当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当期における重点施策の進捗状況
当社グループは、「2030年ありたい姿」を実現させるための指針である中期経営計画「Grow UP 2026」を当期からスタートしました。目標として「事業ポートフォリオの強靭化」と「サステナビリティ経営の推進」を掲げ、目標達成に向けて、それぞれ3項目からなる施策を進めております。
中期経営計画 「Grow UP 2026」
●目標1
事業ポートフォリオの強靭化
■施策
-「Uniqueness & Presence」へのフォーカス
-イノベーションによる新しい価値の創造
-重点管理事業の再構築
本計画ではこれまでの差異化事業を「Uniqueness & Presence (U&P)事業」と改称し、「伸びる」「勝てる」「サステナブル」(=「事業期待性」「経済的価値」「社会的価値」)の観点で優れ、社会的価値と経済的価値を両立して持続的に成長できる事業と再定義しました。
目標1「事業ポートフォリオの強靭化」を実現するための施策1として、「Uniqueness & Presenceへのフォーカス」に取り組みました。当期においては、半導体顧客の増強プロジェクトに合わせ着実に半導体向け薬液の増産投資を実施したほか、半導体市場の成長を見据えたタイにおける半導体パッケージ用BT材料の増産投資も推進しております。加えて、新潟工場での光学樹脂原料モノマープラントも完工し、成長ドライバーであるICT領域を中心とした大型投資を推進しました。さらに、欧州におけるメタキシレンジアミン製造設備の新設プロジェクトも推進中であり、U&P事業に経営資源を重点配分しております。
施策2「イノベーションによる新しい価値の創造」については、新規事業創出・開発の組織を改定したほか、市場開拓中の医薬向け容器「OXYCAPTTM」がPharmapack 2025にてInnovation Awardを受賞、次世代低反りBTレジン積層板材料も第20回JPCA賞を受賞するなど、様々な取り組みの成果を得ました。
施策3「重点管理事業の再構築」については、不採算が継続していたオルソキシレン、無水フタル酸、可塑剤の生産を停止いたしました。PC系事業については、高付加価値比率の向上やコスト削減を進め、中国拠点の損益が改善したほか、最適な生産・販売・研究開発体制構築の検討も進めております。
●目標2
サステナビリティ経営の推進
■施策
-カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの加速
-人的資本経営の充実
-マテリアリティマネジメントの推進
目標2「サステナビリティ経営の推進」については、施策の一つとしてカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めております。具体的には、当社技術を活かした環境循環型メタノール構想や、GHG排出量削減に向けた取り組みを加速します。また、社会の環境負荷を低減する製品群を新たにMGCグループ環境貢献製品『Sharebeing』として認定し、環境貢献に資する製品の拡充を一層推進します。当社グループの最重要経営資源である「人材」の育成・活用にも引き続き注力し、人的資本経営の充実を図ります。
当期においては、環境配慮型ユリア樹脂のパナソニック(株)との共同開発や、炭素循環社会の実現に向けたサプライチェーンの実証実験に関するJFEスチール(株)、三菱ケミカル(株)との覚書締結、消化ガスからのバイオメタノールの製造開始など、各種取り組みを進めました。
② 今後の取り組み
次期の世界経済は、米国の関税措置や各国の金融政策等の動向、中国経済低迷の長期化や地政学的リスクの高まりなど、不確実性が更に増しており、各国経済への影響を含め景気の先行きが見通しにくい状況が継続しております。
当社グループは引き続き、2024年度よりスタートした中期経営計画「Grow UP 2026」のもと、事業ポートフォリオの強靭化を目標に、「Uniqueness & Presenceへのフォーカス」「イノベーションによる新しい価値の創造」「重点管理事業の再構築」等の施策を進め、資本効率を強く意識した事業ポートフォリオ改革を徹底してまいります。
具体的には、目標1「事業ポートフォリオの強靭化」に向けて、成長ドライバーであるICT領域に積極投資を継続するなど、U&P事業への経営資源の優先配分を進め、大型投資案件の成果を刈り取ってまいります。また、新規・次世代事業の創出と育成に向け、ICT、モビリティ、医・食の3つのターゲット領域に特に注力し、R&D資源の積極投入を推進いたします。加えて、採算性に課題のある重点管理事業については、PC系事業における高付加価値品比率の向上、コスト削減や生産・販売・研究開発体制の合理化のさらなる推進等、引き続き事業の再構築を進め、収益性・資本効率性の改善を図ります。
目標2「サステナビリティ経営の推進」に関しては、当社グループが掲げるミッション「社会と分かち合える価値の創造」のもと、カーボンニュートラル関連施策やマテリアリティマネジメントを推進します。カーボンニュートラル実現に向けた取組みとして、環境貢献製品「Sharebeing」の2030年売上高目標5,000億円を設定し、エネルギー・気候変動問題解決に貢献するだけでなく、市場競争力のあるU&P製品・技術の創出につなげてまいります。
目標とする経営指標(Grow UP 2026最終年度)
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<前提条件> 為替:135円/US$ 原油価格(Dubai):80US$/BBL
※1: EBITDA =経常利益+支払利息+減価償却費 ※2: ROIC = (営業利益-法人税等+持分法損益)/投下資本
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この経営方針、経営環境及び対処すべき課題等に記載されている計画、目標等の将来に関する記述は、当連結会計年度末現在において当社が入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいて判断したものであり、不確実性を内包するものです。実際の業績等は、様々な要因によりこうした将来に関する記述とは大きく異なる可能性があります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関する事項
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティをCSRの遂行と実践を基盤として、社会の持続的発展と自社の持続的成長との両立を目指す概念と位置付け、サステナビリティ推進とは、社会が直面する諸課題に対して、中長期的な企業価値向上の観点から、自社の事業活動を通じ、積極的・能動的に取り組むことと定義しております。
サステナビリティ推進に関する方針・戦略・計画等を審議・決定することを目的として、代表取締役社長を議長とし、社外を含む全取締役を主構成員とし、監査役等も参加する「サステナビリティ推進会議」(2024年度開催回数:2回)をサステナビリティ推進基本規程に基づき設置しております。
サステナビリティ推進会議に上程する議案は、サステナビリティ推進会議の諮問機関である「サステナビリティ推進委員会」(2024年度開催回数:3回)(委員長:CSR・IR部長、構成員:経営企画部、総務人事部、財務経理部、情報システム部、研究統括部、知的基盤センター、原料物流部、環境安全品質保証部、生産技術部、内部監査室、事業管理部の部門長)にて審議しております。
●サステナビリティ推進会議(2024年度:2回開催) 議長:代表取締役社長
サステナビリティ推進会議での主な議題は以下のとおりです。
・マテリアリティKPI2023年度実績審議
・マテリアリティKPI2024年度想定報告
・各種専門委員会活動報告
・TCFD、TNFD開示報告
・ESG格付機関評価報告
なお、サステナビリティに関する重要な事項は、当該審議の後、取締役会へ上程いたします。具体的には、サステナビリティ推進指針、マテリアリティおよび同KPIの改廃・見直し、三菱ガス化学グループ人権指針などは、取締役会にて決議しております。
サステナビリティマネジメント体制図
また、サステナビリティ推進において高度かつ専門性が高く、その対応には部門横断的な委員会を編成し取り組む必要がある重要事項については、専門委員会を設置し、サステナビリティ推進委員会へ報告しております。
・CN専門委員会(2024年度:3回開催) 委員長:生産技術部長
CN(※)専門委員会は、当社グループ全体のCN戦略の立案と検証を担っております。当社グループ全体のGHG排出量削減・CN戦略、計画、進捗を検証するとともに、実行組織の活動に反映するCN推進のPDCAサイクルを回しております。
※カーボンニュートラル
・DEI推進専門委員会(2024年度:2回開催) 委員長:総務人事部D&I推進グループ長
DEI(※)専門委員会は、当社のDEI推進を担っております。当社におけるDEI推進を全社的な活動として推し進めるために、サステナビリティ・マネジメント・システムに組み込み、実行組織によるDEI推進活動につなげております。
※ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
・人権専門委員会(2024年度:3回開催) 委員長:総務人事部長
人権専門委員会は、当社における各種人権にかかわる取り組みの推進を担っています。本社の各部門が委員会メンバーとなり、当社グループの人権に対する意識の醸成・啓蒙並びにサプライチェーンも含めた人権課題の把握や課題解決の取り組みにつなげております。なお、2025年度は、人権デュー・ディリジェンスを社内外のサプライチェーンで実施することを予定しております。
② リスク管理
「
マテリアリティの特定にあたっては、数多の社会課題等を「自社にとっての重要度」と「経済・環境・社会にとっての重要度」の2つの観点で評価し、前述のサステナビリティ推進会議での審議を経て、取締役会にて決議しております。
③ 戦略
「② リスク管理」に記載のとおり、当社グループはマテリアリティを特定した上で、それらに関わるリスクと機会を把握、リスクの低減に努めると共に、社会課題を解決する新たなビジネスモデルの創出を通じて、持続可能な社会と企業の持続的成長を目指しております。
サステナビリティ経営として取り組むべき最重要課題(マテリアリティ)のリスクと機会
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最重要課題 (マテリアリティ) |
リスク |
機会 |
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事業を通じた社会課題の解決への貢献 |
・将来価値の低下による株価の下落 ・市場ニーズの変化に伴う製品需要の低下 ・コスト安な代替材へのシェア移転 ・既存製品の陳腐化 |
・市場ニーズの多様化による新市場の創出 ・業界標準に裏打ちされた顧客信用度 ・特長ある差異化製品群の拡充 |
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新しい価値を生み出す研究開発の推進 |
・事業ポートフォリオ強靭化の遅延 ・事業創出遅延によるカーボンニュートラル未達 ・研究開発の競争力の低下による新規製品・新規事業創出の遅延 |
・事業ポートフォリオ強靭化の推進 ・環境課題解決事業の創出による新規市場創出 ・DX技術の活用による新規製品・新規事業創出 |
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環境問題への積極的・能動的対応 |
・気候変動による異常気象・自然災害リスクの増大 ・環境保護に関する風評リスク |
・CCUS(特にCCS)、CO2原料メタノール・ポリカーボネートの事業展開、およびそれを用いた化学品展開 ・水素キャリア・CO2フリー燃料となるアンモニアの事業展開 |
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省資源・省エネルギー・高効率による生産 |
・省資源・省エネルギー化への技術的対応の遅延による競争優位性の低下 |
・省エネルギー技術の獲得、横展開 ・デジタル技術の活用の進展 |
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働きがいのある企業風土の醸成 |
・労働生産性の低下や人材の流出が生じる事による企業価値(経済的価値・社会的価値)の低下 |
・イノベーション創出に向けた基盤強化 ・社員のワークエンゲージメント向上 |
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ダイバーシティ&インクルージョンの推進 |
・人材の属性やスキルの偏りが画一的な発想を生み、新たな事業機会を喪失 |
・多様な価値観のコラボレーションによる新機軸・技術革新を生み出す企業風土の醸成 |
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人権の尊重 |
・人権侵害を理由とした製品・サービスの不買運動の発生 ・投資先としての評価の低下 ・投資候補先からの除外・投資引き揚げの可能性 |
・持続可能な経済・社会の実現に寄与 ・社会からの信用の維持・獲得 ・企業価値の維持・向上 ・優れた人材の採用・確保 |
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労働安全衛生・保安防災の確保 |
・類似災害・トラブルの再発 ・事故・不祥事の発生による社会的信用の失墜 |
・安全文化の醸成 ・予防保全のノウハウの蓄積 |
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化学品・製品の品質・安全性の確保 |
・各国の化学物質規制不対応によるビジネス機会の逸失 ・不正確なデータ取り扱い、不適切な製品の出荷による社会的信用の失墜 |
・確実な法令・規制への対応による事業の収益力強化 ・全社及びグループ会社における顧客満足度・社会的信用の向上 |
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CSR調達の推進 |
・調達先の違法行為・コンプライアンス違反による企業活動への悪影響 |
・社会の持続可能性と長期的な競争力の向上 |
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ガバナンス、内部統制・リスク管理・コンプライアンスの強化 |
・事業活動の低迷、社会的信用の失墜、企業価値の毀損 |
・意思決定の透明性の向上や変化への適切な対応による安定的な経営基盤の確立 ・ステークホルダーの信頼の獲得 |
サステナビリティ経営として取り組むべき最重要課題(マテリアリティ)のアクションプラン
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最重要課題 (マテリアリティ) |
アクションプラン |
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事業を通じた社会課題の解決への貢献 |
・事業ポートフォリオ改革 ・社会的価値と経済的価値を両立する製品の事業化 ・社会課題解決に資する新規事業の創出 |
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新しい価値を生み出す研究開発の推進 |
・U&P事業、新規・次世代事業へ資源配分 ・戦略研究領域設定に気候変動課題解決を設定 ・MGCグループの研究員へのDX人材の育成 |
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環境問題への積極的・能動的対応 |
・製造工程のGHG排出量削減 ・GHG排出量削減につながる新技術開発、新技術導入 ・サプライチェーンのGHG排出量削減 |
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省資源・省エネルギー・高効率による生産 |
・制御性改善による装置の安定化 ・トラブル未然防止による装置の安定稼働 |
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働きがいのある企業風土の醸成 |
・当社が育んできた人材を大切にする文化の醸成・可視化 ・種々の人事制度(含む福利厚生)を検証し、エンゲージメント向上に資する時代にあった制度設計 |
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ダイバーシティ&インクルージョンの推進 |
・採用の多様化(手段・人材) ・集合研修での啓蒙活動 ・社内イベントや研修等における、異なる部署・事業所間の交流機会づくり(MGC Commons活用を含む) |
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人権の尊重 |
・人権指針を策定し、人権を尊重する責任をコミットメント ・適切な救済措置を行う人権相談窓口を設置 |
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労働安全衛生・保安防災の確保 |
・事故・災害事例の共有及びプロセスリスクアセスメントへの活用 ・労働安全衛生リスクアセスメントの実施により危険性・有害性を排除し、働きやすい職場の構築 |
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化学品・製品の品質・安全性の確保 |
・環境安全推進協議会活動を通した情報共有と当社から関係会社への教育、支援 ・全社及びグループで実施するQ-MGCの推進 |
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CSR調達の推進 |
・取引先に対し、原材料調達活動に関する基本的な考え方及びCSR調達ガイドラインを提示し、定期的なアンケートの実施 ・アンケートに基づく評価や対話の積み重ね |
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ガバナンス、内部統制・リスク管理・コンプライアンスの強化 |
・コンプライアンス教育・啓蒙活動の充実 ・コンプライアンス違反リスクの洗い出しとリスク評価の実施 ・グループ全体でのコンプライアンス意識の向上 |
④ 指標および目標
当社グループは、サステナビリティ経営として取り組むべき最重要課題(マテリアリティ)毎にKPIを設定し、マテリアリティマネジメントの進捗管理を実施しております。
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
① ガバナンス
2019年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言に賛同しており、気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会について、サステナビリティ推進委員会の検討を踏まえ、サステナビリティ推進会議において審議・決定し、サステナビリティに関する重要な事項は、当該審議の後、取締役会へ上程いたします。
気候変動への対応は、専門的な提言を行うために全社横断的な「CN推進専門委員会」を組織し、サステナビリティ推進委員会へ報告しております。
② リスク管理
気候変動リスクの定量的な把握を行うため、インターナルカーボンプライシング制度を導入しております。CO2排出量の増減を伴う設備投資計画において、社内炭素価格(1万円/MT-CO2換算)を適用し換算した費用あるいは効果を投資判断における一助として運用し、CO2排出削減を推進し、低炭素社会構築に資する技術・製品の創出を促進しております。
気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会を評価し、シナリオ分析を通じてレジリエンスを強化するとともに、ステークホルダーとの健全な対話を推進していきます。
当社グループの基盤事業及び差異化事業であるMXDA、MXナイロン、過酸化水素、ポリカーボネート、光学材料、脱酸素剤、エレクトロニクスケミカル、電子材料事業のシナリオ分析を行い、2つのシナリオに基づき気候変動が事業に及ぼす影響の分析、対応策の検討を行いました。
産業革命前からの気温上昇を+2℃以下に抑えるシナリオにおいては、脱炭素化に向けた炭素税の導入、温室効果ガス(以下「GHG」)排出量規制強化によるコストの増加が、業績に影響を与える可能性があります。このようなリスクに対して、当社グループは、事業ポートフォリオの再構築、省エネルギー、再生可能エネルギーの導入、GHG排出量の少ないLNG発電による電力の活用などにより、影響の抑制を図っていきます。また、脱炭素社会における金属・従来材料の代替によるさらなる軽量化、再生可能エネルギーのインフラ整備、電力消費効率向上要請に伴う技術革新、バッテリー式電気自動車の拡大に伴う半導体搭載量の増加、高付加価値製品市場の拡大は、当社グループの事業拡大の機会であると分析しています。
一方温暖化が十分に防止されず、産業革命前からの気温上昇が+4℃となるシナリオにおいて化石資源の価格高騰、ユーティリティコストの上昇、自然災害の甚大化による工場操業への影響が、業績に影響を与える可能性があります。このようなリスクに対して、当社グループは、化石由来原料からの転換、製品の高付加価値化、BCPの強化などにより、影響の抑制を図っていきます。また、新興国の人口が大きく増加することから、市場開拓を加速いたします。
以上のとおり、気候変動は、当社グループの経営に悪影響を与えることが懸念されるものの、当社グループは化学製品・素材製品から機能製品に至る多様な事業ポートフォリオによりリスク対応が可能であり、当社グループに与える財務影響を低減できる可能性を見出しております。
③ 戦略
当社グループは、GHG排出量の削減目標を定め、着実な削減に取り組んで参ります。本取組みに強みを有する既存事業からの展開や研究開発力を活用、その他の事業や社外との協働も進めております。移行段階では、GHG排出量の少ないLNG発電による電力の活用や、再生可能エネルギーの導入を進めていき、加えて、各種カーボンフリーエネルギーシステム、CCUS(※)、リサイクルシステムの確立や実装等を具体的な施策とし、削減への取組みを進めていきます。
※CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):排出した二酸化炭素を回収・貯留する技術、及び貯留した二酸化炭素を化学品原料等に利用する技術
④ 指標及び目標
当社グループ(※)は、2050年カーボンニュートラル達成に向けて、GHG排出量削減の長期目標を設定しております。
※当社単体及びScope1,2を有する連結子会社
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2030年目標 |
2050年目標 |
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Scope1+2 2013年度比39%削減 |
カーボンニュートラル達成 |
当社グループのGHG排出量推移は、統合報告書
(https://www.mgc.co.jp/corporate/report.html)をご参照ください。
(3)人的資本への対応
① ガバナンス
人的資本への対応に係るサステナビリティに関する重要な事項は、「サステナビリティ推進会議」で検討・審議・決定し、サステナビリティに関する特に重要な事項は、当該審議の後、取締役会へ上程いたします。
② リスク管理
当社グループでは、人的資本の対応に係るマテリアリティとして「働きがいのある企業風土の醸成」と「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」を掲げ、それらに関わるリスクと機会を把握することで、リスク管理を実施しております。
③ 戦略
1.人材育成の考え方
当社グループは、「社会と分かち合える価値の創造」を存在理念とし、経営理念の中で「働きがいのある場を作り、意欲と能力を重んじ、活力ある集団をめざす経営」を掲げ、人材を価値創造の最も重要な資本とした経営を推進しております。その実現に向け、グループ各社において、制度の整備・拡充、教育等に取り組んでおります。
当社では、ミッション「社会と分かち合える価値の創造」の実現を目指し、従業員一人ひとりがプロフェッショナルとして、個性を磨き、知識と能力を高め、意欲高く高い目標を掲げ、それを達成することを通じて自己を実現する活性化された職場をつくるため、人材育成基本方針を策定しております。本方針では、求められる人材像として「自律的で意欲にみちた従業員」「あたたかい感性豊かな従業員」「仕事を通じて考え、学ぶ従業員」、育成方針として「全ての従業員の特長を活かす育成」を掲げ、多種多様な従業員が各々の個性を生かして活躍できる社内環境の整備に取り組んでおります。
このような当社が培っている企業風土・文化の下、変化に対応し、自律的で長期的に成長できる人材を持続的に輩出することで、特長的な事業を持続的に創出し、中長期的な企業価値向上につなげてまいります。
2.具体的な取組み
・働きがいのある企業風土の醸成
当社は、従業員の働きがいや生産性の向上、イノベーション創出に不可欠な取り組みとして、働き方改革を推進しております。長時間労働に頼らない働き方を可能とするため、業務フローの見直しや会議時間の短縮等に取り組んできました。2020年からはスーパーフレックスタイム制(コアタイム無し)、在宅勤務制度も2023年より本制度化し、より柔軟な働き方が可能な環境の整備を進めております。
また、2024年度は働きがい向上に向け、働きがいを持てる組織・職場づくりのための課題を明らかにするための全従業員(単体)を対象とした「働きがい調査」を外部調査機関を用いて、実施いたしました。当社は、KPIとして「働きがいを感じる従業員割合:2026年度70%(単体)」を掲げており、2024年度の結果は82%となっております。本調査を参考にし、課題解決に向けた施策の検討・実施をしてまいります。
・ダイバーシティ&インクルージョンの推進
当社は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を「全ての従業員が個性を活かして活躍し認め合うこと」と定義し、「多様な価値観・考え方を尊重する意識づくり」「多様な働き方を可能とする環境づくり」「人材の多様化と一人ひとりを活かす組織づくり」「個々の強みを発揮できる人材づくり」「心と体の健康づくり」をD&I推進基本方針として掲げ、多様な人材が個性や能力を発揮して多様に活躍することによる「人と組織のパフォーマンスの最大化」、多様な価値観・考え方・視点・知識を持つ人材が協働することによる「イノベーション創出」や「意思決定の質の向上」を目指しております。
また、少子高齢化に伴い労働力人口が減少する中、女性の活躍を推進することは、中長期的な企業競争力の維持・向上に不可欠と考えております。女性従業員やその育成を担う管理職向けに各種研修を行うなどして、女性従業員のキャリア開発支援を進めるとともに、KPIとして「女性管理職者数:2026年度60人」の目標を掲げております。さらに、文化・習慣・経験・技能等が異なる外国人キャリア採用者など、新たな視点やアイデアをもたらす多様な人材の採用を、「イノベーション創出」や「意思決定の質の向上」がより進むよう推進しております。
④ 指標及び目標
「③ 戦略 ・働きがいのある企業風土の醸成」に記載のとおり、「働きがいを感じる従業員割合:2026年度70%」をKPIとして掲げ、2024年度の実績は以下のとおりです。
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実績値 |
目標値 |
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2024年度 |
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2030年度 |
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75% |
※割合は、肯定的回答者/(肯定的回答者+否定的回答者)より算出しております。また、連結会社毎で業態や取り巻く環境が異なるため、働きがいを感じる従業員割合の目標値は当社単体でのKPIとしております。
「③ 戦略 ・ダイバーシティ&インクルージョンの推進」に記載のとおり、「女性管理職者数:2026年度60人」をKPIとして掲げており、2025年3月31日現在の実績値は以下のとおりです。
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実績値 |
目標値 |
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2024年度 |
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2030年度 |
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90名 |
※連結会社毎で業態や取り巻く環境が異なるため、女性管理職者数の目標値としては当社単体でのKPIとしております。一部の連結子会社の女性管理職者比率については、「
≪女性管理職者数(単体)推移≫
(4)人権の尊重
① ガバナンス
当社グループでは、「MGC企業行動指針」、「三菱ガス化学グループ人権指針」において人権の尊重等を掲げ、国連グローバル・コンパクトへの署名を行っております。「MGCグループ行動規範」でもハラスメントの禁止などを明示しております。人権尊重に取り組むため、サステナビリティ推進委員会の諮問機関として、全社横断的な「人権専門委員会」を組織しております。人権を含めたサステナビリティに関する重要な事項は、当該審議の後、取締役会へ上程いたします。
その他、独自にサプライチェーンに対し「三菱ガス化学CSR調達ガイドライン」等を示して理解と協力を得るなど、人権の保護を含めた責任あるビジネスの実施を推進しております。
② リスク管理
人権に対する意識は先進国を中心にますます高まっており、ビジネス実施におけるサプライチェーンを含めての人権の尊重及び保護の取り組みが国際的に求められております。当社グループにおいて適切な対応がとられなかった場合、法令上の責任のみならず、取引の停止、社会的制裁、信用の失墜などにより、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、経営として取り組むべき最重要課題(マテリアリティ)に「人権の尊重」を掲げ、それに関わるリスクと機会を把握することで、リスク管理を実施しております。
当社グループは、事業活動や製品サービスによって、人権に負の影響を及ぼした、もしくはこれを助長したことが明らかとなった場合、適切な救済措置を講じるよう努めております。
また、人権への負の影響を及ぼす事態(その恐れがある事態を含む)を速やかに把握し、対応するための相談窓口を社内及び社外に設置しております。
③ 戦略
当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則した人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、当社グループの企業活動から影響を受ける人々に与える人権への負の影響を特定し、その防止及び軽減を図ります。
具体的な取組みとして、2024年度はグループ各社の人権への取り組み状況を把握するため連結子会社に人権アンケートを実施しました。
④ 指標と目標
当社グループ(※)は、「人権の尊重」のマテリアリティKPIを設定し、進捗管理を実施しながら、人権デュー・ディリジェンスや啓発活動を計画的に進めていきます。
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2026年度目標 |
2030年度目標 |
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人権デュー・ディリジェンス実施 100% |
人権マネジメントを確立し、全てのステークホルダーが当社の人権指針を支持 |
※当社単体+連結子会社
当社グループでは、「リスク」を、その顕在化により人的被害、物的被害、機会損失、風評被害等が発生し、最終的に会社に経済的損失をもたらす可能性又は危険と捉えており、平時並びに緊急時においてリスクの管理を行う体制を構築しております。具体的には、「内部統制リスク管理基本規程」を定め、リスク管理及びリスク対応に際しての基本方針を定めるとともに、社長直轄の決定機関として、内部統制リスク管理担当役員を委員長とする「内部統制リスク管理委員会」を設置しております。当該委員会は、リスク管理制度等に係る方針、施策、計画に係る事項、事業及び業務に関するリスク管理に係る事項及びこれに付随する指導、指示、監督に係る事項、事業継続計画策定に関する指導、指示、監督に係る事項などを決定します。また、リスク管理に関する状況は定期的に取締役会に報告が行われております。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクとして考えられる主な事項として、後述の①から⑬までのものがあります。これらはいずれも、当連結会計年度末現在において、顕在化の程度、時期、具体的な影響等を見積もることは困難であるものの、起こり得るものとして当社グループが判断したものです(但し、必ずしもあらゆるリスクを網羅したものではありません)。
① 事業特性に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループの事業の中心は製造業であり、その製品の多くは顧客の事業活動に用いられる原材料や資材・薬剤であることから、製品販売先の国、地域の経済状況や関税その他の貿易政策、顧客の事業分野での事業環境などの影響を受けます。とりわけ、メタノール、メタノール誘導品、汎用芳香族製品や汎用ポリカーボネート樹脂等の市況製品では、一般的に、景気後退局面において販売数量の減少、販売価格の下落等が起きやすいと言えますが、特殊品・高付加価値製品においてもシリコンサイクルなど顧客需要の波はあり、需要量の減少は当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、特殊品・高付加価値製品においても価格、品質、機能、納期、カスタマーサービス等の面で競争しており、機能を代替する製品の出現など競争の水準が上がることで、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、先端半導体等のエレクトロニクス業界を主な顧客としている製品等は、一般的に製品寿命が短く、常に技術革新競争にさらされているため、既存製品の陳腐化や新規製品開発の遅延によって、売上高が減少する可能性があります。また、当社グループの製品の中には、特定の顧客に対してのみ販売しているものがあり、顧客が当該製品の使用を中止することにより、売上高が減少する可能性があります。
当社グループは、原料キシレン等の原材料や電力等を外部から購入しており、販売においては物流その他の外部サービスを利用するほか、製造設備等の保守、新設も常に行っております。必要な原材料、資材、設備、サービス等が調達、利用できなくなると製造活動に支障が出る可能性があるほか、価格が急騰した場合にも当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業は、研究開発、製造、販売、物流、企画、管理等、様々な分野における多様な多数の従業員の働きで成り立っております。人材の流動化や国内における少子高齢化、海外における急速な経済水準上昇等の影響によって、こうした人材の確保が国内外で困難となり又はそれに要する労務費その他の負担が過大となった場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、より一層の生産性向上を図るため、新しい製品・製造プロセスの開発や既存製品・製造プロセスの改善・改良を実現すべく基礎研究・応用研究に取り組むとともに、付加価値の高い新たな市場、事業分野の開発にも取り組んでおります。また、開発部門なども含めた顧客との密接な情報交換に努めるとともに、長期供給契約の締結などによりリスクの低減を図るほか、原材料等の購買においては複数の供給元からの調達や長期購買契約の締結などによりリスクの低減を図り、将来の輸送力不足等の物流リスクに関しても、物流手段、物流体制の見直し等に取り組んでおります。
生産性向上は製造活動にとどまるものではなく、事業活動の全般において情報システムその他の新たなテクノロジーを活用すべく取り組んでおります。人材の確保に関しても、多様な個性を持つ社員が互いに尊重し、全員が活躍・成長できる職場環境の実現と、多様な価値観のコラボレーションによる新機軸・技術革新(イノベーション)が次々に生まれる活性化された風土作りを目指し、専門部署を設置するとともに各種の施策に取り組んでおります。
② 海外事業活動に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、アジア、北米、南米、中東等に現地法人を設立し、又は日本から直接、海外における製造販売、調達等の事業活動を行っておりますが、各国内又は地政学的な情勢によっては、自然災害、戦争等、インフラの障害、感染症の拡大、その他予期せぬ事態による政情不安、社会的、経済的混乱等により、事業活動や資金・利益配当の送金等が困難となる可能性もあります。そのほか、法制の違いの問題、外国政府による投資等への制限や資産の国有化・収用の可能性、人事・労務問題等のリスクがあり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、可能な限り効果的かつ速やかな対応を可能とするべく、最新の世界情勢に目配りをしつつ、現地に派遣している役職員、合弁相手、関係当局その他からの情報収集に努めております。また、現地での安全確保なども含め、各事業の内容・地域等の事情に応じた対応を進めるべく取り組んでおります。
③ 合弁事業に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、日本国内はもとよりサウジアラビア、ベネズエラ、タイ、中国、韓国、トリニダード・トバゴといった海外においても製造合弁会社を多数有し、メタノール、合成樹脂、その他の各種製品を調達・販売しております。これら合弁相手は当社グループの支配下にあるわけではないため、合弁相手が当社グループや合弁事業にとって最良の意思決定をするという確証は無く、合弁が維持されないなどの事態が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、これまで築き上げてきた合弁相手先との良好なコミュニケーションの維持・強化を図り、目標・目的の共有や関係維持に努めるとともに、合弁契約その他の事業関連契約等によりリスクの低減を図っております。
④ 製品の品質に関するリスク
[リスクの内容]
前述のとおり、当社グループの製品の多くは顧客の事業活動に用いられる原材料や資材・薬剤であり、顧客と合意した規格に沿った製品を製造しております。また、製品の中には食品等の原材料として用いられるものがあります。万一、品質上瑕疵ある製品が販売された場合、当該製品を用いた顧客や最終製品の使用者等における直接的損害のみならず、機会損失に対する補償の必要が生じたり、当社の社会的信用が損なわれたりするなどして、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
実際には当社グループの製造拠点のほとんどは世界的に認知された品質管理基準に基づき製造活動を行っておりますが、万一のリスクに対処するため、生産物賠償責任保険をはじめとした賠償責任保険を付保するほか、必要に応じ、顧客との契約によって責任範囲を明確化するなどの対応を行っております。
⑤ 自然災害、事故等に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、国内外に多数の製造拠点を有しており、これら拠点において地震、風水害等の自然災害や戦争、テロ・暴動、ストライキ、通信インフラの障害、感染症の流行やそれに伴うロックダウン等の諸施策、設備のトラブルや人為的ミス、その他予期せぬ事態の影響によって製造活動が停止する可能性があります。当社グループでは危険性を有する化学物質を日常的に取り扱っていることから、爆発、火災、有毒ガスの漏洩等の事故が発生し、製造設備や従業員に被害が生じたり、当該製造拠点周辺や顧客に損害を与えたり、環境汚染等が生じるといった可能性を完全には排除できません。また、当社グループの製造拠点の多くは複数の製造設備を有し、それらが電気、用水、スチーム等のユーティリティー設備を共用していることから、当該設備が停止すると、製造拠点全体の製造活動が停止する可能性があります。このような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、総合的な環境安全管理の手段としてレスポンシブル・ケア活動を推進し、継続的改善を図る中で、リスクアセスメントの強化や安全教育の徹底により保安防災体制構築に最善を尽くしながら製造設備の維持、安定操業に努めることはもちろん、事業継続計画の策定や海外も含めた製造拠点の複数化にも取り組んでおります。加えて、火災保険、利益保険、油濁保険、賠償責任保険といった各種の保険を付保するなどの対応を行っております。
ウェブ会議の全社的な活用等、生産性向上のための施策は感染症対策に資する面もあり、今後もこれらを継続するとともに、事業所ごとに具体的な実務に即した感染症への備えを徹底していきます。
⑥ 情報セキュリティーに関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、事業活動上必要な機密情報及び個人情報を保有するとともに、ビジネスにおけるデジタル化の進展に伴い、各種情報システムを利用して事業活動を行っております。これらの情報の漏洩や情報システムのトラブル、サイバー攻撃や悪意ある第三者による詐欺行為等が発生した場合、当社グループの事業活動及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループでは、情報セキュリティー体制を整備し、各種ガイドラインに準拠すべく社内規定の整備、従業員に対する教育を行い従業員のリテラシー向上を図るとともに、一定の情報セキュリティーレベルの確保を図るべく、継続的な取り組みを行い、向上に努めております。
⑦ コンプライアンスに関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、事業の特性上、毒劇物、危険物、高圧ガス等の危険性を有する化学物質を取り扱い、製造、保管、流通、販売等の各段階で、国内外を問わず法令等により種々の規制を受けております。また、取引を含めた事業活動全般における法令の遵守はもとより、これに限らない社会的責任の遂行が求められておりますが、結果として上述の規制を含めた法令・社会的規範に抵触するものとされた場合、法的責任や是正コストの発生、社会的制裁や信用の失墜などにより、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、環境規制等に対応する専門部署の設置のほか、コンプライアンス全般について、役職員にこれを意識づける各種施策の実施や、内部通報制度をはじめとする体制を構築し、法令等の遵守に努めております。
当社グループでは、「コンプライアンス」を法令遵守にとどまらず、企業としての社会的責任を認識し、社会規範等を遵守するとともに公正で透明・自由な事業活動を行うことと捉え、周知しております。
⑧ 人権に関するリスク
[リスクの内容]
人権に対する意識は先進国を中心にますます高まっており、ビジネス実施におけるサプライチェーンを含めての人権の尊重及び保護の取り組みが国際的に求められております。当社グループにおいて適切な対応がとられなかった場合、法令上の責任のみならず、取引の停止、社会的制裁、信用の失墜などにより、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループでは従来から「MGC企業行動指針」「MGCグループ行動規範」において人権の尊重等を掲げ、国連グローバル・コンパクトへの署名も行っております。さらに近年の人権に対する社会的意識の高まりを踏まえ、改めて「三菱ガス化学グループ人権指針」を掲げ、全社横断的な委員会などを通じて人権尊重に取り組んでおります。例えば「三菱ガス化学CSR調達ガイドライン」等をサプライチェーンに示して理解と協力を得るなど、人権の保護を含めた責任あるビジネスの実施を推進しております。
⑨ 気候変動に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、事業活動等に伴い排出される温室効果ガスがもたらす気候変動や、これに関連して自然環境、事業環境等に生じる様々な変化を重要なリスク要因として認識しております。温室効果ガス排出削減への取り組みが不十分な場合、社会的制裁や信用の失墜が生じうるほか、例えば、炭素税の賦課や排出権取引制度といった各種排出規制が導入された際には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
2019年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言に賛同しており、気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会について、本社管理部門長が参画する諮問機関での検討を踏まえ、社長を議長とし、社外を含む全取締役を主構成員として、監査役等も参加するサステナビリティ推進会議において審議・決定しております。
また、脱炭素シナリオ・成り行きシナリオによるシナリオ分析を通じて、これらによるリスクを低減するとともに、リスクを事業上の機会とできるようレジリエンスを強化していきます。
カーボンニュートラルへの取り組みに強みを有する当社既存事業からの展開や研究開発力を生かし、その他の当社グループ事業や社外との協働も進めながら、移行段階では温室効果ガス排出の少ないLNG発電による電力の活用や、再生可能エネルギーの導入を進めております。今後、各種カーボンフリーエネルギーシステム、CCUS、リサイクルシステムの確立や実装等を具体的な削減施策とし、2050年の当社グループのカーボンニュートラル達成に向け取り組みを進めていきます。
⑩ 事業投資その他各種投資に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、事業成長の実現や競争力の強化等のために設備投資や研究開発投資を行い、既存事業の強化や将来の市場ニーズに合致する新規事業の創出に注力しております。また、国内外において、合弁会社を含む新会社の設立や出資等、さらには既存の会社の買収などの事業投資を実施し、今後も実施することがあります。
これらの投資がその額に見合う収益を得られない場合や、保有する有価証券の評価額が大幅に下落した場合などには、固定資産の減損、有価証券評価損、持分法による投資損失等の損失が発生するなど、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、投資に際して社内審査体制を整備・運用しているほか、その内容に応じて事業の状況等を適宜確認し、関係部門が適切な対策を講じるべく努めております。
⑪ 為替変動に関するリスク
[リスクの内容]
輸出入等の外貨建て取引においては、為替の動向によって、売上高の減少や損失の増大が生じるなど、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの海外現地法人の現地通貨建ての財務諸表項目は、当社連結財務諸表の作成のため円貨換算されており、換算時の為替レートによって、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、外貨建て債権・債務に係る為替変動リスクに対し、社内規定に基づく先物為替予約取引等によって一定程度のリスクヘッジを行っております。
⑫ 資金調達・金利変動に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、必要な資金の調達に際し、一定程度、金融機関から借り入れ等を行っておりますが、金融環境が急変した場合などには、資金調達が困難になったり金利上昇によって支払利息が増加したりするなど、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、負債資本倍率、自己資本比率などを指標に一定の財務健全性を維持するよう努めるとともに、固定金利・変動金利の適宜の組み合わせの実施や、金融機関などとの健全かつ良好な関係の維持に努めるなどしております。
⑬ 訴訟に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループの国内外の事業に関連して、将来訴訟その他の法的手続が提起され、不利な結果が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、当社グループは、国内外において特許を出願し取得するなど自社の知的財産の保護を図るとともに、他者の権利を侵害しないようにも努めております。しかし、これらに関して訴訟が生じ、当社の主張が認められなかった場合、当社グループの業績や成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、事業に関連する各種法令を遵守するのはもちろんのこと、弁護士その他の専門家の協力も得ながら、適切な契約の締結による権利義務の明確化、他者の権利の調査等、紛争の未然防止に努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下、「経営成績等」という。)の概要は以下のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、インフレ圧力がやや鈍化し、緩やかな回復傾向が見られた一方で、米国大統領選後の政策変更や、米欧主要国における金融政策の見直しなどを背景に、為替を含め金融・資本市場においてボラティリティの高い状況が継続しました。また、中国経済の停滞や、中東地域およびロシア・ウクライナにおける紛争長期化による地政学リスクに加えて、米国による関税措置など政策的リスクに晒され、経済およびサプライチェーンのさらなる分断が懸念される状況が継続しました。
当社グループにおいては、世界経済の緩やかな回復に伴い、製品需要全般に前期比では回復傾向にありましたが、先端材料を除く半導体市場の回復ペースの遅れや、中国経済低迷の長期化等の下振れ要因もあり、取り巻く事業環境としては不確実性の高い状況が継続しました。
このような中、当社グループは当期よりスタートした中期経営計画「Grow UP 2026」のもと、新たな目標として「事業ポートフォリオの強靭化」を掲げ、「Uniqueness & Presence事業へのフォーカス」「イノベーションによる新しい価値の創造」「重点管理事業の再構築」等の施策を進め、資本効率を強く意識した事業ポートフォリオ改革を徹底しております。
当社グループの売上高は、円安に加え、メタノール市況の上昇やスマートフォン向け光学材料などの販売数量増加等が増収要因となりましたが、2023年12月に(株)JSPが連結子会社から持分法適用会社へ異動したことなどにより、減収となりました。
営業利益は、(株)JSPが連結子会社から持分法適用会社へ異動したことなどが減益要因となりましたが、ポリカーボネートやポリアセタール等のエンジニアリングプラスチックスや、光学材料、メタノール事業の損益が前期を上回ったことや、円安などにより、増益となりました。
経常利益は、営業利益の増加に加え、前期に計上されたトリニダード・トバゴのメタノール生産会社における減損損失の剥落や、メタノール市況の上昇等により、持分法損益が改善したことなどから、増益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に計上された三菱エンジニアリングプラスチックス(株)の連結化に伴う段階取得差益の剥落が減益要因となりましたが、経常利益の増加に加え、繰延税金資産の回収可能性を判断する際の会社分類を変更したことにより一時的に法人税等調整額が改善したことなどから、増益となりました。
以上の結果、当社グループの連結業績は、次のとおりとなりました。
|
単位:億円 |
|
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
差異 |
増減率 |
|
売上高 |
7,735 |
8,134 |
△398 |
△4.9% |
|
営業利益 |
508 |
473 |
+35 |
+7.4% |
|
持分法損益 |
109 |
△56 |
+166 |
- |
|
経常利益 |
603 |
460 |
+142 |
+31.0% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
455 |
388 |
+67 |
+17.3% |
セグメント別の業績は次のとおりであります。
なお今期より、従来「基礎化学品事業部門」としていた報告セグメントの名称を「グリーン・エネルギー&ケミカル事業部門」に変更しております。
また、前期まではセグメント別の売上高には「外部顧客への売上高」を記載しておりましたが、今期より「セグメント間の内部売上高または振替高」を含めた売上高を記載しております。前期のセグメント情報についても変更後の売上高を記載しております。
|
<売上高> |
単位:億円 |
|
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
差異 |
増減率 |
|
グリーン・エネルギー&ケミカル |
3,231 |
4,128 |
△896 |
△21.7% |
|
機能化学品 |
4,441 |
4,092 |
+349 |
+8.5% |
|
その他 |
191 |
1 |
+190 |
- |
|
調整額 |
△129 |
△88 |
△41 |
- |
|
計 |
7,735 |
8,134 |
△398 |
△4.9% |
|
<営業利益> |
単位:億円 |
|
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
差異 |
増減率 |
|
グリーン・エネルギー&ケミカル |
127 |
177 |
△50 |
△28.2% |
|
機能化学品 |
413 |
330 |
+82 |
+25.0% |
|
その他 |
11 |
0 |
+10 |
- |
|
調整額 |
△44 |
△36 |
△8 |
- |
|
計 |
508 |
473 |
+35 |
+7.4% |
|
<経常利益> |
単位:億円 |
|
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
差異 |
増減率 |
|
グリーン・エネルギー&ケミカル |
205 |
101 |
+103 |
+102.4% |
|
機能化学品 |
439 |
386 |
+52 |
+13.5% |
|
その他 |
11 |
1 |
+10 |
+916.0% |
|
調整額 |
△52 |
△28 |
△23 |
- |
|
計 |
603 |
460 |
+142 |
+31.0% |
〔グリーン・エネルギー&ケミカル〕
メタノールは、前期に計上したトリニダード・トバゴのメタノール生産会社における減損損失の剥落や、市況が前期に比べ上昇したことなどから増収増益となりました。
メタノール・アンモニア系化学品は、MMA系製品の販売数量は回復傾向にあるものの、修繕費の増加等により減益となりました。
エネルギー資源・環境事業は、発電用LNGの販売数量の増加や、ヨウ素の販売数量増加ならびに市況の上昇等により増収増益となりました。
メタキシレンジアミンや芳香族アルデヒドは、欧米向けの需要が回復傾向にあるものの、中国向けの誘導品の販売数量減少や固定費の増加等により減益となりました。
キシレン分離/誘導品は、高純度イソフタル酸の市況は低迷しているものの、円安等もあり増収増益となりました。
〔機能化学品〕
無機化学品は、半導体向け薬液において、高機能メモリ向けに使用されるハイブリッドケミカルなどの販売数量が増加したことから増益となりました。
エンジニアリングプラスチックスは、ポリカーボネート、ポリアセタール共に、高付加価値品をはじめとして販売数量が増加したことに加え、製造コストの改善等もあり増収増益となりました。
光学材料は、スマートフォンにおけるカメラの高機能化トレンドや新興国向け需要の増加等により、光学樹脂ポリマーの販売数量が増加し増収増益となりました。
電子材料は、主力の半導体パッケージ用BT材料において、スマートフォン向け材料の販売が堅調であったことに加え、AIサーバー向け基板材料OPE®の販売数量が増加したことなどの増益要因はありましたが、BT材料の顧客向け品質対応の強化に伴うコスト増加等により、前年同期並みの損益となりました。
「エージレス®」等の脱酸素剤は、円安による輸出価格改善や海外向け販売数量の増加により増収増益となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ516億円増加し11,196億円となりました。
流動資産は、28億円減少し4,602億円となりました。減少の要因は、受取手形、売掛金及び契約資産の減少などであります。
固定資産は、545億円増加し6,594億円となりました。増加の要因は、機械装置及び運搬具の増加などであります。
負債合計は、391億円増加し4,223億円となりました。流動負債は、短期借入金の増加などにより、334億円増加しました。固定負債は、長期借入金の増加などにより、56億円増加しました。
純資産は、125億円増加し6,973億円となりました。増加の要因は、利益剰余金の増加などであります。
この結果、自己資本比率は59.7%になりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ84億円減少し569億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ19億円収入が増加し754億円の収入となりました。増加の要因は、仕入債務の増減額の増加などであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ148億円支出が増加し909億円の支出となりました。増加の要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入の減少などであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ453億円収入が増加し47億円の収入となりました。増加の要因は、短期借
入金の純増減額の増加による収入の増加などであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
グリーン・エネルギー&ケミカル事業部門(百万円) |
182,467 |
△27.0 |
|
機能化学品事業部門(百万円) |
370,117 |
15.8 |
|
その他の事業(百万円) |
42 |
- |
|
合計(百万円) |
552,626 |
△3.0 |
(注)生産金額は、生産総量から自家消費分を差引いた販売向けの生産量に当連結会計年度の販売単価を乗じて算出しており、セグメント間の内部振替前の数値であります。
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は原則として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
グリーン・エネルギー&ケミカル事業部門(百万円) |
313,392 |
△22.5 |
|
機能化学品事業部門(百万円) |
443,728 |
8.6 |
|
その他の事業(百万円) |
16,470 |
12,568.1 |
|
合計(百万円) |
773,591 |
△4.9 |
(注)当連結会計年度において、その他の事業セグメントの販売実績に著しい変動がありました。これは、一部連結子会社のシステム改修に伴いより精緻な集計が可能になったことから、報告セグメント別の経営成績をより適切に反映させるため、当連結会計年度より、各報告セグメントへの配分方法を変更したことによるものであります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
中期経営計画「Grow UP 2026」初年度にあたる当連結会計年度の経営成績ならびに最終年度(2026年度)の目標値は以下のとおりであります。
|
連結指標 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
2026年度目標 |
|
売上高 |
8,134億円 |
7,735億円 |
8,500億円 |
|
営業利益 |
473億円 |
508億円 |
850億円 |
|
経常利益 |
460億円 |
603億円 |
950億円 |
|
ROIC ※ |
3.3% |
6.4% |
8%以上 |
|
ROE |
6.1% |
6.9% |
9%以上 |
※ ROIC= (営業利益-法人税等+持分法損益)/投下資本
当連結会計年度の経営成績に関する状況の認識は「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
中長期的な課題への対処としては、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「Grow UP 2026」において2つの目標とそれぞれについて3つの施策を掲げるとともに、3か年の累計投融資額3,000億円を計画しております。成長ドライバーであるICT領域への積極投資、R&D資源の積極投入や重点管理事業の再構築等、「事業ポートフォリオの強靭化」及び「サステナビリティ経営の推進」に向け、グループ一体となりまい進していきます。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
[グリーン・エネルギー&ケミカル事業部門]
グリーン・エネルギー&ケミカル事業部門の経営成績は以下のとおりであります。
|
連結指標 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
2026年度目標 |
|
売上高 ※ |
4,128億円 |
3,231億円 |
3,500億円 |
|
営業利益 |
177億円 |
127億円 |
220億円 |
|
経常利益 |
101億円 |
205億円 |
320億円 |
※ セグメント間の内部売上高又は振替高を含む
「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおり、2024年度実績は、円安に加え、メタノール市況の上昇などが増収要因となったものの、(株)JSPが連結子会社から持分法適用会社へ異動したことなどにより、減収減益となりました。前期に計上された海外メタノール生産会社における減損損失の剥落や、メタノール市況の上昇等により、持分法損益が改善したことなどから、経常利益は増益となりました。
今後は、メタキシレンジアミン新規製造設備の早期立ち上げ、環境循環型メタノール構想Carbopath™の実現やCCS実用化に向けた取り組み、物流・生産の効率化によるコスト削減など、引き続き高付加価値化・効率化に向けた施策を推進してまいります。また、重点管理事業に位置付けるキシレン分離/誘導品については、オルソキシレン系チェーンの撤退を進めました。今後も更なる構造改革に取り組んでまいります。
[機能化学品事業部門]
機能化学品事業部門の経営成績は以下のとおりであります。
|
連結指標 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
2026年度目標 |
|
売上高 ※ |
4,092億円 |
4,441億円 |
4,900億円 |
|
営業利益 |
330億円 |
413億円 |
650億円 |
|
経常利益 |
386億円 |
439億円 |
650億円 |
※ セグメント間の内部売上高又は振替高を含む
「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおり、2024年度実績は、円安に加え、スマートフォン向け光学材料などの販売数量増加等により増収となりました。営業利益、経常利益はポリカーボネートやポリアセタール等のエンジニアリングプラスチックスや、光学材料が前期を上回ったことや、円安などにより、増益となりました。
今後は、エレクトロニクスケミカルズの国内外での生産体制の強化、電子材料の海外製造子会社の生産能力増強、レンズモノマープラントの新設など、成長が期待されるICT分野を中心に、U&P事業の成長に向けた各種施策を引き続き進めてまいります。また、重点管理事業に位置付けているポリカーボネート系事業は、シートフィルム生産拠点の集約化など各種コスト削減に取り組んでおります。今後も差別化できる高付加価値分野へのシフトを加速するとともに、事業環境に合わせた生産能力の見直しを推進することで、収益性・資本効率性の改善を図ってまいります。
② 経営成績等に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。
投資を目的とした資金需要は設備投資等によるものであります。これらの資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの借入、社債等を基本としております。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
また、当連結会計年度末における有利子負債の残高は2,139億円、現金及び現金同等物の残高は569億円となっております。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。事業に対する投資や撤退判断等、経営の意思決定を迅速に行うため、売上規模や利益額に加え、資本効率を分析値に加えております。
⑤ 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(1)技術供与契約関係
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契約会社名 |
契約締結先 |
契約締結年月日 |
契約項目 |
対価 |
契約期間 |
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三菱瓦斯化学(株) (当社) |
METANOL DE ORIENTE, (持分法適用関連会社) |
2006.12.19 |
メタノールの製造に関する特許及びノウ・ハウの非独占的実施権 |
一時金 |
終期の定めなし |
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三菱瓦斯化学(株) (当社) |
BRUNEI METHANOL (持分法適用関連会社) |
2007.4.12 |
メタノールの製造に関する特許及びノウ・ハウの非独占的実施権 |
一時金 |
終期の定めなし |
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三菱瓦斯化学(株) (当社) |
三菱瓦斯化学工程塑料(上海)有限公司 (連結子会社) |
2010.7.30 |
ポリカーボネート樹脂の製造に関する特許技術及び専有技術 |
一時金及び契約製品の売上高に対する一定の実施料 |
2012年4月より14年 |
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三菱瓦斯化学(株) (当社) |
CARIBBEAN GAS CHEMICAL LIMITED |
2015.4.10 |
メタノール及びDMEの製造に関する特許及びノウ・ハウの非独占的実施権 |
一時金 |
2015年4月より20年 |
(2)合弁事業契約関係
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契約会社名 |
契約締結先 |
設立年月 |
内容 |
合弁会社名 |
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三菱瓦斯化学(株) (当社) |
国際協力機構 三井化学㈱ 住友化学㈱ ㈱クラレ 伊藤忠商事㈱ 三菱ケミカル㈱ 日鉄ケミカル&マテリアル㈱ |
1979年11月 |
サウジアラビア王国にてサウジ基礎産業公社(SABIC)と合弁でメタノールの生産・販売を目的とする事業を営むための日本側投資法人への出資 |
日本・サウジアラビアメタノール㈱ (持分法適用関連会社) 当社出資比率 47% |
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三菱瓦斯化学(株) (当社) |
CELANESE SERVICES GERMANY GMBH グローバルポリアセタール㈱ |
1987年3月 |
ポリアセタール樹脂の製造・販売に関する合弁事業 |
KOREA ENGINEERING PLASTICS CO., LTD. (持分法適用関連会社) 当社出資比率 40% |
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三菱瓦斯化学(株) (当社) |
HANSOL CHEMICAL CO., LTD. |
1989年10月 |
超純過酸化水素の製造・販売に関する合弁事業 |
SAMYOUNG PURE CHEMICALS CO., LTD. (連結子会社) 当社出資比率 51% |
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三菱瓦斯化学(株) (当社) |
PETROQUIMICA DE VENEZUELA, S. A. 三菱商事㈱ INTERNATIONAL PETROCHEMICAL HOLDINGS LTD. |
1992年3月 |
メタノールの製造・販売に関する合弁事業 |
METANOL DE ORIENTE, METOR, S. A. (持分法適用関連会社) 当社出資比率 23.75% |
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三菱瓦斯化学(株) (当社) |
三菱ケミカル㈱ |
1994年3月 |
エンジニアリングプラスチックスの販売業務に関する合弁事業 |
三菱エンジニアリングプラスチックス㈱ (連結子会社) 当社出資比率 75% |
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グローバルポリアセタール(株) (連結子会社) |
TOA DOVECHEM INDUSTRIES CO., LTD. |
1995年7月 |
ポリアセタール樹脂の製造・販売に関する合弁事業 |
THAI POLYACETAL CO., LTD. (連結子会社) |
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三菱瓦斯化学(株) (当社) |
伊藤忠商事㈱ MIRKHAS SDN. BHD. |
2006年3月 |
メタノールの製造・販売に関する合弁事業 |
BRUNEI METHANOL COMPANY SDN. BHD. (持分法適用関連会社) 当社出資比率 50% |
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三菱瓦斯化学(株) (当社) |
三菱商事㈱ NATIONAL GAS COMPANY OF TRINIDAD AND TOBAGO LIMITED 三菱重工エンジニアリング㈱ MASSY HOLDINGS LTD. |
2013年3月 |
メタノールの製造・販売に関する合弁事業 |
CARIBBEAN GAS CHEMICAL LIMITED
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中期経営計画Grow UP 2026の基本方針である事業ポートフォリオの強靭化に向け、資源配分の選択と集中を更に進める事でイノベーションによる新しい価値の創造を加速させています。具体的にはMGCの成長を加速できるICT、モビリティ、医・食の3つの成長ターゲット領域に特に注力しつつ、気候変動課題解決に向けた研究開発を推進する事とし、これらに厚く資源配分を行っています。3つの研究所に計算化学やデータ科学の解析を専門に実施するDXチームを配置した結果、広くDX技術が活用され、研究開発の加速に非常に役立っています。また、MGCグループへのDX技術の普及に向けて、MGCグループに対して自社開発したデータ科学解析ソフトを展開しつつデータ科学の教育を推進しています。また、知的基盤センター技術情報グループでは特許文献・市場・社内情報を組み合わせて研究開発戦略などを提案するIPランドスケープの活用や、生成AIの社内展開を通じて研究開発を支援しています。IPランドスケープは2024年度からMGCグループへの展開も開始しています。
研究統括部は、本社で新規事業創出を担当する次世代戦略グループと新規事業開発グループを、ターゲット領域における全社視点での戦略、将来像策定から事業開発を同一組織内で効率的に推進できるようにICT・モビリティ・サステナグループとヘルステックソリューショングループにグループ再編を行いました。ベンチャー企業との連携及び出資、公的研究機関との共同研究など、社外との連携による研究開発活動によって新規事業領域での事業創出を継続しました。また、自ら生み出した医療包材や固体電解質などの事業化を推進するとともに、オープン・イノベーションによるアレルギー診断薬や核酸医薬などの新規領域の事業開発に取り組みました。福島県白河市における工場生産野菜事業では、安心・安全な野菜を社会に提供しています。
子会社の研究開発部門も含めた当社グループの研究開発スタッフは、グループ全体で約1,068名であり、総従業員数の約13%にあたります。また研究費の総額は
[グリーン・エネルギー&ケミカル事業部門]
グリーン・エネルギー&ケミカル事業部門内の4つの事業部の各製品群とその周辺に関わるテーマについて研究開発を進めています。
C1ケミカル事業部;当事業部ではメタノール、アンモニア、誘導体であるDME、メチルアミン、MMA系製品類を扱っています。メタノールはコアとなる製造技術や合成触媒の開発、また新潟工場に有するパイロット装置を活用しつつCO2、廃プラ、消化ガス等、多様な原料からのメタノール製造技術の実証試験を進めています。これら多様な資源を活用し製造されるメタノールを「環境循環型メタノール」と定義し、当社の技術・サービス・製品を提供した環境循環型プラットフォームとしてのCarbopathTMの実現に向けたブランディング活動を推進しています。またDX、自動運転を取り入れたプラントの運用やメタノール改質水素製造含めたメタノールtoXの研究開発、市場開拓も進めております。MMA系製品はコスト削減、安定生産に向けた技術改善を進めるとともに、独自性のある新規誘導品の開発を行っております。
ハイパフォーマンスプロダクツ事業部;主製品としてメタキシレンジアミン、芳香族アルデヒド、ポリオールなどのケミカル製品と、MXナイロン、特殊ポリエステルやシアネート、ポリイミドなどのポリマー材料製品群があります。メタキシレンジアミンは、誘導体を含めて、硬化剤、イソシアネート、ポリアミド向けに好調に推移しており、各種技術開発やコスト改善、国内外の新たな市場開発を進めております。芳香族アルデヒドは、香料や高機能樹脂添加剤向けの販売が堅調であり、更なる拡販と高付加価値製品の開発による収益力の強化に努めています。MXナイロン系製品は、バイオベースポリアミドLEXTERが自動車・電子部品用途等で販売量を拡大させており、更なる拡大に向けて技術開発を行っております。特殊ポリエステルやシアネートも新規高耐熱樹脂、高機能熱硬化性樹脂原料として市場展開を進めており、それぞれ哺乳瓶用途や複合材料原料としての採用が進んでいます。また当社のユニークな樹脂群を活用して複合材料市場への参入を進めており、USではENDUREDGEの名称でプリプレグの市場開拓を進めています。また透明ポリイミドは溶剤可溶性、透明性、完全フッ素フリーの特性を、熱可塑性ポリイミドは高耐熱性、低誘電性、良成型性の特性を生かした市場訴求を進めています。
エネルギー資源・環境事業部;天然ガスの開発・生産、LNG発電や地熱発電、枯渇油ガス田を活用したCCSの検討も手掛けています。この中でも新潟に賦存する水溶性天然ガスは地産地消が可能な資源であり、貴重な輸出資源であるヨウ素も豊富に含まれることから、ペロブスカイト太陽電池関連部材等のヨウ素誘導体開発を進めております。またエネルギーとしてメタノール直接型燃料電池の新モデルを販売、非常用電源、常用電源として訴求しています。
ライフサイエンス部;これまでに蓄積した発酵・培養・精製技術を活用し、高齢化社会のニーズに即したアンチエイジング素材であるピロロキノリンキノン(PQQ)、栄養成分を豊富に含むS-アデノシルメチオニン(SAMe)含有乾燥酵母、スペルジミン(SPD)含有乾燥酵母、乳酸菌等をサプリメント原料として開発・販売しています。これら製品の機能を深堀調査し、訴求点の拡大を進めています。抗体医薬事業では、合弁会社として設立した株式会社カルティベクスの1000L・2000Lの培養槽にて、複数の治験薬・原薬製造案件の受託製造を行っております。
当該事業部門に係る研究開発費は
[機能化学品事業部門]
機能化学品事業部門では、5つの事業分野とそれらの周辺分野において、情報通信、医・食、モビリティ、インフラ領域をターゲットとし、以下の研究開発活動に取り組んでいます。
無機化学品事業;過酸化水素とその誘導体については、生産技術のブラッシュアップによる品質の向上とコスト競争力強化を継続的に進めています。電子工業向け薬品は、主力の超純過酸化水素をはじめ、機能性薬液(HBC)や化学研磨液を展開しています。超純過酸化水素はさらなる精製技術の向上を図り、HBCはグローバルな研究開発体制のもと、半導体製造の前工程から後工程までをカバーする新規グレードを開発し、タイムリーな市場投入を促進することで採用実績の拡大に努めています。
電子材料事業;電子材料分野では、情報通信技術の高度化や多様性に応える高周波回路用材料や、データ通信の大容量化に対応するメモリおよびロジック半導体パッケージ基板用積層材料、加えて電子部品の低背化と高機能化を実現できる薄葉積層および微細回路形成材料等の開発を引き続き推進しています。
合成樹脂事業;ポリカーボネート樹脂(PC)については、難燃PCや低不純物PCなど高機能化と素材品質向上のための技術開発を推進しており、熱成形用ハードコートフィルムや新規光学フィルムなどの機能性フィルム、さらに繊維強化熱可塑プラスチック(FRTP)など高付加価値製品の開発に取り組んでいます。また、カーボンニュートラルやSDG'sに向けた取り組みとして、二酸化炭素を原料とするPC中間体および素材の開発(NEDOグリーンイノベーション基金に採択)を行っており、プロセス開発、スケールアップ検討に取り組んでいます。その他、バイオマス由来の原料を用いたPCの製造検討やグリーンメタノールを用いたポリアセタールの製造検討にも取り組んでいます。
光学材料事業;光学樹脂ポリマーは、スマートフォン向け小型カメラレンズ用材料を中心にAR/VR、センサー分野への展開を図っており、用途に応じた新規グレードの開発と市場投入を進めています。さらに、顧客との協業によりポストコンシューマーリサイクル技術を確立し、市場へ展開しています。眼鏡用レンズモノマーは、ユーザーニーズに対応した新製品開発を進めており、開発したバイオマス由来のレンズモノマーはバイオマスレンズとして市場へ展開し、一部の大手顧客に採用されています。また、これまでに培った知見を活かし、次世代デバイス向け新規光学材料の開発にも取り組んでいます。
生活衛生ソリューションズ事業(脱酸素剤事業と無機化学品事業の環境衛生関連製品群との統合により発足した新事業);脱酸素剤は食品の鮮度保持にとどまらず、医薬品の保存安定性維持や、金属の防錆、文化財の保護など身近な生活分野にも展開しています。環境に配慮し、プラスチックを減量した小型化製品の開発や、PFAS規制など最新の法規制に対応した製品の開発も進めています。また、培ってきた空間制御技術や殺菌技術を応用することで、精肉や青果などのフードロスを削減できるような技術開発を進めています。
上記以外に、新規材料開発として、各分野の周辺材料や基盤技術を他の市場・用途に展開できる製品開発を精力的に進めています。
当該事業部門に係る研究開発費は