第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末現在において当社が合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、確実性を保証するものではありません。

 

(1) 会社経営の基本方針

 世の中が変化しても変えてはいけない当社グループが大切にする考え方を示すため、基本理念の表現を「価値共創によって人々を幸せにする会社 ~ Sustainable Value Together ~ 」と改めるとともに、新たにサステナブル経営方針を2020年度に定めました。

 

<サステナブル経営方針>

・Sustainable Product:人々の豊かな生活を実現する新しい価値を創造し提供します

 

・Sustainable Process:全てのステークホルダーとともに地球環境と共生する循環型プロセスを構築します

 

・Sustainable People:多様な社員が全員、存在感と達成感を味わいながら成長する「人間中心の経営」を進めます

 

 私たちダイセルの経営方針の最上位にあるのが基本理念です。SDGs実現のために「サステナブル経営方針」を基本理念の直下に位置付けました。またこのサステナブル経営方針をProduct、Process、Peopleの3つの要素で実現します。そして、それを実現するための戦略が長期ビジョンと中期戦略になります。

 

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(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標

 当社グループが変わらず大切にする思いとともに、今後大胆に変えなければならないことを、2020年度を開始年度とする新長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』および新中期戦略『Accelerate 2025』、『Accelerate 2025-II』で明確にいたしました。

 

① 長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』の概要

注力するドメイン

 サステナブル経営方針の具現化に向け、以下の四つのトリガーと注力する市場で価値を提供し、人々の幸せの実現と、当社グループの持続的な成長を目指します。

 

四つのトリガー

注力する市場

健康(ヘルスケア)

コスメ・健康食品・メディカル

安全・安心(セイフティ)

モビリティ・インダストリー

便利・快適(スマート)

ディスプレイ・IC/半導体・センシング

環境

水処理・生分解性樹脂

 

長期ビジョン実現への道のり

 Operation-I(原ダイセル)では自社の現状の事業に加え、注力するドメインを含めた領域で、事業構造の転換とアセットライト化(徹底したコストダウン)を進めます。

 Operation-II(新ダイセル)では、既存事業の周辺領域でのM&Aや提携による領域拡大、既存事業の再編や合弁会社の抜本的見直しに取り組むとともに、グループ全体でのアセット・スーパーライト化を目指します。

 Operation-III(新企業集団)では、グループの枠を超えて、まず垂直統合方向のバリューチェーン(サプライチェーン)を強化し、その共通顧客に対する価値創造(共創)に取り組むとともに、同業他社や大学など、水平方向にも共創を拡大することで、より大きな価値の提供を目指します。

 

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② 中期戦略『Accelerate 2025』および『Accelerate 2025-II』の概要

 基本理念実現に向けて、以下の基本的な戦略に沿った取り組みを推進することで、既存事業の強化・成長による価値の提供と、「循環型社会構築への貢献」を目指します。

 

1.全社戦略

 クロスバリューチェーン実現に向けた取り組みとしてバリューチェーンの垂直/水平方向との連携を推進し、新企業集団を見据えた、組織変更に対して柔軟に組み替え可能なバーチャルカンパニーの実現を図り、その基盤となるデジタルアーキテクチャの構築を進めます。

 また、事業ポートフォリオとして「健康」「安全・安心」「便利・快適」「環境」における価値提供型事業へシフトし、ビジネスユニット(BU)の特性に応じた KPI の設定とその進捗に応じた資源配分により、売上高、営業利益ともに「次世代育成」事業と「成長牽引」事業のシェアを高めてまいります。

 

2.事業戦略

 ヘルスケアSBUでは、化粧品原料である1,3BGの生産2拠点化による安定供給と世界No.1品質を提供するとともに、アジア域内における強固な販売ネットワークも生かして既存製品のシェア拡大を図ってまいります。さらに、生分解性のある酢酸セルロース真球微粒子などサステナブル素材のラインアップも拡充し、新製品の拡販を進めます。

 

 スマートSBUのIC/半導体分野では、マーケットニーズに沿った品質管理体制と独自のモノマーを使用したレジスト用ポリマーを生かして、最先端のニーズに即した半導体関連事業の強化を図ってまいります。また、ディスプレイ分野では過去から培ったコーティング技術と特異性のある素材を生かした機能フィルムの多機能化や事業拡大とともに、品質改善、コストダウンを通じた液晶表示向けフィルム用途の酢酸セルロースの収益力強化を目指してまいります。

 

 セイフティSBUのエアバッグ用インフレータ事業については、トヨタ生産方式(TPS)で培ったコストダウンやガス発生剤から一貫生産できるパイロ技術を生かしたコスト競争力強化と、それによる市場シェア拡大を図ってまいります。また、民生用事業については、インフレータ事業で培ったパイロ技術を意訳・応用することで、従来とは異なる新用途を開拓するとともに、顧客との共創による新事業創出を目指してまいります。

 

 マテリアルSBUでは、世界シェア、製造能力No.1の脂環式エポキシについて、新たな生産拠点の確立と、素材・機能提案力の強化を目指してまいります。また、酢酸セルロースについては、強みである分子設計コントロール技術を駆使し、誘導品であるアセテート・トウも含めた用途開発を進める一方、生産革新で培ったコストダウンノウハウを生かして安定したキャッシュフローの創出を図ってまいります。

 

 エンジニアリングプラスチック事業では、ポリプラスチックスがアジアで培った技術力と製品/サービス供給網、そして顧客ニーズに迅速に対応するテクニカルソリューション体制を生かして、欧米プレミアム市場での販路拡大を進めるとともに、迅速な意思決定による供給力増強とプロダクトポートフォリオの拡充や新規事業の創出を図ってまいります。

 また、ポリプラスチックスの完全子会社化に伴うシナジー効果を最大化するために、新たにパフォーマンス・マテリアルズ事業本部を新設し、ポリプラスチックスの社長が当社の専務執行役員として本部長を兼務し、グループ全体の樹脂事業の強化に取り組みます。具体的には、ポリプラスチックスのグローバル展開の加速(将来需要取り込みのための増産投資、欧米市場への拡販)、コストダウンシナジーの実現(ダイセル式生産革新の展開加速、間接部門の効率的運営)、グループシナジーの最大化(ポリプラスチックスのマーケティング力の活用、R&Dリソースの相互活用、触媒効率改善など既存事業の改善および改良)などに取り組み、2025年度までにEBITDAで200億円のシナジー効果を見込んでおります。

 

 事業創出戦略の一つとして、メディカル・ヘルスケア領域では、ヘルスケアSBUのバイオ発酵技術、セイフティSBUの新規薬剤投与デバイス、CPIカンパニーのキラル分割技術や診断薬関連製品、事業創出本部によるDDSキャリア開発などについて、協業やM&Aによるプラットフォームの獲得により、関連する技術や製品を集約し、遺伝子薬・バイオ医薬やそれに対応する投与デバイスや診断システム領域を強化することで大きく伸ばしていきたいと考えております。

 

3.機能別戦略

 事業創出力の向上のため、R(Research:ユーザー目線によるシーズの掘り起こし)とD(Development:事業化力の強化)の自立を図り、Proactive IP(開発、事業化のアンテナ機能)、R、D の相互作用による事業創出を目ざしてまいります。

 

 生産(プロダクション)については、安全・品質のあくなき追求、究極のアセットライト、現場活躍の基盤強化を実践し、現場の力を結集してバーチャルカンパニーでパートナーに価値を提供することを目指します。

 

 デジタルトランスフォーメーションについては、権限委譲を進める組織改革やそれに伴う働き方改革をサポートすることを主眼に、あらゆる業務領域への AI、IoT の活用を進めてまいります。

 

 人事については、多様な社員が存在感と達成感を味わいながら成長できる、変える!変わる!人事を目指してまいります。

 

4.全社業績・経営指標

 中期戦略最終年度となる2025年度に以下の全社業績および経営指標をターゲットとしております。

 

 全社業績:

  売上高 5,000億円、営業利益 700億円、親会社株主に帰属する当期純利益 480億円、

  EBITDA 1,160億円

 経営指標:

  営業利益率 14.0%、ROE 18.0%、ROIC 10.0%、ROA 8.0%

  株主還元 中期戦略発表時の1株当たり配当金額(年間32円)を下限、総還元性向 40%以上

 

 また、アセットライト方針に基づき、業容拡大期間においても総資産残高をキープしつつ、自己資本比率45%超、ネットD/Eレシオ 0.5以下を実現し財務安定性強化を図ることにより2026年3月末のバランスシートとして以下をイメージしております。

 

  2026年3月期末(見込み)                   (億円)

流動資産

2,900

負債

3,100

 うち現預金

800

 うち有利子負債

1,600

   運転資産

1,900

 

 

固定資産

3,000

純資産

2,800

 うち有形・無形

2,300

 

 

   政策保有株式

300

 

 

資産合計

5,900

負債・資本合計

5,900

 

5.資金創出力

 収益力強化に加え適正在庫化などキャッシュコンバージョンサイクル削減効果で資金創出力向上を図ります。また、政策投資株式売却などにより資金創出力をさらに高め、余裕資金を成長投資や株主還元に活用します。株主還元は総還元性向40%以上とし、自己株式取得も視野に柔軟に対応してまいります。

 

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(3) 経営環境及び会社の対処すべき課題

 世界経済は、新型コロナウイルスによる経済活動停滞に一部で持ち直しの動きがみられるものの、変異株による感染再拡大、半導体不足による自動車減産、物流の混乱、原燃料価格の高騰、インフレーション懸念の増大、ロシアによるウクライナ侵攻とグローバル規模のさまざまな課題が次々に発生し、先行き不透明な状況のうちに推移しております。また、気候変動対策としてカーボンニュートラル実現を巡る世界的な議論が進展するなか、国、業界、企業単位での対応が求められております。

 更に、AIなど新たな技術も加速度的に進歩し、私たちの暮らしや働き方にも大きな変革をもたらしています。

 

 当社グループは、コロナ禍からの回復により増加する販売機会を着実に捉えるべく、サプライチェーンの緊密な連携と、戦略的な在庫の見直しなどにより、顧客への製品供給の確保を最優先に対応してまいります。また世界的な原燃料の高騰や物流費の上昇という課題には、プロセス革新による原燃料コストの抑制や、販売価格の適切な是正にも取り組んでおります。更に聖域を設けることなく全社のあらゆる領域において地道なコストダウンの徹底を実践しております。

 当社グループ力の更なる強化に向け、一昨年完全子会社化したポリプラスチックスとの一体運営や積極的な設備投資計画に取り組むとともに、ドイツEvonik社との合弁体制も見直し、エンジニアリングプラスチック事業におけるポリプラスチックスとのシナジー強化を進めています。

 事業ポートフォリオの再構築では、防衛事業や二軸延伸ポリスチレンシート事業からの撤退を進める一方、主力製品である酢酸セルロースの、バイオマス・生分解性という特徴を生かし、プラスチック資源循環促進法に対応した新しい用途開拓に取り組んでいます。

 育成事業の一つ、民生用火工品は、「ワンタイムエナジー」という新コンセプトの下、電流遮断器「ボルトブレーカー™/Volt Breaker™」や、針を使わず組織内に効率的に薬液を投与する革新的ドラッグデリバリーシステム「アクトランザ™ラボ」など幅広い領域で事業展開しています。なお、「アクトランザ™ラボ」を含めたライフサイエンス・メディカル関連事業推進のため「ライフサイエンス事業企画室」を新設し、キラル分離事業や製剤ソリューション事業との一体運営を目指します。また、電子材料分野を中心に、有機・無機複合材料研究のステージアップを図るため「無機複合材料実装研究所」を新設し、より、お客様に密着した材料開発にも取り組みます。

 更に、長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』と中期戦略『Accelerate 2025』の中核をなすバイオマスプロダクトツリー・バイオマスバリューチェーンの構築に向け、新たに「バイオマスイノベーションセンター」を組織し、京都大学や金沢大学などとの産産学学官官による協創を拡充、加速しています。

 

 

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、ここに記載した事項は、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。

 また、将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日(2022年6月23日)現在において判断したものであります。

 

(1) 市場リスク

①市場の急激な変動に係るリスク

 経済の変調により需要が急激に減少した場合、また他社による大型プラントの建設等により供給過剰となった場合や競合各社間の競争激化等により当社グループの製品の低価格化が進んだ場合は、当該事業の収益を悪化させる可能性があります。当社グループの製品は多岐に亘る分野に使用されており、特に自動車、電機、半導体、医療などの各業界における需要の変動に大きな影響を受けます。

②為替変動に係るリスク

 為替相場の変動は、当社グループの輸出入取引に係る交易条件、および海外グループ会社の業績の邦貨換算結果等に対して影響を与えます。

 通常、円安は当社グループの業績に好影響を及ぼし、円高は悪影響を及ぼすと考えております。また、海外グループ会社においては、その所在国通貨と異なる外国通貨との為替相場変動により、業績等に影響を及ぼす可能性もあります。

 これら為替変動に係るリスクに対して、先物為替予約取引などを用いてヘッジを行っておりますが、当該リスクを完全に回避できるものではなく、経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループの海外売上高比率は、2022年3月期において56.4%であります。また、当社の試算では米ドル・円レートが1円変動すると、連結売上高で年間約20億円、連結営業利益で年間約6億円の変動をもたらすと算定しております。

③主要原料(メタノール)の価格変動に係るリスク

 当社グループは、主力製品の酢酸やポリアセタール樹脂の原料として、メタノールを大量に購入しております。長期契約やメタノール製造会社への出資など、比較的安価なメタノールを安定的に購入するための手段を講じておりますが、メタノール市況が上昇した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

④その他原燃料価格の変動に係るリスク

 当社グループは、常に安価かつ価格の安定した原燃料への転換や、製造方法改善によるコストダウンをはかっております。原燃料の高騰が続く場合には、これらに加えて、製品販売価格への転嫁等によりできる限りの吸収をはかっておりますが、それを超えて高騰が続く場合は、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(2) 事業リスク

①海外事業展開拡大に係るリスク

 当社グループは、中国・アジア地域を中心に、北米・ヨーロッパなど海外事業展開を拡大しつつありますが、海外での事業活動では、予期しえない法律や規制の変更、産業基盤の脆弱性、人材の採用・確保の困難、テロ、戦争等による社会的又は政治的混乱等のリスクが存在します。

②原材料等の調達に係るリスク

 当社グループは、原材料を複数のサプライヤーから購入することにより安定調達を図り、生産に必要な原材料が十分に確保されるよう努めております。しかしながら、複数のサプライヤーからの調達を進めてはいるものの、一部の特殊な原材料については限られたサプライヤーに依存する場合があります。また、サプライヤーの被災、事故、倒産などによる原材料の供給中断、需要の急増による供給不足が発生した場合には当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

③資本提携・企業買収等に係るリスク

 当社グループは、さらなる事業成長を目指し国内外における企業買収・資本提携等に取り組んでおります。これらの投資について予期したとおりの成果が獲得できない場合、また事業環境等の急激な変化により事業計画に大幅な修正が生じた場合には、のれんの減損や投資損失が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

 

(3) 環境リスク

①感染症に係るリスク

 新型インフルエンザや新型コロナウイルスなどの重大な感染症については、感染拡大予防のために経済活動が制限されたり、当社グループや取引先で罹患者が大量に出た場合は、プラントの稼働低下や生産停止、サプライチェーンの分断などが発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

②自然災害に係るリスク

 当社グループの主要な生産拠点のひとつであるポリプラスチックス㈱富士工場は「東海地震に係る地震防災対策強化地域」内に立地しており、設備面の対策や地震防災訓練などを実施しております。また、グループの他の事業場においても、防災訓練などの緊急時対応訓練を行っております。

 しかし、自然災害により重大な損害を被った場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

③環境規制に係るリスク

 環境保全に対する社会要請の高まりにより、環境規制の強化が進み、法令遵守のための設備投資や関連するビジネスの再編成などの事態が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

④気候変動に係るリスク

 当社グループは、全てのステークホルダーとともに、地球環境と共生する循環型プロセスの構築を目指し、持続可能な低炭素社会の実現に向けて、生産プロセスの抜本的な見直しや新技術の導入、グループ全体のエネルギー使用最適化など、省エネルギーに努め、GHG(温室効果ガス)排出量の削減に取り組んでおります。

 しかしながら、気候変動に伴う異常気象等が当社グループの工場の操業やサプライチェーンに影響を与える物理的リスク、あるいは低炭素社会への移行に対応できずに原燃料価格や電力価格が上昇するリスクは、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(4) 品質・製造リスク

①製品品質保証・製造物責任に係るリスク

 当社グループは、製品の品質保証体制を確立し、製品の安全性確保および不具合品の流出防止に努めております。また、万一に備え、賠償責任保険も付保しております。しかし、当社グループが製造した製品に起因する損害が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

②事故に係るリスク

 当社グループは、保安防災活動に継続的に取り組むなど、日頃から工場の安全確保に努めております。しかし、万一、火災・爆発等の産業事故災害が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(5) 研究開発リスク

①研究開発及び技術人材の確保に係るリスク

 当社グループでは、既存事業の強化および新規事業創出のため積極的に研究開発活動を行っております。しかし、技術革新のスピードが速くタイムリーに新製品の開発ができないなど、期待した成果が得られず計画を断念することになった場合には、投下した研究開発費を回収できないため、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、これらの研究開発体制の維持・強化のためには、高度な技術を持った人材の確保が不可欠であり、技術者が十分に確保できない場合には当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

②知的財産権に係るリスク

 当社グループは、「知的財産権が重要な資産であることを認識し、その保全・確保に努めるとともに、第三者が保有する知的財産権についてもその権利を尊重します」との行動規範のもと、知的財産関連情報の調査、知的財産権の取得・管理、適切な契約の締結・管理など戦略的な活動に取り組んでおります。しかしながら、当社グループが第三者の知的財産権を侵害している等の予期せぬ警告や訴えを受けたり、第三者に知的財産権を無断で使用される恐れがあります。このような事態が発生した場合には当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(6) コンプライアンスリスク

①訴訟に係るリスク

 当社グループは、国内外の法令遵守に努めております。しかしながらグローバル、かつ多様な分野で事業を行う中で、訴訟、係争、その他の法的手続きの対象となるリスクがあり、重要な訴訟等の提起を受ける可能性があります。

 裁判等において不利益な決定や判決がなされた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

②情報セキュリティに係るリスク

 当社グループは、事業を遂行する上で多くの機密情報や個人情報を保有しております。これらの情報を取り扱うにあたり、管理体制の構築、従業員教育の実施およびIT技術動向の変化に応じたセキュリティソフトの導入・更新などの対策をとっております。

 しかしながら、通信ネットワークに生じた障害や、ネットワーク又はコンピュータシステム上のハードウエアもしくはソフトウエアの不具合・欠陥、コンピュータウィルス・マルウェア等外部からの不正な手段によるコンピュータシステム内への侵入等の犯罪行為や使用人もしくは委託業者の過誤等により、これらの情報が流出し、または改ざんされる事態が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(7) その他のリスク

 固定資産の減損に係るリスク

 当社グループが自ら使用、または第三者に貸与する機械及び装置、土地及び建物などは、投資計画どおりに収益が得られず、投資額の回収が見込めないなど資産価値の下落に起因する潜在的な減損のリスクにさらされています。当連結会計年度末において、有形固定資産及び無形資産の帳簿価額の合計は2,399億円です。固定資産の減損損失が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスによる経済活動停滞に一部で持ち直しの動きがみられるものの、新型コロナウイルスの感染再拡大や半導体不足による自動車減産、物流の混乱、ウクライナ情勢など、先行き不透明な状況のうちに推移しました。

 このような環境の中、当社グループでは、需要の回復による販売機会を着実に捉えるとともに、販売価格の是正、徹底したコストダウンを実施してまいりました。

 新型コロナウイルスの影響を大きく受けた前年度と比較し、売上高は4,679億37百万円(前年度比18.9%増)、営業利益は506億97百万円(同59.8%増)、経常利益は572億91百万円(同65.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は312億54百万円(同58.5%増)となりました。

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

[メディカル・ヘルスケア事業部門]

 コスメ・健康食品事業は、化粧品原料や健康食品素材の販売数量増加などにより、増収となりました。

 キラル分離事業は、海外でのキラルカラムの販売が増加したことなどにより、増収となりました。

 当部門の売上高は、194億94百万円(前年度比20.3%増)、営業利益は、販売数量の増加などにより、34億35百万円(同120.1%増)となりました。

 

[スマート事業部門]

 液晶表示向けフィルム用の酢酸セルロースや高機能フィルムなどのディスプレイ事業は、液晶パネル需要の好調や高機能フィルムの新規採用などにより販売数量が増加し、増収となりました。

 電子材料向け溶剤やレジスト材料などのIC/半導体事業は、半導体材料市場の需要が好調に推移し販売数量が増加したことや、原料価格上昇に伴う販売価格の上昇により、増収となりました。

 当部門の売上高は、324億90百万円(前年度比31.5%増)、営業利益は、販売数量の増加などにより、57億99百万円(同70.0%増)となりました。

 

[セイフティ事業部門]

 自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)などのモビリティ事業は、半導体不足などによる自動車減産の影響を受けたものの、前年度比では新規受注などにより販売数量が増加し、増収となりました。

 当部門の売上高は、694億55百万円(前年度比3.3%増)、営業利益は、販売数量の増加や稼働率の回復などにより、51億89百万円(同132.6%増)となりました。

 

[マテリアル事業部門]

 酢酸は、会計基準の変更により販売数量は減少しましたが、市況の上昇により、増収となりました。

 酢酸誘導体は、酢酸市況の上昇などにより、増収となりました。

 アセテート・トウは、会計基準の変更により販売数量は減少しましたが、為替の影響により、売上高は微増となりました。

 カプロラクトン誘導体やエポキシ化合物などは、電子材料用途などの需要回復により販売数量が増加し、増収となりました。

 当部門の売上高は、1,228億20百万円(前年度比17.9%増)、営業利益は、販売価格の上昇などにより、247億71百万円(同38.2%増)となりました。

 

[エンジニアリングプラスチック事業部門]

 ポリアセタール樹脂、PBT樹脂、液晶ポリマーなどポリプラスチックス株式会社の事業は、自動車、スマートフォンなどの需要回復により販売数量が増加したことや、販売価格の是正などにより、増収となりました。

 ABS樹脂、エンプラアロイ樹脂、フィルム、水溶性高分子などダイセルミライズ株式会社の事業は、需要の好調による販売数量の増加などにより、増収となりました。

 当部門の売上高は、2,122億67百万円(前年度比25.9%増)、営業利益は、販売数量の増加や販売価格の是正などにより、257億58百万円(同21.7%増)となりました。

 

[その他事業部門]

 その他部門は、防衛関連事業での販売数量の減少などにより、減収となりました。

 当部門の売上高は、114億9百万円(前年度比10.0%減)、営業利益は、17億66百万円(同19.2%増)となりました。

 

 財政状態は、次のとおりであります。

 総資産は、現金及び預金等の減少がありましたが、棚卸資産及び有形固定資産等の増加により、前連結会計年度末に比し584億51百万円増加し、6,988億36百万円となりました。

 負債は、主に支払手形及び買掛金や短期借入金等の増加により、前連結会計年度末に比し239億8百万円増加し、4,192億92百万円となりました。

 また純資産は、2,795億44百万円となりました。純資産から非支配株主持分を引いた自己資本は、2,720億17百万円となり自己資本比率は38.9%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比し27億60百万円減少し、879億86百万円(前連結会計年度末比3.0%減)となりました。

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における営業活動による資金の増加は429億93百万円(前年同期は、578億69百万円の増加)となりました。資金増加の主な内容は、税金等調整前当期純利益462億83百万円および減価償却費274億90百万円であり、資金減少の主な内容は、棚卸資産の増減額274億80百万円および法人税等の支払額135億58百万円であります。

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における投資活動による資金の減少は465億28百万円(前年同期は、342億20百万円の減少)となりました。資金増加の主な内容は、投資有価証券の売却及び償還による収入28億9百万円であり、資金減少の主な内容は、有形固定資産の取得による支出434億94百万円であります。

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における財務活動による資金の減少は54億52百万円(前年同期は、170億50百万円の減少)となりました。資金増加の主な内容は、短期借入金の純増減額146億96百万円および長期借入れによる収入17億4百万円であり、資金減少の主な内容は、長期借入金の返済による支出50億37百万円および配当金の支払額96億45百万円であります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

生産高(百万円)

前年同期比(%)

メディカル・ヘルスケア事業

13,092

18.64

スマート事業

29,102

30.97

セイフティ事業

68,654

8.69

マテリアル事業

101,530

0.03

エンジニアリングプラスチック事業

197,446

36.22

報告セグメント計

409,827

19.53

その他

8,978

△15.48

合計

418,806

18.48

 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b. 受注実績

 受注生産を行っているのは「その他」のうちの特機関連部門であり、主として発射薬等で受注状況は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

その他

1,931

△71.57

3,720

△54.87

 

c. 販売実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高(百万円)

前年同期比(%)

メディカル・ヘルスケア事業

19,494

20.26

スマート事業

32,490

31.53

セイフティ事業

69,455

3.33

マテリアル事業

122,820

17.87

エンジニアリングプラスチック事業

212,267

25.93

報告セグメント計

456,527

19.86

その他

11,409

△10.02

合計

467,937

18.90

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績等

 新中期戦略『Accelerate 2025』および『Accelerate 2025-II』では2025年度に以下の全社業績および経営指標を

ターゲットとしております。

全社業績:

 売上高 5,000億円、営業利益 700億円、親会社株主に帰属する当期純利益 480億円、

 EBITDA 1,160億円

経営指標:

 営業利益率 14.0%、ROE 18.0%、ROIC 10.0%、ROA 8.0%

 株主還元:中期戦略発表時の1株当たり配当金額(年間32円)を下限、総還元性向 40%以上

 

 本中期戦略の2年目である当連結会計年度は、需要の回復による販売機会を着実に捉えるとともに、販売価格の是正、徹底したコストダウンを実施してまいりました。

 新型コロナウイルスの影響を大きく受けた前年度と比較し、売上高は4,679億37百万円(前年度比18.9%増)、営業利益は506億97百万円(同59.8%増)、経常利益は572億91百万円(同65.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は312億54百万円(同58.5%増)となりました。
 

経営成績

売上高および営業利益

 売上高、営業利益の概況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

営業外損益

 営業外損益は66億円の収益(純額)となり、前連結会計年度に比し36億円改善いたしました。

 主に為替損益の改善等によるものであります。

特別損益

 特別利益は19億円を計上いたしました。投資有価証券売却益17億円などによるものであります。

 特別損失は129億円を計上いたしました。固定資産除却損29億円のほか、減損損失100億円によるものであります。

法人税等

 税効果会計適用後法人税の負担率(実効税率)は30.7%と、前連結会計年度に比し1.4ポイント減少いたしました。

非支配株主に帰属する当期純利益

 非支配株主に帰属する当期純利益は8億円と、前連結会計年度に比し19億円(70.6%)減少いたしました。

親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は313億円と、前連結会計年度に比し115億円(58.5%)の増益となりました。

 また、ROEは12.3%となり、前連結会計年度に比し5.7ポイント改善しました。ROICは6.2%、EBITDAは789億円となりました。

財政状態

 資産、負債および純資産の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 なお、有利子負債比率は40.6%となりました。

 また、2021年11月5日取締役会決議に基づく自己株式の取得を49億円実施しております。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

キャッシュ・フロー

 キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

資金需要

 当社グループにおける主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入、労務費など製造費用と、製品の仕入、販売費及び一般管理費等の支払いであります。

 当社グループでは、製造設備の増強および更新などのほか、安全向上対策ならびに現業各設備の合理化・省力化を継続的に行っております。当連結会計年度の設備投資額は前連結会計年度に比し13億円増加し、408億円(前連結会計年度比3.3%増)、減価償却費は前連結会計年度に比し11億円増加し、269億円(前連結会計年度比4.3%増)となりました。

 当社グループでは、既存事業の強化拡大および新事業創出のための研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度の研究開発費は前連結会計年度に比し12億円増加し、207億円(前連結会計年度比6.2%増)となりました。

 

財務政策

 当社グループは、設備投資計画に照らして、必要な資金を銀行借入や社債発行により調達しております。短期的な運転資金は、キャッシュマネジメントサービスを通じてグループ内で余剰資金を活用しておりますが、地域、通貨、金利動向等を考慮した結果、銀行借入による調達を行う場合があります。当連結会計年度末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は2,835億円であります。

 利益配分に関しては、2020年度から6年間の中期戦略『Accelerate 2025-II』におきましては、収益力強化に加え適正在庫化などキャッシュコンバージョンサイクル削減効果で資金創出力向上を図ります。また、政策投資株式売却などにより資金創出力をさらに高め、余裕資金を成長投資や株主還元に活用します。株主還元は総還元性向40%以上とし、自己株式取得も視野に柔軟に対応してまいります。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

4【経営上の重要な契約等】

合弁関係

株式会社ダイセル(当社)

締結先

合弁会社名

設立の目的

資本金

設立年月日

KHネオケム㈱

協同酢酸㈱

(連結子会社)

メタノール法による酢酸の製造・販売

3,000百万円

当社出資比率

92%※

1977年7月5日

三菱ケミカル㈱

富山フィルタートウ㈱

(持分法適用関連会社)

アセテート・トウの製造・販売

50百万円

当社出資比率

35%

2012年10月1日

(注)※ 当社は、JNC株式会社と2021年9月30日付で株式譲渡契約を締結し、当社の連結子会社である協同酢酸株式会社

    の株式のうち、JNC株式会社が保有していた全株式を追加取得いたしました。その結果、協同酢酸株式会社に対

    する出資比率は92%となりました。

 

ポリプラスチックス株式会社(連結子会社)

締結先

合弁会社名

設立の目的

資本金

設立年月日

長春石油化学股份有限公司

(台湾)

長春人造樹脂厰
股份有限公司(台湾)

長連産業股份有限公司

(台湾)

Polyplastics Taiwan

Co., Ltd.(台湾)

(連結子会社)

ポリアセタール樹脂の製造・販売

1,590百万NT$

ポリプラスチックス㈱
出資比率

75%

1988年6月18日

三菱瓦斯化学㈱

Korea Engineering

Plastics Co., Ltd.(韓国)

Ticona LLC(アメリカ)

ピーティーエム・ホールディングス㈱

(連結子会社)

PTM Engineering

Plastics

(Nantong) Co.,

Ltd.の持株会社

10百万円

ポリプラスチックス㈱
出資比率

70.1%

2002年7月15日

 

 

Daicel (China) Investment Co., Ltd. (連結子会社)

締結先

合弁会社名

設立の目的

資本金

設立年月日

西安北方恵安化学工業有限公司(中国)

陜西中煙投資管理有限公司(中国)

Xi'an Huida Chemical

Industries Co., Ltd.

(中国)

(持分法適用関連会社)

アセテート・トウの製造・販売

248百万元

Daicel

(China)

Investment

Co., Ltd.
出資比率

30%

1992年7月1日

西安北方恵安化学工業有限公司(中国)

陜西中煙投資管理有限公司(中国)

Ningbo Da-An Chemical

Industries Co., Ltd.

(中国)

(持分法適用関連会社)

酢酸セルロース等の製造・販売

7,322.4万US$

Daicel

(China)

Investment

Co., Ltd.
出資比率

30%

2005年3月11日

西安北方恵安化学工業有限公司(中国)

陜西中煙投資管理有限公司(中国)

Ningbo Da-An Chemical Industries Co., Ltd.

(中国)

(持分法適用関連会社)

Xi'an Da-An Chemical Industries Co., Ltd.

(中国)

アセテート・トウの製造・販売

210百万元

Ningbo Da-An Chemical Industries

 Co., Ltd.

出資比率

100%

2012年5月9日

(注)合弁会社として記載しておりますXi'an Da-An Chemical Industries Co., Ltd.は、Ningbo Da-An Chemical Industries Co., Ltd.の100%出資でありますが、同社が西安北方恵安化学工業有限公司(中国)、陜西中煙投資管理有限公司(中国)およびDaicel (China) Investment Co., Ltd.の合弁会社であることから、Xi'an Da-An Chemical Industries Co., Ltd.につきましては、合弁会社とみなして記載しております。

 

5【研究開発活動】

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、20,741百万円であります。

なお、当連結会計年度において、当社グループの研究開発活動の状況で特筆すべき内容は、次のとおりであります。

・長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』及び中期戦略『Accelerate 2025-II』の実現に向けて、ダイセルグループ横断の連携強化により、真のニーズを掘り起こすマーケットイン型の事業創出に取り組んでおります。

・当社グループにとって新バイオマスプロダクトツリーの実現やバイオマスバリューチェーンの構築は、酢酸セルロース事業の更なる発展と、カーボンニュートラルなど社会的課題の双方に対して大きな推進力になります。これらの社会実装に向け、国立大学法人京都大学、国立大学法人金沢大学と包括連携協定を締結し、産学連携拠点施設や産学連携講座を開設して共同研究を進めております。

(金沢大学)

産業・学術・官庁の垣根を超えた共創による研究に取り組むことができる研究施設の建設を進めており、本拠点では,ファインセルロースの研究やセルロース常温溶解法による製造技術の開発を強力に推進し,社会実装を目指します。2021年10月には、科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)産学共同(本格型)の課題として「バイオマスプロダクトツリーを実現する新規改質セルロースの開発」が新規採択されました。

(京都大学)

温和な条件下で木質を「溶かす技術」による、新たな素材・製品群の創出を目指した共同研究を行っております。例えば、従来不可能だった精密に制御された化学反応による様々な新素材の開発(木質と金属・ガラスなどの無機物からなる新規ハイブリッド材料、木質と合成高分子の新規ハイブリッド材料など)や木材に含まれている反応性に富んだ物質(リグニン、ヘミセルロースなど)を変質させずに抽出し、それらを出発原料とした新たな製品群の創出(高品質なリグニンを出発物質とする高付加価値化学物質の合成など)です。また、温和な条件下で木質を「溶かす技術」により、従来の木材溶解に必要だったエネルギー多消費型の製造プロセスを大幅に短縮した省エネルギー化を目指します。

 

セグメント別の活動状況は以下の通りです。

(1) メディカル・ヘルスケア事業

当事業に係る研究開発費は1,902百万円であります。

[ヘルスケアSBU]

ヘルスケアSBUは、ヘルスケア分野において特徴ある素材・技術の開発を進めております。コスメBUでは、サステナブルな素材を化粧品市場へ提供するため、天然原料を使用した酢酸セルロースの真球状微粒子「BELLOCEA®(ベロセア®)」を開発、販売しております。また、ECHA(欧州化学物質庁)の提案するマイクロプラスチック規制に対応可能な高い生分解性と感触を両立する微粒子の開発に力を入れています。健康食品BUでは、腸内細菌によって体内で生成される成分(腸内細菌代謝物)に着目した研究・開発を行っております。これまでに、大豆イソフラボンの腸内代謝物としてエクオール含有素材を開発し、2021年5月には、ザクロに含まれるポリフェノールの代謝物(ウロリチン-A)含有素材を「ウロリッチ®」という商品名で上市いたしました。ウロリチン-Aには寿命延長効果やオートファジー効果が報告されております。

 

[CPIカンパニー]

CPIカンパニーは、キラル事業がターゲットとする低分子合成医薬に加え、成長市場の中・高分子/バイオ医薬市場においてソリューションを提供いたします。新規製品の継続的開発・上市とテクニカルサービスの充実により世界トップシェアを維持しております、光学分割用カラム事業では、新規耐溶剤型キラルカラム第10弾のCHIRALPAK IK製品およびその高性能分析用3μm製品を上市いたしました。また、既存汎用カラムと差別化した当社独自のアキラルカラムについて、新規カラム開発およびこれらを用いたペプチド等、中分子医薬のアプリケーション開発を継続しております。バイオ分野では、人類遺伝学の分野で世界をリードする米国、フランス、オーストラリア等の研究機関と共同でヒトゲノム解析用検査キットを新製品として開発、上市しました。この製品を用いることで、進化の過程で変化したとされる200万以上のゲノム領域を低コストで分析することが可能となります。今後も新製品を投入することで、バイオ分野でのプレゼンスを高めてまいります。

 

 

 

 

 

 

(2) スマート事業

当事業に係る研究開発費は3,631百万円であります。

スマートSBUは、快適なスマート社会に必要な技術・製品で、ソリューションを提供いたします。ディスプレイ分野(偏光板保護フィルムの品質改善、視認性・使用感改善の機能性フィルム)、IC/半導体分野(半導体並びにフラットパネルディスプレイ製造用フォトレジスト材料、超高純度溶剤、半導体製造用クリーナー材料)並びにセンシング分野(ウエハーレベルレンズ、有機半導体インク、導体インク、プリンテッド・エレクトロニクス用機能性溶剤)をターゲットにした研究開発を進めております。①視認性改善の機能フィルムを新規上市、②ダイキン工業㈱との共同開発で「透湿膜全熱交換エレメント」向け透湿膜シートを事業化、③フォトレジスト材料開発の拠点集約並びに新技術検討用パイロット設備を設置、④新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「ポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業」先導研究に2件の研究開発テーマが採択となり、技術開発を加速しています。

 

(3) セイフティ事業

当事業に係る研究開発費は5,566百万円であります。

セイフティSBUは、一度だけ瞬時に、安全に、確実に、エネルギーを生み出す自社技術並びにその技術を活用した製品群「One Time Energy™ DAISI™」と自動車安全領域で培ったノウハウを土台に、新たな安全安心を社会に提供いたします。自動車エアバック用新規ガス発生剤や新規インフレータ、自動車用電流遮断器など産業用アクチュエーター(エネルギーを動きに変える装置)の研究開発を行っております。また医療向けの新規投与デバイスは「One Time Energy™ 」というエネルギー制御を基盤としており実用化を強力に推進すべく、事業創出本部から移管し量産化を見据えた開発を強化・加速しており、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)向けDNAワクチン共同開発プロジェクトに参画し、医師主導試験の皮内投与に適用されました。

 

(4) マテリアル事業

当事業に係る研究開発費は1,510百万円であります。

マテリアルSBUは、ダイセルの原点である素材事業で培った技術で地球規模のニーズに多様なソリューションを提供いたします。アセチルBUでは、アセテート・トウなど、セルロース誘導体の品質、生産性の向上に取り組んできたことにより事業優位性の維持に寄与しています。長年培ったセルロース化学技術を応用し、より生分解しやすい分子構造を見いだし、従来製品の品質を保ったまま、海洋生分解性を向上させた酢酸セルロースCAFBLO(キャフブロ、Cellulose Acetate for Blue Ocean)を開発しており、2021年8月に海洋生分解性を証明する国際認証「OK biodegradable MARINE」を取得しました。石油系プラスチック代替を目指した用途開発を加速しております。ケミカルBUでは、新規エポキシ樹脂の継続的開発とテクニカルサービスの充実により、脂環式エポキシ樹脂の世界トップシェアを維持しております。耐熱性、光学特性に優れ、かつ、低毒性(変異原性陰性)を特徴とした脂環式エポキシ樹脂「セロキサイド8400」を開発いたしました。すでに特定の顧客にワークを開始し、評価が進んでいる為、スケールアップの検討を進めております。

 

(5) エンジニアリングプラスチック事業

当事業に係る研究開発費は3,672百万円であります。

[ポリプラスチックス㈱]

 世界に認められるエンジニアリングプラスチックNo.1のソリューションプロバイダーに向け、Post 5G/6Gの最先端通信、次世代自動車、メディカル分野など、エンジニアリングプラスチックの次の成長を実現する市場をターゲットに、当社の価値提供型ビジネスの更なる高度化、ファインパウダー等の新たなエンプラ機能の提案、ダイセルグループ内技術とのシナジー創出による新技術開発を行ってまいります。特に急速に高まるカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーに関するニーズに応えるべく、環境負荷低減技術開発にも注力いたします。またグローバル市場展開の促進に向け、5拠点の海外テクニカルソリューションセンターとネットワーク体制を形成し、新規市場開発案件の創出、ならびにコンセプト提案を進めております。

 

[ダイセルミライズ㈱]

 コンシューマー事業、レジン事業の二つの事業分野にて、社会や顧客の課題を解決する製品開発を進めています。リチウムイオン電池市場を主体にカルボキシメチルセルロース事業の更なる拡大、環境対応型樹脂上市に向けたコンパウンド技術の確立、各種環境対応製品の開発、および海外ネットワーク活用による各種製品のグローバル展開を進めております。

 

 

 

 

(6) その他事業

 当事業に係る研究開発費は160百万円であります。

[ダイセン・メンブレン・システムズ㈱]

 分離膜および膜装置システムの開発などを行っております。特に、水処理および医薬分野における新規分離膜の開発に注力しています。

 

(7) コーポレート

 当社では、新規事業創出のための研究開発や基盤研究をコーポレート部門が行っております。その研究開発費は4,297百万円であります。

[リサーチセンター]

 大学や公的研究機関との産学連携を積極的に進め、有識者との共同研究等により、中長期で求める新しい技術、機能、素材の基礎研究を進めております。2020年4月から東京大学社会連携講座で研究開発に取り組んでいるマイクロ流体デバイス技術について、この技術を応用した「マイクロ流体デバイスプラント」を社会実装するために必要な生産技術および量産化技術に関して、国立清華大学(台湾)と共同で研究開発を進めることになりました。

 

[事業創出本部]

 2021年4月1日付の組織変更により、コーポレート部門の事業企画と研究開発部門を一体化した事業創出センターと事業創出に必要な評価技術を構築する評価解析センターを設置し、メンバー全員がマーケットに出て、お客様に密着するカスタマーインの取り組みを通じて、事業創出を加速致します。これまで培ってきた計算科学・マテリアルズ・インフォマティクス等のAI技術、有機合成技術、評価解析技術、加工技術を生かし、各SBUやグループ会社の中長期の研究開発テーマや社外との共創テーマに取り組むとともに、研究開発の初期ステージより工業化技術構築の視点を加え、検討を進めています。また大学・外部研究機関と共同研究体制を構築し、新規素材、新規加工技術、新規生産技術創出の検討を進めています。カスタマーインによる新事業開発の試行事例であるダイキン工業㈱との協業では、マテリアルSBU、スマートSBU、生産技術センターなど課題解決に必要な全部門でその解決にあたり、研究開発の加速と成果の最大化を成し遂げ、短期間で新商品を開発しました。ヘルスケアセグメントでは、当社が得意とする嫌気性培養技術を活用した腸内細菌代謝物に着目した研究・開発を行っており、これまでに、大豆イソフラボンの腸内代謝物(エクオール)、ザクロに含まれるポリフェノールの代謝物(ウロリチン)をヘルスケアSBUとともに事業化いたしました。また、スマートセグメントでは、次世代通信(ポスト5G/6G)向け新規材料並びに評価技術の開発をリサーチセンター、スマートSBU並びに大阪大学産業科学研究所フレキシブル3D実装協働研究所とともに進めており、2021年6月、NEDO「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」先導研究に採択されました。エレクトロニクス実装材料の研究開発及び事業化を加速し、経済産業省及びNEDOが進める我が国のポスト5G情報通信システムの開発・製造基盤強化に貢献します。評価解析技術では、ミクロ・ナノ構造解析技術の強化・新技術獲得(電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡、X線放射光)を進めております。

 

[生産本部生産技術センター]

 ダイセルグループ横断的な体制で新事業の工業化、既存製品の品質改善、プロセス改善、増産検討、プロセス革新による新規プロセス・技術構築の推進を加速し、地球環境と共生する循環型プロセス構築を図っていくため、2021年4月1日付けの組織変更により、生産本部生産技術センターとなりました。酢酸セルロース及び有機主力製品のプロセス革新による大幅なコストダウンおよび省エネルギー化のための技術の開発を進めております。また、企画から事業化まで一貫した技術開発を実現し、エンジニアリング業務でのデジタルトランスフォーメーションを強化すべく、シミュレーションと計算科学およびマテリアルズ・インフォマティクスの機能を生産技術センター内のシミュレーショングループに統合し、プロセスシミュレーション、流体解析、計算科学、品質工学、マテリアルズ・インフォマティクス等AI技術の充足、強化を進めております。