文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年12月31日現在)において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
「協和キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。」を経営理念とし、2030年に向けたビジョン「協和キリンは、イノベーションへの情熱と多様な個性が輝くチームの力で、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値の継続的な創出を実現します。」を掲げています。
この経営理念に謳う「新しい価値」を社会と共有できる価値(CSV:Creating Shared Value)と捉え、社会課題への取組みによる「社会的価値の創造」と「経済的価値の創造」の両立により、企業価値向上を実現するCSV経営を実践しています。
また、協和キリングループで働く全ての人々が、行動の拠り所となる考え方や姿勢を示す中心概念の“Commitment to Life”と3つのキーワードで構成される価値観を、全員で共有、実践することで、社会から信頼される企業であり続けることを目指しています。
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
世界中で医療費の抑制の圧力が強まり、また新薬開発の難度が高まるなど製薬業界にとって厳しい環境変化が起きています。そのような環境の中、2030年のビジョン実現に向けたマテリアリティ(重要経営課題)*1を選定しており、「Story for Vision 2030」により戦略としての解像度を高め、2030年ビジョン達成に向けて取組みを推進しました。
今まで培った技術に関する蓄積と疾患に関する知見を融合することにより、Life-changingな価値の創造と創薬のさらなるスピードアップを目指すために、「骨・ミネラル」「血液がん・難治性血液疾患」「希少疾患」を自社で注力する疾患領域に設定し推進します。技術面では、先進的抗体技術やOrchard Therapeutics社が保有する造血幹細胞遺伝子治療技術の活用など、革新的なモダリティ*2を活用したプラットフォームを着実に築いていきます。これに加え、オープンイノベーションやパートナー連携、ベンチャーキャピタル/コーポレートベンチャーキャピタルファンド活動などの強化も推し進めます。このような取組みで生み出されるLife-changingな価値は、「自社で注力する疾患領域のアセット」、又は、「戦略的パートナリングアセット」として、最善のビジネスモデルを構築することにより、より早くかつより多くの患者さんに届けることで、価値の最大化を図っていきます。「Story for Vision 2030」の戦略ストーリーに沿って、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての成長を実現していきます。
*1 マテリアリティ(重要経営課題)の詳細は、「第2 事業の状況 3 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。
*2 モダリティ:構想した治療コンセプトを実現するための創薬技術(方法・手段)の分類
Story for Vision 2030
自社で注力する疾患領域のアセット:
Crysvita(日本製品名:クリースビータ)、Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)、OTL-200(欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy)などの価値最大化に向け、上市国・地域の拡大や市場浸透に継続して取組んでいきます。
開発品では、Kura Oncology社とziftomenib*3の開発と販売に関する戦略的提携を進め、急性白血病に対する新たな治療選択肢の提供を目指していきます。加えて、Crysvita(日本製品名:クリースビータ)と同じ適応症のKK8123*3、自社初の抗体薬物複合体(ADC)であるKK2845*3、造血幹細胞遺伝子治療のOTL-203*3及びOTL-201*3についても着実に開発を進めていきます。
戦略的パートナリングアセット:
KHK4083*3(一般名:rocatinlimab)の開発では、Amgen社と連携し、複数の臨床試験を継続して推進していきます。加えて、低分子であるKHK4951*3(一般名:tivozanib)、当社独自のバイスペシフィック抗体技術REGULGENTを搭載したKK2260*3及びKK2269*3、並びにPOTELLIGENT抗体であるKK4277*3については、今後パートナーとの連携も含め、価値の最大化を図っていきます。
*3 開発パイプラインの詳細は、「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載のとおりです。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年12月31日現在)において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティ
当社グループにとってのサステナビリティとは、社会のステークホルダーとともに、“病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値”を共創していくことを意味しています。私たちは、ビジョンの実現を通して、当社グループのサステナビリティと社会のサステナビリティを両立していきます。
当社グループのサステナビリティを推進することは、我々の掲げるCSV経営とつながっています。私たちは、社会的価値(病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値を提供し、社会課題を解決すること)と、経済的価値(当社グループがさらにLife-changingな価値を生み出していくために人的資本と知的資本に投じる原資となりうる利益)という2つの価値創造の両立を実現していきます。
社会的価値を提供し、さらに次の社会的価値を創出するための経済的価値を得て、世界中の病気と向き合う人々に必要とされる企業であり続けること、これをサステナブルな事業活動と考えています。
また、私たちがサステナブルに事業活動を継続していくという観点から、未来世代を重要ステークホルダーと捉え、地球環境への負荷の低減に取組んでいきます。
2024年にはPSCI (Pharmaceutical Supply Chain Initiative)に加盟いたしました。当社グループだけでは人権・環境・コンプライアンスといった観点からのサードパーティマネジメントに関して実施できる範囲に限りがありますが、PSCIに加盟することで、グローバルの製薬企業等と連携しながらより大きなインパクトを出していきたいと考えています。
(2)協和キリンのビジョン実現に向けたストーリーとマテリアリティ(重要経営課題)
① 協和キリンのビジョンと価値創造ストーリー・Story for Vision 2030
当社グループは、2021-2025年の中期経営計画策定時に、ビジョン2030を策定し、我々の創造する価値がLife-changingな価値であることを明確化しました。
また、競争戦略としてのCSV経営を掲げ、社会的価値(病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値を提供し、社会課題を解決すること)と、経済的価値(当社グループがさらにLife-changingな価値を生み出していくために人的資本と知的資本に投じる原資となりうる利益)という2つの価値創造を両立し、病気と向き合う人々に笑顔をもたらしていくことをアウトカムとして明確化し、これを当社グループの“価値創造ストーリー(下図参照)”として示しています。
当社グループの“価値創造ストーリー”では、社会的価値と経済的価値の両立を目指すLife-changingな価値の創出にはイノベーションへの挑戦が不可欠であり、それを支える人的資本と知的資本が我々の競争力の源泉であることをインプットとして示しています。人的資本については、協和キリンのビジョン・価値観に共感する従業員、多様性の輝くチーム力、KABEGOEの企業文化として、後述の(3)④「Life-changingな価値を実現する人材・基盤の強化」の項目に詳細記述しています。知的資本については、抗体技術の進化と多様なモダリティの取り込み、疾患サイエンスの解明と理解、社内外のイノベーションの融合として、「
中央に配したビジネスモデルにおいては、全ての従業員がPatient Centricity(患者さん中心)という考えを基に、病気と向き合う人々の笑顔につながる価値創造を行うことを示しています。それは、「研究開発によるアンメットメディカルニーズを満たす価値創造」のプロセスだけでなく、「製品・品質・流通」、さらに、「患者さんに医薬品を届けるプロセス」においても、一人ひとりが価値創造に取組むこと、そして各バリューチェーンが相互に連携することでさらに大きな価値の創出につなげることを意味しています。
このように、人的資本と知的資本を競争力の源泉とし、大きな価値創造のサイクルを生み出し、アウトプットとしてLife-changingな価値の継続的な創出と提供に繋げていきます。そして、これらのアウトプットが、病気と向き合う人々の笑顔というアウトカムにつながります。協和キリンは、従業員を含む全てのステークホルダーとともに、笑顔をもたらす価値創造に取組んでいます。
また、この価値創造ストーリーは「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載したStory for Vision 2030と相互に強く関連しています。Story for Vision 2030は当社グループがビジョン実現のために、Life-changingな価値を創出・提供する戦略をうちだしたものであり、価値創造ストーリーは競争力の源泉を含む全体のビジネスモデルを示したものになります。
② マテリアリティとガバナンス
2030年に向けたビジョンの実現のため、SASB(Sustainability Accounting Standards Board), Access to Medicine Index, PSCI等を参照し、社会の持続性へのインパクトとグループの事業へのインパクトの観点から、当社グループが優先的に取組むべきマテリアリティを特定しています。
マテリアリティの選定プロセスは、以下のとおりです。
マテリアリティは、2021-2025年中期経営計画及び連動する年度経営計画に組み込まれています。また、計画の進捗は四半期ごとにモニタリングされ、グローバル経営戦略会議及び取締役会に報告されています。なお、中長期的な経営課題の解決を推進するために、2024年からの業績指標には年度経営計画で定めた非財務目標(マテリアリティに関連する目標を含む)の達成度を加えることとしています。
マテリアリティの見直しは、社内外の環境変化を踏まえ、毎年実施し、グローバル経営戦略会議で承認後、取締役会で決定されています。
③ 戦略及び指標と目標
当社グループは、マテリアリティを“2030年ビジョン実現のための重要経営課題”と位置づけています。
特定した当社グループのマテリアリティは「価値創造トピック」と「価値向上トピック」とに分類され、2030年ビジョン実現のための戦略の幹「アンメットメディカルニーズを満たす医薬品の提供」「患者さんを中心においた医療ニーズへの対応」「社会からの信頼獲得」「Life-changingな価値を実現する人材・基盤の強化」とも対応しています。その上で、マテリアリティについて目標を定め、戦略的に取組んでいくことがビジョンの実現、ひいては、当社グループと社会のサステナビリティの両立につながると考えています。
マテリアリティごとの機会・脅威と指標(及び目標)
価値創造トピック
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戦略の幹 |
マテリアリティ |
定義 |
取組むことで得られる機会 |
取組まないことで生じる脅威 |
指標*2 |
|
アンメットメディカルニーズを満たす医薬品の提供 |
革新的な医薬品の創出 |
短期的な収益性との適正なバランスを保ちながら、中長期的な視点に基づく研究に対する積極的な投資(オープンイノベーション活動を含む)を通じ、アンメットメディカルニーズを満たす革新的な医薬品(Life-changingな価値)を創出し続ける |
・日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての存在意義 ・新たな価値の創出による企業価値の向上 ・当社グループの強みとする領域の拡大 ・共同研究や開発機会の増加 |
・当社グループの存在意義の低下 ・ビジョンの未達 ・新たな価値の創出機会の逸失 ・共同研究機会の減少 |
・Life-changingな価値としての革新的医薬品の創出数(承認) ・それぞれの売上 |
|
製品の価値最大化 |
創出した医薬品の真の価値を見極め、LCM(Life Cycle Management)を推進し、パートナリングの機会も活用しながら価値の最大化を図る |
・適応/剤型拡大:開発試験/製造における期間短縮及び効率化、医療ニーズへの対応による薬剤価値の増加 ・上市国・地域の拡大:病気と向き合う人々の経済的負担軽減(保険償還)を伴う提供価値のインパクト増加 |
・本来の製品価値を最大化しないことによる、病気と向き合う人々の負荷の増加 ・経済的価値の低下 |
||
|
パイプラインの充実 |
ポートフォリオ分析に基づき、自社で注力する疾患領域を中心にパイプラインを充実する |
・日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての注力する疾患領域での存在意義の増大(患者さんへの提供価値の増大) ・資本の効率的な有効活用による企業価値の増大 |
・当社グループの強みとする領域における存在意義の低下 ・競合に対する競争力の低下 |
||
|
患者さんを中心においた医療ニーズへの対応 |
医薬へのアクセス向上 |
病気と向き合う人々の声を聞き、アンメッドメディカルニーズを満たす医薬品を創出し、一人でも多くの患者さんにできるだけ早く届けることを自分たちの使命と捉え、医薬品アクセス基本方針*1に則った活動(特に医薬品へのアクセス向上)に取組む |
・企業の存在意義の増大 ・各地域の患者支援団体との関係の維持強化による企業認知と信頼性の向上 |
・Life-changingな価値を創出する会社としての存在意義の低下 ・患者さんの声を聞く機会の逸失、疾患に対する社会の理解不足による、マーケット拡大機会の逸失 |
・注力する疾患領域品の、上市国・地域、薬剤提供患者数(若しくは比率) |
|
医薬品にとどまらない価値の創出 |
患者さんからのインサイトに基づく医薬品にとどまらないヘルスケアソリューションの取組みを進めるとともに、キリングループとしてのシナジーも活かし、医薬品にとどまらない新たな価値を創出する |
・新たな価値の提供 ・新市場への進出 |
・Life-changingな価値とイノベーション創出機会の逸失 |
・医薬品にとどまらない新たな価値の提供 |
|
Life-changingな価値を実現する人材・基盤の強化 |
人材ポートフォリオ |
Life-changingな価値の継続的な創出に向け、価値創造を促進する組織と人材のポートフォリオを描き、その実現に向けて、多様性を活かした人材マネジメントを推進する |
・イノベーション創出、グローバル事業展開の基盤の強化 ・多様な人材確保、変化対応力の強化 |
・事業と個人の成長が描けないことによる人材の流出 ・モチベーション、心身の健康悪化による労働生産性の低下 |
・Life-changingな価値を創出するための基盤強化 |
|
企業文化 |
Life-changingな価値の継続的な創出に向けて、日本発のグローバル・スペシャリティファーマに相応しい「壁を乗り越える/KABEGOE」企業文化を醸成する |
・2030年ビジョンの実現、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての持続的な成長・発展 |
・改めたい企業文化(対話不足、枠に閉じる、他人事)へ逆戻りし、社会からの信頼失墜、競争力の低下 |
||
|
デジタルトランスフォーメーション |
医薬品の研究・開発から販売後まで、全てのバリューチェーンから得られたデータを活用し、病気と向き合う人々をはじめとする様々なステークホルダーとの共創を進めることで、デジタルによる新たな価値を提供する |
・DXによるプロセスの変革や効率化を通じた、事業機会の拡大 |
・生産性低下、外部環境への対応遅れ等による競争上の劣後 |
*1:
*2:価値創造トピックに関する戦略及び目標についての詳細は「
価値向上トピック
|
戦略の幹 |
マテリアリティ |
定義 |
取組むことで得られる機会 |
取組まないことで生じる脅威 |
指標及び目標 |
|
社会からの信頼獲得 |
製品の品質保証と安定供給 |
自社が供給する製品の品質保証・安定供給を継続する体制・手順を構築し、適切に運用する |
・ステークホルダー(医療関係者・患者さん・行政)からの製薬メーカーとしての信頼の獲得 ・確実な販売地域拡大/グローバル事業の展開 |
・ステークホルダー(医療関係者・患者さん・行政)の当社グループへの信頼失墜 ・販売機会の損失 ・当局査察の厳格化等による新規承認の確度の低下 ・製造権を含めたパートナリング、ライセンス契約機会の逸失 ・従業員の業務負荷増による健康安全・モチベーション低下、人材の流出 |
・自社事由による欠品、限定出荷発生数ゼロ |
|
地球環境への負荷の低減 |
製品の研究開発段階から製造・販売・使用・廃棄に至る全ライフサイクルに亘り、サプライチェーンの環境影響にも配慮し、次世代に引き継ぐ地球環境の保護に積極的に取組む |
・未来世代に対する貢献を通じた当社グループに対する信頼性の向上 ・物理的/移行リスクと機会の適正な管理による事業活動の維持 |
・規制強化(炭素税含む)による新たなコストの発生 ・異常気象による災害や健康被害の増加。それに伴う事業活動への影響 |
・バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量ネットゼロ |
|
Life-changingな価値を実現する人材・基盤の強化 経営基盤 |
コーポレートガバナンス |
経営理念及び価値観のもと、ビジョンの実現を通じて持続的成長と中長期的な企業価値向上を効果的・効率的に図ることができるコーポレートガバナンス体制を実現する |
・ステークホルダーからの信頼獲得と、それに伴う企業価値の向上 ・安定的な事業基盤の獲得 |
・信頼の失墜と、それに伴う企業価値の低下 |
・経営基盤強化 |
|
事業活動における倫理と透明性 |
国内外の関係法令、社内外の諸規則・ルール及び社会規範を遵守し、法的責任と社会が求める倫理的責任を果たす行動をとる。また、ステークホルダーに対して適示適切かつ公正な情報開示を行う。なお、「患者さんの安全性の確保と適正使用の推進」「従業員の健康と安全」「人権の尊重」「責任あるマーケティングと倫理的広告」「研究開発倫理と信頼性の確保」「適正な納税」「贈収賄・腐敗防止」「個人情報・秘密情報の保護」を含む |
・ステークホルダーからの信頼獲得と、それに伴う企業価値の向上 ・安定的な事業基盤の獲得 |
・事業活動の制限や停止(研究開発、生産活動や販売活動等) ・信頼の失墜 |
||
|
リスクマネジメントの強化 |
必要なリスクを適切に取るとともに、当社グループ及びステークホルダーを脅威から守るための行動を取る |
・適切なリスクテイクによる企業価値の向上 ・安定的な事業基盤の獲得 |
・事業活動の制限や停止(研究開発、生産活動や販売活動等) ・信頼の失墜 |
④ リスク管理
当社グループのマテリアリティにおける「取組むことで得られる機会」及び「取組まないことで生じる脅威」は、マテリアリティごとに③「戦略及び指標と目標」の表に記載しています。また、当社グループは、お客さまと社会から長期的に信頼を獲得し、事業を継続して経営目標を達成するために、「協和キリングループ リスクマネジメント基本方針」のもと、サステナビリティに関するリスクも含めて、グループ全社でリスクマネジメントを実施しています。
詳細は、「
(3)協和キリンのビジョン実現に向けた取組み
① アンメットメディカルニーズを満たす医薬品の提供
①-1 革新的な医薬品の創出
①-2 製品の価値最大化
①-3 パイプラインの充実
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
② 患者さんを中心に置いた医療ニーズへの対応
②-1 医薬へのアクセス向上
協和キリンは医薬へのアクセス向上を健康と福祉に関する重要な社会課題と捉えており、さまざまな取組みを進めています。医薬品を一人でも多くの患者さんにできるだけ早く届けることを自分たちの使命と捉え、外部のステークホルダーとも連携して取組みを推進しています。
通常、医薬品を世界の患者さんに提供するためには各国での承認取得・保険償還を経て上市する必要があります。そのため、当社ではアクセス向上のために、グローバルで上市国を増やすことを第一に取組んでおり、Crysvita、Poteligeoにおいては上市国・地域数が50を超えるなど取組みが進んでいます。また、2024年1月に買収したOrchard Therapeutics社が保有する造血幹細胞遺伝子治療の技術プラットフォームを活用した遺伝性疾患・希少疾患におけるアクセス向上にも取組んでおり、Libmeldy/Lenmeldyでは10か国で上市に至っています。本治療が対象の一つとしているMLD(異染性白質ジストロフィー)で治療が手遅れにならないようにするためには、発症前、特に生まれた直後に疾患を見出すことが重要であり、Orchard Therapeutics社ではMLDの患者さんを1人でも多く救うために、各国の新生児スクリーニングにMLDの原因遺伝子変異の検査が追加されるように政府や関連学会等との連携を進めています。
一方、各国の規制状況が異なるなどの理由により、上市までに時間がかかってしまうことがあり、そのため有効な医薬品があってもその国の状況により、必要とする患者さんがタイムリーに医薬品にアクセスできない場合があります。このような状況に対する取組みとして協和キリンでは医師からの要請に対して適格性を判断したうえで、医薬品を提供する取組みを行っています。また、低中所得国を含め製造販売承認取得を予定していない国においても、患者さんの医薬品アクセスの可能性を確保するためにCrysvitaの「指定患者プログラム」を行っています。
協和キリンでは上市国を増やすだけでなく、地域特性に合わせて取組むことにより、患者さんにLife-changingな価値をお届けしていきます。
②-2 医薬品にとどまらない価値の創出
より長期的な視点で患者さんからのインサイトに基づく医薬品にとどまらない価値の創出についても取組みを進めます。キリンホールディングス株式会社との共同出資のベンチャーとしてCowellnex株式会社(コヴェルネクス)を2024年9月に設立しており、両社の強みを融合したイノベーションにより健康を取り巻く社会課題を解決していきます。
③ 社会からの信頼獲得
③-1 製品の品質保証と安定供給
当社は、医薬品をグローバルに安定的に供給するために、強固な生産体制を確立するとともに、品質保証体制及びサプライチェーンマネジメントの強化に努め、自社や委託先での生産における課題についても引き続き適切に対処していきます。
③-2 地球環境への負荷の低減
当社グループは、マテリアリティとして「地球環境への負荷の低減」を特定しており、気候変動への対応や水資源管理等の環境に対するさまざまな施策を実行しています。
気候変動への対応の詳細は、「
④ Life-changingな価値を実現する人材・基盤の強化
④-1 人材ポートフォリオ
④-2 企業文化
人的資本に関する取組みは、以下のとおりです。
(ア)当社グループの人的資本に関する考え方
当社グループは、経営理念とビジョンの実現と、新しい価値を創造し続ける人・組織づくりの強化に向けて「協和キリングループ 人材マネジメント基本方針」を定め、その中で人材を「イノベーションの源泉」と位置づけています。また、価値創造ストーリーにおいては、人的資本を競争力の源泉の一つと位置付け、「協和キリンのビジョン・価値観に共感する従業員」「多様性の輝くチーム力」「KABEGOE(後述)の企業文化」を重要視していることを明確に謳っています。社員一人ひとりの能力と挑戦を結集し、2024年に発表したビジョン実現のための戦略ストーリー「Story for Vision 2030」に沿って、Life-changingな価値に繋がる「価値創造活動」を推進することが、ビジョンの実現につながると考え、個々の人材の能力を最大限引き出し、挑戦できる機会を提供することに注力しています。研究、開発、製造、販売の各バリューチェーンにおいて、「患者さんの笑顔のため」という使命感と責任感、高い専門性を持って変革に挑み続け、やりきる人材の輩出を目指し、健康で多様な人材が活躍できる職場環境整備や組織風土、企業文化の醸成など社内環境を整備しています。
(イ)人材育成方針と施策
『価値創造活動の推進』
全社が一丸となってLife-changingな価値に繋がる「価値創造活動」を行うためには、高い専門性と情熱を持って自ら新たな挑戦に取組むと同時に、チームメンバーの挑戦を後押しし、サポートする強いリーダーシップが求められます。こうした組織の価値創造活動を主導する人材を育成するため、グローバルなOne Kyowa Kirinの枠組みの中で、業務を通じた成長機会の提供だけでなく、職位や目的に合わせた具体的な人材育成プログラムも提供しています。
『キャリアオーナーシップ』
日本リージョンでは、グローバルグレードに基づいたジョブ型の等級・報酬制度を導入しました。この制度により、One Kyowa Kirin体制の下で適材適所の人材マネジメント実現を目指しています。全管理職のジョブディスクリプション公開を通じて、社員一人ひとりがキャリアオーナーシップを持って自身の現在地とありたい姿を再認識し、キャリア目標を見出すことの重要性を社員に示しました。また、管理職を対象とした「メンバーのキャリア自律支援を行うための研修」をすでにスタートさせており、今後についても、全社員が利用可能な「キャリア個別相談」を設け、社員が主体的に学びを実践できるよう「チャレンジ支援制度」・「応募型研修」を拡充していく予定です。このように、当社グループは、社員のキャリア実現に向けた努力を支援し、お互いの成長にコミットした対等な関係に基づき、さまざまな関連施策を企画実行しています。
『患者さんの笑顔のため』
当社グループは、Patient Centricityを価値創造ストーリーに掲げており、社員全員がPatient Centricityのマインドを高めることができるよう、機会作りに力を入れています。具体的には、病気と向き合う患者さんをお招きして社員と対話いただく「病気と向き合う人々の今を知るセミナー」の開催や、海外における「Sharing Patient story」を紹介する企画を行っています。これらの機会を通じて、患者さんの声を取り入れていくことの大切さを社員が再認識し、日々の行動にPatient Centricityのマインドが反映されることを期待しています。
『DX人材育成』
当社グループは、Life-changingな価値実現のためのデジタルトランスフォーメーションとして「デジタルビジョン2030」を掲げ、オペレーショナルエクセレンスの実現と、デジタルトランスフォーメーション推進基盤の強化を通じて、継続的に新たな価値を創造していきます。人とデータに焦点をあて部門横断でのデジタル人材強化とデータ利活用基盤づくりを推進しており、人材強化の面では「データ循環型バリューチェーンの転換」を支えるデジタル人材の獲得・強化に向けて、デジタルプロジェクトプランナー、データサイエンティストやデータスチュワードなど、各部門や領域をリードできる人材を育成するとともに、全社員を対象としたデジタルリテラシー教育による底上げも行い、“トップダウン”と“ボトムアップ”の両側面からデジタル人材を育成しています。
(ウ)社内環境整備
『グローバルタレントマネジメント体制の整備と推進』
One Kyowa Kirin体制を発展させるため、各地域や機能部門の将来を担う次世代リーダー候補を発掘し、育成、抜擢する仕組みを推進しています。2021年から始まった現在の中期経営計画では、グローバルタレントマネジメントを戦略的に進めるべくグローバル共通の人事基盤整備としてグローバルキーポジションとその人材要件の特定、グローバル共通のグレーディングの整備、リーダーシッププリンシプルの策定、グローバル人事システム(HRIS)の導入等に取組んできました。これらは、採用、育成、評価、異動配置・登用などのタレントマネジメントにおいて重要な役割を果たします。グローバルでリアルタイムに人事データを共有し、データに基づいたタレントマネジメントを推進し、適材適所の人材配置を実現することで、持続的にグローバルリーダーを育成していくことを目指しています。また、具体的な人材パイプラインの強化策として、サクセッサーごとの個別の育成計画(グローバルサクセッションプラン)の策定、次世代リーダー候補の可視化や個別育成計画、グローバルでの短期派遣による人材育成プログラム(グローバルエクスチェンジプログラム)などに取組んでいます。各ファンクションやリージョン人材戦略との連携を図りながら、グローバルHRビジネスパートナー体制を構築しており、これにより人材戦略を統合し効果的に活用することができるようにしています。
『多様性の輝くチーム力』:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)
当社グループでは、ダイバーシティ(多様性)・エクイティ(公平性)・インクルージョン(受容)をLife-changingな価値を創出し世界中の患者さんにお届けするための企業文化の基盤と捉えています。「私たちのDE&I宣言」というグローバルの目標を掲げており、さまざまな個性を持つ人材が互いを認め合い、社員全員が能力を最大限に発揮できる組織づくりのため、グローバル及び各リージョンにおける優先課題を特定し、積極的な施策を推進しています。特に女性活躍推進については、グローバルの優先課題として女性リーダーの確実な輩出を目指し、2021年度末で29%のグローバル女性リーダー比率を、2030年度末までに40%とすることを目標としています。また、日本国内では、女性管理職比率を2025年度末に18%以上にすることを目標としており、女性管理職向けメンタリング・プログラムを実施しています。2024年には営業本部の女性社員を中心とした従業員リソースグループが発足しました。また、企業内保育園の開設や育児休職からの復職支援フォーラム開催など、女性のキャリア形成支援や仕事と育児の両立にかかわる取組みを行っています。
その他の多様性に関する指標は、「
『協和キリンのビジョン・価値観に共感する従業員』:エンゲージメント
従業員のエンゲージメントを測る指標として、毎年エンゲージメント調査(Global Engagement And Motivation Survey)を実施し、組織課題の把握や組織活性化に向けての施策検討に活用しており、特に、会社に対する貢献意欲やロイヤルティ、自発的努力の指標である「社員エンゲージメント」、自分のスキルや能力を活かす機会や働きやすい環境の指標である「社員を活かす環境」、に着目しています。調査結果を受けては、各組織で分析を行い、従業員一人ひとりがエンゲージメント高く働けるよう、見出された課題に対する改善案を立案・実行しています。
2024年の調査では、「社員エンゲージメント(±0pt)」・「社員を活かす環境(+1pt)」ともに肯定回答70%で昨年と概ね同水準の結果となりました*3。
*3:調査対象者数・回答率 対象者数:5,499名 回答者数:5,359名 回答率:97%
設問カテゴリー 社員エンゲージメント/戦略・方向性/リーダーシップ/品質・顧客志向/個人の尊重/成長の機会/報酬・福利厚生/社員を活かす環境/業績管理/権限・裁量/リソース/教育・研修/協力体制/業務プロセス・組織体制/経営理念・価値観/行動規範・コンプライアンス/期待される働き方/ダイバーシティ&インクルージョン/会社のクオリティーカルチャー/KABEGOE
ベンチマークデータ 世界企業平均、世界好業績企業平均、製薬企業平均、リージョン別平均、地域・国別平均
『KABEGOEの企業文化』:企業文化改革
当社グループは、ビジョンの実現に向けたKey Behaviorとして「壁を乗り越える(KABEGOE)」を掲げ、グローバル・スペシャリティファーマに相応しい「ありたい企業文化」を実現すべく、2020年より企業文化改革に真摯に取組んでいます。企業文化は社員一人ひとりの日々の判断や行動の積み重ねであり、経営層の強いコミットメントと現場の継続的な活動が必要不可欠であることから、その両面からの取組みを展開しています。グローバルのトップリーダーについては、One Kyowa Kirin Culture Workshopを年2回開催し、2024年に新たな戦略的方向性として発表されたStory for Vision 2030に沿って病気と向き合う人々に笑顔を届けるためにはKABEGOEの実践が不可欠であることを確認し合い、その定着に向けたディスカッションを行いました。また、経営層が現場に赴いて従業員の生の声をきき、また経営の立場から会社や方向性について語ることで相互理解を深める場としてMeet Upを開催し、役職や立場、所属リージョンの壁を越えた対話を行っています。現場における取組みとしては、KABEGOEリーダー(日本リージョン)、Culture ambassador(北米リージョン)を任命し、企業文化改革の理解浸透や職場でのKABEGOEを促進しています。こうした取組みの進捗は、エンゲージメント調査(Global Engagement And Motivation Survey)や企業文化改革に関する簡易調査等でモニタリングしてグローバル経営戦略会議等で結果を共有する他、ダッシュボードサイト経由で組織長へ公開し、各職場の課題の分析やアクションに反映して、Life-changingな価値を実現する人材・基盤の強化に繋げています。また今般、“KABEGOE”の具体的な行動としてまとめた「KABEGOE Principles」を策定し、さらなる「KABEGOEの企業文化」の浸透を図ります。
『従業員のウェルビーイング』:健康経営/ハイブリッドワーキングモデル
全社員がその能力を最大限発揮し価値創造するにあたっては、心身の健康が不可欠であり、社員の「健康で質の高い豊かな人生の実現」を目指して「協和キリングループ Wellness Action」を策定し、健康経営の推進にも取組んでいます。また、従業員一人ひとりが主体となって、機能ごと、リージョンごとに最適な働き方を考える「ハイブリッドワーキングモデル」を提唱しています。
<協和キリン ハイブリッドワーキングモデル3つの基本方針>
● Nothing that costs our well-being is worth it(ウェルビーイングを第一の判断基準に)
● Flexibility within a framework(価値創造に向けた枠組みの中で柔軟に)
● Employees are the architects of the new Model(意思をもって自分たちの働き方をつくる)
こうした取組みと成果が評価され、経済産業省が実施する「健康経営度調査」において、所定の基準を満たしたことから、「健康経営優良法人2024(ホワイト500)」に認定され、制度開始以降8年連続で認定を受けています。
(エ)人的資本に関するリスク管理
詳細については、「
④-3 デジタルトランスフォーメーション
マテリアリティの一つとして特定した“デジタルトランスフォーメーション”については、2021年に「デジタルビジョン2030*4」を作成し、その実現のためのデジタル戦略の3つの柱である「Digital for Operation:オペレーショナルエクセレンスの実現」「Digital for Innovation:データ循環型バリューチェーンへの転換」「Foundation for Digital:DX推進基盤の強化」に沿ってDX推進活動を実施してきました。「Story for Vision 2030」では、自社で注力する疾患領域のアセットと戦略的パートナリングアセットを明確化しましたが、これを機にDX推進活動について改めて振り返るとともに、上記3つのデジタル戦略の柱を「Story for Vision 2030」に沿って解像度を上げ、さらにDX活動を推進しています。本年4月からはChief Digital Transformation Officer (CDXO)を設置し、体制を強化いたします。Life-changingな価値の創出・提供のためのデジタルトランスフォーメーションとして掲げた「デジタルビジョン2030」のもと、オペレーショナルエクセレンスの実現と、DX推進基盤の強化(Operational & Digital transformation)を一層進めていきます。
*4:
(https://www.kyowakirin.co.jp/sustainability/human_resources_infrastructure/dx/index.html)をご参照ください。
1.リスクマネジメント体制と重要リスク特定のプロセス
当社グループは、日本、北米、EMEAを中心とした地域(リージョン)軸、地域を跨いだ機能(ファンクション)軸と製品(フランチャイズ)軸を組み合わせたグローバルマネジメント体制「One Kyowa Kirin」で事業活動を推進しています。3つの地域にそれぞれリージョナルCSR委員会を設置し、各地域の重要リスクを議論しています。また、CxOが中心として参加するグローバルな位置づけのグループCSR委員会を年2回開催し、グループ全体のリスクマネジメントに関する戦略や活動方針の審議、半年間の活動状況のモニタリングを行っています。これらの委員会で議論された重要リスクの低減策やモニタリングの結果は取締役会に報告されています。
重要リスク特定のプロセスについては、四半期に1回、業務執行部門が社内外の環境変化を踏まえてリスクを洗い出し、経営に与える影響度と発生頻度(発生する可能性)を分析します。CSR委員会事務局は社内外の環境変化やリスクトレンドについて業務執行部門と対話しながら分析結果を調整した後、リスクをカテゴリー毎に整理し、重要リスクを特定します。CSR委員会では重要リスクの特定が適切かを確認するとともに、その低減策と進捗のモニタリングを行い、業務執行部門のリスクマネジメントを支援しています。
また、サステナブルな社会の実現に貢献すると同時に、企業の持続的な成長を実現するために、社会と事業の両方の視点から重要な経営課題(マテリアリティ)を中長期的に解決すべきリスク・機会として特定し、中期経営計画に反映させて取組み、CSR委員会においてリスク・機会についての認識の変化や、取組みの進捗を議論しています。
当社グループのリスクマネジメント体制(2024年10月より)
2.デジタル活用によるリスクマネジメントのグローバル一元管理
当社グループでは、グループ全体のリスクをデータベースで一元管理するためのシステムを導入し、デジタル化を進めています。業務執行部門がリスク台帳やインシデント情報をデータベースに登録した後、ワークフローを通してリスクを専門的かつ全社的な立場で支援・助言・モニタリングする部門に情報を共有したり、リスクマップにて重要リスクの見える化を実施したりするなど、リスクの状況を効果的かつ効率的にモニタリングする体制の整備を進めています。
3.クライシスマネジメント体制と演習の強化について
当社グループでは、グローバル、リージョン、ローカルの三層構造からなるエリア対策本部や、専門性を活かして対応するファンクション対策本部が、グループクライシスマネジメント規程のもと自律的にクライシスマネジメントを実行し、グローバルな対応が必要な場合は、各対策本部が連携して、迅速に影響低減を図るための仕組みを構築しています。また、重要リスクを中心にクロスリージョン・クロスファンクションにクライシス・BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)演習の実施を通じて、最悪の事態を想定したクライシス対応や事業継続体制の強化を図っています。演習を通じて対応力向上を図るとともに、リスク評価や低減策を見直し、リスクの予兆発見のためのモニタリングにつなげるなど、急激な環境変化の中、全社的な課題に対して、平時のリスクマネジメントと有事のクライシスマネジメントを一貫して取組むことで、困難な状況にもしなやかに適応するレジリエントな組織を目指しています。
当社グループのクライシスマネジメント体制(2024年10月より)
4.事業等のリスク
当連結会計年度末(2024年12月31日現在)において当社グループが特定した重要リスクを以下に記載していますが、社内外の環境変化により想定していないリスクが発生する可能性や、ここで記載していないリスクが当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
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グローバル戦略品の価値最大化に関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 当社グループは、X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)及び抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)等をグローバル戦略品と位置づけ、これらの価値最大化を進めています。Crysvitaは、2023年4月に北米における自社販売を開始しており、順調に市場拡大をしていますが、最大規模の市場として今後の動向を引き続き注視していく必要があります。またグローバル戦略品全般のリスクとして、上市準備が遅延し事業エリア拡大が遅れる、潜在患者の掘り起しの難航等で市場への浸透が進まない、新規上市国での価格が想定と乖離して売上が予測から大きく下振れする又は品質や製造トラブルの発生等により安定供給に支障が生じた場合は、経営目標の達成が困難になる可能性があります。 |
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主な対策 グローバル戦略品の価値最大化に向けては、市場浸透施策や欧米を中心とした事業地域の拡大を進めています。また、グローバルレベルで各機能(部門)や各地域(関係会社)間のシームレスな連携を可能にするグローバルマネジメント体制に加えて、各グローバル戦略品の責任者を任命し、同責任者を中心とした機能・地域横断のチームが一体となって各製品の価値最大化の戦略策定と遂行に取組んでいます。Crysvitaの北米における自社販売を開始していますが、引き続き、治療を必要とする患者さんの特定とコミュニケーション体制の充実、フィールド活動のモニタリング、並びに、それらの活動に携わるフィールドチームのさらなるレベルアップといった施策に対して万全の態勢で臨んでいきます。なお、品質や製造トラブル等については、「製品品質に関するリスク」及び「生産・安定供給に関するリスク」において主な対策を記載しています。 |
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医療費抑制策に関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 国内外において医療費抑制のトレンドが高まっており、医薬品の保険償還価格引下げや、後発医薬品の使用促進等の各国における医療制度改革の動向は、当社グループの経営成績及び財政状態等に大きな影響を与えています。また、このような状況下においては革新的で、アンメットメディカルニーズに応える医薬品であることがステークホルダーからの高い評価を得るうえで重要になりますが、一方で追加的有用性・革新性を有する新薬等の開発は、その規制要求レベルの高まりも踏まえ多大な投資と時間を要するため、製品の戦略の時宜を捉えた柔軟な見直しができなければ、将来の成長性と収益性が低下する可能性があります。 |
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主な対策 各国の医療政策動向を注視するとともに、患者さんにLife-changingな医薬品等を確実にお届けするために、その製品のもつ価値を多様な側面から評価する方策を戦略的に検討しています。また、価格設定については、各国制度に準拠し、ステークホルダーからの理解も得ながら、革新的な医薬品を継続的に創出していくために適正な売上収益の確保に繋がるよう、事業への影響の評価も踏まえて検討しています。 |
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生産・安定供給に関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 各地域における詳細で精度の高い需要予測ができない場合、特に他社の類似薬の供給トラブル等により市場の需給状況が著しく変動した場合、さらには自社工場や委託先、原材料資材等の調達先を含むサプライチェーンにおけるコンプライアンス違反や災害被害によって供給能力が維持できない場合には、当社グループの製品の安定供給に支障が生じ、上市スケジュールの遅延、製品の限定出荷等により、製薬会社としての信頼の失墜や売上収益の減少等が生じる可能性があります。 |
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主な対策 製品の売上情報や外部環境変化に伴うニーズの動向を速やかに把握して需要予測の精度を高めるとともに、需要と供給をバランスさせ、事業計画に沿った調整を迅速かつ柔軟に行うためのS&OP(Sales and Operations Planning)と呼ばれるプロセスを展開しています。またBCPの策定、リスクに応じた安全在庫保有方針の見直しのほか、業界に求められている自己点検の実施、客観的な安定供給指標の設定とモニタリング、需給計画のシステムによる可視化、さらには委託先の拡充、自社工場への設備投資、製造作業効率化のためのデジタル化推進、製造並びに品質管理部門の増員と教育システムの充実を進めています。 |
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人的資源に関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 当社グループは、多様な背景を持つ人たちが、自らの持つ能力を発揮して国内外の事業活動を推進するグローバルマネジメント体制の定着を進めていますが、グローバルマネジメント体制を担う人材を育成、採用できない場合は、当社事業活動の継続や持続的な成長の阻害要因になる可能性があります。 |
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主な対策 当社グループでは経営理念とビジョンの実現、新しい価値を創造し続ける人・組織づくりの強化に向けて「協和キリングループ人材マネジメント基本方針」を定め、その中で「人材はイノベーションの源泉」と位置づけています。また、価値創造ストーリーにおいては、「協和キリンのビジョン・価値観に共感する従業員」「多様性の輝くチーム力」「ビジョン達成のため壁を乗り越える企業文化(KABEGOE)」を重要視していることを明確に謳っています。従業員一人ひとりの能力と挑戦を結集し、2024年に発表したビジョン実現のための戦略ストーリー「Story for Vision 2030」に沿って、Life-changingな価値に繋がる「価値創造活動」を推進することが、ビジョンの実現につながると考え、個々の人材の能力を最大限引き出し、挑戦できる機会を提供することに注力しています。研究、開発、製造、販売の各バリューチェーンにおいて、「患者さんの笑顔のため」という使命感と責任感、高い専門性を持って変革に挑み続け、やりきる人材の輩出を目指し、健康で多様な人材が活躍できる職場環境整備や組織風土、企業文化の醸成など社内環境を整備しています。 One Kyowa Kirin体制をサステナブルに発展させていくため、各地域や機能部門の将来を担う次世代リーダー候補を発掘し、育成、抜擢する仕組みを推進しています。2021年から始まった現在の中期経営計画では、グローバルタレントマネジメントを戦略的に進めるべくグローバル共通の人事基盤整備としてグローバルキーポジションとその人材要件の特定、グローバル共通のグレーディングの整備、リーダーシッププリンシプルの策定、グローバル人事システム(HRIS)の導入等に取組んできました。これらは、採用、育成、評価、異動配置・登用などのタレントマネジメントにおいて重要な役割を果たします。グローバルでリアルタイムに人事データを共有し、データに基づいたタレントマネジメントを推進し、適所適材の人材配置を実現することで、持続的にグローバルリーダーを育成していくことを目指しています。また、具体的な人材パイプラインの強化策として、サクセッサーごとの個別の育成計画(グローバルサクセッションプラン)の策定、次世代リーダー候補の可視化や個別育成計画、グローバルでの短期派遣による人材育成プログラム(グローバルエクスチェンジプログラム)などに取組んでいます。各ファンクションやリージョン人材戦略との連携を図りながら、グローバルHRビジネスパートナー体制を構築しており、これにより人材戦略を統合し効果的に活用することができるようにしています。 これらの取組みの浸透度や定着度については、従業員意識調査(Global Engagement And Motivation Survey)や企業文化改革に関する簡易調査等によりモニタリングしています。 |
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研究開発に関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 研究開発では、技術、疾患及びオープンイノベーションを軸とした以下の戦略を立てて、画期的な医薬品の継続創出を進めています。①抗体技術の進化へ挑戦を続けることに加え、多様なモダリティを駆使して、画期的新薬を生み出すプラットフォームを築く、②グローバル戦略品であるCrysvita・Poteligeoを生み出した、これまでの疾患サイエンスを活かしつつ、有効な治療法のない疾患に、“Only-one value drug”を提供し続ける、③アカデミア・スタートアップ等との共同研究活動(サンディエゴ地区を活用した情報収集など)の継続と、ベンチャーキャピタルファンド出資などを介した情報への早期アクセスを融合することによる、進化したオープンイノベーション活動により外部イノベーションを積極的に取り込んでいます。しかしながら、長期間にわたる新薬の研究開発の過程において、期待どおりの有効性が認められない場合や安全性等の理由により研究開発の継続を断念しなければならない場合には、パイプラインの充実ができず、将来の成長性と収益性が低下する可能性があります。 |
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主な対策 当社グループは、グローバル候補品等の次世代を担う新薬パイプラインを強化するために、研究開発への積極的な投資(研究開発費率18~20%を目処)を進めています。ビジネスバリューチェーンによる競合優位性の獲得を期待できる「骨・ミネラル」「血液がん・難治性血液疾患」「希少疾患」の領域に研究資源をフォーカスさせ、さらに、低分子モダリティを縮小し、将来性の高い遺伝子細胞モダリティや複合モダリティとしての先進抗体へと大きく舵を切ることで、戦略的かつ効率的な研究によるイノベーションの創出を行います。自社での研究に加え、基盤技術やパイプラインの獲得に向けた戦略的パートナリング(導入、提携等)など、産官学全てを視野に入れたオープンイノベーション活動にも力を入れています。海外のKyowa Kirin North America研究所を通じた世界有数の研究機関であるラホヤ免疫研究所(La Jolla Institute for Immunology)との連携強化、コーポレートベンチャーキャピタル活動の推進を引き続き実施しています。また、2024年1月に買収した英国に拠点をおく造血幹細胞遺伝子治療を専門とするOrchard Therapeutics社との共同研究プロジェクトがスタートし、前述の遺伝子細胞モダリティ研究が本格的に始動しました。こうした自社研究やオープンイノベーション活動をグローバルで迅速かつ効果的に進めるために、2025年1月より研究本部の組織改編を行い、グローバルに適切なマネジメントとガバナンスを実現する研究組織体制を整備していきます。疾患領域とモダリティをフォーカスし、組織体制を刷新する一連のトランスフォーメーションにより、当社のビジョンであるLife-changingな価値を継続して創出するための研究開発力を大幅に強化していきます。 |
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自社及びグループ会社管理に関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして経営目標の実現を図るために、当社グループは、「内部統制システム構築の基本方針」に従い、当社グループのコンプライアンス、リスクマネジメント、財務報告の適正性確保等について適切な体制を構築するとともに、その運用状況を取締役会で報告し、グループのガバナンス強化に取組んでいます。これらの取組みが十分に機能しない場合、リスクの顕在化による生産活動や販売活動等の制限や停止、製薬会社としての信頼の失墜等につながる可能性があります。 |
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主な対策 「リスクマネジメント」では、未来を予測し先手を打った全社的リスクマネジメントを目指し、グループ全体のリスクを一元管理するITツールを導入し、各地域と本社をつないだグローバル及び国内外各地域におけるクライシス・BCP演習の継続的な実施、中長期的に解決すべきリスク・機会であるマテリアリティの議論を通じて、新たなリスクや潜在化するリスクへの対応力向上を図っています。特にグループ及びリージョンの重要リスクについては、それぞれグループCSR委員会及び各リージョンのCSR委員会で報告・モニタリングされ、その内容はそれぞれの取締役会に報告しています。また、The Institute of Internal Auditorsが提唱する3ラインモデルに準拠し、リスクに対する適切な対応を行う体制を確保しています。 なお、コンプライアンスは「コンプライアンスに関するリスク」に、財務報告の適正性確保は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」にそれぞれ記載しています。 |
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製品品質に関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 医薬品製造には、GMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)に適合した設備(ハード)と手順や人材(ソフト)が求められます。各国当局のGMP査察や社内監査において、GMP上の重大な問題が見つかった場合には、規制当局より製造停止や出荷停止を指示される可能性があります。また、使用する原料や製造工程において、何らかの原因により製品の安全性や品質に懸念が生じた場合、出荷停止や製品回収が発生する可能性があります。さらに、試験方法の不備や試験室管理の問題により不適切な試験が行われた場合、製品の品質が保証できないリスクも存在します。このような状況が発生した場合、患者さんの健康被害が生じるリスクがあるほか、出荷停止や製品回収に伴う企業の信頼性低下や、経済的損失が企業運営やビジネス展開に大きな影響を及ぼす可能性があります。 |
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主な対策 品質保証の機能はグローバルQAヘッドが、グローバル品質保証委員会、定期及び臨時のグローバル製品協議会等にて、各地域統括会社から報告される重大な品質関連事項についての協議、新たな製造場所の選定における品質面からの評価、製品品質の定期的レビュー、課題別のグローバルタスクフォースの活動状況のレビュー、監査で確認された課題及びその対応状況のモニタリング等を通じて、各地域の品質保証活動に関する情報を収集・共有し、迅速に意思決定を行う体制を構築しています。また、グローバルでの独立した専門の監査チームによる自社及び委託先への品質監査の強化を図っています。さらに、膨大な品質保証業務に関する情報をグローバルレベルで適切に管理、活用し、プロセスと信頼性を継続的に改善するために、品質マネジメントシステムの電子化が完了しており、主要な品質マネジメントプロセス(教育訓練、文書管理、逸脱、苦情、是正及び予防措置、変更管理、監査、製造所管理、リスク管理等)の電子的管理を行っています。社内では、品質文化の醸成に努め、全社員の意識向上を図っています。 なお、品質保証部門と安全性管理部門は常に密に連携しており、品質に懸念が生じた場合は患者さんへの影響を速やかに評価し、また製品の安全性モニタリングの際には常に品質による影響を考慮し、患者さんへの健康被害を未然に防ぐ体制を構築しています。 |
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取引先・委託先管理に関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 当社グループは、他社との共同開発、共同販売、技術提携及び合弁会社設立等の提携、又は医薬品の原料供給、製造、物流、販売等に関して国内外のサプライヤーへ業務を委託しています。しかしながら、サプライヤーにて人権、法令遵守、環境及び情報セキュリティ等の問題が発生し、提携や業務委託による成果物が得られなかった場合や提携解消等が発生した場合、成果物の品質に問題が発生した場合には、当社製品の安定供給、物流や販売等に支障が生じ、製薬会社としての信頼の失墜や売上収益の減少又は承認申請遅延等が生じる可能性があります。 |
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主な対策 高品質な製品を安定して供給するために、サプライヤーとともにサステナブル調達を推進していくことを表明した「協和キリングループ調達基本方針」に沿って、サステナブル調達の推進に取組んでおり,協和キリンのサステナブル調達の取組みをご理解頂くために、サプライヤーの皆様が参加してのオンライン説明会を定期開催しています。また、社会との関係、従業員との関係、ルールの遵守、人権尊重、環境保全、情報管理、リスクマネジメントの7つの項目について、サプライヤーに理解・協力を求める事項を「協和キリングループサプライヤー行動指針」としてまとめ、サプライヤーとの取引に際しては「協和キリングループサプライヤー行動指針」に遵守することを取引契約書の条項に加えるとともに、「協和キリングループサプライヤー行動指針」への取組み状況を確認するためにアンケートを実施し、結果を公表しています。また、外部機関からリスク情報や信用調査情報を入手し、客観的な情報に基づく評価も行っています。取引中も同様の情報を随時取得するとともに、懸念情報があった場合にはサプライヤーに状況を確認します。また、リスク情報を入手した場合には、関係部署と速やかに共有し、必要に応じてサプライヤーに是正を求めたり、サプライヤーの変更を検討したりするなど関係部署と協働してリスク低減を図っています。各地域で整備された調達機能・体制にて、リスク低減の取組みを実施しており、状況をモニタリングしています。 2022年12月に制定した「協和キリングループ人権基本方針」に基づき、人権デュー・デリジェンスの取組みも進めています。 |
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情報セキュリティに関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 当社グループは、各種ネットワークや情報システムを使用しているため、システムへの不正アクセスやサイバー攻撃を受けた場合は、システムの停止や秘密情報が社外に漏洩する可能性があります。取引先がサイバー攻撃を受けた場合にも、当社グループの秘密情報や個人データの漏洩、事業活動の停止、ブランド棄損等の被害につながる可能性があります。ハイブリッドワークの定着により生産性が向上する一方で、自宅の通信環境の利用や一人業務が増加しているため、ネットワーク通信の盗聴、サイバー攻撃、メール誤送信、PC端末の紛失などのリスクが高まり、情報漏洩が発生する可能性があります。またクラウドサービスの利用増加により、外部サービス側でのセキュリティ事故(サービス自体が利用できなくなることを含む)が当社の事業継続に直接影響する可能性があります。 |
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主な対策 当社グループでは、年々多様化かつ巧妙化するサイバーセキュリティ上の脅威に対する技術的な対策に加え、サイバーインシデント発生時の初動対応の処理フローや手順書をプレイブックとしてまとめる等、情報セキュリティレベルを向上するための取組みを進め、インシデント発生時における対応体制を整備しています。また、セキュリティ業界の標準的なフレームワークを利用した外部評価を定期的に実施することで、客観的なリスク評価に基づく対応計画を策定し継続的な改善を図っています。さらに取引先に対してもモニタリングを実施し、セキュリティ対策の対応状況を確認する等、各種リスク低減のための取組みを進めています。また、インシデントが発生した場合に迅速に対処して被害を最小化するための取組みとして、各地域における、ランサムウェア等のサイバー攻撃に対応するクライシス演習などを継続的に実施しているほか、経営陣を対象としたグローバル演習にも取組んでいます。さらに、従業員の情報セキュリティレベルを向上させるための、教育研修の定期的実施や、標的型攻撃メール訓練の実施、最新の攻撃手法の特徴に合わせて、コンピュータウイルスに感染しないための情報や注意点などを従業員向けセミナーやサイバーセキュリティに関する特設サイト等を通じて周知、啓発をしています。加えて、クラウドサービス利用の制限があることを想定したBCP整備や演習を進めています。 |
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コンプライアンスに関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 医薬品の研究開発、製造販売、及び輸出入などの製薬会社の事業活動には、遵守すべき各種の法令等の規制があります。また、患者さんを中心においた活動のための患者団体等との交流や、医薬品のプロモーションには各国の法規制に加えて業界の自主規範があり、製薬会社にはその遵守が強く要請されています。これらの法令等の規制や自主規範を遵守できなかったことにより、制裁を受け、新製品開発の遅延や中止、生産活動や販売活動等の制限や停止、さらには製薬会社としての信頼の失墜や訴訟等につながる可能性があります。 |
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主な対策 当社グループでは、コンプライアンスを法令遵守だけではなく、社会の要請をいち早く察知かつ正しく理解し、倫理的に行動することと捉え、役員及び従業員一人ひとりがとるべき全般的な行動を「協和キリングループ行動規範」として定めており、健全な倫理・コンプライアンス文化の醸成に努めています。また、各種法令等の規制や自主規範を遵守するための体制を構築するとともに、教育研修を継続的に実施し、理解浸透や意識啓発に取組んでいます。コンプライアンスの遵守状況と重要課題への対策の進捗状況については、定期的に開催される各リージョナルCSR委員会やグループCSR委員会にて議論し、継続的な改善を進めています。加えて、行動規範に反する行為や当社グループのブランド価値を著しく損ねる行為を予防、早期発見、是正するために、内部通報窓口も設けています。さらに、毎年、従業員コンプライアンス意識調査を実施し、潜在的なリスクを洗い出すとともに、回答内容の事実関係の確認や対処など初期段階でのリスクの低減を図っています。調査結果は、グループCSR委員会や取締役会にも報告しています。また、グループコンプライアンス強化プロジェクトでは、「協和キリングループ行動規範」を補完する各グループ基本方針やグローバル製薬企業として遵守すべき各種法令等の領域をベースとした各主管部署における取組みの状況をモニタリングする仕組みや、グローバル本社を含む各リージョンのコンプライアンスプログラムに対する全社的なモニタリングの仕組みを整備しています。モニタリング結果に応じて、改善に向けた対策の実行を行うことで、グループのコンプライアンスレベルをより高めていきます。 |
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自然災害に関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 各地で起こりうる地震や台風等の自然災害により、当社グループの本社、工場、研究所、事業所等が閉鎖又は事業活動が停滞し、創薬研究や臨床開発の進展、製品の安定供給、安全性情報の収集、製品の情報提供等に影響が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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主な対策 当社グループでは、災害発生時の従業員とその家族の安全を確保するため各拠点と連携して防災計画を立て、安否確認訓練や備品の補充と点検を定期的に進めています。また、通常の事業活動が継続困難な状況に陥った場合においても、医薬品の供給、安全性の監視及び情報提供を継続するために、BCPを策定しています。超大型台風の発生、首都直下型大地震などを想定したBCP演習を実施し、演習を通して課題を抽出し、BCPの継続的な改善を進めています。2021年に制定したオールハザード型のグローバルBCPガイドラインに基づき、様々な事象に対応できるよう、各地域での事業継続体制の強化も進めています。例として、高崎工場内に免震構造を有する新たな倉庫棟の建設を予定しています(2023年10月着工、2026年1月稼働開始予定)。 |
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気候変動に関するリスク |
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リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響 気候変動に伴う異常気象による水害の発生が、当社の製品の安定供給や研究活動など全ての事業活動に影響を及ぼす可能性があります。さらに、将来、炭素税の導入や環境規制強化への対応等による新たなコストの発生や、温室効果ガス削減目標を達成できない場合には当社グループのブランド価値が低下する可能性があります。 |
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主な対策 事業活動への影響に加え、持続可能な社会の実現に向け、気候変動(温暖化の防止)への対応は重要と捉えており、中長期的な温室効果ガス削減のためのロードマップを作成して全社で様々な取組みを進めています。中期的には、省エネの取組みと再生可能エネルギーの導入や拡大を中心に温室効果ガス削減を加速させています。2020年以降、現時点までに高崎工場、富士事業場、宇部工場、及び本社の購入電力を100%、温室効果ガスを排出しないRE100適合の再生可能エネルギーに切り替えています。また、東京リサーチパークについても2024年度よりFIT非化石証書による購入電力の再エネ化を進めています。 なお、2023年には宇部工場でオンサイトPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)モデルによる大規模太陽光発電設備(1.47MW)が稼働するとともに、ZEB(net Zero Energy Building)認証を取得した新事務所棟が竣工しています。 当社グループのバリューチェーンにおけるGHG排出量(Scope3)については、GHGプロトコルに整合した環境省のガイドラインに従い15のカテゴリーに分け算定しています。本年、Scope3削減に向けた中長期目標(2030年:2019年比30%削減)を設定するとともに、削減に向けたロードマップも策定しました。また、ロードマップに従い委託製造からの排出量を削減するため、サプライヤーからの一次データ取得に向けた調査を実施し、対応を開始しました。引き続き、委託製造・サプライヤーと連携・協働し、削減に向けた施策を展開していきます。なお、環境パフォーマンスデータの内、特に気候変動並びに取水量については重要指標と捉えており、データの信頼性を担保するため第三者保証を取得しています。 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言については賛同を表明し、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会、及びその影響を見極め、TCFDの提言に沿って、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク・機会の管理」及び「指標と目標」の4項目について、以下のとおり情報開示しています。 |
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気候変動関連の情報開示(TCFD提言に基づく情報開示)
<ガバナンス(環境課題に対するガバナンス)> 気候変動課題を含めた環境管理全般の最高責任者として、Chief Compliance Officer (CCO)が任命されています。 気候変動におけるリスクや機会に関する課題、環境活動方針・結果などについては、定期的に開催されるCCOを委員長としたCSR委員会のグループの環境管理における重要事項として報告・審議・決定し、その内容は、取締役会に報告しています。 なお、2020年度より環境管理統括機能を担うCSR推進部内にTCFD検討担当を設置し、気候変動におけるリスクと機会の特定、評価、対応について検討しています。 特定したリスクと機会の担当部署は、これらを定期的に見直し、CSR委員会へ付議するとともに対応の進捗を報告し、経営戦略の一環として気候関連課題に取組んでいます。
<戦略> パリ協定における「平均気温上昇を1.5℃以下に抑えた世界」を目指すとともに、気候変動に関するリスクと機会に対するシナリオ分析結果及びキリングループ環境ビジョン2050を踏まえ、当社の気候変動への対応について見直し、事業戦略に落とし込み対応を進めています。 緩和策としては、2050年までのバリューチェーン全体のGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)排出量ネットゼロ実現に向けてSBT1.5℃目標*1に対応したCO2削減目標へと上方修正するとともに、目標達成に向けたロードマップを作成し、再生可能エネルギーの早期導入・拡大、省エネルギー、エネルギー転換などの施策を推進し、脱炭素社会への移行リスクに対応します。 適応策としては、工場・研究所の敷地内への浸水等による長期間の操業停止など、グローバルな生産活動への影響に対し、大規模自然災害に対するBCPを策定し、水害に対しては浸水防止措置や設備投資対応(生産に関する重要資産の地理的分散保管、建物の防水化、重要設備の高層・高所配置化、浸水防止壁設置など)を実施し、物理的リスクに対応します。今後、サプライチェーン全体における影響評価・対応も実施し、継続的にリスクの最小化を図っていきます。 一方、気温上昇により花粉症患者数が増加し、結果としてアレルギー薬市場に対する機会が見込まれましたが、実質的な売上収益への影響は限定的と考えています。 *1 パリ協定の水準に整合する、科学的根拠に基づいた企業における温室効果ガス排出削減目標
<気候変動に関するリスク・機会と財務影響の分析>
(分析条件)
<リスク・機会の管理> リスクと機会の特定については、リスクと機会ごとにシナリオ分析に基づき、発生時期や発生確率、影響範囲とその大きさ、対策内容などを総合的に評価し優先度合を決定しています。事業への影響が大きいものや社会的責任の高いもの、発生確率の高いもの等を特定し管理します。 なお、特定したリスクについては、その対応も含めてCSR委員会にて報告、審議・承認を得るとともに、四半期ごとに対応状況をモニタリングし、総合的にリスクを管理しています。 |
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<指標と目標> 2021年にSBT1.5℃目標に基づく新たな2030年CO2排出量削減目標:2019年比55%削減を策定しました。また、本目標の達成に向けロードマップを作成するとともに、2021-2025年中期経営計画に組み込み、単年度ごとに目標の設定・管理を行い、施策の検討・展開を行っています。なお、本年、CO2排出量削減に向けた短期目標(2025年度CO2排出量削減目標:2019年比63%削減)を更新しました。
なお、当社グループが所属するキリングループでは、キリングループ環境ビジョン2050に基づき、「2050年にバリューチェーン全体のGHG排出量ネットゼロ」の目標*4を掲げています。中期目標としては、GHG削減目標を2030年までに2019年比でScope1*5+Scope2で50%削減、Scope3で30%削減(SBT1.5℃目標承認取得済み)、使用電力の再生可能エネルギーを2040年に100%(RE100加盟)とすることも設定(いずれも2020年に実施)しています。当社グループにおいても、キリングループと同様に2050年にバリューチェーン全体のGHG排出量ネットゼロ、及び2040年までに使用電力の再生可能エネルギー100%化の達成を掲げ、キリングループと連携し取り進めるとともにScope3排出量削減についても、継続して取組んでいきます。なお、新たに当社グループScope3排出量削減目標(2030年:2019年比30%削減)も設定しました。
なお、詳細は、当社ホームページ(https://www.kyowakirin.co.jp/sustainability/trust/environment/tcfd/index.html)をご参照ください。
*4 パリ協定が求めるGHG排出削減の水準と整合した科学的根拠に基づいた目標であるとして「SBTネットゼロ」の認定を取得。 *5 Scope1、Scope2、Scope3:組織活動に伴って発生するサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量のこと。Scope1(直接排出量)、Scope2:(エネルギー起源の間接排出量)、Scope3(その他の間接排出量)から構成される。 |
その他、国内外製薬業界の事業活動に潜在するリスクとして、知的財産権に関するリスク、副作用に関するリスク、訴訟に関するリスク、製品競合・特許権満了に関するリスク、原燃料価格の変動リスク、為替・金融市場の変動リスク、地政学リスク、カントリーリスク、感染症リスク等、様々なリスクがあります。なお、当社グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性のあるリスクは、ここに記載されたものに限定されるものではありません。
<事業の概況>
世界中で医療費の抑制の圧力が強まり、また新薬開発の難度が高まるなど製薬業界にとって厳しい環境変化が起きています。そのような環境の中、当社は「Story for Vision 2030」により戦略としての解像度を高め、2030年ビジョンの実現に向けてより焦点を明確化した取組みを推進しました。アンメットメディカルニーズを満たす医薬品の提供に向けて、生産・品質保証・物流の強化を継続するとともに、新たなLife-changingな価値を創出すべく研究開発活動を行ってきました。
Crysvita(日本製品名:クリースビータ)*1、Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)*2では、上市国・地域の拡大や市場浸透に取組み、着実な成長を推進しました。また、Orchard Therapeutics社の子会社化を完了し、小児の異染性白質ジストロフィーを適応として開発した造血幹細胞遺伝子治療OTL-200(欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy)の米国での承認を取得しました。
免疫・アレルギー疾患領域のKHK4083(一般名:rocatinlimab)の開発ではAmgen社と連携しながら複数の臨床試験を推進し、第III相臨床試験プログラム「ROCKET」の中の「Horizon」試験において、主要評価項目及び全ての主要な副次評価項目を達成したトップライン結果が得られました。また、Kura Oncology社と急性白血病を適応症とした開発品であるziftomenibの開発・販売に関する契約を締結しました。Crysvita(日本製品名:クリースビータ)と同じ適応症で開発中のKK8123及び自社初の抗体薬物複合体(ADC)であるKK2845*3の臨床試験を開始しました。
日本においては、透析中の慢性腎臓病における高リン血症の改善を適応症としたフォゼベルの販売を開始し、骨系統疾患を対象としたinfigratinib(開発番号:KK8398)に関する日本での独占的ライセンス契約をBridgeBio Pharma社と締結しました。
上記に加えて、「Story for Vision 2030」に沿って、創薬力強化を目指したグローバルでの研究体制の変革、バイオ医薬の開発加速化を推進するための米国新バイオ医薬品工場建設の着工、アジア・パシフィック地域に係る事業の再編を取り進めました。
*1:主に遺伝的な原因で骨の成長・代謝に障害をきたす希少な疾患の治療薬。
*2:特定の血液がんの治療薬。
*3:急性骨髄性白血病の治療を目的とする開発品。
(1)当期の財政状態の概況
(単位:億円)
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前連結会計年度末 |
当連結会計年度末 |
増減 |
|
資産 |
10,259 |
10,674 |
414 |
|
非流動資産 流動資産 |
4,148 6,111 |
5,633 5,040 |
1,485 △1,071 |
|
負債 |
1,895 |
2,166 |
270 |
|
資本 |
8,364 |
8,508 |
144 |
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親会社所有者帰属持分比率(%) |
81.5% |
79.7% |
△1.8% |
◎ 資産は、前連結会計年度末に比べ414億円増加し、10,674億円となりました。
・非流動資産は、繰延税金資産や持分法で会計処理されている投資の減少等がありましたが、Orchard Therapeutics社株式の取得に伴う企業結合の結果、のれん及び無形資産が増加したことに加えて、開発品導入による無形資産の取得のほか、有形固定資産の取得等により、前連結会計年度末に比べ1,485億円増加し、5,633億円となりました。
・流動資産は、営業債権及びその他の債権やその他の流動資産の増加等がありましたが、現金及び現金同等物の減少等により、前連結会計年度末に比べ1,071億円減少し、5,040億円となりました。
◎ 負債は、契約負債の減少によるその他の非流動負債の減少等がありましたが、営業債務及びその他の債務やその他の金融負債(非流動)の増加等により、前連結会計年度末に比べ270億円増加し、2,166億円となりました。
◎ 資本は、配当金の支払いに加えて、自己株式の取得及び消却の実施による減少等がありましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上や為替影響による在外営業活動体の換算差額による増加等により、前連結会計年度末に比べ144億円増加し、8,508億円となりました。この結果、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べ1.8ポイント減少し、79.7%となりました。
(2)当期の経営成績の概況
① 業績の概況
当社グループは、グローバルに事業を展開していることから、国際会計基準(以下「IFRS」という。)を適用していますが、事業活動による経常的な収益性を示す段階利益として「コア営業利益」を採用しています。当該「コア営業利益」は、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」及び「研究開発費」を控除し、「持分法による投資損益」を加えて算出しています。
(単位:億円)
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
増減率 % |
|
売上収益 |
4,422 |
4,956 |
533 |
12.1% |
|
コア営業利益 |
968 |
954 |
△14 |
△1.4% |
|
税引前利益 |
972 |
835 |
△138 |
△14.2% |
|
親会社の所有者に帰属する当期利益 |
812 |
599 |
△213 |
△26.3% |
<期中 平均為替レート>
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通貨 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|
米ドル(USD/円) |
140円 |
151円 |
11円 |
|
英ポンド(GBP/円) |
174円 |
193円 |
19円 |
|
ユーロ(EUR/円) |
151円 |
164円 |
13円 |
当連結会計年度の売上収益は4,956億円(前期比12.1%増)、コア営業利益は954億円(同1.4%減)となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は599億円(同26.3%減)となりました。
◎ 売上収益は、北米及びEMEAを中心としたグローバル戦略品の伸長に加え、技術収入の増加により、増収となりました。なお、売上収益に係る為替の増収影響は244億円となりました。
◎ コア営業利益は、海外売上収益や技術収入の増収に伴い売上総利益が増加しましたが、研究開発費が大きく増加したことにより、減益となりました。なお、コア営業利益に係る為替の増益影響は86億円となりました。
◎ 親会社の所有者に帰属する当期利益は、金融費用や法人所得税費用が増加したこと等により、減益となりました。
② 地域統括会社別の売上収益
(単位:億円)
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
増減率 % |
|
日本 |
1,470 |
1,347 |
△123 |
△8.4% |
|
北米 |
1,378 |
1,744 |
366 |
26.5% |
|
EMEA |
733 |
849 |
116 |
15.8% |
|
アジア/オセアニア |
357 |
416 |
59 |
16.7% |
|
その他 |
484 |
599 |
115 |
23.8% |
|
売上収益合計 |
4,422 |
4,956 |
533 |
12.1% |
(注)1.One Kyowa Kirin 体制(地域(リージョン)軸、機能(ファンクション)軸と製品(フランチャイズ)軸を組合わせたグローバルマネジメント体制)における地域統括会社(連結)の製商品の売上収益を基礎として区分しています。
2.EMEAは、ヨーロッパ、中東及びアフリカ等です。
3.アジア/オセアニアには、事業再編に伴い開始された同地域のパートナーへの製品供給による売上収益が含まれています。
4.その他は、技術収入、造血幹細胞遺伝子治療(Orchard Therapeutics社の売上収益)及び受託製造等です。
<日本リージョンの売上収益>
(単位:億円)
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
増減率 % |
|
クリースビータ |
105 |
117 |
12 |
11.9% |
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ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」 |
140 |
116 |
△24 |
△17.3% |
|
ダーブロック |
99 |
127 |
28 |
27.8% |
|
フォゼベル |
- |
47 |
47 |
- |
|
ジーラスタ |
319 |
205 |
△114 |
△35.7% |
◎ 日本の売上収益は、腎性貧血治療剤ダーブロックの伸長や高リン血症治療剤フォゼベルの新発売があったものの、2023年4月及び2024年4月に実施された薬価基準引下げの影響等を受け、前連結会計年度を下回りました。
・FGF23関連疾患治療剤クリースビータは、2019年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。
・腎性貧血治療剤ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」は、薬価基準引下げ及び競合品浸透の影響を受け、売上収益が減少しました。
・腎性貧血治療剤ダーブロックは、2020年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。
・高リン血症治療剤フォゼベルは、2024年2月に販売を開始し、市場浸透により順調に売上収益を伸ばしています。
・発熱性好中球減少症発症抑制剤ジーラスタは、2023年11月に発売されたバイオ後続品の影響や薬価基準引下げの影響を受け、売上収益が減少しました。
<海外リージョン及びその他の売上収益>
(単位:億円)
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
増減率 % |
|
Crysvita |
1,420 |
1,848 |
429 |
30.2% |
|
Poteligeo |
284 |
381 |
97 |
34.3% |
|
Libmeldy/Lenmeldy |
- |
33 |
33 |
- |
◎ 北米の売上収益は、グローバル戦略品が伸長し、前連結会計年度を上回りました。
・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)は、2018年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。
・抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)は、2018年の発売以来、売上収益を伸ばしています。
◎ EMEAの売上収益は、エスタブリッシュト医薬品の売上収益が減少しましたが、グローバル戦略品の伸長や3ブランド(Abstral、Adcal D3、Sancuso)の権利譲渡による収入などにより、前連結会計年度を上回りました。
・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)は、2018年の発売以来、適応及び上市国を拡大しながら売上収益を伸ばしています。
・抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)は、2020年の発売以来、上市国を拡大しながら売上収益を伸ばしています。
・エスタブリッシュト医薬品事業のGrünenthal社との合弁化に伴い、2023年8月より13ブランドの売上収益が製品売上から売上ロイヤルティ及びライセンス利用料に移行し、さらに、2024年7月よりうち3ブランドの売上ロイヤルティがなくなったため、エスタブリッシュト医薬品の売上収益が減少しました。
・エスタブリッシュト医薬品3ブランドに関する権利(知的財産権)の合弁会社への譲渡により、2024年7月に66.4百万ポンド(131億円)の売上収益を計上しました。
◎ アジア/オセアニアの売上収益は、前連結会計年度を上回りました。
・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)は、順調に売上収益を伸ばしています。
・APACリージョンの事業再編に伴い、エスタブリッシュト医薬品の製品在庫をライセンス契約先へ供給したことにより、売上収益が増加しました。
◎ その他の売上収益は、前連結会計年度を上回りました。
・Orchard Therapeutics社の新規連結に伴い、同社が欧州で販売した異染性白質ジストロフィー(MLD)治療Libmeldy(2024年3月にLenmeldyとして米国での承認を取得)の売上収益を計上しました。
・AstraZeneca社からのベンラリズマブに関する売上ロイヤルティの増加やBoehringer Ingelheim社からの契約一時金収入等により、売上収益が増加しました。
③ コア営業利益
◎ コア営業利益は、北米を中心としたグローバル戦略品の伸長や技術収入の増収に伴い売上総利益が増加しましたが、第Ⅲ相国際共同治験を実施中のKHK4083の開発進展やOrchard Therapeutics社の新規連結に伴い研究開発費が大幅に増加したこと等により、前連結会計年度を下回りました。
(3)当期のキャッシュ・フローの概況
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析 ③ キャッシュ・フローの状況、資本の財源及び資金の流動性についての分析」に記載のとおりです。
(4)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
医薬 |
138,290 |
95.1 |
|
合計 |
138,290 |
95.1 |
(注)1.金額は販売価格によっています。
2.当社グループ内において原材料等として使用する中間製品については、その取引額が僅少であるため相殺消去等の調整は行っていません。
② 受注実績
当社グループは、主として販売計画に基づいた生産を行っています。一部の製品で受注生産を行っていますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しています。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
医薬 |
495,558 |
112.1 |
|
合計 |
495,558 |
112.1 |
(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
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相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
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CVS Caremark社 |
46,923 |
10.6 |
58,476 |
11.8 |
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年12月31日現在)において当社グループが判断したものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって、用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5) 会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりです。
② 当期の財政状態及び経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 当期の財政状態の概況、(2) 当期の経営成績の概況」に記載のとおりです。
◎ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2021-2025年中期経営計画の財務指標の最終年度である2025年度の経営目標及び当連結会計年度の実績は、以下のとおりです。
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2025年度 経営目標 |
当連結会計年度 実績 |
|
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ROE |
10%以上 |
7.1% |
当期利益÷期首期末平均資本 |
|
売上収益成長率(CAGR) |
10%以上 |
11.7% |
2020年度を基準年度とした 年平均成長率 |
|
研究開発費率 |
18~20%を 目処に積極投資 |
20.9% |
研究開発費÷売上収益 |
|
コア営業利益率 |
25%以上 |
19.3% |
コア営業利益÷売上収益 |
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配当性向(注) |
40%を目処に 継続増配 |
47.8% 8期連続の増配 |
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(注)コアEPS(経常的な収益性を示す指標として、「当期利益」から「その他の収益」及び「その他の費用」並びにこれらに係る「法人所得税費用」を控除した「コア当期利益」を期中平均株式数で除して算定)に対する配当性向を記載しています。
当社グループは、2021-2025年中期経営計画において、成長性、イノベーション創出能力、収益性を持続的に高めていくことにより、中長期的なROEの向上と継続増配を実現し、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての安定した収益構造の確立と持続的な成長を目指しています。その目標達成状況を判断するための客観的な指標として、「ROE」「売上収益成長率」「研究開発費率」「コア営業利益率」「配当性向」の5つの財務指標(KPI)を掲げています。
当連結会計年度は、Crysvita、Poteligeoでは、上市国・地域の拡大や市場浸透に取組み、着実な成長を推進しました。また、Orchard Therapeutics社の子会社化を完了し、造血幹細胞遺伝子治療OTL-200(欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy)の米国での承認を取得しました。また、研究開発では、Amgen社と第Ⅲ相国際共同治験を実施中のKHK4083(一般名:rocatinlimab)の開発進展や造血幹細胞遺伝子治療に対する投資の強化等により、研究開発費は1,000億円を超える水準となりました。
そのほか、「Story for Vision 2030」に沿って、創薬力強化を目指したグローバルでの研究体制の変革、バイオ医薬の開発加速化を推進するための米国新バイオ医薬品工場建設の着工、APACリージョンに係る事業の再編を取り進めました。
これらの結果、売上収益は4,956億円と前連結会計年度に比べ533億円増加しました(売上収益成長率11.7%)。販売費及び一般管理費は1,675億円と前連結会計年度に比べ45億円増加し、研究開発費も1,035億円(研究開発費率20.9%)と前連結会計年度に比べ314億円増加しましたが、コア営業利益は954億円(コア営業利益率19.3%)と前連結会計年度に比べ14億円、当期利益は599億円と前連結会計年度に比べ213億円それぞれ減少しました。ROEは7.1%(前連結会計年度は10.2%)となりました。
なお、当期末の剰余金の配当につきまして、1株につき29円とすることを取締役会で決議しました。2025年3月19日開催予定の第102回定時株主総会で承認されますと、中間配当金29円を加えた年間配当金は、前連結会計年度に比べ2円増配の年間58円(配当性向47.8%)と、8期連続の増配となる予定です。
③ キャッシュ・フローの状況、資本の財源及び資金の流動性についての分析
◎ 当期のキャッシュ・フローの概況
(単位:億円)
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
増減率 % |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
1,156 |
679 |
△477 |
△41.3% |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△204 |
△1,424 |
△1,220 |
598.6% |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
△325 |
△847 |
△522 |
160.3% |
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現金及び現金同等物の期首残高 |
3,392 |
4,031 |
639 |
18.8% |
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現金及び現金同等物の期末残高 |
4,031 |
2,447 |
△1,584 |
△39.3% |
◎ 当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末の4,031億円に比べ1,584億円減少し、2,447億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
◎ 営業活動によるキャッシュ・フローは、679億円の収入(前連結会計年度は1,156億円の収入)となりました。主な収入要因は、税引前利益835億円に加えて、減価償却費及び償却費248億円、連結子会社からの外貨建預り金の期末における換算差額等の為替差損益83億円です。一方、主な支出要因は、営業債権の増加額315億円、法人所得税の支払額177億円、契約負債の減少額99億円、子会社株式売却益及び残存持分評価益74億円です。
◎ 投資活動によるキャッシュ・フローは、1,424億円の支出(前連結会計年度は204億円の支出)となりました。主な支出要因は、無形資産の取得による支出792億円、Orchard Therapeutics社株式の取得による支出482億円、有形固定資産の取得による支出260億円です。一方、主な収入要因は、貸付金の回収による収入45億円、有形固定資産の売却による収入34億円です。
◎ 財務活動によるキャッシュ・フローは、847億円の支出(前連結会計年度は325億円の支出)となりました。主な支出要因は、自己株式の取得による支出400億円、配当金の支払額309億円、Orchard Therapeutics社による新株予約権付社債の償還による支出96億円です。
◎ 資本政策の基本的な方針
当社グループは、2021-2025年中期経営計画において、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すための重要な財務指標(KPI)として「ROE」(自己資本利益率)を掲げ、株主資本コストを安定的に上回る「10%以上」を早期に達成し、この水準を中長期的に維持向上させていくことを目標としています。
このための経営資源の配分、株主還元、資金調達についての方針は、以下のとおりです。
・経営資源の配分についての方針
2025年以降の持続的成長と企業価値最大化に向けた成長投資(R&D投資、戦略投資、設備投資)を最優先に考えています。
R&D投資については、2021-2025年中期経営計画において、売上収益の18~20%を目処に研究開発費を継続的に積極投資することを目標としています。研究開発活動への資源投入としては、自社で注力する疾患サイエンス領域を骨・ミネラル、血液がん・難治性血液疾患、希少疾患に設定し、創薬テクノロジーについては、先進的抗体技術や造血幹細胞遺伝子治療などの革新的なモダリティを強化することで、Life-changingな価値を持つ新薬を継続的に創出することを目指します。開発品では、自社で注力する疾患領域のアセットとして、ziftomenib(Kura Oncology社との共同開発)、KK8123、KK8398、KK2845、OTL-203及びOTL-201について着実に開発を進めていきます。加えて、戦略的パートナリングアセットであるKHK4083の開発では、Amgen社と連携し、複数の臨床試験を継続して推進するほか、KHK4951、KK4277、KK2260及びKK2269については、今後パートナーとの連携も含め、価値の最大化を図っていきます。
当連結会計年度のR&D活動は、「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載のとおりです。
戦略投資については、オープンイノベーションを積極活用した創薬技術などの外部イノベーションの取り込みやパイプラインの獲得を目的とした戦略的なパートナリング活動(導入・提携等)やM&Aなどの外部資源の活用にも積極的に取組み、中長期的なパイプラインの拡充や、グローバル戦略品とのシナジー創出を図ることにより、さらなる持続的成長の加速を目指しています。これらの戦略的な成長投資に関しては、社長を中心に毎月開催している「戦略的投資検討会議」において具体的な案件の検討を行っています。
当連結会計年度は、造血幹細胞遺伝子治療のグローバルリーダーであるOrchard Therapeutics社の買収(取得総額478百万米ドル)を完了したほか、QED Therapeutics社と骨・ミネラル領域の開発品infigratinibの日本への導入契約(契約一時金100百万米ドル)を締結し、Kura Oncology社と急性骨髄性白血病(AML)及びその他の血液腫瘍の治療薬ziftomenibの開発・販売に関するライセンス契約(契約一時金330百万米ドル)を締結するなど1,374億円の戦略投資を実行しました。
設備投資については、グローバル戦略品の価値最大化に向けた競争力ある事業基盤整備のための投資も積極的に実施しています。医薬品という確かな品質が求められる製品をグローバルに安定的に供給するために、強固な生産体制を確立するとともに、品質保証体制及びサプライチェーンマネジメントの強化に努めています。また、戦略的なITデジタル活用基盤の構築・整備等により、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての持続的な成長を支えるグローバルな事業基盤の確立を目指しています。
2024年度は、440億円の設備投資(無形資産、長期前払費用を含む)を実行しました。よりフレキシブルな少量多品目の初期開発治験原薬の製造を可能とする新バイオ医薬原薬製造棟(HB7棟:投資予定金額168億円)の建設を継続するとともに、バイオ医薬の開発加速化を推進するための米国新バイオ医薬品工場建設(同530百万米ドル)に着手しました。
これらの投資案件や開発プロジェクトの事業性評価においては、投資家の皆様が当社に期待する資本コスト(WACC)を反映したハードルレート(地域別)を用いた正味現在価値(NPV)と期待現在価値(EPV)を主たる定量的な基準としています。投資の判断においても、資本コストを上回るリターンの創出による中長期的な企業価値向上への寄与を重視しています。
・株主還元についての方針
配当方針については、2021-2025年中期経営計画で掲げたコアEPSに対する配当性向(以下、「配当性向」)40%を目処とし、中長期的な利益成長に応じた安定的かつ継続的な配当水準の向上(継続的な増配)を目指しています。この方針に基づき、2024年度は、2023年度より2円増配の58円(配当性向47.8%)の配当を実施しました。また、2025年度の配当については60円(配当性向50.3%)と、9期連続の増配を予定しています。また、自己株式の取得については、株価状況等を勘案したうえで機動的に検討する方針としており、資本効率の向上及び株主還元の拡充のため、2024年2月から10月までの期間において、過去最大の400億円(14百万株、発行済株式総数の2.7%)の自己株式の取得及び消却を実施しました。
日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての持続的成長と企業価値最大化に向けて、成長性、イノベーション創出能力、収益性を高め、中長期的なROE向上と継続増配を目指していきます。
・資金調達についての方針
引き続きネットキャッシュポジションの維持を原則としますが、手元資金に加えて、戦略的な大型投資案件に備えた借入余力と機動的な資金調達手段(CP(コマーシャル・ペーパー)、コミットメントライン)も確保し、十分な財務柔軟性を維持します。
(1) 技術導出契約
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会社名 |
相手先 |
国名 |
契約の内容 |
契約期間 |
対価 |
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当社 |
AstraZeneca社 |
スウェー デン |
IL-5R抗体(一般名:ベンラリズマブ)の欧米並びに一部のアジア諸国における開発及び製造販売の許諾 |
2006年12月18日から販売開始後10年又は特許有効期限末日までのいずれか長い期間 |
契約一時金 マイルストン収入 一定料率のロイヤルティ |
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当社 |
AstraZeneca社 |
スウェー デン |
IL-5R抗体(一般名:ベンラリズマブ)の日本における開発及び販売の許諾 |
2015年7月1日から 販売開始後10年間 以降2年毎の自動更新 |
契約一時金 マイルストン収入 一定料率のロイヤルティ |
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当社 |
AstraZeneca社 |
スウェー デン |
IL-5R抗体(一般名:ベンラリズマブ)のアジア13ヵ国における開発及び販売の許諾 |
2017年3月23日から販売開始後10年間 以降2年毎の自動更新 |
契約一時金 マイルストン収入 一定料率のロイヤルティ |
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当社 |
Amgen社 |
米国 |
KHK4083の共同開発及び日本以外での販売の許諾 |
2021年6月1日から無期限 |
契約一時金 マイルストン収入 一定料率のロイヤルティ |
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当社 |
AVEO Oncology社 |
米国 |
tivozanibの日本を含むアジア以外でのがん領域の開開発及び製造販売の許諾 |
2006年12月21日から最後のロイヤルティ又はサブライセンス対価の配分の義務の満了まで |
一定料率のロイヤルティ |
(2) 技術導入契約
開発品
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会社名 |
相手先 |
国名 |
契約の内容 |
契約期間 |
対価 |
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当社 |
AVEO Oncology社 |
米国 |
tivozanib(開発番号:KHK4951)の非がん領域の権利の買戻し |
2019年8月1日から各国でのロイヤルティ支払期間満了まで |
契約一時金 マイルストン支出 一定料率のロイヤルティ |
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当社 |
QED Therapeutics社 |
米国 |
infigratinib(開発番号:KK8398)の日本における開発及び販売の許諾 |
2024年2月7日から対象特許の満了日、医薬品独占期間の満了又は販売開始後10年のいずれか長い期間 |
契約一時金 マイルストン支出 一定料率のロイヤルティ |
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当社 |
Kura Oncology社 |
米国 |
ziftomenibの共同開発、米国での共同販売及び米国以外での独占的販売の許諾 |
2024年11月20日から対象特許の満了日、医薬品独占期間の満了又は販売開始後10年のいずれか長い期間 |
契約一時金 マイルストン支出 一定料率のロイヤルティ 米国におけるプロフィット・シェア |
販売品
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会社名 |
相手先 |
国名 |
契約の内容 |
契約期間 |
対価 |
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当社 |
Amgen K-A社 |
米国 |
G-CSF(製品名:グラン・ジーラスタ)の製造販売の許諾 |
1986年7月1日からAmgen K-A社の存続期間(無期限) |
一定料率のロイヤルティ |
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当社 |
Amgen K-A社 |
米国 |
持続型赤血球造血刺激因子(製品名:ネスプ)の製造販売の許諾 |
1996年3月1日からAmgen K-A社の存続期間(無期限) |
一定料率のロイヤルティ |
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当社 |
Amgen K-A社 |
米国 |
血小板造血刺激因子製剤(製品名:ロミプレート)の製造販売の許諾 |
2005年7月1日からAmgen K-A社の存続期間(無期限) |
一定料率のロイヤルティ |
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当社 |
田辺三菱製薬(株) |
日本 |
カルシウム受容体作動薬(製品名:オルケディア)の共同研究及びアジア5ヵ国における開発、製造販売の許諾 |
2008年3月27日から販売開始後10年又は特許有効期限末日までのいずれか長い期間(その後、当社が販売を継続する権利を有する) |
契約一時金 マイルストン収入・支出 一定料率のロイヤルティ |
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当社 |
Ardelyx社 |
米国 |
テナパノル塩酸塩(製品名:フォゼベル)の日本における開発及び販売の許諾 |
2017年11月27日からロイヤルティ支払期間満了まで |
契約一時金 マイルストン支出 一定料率のロイヤルティ |
(注)1.大塚製薬株式会社及びAstraZeneca社との糖尿病治療剤(製品名:オングリザ)の開発及び販売に関する契約並びにAmgen K-A社とのヒト型抗ヒトIL-17受容体Aモノクローナル抗体製剤(製品名:ルミセフ)の製造販売に関する契約につきましては、重要性が乏しくなったため記載を省略しています。
2.Takeda Pharmaceuticals U.S.A.社とのカルシウム受容体作動薬(製品名:レグパラ)の開発及び製造販売許諾に関する契約につきましては、当連結会計年度において終了しました。なお、当社権利につきましては本契約終了後も引き続き存続し、当社はレグパラの販売を継続します。
(3) 販売契約
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会社名 |
相手先 |
国名 |
契約の内容 |
契約期間 |
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当社 |
サンド(株) |
日本 |
抗悪性腫瘍剤(製品名:リツキシマブBS「KHK」)に関する販売契約 |
2015年12月24日から販売開始後10年間 以降両社が合意した場合に限り2年毎の自動更新 |
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当社 |
久光製薬(株) |
日本 |
パーキンソン病治療剤(経皮吸収剤)(製品名:ハルロピ)に関する販売契約 |
2019年2月5日から販売終了時まで |
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当社 |
グラクソ・スミスクライン(株) |
日本 |
腎性貧血治療剤(経口剤)(製品名:ダーブロック)の販売提携契約 |
契約締結日より、相手方と合意した期間の満了まで |
(注)1.ノバルティスファーマ株式会社との抗アレルギー点眼剤(製品名:パタノール)に関する共同販売促進契約及び久光製薬株式会社との経皮吸収型持続性疼痛治療剤(製品名:フェントス)に関する共同販売契約につきましては、重要性が乏しくなったため記載を省略しています。
2.LEO Pharma社との尋常性乾癬治療剤(外用剤)(製品名:ドボベット)に関する販売提携契約につきましては、当連結会計年度において終了しました。
(4) 協業契約
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会社名 |
相手先 |
国名 |
契約の内容 |
契約期間 |
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当社 |
Ultragenyx社 |
米国 |
抗FGF23完全ヒト抗体(製品名:Crysvita)に関する共同開発及び共同販売契約 |
2013年8月29日から販売終了時まで |
(5) 合弁契約
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会社名 |
相手先 |
国名 |
契約の内容 |
出資額 |
合弁会社名 |
設立年月 |
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当社 |
富士フイルム(株) |
日本 |
バイオシミラー医薬品の開発・製造・販売に関する合弁契約 |
当社 50百万円 富士フイルム(株) 50百万円 |
協和キリン富士フイルムバイオロジクス(株) (資本金100百万円) |
2012年3月 |
(6) キリンホールディングス株式会社との統合契約
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会社名 |
相手先 |
国名 |
契約の内容 |
契約締結日 |
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当社 |
キリンホールディングス(株) |
日本 |
当社グループとキリングループの戦略的提携に関する基本契約 |
2007年10月22日 |
(7) その他
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会社名 |
相手先 |
国名 |
契約の内容 |
契約締結日 |
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Kyowa Kirin International plc |
Grünenthal社 |
ドイツ |
エスタブリッシュト医薬品合弁化に関する提携契約 (注) |
2022年11月23日 |
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Kyowa Kirin North America North Carolina, LLC |
CRB BUILDERS社 |
米国 |
バイオ医薬品原薬製造工場に関する工事請負契約 |
2024年11月26日 |
(注)詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 28.子会社株式の譲渡」に記載のとおりです。
当社グループは、研究開発活動へ経営資源を継続的かつ積極的に投入しています。自社における研究開発が注力する疾患サイエンス領域を骨・ミネラル、血液がん・難治性血液疾患、希少疾患に設定し、創薬技術については、先進的抗体技術や造血幹細胞遺伝子治療などの革新的なモダリティを強化することで、Life-changingな価値を持つ新薬を継続的に創出することを目指します。また、価値創造のプロセスの一環として、オープンイノベーション活動やパートナーとの連携推進、ベンチャーキャピタルファンドへの出資、コーポレートベンチャーキャピタルも活用します。研究開発においては、Life-changingな価値の創出に重点を置き、自社でグローバルに展開して価値最大化を目指すだけでなく、社外のパートナーとの戦略的な連携で価値最大化を目指すビジネスモデルも活用します。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は
<主要開発品の開発状況>
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2024年12月31日時点 |
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開発番号,一般名 |
対象疾患 |
開発状況 |
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KHK4083/AMG 451, rocatinlimab
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中等度から重症のアトピー性皮膚炎 |
第Ⅲ相試験 実施中 |
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結節性痒疹 |
第Ⅲ相試験 実施中 |
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中等度から重症の喘息 |
第Ⅱ相試験 実施中 |
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ziftomenib |
急性骨髄性白血病(AML)(単剤) |
第Ⅱ相試験 実施中 |
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急性リンパ性白血病(ALL)(単剤) |
第Ⅰ相試験 実施中 |
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急性骨髄性白血病(AML)(併用) |
第Ⅰ相試験 実施中 |
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OTL-203 |
ムコ多糖症I型(Hurler症候群) |
ピボタル試験(第Ⅲ相試験相当) 実施中 |
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KK8398, infigratinib |
軟骨無形成症 |
第Ⅲ相試験 準備中 |
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KHK4951,tivozanib
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滲出型加齢黄斑変性(nAMD) |
第Ⅱ相試験 実施中 |
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糖尿病黄斑浮腫(DME) |
第Ⅱ相試験 実施中 |
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OTL-201 |
ムコ多糖症IIIA型(Sanfilippo症候群A型) |
PoC試験(第Ⅰ/Ⅱ相試験相当) 実施中 |
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KK4277 |
全身性エリテマトーデス(SLE) 皮膚エリテマトーデス(CLE) |
第Ⅰ相試験 実施中 |
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KK2260 |
進行性又は転移性固形がん |
第Ⅰ相試験 実施中 |
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KK2269 |
進行性又は転移性固形がん |
第Ⅰ相試験 実施中 |
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KK2845 |
急性骨髄性白血病(AML) |
第Ⅰ相試験 実施中 |
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KK8123 |
X染色体連鎖性低リン血症(XLH) |
第Ⅰ相試験 実施中 |
・KHK4083/AMG 451(一般名:rocatinlimab)は、病原性T細胞(炎症性疾患において疾患の原因となるT細胞)に発現するOX40受容体を標的とするモノクローナル抗体です。アトピー性皮膚炎などの炎症性疾患の根本的な原因の一つとして、OX40シグナル伝達を介したT細胞の活性化により、病原性T細胞の増加とエフェクター機能が誘導され、T細胞のインバランスが生じていることが挙げられます。rocatinlimabは、病原性T細胞の機能を抑制し、またその数を減少させることにより、T細胞リバランスを可能とします。初期の抗体は当社の米国研究チームとラホヤ免疫研究所の共同研究により見出されました。2021年6月1日、当社とAmgen社はrocatinlimabの共同開発・販売に関する契約を締結しました。本契約に基づき、Amgen社は本剤の開発、製造、及び当社が単独で販売活動を担当する日本を除くグローバルでの販売活動を主導します。両社は米国において本剤のコ・プロモーションを行い、当社は米国以外(日本を除く欧州及びアジア)においてコ・プロモーションを行う権利を有しています。現在成人及び青年期(12歳以上)の中等度から重症のアトピー性皮膚炎を対象に8つの試験からなる第Ⅲ相試験(ROCKETプログラム)が進行中です。これまでに3,300名以上の患者さんが試験に参加し、そのうち7つの試験で被験者登録を終了しました。2024年9月にROCKETプログラムの最初の試験ROCKET-Horizonの結果が主要評価項目と全ての主要な副次評価項目を達成したことを発表しました。ROCKETプログラムに加え、中等度から重症の喘息を対象とする第Ⅱ相試験及び結節性痒疹を対象とする第Ⅲ相試験も実施中です。
・ziftomenibは、経口メニン阻害薬であり、アンメットニーズの高い特定の遺伝子変異や再構成を有する急性骨髄性白血病(AML)に対する治療薬としてKura Oncology社により開発が進められてきました。2024年11月、当社とKura Oncology社はziftomenibの販売と開発に関するグローバルにおける急性白血病を対象とした戦略的提携に関する契約を締結しました。本契約に基づき、両社は共同でziftomenibの開発と販売を実施し、米国ではKura Oncology社が、米国以外では当社が開発・薬事・販売戦略を主導します。現在急性骨髄性白血病(AML)を対象に複数の試験が進行中です。2024年12月に、両社はziftomenibについて、NPM1変異及びKMT2A再構成の急性骨髄性白血病(AML)を対象とするシタラビン・ダウノルビシン(7+3療法)やベネトクラクス・アザシチジン(ven/aza)といった標準治療との併用療法に関する良好なデータを発表しました。
・OTL-203は、ムコ多糖症I型(Hurler症候群)を対象とする造血幹細胞遺伝子治療法です。根本治療法となり得る治療法としてOrchard Therapeutics社が北米と欧州でピボタル試験(第Ⅲ相試験相当)を実施中です。
・KK8398(一般名:infigratinib)は、経口FGFR3阻害薬で、骨系統疾患を対象としてBridgeBio Pharma社傘下のQED Therapeutics社により開発が進められてきました。2024年2月に当社とQED Therapeutics社は骨系統疾患を対象とした日本における開発・販売権の導入に関するライセンス契約を締結しました。現在日本での第Ⅲ相試験の準備中です。
・KHK4951(一般名:tivozanib)は、当社が創製した血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)-1、-2、-3チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であるtivozanibを点眼投与により後眼部組織に効率的に送達するように設計した新規のナノクリスタル化点眼剤であり、滲出型加齢黄斑変性症(nAMD)及び糖尿病黄斑浮腫(DME)に対して非侵襲的な新しい治療選択肢となり得る薬剤です。現在第Ⅱ相試験を実施中です。
・OTL-201は、ムコ多糖症IIIA型(Sanfilippo症候群A型)を対象とする造血幹細胞遺伝子治療法です。OTL-203と同様に根本治療法となり得る治療法としてPoC試験(第Ⅰ/Ⅱ相試験相当)を実施中です。
・KK4277は、SBIバイオテック株式会社より導入した抗体をもとに、当社のPOTELLIGENT技術を応用して抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)を強化し、それを最適化した抗体です。現在全身性エリテマトーデス及び皮膚エリテマトーデスを対象に第Ⅰ相試験を実施中です。
・KK2260は、当社独自のバイスペシフィック抗体技術であるREGULGENTを応用したEGFR-TfR1バイスペシフィック抗体です。がん細胞選択的な鉄枯渇を実現する抗体として設計されており、非臨床試験において、強い薬効を示し、かつ忍容性も示すことを見出しました。現在第Ⅰ相試験を実施中です。
・KK2269は、当社独自のバイスペシフィック抗体技術であるREGULGENTを応用したEpCAM-CD40バイスペシフィック抗体です。各種の腫瘍で高発現しているEpCAMと抗原提示細胞のCD40を架橋することで、腫瘍近傍の抗原提示細胞のみ活性化する抗体として設計されており、非臨床試験において、全身性副作用を抑制しながら抗腫瘍免疫による薬効を発揮できることを見出しました。現在第Ⅰ相試験を実施中です。
・KK2845は、当社初の抗体薬物複合体(ADC)の開発品です。標的分子はTIM-3で、2024年10月に急性骨髄性白血病(AML)を対象とする第Ⅰ相試験を開始しました。
・KK8123は、ヒト型抗FGF23抗体であり、X染色体連鎖性低リン血症(XLH)の新しい治療選択肢となり得る薬剤です。2024年11月に、XLHを対象とした第Ⅰ相試験を開始しました。
<主な提携・ライセンス情報>
・2024年1月に線維化を伴う炎症性疾患治療薬の開発を目的とする化合物の独占的開発権をBoehringer Ingelheim社へ導出するライセンス契約を締結しました。
・2024年2月に骨・ミネラル領域の強化を目的として、BridgeBio Pharma社傘下のQED Therapeutics社とinfigratinib(開発番号:KK8398)の骨系統疾患を対象とした日本国内の開発・販売権の導入に関するライセンス契約を締結しました。
・2024年11月にKura Oncology社とziftomenibの販売と開発についてのグローバルな急性白血病を対象とした戦略的提携に関する契約を締結しました。
開発パイプライン一覧
※ziftomenibの開発状況詳細については、Kura Oncology社のホームページ(https://kuraoncology.com/)をご参照ください。
主な申請承認情報
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開発番号、一般名、製品名 |
対象疾患 |
申請状況 |
2024年に
承認取得した |
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KRN125(一般名:ペグフィルグラスチム、日本製品名:ジーラスタ) |
自家末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員 |
― |
日本 |
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OTL-200(一般名:atidarsagene autotemcel、欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy) |
異染性白質ジストロフィー |
― |
米国 |
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KHK4827(一般名:ブロダルマブ、日本製品名:ルミセフ) |
掌蹠膿疱症 |
台湾申請中 |
― |
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KHK7580(一般名:エボカルセト、日本製品名:オルケディア) |
二次性副甲状腺機能亢進症 |
― |
台湾・中国 |
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AMG531(一般名:ロミプロスチム、日本製品名:ロミプレート) |
再生不良性貧血 |
台湾申請中 |
― |
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重症の再生不良性貧血 |
― |
韓国 |
KHK4827は全身性強皮症を予定適応症とする日本での承認事項一部変更承認申請を取り下げたため、該当する申請情報を本表から削除しました。