大に向け、継続的に行動していくことを基本方針としています。
また開発された新規材料は独創的で付加価値の高いものであるため、原則として知的財産権を取得し、当社グループの事業領域において活用していきます。
研究開発センターの機能と役割は、以下のとおりです。
(1)戦略分野の研究開発力を強化
従来の分析・評価設備に加え、当社製品及び開発品の新規特性や機能性を評価するための設備を新規導入し、中期経営計画「DK-One Next」で戦略分野と位置付ける半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケアの分野において、新製品開発と新用途開拓を加速させます。
(2)イノベーション拠点への進化
オープンな実験スペースとワーキングスペースを確保し、研究開発に携わる役職員の部門や専門分野を超えたコミュニケーションの機会を増やすことにより、新たな価値の創造と次世代への技術継承を促進します。
(3)スピーディな量産化と環境に配慮した工程設計
研究開発センターに同時にリニューアルしたパイロットプラントを併設することで、量産化にかかる期間の短縮に加え、資源循環やカーボンニュートラル関連の技術開発を促し、環境負荷の少ない量産工程の早期実装を目指します。
分野別の研究開発方針は、以下のとおりです。
①半導体・エレクトロニクス分野
・圧電素子、コンデンサなど電子部品の小型化、高性能化及び半導体の高集積化、微細化に対応する、高純度かつ高機能なジルコニウム系材料を開発します。
②エネルギー分野
・正極材NMC系のリチウムイオン電池の耐久性向上に加え、酸化物系全固体電池の早期実用化に貢献する、高純度かつ高機能な二次電池材料を開発します。
・固体酸化物燃料電池(SOFC)や固体酸化物電解セル(SOEC)の実用化段階を早めるために技術課題の解決につながる電解質・電極材料を開発し、提案します。
・カーボンニュートラルに向けたCO2の利用と排出量削減に関連した研究開発並びに実用化技術の開発を加速します。
③ヘルスケア分野
・強度・靭性、審美性に加え、新たな機能を付加した歯科材用などのジルコニアセラミックス材料を開発します。
(2)自動車排ガス浄化触媒分野
自動車の電動化は進むものの、自動車メーカーが新エンジンを開発する動きを見せるなど、当面は従来の内燃機関の活用が主流であると考えています。とりわけ、インド・東南アジアなどのグローバルサウス市場においてはハイブリッド車を含む内燃機関搭載車が引き続き主流となるため、強化される自動車排ガス法規制に対応し、助触媒機能としてより高機能な触媒材料を開発していきます。また当社の助触媒開発は、触媒である貴金属の使用量削減に繋がり、資源保護並びに環境負荷の低減に大きく寄与します。
(3)基盤分野
①熱遮蔽コーティング用途
・発電用ガスタービンや航空機等のエネルギー効率を向上させるなど、耐熱性を有するジルコニウム系材料を開発します。
②アルミニウム接合用途
・自動車用熱交換器や家庭用エアコンなどのアルミろう付け用途において、顧客の生産過程における省エネルギー化や生産性向上に貢献するセシウムフラックス及びフラックス内包ろう材を開発します。
③工業用触媒用途
・火力発電所や工場等から排出される有害物質の浄化や化学製品の高効率な合成を目的とした触媒機能を有する材料を開発します。
研究開発体制
当社の研究開発活動は、中長期的な視野でのジルコニウム化合物の新機能の発掘及び新規用途開拓、並びに新規材料の調査・研究を研究開発室が担当し、既存用途での材料開発及び既存材料での用途開発は技術部が担当しています。旧生産技術部(現プロセス開発部)は、量産プロセス設計に加え、資源循環やカーボンニュートラル関連の技術開発及び設備設計を担当しています。一方、知的財産権に関する業務については知財管理室が担当します。2025年3月期実績としては、国内特許出願9件(海外出願を含めると42件)を実施いたしました。現在保有している国内特許は111件(海外特許を含めると227件)で、その事業分野ごとの内訳は、戦略分野が34件、その他新規分野が21件、自動車排ガス触媒分野が38件、基盤分野が18件となっております。今後も部門機能ごとに専門性を高め連携しながら、研究開発活動を実施します。また大学・研究機関を対象に、ジルコニウム及びハフニウム並びにセシウム化合物を利用した独創的な研究、創意、工夫に対して使途の自由度が高い研究助成金制度を実施しています。ジルコニウム及びハフニウム並びにセシウム化合物の素材を利用した研究活動への支援を通して、当社で対象としていない領域も含むこれら材料の新たな可能性が拡大されることを期待しております。2025年3月期は、35件の応募があり、20件を採択して助成しました。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は